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審決分類 |
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1223343 |
審判番号 | 不服2007-10760 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-13 |
確定日 | 2010-09-08 |
事件の表示 | 特願2001-201321「カートンブランク」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 4日出願公開、特開2003- 34354〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件審判に係る出願は、平成13年7月2日に出願されたものであって、その願書に添付した明細書又は図面についての平成18年12月13日付け手続補正がなされた後、平成19年1月4日付けで拒絶査定されたものである。 そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、平成21年3月5日付け拒絶理由通知書が発送され、これに対して上記明細書又は図面についての同年6月18日付け手続補正がなされたものの、更に、同年10月8日付けで、いわゆる、最後の拒絶理由通知書が送付され、これに対し、平成22年1月20日付け意見書が提出されると共に、上記明細書又は図面についての同日付け手続補正が提出されている。 2.拒絶理由の内容 平成21年10月8日付け拒絶理由通知書で示した拒絶理由は、概要、以下の拒絶理由A及びBである。 拒絶理由A;この出願の請求項1に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 なお、拒絶理由Aにおいては、刊行物1の他に、以下の刊行物2?8を、先行技術文献として指摘している。 刊行物1;米国特許第4044940号明細書 刊行物2;特表平10-512523号公報 刊行物3;米国特許第5311984号明細書 刊行物4;特公平5-34230号公報 刊行物5;特公昭46-21279号公報 刊行物6;特表平8-510431号公報 刊行物7;特表平9-505791号公報 刊行物8;国際公開WO98/58853号公報 拒絶理由B;平成21年6月18日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 そして、拒絶理由通知書には、上記要件を満たしていない理由として、「上記手続補正により補正された請求項1に係る発明は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載があったとはいえず、上記手続補正は、これらに記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない点を指摘し、拒絶理由通知書には、以下の指摘もなされている。 「請求人は、平成21年6月18日付け意見書において、要するに、当初明細書等の段落【0047】?【0049】を、補正の主な根拠としているので検討する。 本件発明は、カートンブランクに係るものであって、「前記物品を抱持するための弾性押圧片が、前記複数の凸部のうち前記物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成されており、前記弾性押圧片は、折曲線を介して前記凸部に接続され、前記カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させる」と記載された事項を、発明特定事項とするものである。 そこで検討すると、上記事項は、左右1対の同形の弾性押圧片が切断線を介して線対称となるように隣接配置されていることや、これら弾性押圧片が、前記切断線とほぼ平行に形成されている折曲線で、いわゆる観音開きされるようになっていることや、更には、前記切断線の延長位置となる前記1対の弾性押圧片の隣接位置に、それぞれ、1対の開口が形成されているか等を問わないものであるが、上記段落には、上記事項を有するカートンブランクの発明が記載されていたと言うことはできない。要するに、上記事項は、上記段落に記載の事項を上位概念化したもので、当初明細書等に記載のない、新たな技術的事項を含んだものになっていると言うことである。」 3.当審の判断 3-1.平成22年1月20日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について 本件補正は、以下に詳述する理由により、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるし、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3-1-1.本件補正の内容 本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。 