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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41F
管理番号 1223325
審判番号 不服2007-24443  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-06 
確定日 2010-09-10 
事件の表示 特願2003- 10633「グラビア印刷機およびセラミック電子部品の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日出願公開、特開2004-223729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成15年1月20日に出願したものであって、平成19年7月12日付けで手続補正され、平成19年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月6日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月14日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成22年1月22日付けで平成19年9月14日付け手続補正を補正却下するとともに拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年4月16日付けで意見書及び手続補正書を提出した。

第2.本願請求項の記載
平成22年4月16日付け手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおりである。
「シート上に導電性ペーストをグラビア印刷によって付与するためのグラビア印刷機であって、
前記導電性ペーストが付与される画線部をその周面上に所定の幅方向寸法をもって形成しているグラビアロールと、
前記グラビアロールに対して、前記シートを挟んで対向する圧胴と、
前記グラビアロールの周面上の余分な前記導電性ペーストを掻き取るためのドクターブレードと、
前記ドクターブレードより上流側の位置において、前記グラビアロールの周面に向かって前記導電性ペーストをディスペンサにより幅方向に揺動しながら垂れ落とすか噴射するようにして供給するためのペースト供給部と、
前記グラビアロールの周面上の、前記ペースト供給部の下流側かつ前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され、前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出するセンサと
を備え、
前記ペースト供給部と前記ドクターブレードとは、前記グラビアロールの周面に沿って、前記グラビアロールの半周以上の距離を隔てて配置され、
前記センサの検出結果によって前記ペースト供給部からの導電性ペーストの供給量を制御するように構成されている、グラビア印刷機。」

第3.記載不備について
1.拒絶理由通知の内容等
平成22年1月22日付け拒絶理由通知書には、以下の記載がある。
「請求項1には、「前記グラビアロールの周面上の、前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され、前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出するセンサ」、「前記センサの検出結果によって前記ペースト供給部からの導電性ペーストの供給量を制御する」と記載されているが、この記載では導電性ペーストが垂れているかどうかをどの位置で検出し、それをどのように判断し、どのように導電性ペーストの供給量を制御しているのか不明である。
発明の詳細な説明の項においても、導電性ペーストが垂れているかどうかをどの位置で検出し、それをどのように判断し、どのように導電性ペーストの供給量を制御しているのか不明である。」

2.記載不備についての判断
上記第2に記載の通り、本願請求項1には「前記グラビアロールの周面上の、前記ペースト供給部の下流側かつ前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され、前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出するセンサ」、「前記センサの検出結果によって前記ペースト供給部からの導電性ペーストの供給量を制御する」と記載されているが、この記載ではドクターブレードの近傍に溜まる導電性ペーストが上流側へ導電性ペーストが垂れているかどうかをペースト供給部の下流側かつドクターブレードの上流側のどの位置で検出し、それをどのように判断し、どのように導電性ペーストの供給量を制御しているのか依然として不明である。
ドクターブレードの上流側のセンサ及び導電性ペーストの制御に関し、発明の詳細な説明の項には、以下の記載がある。

a.【0036】
また、グラビアロール24の周面上の、ドクターブレード31の上流側の導電性ペースト30の量を検出するため、図1に示すように、たとえばイメージセンサ等によって構成されるセンサ36が設けられる。このセンサ36の検出結果を示す検出信号37は、ディスペンサ33にフィードバックされ、それによって、ディスペンサ33から導出される導電性ペースト30の量が調整され、ペースト供給部32からの導電性ペースト30の供給量が常に適正となるように制御される。
b.【0037】
図1および図2に示すように、グラビアロール24の周面に沿って、ペースト供給部32とドクターブレード31とがグラビアロール24の半周以上の距離を隔てて配置されている。センサ36は、上記のように配置されるペースト供給部32の下流側かつドクターブレード31の上流側の所定の位置に配置され、ドクターブレード31の近傍に溜まる導電性ペースト30が上流側へ垂れているかどうか、すなわち、所定の位置での導電性ペースト30の有無を検出している。
c.【0039】
上述したセンサ36によって、ペースト供給部32からの導電性ペースト30の供給量を制御することは、グラビア印刷されるべき導電性ペースト膜1のパターンの違いによる導電性ペースト30の消費量の違いにも対応させることができる。
d.【0043】
特に、前述したように、センサ36によってドクターブレード31の上流側に留まる導電性ペースト30の量を検出し、この検出結果によってペースト供給部32からの導電性ペースト30の供給量を制御するようにすれば、グラビアロール24には、常に必要最低限の導電性ペースト30が供給されていることになるため、上述した効果を一層確実に達成することができる。

