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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1222873
審判番号 不服2009-7006  
総通号数 130 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-10-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-04-02 
確定日 2010-09-02 
事件の表示 特願2004-196045号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 1月19日出願公開、特開2006- 19525号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成16年7月1日の出願であって、 平成21年2月26日付けで拒絶査定がされ、この査定に対し、同年4月2日に本件審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
本件出願の請求項1?4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】
搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、前記搬送中の基板に向けて処理液を供給して基板処理を施すとともに処理後の処理液を基板から回収する液回収型ノズル部と、前記液回収型ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側に基板上の処理液をエアを吹き付けて液切りを行う液切り部とが前記搬送路に沿って直列に配設されていることを特徴とする基板処理装置。」

2. 引用刊行物とその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-162918号公報(以下「刊行物1」という。)には、複数の処理槽にわたって基板を搬送しながら所定の処理を行う基板処理装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(ア)「【0002】
【従来の技術】半導体ウェハ、液晶表示装置用又はプラズマ表示装置用のガラス角形基板等の各種基板を、複数の処理槽を搬送しながら処理する基板処理装置が従来より提供されている。この種の装置は、主に、基板表面に対してエッチングや現像等の薬液処理を行う薬液処理部と、薬液処理された基板を水洗する水洗処理部と、水洗処理された基板を乾燥する乾燥処理部とを有している。
・・(略)・・
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記のような基板処理装置では、基板が各処理槽を順次搬送されていくので、特に薬液処理部の後段に薬液を持ち出さないようにすることが重要である。このため薬液処理部の出口部分にはエアナイフが設けられており、基板に付着する薬液をエアにより吹き飛ばすようにしている。」
(イ)「【0022】
【発明の実施の形態】図1に、本発明の一実施形態による基板処理装置の概略構成図を示す。
[全体構成]この基板処理装置1は、薬液処理部2、水洗処理部3、及び乾燥処理部4がそれぞれ上流側(図1の左方)から下流側に向けて相互に隣接しながら直列に配設されて形成されている。そして、薬液処理部2、水洗処理部3、及び乾燥処理部4を上流側から下流側に向けて貫通するように搬送手段5が設けられており、薬液処理部2に順次送り込まれた基板Wは、この搬送手段5によって搬送されつつ薬液処理部2、水洗処理部3、及び乾燥処理部4において処理される。」
(ウ)「【0025】[薬液処理部]薬液処理部2は、搬送手段5によって搬送される基板Wの表裏にアルカリ洗浄液等の薬液を供給して基板Wを洗浄(薬洗)するためのものである。そして、この基板処理部2は、内部に搬送手段5が敷設された薬液処理槽15と、薬液処理槽15内に搬送手段5を挟んで上下に配設された複数の薬液ノズル16と、薬液処理槽15から戻し管路17を介して戻された薬液を貯留する薬液タンク18と、薬液タンク18内の薬液を薬液供給管路19を通して薬液ノズル16に供給する薬液ポンプ20及び流量制御バルブ21とを有している。また、薬液処理槽15の出口側近傍には、エアナイフ22が配置されており、水洗処理部2に向けて搬出される基板Wに付着した薬液を吹き飛ばすようにしている。」

・記載事項(イ)の「基板処理装置1」は、「薬液処理部2に順次送り込まれた基板Wは、この搬送手段5によって搬送されつつ薬液処理部2、水洗処理部3、及び乾燥処理部4において処理される」ものであって、該搬送は、図1において一点鎖線で現された搬送路に沿って略水平姿勢で行われているものであるので、搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に処理を施すものといえる。
・記載事項(ウ)の「薬液ノズル16」及び「エアナイフ22」は、図1において一点鎖線で現された搬送路に沿って、薬液ノズル16、エアナイフ22の順で、直列に配設されているものであるので、薬液ノズル16と、エアナイフ22とが搬送路に沿って直列に配設されているものといえる。
また、該「エアナイフ22」は、図1において薬液ノズル16のすぐ後方に記載されたものであるので、薬液ノズルの基板搬送路の直ぐ下流側に配設されたものといえる。

