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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 H05B |
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管理番号 | 1223210 |
審判番号 | 無効2009-800063 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2009-03-25 |
確定日 | 2010-09-06 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3680942号発明「電磁誘導加熱を利用した加熱装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 1.本件特許第3680942号の請求項1乃至3に係る発明についての出願は、平成14年2月25日に出願され、平成17年5月27日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。 2.これに対して、平成21年3月25日に請求人ニチワ電機株式会社により、本件特許発明についての無効審判請求がなされた。 3.被請求人株式会社ペッパーフードサービス及びエイシン電機株式会社より、平成21年6月22日に審判事件答弁書及び訂正請求書が提出された。 4.請求人より平成21年8月19日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、被請求人より平成21年8月19日付けで口頭審理陳述要領書が提出され、平成21年8月19日に第1回口頭審理が実施された。 第2 訂正請求について 1.訂正請求の内容 平成21年6月22日付けの訂正請求は、本件特許第3680942号の明細書(以下、「特許明細書」という。)を、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明を目的として、訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は対比の便宜のために当審で付与したものである。 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の項の請求項1を、訂正前の 「被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部の近傍に、該受光部の油煙などによる汚れを防止するエアーノズルが配設され、かつ、該受光部に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設されていることを特徴とする、電磁誘導加熱を利用した加熱装置。」 から、 「被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部それ自体に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され、かつ、該受光部及びターゲットライトの近傍に、該受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されていることを特徴とする、電磁誘導加熱を利用した加熱装置。」 に訂正する。 (2)訂正事項b 特許明細書の段落【0007】を、訂正前の 「【課題を解決するための手段】 本発明は、上記した目的を達成するため、被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部の近傍に、該受光部の油煙などによる汚れを防止するエアーノズルが配設され、かつ、該受光部に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設されている電磁誘導加熱を利用した加熱装置とした。」 から、 「【課題を解決するための手段】 本発明は、上記した目的を達成するため、被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部それ自体に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され、かつ、該受光部及びターゲットライトの近傍に、該受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されている電磁誘導加熱を利用した加熱装置とした。」 に訂正する。 2.訂正の適否に対する判断 これらの訂正事項について検討する。 (1)訂正事項aについて 訂正事項aは、ターゲットライトが配設される位置を、「受光部」から、「受光部それ自体」であるとし(以下、「訂正事項a-1」という。)、エアーノズルが配設される位置を「受光部の近傍」から「受光部及びターゲットライトの近傍」とし(以下、「訂正事項a-2」という。)、エアーノズルにより「受光部の油煙などによる汚れを防止する」ものから「受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成する」もの(以下、「訂正事項a-3」という。)と訂正するものである。 訂正事項a-1は、ターゲットライトの配設される位置を、受光部から、受光部それ自体とする限定するものであり、特許請求の範囲を減縮を目的とする訂正に該当する。そして、ターゲットライトの配設される位置を受光部それ自体とする点は、特許明細書の段落【0019】に、「また、上記赤外線センサ6の受光部10には、該受光部10が向く方向を指し示すターゲットライト15が設けられている。」と記載されており、図1及び図2から、受光部10の側面にターゲットライト15が配設されている様子が見て取ることができるから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項a-2は、エアーノズルの配設される位置を、受光部近傍から受光部及びターゲットライトの近傍とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、エアーノズルの配設位置を受光部及びターゲットライトの近傍とする点は、特許明細書の段落【0018】に、「図2及び図3に図示したものは、受光部10を支持する上記アーム9に穿設された開口14を塞ぐ、所謂エアーカーテンKを形成するエアーノズル13が配設され」と記載されており、図2から、エアーノズルが受光部及びターゲットライトの近傍に配設されている様子が見て取ることができるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 訂正事項a-3は、エアーノズルにより、受光部の油煙などによる汚れを防止するというものから、受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するものとするものであり、受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成することは、受光部の油煙などによる汚れを防止するという目的を成すための具体的な手段を示したものであると認められるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、エアーノズルが受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成する点は、特許明細書の段落【0018】に、「図2及び図3に図示したものは、受光部10を支持する上記アーム9に穿設された開口14を塞ぐ、所謂エアーカーテンKを形成するエアーノズル13が配設され」と記載されており、図2から、エアーノズルが受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成する様子が見て取ることができるから、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bは、特許明細書の発明の詳細な説明の訂正前の記載を、訂正された特許請求の範囲に整合させるための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、また、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書に適合し、特許法134条の2第5項において準用する第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は、「特許第3680942号の明細書の請求項1乃至3に記載された発明についての特許を無効とする」との審決を求め、その理由として、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、本件の請求項2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、本件の請求項3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、 と、概ね、以上のように主張している。 