上記bによると「ドクターブレードの近傍に溜まる導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうか」とは、「所定の位置での導電性ペーストの有無」と解することができるが、そのように解してもなお、導電性ペーストをペースト供給部の下流側かつドクターブレードの上流側のどの位置で検出しているのか記載されておらず、検出結果をどのように判断しているのかも記載されておらず、具体的にどのような制御が行われているのかも明らかでない。
上記aには、「導電性ペースト30の供給量が常に適正となるように」と記載されているが、どのような状態を適正としているのか明らかでなく、「所定の位置での導電性ペーストの有無」を検出したとしても、導電性ペーストが有る場合にどのように導電性ペーストの供給量を制御(導電性ペーストの供給量を維持、減少或いは停止するのかそれ以外の制御を行うのか)し、導電性ペーストが無い場合にどのように導電性ペーストの供給量を制御(導電性ペーストの供給量を維持、或いは増加するのかそれ以外の制御を行うのか)しているのかも記載されていない。

したがって、請求項1の記載は、発明の詳細な説明を参酌しても不明確であり、発明の詳細な説明の項の記載は、当業者が容易に実施し得る程度に、発明の目的、構成及び効果が記載されているものとは認められない。

以上より、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

第4.進歩性について
1.本願発明
上記第3で検討したように、本願請求項1の記載は不明確ではあるが、平成22年4月16日付け意見書で請求人は以下のように主張している。(下線は審決で付した。以下同じ。)
「補正後の請求項1において、『センサ』に関して、『前記グラビアロールの周面上の、前記ペースト供給部の下流側かつ前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され、前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出するセンサ』と規定されています。
ここで、『センサ』が、『前記グラビアロールの周面上の、前記ペースト供給部の下流側かつ前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され』るものであって、『前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出する』ものであることから、ドクターブレードから垂れる導電性ペーストを検出し得る位置にセンサが位置していることがまず読み取れます。すなわち、ドクターブレードから(重力に従って)垂れる導電性ペーストを検出し得る位置にセンサが位置している以上、グラビアロールの周面が上向きに移動する経路(図1および図2において、グラビアロール24の左半分の周面によって与えられる経路)上で、ドクターブレードより下にセンサが配置されることがわかります。
よって、センサの位置は、補正後の請求項1の記載で明確に規定されているものと考えます。
また、センサによる検出結果からの導電性ペーストの供給量の制御は、当業者にとって常識的な設計事項であり、それをあえて記載しなくても、当業者であれば容易に実施し得るものと考えます。現に、本件の前置報告書では、『しかしながら、グラビアロール表面に供給された塗料の量を検知するセンサを設けて、当該センサの検知結果に基づいて、塗料の供給量を制御することが、例えば引用文献4もしくは5等にあるように、当該分野において通常に採用される常套手法である…』とご指摘され、上記の請求人の考えが支持されております。」