補正事項a;特許請求の範囲の記載につき、以下(cl)を(CL)と補正する。 (cl);「【請求項1】 頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクであって、 1列に配されかつ隣り合う同士が連結された複数のパネルを有し、これらの複数のパネルのそれぞれの各端縁に凹部を形成することによりこれらの凹部の間にブランク本体の両長辺に沿って並ぶ複数の凸部を設け、これらの凸部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法を各凸部の輪郭形状および寸法に一致させ、 前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部は、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成し、前記少なくとも1つの凸部は、前記複数のパネルのうち隣り合う2つのパネルの一方に折り曲げ可能に連結された折返し片と、この折返し片に折り曲げ可能に連結されたガセット片と、このガセット片に折り曲げ可能に連結されたウエブ片と、このウエブ片に折り曲げ可能に連結された被覆片とを有し、この被覆片は前記隣り合う2つのパネルの他方と一体に形成されており、 前記物品を抱持するための弾性押圧片が、前記複数の凸部のうち前記物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成されており、前記弾性押圧片は、折曲線を介して前記凸部に接続され、前記カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させることを特徴とするカートンブランク。」 (CL)「【請求項1】 頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクであって、 1列に配されかつ隣り合う同士が連結された複数のパネルを有し、これらの複数のパネルのそれぞれの各端縁に凹部を形成することによりこれらの凹部の間にブランク本体の両長辺に沿って並ぶ複数の凸部を設け、これらの凸部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法を各凸部の輪郭形状および寸法に一致させ、 前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部は、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成し、前記少なくとも1つの凸部は、前記複数のパネルのうち隣り合う2つのパネルの一方に折り曲げ可能に連結された折返し片と、この折返し片に折り曲げ可能に連結されたガセット片と、このガセット片に折り曲げ可能に連結されたウエブ片と、このウエブ片に折り曲げ可能に連結された被覆片とを有し、この被覆片は前記隣り合う2つのパネルの他方と一体に形成されており、 前記物品を抱持するための左右一対の同形の弾性押圧片が、切断線を介して線対称となるように隣接配置され、前記両弾性押圧片は、前記切断線と平行に近い方向に形成されている折曲線を介して観音開きされるようになっており、前記両弾性押圧片のうち1つの弾性押圧片は、前記複数の凸部のうち前記物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成され、前記折曲線を介して前記凸部に接続され、前記側壁を構成するパネルに形成された前記凹部における最深部の端縁の前記凸部側への仮想延長線が該弾性押圧片と交差するようになっており、前記両弾性押圧片は、前記カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記両弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させることを特徴とするカートンブランク。」 ここ「3-1」では、本件補正前の請求項1を旧【請求項1】といい、本件補正後の請求項1を新【請求項1】という。 3-1-2.本件補正の適否 (1)新規事項について 1)新【請求項1】に係る発明(以下、「補正発明」という。)は、新【請求項1】に記載された事項により特定されるもので、同項の記載は、先に「3-1-1」において、補正事項aで(CL)として認定したとおりである。 そこで、検討すると、以下の詳述するように、補正発明は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載があったとはいえず、新たな技術的事項を導入するものである。 2)補正発明は、カートンブランクに係るものであって、「物品を抱持するための左右一対の同形の弾性押圧片が、切断線を介して線対称となるように隣接配置され、前記両弾性押圧片は、前記切断線と平行に近い方向に形成されている折曲線を介して観音開きされるようになっており、」と記載した事項を、いわゆる、発明特定事項として有するものであるが、該事項を有するカートンブランクに係る発明が当初明細書等に記載があったとする理由は見当たらない。 