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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G08C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G08C
管理番号 1223452
審判番号 不服2008-28622  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-10 
確定日 2010-09-09 
事件の表示 特願2004-351523「産業機械のデータ転送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-163601〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年12月3日の出願であって、平成20年3月21日付けで拒絶理由が通知され、平成20年4月24日付けで手続補正(以下、「本件補正1」という。)がなされたが、同年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年同月14日付けにて手続補正(以下、「本件補正2」という。)がなされたものである。
さらに、平成22年3月15日付けで審尋がなされ、回答書が同年4月21日付けで請求人より提出されたものである。

第2 本件補正2についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年11月14日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 補正後の本願発明
本件補正2により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 産業機械を制御する制御装置に、該制御装置の固有の転送周期でシリアル通信でデータを転送するデータ転送装置であって、前記産業機械に取り付けられたセンサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと前記ディジタル信号に含まれるノイズを除去するディジタルフィルタを含むアナログインタフェースを有し、前記A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期を前記シリアル通信による転送周期よりも短いものとしたことを特徴とする産業機械のデータ転送装置。」
から
「【請求項1】 産業機械を制御する制御装置に、該制御装置の固有の転送周期でシリアル通信でデータを転送するデータ転送装置であって、
前記産業機械に取り付けられたセンサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと前記ディジタル信号に含まれるノイズを除去するディジタルフィルタを含むアナログインタフェースを有し、
前記A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期を前記シリアル通信による転送周期よりも短いものとし、該転送周期より短いサンプリング周期で変換されたディジタル信号を前記ディジタルフィルタによりフィルタ処理して得られた信号を転送することを特徴とする産業機械のデータ転送装置。」
と補正された。(下線は補正箇所を示す。)

本件補正2は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「データ転送装置」を「該転送周期より短いサンプリング周期で変換されたディジタル信号を前記ディジタルフィルタによりフィルタ処理して得られた信号を転送する」と限定したものを含むものである。
したがって、本件補正2は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年法改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 引用刊行物およびその記載事項
(1)本願出願前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である特開平6-301882号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「信号処理用集積回路及び信号処理装置」について、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与した。)
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、工業計測分野において例えば温度、圧力、重量等の検出用センサーから得られるアナログ検出情報をデジタル情報に変換するための信号処理用集積回路及び、この信号処理用集積回路を用いた信号処理装置に関する。」

イ 「【0016】
【実施例】以下、実施例を図面に基いて説明する。図3に、例えば熱電対や測温抵抗等の検出手段1からのアナログ入力信号をデジタル出力信号に変換して外部装置に通信させるための信号処理装置を示している。この信号処理装置は、検出手段1からのアナログ入力信号を増幅し、且つ、デジタル出力信号に変換するための信号処理用集積回路2と、各種の信号処理を行うマイクロコンピュータ3〔制御装置の一例〕と、マイクロコンピュータ3の制御手順を予め記憶してある電気的に書き込み、消去可能な読み出し専用メモリー(EEPROM)4、信号処理用集積回路2とマイクロコンピュータ3とを電気的に絶縁した状態で所定の電圧を供給するDC/DCコンバータ5〔雑音除去部の一例〕及び、信号処理用集積回路2とマイクロコンピュータ3との間において、電気的に絶縁した状態で、信号伝達のみを許容するフォトカプラ6〔雑音除去部の一例〕等で構成される。
【0017】前記信号処理用集積回路2は、図1に示すように、検出手段1からの信号を増幅するとともに、入力情報の選択を行う入力アンプ部7、シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8、ローパスフィルター9、データレジスタ10、調歩同期式シリアル通信回路11〔通信処理部の一例〕、基準電圧を発生する基準電源12、後述する制御指令を記憶するコマンドステータレジスタ13等で構成され、こられの各部が集積回路内に混載されて構成されている。」

ウ 図1には、「入力アンプ部7の信号が入力するシグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8と、シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8の出力が入力されるローパスフィルター9と、ローパスフィルタの出力が入力されるデータレジスタ10とデータレジスタのデータをマイクロコンピュータ3〔制御装置の一例〕に転送する調歩同期式シリアル通信回路11〔通信処理部の一例〕が描かれている。
そうすると、これらの記載と図面を総合すると、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。

「検出手段1からのアナログ入力信号を増幅するとともに入力情報の選択を行う入力アンプ部7の信号が入力されるシグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8と、シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8の出力が入力されるローパスフィルター9と、ローパスフィルタの出力が入力されるデータレジスタ10とデータレジスタのデータをマイクロコンピュータ3に転送する調歩同期式シリアル通信回路11。」(以下、「引用発明」という。)

3 当審の判断
(1)対比
ア 引用発明と補正発明とを対比すると、その構造・機能からみて、引用発明の「検出手段1」、「シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8」、および「調歩同期式シリアル通信回路11」は、それぞれ、補正発明の「センサ」、「A/Dコンバータ」、および「制御装置の固有の転送周期でシリアル通信でデータを転送するデータ転送装置」に相当することが明らかである。

イ 引用発明では、「ローパスフィルター9」には、シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8の出力であるディジタル信号が入力されているから、引用発明の「ローパスフィルター9」と、
補正発明の「ディジタル信号に含まれるノイズを除去するディジタルフィルタ」とは、
「ディジタル信号を処理するフィルタ」である点で共通する。

