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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20086549 | 審決 | 特許 |
不服20057354 | 審決 | 特許 |
不服200722790 | 審決 | 特許 |
不服20078928 | 審決 | 特許 |
不服20078614 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C12Q 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12Q 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12Q 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C12Q |
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管理番号 | 1223392 |
審判番号 | 不服2007-12532 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-05-01 |
確定日 | 2010-09-03 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第527893号「補体系蛋白の高親和性核酸リガンド」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月 7日国際公開、WO97/28178、平成12年 5月16日国内公表、特表2000-505646〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は,1997年1月30日(優先権主張1996年2月1日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成19年1月23日付で拒絶査定がなされたところ,平成19年5月1日に審判請求がなされるとともに,平成19年5月31日に手続補正がなされたものである。 第2 平成19年5月31日の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年5月31日の手続補正を却下する。 [理由] 1.本件補正により,請求項1は, 「補体系蛋白に高い親和性で特異的に結合し、前記補体系の活性化阻害剤である、精製単離した、核酸リガンド。」 から, 「補体系蛋白に高い親和性で特異的に結合し、前記補体系の活性化阻害剤である、精製単離した、非天然核酸リガンドであって、前記リガンドが、配列番号:5?20に示した配列および補体系蛋白との結合およびその阻害において配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力をもつ核酸配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなるRNAである前記核酸リガンド。」に補正された。 上記補正は,補正前の請求項1の「核酸リガンド」を,「非天然核酸リガンドであって、前記リガンドが、配列番号:5?20に示した配列および補体系蛋白との結合およびその阻害において配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力をもつ核酸配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなるRNAである核酸リガンド」に限定するもので,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の前記請求項1及び4に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するかどうか)について,以下に検討する。 2.当審の判断 (1)特許法第36条第6項第1号,第2号及び第4項について i)本願補正発明の「配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力」という発明特定事項について,本願明細書の表2には,配列番号9,10,12,14及び17のものについてはKd値が示されているが,その他のものは不明であり,結合親和性も明らかでないし,また,実施例2の「B.競合」及び「C.消費」の項を見ても,ほとんどの文は現在形で記載され,配列番号12のものが,C1qのA鎖残基14?26サイトと結合し,β-アミロイド1?40ペプチドのC1q活性化を阻害したかも明らかでなく,ましてや配列番号12以外のものについては,どのような能力があるのか全く明らかでなく,「配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力」の技術的内容が不明確であるだけでなく,「本質的」がどの程度の差異までを許容しているかも不明確であり,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないので,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。 ii)本願補正発明のうち,「補体系蛋白に高い親和性で特異的に結合し、前記補体系の活性化阻害剤である、精製単離した、非天然核酸リガンドであって、前記リガンドが、補体系蛋白との結合およびその阻害において配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力をもつ核酸配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなるRNAである前記核酸リガンド。」について,実施例に具体的に示される配列番号:5?20のものさえ,高い親和性で特異的に結合し、補体系の活性化を阻害することが明らかにされていないし,その他の立体構造の大きく異なる核酸リガンドを取得するためには、無数の核酸群の中からC1qに特異的に結合し,その機能を阻害することができるものを選択する必要があるが、本願の実施例でも50塩基のランダムな配列のライブラリーを用いており,このライブラリーは理論的には10^(30)もの種類もあって,実際にはこのごく一部しか利用できないことになるので,様々な立体構造の異なる核酸リガンドを取得することは,当業者にとって過度の試行錯誤を要するものである。また,配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力によって特異的に結合し,その機能を阻害することができるものを選択するのには,更に過度の試行錯誤を要するものである。 よって、発明の詳細な説明は、本願補正発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められないし,そのような発明が発明の詳細な説明に記載されていることにならず,特許法第36条第4項及び第6項第1号に規定する要件を満たしていないので,特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。 