すると、特に、薬液処理部に着目し、上記の事項を総合すると刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているものということができる。
「搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に薬液処理を施す基板処理装置であって、前記搬送中の基板に向けて薬液を供給して基板Wを洗浄する薬液ノズルと、薬液ノズルの基板搬送路の直ぐ下流側に基板Wに付着した薬液を吹き飛ばすエアナイフとが前記搬送路に沿って直列に配設されている基板処理装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-142453号公報(以下「刊行物2」という。)には、ウエット処理装置に関し、図面とともに、次の技術的事項が記載されている。
(エ)「【0002】
【従来の技術】半導体デバイス、液晶表示パネル等の電子機器の分野においては、その製造プロセス中に帯状の被処理物である半導体基板やガラス基板等の被処理基板をウエット処理する工程が必須である。このようなウエット処理工程に用いられる従来のウエット処理装置の要部の概略構成を図11に示す。・・(略)・・
【0005】・・(略)・・ノズル111aからDHF溶液(希フッ酸溶液)を供給して上記Si膜の表面に形成されたSiO2膜を剥離する。ついで、SiO2膜剥離後のガラス基板121を洗浄室112内に送り込み、ガラス基板121を搬送コロ125・・・により洗浄室112内を水平搬送するとともにノズル112a・・・から超純水、オゾン水等の洗浄液をガラス基板121の両面に吹き付けて、剥離室111内で基板表面に付着したDHF溶液(希フッ酸溶液)を洗い流す。・・(略)・・
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら従来のウェット処理装置100においては、各ウエット処理にそれぞれ専用のスペース(ウエット処理室)を設けているので、ウエット処理数に応じたウエット処理室数が必要で、製造ライン中のウエット処理工程の長さが長くなり、クリーンルーム内のウエット処理装置の占有スペースが大きくなり、また、ウエット処理工程における被処理基板の搬送距離も長くなってしまうため、ウエット処理工程だけで多大な設備費を費やしてしまい、その結果として製品コストが高くなってしまう。
【0007】また、剥離室111内及び洗浄室112内ではガラス基板212を水平搬送しているために洗浄処理工程の前工程で使用した処理液、具体的にはDHF溶液(希フッ酸)が洗浄室112内に持ち込まれてしまう。その結果、洗浄液が多く必要でこれにより洗浄室112が長くなり、ウエット処理装置が大型なものとなってしまうという問題があった。また、このように剥離室111と洗浄室112のように複数のウエット処理室が近接して設けられている場合には、一つのウエット処理室で使用したウエット処理液と他のウエット処理室で使用したウエット処理液が相互に汚染されることがあり、そのような場合には、処理液の繰り返し使用や再生使用が困難であった。」
(オ)「【0018】本発明のウエット処理装置において、上記処理室内の隣合うウエット処理領域の間にはウエット処理液の相互汚染を防止するための処理液分離手段が設けられていることが、隣合うウエット処理領域で使用するウエット処理液の相互汚染の防止をより確実に行える点で好ましい。処理液分離手段としては、帯状の被処理物やウエット処理液と不活性なガスを給排気可能なガスカーテンやエアナイフ等が用いられる。」
