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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E06B
管理番号 1222865
審判番号 不服2009-1887  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-23 
確定日 2010-09-02 
事件の表示 特願2004-311452「フラッシュパネル、およびフラッシュパネルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月18日出願公開、特開2006-124953〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は,平成16年10月26日の出願であって,平成20年12月15日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年1月23日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同日受付けで手続補正がなされたものである。
その後,平成21年12月22日付けで,審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ,平成22年1月25日に回答書が提出された。

【2】補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成21年1月23日受付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の内容・目的
平成21年1月23日受付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,特許請求の範囲について,補正前(平成20年9月8日受付けの手続補正書参照。)に,

「【請求項1】
鏡板の周端縁を枠状の額縁の内側面に係合して鏡板ユニットを形成し、前記鏡板ユニットを框枠体である芯材の開口部の内側に配設し、芯材の表裏面と共に額縁の外周端の表裏面にも表面材を延出させて貼着し、表面材を額縁より厚み方向に突出させているフラッシュパネルにおいて、前記額縁が表裏面に外周側で低くなる段落ち部を備えて、この段落ち部に表面材の端部が納められており、同段落ち部である額縁の外側端部の厚みが芯材の厚みと略同じで両者の表裏面が面一に連続していることを特徴とするフラッシュパネル。」
とあったものを,

「【請求項1】
鏡板の周端縁を枠状の額縁の内側面に係合して鏡板ユニットを形成し、前記鏡板ユニットを框枠体である芯材の開口部の内側に配設し、芯材の表裏面と共に額縁の外周端の表裏面にも表面材を延出させて貼着し、表面材を額縁より厚み方向に突出させているフラッシュパネルにおいて、前記額縁が表裏面に外周側で低くなる段落ち部を備えて、この段落ち部に表面材の端部が納められており、同段落ち部である額縁の外側端部の厚みが芯材の厚みと略同じで両者の表裏面が面一に連続し、この面一に連続した段落ち部と芯材の両者の表裏面に表面材の延出された端部が同段落ち部に納められて貼着されていることを特徴とするフラッシュパネル。」
と補正しようとするものである。

本件補正は,請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「この面一に連続した段落ち部と芯材の両者の表裏面に表面材の延出された端部が同段落ち部に納められて貼着され」という事項を付加して限定したものと認められるから,本件補正は,少なくとも,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むものである。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか,すなわち,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たしているか,について以下に検討する。

2.独立特許要件違反(特許法第29条第2項違反)
2-1.引用刊行物
(1)刊行物1
本願出願前に頒布された刊行物である,特開平8-93343号公報(以下,「刊行物1」という。)には,以下の記載がある。
(1a)「・・・この発明の一実施例を図1,図2に従って説明すると、木質基材(1)は、合板,LVL,パーチクルボード,MDF,ストランドボード等であるが、厚さ25mmのLVLを用い、縦框(1a)と横框(1b)を設けるに当たり、横框側をドアーの必要横寸法に切断して設け、これら縦框と横框をタッカーで仮止めしておく。
一方、ボード表面材(2)は、MDFにナラの天然木化粧単板を貼着した5.5mm厚を用い、着色塗装を施した後、縦材(2a)と横材(2b)とを設けるに当たり、縦材(2a)側をドアーの必要寸法に切断して設け、これら縦框と横框(当審注:「縦材と横材」の誤記と認める。)を裏面よりホットメルトで仮止めしておく。
次に、9mm合板の両面にナラ化粧単板を貼着し着色塗装したものを、ナラ挽材を加工・着色塗装した面縁(A)に嵌め込み、鏡板パネル(3)とし、該鏡板パネル(3)を框組した木質基材(1)の内部の空隙部(X)に嵌め込み、更にその両面に、前記に作成したボード表面材(2)を、水性ビニルウレタン樹脂接着剤を20g/尺^(2)塗布し、2kg/cm^(2)の圧力で2時間圧締して接着させる。
最後に、ドアー両側の木端面に、着色塗装した2mm厚の木端単板(4)を接着させて框組ドアーを作成した。」(段落【0011】?【0014】)

(1b)本発明の一実施例を示す組立状態を示す正面図である【図6】及び本発明の実施状態を示す説明図である【図7】には,木質基材1の両面から面縁Aの外周端の両面にわたってボード表面材2が配置されていること,ボード表面材2が面縁Aより厚み方向に突出していること,及び,面縁Aの外側端部の厚みと木質基材1の厚みと略同じで,両者の両面が面一に連続していることが記載されている。