上記記載、上記第3の2のa?dの記載、及び、所定の幅寸法をもってグラビアロールに形成されている画線部全領域の凹部に導電性ペーストを充填し得るように前記幅寸法全てに導電性ペーストを十分供給しなくてはならないことは、構造上自明の事項であるから、本願請求項1に係る発明の「ドクターブレードの上流側の所定の位置」は、ドクターブレードより上流側でドクターブレードより下方の位置であることを含み、本願請求項1に係る発明の制御は、グラビアロールの画線部全領域の凹部に導電性ペーストを充填し得るように前記幅寸法全てに導電性ペーストを十分供給するような制御を含んでいるものとして以下検討する。(そのように解釈したものを以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物
a.平成22年1月22日付けの拒絶理由に引用された刊行物である特開平3-108307号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ア.「次に、得られた長尺状のセラミックグリーンシート12の一方主面に、第1図に示す印刷装置を用いて導電ペーストを印刷する。第1図において、13は供給ロールを示し、長尺状のセラミックグリーンシート12が巻回されている。セラミックグリーンシート12は、供給ロール13を図示の矢印方向に回転させることによりガイドローラ14を経て剛体ロール15及びバックアップ・ロール16の間に送り込まれる。
剛体ロール15は、例えば金属のような剛体材料よりなり、第5図に示すように、円筒(柱)状に形成されている。剛体ロール15の外周面には、複数個の凹部15aが所定の間隔を隔てて形成されている。この凹部15aは導電ペーストの印刷形状に合致した平面形状を有するように形成されており、グラビア版を構成するために設けられているものである。第5図では、剛体ロール15の周方向に適宜の間隔を隔てて配置された複数個の凹部15aが剛体ロール15の軸方向に3列配置されている。
第1図に戻り、剛体ロール15は、その外周面の一部が槽17内に貯留された導電ペースト18に浸漬されるように位置決めされている。また、剛体ロール15は図示の矢印方向に回転駆動され、それによって外周面に付着された導電ペースト18がバックアップ・ロール16側に運ばれる。凹部15a以外の外周面に付着した導電ペーストを除去するために、かき取りブレード19が剛体ロール15の外周面に当接されている。
第1図に示すようにセラミックグリーンシート12は、剛体ロール15とバックアップ・ロール16との間を通過される。この際、バックアップ・ロール16が剛体ロール15に対し所定の圧力で圧接され、セラミックグリーンシート12の下面に、剛体ロール15により導電ペーストがグラビア印刷される。しかる後、セラミックグリーンシート12は、ガイドロール20を経てヒータ21で乾燥され、巻き取りリール22に巻き取られる。」(第3頁右上欄第10行?右下欄第13行)
イ.第1図から、剛体ロール15の上方には、バックアップ・ロール16が配置されていること、かき取りブレード19が剛体ロール15の外周面に当接している位置は、槽17より剛体ロール15の回転方向下流側でかつ剛体ロール15の回転中心軸を通る水平面よりやや上方の位置であることが看取できる。

上記記載及び図面を含む刊行物1全体の記載から、刊行物1には、以下の発明が開示されていると認められる。
「長尺状のセラミックグリーンシート12の一方主面に導電ペーストを印刷する印刷装置であって、
セラミックグリーンシート12は、剛体ロール15及びその上方に配置されたバックアップ・ロール16の間に送り込まれ、バックアップ・ロール16が剛体ロール15に対し所定の圧力で圧接され、セラミックグリーンシート12の下面に、剛体ロール15により導電ペーストがグラビア印刷され、
剛体ロール15の外周面には、グラビア版を構成するための複数個の凹部15aが所定の間隔を隔てて形成されており、
剛体ロール15は、その外周面の一部が槽17内に貯留された導電ペースト18に浸漬されるように位置決めされており、
凹部15a以外の外周面に付着した導電ペーストを除去するために、かき取りブレード19が剛体ロール15の外周面に当接されており、
その当接位置は、槽17より剛体ロール15の回転方向下流側でかつ剛体ロール15の回転中心軸を通る水平面よりやや上方の位置である印刷装置」(以下、「引用発明」という。)

b.平成22年1月22日付けの拒絶の理由に引用された刊行物である特公平6-20035号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
ウ.「第8図及び第9図は本発明の製造方法の他の実施例である。これらの図において、40A,40Bは円筒状(又はロール状)凹版を持つドラムであり、・・・各ドラム40A,40Bの上方には導体ペースト3を供給するディスペンサー44が配置され」(第3頁第5欄第33?49行)

c.平成22年1月22日付けの拒絶の理由に引用された刊行物である特開平3-288570号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の記載が図示とともにある。
エ.「また、掻取部34により掻取られた余剰塗料39を検知してノズル26からの塗料21の吐出量を知覚するセンサ35が設けられ、該センサ35による検知情報はコントローラ部23に入力される。
コントローラ部23は、前記センサ35により入力された検知情報に基づいて電磁弁25を制御し、密封容器22へのエア24の送出量をコントロールすることにより、ノズル26からの塗料21の吐出量を調整できるようになっている。」(第3頁右下欄第8?17行)
オ.第1図から、センサ35は、掻取部34の上流側で掻取部34により下方の位置であることが看取できる。