(カ)「【0020】本発明のウエット処理装置において、上記ウエット処理手段のうち少なくも一つは、帯状の被処理物に対向する面に、帯状の被処理物にウエット処理液を導入する処理液導入部と、ウエット処理後の帯状の被処理物からウエット処理液を回収するための処理液回収部と、上記処理液導入部と処理液回収部とを連結する連結部を有し、上記処理液導入部の被処理物側の部分に、処理液を導入する処理液導入口が形成され、上記処理液回収部の被処理物側の部分に処理液を回収する処理液回収口が形成されてなる一対のノズル構成体から構成され、該一対のノズル構成体は上記処理液導入口及び処理液回収口が設けられた側同士が隙間を隔てて対向配置され、該対向部間に上記帯状の被処理物が搬送されてウエット処理を行うものであってもよい。かかる構成のウエット処理装置によれば、特に、ウエット処理手段が上記の構成の一対のノズル構成体から構成されているので、上記処理液導入口からウエット処理液を帯状の被処理物表面に供給したら、そのウエット処理液を供給した部分以外の帯状の被処理物表面にウエット処理液を接触させることなく、上記処理液回収口から使用後のウエット処理液(場合によっては除去物(帯状の被処理物から除去したもの)を含んだウエット処理液)を外部に排出できるので、効率良くウエット処理ができる(ウエット処理液が洗浄液である場合は充分な清浄度が得られる)。」
(キ)「【0033】・・(略)・・凹状ウエット処理領域11で被処理基板21に形成された凹み部21aの水平部分(底部)にはウエット処理手段として一対のノズル構成体(一対のプッシュ・プル型ノズル)41、41が配置されている。ここで配置された一対のノズル構成体41、41については後で詳細に説明する。さらに、被処理基板21に形成された凹み部21aの上方には、ウエット処理液を散布するためのシャワーノズル11aが配置されていてもよい。
【0034】また、処理室1a内に設けられた搬送コロ25・・・のうちウエット処理室8の水平ウエット処理領域12に設けられたものは、処理基板21を部分的に水平に搬送できるように水平に配置されている。このように水平ウエット処理領域12で被処理基板21に形成された水平部分21bには、ウエット処理手段として一対のノズル構成体(一対のプッシュ・プル型ノズル)42、42が配置されている。ここで配置された一対のノズル構成体42、42は、これらノズルから被処理基板21に供給するウエット処理液が異なる以外は凹み状ウエット処理領域11で使用する一対のノズル構成体41、41と同様の構成のものが使用される。
【0035】また、処理室1a内に設けられた搬送コロ25・・・のうち乾燥室13に設けられたものは、処理基板21を部分的に水平に搬送できるように水平に配置されている。この乾燥室13内には、図2に示すように被処理基板21に高圧空気(乾燥用気体)を吹き付けるエアナイフ(乾燥機構)13aが乾燥室13内に搬送された被処理基板21に対して上方側と下方側にそれぞれ複数ずつ設けられている。・・(略)・・」
(ク)「【0038】図3は、凹状ウエット処理領域11内に備えられた一対のプッシュ・プル型ノズル41、41の概略構成を示す断面図であり、図4は一方のプッシュ・プル型ノズル41の被処理基板21側から見た図である。各プッシュ・プル型ノズル41は、一端にウエット処理液としての酸化膜剥離液50を導入するための導入通路(処理液導入部)51と、一端に酸化膜剥離後の酸化膜剥離液(ウエット処理後のウエット処理液の排出液)を処理室1aの外部(ウエット処理の系外)へ排出するための排出通路(処理液回収部)52と、これら導入通路51と排出通路52のそれぞれの他端が連結され、被処理基板21に対向する連結部53が設けられ、さらに導入通路51の他端に被処理基板21に向けて開口する第1の開口部(処理液導入口)51bが設けられ、排出通路52の他端に被処理基板21に向けて開口する第2の開口部(処理液回収口)52bが設けられたものであり、省流量型ノズルと呼ばれるものである。上記連結部53と被処理基板21の間の空間には、酸化膜剥離処理(ウエット処理)を行う処理領域55が形成されている。」
(ケ)「【0070】[第2の実施の形態]図10は、本発明の第2の実施形態のウエット処理装置の概略構成を示す断面図である。第2の実施形態のウエット処理装置2が第1の実施形態のウエット処理装置1と異なるところは、・・(略)・・と、隣合う凹み状ウエット処理領域11と22の間に処理液の相互汚染を防止するためのエアカーテン(処理液分離手段)90が設けられた点である。」

