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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1223446 |
審判番号 | 不服2008-18780 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-24 |
確定日 | 2010-09-09 |
事件の表示 | 平成11年特許願第218944号「印刷装置、および、印刷方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 2月13日出願公開、特開2001- 38892〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年8月2日の出願であって、平成18年5月12日付けで通知された拒絶理由に対し、同年7月20日に手続補正書が提出されたが、平成20年6月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月24日付けで審判請求がされるとともに手続補正書が提出され、その後、当審から送付した審尋に対し、平成22年3月3日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成20年7月24日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年7月24日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)補正事項 平成20年7月24日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、本件補正前の平成18年7月20日付け手続補正書により補正された、 「【請求項1】 複数のノズルユニットからなるノズルブロックを複数個備え、該ノズルブロックから吐出されるインク滴により印刷媒体上にインクドットを形成して、該インクドットの分布により画像を記録する印刷装置であって、 前記ノズルブロックは、インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成し、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力する画像データ入力手段と、 前記入力された画像データに基づき、インクドットの形成の可否を判断するインクドット形成判断手段と、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を補正するインクドット形成条件補正手段と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動するノズルブロック駆動手段と を備える印刷装置。 【請求項2】 請求項1記載の印刷装置であって、 少なくとも1つのノズルブロックを構成するノズルユニットは、全て同一色のインク滴を吐出する印刷装置。 【請求項3】 インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成するノズルブロックから吐出されるインク滴により、入力された画像データに基づき、印刷媒体上にインクドットを形成して、インクドットの分布により画像を記録する印刷方法であって、 前記入力された画像データに基づき、インクドットの形成の可否を判断し、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を補正し、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動する印刷方法。 【請求項4】 インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成するノズルブロックから吐出されるインク滴により、入力された画像データに基づき、印刷媒体上にインクドットを形成して、インクドットの分布により画像を記録するためのプログラムをコンピュータに読み取り可能にした記録媒体であって、 前記入力された画像データに基づき、インクドットの形成の可否を判断する機能と、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を補正する機能と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動する機能と をコンピュータに実現させるプログラムを記録した記録媒体。 【請求項5】 インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成するノズルブロックから吐出されるインク滴により、入力された画像データに基づき、印刷媒体上にインクドットを形成して、インクドットの分布により画像を記録するためのプログラムのデータをコンピュータに読み取り可能にした記録媒体であって、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を補正するためのプログラムのデータを記録した記録媒体。」 