そして、証拠方法として、以下の甲第1乃至甲第12号証が提出されている。 甲第1号証 特開平3-184295号公報 甲第2号証 特開平7-254484号公報 甲第3号証 実願平3-9270号(実開平5-73896号)のCD-ROM 甲第4号証 実願昭57-201224号(実開昭59-100225号)のマイクロフィルム 甲第5号証 実願昭54-113412号(実開昭56-31215号)のマイクロフィルム 甲第6号証 実願昭55-714号(実開昭56-104094号)のマイクロフィルム 甲第7号証 特開平6-117936号公報 甲第8号証 特開昭57-62326号公報 甲第9号証 特開昭53-62245号公報 甲第10号証 特開平8-167471号公報 甲第11号証 特開昭63-58024号公報 甲第12号証 平成17年4月4日付け提出の意見書写し 2.被請求人の主張 被請求人は、本件特許発明は、甲第1号証乃至甲第11号証のいずれにも開示されていない構成を備えており、かかる構成を有する電磁誘導加熱を利用した加熱装置とすることにより、十分に特許法第29条第2項に規定する進歩性の特許要件を具備するものである旨、主張している。 第4 無効理由についての検討 1.本件特許発明 訂正請求による訂正は認められたので、本件の請求項1乃至3に係る発明(以下、「本件特許発明1」等という。)は、訂正明細書(以下、「本件特許明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部それ自体に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され、かつ、該受光部及びターゲットライトの近傍に、該受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されていることを特徴とする、電磁誘導加熱を利用した加熱装置。 【請求項2】 上記制御手段が、上記温度センサによる検知温度が上記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に上記加熱コイルの出力を停止すると共に、被加熱体の加熱終了を知らせる音及び/又は光を発する制御を行うものであることを特徴とする、請求項1記載の電磁誘導加熱を利用した加熱装置。 【請求項3】 上記赤外線センサが、受光部と制御部とが分離され、その間を光ファイバによって接続したファイバ式の赤外線センサであり、前記受光部が上記被加熱体の上方に配設され、前記制御部が本体内部に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の電磁誘導加熱を利用した加熱装置。」 2.甲各号証の記載内容 (1)甲第1号証 甲第1号証の第1ページ右下欄第2?4行には、 「産業上の利用分野 本発明は磁束による渦電流で調理用鍋などの加熱を行う誘導加熱調理器に関するものである。」、 第2ページ右下欄第7行?17行には、 「以下、本発明の第一の手段の実施例について第1図を参照しながら説明する。1は内部に誘導加熱コイル4及び赤外線センサー5を有する誘導加熱調理器本体(以下単に本体と称する)である。本体1の上面は、例えば一部または全体が結晶化シリコン等の赤外線を透過する赤外線透過材で構成されている調理容器載置面3で覆われている。2は使用者によって調理容器載置面3上に載置される調理容器(以下鍋と称する)である。前記赤外線センサー5は鍋2の表面から発生する赤外線を調理容器載置面3を通して検知する。」、 第3ページ左上欄第2?7行には、 「この時、鍋2の底面からは温度に応じた赤外線が発せられる。この赤外線は赤外線透過材で構成されている調理容器載置面3を透過して赤外線センサー5に到達する。赤外線センサー5はこれを捕らえ温度に応じた信号を図示していない制御回路に出力する。」、 第3ページ右上欄第1?13行には、 「8は加熱または加熱停止の判断の基準となる基準設定部で、この設定は使用者が行う。 以上のように構成された加熱制御についてその動作を説明する。温度検知回路6は前記した第一の手段の実施例と同様、赤外線センサー5の出力信号から温度を検知し、この信号を加熱制御回路7に出力する。加熱制御回路7はこの信号を受けて使用者が設定した基準設定部8の温度と比較し、基準温度より低ければ誘導加熱コイル4に電力を供給して鍋2の加熱を継続させる。また鍋2の温度が上昇して基準温度より高くなれば、誘導加熱コイル4に供給する電力を停止する。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第1号証には、 「鍋を載置する調理容器載置面と、該調理容器載置面の下方部位に配設された高周波磁界を発生する誘導加熱コイルと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサーと、前記加熱または加熱停止の判断の基準となる基準設定部と、鍋の温度が上昇して基準温度より高くなれば、誘導加熱コイルに供給する電力を停止する加熱制御回路とを具備する磁束による渦電流で調理用鍋などの加熱を行う誘導加熱調理器であって、上記赤外線センサが、上記鍋から発せられる赤外線を捕らえ、温度に応じた信号を出力する赤外線センサーであって、上記赤外線センサーが誘導加熱調理器本体の内部に配設されている磁束による渦電流で調理用鍋などの加熱を行う誘導加熱調理器。」(以下、「甲第1号証に記載された発明」という。) 及び 「誘導加熱調理器において、加熱または加熱停止の判断の基準となる基準設定部と、鍋の温度が上昇して基準温度より高くなれば、誘導加熱コイルに供給する電力を停止する加熱制御回路」(以下、「甲第1号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (2)甲第2号証 甲第2号証の段落【0001】には、 「【産業上の利用分野】本発明は、電磁誘導現象を利用して各種の加熱調理を行う誘導加熱調理器に関し、特に、調理中の被調理物の加熱温度を検出する手段を備えた誘導加熱調理器に関する。」、 段落【0013】、【0014】には、 「【0013】調理対象となる被調理物4は、所定の材料製の容器3(一般的には鉄鍋)に収納されて載置板2上に載置され、通電コイル1に高周波の交番電流を通電することにより誘導加熱される。即ち、載置板2上の容器3は、前記通電に伴って通電コイル1の周辺に形成される交番磁界中に置かれた状態となり、内部を流れる渦電流の作用により発熱し、前記被調理物4は、容器3全体を加熱源として加熱調理される。なお、載置板2は、これの上部に載置された前記容器3からの伝熱に耐え、また交番磁界の作用を受けないように、セラミックス等の耐熱絶縁材料製としてある。 【0014】ハウジングHの前部(図の左側)には、運転スイッチ、出力調整つまみ、各種の表示部等が配設された操作盤6aをその上面に備える制御ハウジング6が連設してある。またハウジングHの後部(図の右側)には、センサハウジング7が立設され、該センサハウジング7の先端(上端)側内部には、後述の如き構成の温度検出部12が、載置板2上の容器3に対向せしめて配設されている。」、 段落【0020】には、 「【0020】次に、図4を参照して温度検出部13の構成を説明する。図示の如く温度検出部13は、赤外線センサ30と、該赤外線センサ30に赤外線を導く導管31とを備えている。(後略)」、 段落【0026】には、 「【0026】図6は、制御部10の動作内容を示すフローチャートである。このフローチャートに従う制御部10の動作は、被調理物4を収納した容器3を載置板2上に置き、例えば、前記操作盤6aに配された適宜の設定手段により、調理の種類、被調理物4の量等の調理内容を設定し、自動調理の実施を指令するスイッチをオン操作することにより開始され、まず、前記設定手段による設定内容に応じて加熱出力、調理時間等の運転条件を定め、この条件に従って誘導加熱部11に動作指令を発して、通電コイル1への通電により誘導加熱を開始させる(ステップ1)。」、 段落【0029】には、 「【0029】チョッパ37の切り替えにより赤外線センサ30は、前記容器3の表面から放射される赤外線を導管31を介して受光するようになり、制御部10は、温度検出部13の出力、即ち、赤外線センサ30の受光結果を用いて温度演算回路36により演算された温度検出値を所定のサンプリング周期にて取り込み(ステップ8)、この出力から容器3内部の被調理物4の加熱温度を認識し、この結果を、予め設定された所望の加熱温度と対照して、先に設定された加熱出力、調理時間等の運転条件を補正し(ステップ9)、この運転条件中に含まれる調理の終了条件が成立するか否かの判定を行い(ステップ10)、終了条件が満たされない場合にはステップ8に戻り、終了条件が満たされた場合には誘導加熱部11に停止指令を発し、通電コイル1への通電の遮断により誘導加熱を停止させる(ステップ11)。