すると、特に、記載事項(キ)のプッシュ・プル型ノズルに着目し、刊行物2には、次の構成が開示されているものということができる。
「処理液導入部51と、ウエット処理後のウエット処理液の排出液をウエット処理の系外へ排出するための処理液回収部52と、これら導入通路51と排出通路52のそれぞれの他端が連結され、被処理基板21に対向する連結部53が設けられ、さらに導入通路51の他端に被処理基板21に向けて開口する処理液導入口51bが設けられ、排出通路52の他端に被処理基板21に向けて開口する処理液回収口52bが設けられたプッシュ・プル型ノズル。」(以下、「刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズル」という。)

3.本願発明と引用発明との対比
(1)両発明の対応関係
ア.引用発明の「薬液処理」は、本願発明の「所定の処理」に相当し、以下同様に「薬液」は「処理液」に、「基板Wを洗浄する」は「基板処理を施す」に、「基板Wに付着した薬液を吹き飛ばすエアナイフ」は「基板上の処理液をエアを吹き付けて液切りを行う液切り部」に、それぞれ相当する。
イ.引用発明の「基板Wを洗浄する薬液ノズル」と、本願発明の「基板処理を施すとともに処理後の処理液を基板から回収する液回収型ノズル部」とは、基板処理を施すノズル部である点で共通するものである。

(2)両発明の一致点
「搬送路に沿って略水平姿勢で搬送中の基板に所定の処理を施す基板処理装置であって、前記搬送中の基板に向けて処理液を供給して基板処理を施すノズル部と、前記ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側に基板上の処理液をエアを吹き付けて液切りを行う液切り部とが前記搬送路に沿って直列に配設されている基板処理装置。」

(3)両発明の相違点
本願発明は、ノズル部が「処理後の処理液を基板から回収する液回収型」のものであるのに対して、引用発明は、そのようなものでない点。
また、そのことに伴い、本願発明は、液切り部の配置が「液回収型ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側」と現されているのに対して、引用発明は、そのように表現されていない点。

4.本願発明の容易想到性の検討
(a)まず、刊行物2には、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルが、記載事項(カ)の「効率良くウエット処理ができる」という効果と共に記載されており、該「プッシュ・プル型ノズル」は、本願発明の「搬送中の基板に向けて処理液を供給して基板処理を施すとともに処理後の処理液を基板から回収する液回収型ノズル部」に相当する。
そして、該「効率良くウエット処理ができる」という効果は、引用発明においても望ましいことは自明であるので、引用発明の薬液ノズルに、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルを用いて、基板処理装置を構成することは当業者が容易に想到できたことである。
(b)また、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルは、記載事項(エ)の「洗浄液をガラス基板121の両面に吹き付けて、剥離室111内で基板表面に付着したDHF溶液(希フッ酸溶液)を洗い流す」を従来の技術とするものであって、該従来の技術は、図11の噴霧式の形態で図示されたノズル112aを用いたものである。
そして、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルは、図2に図11の噴霧式の形態で図示されたノズル112aと置換する形態で記載されたものであり、前記図11に図示されたノズル112aが、刊行物1の図1に図示されている薬液ノズルの形態と共通する噴霧式のものであることからも、刊行物2には、刊行物1の図1に図示されている様な噴霧式の薬液ノズルに置換して、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルを用いることが示唆されているといえる。
(c)さらに、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルは、記載事項(キ)の「エアナイフ13a」や(オ)の「ガスカーテンやエアナイフ等」の「処理液分離手段」と共に使用する態様で記載されたものであることからみても、引用発明のエアナイフと共に使用される薬液ノズルに、同じくエアナイフと共に使用される刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルを用いて、基板処理装置を構成することに特段の困難性が存在する様なものとは認められない。
(d)そうすると、引用発明の薬液ノズルに、刊行物2記載のプッシュ・プル型ノズルを用いること、および、そのようにすることにより引用発明において、液切り部の配置を「液回収型ノズル部の基板搬送路の直ぐ下流側」とすることにより、相違点に係る発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(e)そして、本願発明の作用効果は、引用発明、及び刊行物2に記載された事項から当業者であれば予測できた範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、及び刊行物2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-02 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-20 
出願番号 特願2004-196045(P2004-196045)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早房 長隆  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 中川 真一
松下 聡
発明の名称 基板処理装置  
代理人 櫻井 智  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小谷 悦司  

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