3.対比
本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「長尺状のセラミックグリーンシート12」、「導電ペースト」、「印刷装置」、「『外周面には、グラビア版を構成するための複数個の凹部15aが所定の間隔を隔てて形成されて』いる『剛体ロール15』」、「バックアップ・ロール16」及び「かき取りブレード19」は、それぞれ本願発明の「シート」、「導電性ペースト」、「グラビア印刷機」、「グラビアロール」、「圧胴」及び「ドクターブレード」に相当する。
引用発明の印刷装置(グラビア印刷機)は、「長尺状のセラミックグリーンシート12の一方主面に導電ペーストを印刷する」ものであるから、シート上に導電性ペーストをグラビア印刷によって付与するためのものといえる。
引用発明の剛体ロール15(グラビアロール)により「導電ペーストがグラビア印刷され」るから、引用発明の剛体ロール15(グラビアロール)に導電性ペーストが付与される画線部をその周面上に所定の幅方向寸法をもって形成していることは明らかである。
引用発明の「セラミックグリーンシート12」は「剛体ロール15及びその上方に配置されたバックアップ・ロール16の間に送り込まれ」るから、引用発明のグラビア印刷機は、グラビアロールに対して、シートを挟んで対向する圧胴を有するものといえる。
引用発明の「かき取りブレード19」は、「凹部15a以外の外周面に付着した導電ペーストを除去するため」のものであるから、グラビアロールの周面上の余分な導電性ペーストを掻き取るためのものといえる。
引用発明の「槽17」と本願発明の「ペースト供給部」とは、グラビアロールの周面に導電性ペーストを供給するためのペースト供給部である点で共通している。
よって、本願発明と引用発明とは、
「シート上に導電性ペーストをグラビア印刷によって付与するためのグラビア印刷機であって、
前記導電性ペーストが付与される画線部をその周面上に所定の幅方向寸法をもって形成しているグラビアロールと、
前記グラビアロールに対して、前記シートを挟んで対向する圧胴と、
前記グラビアロールの周面上の余分な前記導電性ペーストを掻き取るためのドクターブレードと、
前記グラビアロールの周面に前記導電性ペーストを供給するためのペースト供給部とを備えている、グラビア印刷機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]ペースト供給部に関し、本願発明は、「前記ドクターブレードより上流側の位置において、前記グラビアロールの周面に向かって前記導電性ペーストをディスペンサにより幅方向に揺動しながら垂れ落とすか噴射するようにして供給するためのペースト供給部」及び「前記ペースト供給部と前記ドクターブレードとは、前記グラビアロールの周面に沿って、前記グラビアロールの半周以上の距離を隔てて配置され」と特定されているのに対し、引用発明は、剛体ロール15(グラビアロール)の周面に導電ペースト18(導電性ペースト)を槽17により供給するものの、ディスペンサにより幅方向に揺動しながら垂れ落とすか噴射するようにして供給するものではなく、ペースト供給部の位置は、本願発明のような位置ではない点。
[相違点2]本願発明は、「前記グラビアロールの周面上の、前記ペースト供給部の下流側かつ前記ドクターブレードの上流側の所定の位置に配置され、前記ドクターブレードの近傍に溜まる前記導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうかを検出するセンサ」を備え、「前記センサの検出結果によって前記ペースト供給部からの導電性ペーストの供給量を制御するように構成されている」と特定されているのに対し、引用発明は、センサ及び制御については明示されていない点。