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第2号証には、 「容器を載置する載置板と、該載置板の下方部位に配設された高周波磁界を発生する通電コイルと、前記容器の温度を検知する温度検出部と、設定手段と、制御部とを具備する電磁誘導現象を利用した誘導加熱調理器であって、上記温度検出部が、上記容器から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサが、ハウジングの後部に立設されたセンサハウジングの先端(上端)側内部に配設されて、電磁誘導現象を利用した誘導加熱調理器。」(以下、「甲第2号証に記載された発明」という。) が記載されていると認められる。 (3)甲第3号証 甲第3号証の段落【0001】には、 「 【0001】 【産業上の利用分野】 本考案は例えばステーキ料理店やレストラン等の業務用として用いられる電磁皿加熱装置に関するものである。」、 段落【0007】-【0009】には、 「 【0007】 この加熱機構2は電磁誘導加熱方式が採用されており、この場合電源コード5を通った交流電源からの商用周波数電流を高周波インバータ6により高周波電流に変換して磁力発生コイル7に流し、これによりセラミック等の非磁性体からなるトッププレート8の表面に交番磁界が発生し、この交番磁界が磁性体からなる鋳鉄等の被加熱皿Wを通るとうず電流が生じ、被加熱皿Wの電気抵抗によりジュール熱、即ちうず電流損失を発生し、このジュール熱を熱源として被加熱皿W自体がヒーターになって被加熱皿Wを加熱する構造に構成されている。 【0008】 また皿移送機構3はこの場合器体1内に取付枠9を取り付け、取付枠9に取付ブラケット10を取付け、取付ブラケット10の下部に駆動軸11を前後方向に横設し、かつ取付ブラケット10の上部に従動軸12を前後方向に横設し、駆動軸11の前後端部に駆動スプロケット13・13を取付け、従動軸12の前後端部に従動スプロケット14・14を取付け、駆動スプロケット13・13と従動スプロケット14・14との間に無端チェーン15・15を掛回し、取付ブラケット10に駆動モータ16を取付け、駆動モータ16と駆動軸との間に歯車17・18を介在し、無端チェーン15・15に支持材19を取付け、支持材19・19間に六個の支持軸20を架設し、支持軸20の前端部を器体1に形成した長楕円形状の窓穴1aより突出し、この突出端部に被加熱皿W、この場合ステーキ皿を載置可能なトレー材21の筒部21aを遊動可能に挿通して構成したものである。 【0009】 また制御手段4はプログラマブルコントローラ及び被加熱皿Wの表面温度を検出する例えば赤外線方式の温度センサ22等からなる電気回路から構成され、この場合電源スイッチのON状態で運転開始押しボタンを押すと、トレー材21がトッププレート8上の定位置に無い場合には皿移送機構3の駆動モータ16が駆動して無端チェーン15・15が循環動作し、これによりトレー材21はトッププレート8上まで移送されて停止し、被加熱皿Wが設定温度以上になるとこれを温度センサ22が検出し、この加熱完了信号によって皿移送機構3を駆動し、そのトレー材21を次位置に移送して停止させるように構成したものである。」 と記載されており、 また、図1、図2及び図4を参酌すると、温度センサが被加熱皿の上方に配設されている様子が見て取れる。 よって、これらの記載及び上記認定事項によると、甲第3号証には、 「被加熱皿を載置するトレー材と、トッププレートの下方部位に配設された交番磁界を発生する磁力発生コイルと、前記被加熱皿の温度を検出する温度センサと、被加熱皿が設定温度以上になるとこれを温度センサが検出し、この加熱完了信号によって皿移送機構を駆動し、そのトレー材を次位置に移送して停止させるように構成した制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した電磁皿加熱装置であって、上記温度センサが、被加熱皿の表面温度を検出する赤外線方式の温度センサであって、該温度センサが、上記被加熱皿の上方に配設されている電磁誘導加熱を利用した電磁皿加熱装置。」(以下、「甲第3号証に記載された発明」という。) 及び 「電磁皿加熱装置において、温度センサが、被加熱皿の上方に配設されている」点(以下、「甲第3号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (4)甲第4号証 甲第4号証の第1ページ第14-17行には、 「〔考案の技術分野〕 本考案は、被調理物を加熱調理する高周波加熱調理装置に係り、特に、この高周波加熱調理装置における赤外線センサの保護装置に関する。」、 第2ページ第8行-第3ページ第1行には、 「 既に提案されているこの種の高周波加熱調理装置は、第1図に示されるように、箱形をなすケース本体1内にオーブン2及び機械室3を区分して形成するオーブン枠体4を設け、このオーブン枠体4の一側壁にマグネトロン5を付設し、他方、上記オーブン枠体4の天板4aに透孔6を穿設し、この透孔6の直上に位置する上記機械室3内に赤外線によるセンサユニット7を間隙8を存して設け、上記センサユニット7内に截頭円錐状の赤外線導入孔9を有する保持部材10を上記透孔6の直上に位置して設置し、この保持部材10の上部10aに赤外線センサ11を下向きにして設け、上記センサユニット7の近傍の機械室3に排気用ファン12を設置したものである。」、 第3ページ第10-18行には、 「他方、上記排気用ファン12が、オーブン2内で発生し、しかも、上記透孔6を通して機械室3へ流出する湯気やミスト(油滴も含む)を上記間隙8による流体流路から側方へ押し流し、これによって、上記ミスト等が上記センサユニット7の赤外線センサ11の検出面(感知面ともいう)に付着して、これを汚損しないようにし、理論上、検出機能を損わないようにしている。」、 第6ページ第5-6行には、 「さらに、上記センサユニット7の近傍には排気用ファン12が設置されており、」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第4号証には、 「センサユニットの近傍に、受光部の前方を横切るエアーカーテンを形成する排気用ファンが配設されている」点(以下、「甲第4号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (5)甲第5号証 甲第5号証の第1ページ第10-13行には、 「本考案は被調理物から放射される赤外線を検出しこの検出量に応じて加熱出力を制御する電子レンジに係り、その安全性を高めようとするものである。」、 第2ページ第14-16行には、 「5は被調理物Bから放射される赤外線を検出して温度検知を行うための赤外線検出器である。」、 第2ページ最終行-第3ページ第6行には、 「さらに6は位置ぎめ用スポツトライトで電球および凸レンズより成りある範囲のみを集中的に照すような照明範囲を有するものでオーブン上面に形成された前記透孔4に接近して設けられこのスポツトライトの被調理物Bに対する照明範囲Dを前記赤外線検出器5の赤外線検出範囲Aとほぼ一致するように取り付けられている。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第5号証には、 「赤外線検出器の近傍のオーブン上面に、赤外線検出器が向く方向を指し示すスポツトライトが配設されている」点(以下、「甲第5号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (6)甲第6号証 甲第6号証の第1ページ第17-19行には、 「本考案は、被調理物から放射する赤外線量に応じて高周波出力を制御する高周波加熱装置に係り、さらにその安全性を高めようとするものである。」、 第3ページ第11-14行には、 「そして被調理物16を載置する載置台17上で円形の検出範囲18を有する赤外線検出器19(以下、単に検出器と称す。)を透孔15に臨ませて設ける。」、 第3ページ第19行-第4ページ第1行には、 「そしてこのスポツトライト23の照明範囲24を前記載置台17の表面において検出範囲18とほぼ一致するように取付ける。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第6号証には、 「赤外線検出器の近傍の加熱室の天井板に、赤外線検出器が向く方向を指し示すスポツトライトが配設されている」点(以下、「甲第6号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (7)甲第7号証 甲第7号証の段落【0001】には、 「【0001】 【産業上の利用分野】この発明は放射温度計に関し、さらに詳しくは、赤外線を発生する赤外線発生体の計測位置に光像パターンとしてのレーザーマーカーを照射するためのレーザーマーカー発生部と、赤外線発生体の計測位置の温度を検知・表示する温度検知部とを備え、赤外線発生体から放射する赤外線を計測する放射温度計に関するものである。」