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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1222862
審判番号 不服2009-1330  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-15 
確定日 2010-09-02 
事件の表示 特願2000- 37560「リニアアクチュエータ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月24日出願公開、特開2001-231241〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月16日の出願であって、平成20年12月11日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月15日に拒絶査定不服審判請求がなされると共に、同年2月13日付手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「モータの回転子の中空軸内に配設される駆動用ナット部材と、該中空軸内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸とを備え、前記モータの前記回転子に発生する回動動力を、互いに螺合する前記両ねじ部により、前記出力軸から直動動力として出力するアクチュエータにおいて、前記出力軸の出力側を、前記駆動用ナット部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構を設け、
前記ガイド機構は、前記出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、前記モータの外周に配設される単数または複数の摺動ガイド機構からなり、該摺動ガイド機構は、前記アクチュエータの端部に固定されたガイド保持部材の外周に形成された保持部材内に固着されたリニア軸受またはリニアブッシュと、前記接続部材に接続され、該リニア軸受またはリニアブッシュに摺動自在に、前記出力軸に平行して配設されるリニア軸とからなる
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。」
と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「リニア軸受またはリニアブッシュ」について「アクチュエータの端部に固定されたガイド保持部材の外周に形成された保持部材内に固着された」との限定を付加し、同じく「リニア軸」について「接続部材に接続され」との限定を付加するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
a)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-294553号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0002】
【従来の技術】従来、回転運動を直線運動に変換する装置として各種の電動アクチュエータが知られている。」

・「【0023】
【発明の実施の形態】以下、電動アクチュエータの一実施形態を図1に基づいて説明する。電動アクチュエータ1を構成するアクチュエータ本体2は、略直方体形を呈するブロック状の単体であり、例えばアルミ押出し成形により一体形成されている。アクチュエータ本体2には、その長手方向に貫通するようにかつ互いに平行に延びる第1貫通孔3及び第2貫通孔4がそれぞれ形成されている。これら両貫通孔3,4は同一の内径となるように形成されている。
【0024】第1貫通孔3の後端開口に対応してアクチュエータ本体2の後端面には、駆動源たるモータとしてのステッピングモータ5が固定されている。ステッピングモータ5により第1貫通孔3の後端開口が閉塞されている。ステッピングモータ5の出力軸6は第1貫通孔3内に突出されている。
【0025】送りねじ部7は第1貫通孔3の長手方向に延びるように長尺状に形成され、同第1貫通孔3内に収容されている。送りねじ部7の形成材料としては、ステンレス等のような硬質の金属が使用されている。出力軸6の先端側と送りねじ部7の後端側とは、連結手段としてのカップリング8により連結されている。出力軸6の中心軸線と送りねじ部7の中心軸線とは同一直線上に配置され、両者はカップリング8を介して一体回転される。送りねじ部7の長手方向外周面のほぼ全域にはねじ山9が形成されている。
【0026】直線送り部としての送りナット部10は第1貫通孔3内に収容されている。送りナット部10はその外径が第1貫通孔3の内径よりも小さく形成されている。送りナット部10にはねじ山9と等ピッチのねじ孔11が形成され、送りねじ部7に螺合されている。なお、前記送りねじ部7及び送りナット部10により変換手段が構成されている。
【0027】作動部材12は第1貫通孔3の長手方向に延びるように長尺状に形成され、同第1貫通孔3内に収容されている。作動部材12の先端側はアクチュエータ本体2の先端面から突出されている。作動部材12はステンレス等の硬質の金属材料により形成されている。作動部材12には長手方向に延びる収容穴13が形成され、その収容穴13は作動部材12の後端面において開口されている。収容穴13には送りねじ部7の先端側が挿入されている。作動部材12の後端には収容穴13の開口を閉塞するように送りナット部10が固定され、送りナット部10と作動部材12とは一体的に構成されている。」

