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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1223678
審判番号 不服2008-780  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-10 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 平成11年特許願第115473号「座標入力/検出装置および電子黒板システム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月11日出願公開、特開2000-105671〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年4月22日(優先権主張平成10年5月11日、平成10年7月31日)の出願であって、平成19年12月6日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して平成20年1月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年2月6日に手続補正書が提出されたものである。

2.補正却下の決定
平成20年2月6日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成20年2月6日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「所定の範囲の入力領域を進行する光を出射する少なくとも二つの光出射手段と、
前記入力領域の周縁部における所定の位置に設けられ、各光出射手段から出射された光を反射する反射手段と、
前記反射手段で反射された光を受光し、受光した光の強度分布を検出する少なくとも二つの強度分布検出手段と、
各強度分布検出手段で検出された強度分布を利用して、前記入力領域を進行する光を遮る遮光位置の座標を特定する座標特定手段と、を備え、
前記光出射手段は、
光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、
コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えたこと、
を特徴とする座標入力/検出装置。」
と補正されている。

上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記光出射手段は、光源からの光を扇形状に成形して出射すること」を、「前記光出射手段は、光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えた」と限定するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

(b)引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-319501号公報(以下、「引用例1」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、座標検出装置に関し、特にパーソナルコンピュータ等において、情報の入力や選択をするためにペンによって指示された座標位置を検出する座標検出装置に関する。この座標検出装置は、電子黒板や大型のディスプレイと共に一体化して利用される。」(段落【0001】)

(ロ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、静電又は電磁誘導によって座標位置を検出するものでは、座標入力面に電気的なスイッチ機能を有するため製造コストが高く、また、ペンと本体とをつなぐケーブルが必要であるため操作性に難点があった。また、ビーム光をスキャンして反射光を受光したときのスキャン方向から座標位置を検出する従来の座標位置検出装置では、モータ等のビーム光をスキャンさせる機構が必要となり、位置検出の信頼性が低く、また装置全体の小型化が困難である。また、従来の発光及び受光素子を備えた装置と、この装置とは空間的に離れた位置に配置された再帰性反射シートとから構成される座標検出装置は、再帰性反射シートを動かすことによって空間的に離れた位置を指示するものであり、ある固定された平面内での座標検出をするものではない。
【0006】この発明は、以上のような点を考慮してなされたものであり、ある固定された座標入力面内の座標位置をペンによって指示する座標検出装置において、2組以上の発光部及び受光部を有する検出装置を所定の間隔をおいて配置することによって、スキャン機構を持たずに簡単な構成で小型かつ信頼性の高い座標検出装置を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明は、再帰性反射部を有する位置指示手段と、発光手段と前記再帰性反射部を介して反射された反射光の受光角度を検出する角度検出手段とからなる発光・検出手段を2組以上備え、1つの発光・検出手段を構成する発光手段と角度検出手段が、それぞれの光軸がどちらも座標入力領域の略中央を向くように近接配置され、2組以上の発光・検出手段が、互いに座標入力領域の周辺部に所定の間隔をおいて配置されることを特徴とする座標検出装置を提供するものである。」(段落【0005】?【0007】)

