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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1223349
審判番号 不服2007-21700  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-06 
確定日 2010-09-08 
事件の表示 特願2003-519718「料金評価機能を有するプロセス制御システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月20日国際公開、WO03/14849、平成16年12月24日国内公表、特表2004-538565〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年8月7日、ヨーロッパ特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成19年4月27日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年9月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成19年9月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年9月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「プロセス制御計算機を備えたプロセス制御システム(5)において制御技術的な機能の生成および除去又はそのいずれか一方ならびにプロセスの操作アクションおよび自動化機能をプロセス制御計算機上で進行させ、進行するオペレーション(7)の利用料金としての支払値(W)をプロセス制御計算機に備えた計算ユニット(10)にて計算させることを特徴とするプロセス制御システム。」

から、
「技術的設備に対して設けられたプロセス制御計算機を備えたプロセス制御システム(5)において、制御技術的な機能の生成および除去又はそのいずれか一方ならびにプロセスの操作アクションおよび自動化機能をプロセス制御計算機上で進行させ、進行するオペレーション(7)の利用料金としての支払値(W)をプロセス制御計算機に備えた計算ユニット(10)にて計算させるものであって、計算ユニット(10)がライセンスサーバアプリケーションを内蔵し、このアプリケーションが、プロジェクトデータ、前記技術的設備において現在生じている操業データ、または前記技術的設備における過去のアーカイブデータにアクセスすることを特徴とするプロセス制御システム。」

と補正された。
前記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「プロセス制御計算機」について、「技術的設備に対して設けられた」との限定を付加するとともに、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「計算ユニット(10)」について、「計算ユニット(10)がライセンスサーバアプリケーションを内蔵し、このアプリケーションが、プロジェクトデータ、前記技術的設備において現在生じている操業データ、または前記技術的設備における過去のアーカイブデータにアクセスする」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された「特開平11-338696号公報」(以下「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ソフトウェアモジュールの課金システムに関し、特に、読み取られる原稿を給紙し読取装置に順次セットするフィーダー部、読み取りを実行するスキャナ部、読み取った画像データを保存しておく記憶装置、印刷する用紙を給紙し書き込み装置にセットする給紙トレイ部、書き込みを実行するプロッタ部、及び、印刷された用紙を分配して置くための排紙部、などのハードウェアモジュールを有する画像入出力装置等のOA機器に実装されているハードウェアモジュールを制御するソフトウェアを複数のソフトウェアモジュールに部品化し、それらソフトウェアモジュールを協調動作させてOA機器の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システムに関する。」

(イ)「【0013】本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題としており、特に、OA機器などに組み込まれたソフトウェアに対して、ソフトウェアモジュール単位で課金管理をすることにより、デバイスの利用価値に応じた料金をユーザーが支払えるようにすることを課題としている。
【0014】更に加えて、使用した機能に対してのみ適切な利用料金をユーザーが支払えるようにすることを課題としている。
【0015】更に加えて、ソフトウェアモジュール単位の取り替えやバージョンアップによる課金方法の変更や、製品自体の機能拡張や個別機能対応に柔軟に対応することを課題としている。」

(ウ)「【0042】本実施形態のソフトウェアモジュールの課金システムは、OA機器に実装されているハードウェアモジュールを制御するソフトウェアを複数のソフトウェアモジュールに部品化し、それらソフトウェアモジュールを協調動作させて画像入出力装置12の制御を行うものであって、ソフトウェアモジュールの各々が、自己にかかる利用価値または利用状況に応じた使用料金を累加する課金機能を有している。」

(エ)「【0062】図3は、図2のハードウェア構成形態において、画像入出力装置12の一例としての複写機122の内部に組み込まれているソフトウェアの一構成形態を示している。
(中略)
【0066】図3に示すサービスマネージャ303は、ドキュメントハンドリングの際に共通に必要となる機能ブロックであり、各種サービスの管理・実行を行っている。
(中略)
【0070】データベースマネージャ305は、各ソフトウェアモジュールの課金情報の維持・管理も行っている。その装置、例えば複写機122がブローカとしての機能をもつ場合には、積み上げ料金の維持・管理も行うことができる。」