3)これに対し、請求人は、平成22年1月20日付け意見書(以下、「本件意見書」という。)において、「なお、本拒絶理由2につきまして、本拒絶理由通知書のB-2において審査官殿が指摘された当初明細書における段落0049に記載されている切断線37の延長位置となる前記1対の弾性押圧片36,36の隣接位置には、それぞれ1対の開口41,42が形成されている旨の記載につきましては、弾性押圧片に隣位して形成される開口についての記載であり、弾性押圧片自体の構成に関する記載ではないと考えます。このため、本願発明1において前記開口の構成を追加しなくても、本願発明1における弾性押圧片は、当初明細書等に記載のない新たな技術的事項を含んだものとはならず、同日付提出の手続補正書における補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすと考えます。」と主張するので検討する。 当初明細書等には、【図5】と共に、以下の記載が認められる。 「【0048】 前記各1対の弾性押圧片36は、前記各下隅壁7および各底壁9A,9Bにかけて前記各切断線37と平行に近い方向に形成されている折曲線38,38を介していわゆる観音開きされるようになっている。また、各弾性押圧片36には、物品の下端部の形状に沿い得るようにするため、前記各折曲線6,8とほぼ平行な2本の切込み線39,40が形成されている。 【0049】 また、前記各切断線37の延長位置となる前記1対の弾性押圧片36,36の隣接位置には、それぞれ1対の開口41,42が形成されており、これらの両開口41,42は、1対の弾性押圧片36,36を裏返しした際に形成される物品保持孔43を介して連接されている。」 ここには、1対の弾性押圧片36,36は、切断線37と平行に近い方向に形成されている折曲線38,38を介していわゆる観音開きされるようになっていること、そして、切断線37の延長位置となる前記1対の弾性押圧片36,36の隣接位置には、それぞれ1対の開口41,42が形成されていることが記載されている。 そして、上記折曲線38,38は、【図5】上、開口41,42のそれぞれの上方、左右端部分同士を繋ぐ形で構成されており、このような構成を採ることにより、切断線37と平行に近い方向に形成されているものと認められ、当初明細書等には、開口41,42を設けること無しに、折曲線38,38を、切断線37と平行に近い方向に形成することは記載されてはいない。 請求人は、要するに、開口41,42は、弾性押圧片自体の構成に関する記載ではないと主張するが、該主張が当を得たものでないことは、上述したことから明らかである。 (2)補正事項aの目的について 補正事項aは、旧【請求項1】に記載されていた「物品を抱持するための弾性押圧片」につき、これらが左右一対の同形の弾性押圧片から構成され、切断線を介して線対称となるように隣接配置され、前記両弾性押圧片は、前記切断線と平行に近い方向に形成されている折曲線を介して観音開きされるようになっており、そして、複数の凸部のうち物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成されているのは、前記両弾性押圧片のうち1つの弾性押圧片であって、これが、前記折曲線を介して前記凸部に接続され、側壁を構成するパネルに形成された凹部における最深部の端縁の前記凸部側への仮想延長線が該弾性押圧片と交差するようになっていると、その構造を技術的に限定するもので、いわゆる、限定的減縮を目的にしているといえる。 (3)独立特許要件について 1)補正発明、先に「(1)」の「1)」で述べたように、新【請求項1】に記載された事項により特定されるもので、同項の記載は、補正事項aで(CL)として認定したとおりである。 2)刊行物1には、図面1?5と共に、以下の記載a?bが認められる。 a;「The invention herein ・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。) within the wrapper.」(1欄20?25行、訳文;この発明は、包装容器内に多くの一般に円筒状の飲料容器を収容するための構造を有するものであって、この飲料容器は、その端部が包持されるのに、そして、包装容器内での移動を防ぐのに適した構造要素によって保持されている。) b;「The improved wrapper blank ・・・to restrain the movement thereof.」(1欄39行?2欄20行、訳文;この発明に係る包装用ブランクは、図面符号10で表示され、ブランク同士が、互いに、入れ子の関係にあるように、作成される。各々のブランク10は、これによって複数個の容器Cを包装した際に持ち手となる穴12が形成されたメインパネル11を有している。 