上記記載事項(1a)?(1b)及び図面の記載からみて,刊行物1には,以下の技術が記載されているものと認められる。

「合板の両面にナラ化粧単板を貼着し着色塗装したものを面縁Aに嵌め込んで鏡板パネルとし,
該鏡板パネルが,框組した木質基材1の内部の空隙部に嵌め込まれ,
前記面縁Aの外側端部の厚みは木質基材1の厚みと略同じで,両者の両面が面一に連続し,
この面一に連続した木質基材1の両面から面縁Aの外周端にわたって両面にボード表面材2が接着され,
ボード表面材2が面縁Aより厚み方向に突出させている框組ドアー。」(以下,「刊行物1記載の発明」という。)


2-2.対比・判断
本件補正発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「面縁A」,「鏡板パネル」,「木質基材1」,「ボード表面材2」,及び「框組ドアー」は,それぞれ,本件補正発明の「額縁」,「鏡板ユニット」,「芯材」,「表面材」及び「フラッシュパネル」に相当している。
したがって,両者は,以下の点で一致している。
(一致点)
「鏡板の周端縁を枠状の額縁の内側面に係合して鏡板ユニットを形成し,前記鏡板ユニットを框枠体である芯材の開口部の内側に配設し,芯材の表裏面と共に額縁の外周端の表裏面にも表面材を延出させて貼着し,表面材を額縁より厚み方向に突出させているフラッシュパネルにおいて,
表面材が貼着される額縁の外側端部の厚みが芯材の厚みと略同じで両者の表裏面が面一に連続し,この面一に連続した額縁の外側端部と芯材の両者の表裏面に表面材が貼着されているフラッシュパネル。」

そして,以下の点で相違している。
(相違点)
本件補正発明では,額縁が表裏面に外周側で低くなる段落ち部を備えており,同段落ち部の厚みが芯材の厚みと略同じで両者の表裏面が面一に連続し,表面材の延出された端部が同段落ち部に納められて貼着されているのに対し,刊行物1記載の発明では,面縁Aが表裏面に外周側で低くなる段落ち部を備えていない点。

相違点について検討する。
木工技術において,部材同士の接続時に溝や段部を設けて仕舞いをよくすることは,周知の技術である。そして,フラッシュパネルにおいても,厚みが厚く形成された額縁に段部を形成して,該段部に表面材の端部の納める形状のものが,例えば特開2002-317587号公報(【図2】),特開2003-343160号公報(【図4】)に見られるように周知である。
そうすると,刊行物1記載の発明において,額縁の厚みを厚く形成させ,その状態で表面材の額縁側に延出された端部を収めるために,額縁の外周側に低く,かつ,芯材の厚みと略同じとなる段落ち部を設け,該段落ち部に表面材の延出された端部を収めるように構成することは,当業者が容易になし得たことである。

以上より,本件補正発明は,刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

なお,請求人は,平成22年1月25日に提出した回答書において,請求項1について「・・・両者の表裏面に,芯材と額縁とが接合された状態において,・・・貼着された」という事項を限定する旨の補正案を提示しているが,該限定された事項は,刊行物1記載の発明も当然備える構成に過ぎない。

3.補正の却下の決定のむすび
以上より,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないものであるから,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


【3】本願発明
1.本願発明
平成21年1月23日受付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成20年9月8日受付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,上記のとおりのものと認める。

2.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物1には,「【2】2.2-1.」に記載したとおりの発明が記載されているものと認められる。
また,「【2】2.」において,周知技術の参照文献として提示した,特開2003-343160号公報は,原査定の拒絶の理由に引用されている。

3.対比・判断
本願発明は,前記「【2】」で検討した本件補正発明から「この面一に連続した段落ち部と芯材の両者の表裏面に表面材の延出された端部が同段落ち部に納められて貼着され」との特定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明を特定するために必要な事項を全て含み,さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が,前記「【2】2.」に記載したとおり,刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

したがって,本願発明は刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


【4】むすび
以上のとおり,本願発明は特許を受けることができないから,本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-25 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-21 
出願番号 特願2004-311452(P2004-311452)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E06B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 綾子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
山本 忠博
発明の名称 フラッシュパネル、およびフラッシュパネルの製造方法  

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