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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200625545 | 審決 | 特許 |
不服20051624 | 審決 | 特許 |
不服200721854 | 審決 | 特許 |
不服200627219 | 審決 | 特許 |
不服200510192 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07D |
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管理番号 | 1223270 |
審判番号 | 不服2006-15598 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-20 |
確定日 | 2010-09-07 |
事件の表示 | 特願2001-121188「甲状腺受容体リガンド」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月19日出願公開、特開2002- 53564〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件発明 本願は、平成13年4月19日(優先権主張2000年4月21日、米国)の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年3月28日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1により特定される以下のとおりのものである。 「一般式(I)の化合物 もしくは、その立体異性体、又は、当該化合物もしくは立体異性体の薬学的に許容することのできる塩[ここで、 Wは、酸素、硫黄、-SO-、-S(O)_(2)、-CH_(2)-、-CF_(2)-、-CHF-、-C(O)-、-CH(OH)-、-NR^(a)、または-C(=CH_(2))-であり; R^(1)、R^(2)、R^(3)、およびR^(6)は、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、-(C_(1)-C_(8))アルキル、-CF_(3)、-OCF_(3)、-O(C_(1)-C_(8))アルキル、または-CNであり; R^(4 ) は、水素、群Vから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(12))アルキル、-(C_(2)-C_(12))アルケニル、-(C_(2)-C_(12))アルキニル、ハロゲン、-CN、-OR^(b)、-SR^(c)、-S(O)R^(c)、-S(O)_(2)R^(c)、アリール、ヘテロアリール、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-S(O)_(2)NR^(c)R^(d)、-C(O)NR^(c)R^(d)、-C(O)OR^(c)、-NR^(a)C(O)R^(d)、-NR^(a)C(O)NR^(c)R^(d)、-NR^(a)S(O)_(2)R^(d)、もしくは-C(O)R^(c)であるか; または R^(3 )およびR^(4 )は、それらが結合している炭素原子と共に結合して一般式-(CH_(2))_(i)-の炭素環式環、もしくは一般式-(CH_(2))_(k)-Q-(CH_(2))_(l)-の複素環式環を形成し{ここで、Qは、酸素、硫黄、または-NR^(e)-であり;iは、3、4、5または6であり;kは、0、1、2、3、4、または5であり;そしてlは、0、1、2、3、4または5である};ここで、当該炭素環式環および当該複素環式環は、-(C_(1)-C_(4))アルキル、-OR^(b)、オキソ、-CN、フェニルまたは-NR^(a)R^(g)から独立に選ばれる0個から4個の置換基でそれぞれ置換され; R^(5 )は、ヒドロキシ、-O(C_(1)-C_(6))アルキル、-OC(O)R^(f)、フッ素、または-C(O)OR^(c) であるか;または R^(4) 及びR^(5) は、それらが結合している炭素原子と共に結合して-CR^(c)=CR^(a)-NH-、-N=CR^(a)-NH、-CR^(c)=CR^(a)-O-、?CR^(c)=CR^(a)-S-、-CR^(c)=N-NH-、および-CR^(a)=CR^(a)-CR^(a)=N-から成る群から選ばれる複素環式環を形成し; 各例のR^(a )は、独立に、水素または、0個から1個の-(C_(3)-C_(6))シクロアルキルもしくはメトキシで置換された-(C_(1)-C_(6))アルキルであり; 各例のR^(b )は、独立に、水素、群Vから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(12))アルキル、アリール、ヘテロアリール、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-C(O)NR^(c)R^(d)、または-C(O)R^(f )であり; 各例のR^(c )およびR^(d )は、それぞれ独立に、水素、群VIから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(12))アルキル、-(C_(2)-C_(12))アルケニル、-(C_(2)-C_(12))アルキニル、アリール、ヘテロアリール、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルであり; 但し、R^(4 )が、部分-SR^(c)、-S(O)R^(c)、または-S(O)_(2)R^(c )である場合、R^(c) は水素以外であり;または R^(c )およびR^(d )は、それらが結合している原子と共に結合して酸素、-NR^(e )-、もしくは硫黄から選ばれる第二のヘテロ基を任意に有しても良い3-10員の複素環式環を形成し;ここで、当該複素環式環は、-(C_(1)-C_(4))アルキル、-OR^(b)、オキソ、-CN、フェニル、もしくは-NR^(a)R^(g )から独立に選ばれる0個から4個の置換基で置換され; 各例のR^(e) は、水素、-CN、群Vから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(10))アルキル、-(C_(2)-C_(10))アルケニル、-(C_(2)-C_(10))アルコキシ、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、-C(O)R^(f)、-C(O)OR^(f)、-C(O)NR^(a)R^(f)、または-S(O)_(2)R^(f )であり; 各例のR^(f )は、独立に、群VIから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(10))アルキル、-(C_(2)-C_(10))アルケニル、-(C_(2)-C_(10))アルキニル、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクロアルキルであり; 各例のR^(g )は、独立に、水素、-(C_(1)-C_(6))アルキル、-(C_(2)-C_(6))アルケニル、アリール、-C(O)R^(f)、-C(O)OR^(f)、-C(O)NR^(a)R^(f)、-S(O)_(2)R^(f)、または-(C_(3)-C_(8))シクロアルキルであり; 群Vは、水素、-CF_(3)、-OCF_(3)、-OH、オキソ、-(C_(1)-C_(6))アルコキシ、-CN、アリール、ヘテロアリール、-(C_(3)-C_(10))シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-SR^(f)、-S(O)R^(f)、-S(O)_(2)R^(f)、-S(O)_(2)NR^(a)R^(f)、-NR^(a)R^(g)、または-C(O)NR^(a)R^(f )であり; 群VIは、ハロゲン、ヒドロキシ、オキソ、-(C_(1)-C_(6))アルコキシ、アリール、ヘテロアリール、-(C_(3)-C_(8))シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、-CN、または-OCF_(3 )であり; 但し、R^(4 )が、群Vから独立に選ばれる0個から3個の置換基で置換された-(C_(1)-C_(12))アルキル{ここで、当該群V置換基は、オキソである}である場合、当該オキソ基は、-(C_(1)-C_(12))アルキル内でC_(1 )炭素原子以外の炭素原子上で置換され; 各例のアリールは、独立に、ハロゲン、-(C_(1)-C_(6))アルキル、-CN、-SR^(f)、-S(O)R^(f)、-S(O)_(2)R^(f)、-(C_(3)-C_(6))シクロアルキル、-S(O)_(2)NR^(a)R^(f)、-NR^(a)R^(g)、-C(O)NR^(a)R^(f)、-OR^(b)、-ペルフルオロ-(C_(1)-C_(4))アルキル、または-COOR^(f )から独立に選ばれる0個から4個の置換基で置換されたフェニルまたはナフチルであり; 但し、アリール上の当該置換基が、-SR^(f)、-S(O)R^(f)、-S(O)_(2)R^(f)、-S(O)_(2)NR^(a)R^(f)、-NR^(a)R^(g)、-C(O)NR^(a)R^(f)、-OR^(b)、または-COOR^(f )である場合、当該置換基R^(b)、R^(f)、およびR^(g )は、アリールまたはヘテロアリール以外であり; 各例のヘテロアリールは、独立に、O、N、またはSから選ばれる1個から3個のヘテロ原子を有する5-、6-、7-、8-、または9-員の単環式または二環式環であり; ここで、当該二環式環において、単環式ヘテロアリール環は、ベンゼン環または他のヘテロアリール環に縮合しており、そしてハロゲン、-(C_(1)-C_(4))アルキル、-CF_(3)、-OR^(b)、-NR^(a)R^(g)、または-COOR^(f )から独立に選ばれる0個から3個の置換基を有し; 但し、ヘテロアリール上の当該置換基が、-NR^(a)R^(g)、-OR^(b)、または-COOR^(f)である場合、当該置換基R^(b)、R^(f)、およびR^(g )は、アリールまたはヘテロアリール以外であり; 各例のヘテロシクロアルキルは、独立に、酸素、-NR^(e)、または硫黄から選ばれる1個から3個のヘテロ原子を有する5-、6-、7-、8-、または9-員の単環式または二環式シクロアルキル環であり、そして-(C_(1)-C_(4))アルキル、-OR^(b)、オキソ、-CN、フェニル、または-NR^(a)R^(g )から独立に選ばれる0個から4個の置換基を有し; そして Xは、 である]。」 2.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用した Chem. Pharm. Bull. 47(9), p1348-1350,(1999年)(以下、「引用例1」という。)には、次の事項を内容とすることが記載されている。 (1) 候補甲状腺ホルモン様薬として、チアゾリジンジオン誘導体を設計し、合成したこと及びそれらの中で、5-[4-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)オキシ-3,5-ジヨードベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン(6b)及びその3-イソプロピル誘導体(7b)が強力な甲状腺ホルモン受容体α1(TRα1)活性作用を示したこと。(1348頁左欄、表題、著者の下の項) (なお、(6b)の化合物名は5-[2-[4-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)オキシ-3,5-ジヨードフェニル]エチル]-2,4-チアゾリジンジオンと記載されているが、Fig.1の構造式及びChart1の反応式をみると、チアゾリジンジオン基とフェニル基はメチレン基を介して結合しており、かつそこに矛盾はないので、両基がエチレン基を介して結合していることを意味するこの化合物名は誤記であると認められ、摘示事項では化合物名を訂正して記載した。) (2) 甲状腺ホルモンのほとんどの生物学的作用は特異的な甲状腺ホルモン受容体(TR)によって媒介され、TRは、レチノイド受容体(レチノイン酸受容体、RAR及びレチノイドXの受容体、RXRs)、ビタミンD_(3) 受容体及びペルオキシソームの増殖薬活性化受容体(PPAR)と同様に核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド誘導可能な転写調節因子であること及びTRのリガンド結合領域は、RARの結合領域と高い相同性を有し、両方の核受容体のリガンドの必須の構造的な因子は末端に極性のカルボキシル基をもつことであること。(1348頁左欄、本文10?22行) (3) 抗糖尿病活性をもつチアゾリジンジオン誘導体がPPARγのリガンドであること、PPARγが15-デオキシ-Δ^(12,14)-プロスタグランジンJ2(内因性のリガンド候補)及び非ステロイド抗炎症剤のような末端のカルボキシル基をもつ化合物と結合することができるなどの、核内受容体PPARの様々なリガンドの構造の考察から、カルボキシル基の代わりにチアゾリジンジオン部分を有する新しいレチノイド受容体リガンドを設計し合成したこと及びレチノイド様のチアゾリジンジオン誘導体の活性は著しいが、レチノイドのカルボキシル基を、生物学的等価体と一般に見なされているアミノスルホニル、アミジノ及びテトラゾールを含む官能基への置換は、レチノイド活性を減少させたこと。(1348頁左欄末行?右欄第1段落)) (4) RARとPPARのような他の核受容体用のリガンドの構造と活性との関係が類似していることから、チアゾリジンジオン部分をもつ新規な甲状腺ホルモン受容体作働薬を設計し合成した。(1349頁右欄9?13行) 同じく、引用した国際公開第00/12491号パンフレット(2000年3月9日国際公開)(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。 (5) 本発明は、カルボン酸誘導体、それらの製造方法、およびそれらを有効成分として含有するペルオキシソーム増殖薬活性化受容体制御剤に関する。 さらに詳しくは、一般式(I) (式中、すべての記号は後記と同じ意味を表わす。)で示される化合物、それらの非毒性塩およびそれらの水和物、それらの製造方法およびそれらを有効成分として含有するペルオキシソーム増殖薬活性化受容体制御剤に関する。(明細書1頁6?7行、技術分野の項) (6) 一般式(I)中、R^(5) によって表わされるカルボン酸と等価であるヘテロ環としては、例えば、以下の構造 で示される1H-テトラゾール-5-イル基、チアゾリジン-2,4-ジオン-5-イル基、オキサゾリジン-2,4-ジオン-5-イル基、イソオキサゾリジン-3,5-ジオン-4-イル基、1,2,4-オキサジアゾリジン-3,5-ジオン-2-イル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。(11頁6?13行) 同じく、引用した C. G. WERMUTH et al., 長瀬博 監訳、「最新 創薬化学上巻」、第1版、株式会社テクノミック、平成10年8月15日発行、248?253頁(以下、「引用例3」という。)には、次の事項が記載されている。 (7) カルボキシル基の代替基と題して、活性化合物中のカルボキシル基は、ヒドロキサム酸、……またはテトラゾールやヒドロキシイソキサゾールなどの平面性の酸性ヘテロ環や、非平面性の硫黄またはリンを含む酸性基への変換が検討されていること。(248頁、下から12?8行) (8) あまり研究されていないが、他の興味深いヘテロ環代替基として、3,5-ジオキソ-1,2,4-オキサジアゾリジンがあること。(250頁、下から12?10行) 3.引用発明 引用例1には、5-[4-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)オキシ-3,5-ジヨードベンジル]-2,4-チアゾリジンジオン(上記 (1))(以下、「引用化合物」という。)が、強力な甲状腺ホルモン受容体α1(TRα1)活性作用を示したことが開示されているから、引用例1には、引用化合物に関する発明が、産業上利用可能な発明として記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。 4.対比・判断 本願発明と引用発明を対比する。 引用化合物における置換基のヨウ素及びt-ブチルは、それぞれハロゲン、C_(4)アルキル基に相当することは明らかであるから、引用化合物は、本願発明の一般式(I)において、Wが酸素、R^(1)、R^(2)、R^(3) 及びR^(6) がそれぞれ独立に水素、ハロゲン、-(C_(1)-C_(8))アルキルであり、R^(4)が水素であり、R^(5) がヒドロキシである化合物に相当する。 そうすると、両者は、一般式(I)におけるWが酸素、R^(1)、R^(2)、R^(3) 及びR^(6) がそれぞれ独立に水素、ヨウ素、t-ブチルであり、R^(5) がヒドロキシである化合物である点で一致し、Xが、前者は であるのに対して、後者は2,4-チアゾリジンジオン-5-メチル基(以下、チアゾリジンジオン基という)である点で相違する。 そこで、この相違点について検討する。 引用例1には、チアゾリジンジオン基をもつ新規な甲状腺ホルモン受容体作働薬を設計し合成した考察課程が次のように記載されている。 (a) 甲状腺ホルモン受容体(TR)は、レチノイド受容体(レチノイン酸受容体、RARおよびレチノイドXの受容体、RXRs)、ビタミンD_(3) 受容体及びペルオキシソームの増殖薬活性化受容体(PPAR)と同様に核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド誘導可能な転写調節因子であること(上記 (2)) (b) TRのリガンド結合領域は、RARの結合領域と高い相同性を有し、両方の核受容体のリガンドの必須の構造的な因子は末端に極性のカルボキシル基を持っていること(上記 (2)) (c) PPARγのリガンドが抗糖尿病活性をもつチアゾリジンジオン誘導体、15-デオキシ-Δ^(12,14)-プロスタグランジンJ2及び非ステロイド抗炎症剤のような末端のカルボキシル基をもつ化合物であることから、カルボキシル基の代わりにチアゾリジンジオン基を有する新しいレチノイド受容体リガンドを設計し合成したこと(上記 (3)) (d) RARとPPARのような他の核受容体用のリガンドの構造と活性との関係が類似していることから、チアゾリジンジオン基をもつ新規な甲状腺ホルモン受容体作働薬を設計し合成したこと(上記 (4)) つまり、引用例1には、甲状腺ホルモン受容体は核内受容体スーパーファミリーに属するリガンド誘導可能な転写調節因子であることから、その作働薬は、甲状腺ホルモン受容体のリガンドであること及び上記の核内受容体のリガンドの構造と活性の共通性から、カルボキシル基をチアゾリジンジオン基に代えた甲状腺ホルモン受容体作働薬(=リガンド)を設計したことが記載されているものと認められる。 