ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F |
---|---|
管理番号 | 1223584 |
審判番号 | 不服2009-4066 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-02-25 |
確定日 | 2010-09-17 |
事件の表示 | 特願2005-200028号「冷暖房システム」拒絶査定不服審判事件〔平成19年1月25日出願公開、特開2007-17102号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成17年7月8日の特許出願であって、平成21年1月20日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年1月27日)、これに対し、同年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明について 本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年10月2日付け手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「部屋の冷暖房を行なう冷暖房器と、複数種類の冷温熱発生源から得られた廃熱若しくは自然の温熱・冷熱を一つの場所に蓄える冷温熱蓄蔵部と、上記冷暖房器と該冷温熱蓄蔵部との間に介設されると共に該冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して該冷暖房器を加熱・冷却するヒートポンプと、を備え、 上記複数種類の冷温熱発生源は、暖房運転の際に上記冷温熱蓄蔵部を加熱するための複数の暖房用温熱発生源と、冷房運転の際に該冷温熱蓄蔵部を冷却するための冷房用冷熱発生源と、から成り、 上記暖房用温熱発生源は、少なくとも、太陽熱温水器と貯湯タンクと浴槽とを含み、 さらに、上記暖房用温熱発生源からの給湯や入浴用に使用された後に残った温水を、温熱用のポンプの駆動にて、上記冷温熱蓄蔵部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路の温熱供給流路と、 上記冷房用冷熱発生源からの外気温よりも低い水を、冷熱用のポンプの駆動にて、上記冷温熱蓄蔵部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路の冷熱供給流路と、 上記冷温熱蓄蔵部で必要とされる温度に応じて、上記温熱用のポンプ及び上記冷熱用のポンプの制御を行なう制御手段と、を具備し、 上記制御手段は、暖房運転の際に複数の上記温熱用のポンプの内いずれかを選択的又は全てを駆動させると共に上記冷熱用のポンプの駆動を停止し、冷房運転の際に上記冷熱用のポンプを駆動させると共に上記温熱用のポンプの駆動を停止させることを特徴とする冷暖房システム。」 3.刊行物について (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開昭61-276639号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。 a)「2.特許請求の範囲 (1)複数の冷暖房・給湯ゾーンの各々に配された熱変換装置と、各熱変換装置に対して共通に設けられ、冷暖熱源および蓄熱槽とを有する熱源装置と、前記熱変換装置の各々と熱源装置とを結合する熱媒搬送路とを備え、熱媒の温度を冷房用冷水温度より高く、暖房用温水温度より低い範囲としたことを特徴とする冷暖房・給湯設備。」(第1頁左下欄第4行?同第12行)」 b)「実施例 以下、図面に沿って本発明の構成とその動作を具体的に説明する。第1図は、本発明の冷暖房・給湯設備の構成を示すシステムブロック図である。図中、1は住棟もしくは、住棟群の各戸に熱媒を配送するための集中熱源装置で、蓄熱槽11と蓄熱槽11内の熱媒を所期の中温度に保つための冬期における熱取得装置、夏期における熱放出装置より成る冷暖熱源12と熱媒配送路31に接続された熱媒搬送装置13より構成される。4は蓄熱槽11の熱媒と各住戸に搬送される熱媒が異なる場合に用いる熱交換部と熱媒駆動部で熱交換された熱媒は、熱媒配送路32に沿って各住戸に搬送される。2は各住戸に個別に設置された熱交換装置で、図には1戸分の設備例を示している。