サイドパネル13の各々は、メインパネル11の相対する端縁の各々に、折り目ライン14に沿って折り畳み可能に結合され、閉じパネル16の各々は、サイドパネル13の各々に、折り目ライン17に沿って折り畳み可能に結合され、2つの閉じパネル16は、チューブを形作るように、接着剤の付与されたパネル18手段によって結合される。 ブランク10は、その両側縁に沿って、スカラップ様形状を形作るように、一部を切り欠いた部分19を備えたパネルから構成されている。一部を切り欠いた部分19の各々は、パネル11、13及び16を連結する折り目ライン14、17の方向に広がる側縁21を持つU字型で、該側縁21は、折り目ラインに隣接して、図面符号22によって一般に指示される構造要素を区劃しており、該構造要素により、包装容器内での容器Cの移動を制限するように配置されている。 構成要素22の各々は、サイドパネル13から延出された第1封止タブ23、折り目ライン14、17に対して所定の角度をなす折り目ライン27に沿ってメインパネル11及び閉じパネル16に対して折り畳まれる第2封止タブ26から構成されている。 第1封止タブ23と第2封止タブ26は、互いに、構成要素22の端縁から、サイドパネル13の折り目ライン14及び17まで延びる切込線28によって分断され、折り目ライン27と切込線28は、折り目ライン14及び17の点PIで交わる。 第2封止タブ26には、折り畳まれて第1封止タブ23と貼り合わせ構造を形成するのに適用される接着剤GPが備えられ、それにより、容器Cの移動を制限するように、包装容器内の飲料容器の端部を支えている。) 3)そして、刊行物1には、包装用ブランクが記載され、これがスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクといい得るものであることは明らかである。 そして、図1を見ると、上記カートンブランクの両長辺に沿って並ぶ複数の凸部と凹部が見て取れ、記載bの「この発明に係る包装用ブランクは、図面符号10で表示され、ブランク同士が、互いに、入れ子の関係にあるように、作成される。」との記載をも参照すれば、上記凸部は、その輪郭形状および寸法が均一で、また、凹部についても同様で、更に、凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法が各凸部の輪郭形状および寸法に一致していることも見て取れる。 また、前記凸部は、第1封止タブ23と第2封止タブ26を有し、記載bの「第2封止タブ26には、折り畳まれて第1封止タブ23と貼り合わせ構造を形成するのに適用される接着剤GPが備えられ、それにより、容器Cの移動を制限するように、包装容器内の飲料容器の端部を支えている。」との記載をも参照すれば、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成していると認められる。 そして、以上の検討を踏まえると、刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「持ち手となる穴12が形成されたメインパネル11と、閉じパネル16と、1対のサイドパネル13とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクであって、 これらパネルは、1列に配されかつ隣り合う同士が連結されており、これらパネルのそれぞれの各端縁に凹部を形成することによりこれらの凹部の間にブランク本体の両長辺に沿って並ぶ複数の凸部を設け、これらの凸部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法を各凸部の輪郭形状および寸法に一致させ、 前記複数の凸部、全てが、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成した、カートンブランク」についての発明 4)次に、補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「メインパネル11」は、持ち手となる穴12が形成さているから、補正発明の「頂壁」に対応し、そして、引用発明の「閉じパネル16」は、補正発明の「底壁」に対応しているということができる。 以上のことから、補正発明は、引用発明とは、 「頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクであって、 1列に配されかつ隣り合う同士が連結された複数のパネルを有し、これらの複数のパネルのそれぞれの各端縁に凹部を形成することによりこれらの凹部の間にブランク本体の両長辺に沿って並ぶ複数の凸部を設け、これらの凸部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法を各凸部の輪郭形状および寸法に一致させ、 前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部は、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成した、カートンブランク。」