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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1223364
審判番号 不服2008-3028  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-08 
確定日 2010-09-08 
事件の表示 特願2002-572524「インスタントメッセージングのユーザとクライアントの識別の分離」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月19日国際公開、WO02/73332、平成16年 8月26日国内公表、特表2004-526367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件出願は、2002年3月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年3月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年9月26日付けで手続補正がなされたが、同年11月6日付けで拒絶査定され、平成20年2月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年3月4日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成20年3月4日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年3月4日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正
本件補正は請求項1を以下のとおり補正しようとする補正事項を含むものである。
(補正前)
「【請求項1】
端末装置からネットワークにプリミティブを通信する方法であって、
前記プリミティブは、ネットワーク上で通信できる、端末装置と、少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造をもつ情報要素を有し、
前記プリミティブを識別する情報要素を前記プリミティブに提供すること、
前記端末装置のクライアントを識別する情報要素を前記プリミティブに提供すること(10b)、および
前記クライアントを識別する前記プリミティブにクライアントのユーザを識別する情報要素も提供すること(10a)を特徴とし、
前記クライアントがサービスを実施し、かつ前記クライアントが前記端末装置に設けられている方法。」

(補正後)
「【請求項1】
プリミティブを識別する情報要素、端末装置のクライアントを識別する情報要素および前記クライアントのユーザを識別する情報要素で構成されるプリミティブを提供し、
ネットワークを介して前記端末装置から少なくともいずれかのエンティティに前記プリミティブをメッセージとして伝達し、
前記クライアントが前記端末装置におけるサービスの実現方法であり、かつ前記クライアントがユーザの識別情報によってそれぞれ識別される1以上のユーザによって使用される方法。」

(2)補正の適否
そこで、上記補正事項について検討すると、補正前の請求項1に係る発明においては、請求項1に係る発明の「方法」が「端末装置からネットワークにプリミティブを通信する方法」とされていたところ、補正後の請求項1に係る発明においては、「前記クライアントが前記端末装置におけるサービスの実現方法であり」および「前記クライアントがユーザの識別情報によってそれぞれ識別される1以上のユーザによって使用される方法」との記載はあるものの、結局のところ請求項1に係る「方法」は何の方法であるのかが限定されていない。
さらに、補正前の請求項1に係る発明においては、「プリミティブは、ネットワーク上で通信できる、端末装置と、少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造をもつ情報要素を有し」とされていたところ、補正後の請求項1に係る発明においては、「プリミティブ」は「情報要素で構成され」、「ネットワークを介して前記端末装置から少なくともいずれかのエンティティに」「メッセージとして伝達」されるとされているのみであり、該情報要素が端末装置と少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造を有するか否かについては限定されていない。
よって、上記補正事項は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものとは認められず、さらに、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものではないことは明らかである。

(3)むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項に規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成20年3月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月26日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「端末装置からネットワークにプリミティブを通信する方法であって、
前記プリミティブは、ネットワーク上で通信できる、端末装置と、少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造をもつ情報要素を有し、
前記プリミティブを識別する情報要素を前記プリミティブに提供すること、
前記端末装置のクライアントを識別する情報要素を前記プリミティブに提供すること(10b)、および
前記クライアントを識別する前記プリミティブにクライアントのユーザを識別する情報要素も提供すること(10a)を特徴とし、
前記クライアントがサービスを実施し、かつ前記クライアントが前記端末装置に設けられている方法。」

4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、安藤大ほか著,「インターネット電話ソフト"VocaLink-Soft"の構成技術」,NTT R&D,第46巻,第9号,第977-984頁(以下、「引用例」という。)には、「インターネット電話ソフト"VocaLink-Soft"の構成技術」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「本論文では、インターネットにおける双方向リアルタイム音声通信を行うための技術的検討と,著者らが開発したインターネット電話ソフト“VocaLink-Soft”について述べる.さらに,“VocaLink-Soft”をより使いやすくする電話帳サービスを実現するデイレクトリサーバ“VocaLink-DSV”^((3))について述べる.」(第978頁左欄第10-14行)

イ.「2.3“VocaLink-Soft”のシステム構成
(1)システム構成
“VocaLink-Soft”は,Windows95をOSとするアプリケーションで,フロントエンド処理モジュール,呼設定処理モジュール,音声通信処理モジュールより構成される(図2).フロントエンド処理モジュールは,GUI部分とライブラリモジュールの制御部分(音声通信制御部,呼設定制御部)からなる.“VocaLink-Soft”のGUI画面を図3に示す.呼設定処理モジュールは,データ転送が確実に行われるようTCPを利用したチャネルをフロントエンドモジュールに対して提供する.音声通信処理モジュールは,呼設定終了後,音声の送受信処理を行う.また,ハードウェアとしては,DOS/Vパソコンと汎用のサウンドカード,ネットワークカードからなり,特別なハードウェアは必要としない.“VocaLink-Soft”の動作条件を表に示す.」(第979頁左欄下から3行-同頁右欄第12行)