ウ 引用発明の、「マイクロコンピュータ3」と、
補正発明の「産業機械を制御する制御装置」とは、
「制御装置」である点で共通する。

そうすると、両者は、
(一致点)
「制御装置に、該制御装置の固有の転送周期でシリアル通信でデータを転送するデータ転送装置であって、
センサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータとディジタル信号を処理するフィルタを含むアナログインタフェースを有し、
変換されたディジタル信号を前記ディジタル信号を処理するフィルタによりフィルタ処理して得られた信号を転送することを特徴とするデータ転送装置。」
である点で一致し、以下の点で相違するといえる。

(相違点1)
制御装置の制御対象とセンサの取りつけ位置について、補正発明では、「産業機械を制御する」ものであり、そのためにセンサは「前記産業機械に取り付けられた」のに対して、引用発明では、制御対象とセンサの取りつけ位置が産業機器に係るものではない点。

(相違点2)
ディジタル信号を処理するフィルタについて、補正発明では、「ディジタル信号に含まれるノイズを除去する」ものであるのに対して、引用発明では、「ローパスフィルター9」であり低周波成分を通過させているがノイズを除去しているか不明である点。

(相違点3)
A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期とシリアル通信による転送周期について、補正発明では、「A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期を前記シリアル通信による転送周期よりも短いものと」するのに対して、引用発明では不明である点。

(2)相違点についての判断
まず、相違点1を検討する。
センサが「産業機械に取り付けられ」産業機械を制御する制御装置は、例えば、特開平9-76318号公報に射出成型機における可動部の加減速制御方法が記載されているように周知である。
してみると、引用発明の制御装置の制御対象とセンサの取りつけ位置として、上記周知の構成を採用して、相違点1における本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものといえる。

次に、相違点2を検討する。
ローパスフィルター9の固有の機能としてノイズ除去は周知である(例えば、特開2004-266431号公報には(【0002】【従来の技術】従来はテレビ映像信号に含まれるノイズを除去するために、ローパスフィルタを用いて、ノイズを含む高周波成分を取り除くという方法が行なわれていた。)と記載され、特開2004-46931号公報には、(【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、光ディスク装置に係り、詳しくは、光ディスクの種別に応じて、RFアンプから出力されるRF信号のノイズ成分を除去するローパスフィルタのカットオフ周波数を変更する光ディスク装置を提供することである。)と記載され、特開2003-338005号公報には(【0006】【発明が解決しようとする課題】上記ローパスフィルタによるノイズ除去方式では、・・・)と記載されている。)。
してみると、引用発明のローパスフィルタはノイズを除去しているので、相違点2は実質的には相違点ではない。

次に、相違点3を検討する。
一般に、シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8は、オーバーサンプリング方式という、出力周期より十分に短い周期でアナログ入力をサンプリングするものであることは、例えば特開平5-91085号公報に(【0047】・・・オーバサンプリング方式のAD変換器では、最終的に必要な測定対象の信号周波数より十分高い(例えば、10倍以上高い)サンプリング周波数に設定されている点が特徴の一つである。)と記載されているように周知の技術である。
してみると、引用発明のシグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8によるアナログ信号のサンプリング周期は、シリアル通信による転送周期よりも短いものとなっているといえ、相違点3は実質的な相違点ではない。

そして、本願明細書に記載された効果も、引用発明および周知技術から、当業者が予測し得る範囲のものであり、格別顕著なものといえない。

なお,請求人は,回答書において補正発明の「A/Dコンバータ」及び「ディジタルフィルタ」と、刊行物1の「シグマデルタ型アナログ/デジタル変換器8」等との相違点を主張しているが、本願明細書にはA/Dコンバータ及びディジタルフィルタの具体的な種類を特定するための記載がないため、請求人の主張する補正発明のものとの差の根拠となるものは、出願当初の明細書に記載されたものとは言えないので、請求人の主張は採用できない。

したがって、補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正2は、上記のとおり却下されることとなるので、本願の請求項1?2に係る発明は、本件補正1により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明は、次のとおりであると認める。
「【請求項1】 産業機械を制御する制御装置に、該制御装置の固有の転送周期でシリアル通信でデータを転送するデータ転送装置であって、前記産業機械に取り付けられたセンサからのアナログ信号をディジタル信号に変換するA/Dコンバータと前記ディジタル信号に含まれるノイズを除去するディジタルフィルタを含むアナログインタフェースを有し、前記A/Dコンバータによるアナログ信号のサンプリング周期を前記シリアル通信による転送周期よりも短いものとしたことを特徴とする産業機械のデータ転送装置。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物およびその記載事項
本願優先日前に頒布された刊行物1?3およびその記載事項は、上記「第2 2」に記載したとおりである。

3 当審の判断
本願発明は、補正発明の「該転送周期より短いサンプリング周期で変換されたディジタル信号を前記ディジタルフィルタによりフィルタ処理して得られた信号を転送することを特徴とする産業機械のデータ転送装置。」から「該転送周期より短いサンプリング周期で変換されたディジタル信号を前記ディジタルフィルタによりフィルタ処理して得られた信号を転送する」との限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する補正発明が、上記「第2 3」において検討したとおり、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというべきである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項について言及するまでもなく、本願出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-07 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-07-26 
出願番号 特願2004-351523(P2004-351523)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G08C)
P 1 8・ 575- Z (G08C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 健太  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 居島 一仁
信田 昌男
発明の名称 産業機械のデータ転送装置  
代理人 杉山 秀雄  
代理人 湯田 浩一  
代理人 手島 直彦  
代理人 白石 光男  
代理人 竹本 松司  
代理人 魚住 高博  

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