ところで、引用例3は、創薬化学の分野において、生理活性分子を設計する際の生物学的等価体を検討した内容を記載した書籍であるが、その中では、カルボキシル基の等価体として、チアジアゾリジンジオン基、テトラゾールやヒドロキシイソキサゾールなどの酸性ヘテロ環(上記 (7))や1,2,4-オキサジアゾリジン(上記 (8))が記載されている。 また、引用例2には、ペルオキシソーム増殖薬活性化受容体(=PPAR)制御剤である一般式(I)で表わされるカルボン酸誘導体(上記 (5))が記載され、その置換基R^(5) がカルボン酸と等価であるチアゾリジンジオン、テトラゾールや1,2,4-オキサジアゾリジン-3,5-ジオン-2-イル基を表わす場合(上記 (6))が記載されている。そして、このPPAR制御剤は、カルボン酸誘導体であるから、引用例1のPPARのリガンドの記載(上記 (4))からみて、PPARリガンドであって、R^(5) はPPARとの特異的な結合部分であることは当然に予想できるものである。 そうすると、引用例1では、甲状腺受容体のリガンドを設計するに当たって、RAR、RXR、ビタミンD_(3) 受容体及びPPAR及びそれらのリガンドとの関係を検討しているのであるから、甲状腺受容体リガンドの合成を検討する場合は、同じ核内受容体リガンドである引用例2に記載のPPARリガンドの生物学的等価体など化学構造を検討することは通常のことと認められる。つまり、引用化合物において、カルボキシル基の生物学的等価体であるチアゾリジンジオン基に代えて、引用例2にチアゾリジンジオン基及びテトラゾール基と並列的に記載されているPPARにおけるカルボキシル基等価体であるオキサジアゾリジン基を適用することは当業者が容易に想到しうることである。 そして、本願明細書には、該化合物を製造したことは記載されているが、TRリガンドについての薬理試験方法が記載されているだけで、その試験結果は全く記載されていないから、本願発明が、引用化合物のチアゾリジンジオン基をオキサジアゾリジンジオン基に代えたことにより格別顕著な効果を奏したものとは認められない。 なお、請求人は、 ア、カルボキシル基の代替基(生物学的等価体)はターゲット毎に異なり、引用例2及び3にはTR活性を示唆する記載がないから、オキサジアゾリジンジオン基を一般的なカルボキシ代替基とは認識できない、 イ、引用例1には、RARリガンドでチアゾリジンジオン基のみが高い活性が保持され、一般的代替基では活性が失われているから、TRリガンドではチアゾリジンジオン基以外は代替性に障害がある と主張しているが、以下の理由でこの主張は採用できない。 ア、について 引用例1には、TRリガンドを設計するに当たって他の核内受容体のリガンドの構造及び活性を検討したことが記載されているから、本願発明が特に顕著なTR活性を示すならともかく、TRリガンドを設計又は合成するために、たとえTR活性に関する言及がされていなくとも、他の核内受容体、例えばPPARのリガンドまでを検討することは当業者では当然のことである。 イ、について 引用例1には、RARリガンドでは、チアゾリジンジオン基が高い活性を保持し、他の生物学的等価体、アミノスルホニル、アミジノ、テトラゾールでは活性が減少したことが記載され、この結果を受けて、チアゾリジンジオン基をもつTRリガンドを設計、合成したこと(上記 (3))が記載されている。しかし、この記載は、RARリガンドでの高い活性を示すものを適用したことを示すにとどまり、他の等価体が適用できないとの記載及び他の等価体とのTR活性の比較の記載がない以上、この記載だけで他の等価体が適用できないとする記載とは認められない。 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先日前に頒布されたことが明らかな引用例1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-31 |
結審通知日 | 2010-04-05 |
審決日 | 2010-04-16 |
出願番号 | 特願2001-121188(P2001-121188) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C07D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 早乙女 智美、荒木 英則、田名部 拓也 |
特許庁審判長 |
内田 淳子 |
特許庁審判官 |
上條 のぶよ 穴吹 智子 |
発明の名称 | 甲状腺受容体リガンド |
代理人 | 室伏 良信 |