、 段落【0016】には、 「【0016】図2において、放射温度計Rはドライヤー型で、ノズル5の上には補助ノズル6が設けられている。補助ノズル6には、患者の手首(赤外線発生体)7の計測位置Mに光像パターンとしてのレーザーマーカー8が照射されるレーザーマーカー発生部9が収納され、ノズル5には、赤外線発生体7の計測位置Mの温度を検知・表示する温度検知部10が収納されている。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第7号証には、 「温度検知部が収納されたノズルの上方近傍に、温度検知部が向く方向を指し示すレーザーマーカー発生部が配設されている」点(以下、「甲第7号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (8)甲第8号証 甲第8号証の第1ページ右下欄第12-15行には、 「本発明は電子レンジ等の高周波加熱装置において、被加熱物の加熱状態を検知する装置を備えたものに関し、特に被加熱物からの輻射線を検知する方法に関する。」、 第2ページ右上欄第11-18行には、 「さらに、この揺動板12には、反射鏡9に対応して投光器13が設けてあり、この投光器13より放射される可視光線は、輻射線検出器6の検出可能位置または領域を中心軸として同軸的に投光するように取付板7への取付角度を調節して設けられた反射鏡9により、揺動板12にも設けられた開口14を通り被加熱物5に投射される構成にしている。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第8号証には、 「輻射検出器の近傍に、輻射線検出器が取付けられている揺動板に、輻射線検出器の向く方向を指し示す投光器が配設されている」点(以下、「甲第8号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (9)甲第9号証 甲第9号証の第1ページ左下欄最終行-右下欄第2行には、 「本発明は食品から発する放射線を検出して、高周波発振を制御してなる高周波加熱装置に関するものである。」、 第2ページ右下欄2-6行には、 「第6図では、チヨッパー室10の中にあるランプ11から出た光は反射鏡16で反射され採光用窓13からの光りによって、オーブン1の底面又は皿受け台に投光し、放射線検出器1の感知範囲を示す。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第9号証には、 「放射線検出器の近傍に、放射線検出器が向く方向を指し示すランプが配設されている」点(以下、「甲第9号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (10)甲第10号証 甲第10号証の段落【0020】には、 「【0020】一回目の加熱調理が終了した時点で、表示部22aまたはブザー(図示せず)などの報知部22で調理終了を知らせると同時に通電を停止させる。この時点で使用者が完全に鍋を取り去ると、前述の小物負荷検出回路18が鍋を外されたことを検出し、この時点から負荷の有無検出動作に移行する。使用者が次の鍋を再度置いたとき、再度同じ加熱パターンで2回目の加熱調理を自動スタートすることができる。」、 と記載されており、これらの記載によると、甲第10号証には、 「加熱調理が終了した時に、通電を停止すると共に、表示部またはブザー等の報知部で調子終了を知らせる」点(以下、「甲第10号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 (11)甲第11号証 甲第11号証の第2ページ左下欄第12行-右下欄14行には 「第1図は本発明の実施例である電子レンジの概略構成図である。つまり同図に示す様に、被加熱体A、例えば食品等を載置する加熱室1の壁面には開口部2が設けられており、高周波発振器であるマグネトロン3によつて励振された導波管4を伝導したマイクロ波が加熱室1に供給される様になつている。 また、加熱室1の上部壁面には赤外線通過穴5が設けられている。この赤外線通過穴5には第2図に拡大図示する様な保持具6に保持された例えばアルミニウム等の金属から成る視野限定用ホーン7が設けられ、さらに、この視野限定用ホーン7には、赤外線用光フアイバー8の一端が接続されている。この視野限定用ホーン7の視野角は、被加熱体Aが加熱室1に載置された場合に、被加熱体Aがこの視野角を満たすように設定することが必要である。ここで、赤外線用光フアイバー8は、加熱室1の壁面と接触しないように、所定の間隔で離間した支持部材9により保持されている。 また一方、加熱室1外の下部には、例えばサーミスタから成る赤外線赤外線検出器10が設置され、前述の赤外線用光フアイバー8の他端とその受光面が結合している。」、 と記載されており、これらの記載と図面の第1図によると、甲第11号証には、 「視野限定用ホーンと赤外線検出器とが分離され、その間を赤外線用光ファイバーによって接続したものであり、視野限定用ホーンが被加熱体の上方に配設され、赤外線検出器が加熱室外の下部に配設されている」点(以下、「甲第11号証に記載された事項」という。) が記載されていると認められる。 3.請求項1について (1)対比 a 甲第2号証に記載された発明との対比 本件特許発明1と甲第2号証に記載の発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明の「容器」は本件特許発明1の「被加熱体」に相当し、以下同様に、「載置面」は「プレート」に、「通電コイル」は「加熱コイル」に、「温度検出部」は「温度センサ」に、「誘導加熱調理器」は「加熱装置」に、それぞれ、相当する。 そうしてみると、本件特許発明1と甲第2号証に記載された発明との、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサを備えた電磁誘導加熱を利用した加熱装置。」である点。 (a)相違点1-1 赤外線センサに関し、本件特許発明1では、「赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されている」のに対し、甲第2号証に記載された発明は、赤外線センサが、ハウジングの後部に立設されたセンサハウジングの先端(上端)側内部に配設されている点。 (b)相違点1-2 本件特許発明1は、「受光部それ自体に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ているのに対し、甲第2号証に記載されたの発明には、ターゲットライトは配設されていない点。 (c)相違点1-3 本件特許発明1は、「受光部及びターゲットライトの近傍に、受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されている」のに対し、甲第2号証に記載された発明には、エアーノズルは配設されていない点。 b 甲第1号証に記載された発明との対比 本件特許発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、甲第1号証に記載された発明の「鍋」は本件特許発明1の「被加熱体」に相当し、以下同様に「調理容器載置面」は「プレート」に、「誘導加熱コイル」は「加熱コイル」に、「赤外線センサー」は「温度センサ」に、「基準設定部」は「加熱温度設定手段」に、「加熱制御回路」は「制御手段」に、「誘導加熱調理器」は「電磁誘導加熱を利用した加熱装置」に、それぞれ、相当する。 そうしてみると、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明との、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサを備えた電磁誘導加熱を利用した加熱装置。」である点。 (a)相違点2-1 赤外線センサに関し、本件特許発明1では、「赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されている」のに対し、甲第1号証に記載された発明は、赤外線センサが誘導加熱調理器本体の内部に配設されている点。 (b)相違点2-2 本件特許発明1は、「受光部それ自体に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ているのに対し、甲第1号証に記載された発明には、ターゲットライトは配設されていない点。 (c)相違点2-3 本件特許発明1は、「受光部及びターゲットライトの近傍に、受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されている」のに対し、甲第1号証に記載された発明には、エアーノズルは配設されていない点。 c 甲第3号証に記載された発明との対比 本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明とを対比すると、甲第3号証に記載された発明の「被加熱皿」は本件特許発明1の「被加熱体」に相当し、以下同様に、「トッププレート」は「プレート」に、「交番磁界」は「高周波磁界」に、「磁力発生コイル」は「加熱コイル」に、「温度センサ」は「温度センサ」に、「電磁皿加熱装置」は「加熱装置」に、それぞれ、相当する。 