(オ)「【0077】図4は、複写機あるいはスキャナ等の画像入出力装置12に組み込まれている画像読み取りのためのキャリッジ動作制御用のソフトウェアモジュールの関係を示している。
【0078】図4に示すScannerControlソフトウェアモジュール42は、Carriageソフトウェアモジュール44を制御する、すなわち解像度や読み取り範囲に応じてCarriageソフトウェアモジュール44に指示を与える。
【0079】図4に示すCarriageソフトウェアモジュール44は、Motorソフトウェアモジュール48に移動速度などを指示し、Lampソフトウェアモジュール46にON・OFF(点灯・消灯)を指示し、キャリッジ動作の実行と監視を行うソフトウェアモジュールである。
【0080】図4に示すMotorソフトウェアモジュール48は、ステッピングモータなどを駆動するソフトウェアモジュールである。
【0081】図4に示すLampソフトウェアモジュール46は、露光ランプなどの点灯・消灯を行うソフトウェアモジュールである。」

(カ)「【0094】本実施形態のソフトウェアモジュールの課金システムは、印刷の制御を行うソフトウェアモジュールまたは読み取りの制御を行うソフトウェアモジュールをユーザー側が利用した際に、サービスセンター10側が、ソフトウェアモジュールが実行した課金機能の結果に応じてユーザー側に課金処理を実行する点に特徴を有している。
【0095】また本実施形態のソフトウェアモジュールの課金システムは、画像入出力装置12に実装されているハードウェアモジュールとソフトウェアモジュールとを関連づけることにより、更に、ハードウェアモジュールの利用状況を、ハードウェアモジュールと対応するソフトウェアモジュールの利用状況に基づいて管理する点に特徴を有している。」

(キ)「【0113】本実施形態のソフトウェアモジュールの課金システムは、サービスセンター10側からの使用料金の通知要求に応じて画像入出力装置12内で利用された全てのソフトウェアモジュールにかかる使用料金を加算してサービスセンター10側に通知する点に特徴を有している。
【0114】以下に、具体的な動作をイベントトレースを用いて説明する。
【0115】サービスセンター10側が使用料金の通知を要求する料金問い合わせメソッドS701を活性化することにより、サービスマネージャ303が画像入出力装置12内の全てのソフトウェアモジュールの使用料金を加算するGetAllChargeメソッドS702を活性化する。
【0116】これに応じて、Carriageソフトウェアモジュール44がSumChargeメソッドS703を活性化してCarriageソフトウェアモジュール44の使用料金の課金処理を実行する。
【0117】その終了を待って、Carriageソフトウェアモジュール44が、Carriageソフトウェアモジュール44の使用料金をGetAllChargeメソッドS702内の料金データに加算し、料金データを用いてGetAllChargeメソッドS704を活性化する。
【0118】これに応じて、Motorソフトウェアモジュール48は、GetAllChargeメソッドS704の活性化に応じて、SumChargeメソッドS705を活性化してMotorソフトウェアモジュール48の使用料金の課金処理を実行する。
【0119】その終了を待って、Motorソフトウェアモジュール48が、Motorソフトウェアモジュール48の使用料金をGetAllChargeメソッドS704内の料金データに加算し、料金データを用いてGetAllChargeメソッドS706を活性化する。
【0120】これに応じて、Lampソフトウェアモジュール46は、GetAllChargeメソッドS706の活性化に応じて、SumChargeメソッドS707を活性化してLampソフトウェアモジュール46の使用料金の課金処理を実行する。
【0121】その終了を待って、Lampソフトウェアモジュール46が、Lampソフトウェアモジュール46の使用料金をGetAllChargeメソッドS706内の料金データに加算し、料金データを用いてGetAllChargeメソッドS708を活性化する。
【0122】その他のソフトウェアモジュールについても同様の課金処理(SumChargeメソッドS709)が実行され、累加された使用料金のデータ(課金情報)は、AllChargeAddedメソッドS710の活性化によってサービスマネージャ303に返信される。
【0123】サービスマネージャ303は、AllChargeAddedメソッドS710から受け取った累加された使用料金のデータ(課金情報)を用いて料金メソッドS711を活性化し、サービスセンター10に累加された使用料金のデータ(課金情報)を通知する。図7では、各ソフトウェアモジュールについても同様の課金処理(SumChargeメソッドS709)が実行されているが、各ソフトウェアモジュールから直接SumChargeメソッドS709に料金データを送って課金処理するようにしてもよい。」