・「【0029】ガイド部材としてのガイドロッド16は第2貫通孔4の長手方向に延びるように長尺状に形成され、同第2貫通孔4内に収容されている。ガイドロッド16の先端側はアクチュエータ本体2の先端面から突出されている。ガイドロッド16はステンレス等の硬質の金属材料により形成されている。ガイドロッド16の外径は作動部材12の外形と一致するように形成されている。
【0030】アクチュエータ本体2には第2貫通孔4の先端側に対応する位置に筒状のロッド側カバー17が固定されている。このロッド側カバー17の固定は、カバー14と同様の方法により行われている。即ち、第2貫通孔4の先端側を大径4aとして当該第1貫通孔4の途中に段差部4bを形成し、アクチュエータ本体2の先端面側からその段差部4bまでロッド側カバー17を挿入した後、Cリング等の係合部材をアクチュエータ本体2に装着し、段差部4bとCリング等でロッド側カバー17を挟持することにより行われている。ガイドロッド16はロッド側カバー17に挿通されている。ロッド側カバー17には軸受部材としてのボール軸受18が設けられ、ボール軸受18によりガイドロッド16の外周面が高精度に支持されている。ロッド側カバー17は基本的にはカバー14と同一構成及び同一の大きさであり、両ボール軸受15,18は全く同一のものが使用されている。
【0031】作動部材12の先端及びガイドロッド16の先端には当板19が固定されている。その固定は例えばボルト20の締付けによりなされている。従って、ガイドロッド16が当板19を介して作動部材12に連結されていることから、ガイドロッド16は作動部材12の回り止め手段として機能する。作動部材12と送りナット部10とは一体的に構成されていることから、同じくガイドロッド16は送りナット部10の回り止め手段として機能する。従って、送りねじ部7が回転すると、その回転方向に応じて送りナット部10は送りねじ部7の長手方向に沿って進退される。同時に作動部材12も長手方向に進退される。併せて、当板19及びガイドロッド16が同一方向に進退される。」

・「【0046】従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)作動部材12の回り止めはガイドロッド16によって行われ、作動部材12及びガイドロッド16はいずれもボール軸受15,18によって支持されている。その結果、作動部材12の高精度な回り止めが実現されるとともに、その直線移動も高精度なものとなる。
【0047】(2)作動部材12はガイドロッド16と連結されることで自身の回り止めが達成されているため、作動部材12に一体に設けられた送りナット部10も回り止めが図られている。その結果、ステッピングモータ5の回転に伴って送りねじ部7が回転すると送りナット部10は回転することなく直線的に移動され、これにより作動部材12が直線的に移動される。従って、変換手段を送りねじ部7と送りナット部10により構成したことでその構成が簡略化し得るばかりか、送りナット部10の回り止めもガイドロッド16の存在によって達成されるため送りナット部10専用の回り止め機構が不要となって更なる構成の簡略化を図ることができる。」

・「【0057】以上説明した実施形態の他、次のような他の実施形態もある。
・図2に示すように、ガイドロッド16を単なる棒状のものとして構成してもよい。この場合、ガイドロッド16側においても作動部材12側と全く同一のカバー14及びボール軸受15を利用することができる。又、この場合、前記実施形態と比べ構造を極端に簡略化し得る。」

・図2には、作動部材12に隣接してボール軸受15に摺動自在に配設されるガイドロッド16が示されており、さらに、作動部材12の先端側を、送りねじ部7が連結された側の先端位置に設け、前記作動部材12を直線運動可能にし、かつ、該作動部材12を直線運動させる案内機構を設けた構成が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、図2の実施例に対応する次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「ステッピングモータ5の出力軸6の先端側に連結されるねじ山9が形成された送りねじ部7と、第1貫通孔3内を挿通し、その内周面に、前記送りねじ部7のねじ山9と螺合するねじ孔11が形成された送りナット部10と一体的に構成された作動部材12とを備え、前記ステッピングモータ5の前記出力軸6の回転運動を、互いに螺合する前記ねじ山9及びねじ孔11により、前記作動部材12の直線運動に変換する電動アクチュエータ1において、前記作動部材12の先端側を、前記送りねじ部7が連結された側の先端位置に設け、前記作動部材12を直線運動可能にし、かつ、該作動部材12を直線運動させる案内機構を設け、
前記案内機構は、前記作動部材12に当板19を介して連結され、かつ、前記作動部材12に隣接して配設される1つの回り止め手段からなり、該回り止め手段は、前記電動アクチュエータ1の前記第1貫通孔3に隣接する第2貫通孔4の先端部側に固定されたロッド側カバー14内に設けられたボール軸受15と、前記当板19に連結され、該ボール軸受15に摺動自在に、前記作動部材12に平行して配設されるガイドロッド16とからなる
電動アクチュエータ1。」

b)同じく、引用された特開昭63-35150号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「本発明は、自動車用エンジン吸気バルブで、空気量制御をする為のリニアーアクチュエータ等に用いられる位置決め制御用ステッピングモータに関するものである。」(1頁左下欄19行?同頁右下欄2行)