そうしてみると、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明との、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、被加熱体の温度を検知する温度センサとを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外センサであって、該赤外線センサが上記被加熱体の上方に配設されている電磁誘導を利用した加熱装置。」 (a)相違点3-1 本件特許発明1は、被加熱体がプレートに載置されているのに対し、甲第3号証に記載された発明は、被加熱体がトッププレートではなくトレー材に載置されている点。 (b)相違点3-2 本件特許発明1は、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段を具備し、制御手段が、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段であるのに対し、甲第3号証に記載された発明は、加熱温度設定手段を備えておらず、制御手段は、被加熱皿が設定温度以上になるとこれを温度センサが検出し、この加熱完了信号によって皿移送機構を駆動し、そのトレー材を次位置に移送して停止させるように構成した制御手段である点。 (c)相違点3-3 温度センサに関して、本件発明は、赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されているのに対し、甲第3号証に記載された発明は、被加熱皿の上方に配設された赤外線センサであるものの受光部について及び作業者との関係については記載されていない点。 (d)相違点3-4 本件特許発明1は、「受光部それ自体に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ているのに対し、甲第3号証記載の発明には、そのようなものは配設されていない点。 (e)相違点3-5 本件特許発明1は、「受光部及びターゲットライトの近傍に、受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されている」のに対し、甲第3号証記載の発明には、そのようなものは配設されていない点。 (2)当審の判断 上記相違点について検討する。 a 甲第2号証に記載された発明との相違点について (a)相違点1-1について 甲第3号証に記載された事項の「温度センサ」、「被加熱皿」は、本件特許発明の「受光部」、「被加熱体」に相当する。そして、図1、図2、図4から、温度センサは、アームを介して配設されており、作業者の邪魔とならない被加熱体の上方位置にあるとも言えるものであるから、甲第3号証に記載された事項は、電磁皿加熱装置において、「赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない被加熱体の上方に配設されている」と言うことができるものである。そして、甲第2号証に記載の誘導加熱調理器と甲第3号証に記載の電磁皿加熱装置とは、同一の技術分野に属するものであるから、甲第2号証に記載の発明において、甲第3号証に記載の点を採用することにより本件特許発明1の相違点1-1に係る構成とすることは、当業者が容易に成し得るものである。 (b)相違点1-2について 甲第5号証に記載された事項の「赤外線検出器」、「位置ぎめ用スポットライト」は、本件特許発明1の「受光部」、「ターゲットライト」に相当し、第2図を参酌すると、位置ぎめ用スポットライトが赤外線検出器の近傍に配設されている様子が見て取れる。そうしてみると、甲第5号証に記載された事項は、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ていると言うことができるものの、受光部とターゲットライトとは別々に他の部材に設置されているものであるから、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。また、甲第6号証に記載された事項の「赤外線検出器」、「スポツトライト」は、本件特許発明1の「受光部」、「ターゲットライト」に相当し、第3図を参酌すると、スポットライトが赤外線検出器の近傍に配設されている様子が見て取れる。そうしてみると、甲第6号証に記載された事項は、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ていると言うことができるものの、受光部とターゲットライトとは別々に他の部材に設置されているものであるから、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。次に、甲第7号証について検討するに、甲第7号証に記載の事項の、「温度検知部」、「レーザーマーカー発生部」は、本件特許発明1の「受光部」、「ターゲットライト」に相当する。そうしてみると、甲第7号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、温度検知部はノズルに、レーザーマーカー発生部は補助ノズルに、それぞれ、別々に収納されているものであるから、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。さらに、甲第8号証について検討するに、甲第8号証に記載の事項の「輻射線検出器」、「投光器」は、本件特許発明1の「受光部」、「ターゲットライト」に相当する。そうしてみると、甲第8号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。さらに、甲第9号証について検討するに、甲第9号証に記載の事項の「赤外線検出器」、「ランプ」は、本件特許発明1の「受光部」、「ターゲットライト」に相当する。そうしてみると、甲第9号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。以上のとおり、甲第5号証乃至甲第9号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているものではない。 そして、「受光部それ自体」にターゲットライトを配設することと「受光部の近傍」にターゲットライトを配設することとの違いについて、本件特許発明は、赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない被加熱体の上方に配設されて、受光部それ自体に、ターゲットライトを配設してあることにより、「赤外線センサの受光部が何らかの外力により動いてしまった場合においても、該受光部それ自体に配設したターゲットライトも同様に動き、受光部が被加熱体の方向を向いているか否かをターゲットライトの光線の方向により容易に確認でき、赤外線センサの受光部を常に被加熱体の方向に正確に向けることができる」という作用効果(以下、「作用効果1」という。)及び「受光部の汚れをターゲットライトの光量の減少により判断することができ」るという作用効果(以下、「作用効果2」という。)を奏するものである。そして、作用効果1に関して、甲第5号証に記載された事項、甲第6号証に記載された事項及び甲第9号証に記載された事項は、受光部に相当するものとターゲットライトに相当するものがそれぞれ別々に設置されているものであるから、作用効果1を奏するものではない。また、甲第7号証に記載された事項と甲第8号証に記載されて事項とは、受光部に相当するものとターゲットライトに相当するものとを、一体的に動かす点においては、作用効果1と類似の作用効果を奏するものであるが、本件特許発明1は、受光部とターゲットライトとが常に一体となって固定しているものであり、外力により動いたとしても、常に一体に動くよう受光部自体にターゲットライトが配設されているので、作用効果1を奏するものである。それに対し、甲7、8号証はその前提が異なり、また前述したように、受光部それ自体に配設されているものではないから、何らかの外力により動いてしまう事を考慮する契機は生じることがなく、作用効果1を想到することもできない。また、作用効果2に関しても、甲第5号証及び甲第6号証には、受光部の近傍にターゲットライトが配設されていることが記載されているとは認められるものの、受光部は機械室に設けられ、ターゲットライトはオーブンに面して設けられたものが記載されており、設置される空間が異なるものであるから、汚れの進行が同程度であるかどうかは明らかでなく、また、汚れの進行の判断に関する事項を示唆する記載もない。また、甲第7号証については、放射温度計に関するもので、上記作用効果を示唆するものではない。甲第8号証に関しても、輻射線検出器と投光器は別の場所に設けられていると言えるものであって、汚れの進行が同程度であるかどうかは明らかでなく、また、汚れの進行の判断に関する事項を示唆する記載もない。