したがって、上記(ア)乃至(キ)の記載事項及び図面図1乃至図7によれば、引用例1には、以下の発明(以下「引用例1記載の発明」という。)が記載されているといえる。
「ハードウェアモジュールを実装する画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システムにおいて、ソフトウェアモジュールによる露光ランプ等の点灯・消灯を画像入出力装置上で実行させ、ユーザー側に利用されたソフトウェアモジュールにかかる使用料金を画像入出力装置で計算させるものであって、画像入出力装置がサービスマネージャを内蔵し、このサービスマネージャに、画像入出力装置内の全てのソフトウェアモジュールの使用料金を加算するGetAllChargeメソッドS702,S704,S706,S708の活性化によって累加された使用料金のデータ(課金情報)が返信される課金システム。」

原査定の拒絶の理由に引用された「特開2001-42904号公報」(以下「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ク)「【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】化学処理、石油処理、または他の処理で用いられるもののように、プロセス制御ネットワークは一般に、例えば、弁ポジショナ、スイッチ、センサ(温度、圧力、および流量センサ)などのひとつ以上のフィールド装置に通信結合された集中型プロセスコントローラを含んでいた。これらのフィールド装置はプロセス内の物理的な制御機能(弁の開閉のような)を行なっても、プロセスの動作を制御するのに用いられるプロセス内の測定値の測定を行なっても、プロセス内で他の所望の機能を実行してもよい。プロセスコントローラは、例えば、フィールド装置へそしてそこから4-20mA(ミリアンペア)の信号を搬送し得るひとつ以上のアナログ信号線またはバスによってフィールド装置に接続されていた。一般に、プロセスコントローラは、ひとつ以上のフィールド装置により測定された測定値、および/またはフィールド装置に関する他の情報を示す信号を受け取り、この情報を用いて典型的には複雑な制御ルーチンを実行し、ついで制御信号を生成し、この制御信号はアナログ信号バスによってフィールド装置に送られて、それによってプロセスの動作を制御する。」

原査定の拒絶の理由に引用された「特開2000-305620号公報」(以下「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ケ)「【0002】
【従来技術及び発明が解決しようとする課題】化学処理、石油処理、または他の処理で用いられるもののように、プロセス制御システムは一般に、アナログ、ディジタルまたは組み合わされたアナログ/ディジタルバスを介して少なくともひとつのホストまたはオペレータワークステーションとひとつ以上のフィールド装置とに通信結合される集中型プロセスコントローラを含む。フィールド装置は、たとえば、弁、弁ポジショナ、スイッチ、センサ(たとえば、温度、圧力、および流速センサ)などであるが、弁の開閉、プロセスパラメータの測定のようなプロセス内で制御機能を実行する。プロセスコントローラは、フィールド装置により測定されたプロセス測定値を示す信号、および/またはフィールド装置に関する他の情報を受け取り、この情報を用いて制御ルーチンを実行し、ついで、バスによってフィールド装置に送られる制御信号を生成してプロセスの動作を制御する。フィールド装置およびコントローラからの情報は典型的には、プロセスの現在の状態を見たり、プロセスの動作を変更したりなど、オペレータがプロセスに対して所望の機能を実行できるように、オペレータワークステーションにより実行されるひとつ以上のアプリケーションに利用される。」

(3)対比
本願補正発明と引用例1記載の発明を対比すると、以下の対応関係が認められる。
(a)引用例1記載の発明の「ハードウェアモジュール」は本願補正発明の「技術的設備」に相当する。また、引用例1記載の発明の「画像入出力装置」は、上記(エ)に記載されているように、各種サービスの管理・実行を行うサービスマネージャ、及び各ソフトウェアモジュールの課金情報の維持・管理を行うデータベースマネージャ等を含むソフトウェアが内部に組み込まれた装置であるから、「計算機」を内蔵しているといえ、引用例1記載の発明の「画像入出力装置」が内蔵している「計算機」と本願補正発明の「プロセス制御計算機」とは、共に「計算機」である点で共通する。
(b)引用例1記載の発明の「画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システム」は、ソフトウェアモジュールが画像入出力装置を制御するシステムであるから「制御システム」と呼ぶことができ、引用例1記載の発明の「画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システム」と本願補正発明の「プロセス制御システム」とは、共に「制御システム」である点で共通する。
(c)引用例1記載の発明の「ユーザー側に利用されたソフトウェアモジュールにかかる使用料金」は、ユーザーがソフトウェアモジュールを利用するというオペレーションが進行した結果、発生する使用料金のことであるといえるから、引用例1記載の発明の「ユーザー側に利用されたソフトウェアモジュールにかかる使用料金」は、本願補正発明の「進行するオペレーション(7)の利用料金としての支払値(W)」に相当するといえる。