ウ.「3.2“VocaLink-DSV”の構成法
(1)WWWブラウザの利用
クライアントでのディレクトリサーバのユーザ情報の表示方法には,既存のインターネットサービスとの親和性を確保するために,インターネットにおいて現在最も普及しているサービスであるWWW (World Wide Web)を利用する方法を採用した.すなわち,ティレクトリサーバ“VocaLink-DSV”上のデータをHTML化し,クライアントからWWWブラウザを使って,“VocaLink-DSV”上のユーザ情報を表示する方式とした.クライアントのWWWブラウザに表示される“VocaLink-DSV”のユーザ情報の例を図5に示す.また,クライアントでは,WWWブラウザのヘルパーアプリケーション^(+)として“VocaLink-Soft”を登録し,自動起動ができるようにする.
(2)“VocaLink-DSV”の構成
“VocaLink-DSV”の構成は,できるだけ処理負荷を軽くし,かつクライアントでWWWを利用するために,以下のとおりとした.“VocaLink-DSV”は,現在起動中のユーザ情報を内部に保持する.また,“VocaLink-DSV”は自身がhttpdの機能とHTMLのひな型ファイルを持ち,クライアントのWWWブラウザからのリクエストに対し,起動中のユーザ情報を埋め込んだHTMLデータを返す.この方法は,リクエストごとに新規のプロセスを作成しないため,処理負荷が小さい.また,HTMLファイルをその都度作成しないので,情報更新中の読出しの問題が生じない.」(第981頁左欄第28行-同頁右欄第9行)

エ.「3.3“VocaLink-DSV”のシステム構成
(1)システム構成
“VocaLink-DSV”は,UNIXマシン上で動作するデーモンプロセス+である.WSとしては,SUN社のWSが推奨で,SparcStationl0以上,OSはSUN-OS4.1.3以上である.また,クライアントには,一般的なWWWブラウザと“VocaLink-Soft”をインストールする.
(2)“VocaLink-DSV”と“VocaLink-Soft”間の通信
“VocaLink-DSV”と“VocaLink-Soft”間の通信について,図6に示す.クライアントで“VocaLink-Soft”を起動すると,起動時に“VocaLink-DSV”に対しログインコマンドを送信する.これを受信した“VocaLink-DSV”は,ログインコマンド中に含まれるユーザ情報とクライアントのIPアドレスを内部情報として保持する.また,“VocaLink-Soft”終了時は,“VocaLink-DSV”にログアウトコマンドを送信する.これを受信した“VocaLink-DSV”は,該当するユーザ情報を内部情報から削除する.」(第981頁右欄第10行-同頁同欄下から2行)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、以下のa.?d.の事項が記載されていることが読み取れる。
a.上記“VocaLink-Soft”はDOS/Vパソコン上で動作するアプリケーションで(摘記事項イ)、ディレクトリサーバ“VocaLink-DSV”はUNIXマシン上で動作するデーモンプロセスで(摘記事項エ)、クライアントで“VocaLink-Soft”を起動すると“VocaLink-DSV”に対しログインコマンド(TCP)を送信する(摘記事項エおよび図6)。ここで、“VocaLink-Soft”と“VocaLink-DSV”間の通信はインターネットを介して行われる(摘記事項ウ参照)ことを勘案すれば、上記ログインコマンド(TCP)はIPパケットとして送受信されるものと認めらるから、上記引用例には、DOS/VパソコンからネットワークにIPパケットを通信する方法が記載されていると言える。
b.IPパケットはそのヘッダーの送信元IPアドレスと送信先IPアドレスで送信元と送信先が認識されることは技術常識であるから、引用例のIPパケットは、ネットワーク上で通信できるDOS/Vパソコンと、ディレクトリサーバであるUNIXマシンとにより認識される送信元IPアドレスと送信先IPアドレスを有している、と言える。
c.さらにIPパケットのTCPセグメントのTCPヘッダーにはコードビット、送信元ポート番号が含まれることは技術常識であるが、上記コードビットはそのフラグの有無に応じて接続要求や切断要求などが行われこれによりパケットに意味持たせ識別する情報要素であると言え、また、上記送信元ポート番号は送信元の端末のアプリケーションを指定する情報であるが、上記引用例の場合、DOS/Vパソコンのアプリケーションである“VocaLink-Soft”を識別する情報要素であると言える。さらに、上記引用例のログインパケット(TCP)はそのログインコマンドの中にユーザ情報を含んでおり(摘記事項エおよび図6)、該ユーザ情報が“VocaLink-Soft”のユーザの情報であることは自明である。
d.上記引用例の“VocaLink-Soft”によりインターネット電話というサービスが実施される(摘記事項ア等)。