さらに、甲第9号証については、放射線検出器とランプが同一室(チョッパー室)内にあるものの、配設された向きや他の部材(チョッパー、反射鏡)との配置の関係で汚れの進行が同程度であるかどうか明らかでなく、また、汚れの進行の判断に関する事項を示唆する記載もない。 そうしてみると、受光部それ自体にターゲットライトを配設する点は、単なる設計事項とは言えないものである。 (c)相違点1-3について 甲第4号証に記載された事項の「センサユニット」は、本件特許発明1の「受光部」に相当し、甲第4号証の「排気用ファンは」は、送風機構という点で、本件特許発明1の「エアーノズル」と一致する。そうしてみると、甲第4号証に記載の事項は、本件特許発明1の相違点3に係る構成と、「受光部の近傍に、受光部の前方を横切るエアーカーテンを形成する送風機構が配設されている」点で一致し、本件特許発明1の相違点3に係る構成は、エアーカーテンが受光部及びターゲットライトの前方を横切るのに対し、甲第4号証に記載の事項は、受光部を前方を横切る点、及び、送風機構に関し、本件特許発明の相違点3に係る発明は、エアーノズルであるのに対し、甲第4号証に記載の事項は、排気用ファンである点で相違する。 そして、送風機構をどのようなものとするかは当業者が適宜決定すべきものであり、送風機構として、エアーノズルは広く慣用されているものであって、エアーノズルを採用したことによって格段の作用効果を奏するものでもない。 しかしながら、受光部のみでなく、ターゲットライトの前方をも横切るようにエアーカーテンを形成することは、甲第4号証には記載されておらず、また、それを示唆する記載もない。また、他の証拠についても本件特許発明1の相違点1-3に係る構成は記載されておらず、また、それを示唆する記載もない。そして、本件特許発明は、上記構成によって、ターゲットライトの油煙などによる汚れが防止できるという作用効果を奏するものである。 b 甲第1号証に記載された発明との相違点について (a)相違点2-1について 上記「a(a)相違点1-1について」において検討したのと同様に、甲第1号証に記載の誘導加熱調理器と甲第3号証に記載の電磁皿加熱装置とは、同一の技術分野に属するものであるから、甲第2号証に記載の発明において、甲第3号証に記載の点を採用することにより本件特許発明1の相違点2-1に係る構成とすることは、当業者が容易に成し得るものである。 (b)相違点2-2について 上記「a(b)相違点1-2について」において検討したのと同様に、甲第5号証乃至甲第9号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているとは認められず、受光部それ自体にターゲットライトを配設することより、受光部の近傍にターゲットライトを配設することによっては得られない特有の作用効果1、2を奏するものである。 (c)相違点2-3について 上記「a(c)相違点1-3について」において検討したのと同様に、受光部のみでなく、ターゲットライトの前方をも横切るようにエアーカーテンを形成することは、甲第4号証には記載されておらず、また、それを示唆する記載もない。そして、本件特許発明1は、上記構成によって、ターゲットライトの油煙などによる汚れが防止できるという作用効果を奏するものである。 c 甲第3号証に記載された発明との相違点について (a)相違点3-1について 甲第3号証に記載された発明は、被加熱体がトレー材に載置されており、トレー材は皿移送機構によって循環移送可能なものであって、複数個の被加熱体を効率的に加熱することができるものであるから、被加熱体がトレー材に載置されることは必須の構成要件であるとも考えられる。しかしながら、被加熱体をプレートに載置し、加熱を行うことも、甲第1号証、甲第2号証にもみられるように通常行われていることであって、甲第3号証に記載された発明において、被加熱体をプレートに載置することは、前記作用効果が損なわれるものの、適用が困難というものでもない。 (b)相違点3-2について 甲第1号証に記載された事項において、甲第1号証に記載された事項の「鍋」は本件特許発明1の「被加熱体」に相当し、以下同様に、「誘導加熱コイル」は「加熱コイル」に、「赤外線センサー」は「温度センサ」に、「基準設定部」は「加熱温度設定手段」に、「加熱制御回路」は「制御手段」に、「誘導加熱調理器」は「電磁誘導加熱を利用した加熱装置」に、それぞれ、相当する。そうしてみると、甲第1号証には、「被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、温度センサによる検知温度が加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に加熱コイルの出力を停止する制御手段」と読み替えることができる。そして、甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された事項とは、同一の技術分野に属するものであり、甲第3号証に記載された発明に甲第1号証に記載された事項を採用することに困難性はない。 (c)相違点3-3について 甲第3号証に記載された発明における温度センサが受光部を備えていることは自明であって、また、温度センサが、アームを介して配設されている様子も図1乃至図3から見て取ることができる。また、作業者の邪魔とならない被加熱体の上方に配設されているとも言えるものであるから、相違点3-3は実質的な相違点ではない。 (d)相違点3-4について 上記「a(b)相違点1-2について」において検討したのと同様に、甲第5号証乃至甲第9号証には、「受光部の近傍に、受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され」ている点が記載されていると言うことができるものの、受光部それ自体にターゲットライトが配設されているとは認められず、受光部それ自体にターゲットライトを配設することより、受光部の近傍にターゲットライトを配設することによっては得られない特有の作用効果1、2を奏するものである。 (e)相違点3-5について 上記「a(c)相違点1-3について」において検討したのと同様に、受光部のみでなく、ターゲットライトの前方をも横切るようにエアーカーテンを形成することは、甲第4号証には記載されておらず、また、それを示唆する記載もない。そして、本件特許発明1は、上記構成によって、ターゲットライトの油煙などによる汚れが防止できるという作用効果を奏するものである。 4.請求項2、請求項3について 請求項2は請求項1を引用し、請求項3は請求項1又は2を引用しているものである。 ここで、3.において言及したとおり、本件特許発明1は、相違点1-2、相違点1-3あるいは相違点2-1、相違点2-2、あるいは、相違点3-4、相違点3-5の構成により甲第1乃至甲第11号証に記載された発明あるいは事項から容易に想到し得るとすることはできないとしたものであるので、請求項1における特定事項をすべて含み、さらに、別の特定事項を備える本件特許発明2及び本件特許発明3も同様に上記相違点の構成により甲第1乃至甲第11号証に記載された発明あるいは事項から容易に想到し得るとすることはできない 第5 むすび 以上のとおりであり、請求人が、審判請求書に記載した理由、及び添付した甲第1ないし11号証によっては、本件特許発明1乃至本件特許発明3を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 電磁誘導加熱を利用した加熱装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部それ自体に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され、かつ、該受光部及びターゲットライトの近傍に、該受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されていることを特徴とする、電磁誘導加熱を利用した加熱装置。 【請求項2】上記制御手段が、上記温度センサによる検知温度が上記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に上記加熱コイルの出力を停止すると共に、被加熱体の加熱終了を知らせる音及び/又は光を発する制御を行うものであることを特徴とする、請求項1記載の電磁誘導加熱を利用した加熱装置。 【請求項3】上記赤外線センサが、受光部と制御部とが分離され、その間を光ファイバによって接続したファイバ式の赤外線センサであり、前記受光部が上記被加熱体の上方に配設され、前記制御部が本体内部に配設されていることを特徴とする、請求項1又は2記載の電磁誘導加熱を利用した加熱装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、電磁誘導加熱を利用した加熱装置に関し、特に、底面に環状リブを有する鉄皿を、適温まで精度良く加熱するのに好適に用いることのできる電磁誘導加熱を利用した加熱装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 本件出願人らは、「ビーフペッパーライス」(登録商標)なるオリジナル商品を開発し、飲食店のフランチャイズ・チェーンの展開を図っている。 