したがって、本願補正発明と引用例1記載の発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「技術的設備に対して設けられた計算機を備えた制御システムにおいて、進行するオペレーションの利用料金としての支払値を計算させる制御システム。」である点。
(相違点1)
本願補正発明の「計算機」は「プロセス制御計算機」であって、本願補正発明の「制御システム」は「プロセス制御システム」であるのに対し、引用例1記載の発明の「計算機(画像入出力装置)」は「プロセス制御計算機」ではなく、引用例1記載の発明の「制御システム(画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システム)」は「プロセス制御システム」ではない点。
(相違点2)
本願補正発明は「制御技術的な機能の生成および除去又はそのいずれか一方ならびにプロセスの操作アクションおよび自動化機能をプロセス制御計算機上で進行させる」のに対し、引用例1記載の発明はそのような構成にはなっていない点。
(相違点3)
本願補正発明は「進行するオペレーションの利用料金としての支払値をプロセス制御計算機に備えた計算ユニットにて計算させるものであって、計算ユニットがライセンスサーバアプリケーションを内蔵し、このアプリケーションが、プロジェクトデータ、前記技術的設備において現在生じている操業データ、または前記技術的設備における過去のアーカイブデータにアクセスする」のに対し、引用例1記載の発明はそのような構成にはなっていない点。