以上を総合すると、上記引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「DOS/VパソコンからネットワークにIPパケットを通信する方法であって、
前記IPパケットは、ネットワーク上で通信できる、DOS/Vパソコンと、ディレクトリサーバであるUNIXマシンとにより認識される送信元IPアドレスと送信先IPアドレスを有し、
前記IPパケットを識別する情報要素を前記IPパケットに備えさせること、
前記DOS/Vパソコンの“VocaLink-Soft”を識別する情報要素を前記IPパケットに備えさせること、および
前記“VocaLink-Soft”を識別する前記IPパケットに“VocaLink-Soft”のユーザ情報も備えさせ、
前記“VocaLink-Soft”がサービスを実施し、かつ前記“VocaLink-Soft”が前記DOS/Vパソコンに設けられている方法。」

5.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、
a. 引用発明の「DOS/Vパソコン」、「ディレクトリサーバであるUNIXマシン」はそれぞれ本願発明の「端末装置」、「少なくとも1つの他のエンティティ」に相当し、引用発明の「送信元IPアドレスと送信先IPアドレス」はIPヘッダの所定位置に所定フォーマットで記録され、送信元端末と送信先端末とにより認識される情報であるから「端末装置と、少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造をもつ情報要素」と言うことができる。
b.引用発明の「“VocaLink-Soft”」は端末装置上のアプリケーションであるから本願発明の「クライアント」に相当する。
c.引用発明の「IPパケットに備えさせる」等における「備えさせる」は本願発明の「提供する」と同義である。
d.引用発明の「IPパケット」はそのTCPヘッダーのコードビットやデータ部分によりメッセージとしての意味を付与されていると認められる。一方、本願明細書の「すでに述べたように、IMサービス機能層12は、メッセージフロー、交換されたプリミティブ(メッセージ)の名称を含んでおり」(段落【0020】)、「IMクライアントとプレゼンスサーバ間のプリミティブメッセージの流れである。」(【0054】)等の記載によれば、本願発明の「プリミティブ」はメッセージであるということができるから、引用発明の「IPパケット」と本願発明の「プリミティブ」はいずれも端末装置からネットワークに通信されるメッセージである点で共通している。
e.引用発明の「ユーザ情報」と本願発明の「ユーザを識別する情報要素」はいずれも「ユーザに関する情報」である点で共通している。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「端末装置からネットワークにメッセージを通信する方法であって、
前記メッセージは、ネットワーク上で通信できる、端末装置と、少なくとも1つの他のエンティティとにより認識される構造をもつ情報要素を有し、
前記メッセージを識別する情報要素を前記メッセージに提供すること、
前記端末装置のクライアントを識別する情報要素を前記メッセージに提供すること、および
前記クライアントを識別する前記メッセージにクライアントのユーザに関する情報も提供することを特徴とし、
前記クライアントがサービスを実施し、かつ前記クライアントが前記端末装置に設けられている方法。」

(相違点1)
引用発明の方法により通信されるメッセージが「IPパケット」であるのに対し、本願発明の方法により通信されるメッセージが「プリミティブ」である点。
(相違点2)
「ユーザに関する情報」が、引用発明では「ユーザ情報」であるのに対し、本願発明では「ユーザを識別する情報要素」である点。

そこで上記相違点について検討する。
(相違点1)について
本願明細書の「図解されるプリミティブのそれぞれが、アセンブリのため、および送信端にあるコンピュータ読み取り可能媒体内での少なくとも一時的な記憶のため、および受信端での少なくとも一時的な記憶、分解および処理のためのデータ構造を構成することが理解されなければならない。」(【0068】)などの記載によれば、本願発明の「プリミティブ」はCPUにより直接解読される機械言語、命令、データ等を意味するものと解される。
一方、引用発明の「IPパケット」は、それぞれ決められたビット数からなる複数の情報フィールドから構成された機械語であると言えるから、引用発明の「IPパケット」は本願発明の「プリミティブ」と比較してそのデータ構造上格別相違するメッセージであるとはいえない。
(相違点2)について
引用発明のユーザ情報はIPパケットで送信されるログインコマンドの中に含まれている情報であるが、ログイン時のユーザ情報がユーザを識別するために用いられることは技術常識であるから、引用発明の「ユーザ情報」を「ユーザを識別する情報要素」とすることに格別の困難性はない。

また、本願発明の奏する効果は、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-02 
結審通知日 2010-04-06 
審決日 2010-04-19 
出願番号 特願2002-572524(P2002-572524)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 真之吉田 隆之  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 高野 洋
新川 圭二
発明の名称 インスタントメッセージングのユーザとクライアントの識別の分離  
代理人 朝日奈 宗太  

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