から、 「【請求項1】 複数のノズルユニットからなるノズルブロックを複数個備え、該ノズルブロックから吐出されるインク滴により印刷媒体上にインクドットを形成して、該インクドットの分布により画像を記録する印刷装置であって、 前記ノズルブロックは、インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成されており、 1つのノズルブロックを構成する複数のノズルユニットは、それぞれ同一色のインク滴を吐出するノズルユニットであり、 前記複数のノズルブロックは、それぞれ異なる色のインク滴を吐出するノズルブロック であり、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力する画像データ入力手段と、 前記入力された画像データの階調値と閾値マトリクスの閾値とを比較して、インクドットの形成の可否を判断するインクドット形成判断手段と、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、前記ノズルブロック毎に用意された各閾値マトリクスの閾値を補正することによって、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を前記ノズルブロック毎に異ならせて補正するインクドット形成条件補正手段と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動するノズルブロック駆動手段と を備える印刷装置。 【請求項2】 インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成された複数のノズルブロックから吐出されるインク滴により、入力された画像データに基づき、印刷媒体上にインクドットを形成して、インクドットの分布により画像を記録する印刷方法であって、 1つのノズルブロックを構成する複数のノズルユニットは、それぞれ同一色のインク滴を吐出するノズルユニットであり、 前記複数のノズルブロックは、それぞれ異なる色のインク滴を吐出するノズルブロックであり、 前記入力された画像データの階調値と閾値マトリクスの閾値とを比較して、インクドットの形成の可否を判断し、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、前記ノズルブロック毎に用意された各閾値マトリクスの閾値を補正することによって、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を前記ノズルブロック毎に異ならせて補正し、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動する印刷方法。」 に補正された。 上記補正は、請求項1を削除して、補正前の請求項2を請求項1とし、補正後の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「ノズルブロック」が、「複数」であって、「それぞれ異なる色のインク滴を吐出する」ものであるこという限定を付加し、同じく補正後の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「インクドット形成判断手段」における「インクドットの形成の可否の判断」について、「画像データの階調値と閾値マトリクスの閾値を比較」するという限定を付加し、同じく補正後の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「インクドット形成条件補正手段」について「ノズルブロック毎に用意された各閾値マトリクスの閾値を補正することによって」、インクドットの形成頻度を「ノズルブロック毎に異ならせる」という限定を付加したものである。 また、補正前の請求項3を請求項2とし、補正後の請求項1に付加した限定と同様の限定を付加し、さらに補正後の請求項2に記載した発明を特定するための事項である「ノズルユニット」が、「それぞれ同一色のインク滴を吐出する」ものであるという限定を付加したものである。 以上のことから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。 (2)引用刊行物 (2-1)引用刊行物1 本願の出願前に頒布された特開平11-138861号公報(原査定の拒絶理由における引用文献1、以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、交換可能な記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、パソコンやワードプロセッサー等のOA機器が広く普及している。これらの機器で入力された情報を出力する方式の一つとして、インクを吐出して被記録材に付着させることで所望の記録を得るインクジェット記録法がある。これは、複数の吐出口を備えたインクジエツトヘツドを用いるもので、機械的あるいは熱的なエネルギーを利用して吐出口からインクを飛翔させることによって被記録材に付着させ、記録を行う。 【0003】このような記録法は、特にカラー画像読み取り装置やカラービデオ装置などに接続され、カラー写真やカラー原稿の再生を行う記録装置に適用される要求が高まっている。この要求から、複数のインクを使用して行うカラーインクジェット記録装置の開発が盛んになされている。このようなカラー記録にあっては、中間調(ハーフトーン)画像の記録が要求されるとともに、高精細のカラー画像記録が要望されている。 【0004】これらの要望を満足するためには、複数の吐出口すべてを同一径とすること、あるいは形成された吐出口の方向性が等しいこと、さらには吐出圧をまったく一定とすること等が要求される。 【0005】しかしながら、インクジェット記録ヘッドは現状において、構造あるいは製造上の特徴からヘツド固有の吐出口間のばらつき、あるいは熱エネルギーを利用するタイプのヘッドでは抵抗体の抵抗値の差異がわずかではあるが発生してしまう。」 (1b)「【0094】(PWMによる補正法)ここでは、本実施例で用いているヘッド毎の吐出量バラツキを補正し、最適な画像形成を行うための方法であるPWM制御方法を更に有効に利用するための方法について述べる。 