(4)判断
(相違点1)について
例えば、上記(ク)及び(ケ)にみられるように、本願出願時において、ひとつ以上の技術的設備(フィールド装置)に通信結合されるプロセス制御計算機(集中型プロセスコントローラ)を備えたプロセス制御システム(プロセス制御ネットワーク)において、プロセス制御計算機が制御信号を生成して技術的設備に送ることでプロセスの動作を制御することで、プロセス制御システムのユーザー(オペレータ)がプロセスに対して所望の機能を実行できることは周知技術であったと認められる。
引用例1記載の発明の画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システムは、上記(ウ)及び(カ)に記載のとおり、画像入出力装置などのOA機器に実装されているハードウェアモジュールを制御するソフトウェアを複数のソフトウェアモジュールに部品化し、それらソフトウェアモジュールがハードウェアモジュールの動作を制御することで、ユーザーが印刷や読み取りなどの所望の機能を実行できるものであり、上記周知なプロセス制御システムと類似なシステムといえる。また、ハードウェアモジュールを画像入出力装置で制御し、これをユーザーが利用する上記課金システムは、技術的設備をプロセス制御計算機で制御し、これをユーザーが利用するプロセス制御システムと、技術的設備を計算機で制御し、これをユーザーが利用するシステムであるという点で共通の技術分野に属するものといえる。そしてプロセス制御システムについてもそのハードウェア・ソフトウェアの使用に対する課金は普通になされているものといえ、引用例1記載の発明の課金システムを上記周知のプロセス制御システムに適用することに格別の困難性は認められない。
してみると、引用例1記載の発明を上記周知のプロセス制御システムに適用し、その際に引用例1記載の発明の「画像入出力装置」を「プロセス制御計算機」に代え、引用例1記載の発明の「画像入出力装置の制御を行うソフトウェアモジュールの課金システム」を「プロセス制御システム」に代えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点2)について
上記「(相違点1)について」で検討したとおり、引用例1記載の発明を上記周知のプロセス制御システムに適用することは当業者が格別の困難性無く想到することができるといえる。
引用例1には、上記(イ)に「ソフトウェアモジュール単位の取り替えやバージョンアップによる課金方法の変更や、製品自体の機能拡張や個別機能対応に柔軟に対応することを課題としている。」と記載されているように、引用例1記載の発明が、製品自体の機能拡張や個別機能対応、すなわち機能の生成や除去に柔軟に対応することを課題としていることが示されている。
そして、プロセス制御システムにおいては、制御技術的な機能の生成や除去(プロセスの動作を変更)、及びプロセスの操作アクションを進行させる(オペレータがプロセスに対して所望の機能を実行できる)ことは上記(ク)の「フィールド装置およびコントローラからの情報は典型的には、プロセスの現在の状態を見たり、プロセスの動作を変更したりなど、オペレータがプロセスに対して所望の機能を実行できるように、オペレータワークステーションにより実行されるひとつ以上のアプリケーションに利用される。」との記載、またプロセスの自動化機能を進行させる(制御信号を生成してプロセスの動作を制御する)ことは上記(ク)の「プロセスコントローラは、フィールド装置により測定されたプロセス測定値を示す信号、および/またはフィールド装置に関する他の情報を受け取り、この情報を用いて制御ルーチンを実行し、ついで、バスによってフィールド装置に送られる制御信号を生成してプロセスの動作を制御する。」との記載からそれぞれ明らかなように通常行われていることである。
してみると、引用例1記載の発明において、制御技術的な機能の生成および除去又はそのいずれか一方ならびにプロセスの操作アクションおよび自動化機能を進行させることは、引用例1記載の発明をプロセス制御システムに適用する際に当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点3)について
引用例1記載の発明は、画像入出力装置がサービスマネージャを内蔵し、このサービスマネージャが画像入出力装置内の全てのソフトウェアモジュールの使用料金を加算するGetAllChargeメソッドS702,S704,S706,S708を活性化することで累加された使用料金のデータ(課金情報)を受け取る構成であるが、課金システムにおいて、課金情報を一定の期間ごとに集計することは慣用されており、その際、課金のための基礎データを「過去のアーカイブデータ」として記憶させ、このデータを用いることは普通に行われていることである。
ここで、引用例1記載の発明の画像入出力装置のうち、課金情報を計算するサービスマネージャを内蔵する一部分は「計算ユニット」といえる。引用例1記載の発明におけるサービスマネージャは、ユーザーが画像入出力装置を使用したときに課金することによって、ユーザーに画像入出力装置の使用を許諾しているともいえる。該サービスマネージャに、ユーザーの使用許諾(ライセンス)を管理するサーバとしての機能を持たせること、すなわちライセンスサーバアプリケーションを内蔵させることは当業者が格別困難なくなし得たことである。
そして、上記ライセンスサーバアプリケーションが、課金のための基礎データである「技術的設備における過去のアーカイブデータ」にアクセスする構成とすることは当業者が適宜なし得る設計事項に過ぎない。
してみると、引用例1記載の発明において、上記各技術事項を踏まえて、「進行するオペレーションの利用料金としての支払値をプロセス制御計算機に備えた計算ユニットにて計算させるものであって、計算ユニットがライセンスサーバアプリケーションを内蔵し、このアプリケーションが技術的設備における過去のアーカイブデータにアクセスする」構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

よって、本願補正発明は、引用例1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討

(1)本願発明について
平成19年9月4日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下に記載されたとおりのものである。
「プロセス制御計算機を備えたプロセス制御システム(5)において制御技術的な機能の生成および除去又はそのいずれか一方ならびにプロセスの操作アクションおよび自動化機能をプロセス制御計算機上で進行させ、進行するオペレーション(7)の利用料金としての支払値(W)をプロセス制御計算機に備えた計算ユニット(10)にて計算させることを特徴とするプロセス制御システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「プロセス制御計算機」の限定事項である「技術的設備に対して設けられた」との構成を省くとともに、本願補正発明から「計算ユニット(10)」の限定事項である「計算ユニット(10)がライセンスサーバアプリケーションを内蔵し、このアプリケーションが、プロジェクトデータ、前記技術的設備において現在生じている操業データ、または前記技術的設備における過去のアーカイブデータにアクセスする」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.に記載したとおり、引用例1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-07 
結審通知日 2010-04-13 
審決日 2010-04-26 
出願番号 特願2003-519718(P2003-519718)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 唐橋 拓史  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 長島 孝志
池田 聡史
発明の名称 料金評価機能を有するプロセス制御システム  
代理人 山口 巖  

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