である点で一致し、以下の点において相違していると認められる。 相違点a;補正発明は、「少なくとも1つの凸部は、複数のパネルのうち隣り合う2つのパネルの一方に折り曲げ可能に連結された折返し片と、この折返し片に折り曲げ可能に連結されたガセット片と、このガセット片に折り曲げ可能に連結されたウエブ片と、このウエブ片に折り曲げ可能に連結された被覆片とを有し、この被覆片は前記隣り合う2つのパネルの他方と一体に形成されて」いる点。 相違点b;補正発明は、「物品を抱持するための左右一対の同形の弾性押圧片が、切断線を介して線対称となるように隣接配置され、前記両弾性押圧片は、前記切断線と平行に近い方向に形成されている折曲線を介して観音開きされるようになっており、前記両弾性押圧片のうち1つの弾性押圧片は、複数の凸部のうち物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成され、前記折曲線を介して前記凸部に接続され、側壁を構成するパネルに形成された凹部における最深部の端縁の凸部側への仮想延長線が該弾性押圧片と交差するようになっており、前記両弾性押圧片は、カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記両弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させる」点。 5)まずは、相違点aについて検討する。 引用発明も、複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部は、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成したものである。 その一方で、隣り合う同士が連結された複数のパネルに跨って、これらパネルの端縁に凸部を設けたカートンブランクにおいて、該凸部を、折り曲げ可能に連結した小片群とし、カートンの組立時に、該凸部を折り曲げて上記小片群により、物品抜け落ち防止手段を形成することは、この出願前、周知の技術であるから(刊行物2、3及び8、参照。)、引用発明の物品抜け落ち防止手段として、該周知の技術を適用することは容易になし得るものであり、上記小片群の数は適宜に設計できるものであって、これを2つのパネルの一方に折り曲げ可能に連結された折返し片、この折返し片に折り曲げ可能に連結されたガセット片、そして、このガセット片に折り曲げ可能に連結されたウエブ片とし、更に、このウエブ片に折り曲げ可能に連結された被覆片とし、この被覆片は前記2つのパネルの他方と一体に形成することは、容易に設計し得るものである。 請求人は、これに対する主張を、本件意見書においてしていない。 よって、相違点aは、容易になし得るものである。 6)次に、相違点bについて検討する。 6-1)刊行物8には、図面1?3と共に、以下の記載Aが認められる。 A;「Referring to Figures 1 to 3,・・・in WO94/25363.」(5頁7?末行、訳文;図1?図3には、本発明による保持手段12を備えた、ブランク10の一実施形態が示されている。ブランク10は、第1ベースパネル14と、傾斜底エッジパネル(または、斜めパネル)16と、第1側部パネル18と、上パネル20と、第2側部パネル22と、傾斜底エッジパネル24と、第2ベースパネル26とを、この記載順に並べられかつ隣り合うどうしが互いに折曲可能に接続された状態で、備えている。保持手段12ば、側部パネル18と、傾斜底エッジパネル16と、この実施形態においては図1に示すような公知タイプの巻付式カートンのベースパネル14をなす第2壁パネルと、からなる側壁に形成されている。保持手段12は、物品の底エッジ部を保持することだけを意図したものではなく、例えば物品の上部肩部を保持するために使用することもできる。保持手段12は、例えば複数の物品の端部コーナー部を保持するために巻付タイプのカートンの筒状構造の端縁に形成することができる。あるいは、それに代えて、カートン内に保持されるべき複数の物品のうちの、1つまたはいくつかの物品に対してだけ設けることもできる。 保持手段12は、この例においては図2に示すように缶Aの底エッジ部を取容するための、保持開口28を備えている。保持手段12は、さらに、組立状態のカートンにおいて傾斜底エッジパネル16に隣接した物品Aの底エッジの一部に対して当接するような内部フラップ部分を形成するような、保持フラップ30,32を備えている。フラップの全体的形状は、公知であって、国際特許出願第94/25363号に詳細に記載されている。) そして、記載Aには、「フラップの全体的形状は、公知であって、国際特許出願第94/25363号に詳細に記載されている。」