4.判断
上記相違点1について検討する。
ディスペンサを凹版を持つドラム(グラビアロール)の上方に配置し、ディスペンサにより導体ペースト(導電性ペースト)を凹版を持つドラム(グラビアロール)に供給することは、刊行物2に記載されており、また、ディスペンサを幅方向に揺動しながら滴下することは、周知技術(特開昭62-202736号公報、実願平1-83927号(実開平3-29373号)のマイクロフィルム)である。
引用発明は、槽17により導電性ペーストを供給しているが、導電性ペーストの供給手段として刊行物2記載のディスペンサを採用し、その際、剛体ロール15(グラビアロール)全体に供給できるように周知技術を採用して、グラビアロールの周面に向かって導電性ペーストをディスペンサにより幅方向に揺動しながら垂れ落とすか噴射するようにして供給するためのペースト供給部とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。
ペースト供給部の位置について更に検討する。
ペースト供給部の位置をどこにするかは設計事項に過ぎないものである。 即ち、刊行物2記載のディスペンサは、導電性ペーストを上方から滴下するべく凹版を持つドラム(グラビアロール)の上方に配置するものであり、ディスペンサは、ドクターブレードより上流側の位置に配置すべきことは自明のことである。一方、引用発明のかき取りブレード19(ドクターブレード)は、剛体ロール15(グラビアロール)の回転中心軸を通る水平面よりやや上方の位置に当接しているから、刊行物2に記載の事項を引用発明に適用して、剛体ロール15(グラビアロール)の上方にディスペンサを配置するには、かき取りブレード19(ドクターブレード)直近の上流側に余裕の空間が無く、ディスペンサを配置し難い。そうであれば、かき取りブレード19(ドクターブレード)の上流側であって、剛体ロール15(グラビアロール)の上方にディスペンサを配置し得る余裕の空間がある剛体ロール15(グラビアロール)の周面に沿って、前記剛体ロール15(グラビアロール)の半周以上の距離を隔てた位置(刊行物1の第1図の剛体ロール15の右上方位置)にディスペンサを配置しようとすることは、当業者が容易になし得る程度のことである。
よって、本願発明の上記相違点1のような構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

上記相違点2について検討する。
掻取部34(本願発明の「ドクターブレード」と「掻き取り機能を有する部材」で共通する。)の上流側でかつ下方(ドクターブレードの上流側の所定の位置)に余剰塗料39(本願発明の「ドクターブレードの近傍に溜まる導電性ペースト」と「掻き取り機能を有する部材で掻き取られたペースト」で共通する。)を検知するセンサ35(センサ)を配置し、塗料21(本願発明の「導電性ペースト」と「ペースト」で共通する。)の吐出量を制御することが刊行物3に記載されている。
引用発明も本願発明と同様に、所定の幅寸法をもってグラビアロールに形成されている画線部全領域の凹部に導電性ペーストを充填し得るように前記幅寸法全てに導電性ペーストを十分供給しなくてはならないことは構造上明らかであるから、相違点1で検討したようにペースト供給部としてディスペンサを採用する際に、本願発明と同様に導電性ペーストを十分供給するような制御をすることは当然のことである。そして、制御の際、掻き取り機能を有する部材の上流側でかつ下方に配置したセンサの検知情報を利用してペーストの量を制御することが刊行物3に記載されているから、引用発明に刊行物3に記載の事項を適用し、グラビアロールの周面上の、ドクターブレードの上流側でかつ下方位置に配置されるセンサを備え、前記センサの検出結果によってペースト供給部からの導電性ペーストの供給量を制御するように構成することは当業者が容易になし得る程度のことである。
このことは、上記第4.の1に記載した平成22年4月16日付け意見書の「センサによる検出結果からの導電性ペーストの供給量の制御は、当業者にとって常識的な設計事項であり」という記載からも裏付けられる。
ドクターブレードの近傍に溜まる導電性ペーストが上流側へ垂れているかどうか、即ち、ドクターブレードの上流側でかつ下方での導電性ペーストの有無を検知する点に関し、導電性ペーストのようにある程度の粘度を有するペーストが引用発明のような位置に配置されたドクターブレードにより掻き取られ、その量がある程度多くなれば、重力により下方に垂れることは自明であり、粘度により、ドクターブレードにより掻き取られた導電性ペーストの垂れる状態は異なるから、導電性ペーストの粘度に合わせた所定の位置にセンサを配置し、導電性ペーストの状態、即ち、導電性ペーストの有無を検知するようにすることは当然のことに過ぎない。
したがって、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは当業者が容易になし得る程度のことである。

以上のように、引用発明に本願発明の相違点1、2に係る構成を備えることは、刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたことであり、かかる発明特定事項を採用することによる本願補正発明の効果も当業者が予測できる範囲のものである。

第5.むすび
第3で検討したように、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、第4で検討したように、本願発明は、刊行物1?3記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-06-02 
結審通知日 2010-06-22 
審決日 2010-07-05 
出願番号 特願2003-10633(P2003-10633)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41F)
P 1 8・ 536- WZ (B41F)
P 1 8・ 537- WZ (B41F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 國田 正久石井 裕美子  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 江成 克己
藏田 敦之
発明の名称 グラビア印刷機およびセラミック電子部品の製造方法  
代理人 小柴 雅昭  

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