(ハ)「【0011】ここで、位置指示手段は、通常筆記具と同じ形状をしていることが好ましく、いわゆるペンと同様に細長い形状であればよい。以下、位置指示手段をペンと呼ぶ。また、位置指示手段が有する再帰性反射部は、入射光を反射するために鏡が取付けられていることが好ましく、さらに先端付近に設けることが好ましい。さらに、入射光をその入射光路と同じ方向に反射するために、再帰性反射部はいわゆる「コーナーキューブ」と呼ばれる互いに直交する3つの平面鏡から構成される微小な反射鏡を多数配置した構造とすることが好ましい。
【0012】発光手段は種々のLEDを用いることができるが、動作時の眩しさを防ぐ点で赤外光を利用する方が好ましく、特に赤外光(波長900nm程度)を発光するLEDが好ましい。
【0013】また、発光手段の光の方向に対して前方であって所定の間隔だけ離れた位置に設けられる光学レンズは、いわゆる「シリンドリカルレンズ」あるいは「トロイダルレンズ」を用いることができる。これによって、発光手段から発散された光のうち座標入力領域面と垂直な方向に発散された光が座標入力領域面と平行な扇形状に集光される。
【0014】角度検出手段に用いられる集光手段として、光学レンズを用いる場合は、座標入力面と平行な方向のみ集光すればいいので、いわゆる「シリンドリカルレンズ」を用いることが好ましい。また、集光手段としてアパーチャーを用いる場合は、反射光をスポット光にしる透過孔を1つ有したアパーチャーを用いればよい。
【0015】角度検出手段に用いられる受光素子は、一般のフォトダイオードと同様の構造を持つPSD(Position Sensitive Light Detector)を用いることができる。ここで、PSDは、集光手段によって集光された光の方向(角度)をその受光位置によって検出するため、座標入力領域面と平行な方向に細長い形状の1次元PSDを用いることが好ましい。ところで、PSDは、光の受光位置によって異なる電気信号を発生する素子である。PSD上の受光位置と、角度検出手段に入射してくるペンからの反射光の受光角度は1対1に対応しているため、予め「受光角度」、「PSD上の受光位置」及びPSDが発生する電気信号との対応関係を定めておけば、PSDによって直接計測される電気信号の値から、ペンからの反射光の受光角度が計算され、さらに幾何学的原理により、ペンの指示位置が求められる。
【0016】ペンによって反射された光は、発光手段から出射された光の入射路と同じ光路を逆に通って戻ってくるので、発光手段と角度検出手段は近接して配置されるが、発光手段の発光光軸と角度検出手段の受光光軸とが、ほぼ一致するように、同一の筺体の中に一体成形されることが好ましい。ここで前記したように発光光軸と受光光軸がどちらも座標入力領域の略中央を向くように、発光手段と角度検出手段とからなる発光・検出手段を座標入力領域に対して配置してもよい。このように、発光・検出手段は、光をスキャンする機構を有することもなく、座標入力領域に対して配置されるので、簡単な構成とすることができる。」(段落【0011】?【0016】)

(ニ)「【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳述する。なお、これによってこの発明が限定されるものではない。
【0019】図1に、この発明の座標検出装置の一実施例の構成図を示す。ここでは、四角形状の平面板である座標入力面1の隣接する2つの角(k1,k2)に、発光検出装置2,3を固定して設置する。この2つの発光検出装置2,3から座標入力面1上に光が発射される。一方、利用者は、位置指示棒、すなわちペン5で座標入力面1上の任意の位置
を指し示す。
【0020】このとき、発光検出装置2,3は、発光検出装置2,3から発せられた光のうちペン5で反射して発光検出装置2,3に戻ってきた光を検出して、ペン5の位置座標を算出する。発光検出装置2,3は、どちらも同じ構成を持つものを用い、発光部2-1,3-1と、受光角度検出部2-2,3-2とから構成される。ここで、発光検出装置2,3は、発光部から発光される光の発光光軸と、受光角度検出部の受光光軸とがどちらも座標入力面の基準点4の方向を向くように、座標入力面1に対して設置される。なお、発光検出装置は、前記した発光・検出手段に相当し、発光部は発光手段に、受光角度検出部は角度検出手段に相当する。
【0022】図2に、発光検出装置2,3の一実施例の構成の概念図を示す。ここで、発光検出装置のうち発光部2-1,3-1は、光源(LED)6と光学レンズ7とから構成される。光学レンズ7は、像の一方向の倍率のみを変えることを特徴とするシリンドリカルレンズ、又は像の一方向の倍率のみを変え、しかも入射角度による倍率の変化が無いことを特徴とするトロイダルレンズを利用する。また、発光検出装置のうち受光角度検出部2-2,3-2は、PSD8とシリンドリカルレンズ9とから構成される。
【0023】LED6から発せられた光は、その直前に配置される光学レンズ7によって、座標入力面1と平行なビームとなるように集光される。すなわち図6に示すように、座標入力面1と垂直な方向の光を光学レンズ7によって座標入力面1と平行になるように集光し、さらに、座標入力面1と平行な扇形状のビームとなるようにする。このように、扇形状のビームに集光すれば、集光しない時に比べてより有効に光を利用できるため、位置検出の信頼性の向上が図れる。ここで、LED6としては、可視光線を発光するものでもよいが、赤外線(波長890nm)を発光するL2656(浜松ホトニクス社製)を使用するものとする。また、光学レンズ7としては、座標入力面1と垂直な方向の長さが10mm,座標入力面1と平行で赤外光の発光光軸と垂直な方向の長さが10mm程度の大きさで、焦点距離6mm程度のものを用いる。さらに、光学レンズの焦点位置にLED6の発光点がくるように固定配置する。
【0024】受光角度検出部2-2,3-2を構成するシリンドリカルレンズ9は、図2に示すように、ペン5からの反射光を、座標入力面1と平行な方向に集光するように配置される。そして集光したスポット光はPSD8に受光される。PSD8は、図に示すように、座標入力面1と平行な方向に細長い構造とし、受光面は入射光を電気信号に変換するためのPN接合面となっている。
【0025】またPSD8は、受光面の両端には、電流を取り出すための出力端子(S1、S2)が設けられ、受光点S0と出力端子までの距離に反比例した電流(I1,I2)が、この出力端子から出力される。この電流(I1,I2)をA/D変換し、マイクロコンピュータによって演算することによって、受光点S0の位置が特定でき、さらにはペン5からの反射光の受光角度を計算することができる。この演算処理を行う制御回路については後述する。
【0026】PSD8としては、座標入力面1と平行な方向の受光面の長さが13mm,座標入力面1と垂直な方向の長さが1mm程度のものを用いればよい。たとえば浜松ホトニクス社製のS3270を用いることができる。」(段落【0018】?【0026】)