【0095】PWMの制御条件は、ヘッドの装着された本体に、電源を入れたときに本体側に、ヘッドのROM情報としてID番号・色・駆動条件・HSデータとともに読み込まれる。本実施例では、PWMの制御条件としてテーブルポインタ:T_(A3)を読みとる。後述する様に、この番号T_(A3)はヘッドの吐出量(V_(DM))に対応した番号が付けられており、読み込まれたT_(A3)に従って、本体側ではPWMのプレヒートパルス幅:P1 の上限値を決める。 (中略) 【0101】(3)PWM制御のテ-ブル決定: 1.吐出量の多いヘッドでは、25.0℃の時のプレヒ-トパルス幅P_(1) の値を標準駆動条件(P_(1) =1.867μsec )より短くして吐出量を少なくし、標準吐出量V_(D0)に近づける。 2.吐出量の少ないヘッドでは、25.0℃の時のプレヒ-トパルス幅P_(1) の値を標準駆動条件(P_(1) =1.867μsec )より長くして吐出量を多くし、標準吐出量V_(D0)に近づける。 3.上記の動作は図63に示されているように、各ヘッドの吐出量に応じてテ-ブルポインタT_(A3)とプレヒ-トパルス幅P_(1) の関係がが決められており、常に標準吐出量V_(D0)になるよう設定してある。 4.このような方法によって、標準吐出量V_(D0)( 30.0ng/dot)に対して±0.6(ng/dot)の吐出量バラツキを補正することが可能となった。 【0102】以上のように、PWM制御用テ-ブルポインタT_(A3)をヘッドのROM情報として読み込み、本体側の設定条件(駆動条件)を変えることで、ヘッド毎の吐出量バラツキを吸収することが可能となり、交換可能なヘッドを用いた本体でも簡単にカラ-画質の安定化が可能となった。さらに、ヘッドの歩溜りを向上させることができるので、カ-トリッジヘッドのコストをも低減させることが可能となった。」 インクジェット記録装置において、画像データの入力を画素毎に行うことが通常であることを考慮すると、これらの記載から、引用刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「複数の吐出口を備えたインクジェットヘッドを用い、吐出口から被記録材にインクを飛翔させることによって被記録材に付着させて記録を行うインクジェット記録装置において、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力するOA機器と、 予め検出された標準吐出量に対するインクの吐出量バラツキに基づき、インクの吐出量を補正する補正手段と、 補正されたインクの吐出量に基づき、ヘッドを駆動する駆動手段 を備えるインクジェット記録装置。」 (2-2)周知文献1 同じく本願の出願前に頒布された特開平6-8428号公報(原査定の拒絶理由における引用文献2、以下、「周知文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (2a)「【0015】また本発明では各ノズル毎に最大印加電圧を設定可能としたが、図5の様に一定の数のノズルで1ユニットを構成し、複数のユニットでラインヘッドを構成する場合がある。図6の301はノズル、302はユニットである。このような場合にはユニット内での各ノズルから吐出されるインク量はほとんど一定であるがユニット間のばらつきが大きい場合が多々ある。(中略) 【0016】また、複数のヘッドを持つ印写装置において各ヘッド毎に最大印加電圧を設定しても同様の効果が得られる。特にこのように複数のヘッドからなる印写装置は大部分がカラー印写装置であるが、カラー印写装置は各色毎にインク特性が異なりインク量が異なり、色再現性を著しく劣化させるため、各色毎(各ヘッド毎)異なる最大印加電圧を設定しなければならない。そのため前述した駆動方法をもちいてヘッド毎に適切なパルス幅を選択し、印加最大電圧を設定する。」 (2b)図6は以下のとおりのものである。 【図6】 (2-3)周知文献2 同じく本願の出願前に頒布された特開平6-198876号公報(原査定の拒絶理由における引用文献3、以下、「周知文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (3a)「【0012】 【実施例】図1は本発明に於けるインクジェット式印字ヘッドの上面図で、図2は、図1に於けるA-A断面図、図3は、図2に於けるC部拡大図、図4は、図1に於けるB-B断面図である。 【0013】図1?図4に於いて、インクはインク流路板106に形成されたインク供給孔113よりインク流路110を通って隔壁板104とノズルプレート105と振動板103により構成された各インク室302に供給される。 【0014】各インク室302に対応して圧電素子101と、インク開口部102が配置されており、圧電素子101はベース板107上に配置され、FPC108を介したプリンタ本体からの電気信号により伸縮運動を繰り返しノズル開口部102よりインクを吐出する。」 (3b)「【0033】ここで、圧電素子101は先にも述べたように、内部電極を厚膜印刷した焼成体であるため内部電極印刷精度、焼成状態、製造ロットにより特性にバラツキを生じる。この為、ベース板ユニット毎に、バルク状圧電体を加工した後の各圧電素子101の変位特性を測定し、予め設定された数段階のクラスに変位特性別に分類した。この後、同じクラスのベース板ユニットを配列する事で1つのヘッドを構成した。この事で、従来、静電容量等の代用値で行っていた事前検査が、ベース板に固定された圧電素子の変位という、インク吐出特性を左右する直接的な要因で管理出来た。」 (2-4)周知文献3 同じく本願の出願前に頒布された特開平5-124221号公報(原査定において周知文献として提示した文献、以下、「周知文献3」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (4a)「【0008】ドット径またはドット濃度の変調が可能な記録方式の場合は各記録素子で記録するドット径を入力に応じて変調することで階調記録を達成することが知られている。