・「本発明の実施例を第1図に基づいて説明する。ステータ1と中間ブラケット2を固定するブラケットB3と、出力軸4用の軸受5を保持するブラケットA6によって外かくが形成されている。ロータマグネット7は成形樹脂部8により固定され、成形樹脂部8は玉軸受A9と玉軸受B10に支持され、玉軸受A9はブラケットA6により、玉軸受B10は中間ブラケット2により支持されている。成形樹脂部8の内径部8aに設けためねじと出力軸4のおねじ部4aがかみ合い、ロータマグネット7によるトルクによって出力軸4が軸方向の移動する。出力軸4は軸受5とのはめ合い部4bにより、回転を妨げられていて、先端部4cを有している。」(2頁右上欄9行?同頁左下欄2行)

・第1図には、成形樹脂部8内を挿通し、その外周面に、内径部8aのめねじと螺合するおねじ部4aが形成される出力軸4の構成が示されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

まず、後者の「ステッピングモータ5の出力軸6の先端側に連結されるねじ山9が形成された送りねじ部7」と前者の「モータの回転子の中空軸内に配設される駆動用ナット部材」とは、「モータの所定箇所に配設される駆動用ねじ部材」との概念で共通し、後者の「第1貫通孔3内を挿通し、その内周面に、送りねじ部7のねじ山9と螺合するねじ孔11が形成された送りナット部10と一体的に構成された作動部材12」と前者の「中空軸内を挿通し、その外周面に、駆動用ナット部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸」とは、「所定部内を挿通し、その周面に、駆動用ねじ部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸」との概念で共通する。

次に、後者の「ステッピングモータ5の出力軸6の回転運動を、互いに螺合するねじ山9及びねじ孔11により、作動部材12の直線運動に変換する電動アクチュエータ1」は前者の「モータの回転子に発生する回動動力を、互いに螺合する両ねじ部により、出力軸から直動動力として出力するアクチュエータ」に相当する。

続いて、後者の「作動部材12の先端側を、送りねじ部7が連結された側の先端位置に設け、前記作動部材12を直線運動可能にし、かつ、該作動部材12を直線運動させる案内機構」と前者の「出力軸の出力側を、駆動用ナット部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構」とは、「出力軸の出力側を、駆動用ねじ部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構」との概念で共通する。

また、後者の「作動部材12に当板19を介して連結され、かつ、前記作動部材12に隣接して配設される1つの回り止め手段」と前者の「出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、モータの外周に配設される単数または複数の摺動ガイド機構」とは、「出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、所定箇所に配設される単数または複数の摺動ガイド機構」との概念で共通する。

さらに、後者の「電動アクチュエータ1の第1貫通孔3に隣接する第2貫通孔4の先端部側に固定されたロッド側カバー14内に設けられたボール軸受15」は前者の「アクチュエータの端部に固定されたガイド保持部材の外周に形成された保持部材内に固着されたリニア軸受またはリニアブッシュ」に、後者の「当板19に連結され、ボール軸受15に摺動自在に、作動部材12に平行して配設されるガイドロッド16」は前者の「接続部材に接続され、リニア軸受またはリニアブッシュに摺動自在に、出力軸に平行して配設されるリニア軸」に、後者の「電動アクチュエータ1」は前者の「リニアアクチュエータ」に、それぞれ相当している。