この「ビーフペッパーライス」は、適温に加熱した保温性に優れた鉄皿に、ライスとスライスした生の牛肉などを載せて提供し、客自らが、コショウとオリジナルのバター及びソースを生の牛肉などに混ぜて好みの焼き加減に焼き、ライスと共に食する料理である。 【0003】 この料理において重要となる事柄は、生の牛肉などを載せて提供する鉄皿を、最適温度に加熱することである。 即ち、生肉を焼く場合においては、250℃を越える高温で一気に表面を焼かなければ、肉のうま味が出てしまい、味の悪いものとなる。一方、鉄皿が300℃を越える高温であると、鉄皿上に載せた種々の素材が焦げてしまい、好ましくない。 そこで、鉄皿の加熱温度は、290?300℃が適温とされている。 【0004】 現在、上記鉄皿の加熱は、業務用電磁調理器を用いて加熱時間を制御することによって行っている。 即ち、鉄皿を電磁調理器のプレート上に載せ、該プレートの下方部位に配設された加熱コイルに通電して高周波磁界を発生させ、鉄皿内部に渦電流を生じさせて鉄皿を自己発熱させることにより加熱することを、タイマーによってセットされた所定時間(具体的には、1分10秒程度)行うことにより、鉄皿を適温まで加熱することが成されている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上述した電磁調理器を用いた時間制御による鉄皿の加熱方式では、鉄皿の初期温度の相違によって、加熱後の鉄皿の温度が大きく相違することが生じていた。 即ち、例えば冬場と夏場では、鉄皿の初期温度に30℃程度の開きがある。また、地域、天候の相違によっても鉄皿の初期温度は少なからず相違する。更に、鉄皿を食器洗い乾燥器を使用して洗った場合、その直後の鉄皿は60℃を越える高温となっている。これらの初期温度の相違する鉄皿を、電磁調理器を用いて同一時間電磁誘導加熱を行った場合、加熱後の鉄皿の温度は当然に相違したものとなり、適温に加熱された鉄皿を得ることができない場合が生じていた。 このことは、客に品質的に均一の料理を提供できないことに繋がり、どの店で食しても、同一のおいしさを提供できることを重視するフランチャイズ・チェーンの展開を図る上で、大きな課題となっていた。 【0006】 本発明は、上述した従来技術が有する課題に鑑み成されたものであって、その目的は、最適温度に加熱することが非常に重要となる被加熱体を、初期温度の相違に係わらず、最適温度にまで精度良く且つ効率的に加熱することができる加熱装置を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記した目的を達成するため、被加熱体を載置するプレートと、該プレートの下方部位に配設された高周波磁界を発生する加熱コイルと、前記被加熱体の温度を検知する温度センサと、前記被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に前記加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備する電磁誘導加熱を利用した加熱装置であって、上記温度センサが、上記被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサであって、該赤外線センサの受光部が、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設されていると共に、該受光部それ自体に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトが配設され、かつ、該受光部及びターゲットライトの近傍に、該受光部及びターゲットライトの前方を横切るエアーカーテンを形成するエアーノズルが配設されている電磁誘導加熱を利用した加熱装置とした。 【0008】 上記した本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置によれば、被加熱体の温度を検知する温度センサと、被加熱体の加熱温度を設定する加熱温度設定手段と、前記温度センサによる検知温度が前記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に加熱コイルの出力を停止する制御手段とを具備しているため、被加熱体を、初期温度の相違に係わらず加熱温度設定手段により設定した温度にまで精度良く且つ効率的に加熱することができる。 また、本発明においては、上記温度センサを、被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサとし、該赤外線センサの受光部を、アームを介して作業者の邪魔とならない上記被加熱体の上方に配設している。 これは、被加熱体を載置するプレート下面に、熱電対、サーミスタ等の接触式の温度センサを配設した場合には、被加熱体の温度をプレートを介して間接的に検知することとなり、被加熱体の正確な温度計測が困難であり、ましてや被加熱体が底面に環状リブを有するものである場合、或いは被加熱体の昇温速度が速い場合には、被加熱体の実際の温度を計測することは更に困難となる。また、プレート上面に接触式の温度センサを配設、或いはプレート上面から突出する状態で接触式の温度センサを配設した場合には、被加熱体のプレート上への上げ下げの際に邪魔となると共に、温度センサを損傷させる憂いが高いために好ましくない。更に、接触式の温度センサを人手にて直接被加熱体に接触させ、その温度を検知する構成とすると、被加熱体に温度センサを接触させる作業、或いは被加熱体への温度センサの接触を確認する作業などが必須となり、やはり作業性の点から好ましくない。そこで、温度センサを、被加熱体から放出される赤外線を受光し、該受光した赤外線から被加熱体の温度を検知する赤外線センサとし、該赤外線センサの受光部を、アームを介して作業者の邪魔とならない被加熱体の上方に配設することにより、被加熱体の温度を非接触の状態で正確に計測できると共に、被加熱体のプレート上への上げ下げの際に温度センサが邪魔となることはなく、また温度センサに損傷を与える憂いもない。 また、本発明においては、上記赤外線センサの受光部近傍に、該受光部の油煙などによる汚れを防止するエアーノズルを配設している。 これは、赤外線センサは、被加熱体から放出される赤外線を受光し、その温度を検知するものであるため、受光部の汚れは赤外線の受光を妨げ、正確な温度計測を不可能とするため、赤外線センサの受光部近傍にエアーノズルを配設し、該エアーノズルからのエアーの吹き付けによって受光部の汚れを防止する構造とすることは、長期に渡って正確な温度計測を実現できる。 更に、本発明においては、上記赤外線センサの受光部に、該受光部が向く方向を指し示すターゲットライトを配設している。 これは、赤外線センサが受光する赤外線は、目に見えない光であるため、赤外線センサの受光部が真に被加熱体から放出される赤外線を受光しているか否か、言い換えれば、赤外線センサの受光部が被加熱体方向を正確に向いているか否かを確認できるターゲットライトを配設することは、赤外線センサの受光部を常に被加熱体方向に向けることができ、やはり正確な温度計測を実現できる。 【0009】 ここで、上記本発明において、上記制御手段を、上記温度センサによる検知温度が上記加熱温度設定手段による加熱温度に達した時に上記加熱コイルの出力を停止すると共に、被加熱体の加熱終了を知らせる音及び/又は光を発する制御を行うものとすることは好ましい。 これは、オペレーターが他の作業を行っていても、被加熱体の加熱終了を音又は光により知ることができ、最適温度に加熱された被加熱体を冷ますことなく次工程に移すことができるために好ましい。 【0013】 更に、上記赤外線センサとして、受光部と制御部とが分離され、その間を光ファイバによって接続したファイバ式の赤外線センサとし、前記受光部のみを上記被加熱体の上方に配設すると共に、前記制御部を本体内部に配設する構成とすることは好ましい。 これは、被加熱体の上方には受光部のみを配設するため、その設置スペースの確保が容易であると共に、熱、汚れ、衝撃などを嫌う制御部、即ち受光した赤外線エネルギを電気エネルギに変換し、その電気エネルギを温度に換算する赤外線センサの中枢部分を本体内部に配設するため、長期に渡って使用し得る信頼性の高い装置を提供できるために好ましい。 【0014】 【発明の実施の形態】 以下、上記した本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。 【0015】 図1は、本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の実施の形態を概念的に示した断面図であり、この加熱装置1は、本体2の上面に結晶ガラス板、或いはセラミックス板などにより構成されたプレート3を備えている。