例えばピエゾ方式やバブルジェット方式によるインクジェット記録ヘッドでは、各ピエゾ素子や電気熱変換素子等の吐出エネルギ発生素子に印加する駆動電圧またはパルス幅を、サーマルヘッドでは各ヒータに印加する駆動電圧またはパルス幅を入力信号に応じて変調することを利用すれば、各記録素子によるドット径またはドット濃度を均一にし、濃度分布を図21(e) のように均一化することが可能であると考えられる。また駆動電圧またはパルス幅の変調が不可能もしくは困難な場合、あるいはそれらを変調しても広い範囲での濃度調整が困難な場合、例えば1画素を複数ドットで構成する場合においては、入力信号に応じて記録するドットの数を変調し、濃度の低い部分に対しては多数のドットを、濃度の高い部分に対しては少ない数のドットを記録することができる。また、1画素を1ドットで構成する場合においては、インクジェット記録装置では1画素に対するインク吐出数(打込み回数)を変調することによりドット径を変化させることもできる。これらにより、濃度分布を図21(e) のように均一化することができるわけである。」 (2-5)周知文献4 同じく本願の出願前に頒布された特開平3-53663号公報(前置報告書において周知文献として提示した文献、以下、「周知文献4」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。 (5a)「上記のインクジェットカラー記録装置を含むインクジェットカラー記録装置においては、一般にインクジェットカラー記録装置で作画された画像の全体または一部の色調を変更する場合、閾値マトリクスの閾値を変更し、再度作画を行なう。そして、所望の色調の記録画像が得られるまで、何度でも閾値マトリクスの閾値の変更と作画を繰り返す。従って、所望の記録画像が得られるまで、長い試行時間を必要とすることがあった。」(第2ページ右上欄第2?10行) (3)対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の 「吐出口」、 「インク」、 「被記録材」、 「インクジェット記録装置」、 「OA機器」、 「標準吐出量に対するインクの吐出量バラツキ」 は、それぞれ、本願補正発明の 「ノズル」、 「インク滴」、 「印刷媒体」、 「印刷装置」、 「画像データ入力手段」、 「インクの吐出量バラツキ」 に相当する。 また、インクジェット記録装置において、被記録材にインクを飛翔させて記録を行う際には、インクは滴状で飛翔するのであるから、引用発明は、被記録材上にインクのドットを形成しているものと認められる。 してみると、両者は、 「インク滴により印刷媒体上にインクドットを形成して、該インクドットの分布により画像を記録する印刷装置であって、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力する画像データ入力手段と、 予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件を補正するインクドット形成条件補正手段と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、ノズルを駆動する駆動手段と を備える印刷装置。」 の点で一致し、 以下の点で相違する。 ・相違点1 本願補正発明では、ノズルが、インクの吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成されているノズルブロックを複数個備え、1つのノズルブロックを構成する複数のノズルユニットは、それぞれ同一色のインク滴を吐出するノズルユニットであり、複数のノズルブロックは、それぞれ異なる色のインク滴を吐出するノズルブロックであるのに対し、引用発明ではノズルが複数のノズルユニットからなるノズルブロックを複数個備えたものではない点。 ・相違点2 インクドット形成条件補正手段が、本願補正発明では、単位面積当たりのインクドットの形成頻度をノズルブロック毎に異ならせて行っているのに対し、引用発明ではインクの吐出量を変更している点。 ・相違点3 インクドットの形成にあたって、本願補正発明では、入力された画像データの階調値と閾値マトリクスの閾値とを比較して、インクドットの形成の可否を判断して行い、形成条件を変更する際には、閾値マトリクスの閾値を補正することによって行っているのに対し、引用発明では閾値マトリクスを有していない点。 上記相違点について検討する。 ・相違点1について インクジェット記録装置に用いられるノズルを複数のユニットから構成すること、かかる複数のユニットの特性を揃えるようにすることは、周知文献1及び2等にみられるように、いずれも周知である。上記周知技術に接した当業者であれば、引用発明におけるノズルの形状を、複数のユニットからなるノズルブロックの形状とすることは、適宜なし得ることである。 ・相違点2について 濃度分布を均一化するための手法として、印加する駆動電圧やパルス幅を変調して吐出量を調整するか、又はドット形成の頻度を変更するかを選択することは、周知文献3等に記載されているように周知である。してみると、インクドットの形成条件を変更するにあたり、引用発明におけるインクの吐出量の制御に代えて、インクドットの形成頻度を変えるようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。 ・相違点3について インクジェット記録装置におけるインクの吐出量を変更するために、閾値マトリクスを用いて、閾値の値を変更して量を変更するようにすることは、周知文献4に記載されているように周知の構成である。