熱交換装置2中21、22はいずれも前記熱媒から吸熱もしくは放熱し、各住戸の冷暖房・給湯に必要な冷、温熱量を供給するヒートポンプで、21は冷暖房用ヒートポンプ、22は給湯用ヒートポンプである。また、23は風呂の温排水を回収し、熱媒に供給するための風呂排熱回収装置で熱交換器またはヒートポンプで構成される。24は各住戸内における熱媒流路である。 本発明の設備の動作は以下の如くである。例えば夏期においては、冷暖熱源12として、ヒートポンプ、地下水、河川水、排水浄化水を使用したり、あるいは地中埋設管に熱媒を循環させたりクーリングタワーなどを利用することにより、熱媒を20℃?25℃に容易にすることができ、そのような中温度の熱媒を蓄熱槽11に蓄積し、各住戸の必要熱量を充足する熱媒をポンプなどの熱媒搬送装置13により直接もしくは熱交換部4で熱交換し熱媒を他の媒体に変換して、熱媒配送路32により各住戸の熱媒流路24に搬送し、熱媒流路24を出た熱媒は熱媒配送路32、31を通って蓄熱槽11に循環させる。各住戸は冷房の場合は冷暖房用ヒートポンプ21により中温度の熱媒中に放熱すると共に、給湯用ヒートポンプ22は熱媒より吸熱する。この場合冷房と給湯の時間帯は必ずしも同時ではないが、これら吸熱と放熱は蓄熱槽11を介して、相互に回収され利用されることになるため省エネルギー運転が可能となる。また、熱媒温度は中温度であるため、集中熱源の一つであるヒートポンプの成績係数は顕著に向上する。また各住戸においても冷暖房用ヒートポンプ21は従来夏期の30℃附近の外気へ放熱する場合に比べ、成績係数が顕著に向上する。 また、蓄熱槽11に蓄積される熱媒、あるいは熱媒搬送路31で搬送される熱媒は、前述の如く中温度であって、それら設備の設置される地下室あるいは建物内の環境温度との差が、冷温水直接搬送に比べ小さいため熱損失が小さいという特徴をもっている。風呂排熱回収装置23は風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与え風呂排熱を回収する。 一方、冬期においては集中熱源設備として、夏期と同様の設備に加え、太陽集熱装置を用いることができる。この場合も本発明の設備構成と熱媒温度の設定により夏期の場合と同様、ヒートポンプの成績係数や太陽熱集熱装置の集熱効率を顕著に向上させることができ、さらに住戸における暖房・給湯ヒートポンプ21、22の成績係数が、中温度熱媒からの吸熱により、外気からの吸熱に比べ顕著に向上する。熱媒温度の設定は、通常冷房に用いる冷水温度より冬期は高く、かつ、通常暖房に用いる温水より夏期は低い温度範囲で比較的任意的に選定できる。実際の運転上は、夏期においては昼間外気温より低く、例えば30℃以下、冬期においても10℃以上であることが設備全体の効率の面からは望ましく、それらの温度範囲が推奨される。 第2図に本発明の他の実施例を示す。本実施例では、熱媒として水を用い、蓄熱槽11から熱媒搬送装置13により熱媒搬送路31を介して、各住戸に直接搬送される方式である。集中冷暖熱源12としては、冬期用として太陽熱集熱装置121を、また冬期、夏期用として空気熱源ヒートポンプ122を用いた。本実施例では対象住宅は、100戸の集合住宅とし、蓄熱槽11は住棟地下階に設置し、容積500m^(3)とした。太陽熱集熱装置121の集熱面積は500m^(2)とし、ヒートポンプ122の能力を40RTとした。各住戸で用いる冷暖房用ヒートポンプ21は2室冷暖、4室暖房の通常能力のものとし、給湯用ヒートポンプ22については、わが国住戸の平均的給湯負荷量をまかなうための貯湯槽と組み合わせたヒートポンプとした。風呂排熱回収装置23では、風呂使用温水の約50%を回収対象と想定し、熱交換により熱回収した。 このような実施例の構成において、本発明の設備による効果を計算機シミュレーションにより解析した結果、本発明の作用である中温度熱媒を用いることによる住戸でのヒートポンプ成績係数の向上、熱媒搬送路31と蓄熱槽11での熱損失の減少、集中熱源効率の向上、熱回収などを通じて、従来設備に対する一次エネルギー換算省エネルギー率として27%が得られることが判明した。」(第2頁右下欄第4行?第3頁右下欄第20行) c)「発明の効果 以上のように本発明によれば、冷暖房・給湯に用いる集中熱源部の蓄熱と各住戸への熱搬送が中温度の熱媒を介して行なわれ、かつ、各住戸での冷暖房・給湯に関連する熱取得や放熱がその熱源を介してヒートポンプで行われるため以下の顕著な効果をもっている。 (1)蓄熱槽における熱損失が年間を通じて極めて少ない。 (2)熱媒搬送時の熱損失が年間を通じて極めて少ない。 (3)給湯は熱媒より吸熱し、冷房は熱媒に放熱するなど住戸熱源の回収と相互利用が可能であり省エネルギー性が高い。 (4)熱源温度が中温度であるためヒートポンプや太陽エネルギー利用システム等を集中熱源として利用するに際して成績係数や集熱効率が高い運転が可能である。 (5)熱源として、地下水、地中熱、河川水など年間にわたって中温度である熱源を効率よく利用できる。 (6)各住戸での冷暖房・給湯は個別ヒートポンプを熱媒を介して用いるため、成績係数が従来例に比べ高くかつ各住戸のニーズに対応した自由な運転操作は、従来の個別方式と同様に可能である。」(第4頁左上欄第15行?同右上欄第20行) d)上記bの記載事項によれば、風呂排熱回収装置23は、風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与えることから、風呂の残湯の熱は、冷暖熱源12の熱取得装置に含まれるといえ、これに伴い、冬期における熱取得装置は、太陽熱集熱装置121と風呂排熱回収装置23とを少なくとも含むといえる。 また、熱媒が熱媒流路24を流れることにより、熱媒流路24と冷暖房用のヒートポンプ21、給湯用ヒートポンプ22との間で放熱・吸熱を行うものであり、さらに、冷暖熱源12として、熱媒を中温度に保つために、冬期において熱取得装置が選択され、夏期において熱放出装置が選択されるものといえる。 上記a?dの記載事項および第2図の図示内容を中心に総合勘案すると、刊行物には、次の発明が記載されていると認められる。 「各住戸の熱交換装置2である冷暖房用のヒートポンプ21、貯湯槽と組み合わせた給湯用ヒートポンプ22と、 各熱交換装置2に対して共通に設けられ、風呂排熱回収装置23により回収される風呂排熱、冷暖熱源12としての太陽熱集熱装置121により集められた熱、空気熱源ヒートポンプ122からの冷暖熱により熱媒を所期の中温度に保ち、熱媒を蓄積する蓄熱槽11とを有する集中熱源装置1と、 各住戸における熱媒流路24と蓄熱槽11とを結合し、熱媒を循環させる熱媒搬送路31と、 熱媒流路24に設けられると共に、蓄熱槽11に蓄積された熱媒から吸熱もしくは放熱し、冷暖房に必要な冷、温熱量を供給するヒートポンプ21と を備え、 熱媒が熱媒流路24を流れることにより、熱媒流路24と冷暖房用のヒートポンプ21、給湯用ヒートポンプ22との間で放熱・吸熱を行い、 冷暖熱源12は、冬期における熱取得装置、夏期における熱放出装置よりなり、 冬期における熱取得装置は、太陽熱集熱装置121と風呂排熱回収装置23とを少なくとも含み、 風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与え、風呂排熱を回収する風呂排熱回収装置23とを備え、 熱媒を中温度に保つために、冷暖熱源12として、冬期において熱取得装置を選択し、夏期において熱放出装置を選択し、 熱媒の温度を冷房用冷水温度より高く、暖房用温水温度より低い範囲とした冷暖房・給湯設備。」 3.対比 本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。 刊行物に記載された発明の「冷暖熱源12」は、風呂排熱回収装置23により回収される風呂排熱と冷暖熱源12としての太陽熱集熱装置121により集められた熱とを含むことから、本願発明の「複数種類の冷温熱発生源」に相当し、以下同様に、 「風呂排熱回収装置23により回収される風呂排熱」は、風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与えるものであるから、「廃熱」に、 「太陽熱集熱装置121により集められた熱」は、太陽熱を蓄熱槽11の水に与えるものであるから、「自然の温熱」に、 「(熱媒を)蓄積する蓄熱槽11」は、1箇所に集中して配置されるものであるから、「一つの場所に蓄える冷温熱蓄蔵部」に、 「冬期における熱取得装置」は、太陽熱集熱装置121により集められた熱、風呂排熱回収装置23により回収される風呂排熱等から構成されることから、本願発明の「複数の暖房用温熱発生源」に、 「夏期における熱放出装置」は「冷房用冷熱発生源」に、 「冷暖房・給湯設備」は「冷暖房システム」に、 それぞれ相当する。 