との記載も認められ、国際特許出願第94/25363号に関する刊行物6を併せ見れば、主要な壁要素として、頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクにおいて、壁要素間の境界領域に、物品を抱持するための左右一対の同形の弾性押圧片が、切断線を介して線対称となるように隣接配置され、前記一対の弾性押圧片は、前記切断線と平行に近い方向に形成されている折曲線を介して観音開きされるようになっており、そして、カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記一対の弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させるよう、構成することは、この出願前、周知の技術と認められる。 6-2)その一方で、引用発明は、ブランク本体の両長辺に沿って設けられた複数の凸部、全てが、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成したものであるが、該物品抜け落ち防止手段として、同じ目的を有していることが明らかな上記周知の技術を適用することは、普通に思いつくもので、その際に、引用発明における閉じパネル16とサイドパネル13との境界線領域にのみに、該周知の技術を適用することは、容易に想到し得るものである。 そして、刊行物8には、先に「6-1)」で述べたことから明らかなように、上記周知の技術が記載されているのであるが、該周知の技術は、刊行物8の図1を参照すると、主要な壁要素である底壁と側壁との境界線領域にのみに適用されていることが分かり、このことからも、引用発明における底壁と側壁との境界領域にのみに、該周知の技術を適用することは容易に想到し得るものである、との上述の判断の妥当性が裏付けられるものである。 6-3)また、更に、引用発明の閉じパネル16とサイドパネル13との境界線領域に上記周知の技術を適用するに際して、一対の弾性押圧片を、境界線領域の長手方向上、どの位置に配するかは、カートンに収容する物品に応じて適宜になし得る設計的事項であって、一対の弾性押圧片のうち1つの弾性押圧片を、折曲線を介して凸部に接続され、側壁を構成するパネルに形成された凹部における最深部の端縁の凸部側への仮想延長線が該弾性押圧片と交差するように位置させることも容易に設計できるものであり、そうしたための格別な効果も認められない。 これに対し、請求人は、本件意見書において、「本願発明1の弾性押圧片は、前記複数の凸部のうち前記物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成され、前記折曲線を介して前記凸部に接続されております。このような構成を採用することにより、本願発明1は、この弾性押圧片によってカートンの端部開口に臨む物品をより開口側から抱持することができるので、物品をより安定的に保持することができます。また、本願発明1におきましては、前記側壁を構成するパネルの前記凹部における最深部の端縁の前記凸部側への仮想延長線が該弾性押圧片と交差するようになっております。このような構成を採用することにより、カートンを構成する材料を減らすことができるだけでなく、カートンの開口端縁に臨む各物品の一部分を前記開口端縁からカートンの外側にはみ出るようにすることができるので、広告目的等のためにカートンの内部に収容された物品がカートンの外部から視認しやすくなるという本願発明1に特有の効果を奏することができると考えます。」といい、補正発明の効果を主張するが、ここで主張する効果は、本件補正後の明細書に記載されているものではなく、また、格別なものということはできない。 6-4)以上の検討によれば、相違点bも、容易になし得るものといえる。 7)よって、補正発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3-2.原査定の拒絶理由について この出願の願書に添付した明細書又は図面(以下、「本件明細書等」という。)は、本件補正が、先に「3-1」で述べたように却下すべきものであることから、本件補正前のものである。 3-2-1.拒絶理由Aについて 1)この出願の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、本件明細書等の請求項1に記載された事項により特定されるもので、同項の記載は、先に「3-1-1」において、補正事項aで(cl)として認定したとおりである。 そして、刊行物1には、先に「3-1-2」、「(3)」の「3)」で認定したとおりの引用発明が記載され、本件発明は、引用発明と対比すると、 「頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクであって、 1列に配されかつ隣り合う同士が連結された複数のパネルを有し、これらの複数のパネルのそれぞれの各端縁に凹部を形成することによりこれらの凹部の間にブランク本体の両長辺に沿って並ぶ複数の凸部を設け、これらの凸部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部の輪郭形状および寸法を均一にし、前記凸部に挟まれる凹部のそれぞれの輪郭形状および寸法を各凸部の輪郭形状および寸法に一致させ、 前記複数の凸部のうち少なくとも1つの凸部は、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成した、カートンブランク。」