なお,この点について,本願明細書14頁下から7行目から15頁10行目に記載するように当業者であれば過度の実験を要することなく同定することができ,実施例では、補体系の活性化阻害の試験方法が記載されており、当業者であれば試験しようとするヌクレオチド配列が補体系蛋白の阻害をなしうるかどうかにつき、容易に決定することができることを,請求人は主張しているが,高い親和性で特異的に結合し、補体系の活性化を阻害するものが,それなりの頻度で取得できることさえ明らかにされていないから,採用できない。 (2)特許法第29条第2項について i)引用例2 原査定の拒絶の理由に,引用例2として引用された,本願優先日前に頒布された刊行物である特表平5-507413号公報(以下,「引用例2」という。)には,「好ましくは無作為配列のセグメントから成る核酸の混合体から出発して、SELEXとここで呼ばれる方法には以下のステップか含まれる:結合に有利な条件下で混合物を標的と接触させる。標的分子に結合した核酸と結合した核酸を分離する;核酸-標的対を解離する;核酸-標的対から解離した核酸を増幅してリガンドか濃度化した核酸の混合物を作り、ついて結合、分離、解離および増幅の段階を望みの回数たけ繰り返す。・・・・」(7頁右上欄18行?)とSELEX法の説明が記載され, 「標的分子に結合する核酸リガンドは、標的分子の機能を特異的に修飾するものを選択する、たとえば標的分子の機能の阻害剤または活性化物質などである。標的の機能を修飾するのに効果的な核酸リガンドの選択されたある量を標的分子と結合させて望みの機能的修飾を実現する。この方法はとくに標的か蛋白質であるときに適用可能である。この方法のとくに有用な適用は蛋白機能を阻害することであり、たとえばエフェクターへのレセプターの結合を阻害または酵素触媒作用を阻害する。この場合、標的蛋白質阻害に効果的な選択核酸分子を標的蛋白質と結合させて望みの阻害目的を達成する。」(9頁右上欄21行?左下欄7行)と記載され,具体的に実施した例が実施例として記載されている。 ii)引用例4 原査定の拒絶の理由に,引用例4として引用された,本願優先日前に頒布された刊行物であるCritical Reviews in Clinical Laboratory Sciences, 1995, vol.32, p.265-298(以下,「引用例4」という。)は,「補体の生理学と病理生理学:進歩と傾向」の表題のレビューであり,例えば,267頁下から14行?269頁5行に,C1qが補体の古典的経路の最初の成分の1つであり,コンフォーメーションの変化によりプロエンザイムC1rの自発活性化を開始することが記載されている。 iii)対比 引用例2に記載されるSELEX法により得られる核酸リガンドは,標的である蛋白の機能を阻害することが有用な適用であることが記載されているから,本願補正発明と引用例2に記載される発明は,「蛋白に特異的に結合し、活性化阻害剤である、精製単離した、核酸リガンド」する点で一致しているが,本願補正発明が「補体系蛋白に高い親和性で特異的に結合し、前記補体系の活性化阻害剤である、精製単離した、非天然核酸リガンドであって、前記リガンドが、配列番号:5?20に示した配列および補体系蛋白との結合およびその阻害において配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力をもつ核酸配列からなる群より選択されるヌクレオチド配列からなるRNAである前記核酸リガンド」である点で相違している。 iv)判断 引用例4に記載される補体,特にC1qに興味のある当業者であれば,C1qの補体の古典的系を開始させるという機能を阻害したり,活性化したりすることができるリガンドに興味を抱くものであり,引用例2に記載されるSELEX法は,様々な標的分子に対して,それを阻害する核酸リガンドが得られる可能性のある方法なのであるから,SELEX法によりC1qの機能を阻害する核酸リガンドを得ようとすることを容易に想到できるものである。 そして,本願補正発明の核酸リガンドが,C1qの機能を阻害する程度も明らかにされておらず,格別顕著な作用効果があるものと認めることができない。 したがって,本願補正発明は,引用例2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許出願の際,独立して特許を受けることができないものである。 なお,請求人は,引用例1-4には特定の配列からなる核酸リガンドは記載も示唆もされていないことを主張しているが,本願補正発明は,「配列番号:5?20の1つと本質的に同じ能力をもつ」ものも含んでおり,特定の配列からなる核酸リガンドに限定されたものでないので,該主張を採用することはできない。 (3)むすび したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成19年5月31日の手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年9月14日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「補体系蛋白に高い親和性で特異的に結合し、前記補体系の活性化阻害剤である、精製単離した、核酸リガンド。」 第4 当審の判断 本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明を,その態様として含むものである。 したがって,前記「第2 2.当審の判断(1)ii)」と同様の理由により,発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。 また,前記「第2 2.当審の判断(2)」と同様の理由により,本願発明は,引用例2及び4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから,本願は,特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないし,また,本願発明は,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 したがって,本願に係るその他の請求項について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-07 |
結審通知日 | 2010-04-08 |
審決日 | 2010-04-20 |
出願番号 | 特願平9-527893 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(C12Q)
P 1 8・ 537- Z (C12Q) P 1 8・ 575- Z (C12Q) P 1 8・ 121- Z (C12Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山中 隆幸、内藤 伸一 |
特許庁審判長 |
平田 和男 |
特許庁審判官 |
深草 亜子 鵜飼 健 |
発明の名称 | 補体系蛋白の高親和性核酸リガンド |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 江尻 ひろ子 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 小野 新次郎 |
代理人 | 小林 泰 |