したがって、両者は、
「モータの所定箇所に配設される駆動用ねじ部材と、所定部内を挿通し、その周面に、前記駆動用ねじ部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸とを備え、前記モータの前記回転子に発生する回動動力を、互いに螺合する前記両ねじ部により、前記出力軸から直動動力として出力するアクチュエータにおいて、前記出力軸の出力側を、前記駆動用ねじ部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構を設け、
前記ガイド機構は、前記出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、所定箇所に配設される単数または複数の摺動ガイド機構からなり、該摺動ガイド機構は、前記アクチュエータの端部に固定されたガイド保持部材の外周に形成された保持部材内に固着されたリニア軸受またはリニアブッシュと、前記接続部材に接続され、該リニア軸受またはリニアブッシュに摺動自在に、前記出力軸に平行して配設されるリニア軸とからなる
リニアアクチュエータ。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
駆動用ねじ部材が配設されるモータの「所定箇所」に関し、本願補正発明は、「回転子の中空軸内」としているのに対し、引用発明は、「(モータの)出力軸の先端側」である点。
[相違点2]
「駆動用ねじ部材」に関し、本願補正発明は、「駆動用ナット部材」としているのに対し、引用発明は、「ねじ山が形成された送りねじ部」である点。
[相違点3]
出力軸が挿通される「所定部内」に関し、本願補正発明は、「中空軸内」としているのに対し、引用発明は、「第1貫通孔内」である点。
[相違点4]
出力軸のねじ部が形成される「周面」に関し、本願補正発明は、「外周面」としているのに対し、引用発明は、「内周面」である点。
[相違点5]
摺動ガイド機構が配設される「所定箇所」に関し、本願補正発明は、「モータの外周」としているのに対し、引用発明は、「作動部材に隣接し」た箇所である点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1ないし4について
本願明細書の【0002】の「【従来の技術】従来、この種のリニアアクチュエータとしては、例えば、図4(a)の断面図および図4(b)の側面図に示すものがある。図4(a)および図4(b)において、このリニアアクチュエータ1は、モータ2を構成する固定子3と、該固定子3内の軸心上に、中空状の回転軸5に固着して、回動自在に配設される回転子4のほか、該回転子4の鉄心4aから離れた軸心上の部位で、前記中空軸5の中空部分が拡径された中空拡径部5a内に固着される駆動用ナット部材6と、該中空軸5内を、外部に突出して往復動するように挿通し、その外周面に、前記ナット部材6のねじ部6aと螺合するねじ部7aが形成される出力軸7とを備える。」なる記載の如く、請求人も熟知していると共に、例えば引用例2にも開示されているように、モータ(引用例2では「ステッピングモータ」が相当)の回転子の中空軸(同じく「ロータマグネット7が固定される成形樹脂部8」が相当)内に配設される駆動用ナット部材(同じく「めねじを設けた内径部8a」が相当)と、該中空軸内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材のねじ部(同じく「めねじ」が相当)と螺合するねじ部(同じく「おねじ部4a」が相当)が形成される出力軸とを備えた構成は、リニアアクチュエータの分野における周知の構成である。
引用発明において、リニアアクチュエータのモータや出力軸の具体的な構成について上記周知の構成を採用することは、当業者が通常の創作活動の一環として適宜試みる程度の事項であり、その採用に際し、格別の阻害要因及び技術的困難性は何等認められない。
そうすると、引用発明において、上記周知の構成に倣い、相違点1ないし4に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点5について
上記「相違点1ないし4について」での検討を踏まえ、引用発明において、上記周知の構成を採用した場合に、摺動ガイド機構が配設される「作動部材に隣接し」た箇所は、「モータの外周」となることは明らかである。
そうすると、上記相違点5は、格別のものとはいえない。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明及び上記周知の構成から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記周知の構成に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成20年11月20日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「モータの回転子の中空軸内に配設される駆動用ナット部材と、該中空軸内を挿通し、その外周面に、前記駆動用ナット部材のねじ部と螺合するねじ部が形成される出力軸とを備え、前記モータの前記回転子に発生する回動動力を、互いに螺合する前記両ねじ部により、前記出力軸から直動動力として出力するアクチュエータにおいて、前記出力軸の出力側を、前記駆動用ナット部材の位置と同じ側で、かつ、該位置に近い位置に設け、前記出力軸を直動可能にし、かつ、該出力軸を直動させるガイド機構を設け、
前記ガイド機構は、前記出力軸に接続部材を介して接続され、かつ、前記モータの外周に配設される単数または複数の摺動ガイド機構からなり、該摺動ガイド機構は、リニア軸受またはリニアブッシュと、該リニア軸受またはリニアブッシュに摺動自在に、前記出力軸に平行して配設されるリニア軸とからなる
ことを特徴とするリニアアクチュエータ。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「リニア軸受またはリニアブッシュ」について「アクチュエータの端部に固定されたガイド保持部材の外周に形成された保持部材内に固着された」との限定を省き、「リニア軸」について「接続部材に接続され」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明及び上記周知の構成に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び上記周知の構成に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知の構成に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は、同法第49条第2号の規定に該当し、拒絶をされるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-05 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-21 
出願番号 特願2000-37560(P2000-37560)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H02K)
P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 杉山 健一  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 冨江 耕太郎
大河原 裕
発明の名称 リニアアクチュエータ  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 奥山 尚一  
代理人 河村 英文  

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