次に、刊行物に記載された発明の「熱媒流路24に設けられると共に、蓄熱槽11に蓄積された熱媒から吸熱もしくは放熱し、冷暖房に必要な冷、温熱量を供給するヒートポンプ21」と本願発明の「部屋の冷暖房を行なう冷暖房器」および「冷暖房器と該冷温熱蓄蔵部との間に介設されると共に該冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して該冷暖房器を加熱・冷却するヒートポンプ」を併せたものとを対比すると、刊行物に記載された発明の「冷暖房用のヒートポンプ21」と本願発明の「部屋の冷暖房を行なう冷暖房器」および「冷暖房器を加熱・冷却するヒートポンプ」とを併せたものとは、前者が部屋の冷暖房を行うものであることは明らかであるから、両者は、「部屋の冷暖房を行う手段」である点で共通する。 したがって、刊行物に記載された発明の「熱媒流路24に設けられると共に、蓄熱槽11に蓄積された熱媒から吸熱もしくは放熱し、冷暖房に必要な冷、温熱量を供給するヒートポンプ21」と本願発明の「部屋の冷暖房を行なう冷暖房器」および「冷暖房器と該冷温熱蓄蔵部との間に介設されると共に該冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して該冷暖房器を加熱・冷却するヒートポンプ」とは、「冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して部屋の冷暖房を行う手段」である点で共通し、以下同様に、 「冬期における熱取得装置は、太陽熱集熱装置121と風呂排熱回収装置23とを少なくとも含」むことと「暖房用温熱生源は、少なくとも、太陽熱温水器と貯湯タンクと浴槽とを含」むこととは、「暖房用温熱発生源は、少なくとも、太陽熱集熱手段と浴槽とを含」むことで、 「風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与え、風呂排熱を回収する風呂排熱回収装置23」と「暖房用温熱発生源からの給湯や入浴用に使用された後に残った温水を、温熱用のポンプの駆動にて、冷温熱蓄蔵部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路の温熱供給流路」とは、「暖房用温熱発生源からの入浴用に使用された後に残った温水の排熱回収手段」である点で、 「冷暖熱源12として、熱媒を中温度に保つために、冬期において熱取得装置を選択し、夏期において熱放出装置を選択」することと「冷温熱蓄蔵部で必要とされる温度に応じて、温熱用のポンプ及び冷熱用のポンプの制御を行なう制御手段と、を具備し、制御手段は、暖房運転の際に複数の温熱用のポンプの内いずれかを選択的又は全てを駆動させると共に冷熱用のポンプの駆動を停止し、冷房運転の際に上記用のポンプを駆動させると共に温熱用のポンプの駆動を停止させる」ことは、前者において、通常、「冬期」には暖房運転がなされ、「夏期」には冷房運転がなされることから、両者は、「冷温熱蓄蔵部で必要とされる温度に応じて、暖房運転の際に複数の暖房用温熱発生源の内いずれか又は全てを用い、冷房運転の際に冷房用冷熱発生源を用いること」で、 それぞれ共通する。 したがって、上記両者の一致点および相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「複数種類の冷温熱発生源から得られた廃熱若しくは自然の温熱を一つの場所に蓄える冷温熱蓄蔵部と、 冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して部屋の冷暖房を行う手段と、を備え、 上記複数種類の冷温熱発生源は、暖房運転の際に冷温熱蓄蔵部を加熱するための複数の暖房用温熱発生源と、冷房運転の際に該冷温熱蓄蔵部を冷却するための冷房用冷熱発生源と、から成り、 暖房用温熱発生源は、少なくとも、太陽熱集熱手段と浴槽とを含み、 暖房用温熱発生源からの入浴用に使用された後に残った温水の排熱回収手段を具備し、 冷温熱蓄蔵部で必要とされる温度に応じて、暖房運転の際に複数の暖房用温熱発生源の内いずれか又は全てを用い、冷房運転の際に冷房用冷熱発生源を用いる冷暖房システム。」 [相違点1] 冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して部屋の冷暖房を行う手段が、本願発明では、冷暖房器と、冷暖房器と冷温熱蓄蔵部との間に介設されると共に冷温熱蓄蔵部の温熱・冷熱を利用して該冷暖房器を加熱・冷却するヒートポンプとからなるのに対して、刊行物に記載された発明では、熱媒流路24に設けられると共に、蓄熱槽11に蓄積された熱媒から吸熱もしくは放熱し、冷暖房に必要な冷、温熱量を供給するヒートポンプ21である点。 [相違点2] 暖房用温熱発生源が太陽熱温水器と浴槽以外に、本願発明では、少なくとも貯湯タンクを含むものであるが、刊行物に記載された発明では、貯湯槽が給湯用ヒートポンプ22に組合わされているが、貯湯槽に蓄えられた湯が暖房用温熱発生源として機能するか否か不明である点。 [相違点3] 本願発明では、暖房用温熱発生源からの給湯や入浴用に使用された後に残った温水を、温熱用のポンプの駆動にて、冷温熱蓄蔵部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路の温熱供給流路と、冷房用冷熱発生源からの外気温よりも低い水を、冷熱用のポンプの駆動にて、冷温熱蓄蔵部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路の冷熱供給流路と、冷温熱蓄蔵部で必要とされる温度に応じて、温熱用のポンプ及び上記冷熱用のポンプの制御を行なう制御手段とを具備し、制御手段は、暖房運転の際に複数の温熱用のポンプの内いずれかを選択的又は全てを駆動させると共に冷熱用のポンプの駆動を停止し、冷房運転の際に冷熱用のポンプを駆動させると共に温熱用のポンプの駆動を停止させるのに対して、刊行物に記載された発明では、風呂排熱を熱媒流路24を流れる熱媒に与え、風呂排熱を回収する風呂排熱回収装置23を具備し、熱媒を中温度に保つために、冷暖熱源12として、冬期において熱取得装置を選択し、夏期において熱放出装置を選択する点。 4.当審の判断 (1)相違点1について 冷暖房システムの技術分野において、冷暖房用のヒートポンプ21として、冷暖房器とヒートポンプとをヒートポンプの熱が熱交換器を介して冷暖房器へ伝わるように組み合わせて用いることは本願出願前に周知の技術事項(特開2002-286256号の【図1】や、特開平8-75185号公報の【図3】参照。以下「周知の技術事項1」という。)である。 したがって、刊行物に記載された発明の冷暖房用のヒートポンプ21に上記周知の技術事項1を適用して、冷暖房器とヒートポンプとを組み合わせたものを用いて上記相違点1における本願発明が具備する発明特定事項に到達することは、当業者が容易になし得たものである。 (2)相違点2について 刊行物に記載された発明は、浴槽の排熱を「熱媒搬送路31」を介して「蓄熱槽11」に回収するものであるが、このことに倣って、貯湯槽の排熱を「熱媒搬送路31」を介して「蓄熱槽11」に回収することは当業者が容易になし得たものである。 (3)相違点3について 冷暖房システムの技術分野において、冷温熱発生源から冷温熱蓄熱部内への冷温熱供給を、冷温熱蓄熱部内を通して再びもとの場所に戻す循環流路におけるポンプの駆動停止制御により行うことは、本願出願前周知の技術事項である(例えば、特開昭50-135657号公報の第2図の「ポンプ3」や、実願昭55-101579号(実開昭57-24463号)のマイクロフィルムの「ポンプ4、12」を参照のこと。以下「周知の技術事項2」という。)。 したがって、刊行物に記載された発明の各冷暖熱源12の冷暖熱の蓄熱槽11への供給手段に、上記周知の技術事項2を適用して、熱媒を中温度に保つための冬期における熱取得装置の選択と夏期において熱放出装置の選択とを冷温熱供給流路におけるポンプの駆動、停止制御により行うようにすることは、当業者が容易になし得たものである。 (5)小括 本願発明の奏する効果についてみても、刊行物に記載された発明および周知の技術事項から当業者が予測できた効果の範囲内のものである。 ゆえに、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物に記載された発明および周知の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-08 |
結審通知日 | 2010-07-13 |
審決日 | 2010-07-29 |
出願番号 | 特願2005-200028(P2005-200028) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F24F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 武内 俊之 |
特許庁審判長 |
森川 元嗣 |
特許庁審判官 |
豊島 唯 長崎 洋一 |
発明の名称 | 冷暖房システム |
代理人 | 中谷 武嗣 |