したがって、引用発明におけるインクドットの形成条件の変更にあたって、閾値マトリクスを用いて、閾値の値を変更して行うようにすることは、当業者が適宜容易になし得ることである。 効果の点についても、本願補正発明の効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る程度のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (4)補正案について 審判請求人は、平成22年3月3日付けの審尋に対する回答書において、以下の補正案を提示している。 「[請求項1] 複数のノズルを備えるノズルユニットの複数からなるノズルブロックを複数個備え、該ノズルブロックから吐出されるインク滴により印刷媒体上にインクドットを形成して、該インクドットの分布により画像を記録する印刷装置であって、 前記ノズルユニットは、インク滴の吐出量によりランク分けされており、 前記ノズルブロックは、同一ランクのノズルユニットを複数個組み合わせて構成されており、 1つのノズルブロックを構成する複数のノズルユニットは、それぞれ同一色のインク滴を吐出するノズルユニットであり、 前記複数のノズルブロックは、それぞれ異なる色のインク滴を吐出するノズルブロックであり、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力する画像データ入力手段と、 前記入力された画像データの階調値と閾値マトリクスの閾値とを比較して、インクドットの形成の可否を判断するインクドット形成判断手段と、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、前記ノズルブロック毎に用意された各閾値マトリクスの閾値を補正することによって、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を前記ノズルブロック毎に異ならせて補正するインクドット形成条件補正手段と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動するノズルブロック駆動手段と を備え、 前記ノズルブロック駆動手段は、1つの駆動波形生成回路によって生成した駆動信号を前記複数のノズルブロックの複数のノズルユニットに供給する、 印刷装置。」 しかしながら、上記周知文献2の段落【0033】には、「ベース板に固定された圧電素子の変位という、インク吐出特性を左右する直接的な要因で管理出来た。」と記載されていることから、圧電素子の変位特定と、インクの吐出特性は直接的な要因であることが示されているといえる。してみると、引用刊行物3に記載の圧電素子の変位特性のクラス分けは、実質的にインク滴の吐出量によるランク分けに相当するといえる。 また、同じく周知文献2の段落【0014】には、「FPC108を介したプリンタ本体からの電気信号により伸縮運動を繰り返しノズル開口部102よりインクを吐出する。」と記載されていることから、1つの駆動波形生成部材である、プリンタ本体によって生成された駆動信号によって駆動されているといえる。 してみると、上記補正案についても、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記補正案を採用することはできない。 (5)補正の却下の決定についてのむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成20年7月24日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成18年7月20日付け手続補正書により補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数のノズルユニットからなるノズルブロックを複数個備え、該ノズルブロックから吐出されるインク滴により印刷媒体上にインクドットを形成して、該インクドットの分布により画像を記録する印刷装置であって、 前記ノズルブロックは、インク滴の吐出量が略同一であるノズルユニットを複数個組み合わせて構成し、 印刷すべき画像の画像データを画素毎に順次入力する画像データ入力手段と、 前記入力された画像データに基づき、インクドットの形成の可否を判断するインクドット形成判断手段と、 前記ノズルブロック毎に、予め検出されたインク吐出量のバラツキに基づき、インクドットの形成条件としての単位面積当たりのインクドットの形成頻度を補正するインクドット形成条件補正手段と、 前記補正されたインクドットの形成条件に基づき、前記ノズルブロックを駆動するノズルブロック駆動手段と を備える印刷装置。」 (2)引用刊行物 これに対して、引用刊行物の記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、本願補正発明の「ノズルユニット」、「ノズルブロック」、「インクドットの形成の可否の判断」、「インクドット形成条件補正手段」に対して付加されていた限定を省き、「ワークステージ機構」に対して付加されていた「マスクと所定の微小間隔を有するように」という限定を省いたものである。 してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-12 |
結審通知日 | 2010-07-13 |
審決日 | 2010-07-27 |
出願番号 | 特願平11-218944 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 徹三 |
特許庁審判長 |
木村 史郎 |
特許庁審判官 |
柏崎 康司 一宮 誠 |
発明の名称 | 印刷装置、および、印刷方法 |
代理人 | 特許業務法人明成国際特許事務所 |