(ホ)「【0039】次に、この発明の座標検出装置におけるペンの指示位置の検出原理について説明する。ここでは、図1に示したように、2つの発光検出装置を用いた場合について説明するが、3つ以上の発光検出装置を用いても同様のペン指示位置の検出が可能である。
【0040】まず、図1の座標入力面1上において、図8に示したペン5を用いて適当な位置(X,Y)を指示したとする。このとき、発光検出装置2の発光部2-1のLED6から出射された赤外光のうち線分p1方向に出た光はペン5に当たり、その反射光は同じ線分p1を逆に進み、受光角度検出部2-2のPSD8に受光される。同様に、発光検出装置3の発光部3-1のLED6から出射された赤外光のうち線分p2の方向に出た光はペン5に当たり、その反射光は同じ線分p2を逆に進み、受光角度検出部3-2のPSD8に受光される。PSD8に受光された光は、図2等で示したようにPSD8に対する入射角度によってPSDの受光面上の異なる位置にスポット光を形成する。ここで、線分p2は、座標入力面1の角k2を2等分する線分a2からθ2の角度をなし、線分p1は、座標入力面1の角k1を2等分する線分a1からθ1の角度をなすものとする。
【0041】図10(a),(b)に、座標入力面1と受光角度検出手段2-2を形成するシリンドリカルレンズ9及びPSD8との位置関係の具体例を示す。ここで、PSD8の受光面は、座標入力面1の2辺と45°の角度をなす線分a1と垂直とする。すなわち、シリンドリカルレンズ9の中心とPSD8の受光面の中央とを結んだ線分a1が受光光軸及び発光光軸と一致する。また、シリンドリカルレンズ9の中心とPSD8の受光面の中央との距離をLとし、PSD8の受光面の長さを2Lとする。
【0042】今、ペン5からの反射光が線分p1を通って、PSD8の中央位置からD1の距離だけ離れた位置に受光したとする。また、PSD8の受光面の2つの出力端子から得られる電流値をI1,I2とする。このとき、電流と、PSDの受光位置とは次の関係が成立する。
・・・(中略)・・・
【0044】すなわち、反射光の受光位置D1は、PSD8で得られる電流値I1,I2から求められるが、図7の制御回路のアンプ21及びアナログ演算回路22によって計算される。ところで、図10(b)により、D1/L=tanθ1という関係が成立するから、反射光の入射角度θ1は、次式から求められる。
θ1=tan-1(D1/L)
【0045】同様にして、もう一方の発光検出装置3の受光角度検出部3-2についても、PSDの中央からの受光位置までの距離をD2とすると、次式によって、反射光の入射角度θ2が求められる。
θ2=tan-1(D2/L)
【0046】さらに、ペン5の指示位置(X,Y)は、2つの反射光の入射角度θ1,θ2のなす線分a1,a2の交点となるので、次式より、θ1,θ2から指示位置(X,Y)が求められる。
Y=Xtan(45-θ2)
Y=(A-X)tan(45-θ1)
ここで、Aは、図1に示すように、座標入力面1の横方向の長さである。
【0047】上記の連立方程式を解けば、ペン5によって指示された座標入力面1上の位置座標X,Yが求められる。なお、(θ1,θ2)及び(X,Y)は、定式化されているので、ROMにこれらの数式をプログラム化して組み込めば、MPU27の演算によって容易に求めることができる。また、演算結果である(X,Y)の座標値は、インタフェースドライバ29を介してパソコン等へ転送され、ペンによる指示位置の表示や、指示位置に対応するコマンド入力などの処理に利用できる。」(段落【0039】?【0047】、段落【0043】の式は省略している。)