である点で一致し、以下の点において相違していると認められる。 相違点A;本件発明は、「少なくとも1つの凸部は、複数のパネルのうち隣り合う2つのパネルの一方に折り曲げ可能に連結された折返し片と、この折返し片に折り曲げ可能に連結されたガセット片と、このガセット片に折り曲げ可能に連結されたウエブ片と、このウエブ片に折り曲げ可能に連結された被覆片とを有し、この被覆片は前記隣り合う2つのパネルの他方と一体に形成されて」いる点。 相違点B;本件発明は、「物品を抱持するための弾性押圧片が、複数の凸部のうち物品抜け落ち防止手段が構成された凸部と異なる1つの凸部の少なくとも一部分に位置するように形成されており、前記弾性押圧片は、折曲線を介して前記凸部に接続され、カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、前記弾性押圧片の表面を前記物品に押圧させる」点。 2)相違点Aは、先に「3-1-2」、「(3)」の「5)」で、相違点aについて述べたのと同様の理由から、容易になし得るものである。 3)また、主要な壁要素として、頂壁と、底壁と、1対の側壁とを有するスリーブ状のカートンを形成するためのカートンブランクにおいて、壁要素間の境界領域に弾性押圧片を設け、これにより、カートンを組み立てる際に内部に折りたたまれて、該弾性押圧片の表面を物品に押圧させるよう、構成することは、この出願前、周知の技術と認められる(刊行物4?8、参照。)。 その一方で、引用発明は、ブランク本体の両長辺に沿って設けられた複数の凸部、全てが、カートンの組立時に物品がカートン端部から抜け落ちるのを防止する物品抜け落ち防止手段を構成したものであるが、該物品抜け落ち防止手段として、同じ目的を有していることが明らかな上記周知の技術を適用することは、普通に思いつくもので、その際に、引用発明における閉じパネル16とサイドパネル13との境界線領域にのみに、該周知の技術を適用することは、容易に想到し得るものである。 また、更に、引用発明の閉じパネル16とサイドパネル13との境界線領域に上記周知の技術を適用するに際して、一対の弾性押圧片を、境界線領域の長手方向上、どこに配するかは、カートンに収容する物品に応じてなし得る設計的事項であって、一対の弾性押圧片のうち1つの弾性押圧片は、折曲線を介して凸部に接続されるように位置させることも容易に設計できるものであり、そうしたための格別な効果も認められない。 したがって、相違点Bも、容易になし得るものといえる。 4)よって、本件発明は、引用発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、拒絶理由Aは妥当である。 3-2-2.拒絶理由Bについて 平成21年6月18日付け手続補正(以下「本補正」という。)は、請求項1の記載を、先に「3-1-1」の補正事項aで(cl)として認定した記載どおりに補正することを含むものである。 そこで、検討するに、本補正後の請求項1に係る本件発明は、当初明細書等に記載があったとはいえず(先の「2」の拒絶理由Bを参照。)、本補正は、当初明細書等に記載した事項に新たな技術的事項を加えるもので、上記事項の範囲内においてしたものとはいえない。 請求人は、これに対する主張を、本件意見書において、先に「3-1-2」、「(1)」の「3)」で認定した主張を除き、してはいない。そして、該主張は、同「3)」で述べたように、当を得たものでないこともあり、やはり、本補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえず、拒絶理由Bは妥当である。 4.むすび 拒絶理由A及びBは、妥当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-03-30 |
結審通知日 | 2010-04-06 |
審決日 | 2010-04-19 |
出願番号 | 特願2001-201321(P2001-201321) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
WZ
(B65D)
P 1 8・ 121- WZ (B65D) P 1 8・ 561- WZ (B65D) P 1 8・ 56- WZ (B65D) P 1 8・ 575- WZ (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 市野 要助 |
特許庁審判長 |
鈴木 由紀夫 |
特許庁審判官 |
佐野 健治 村上 聡 |
発明の名称 | カートンブランク |
代理人 | 玉利 房枝 |
代理人 | 伊藤 高英 |
代理人 | 大倉 奈緒子 |
代理人 | 鈴木 健之 |
代理人 | 磯田 志郎 |
代理人 | 畑中 芳実 |
代理人 | 中尾 俊輔 |