このプレート3の下方部位には、例えば40KHz程度の高周波磁界を発生する加熱コイル4が配設され、この加熱コイル4の出力は、本体2の底部に設けられた制御手段5により制御されている。 【0016】 上記制御手段5には、オペレーターによるスタートキー(図示せず)の操作によって、上記加熱コイル4に高周波電流を供給するインバータ回路(図示せず)を制御して加熱を実行するためのプログラムが記憶されていると共に、プレート3上に載置された被加熱体Aの温度を検知する温度センサ6による検知温度Taの情報、及び本体2の前面に設けられた加熱温度設定手段7により設定された加熱温度Tbの情報が伝達され、これらの情報に基づいて、前記温度センサ6による検知温度Taが、前記加熱温度設定手段7による加熱温度Tbに達した時に、上記加熱コイル4の出力を停止すると共に、加熱終了を知らせるブザー8に所定時間電力を供給する制御を行うように構成されている。 【0017】 上記温度センサ6は、被加熱体Aの温度を精度良く且つオペレータの邪魔となることなく検知するため、本体2に立設された、例えば1m程度の高さのアーム9に受光部10が配設され、本体2内に制御部11が配設され、前記受光部10と制御部11との間を光ファイバ12によって接続した、所謂ファイバ式の赤外線センサが使用され、この赤外線センサ6によって、被加熱体Aの温度を上方から非接触の状態で検知する。 【0018】 上記赤外線センサ6の受光部10の近傍には、図2及び図3に示したように、該受光部10の油煙などによる汚れを防止するエアーノズル13が配設されている。このエアーノズル13は、受光部10に向けて直接エアーを吹き付け、該受光部10への汚れの付着を防止する構造のものとしても良いが、図2及び図3に図示したものは、受光部10を支持する上記アーム9に穿設された開口14を塞ぐ、所謂エアーカーテンKを形成するエアーノズル13が配設され、アーム9内に油煙などが進入すること自体を阻止する構造となっている。 【0019】 また、上記赤外線センサ6の受光部10には、該受光部10が向く方向を指し示すターゲットライト15が設けられている。このターゲットライト15は、指向性の強い可視光線Pを照射し、図1に示したように、赤外線センサ6の受光部10が、被加熱体Aの方向を正確に向いているか否かを常に確認できる構成となっている。 【0020】 次に、上記した本発明に係る加熱装置1の動作について、図4に基づいて説明する。 図4は、上記制御手段5が有している制御プログラムであり、ステップ21で、オペレーターによるスタートキーの操作を検知し、加熱が開始されたことを認識する。 【0021】 制御手段5は、スタートキーの操作を検知すればステップ22へ移り、インバータ回路を制御して加熱コイル4に規定出力の投入を開始する。これにより、加熱コイル4は高周波磁界を発生し、プレート3上に載置された被加熱体Aに渦電流を生じさせ、被加熱体Aを自己発熱により加熱する。 【0022】 そして、制御手段5はステップ23に移り、温度センサ6による検知温度Taの情報を認識する。次いでステップ24で、この検知温度Taと、予めオペレーターが加熱温度設定手段7により設定した加熱温度(例えば、300℃)Tbとを比較する。 【0023】 この結果、検知温度Taが加熱温度Tbに達していない、即ち「NO」と判断した場合には、再びステップ23へ戻り、温度センサ6による被加熱体Aの温度計測を継続させる。 一方、検知温度Taが加熱温度Tbに達している、即ち「YES」と判断した場合には、「加熱停止」の出力ステップ25となり、インバータ回路を制御して加熱コイル4の出力を停止する。そして更に、ステップ26に移り、加熱終了を知らせるブザー8に所定時間電力を供給し、その後、終了(エンド)のステップ27へ移行する。 【0024】 このように、本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置1は、被加熱体Aの温度を検知する温度センサ6と、被加熱体Aの加熱温度を設定する加熱温度設定手段7と、前記温度センサ6による検知温度Taが前記加熱温度設定手段7による加熱温度Tbに達した時に加熱コイル4の出力を停止する制御手段5とを具備しているため、被加熱体Aを、初期温度の相違に係わらず、加熱温度設定手段7により設定した最適温度(例えば、300℃)にまで精度良く且つ効率的に加熱することができる。 【0025】 図5は、上記した本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の実機の一例を示した斜視図であり、この実機は、2連の加熱装置1、1を備えている。なお、上記と同一部材については、同一符号を付した。また、上記において説明されていない符号16は、電源のON,OFF、電力切替えなどを行う操作パネル、17は排気孔板、18は加熱温度設定手段7及び加熱温度、検知温度の表示パネルである。 【0026】 図6に、上記図5に示した実機により、加熱温度設定手段7により加熱温度を300℃に設定し、重さ約3.5kgの鉄皿を加熱した場合の温度センサ6による温度測定結果のグラフを示す。 このグラフより、温度センサ6は、リアルタイムで被加熱体Aである鉄皿の温度を計測し、加熱温度設定手段7により設定された300℃まで、精度良く且つ効率的に鉄皿を加熱していることが分かる。 【0027】 以上、本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の実施の形態につき説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想、即ち、初期温度の相違に係わらず、被加熱体を最適温度まで精度良く且つ効率的に加熱するため、加熱過程にある被加熱体の温度をセンサによって検知し、その検知温度が加熱温度設定手段により設定された加熱温度に達した時に、被加熱体の加熱を停止する制御を行う電磁誘導加熱を利用した加熱装置とすると言う技術的思想の範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。 また、従来公知の電磁調理器において実用化されている小物検知機能、空焚き防止機能、また温度過昇防止機能等を本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置に付加することも、当然可能である。 【0028】 【発明の効果】 以上、説明した本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置によれば、最適温度に加熱することが非常に重要となる被加熱体を、初期温度の相違に係わらず、最適温度にまで精度良く且つ効率的に加熱することができる効果がある。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の一実施の形態を概念的に示した断面図である。 【図2】本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の温度センサ設置部分の一例を示した断面図である。 【図3】図2に示したエアーノズルにより形成されるエアーカーテンの状態を示した斜視図である。 【図4】本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の制御内容の一例を示したフローチャートである。 【図5】本発明に係る電磁誘導加熱を利用した加熱装置の実機の一例を示した斜視図である。 【図6】図5に示した実機による鉄皿の加熱状態を示したグラフである。 【符号の説明】 1 加熱装置 2 本体 3 プレート 4 加熱コイル 5 制御手段 6 温度センサ(赤外線センサ) 7 加熱温度設定手段 8 ブザー 9 アーム 10 温度センサ(赤外線センサ)の受光部 11 温度センサ(赤外線センサ)の制御部 12 光ファイバ 13 エアーノズル 14 開口 15 ターゲットライト A 被加熱体(鉄皿) Ta 温度センサによる検知温度 Tb 加熱温度設定手段による加熱温度 K エアーカーテン P 可視光線 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2009-09-09 |
結審通知日 | 2009-09-11 |
審決日 | 2009-09-29 |
出願番号 | 特願2002-48144(P2002-48144) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(H05B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 結城 健太郎 |
特許庁審判長 |
小椋 正幸 |
特許庁審判官 |
尾家 英樹 野村 亨 |
登録日 | 2005-05-27 |
登録番号 | 特許第3680942号(P3680942) |
発明の名称 | 電磁誘導加熱を利用した加熱装置 |
代理人 | 岩根 正敏 |
代理人 | 清原 義博 |
代理人 | 岩根 正敏 |
代理人 | 岩根 正敏 |