以上の記載によれば、この引用例1には以下のような発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「座標入力面と平行なビームを出射する少なくとも2組の発光検出装置2、3の発光部2-1、2-2と、
前記座標入力面の任意の位置を指し示す位置指示手段に設けられ、発光検出装置2、3から発せられた光を反射する再帰性反射部と、
前記再帰性反射部で反射された光を受光し、受光点S0と出力端子までの距離に反比例した電流(I1,I2)を出力する発光検出装置2、3の受光角度検出部3-1、3-2に設けられた座標入力面と平行な方向に細長い構造のPSDと、
前記PSDから出力される電流(I1,I2)から、PSD中央位置からの受光点S0の位置(距離)を求めことにより、反射光の入射角度を求め、当該入射角度から前記位置指示手段によって指示された座標入力面上の位置座標X,Yを演算する制御回路、を備え、
前記発光検出装置2、3の発光部2-1、2-2は、LED6から発せられた光を座標入力面と垂直な方向の光を光学レンズ7によって座標入力面と平行になるように集光し、さらに、座標入力面と平行な扇形状のビームとなるようにすることを特徴とする座標検出装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-91094号公報(以下、「引用例2」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。
(イ)「【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、その目的を達成するため、タッチパネルが触れられた位置を示す座標を検出するタッチパネルの座標検出装置において、タッチパネルの異なる位置に設置され、タッチパネルにほぼ平行に、かつ、設置位置を中心に光束を回転して射出する2つの光源部と、タッチパネルに設置され、光源部からの光束を、この光源部に向けて反射する反射部と、光源部の設置位置にそれぞれ設置され、反射部からの反射光を受光し、反射光が遮られたとき、設置位置間を結ぶ直線部分に対する、射出される光束の角度を検出する2つの検出部と、直線部分の長さと、2つの検出部が検出したそれぞれの角度とから、光束の遮光点の座標を算出する演算部とを備える。
【0010】この発明は、次のようにして、タッチパネルが触れられた位置を示す座標を検出する。
【0011】2つの光源部がタッチパネルにほぼ平行に、光束を射出する。このとき、各光源部は、設置位置を中心にして、光束を回転しながら射出する。反射部は、光源部からの光束を、この光源部に向けて反射する。つまり、反射部は、光源部からの光束を、この光源部に向けて折り返す。各検出部は、反射部からの反射光を受光する。
【0012】この状態のとき、タッチパネルが触れられると、各光源部からの光束が接触点で遮られる。反射光が遮られたとき、各検出部は、設置位置の間を結ぶ直線部分に対する、射出された光束の角度を検出する。演算部は、直線部分の長さと、検出部が検出したそれぞれの角度とから、光束の遮光点の座標を算出する。
【0013】これにより、タッチパネルの大型化をしても、光源部と検出部の設置位置の変更と、反射部の長さの変更とにより、タッチパネルの接触点の座標を検出することができる。」(段落【0009】?【0013】)

(ロ)「【0022】ライトスキャナ3,4は、図3に示すように、タッチパネル1の隅に設置されている。この設置に際して、ライトスキャナ3,4の各軸15Cが、タッチパネル1の隅にそれぞれ位置するように、ライトスキャナ3,4は、タッチパネル1にそれぞれ設置される。また、ライトスキャナ3,4が挟む、タッチパネル1の長辺1Aの長さをLとする。つまり、ライトスキャナ3の軸15Cから、ライトスキャナ4の軸15Cまでの長さがLである。
【0023】さらに、ライトスキャナ3,4の設置に際して、ライトスキャナ3,4からの光束101A,102Aが、タッチパネル1に対して平行になるように、ライトスキャナ3,4がタッチパネル1に設置されている。
【0024】ライトスキャナ3,4は、図4に示すように、カウンタ16をそれぞれ備える。各カウンタ16は、ロータリーエンコーダ13からのパルス信号aと、受光器12からの受光信号bとに基づいて、検出信号c1,c2を発生する。つまり、ライトスキャナ3のカウンタ16は、図5に示すように、遮光物301によりライトスキャナ3からの光束101Aが遮られたとき、タッチパネル1の長辺1Aに対する光束101Aの角度θ1を示す検出信号c1を発生する。同様にして、ライトスキャナ4のカウンタ16は、長辺1Aに対する光束102Aの角度θ2を示す検出信号c2を発生する。」(段落【0022】?【0024】)

(ハ)「【0025】コーナキューブアレイ2A?2Cは、タッチパネル1の長辺1Aを除く、他の3辺に設置されている。コーナキューブアレイ2Aは、図7に示すように、タッチパネル1側に複数のコーナキューブ21を配列したものである。
【0026】コーナキューブ21は、図8(A)に示すように、円錐形状をしている。コーナキューブ21の内面21Aが、反射面となっている。コーナキューブ21の頂点21Cを含む断面は、図8(B)に示すような形状であり、この断面の頂角(頂点21Cを含む角度)は、90度である。これにより、コーナキューブ21の開口21Bに垂直に入射した光束111や、図8(C)に示すように、開口21Bに斜めに入射した光束112は、入射した方向に反射する。つまり、コーナキューブ21は、入射した光束を折り返す。
【0027】このコーナキューブ21の代わりに、図9に示すコーナキューブ22を設置してもよい。コーナキューブ22は、四角錐形状をしている。そして、側面22Aと側面22Bとの角度、側面22Cと側面22Dとの角度が90度になっている。側面22A?22Dの内面が、光束を反射する反射面となっている。このコーナキューブ22は、コーナキューブ21と同様に、開口22Eに入射した光束を折り返す。
【0028】コーナキューブアレイ2B,2Cは、コーナキューブアレイ2Aと同様に、タッチパネル1側に多数のコーナキューブ21を配列した構造である。
【0029】演算回路5は、ライトスキャナ3のカウンタ16からの検出信号c1と、ライトスキャナ4のカウンタ16からの検出信号c2とから、遮光物301の座標を演算する。」(段落【0025】?【0029】)

(ニ)「【0034】ライトスキャナ3が、図10(a)に示すように、矢印201の方向に回転すると、発光器11から射出される光束101Aが、同様に矢印201に回転する。この回転で、光束101Aが、0?π/2の間にあると、受光信号bは、「H」レベルとなる。これは、コーナキューブアレイ2B,2Cにより、光束101Aが反射されるからである。また、光束101Aの回転角度が、π/2?π?3π/2?2πの間にあると、光束101Aが反射されないので、受光信号bは、「L」レベルになる。このために、受光信号bは、図10(b)に示すようになる。
【0035】ライトスキャナ3のカウンタ16は、光束101AがX軸上にあるときを起点として、ロータリーエンコーダ13からのパルス信号aのパルスの数を数える。したがって、カウンタ16が数えたパルスの数が、光束101Aの角度に対応する。
【0036】使用者がタッチパネル1に指などで触れると、この指が遮光物301となり、光束101Aが遮られる。このために、受光器12が光束101Bを受光しないので、受光信号bが遮光物301の部分で「L」レベルになる。受光信号bが「L」レベルになると、カウンタ16がロータリーエンコーダ13からのパルス信号aの計数を止めて、これまでに数えたパルスの数を検出信号c1として演算回路5に送る。
【0037】ライトスキャナ4も、ライトスキャナ3と同じように、検出信号c2を演算回5に送る。なお、このとき、ライトスキャナ4の回転方向は、ライトスキャナ3とは逆になる。つまり、ライトスキャナ4のカウンタ16は、光束102AがX軸上にあるときを起点として、ロータリーエンコーダ13からのパルス信号aのパルスの数を数える。
【0038】演算回路5は、検出信号c1,c2を受け取ると、検出信号c1,c2が示すパルス数から、光束101Aが遮られたときの角度θ1と、光束102Aが遮られたときの角度θ2とを求める。そして、演算回路5は、式(3),(4)を用いて、遮光物301の座標(xp,yp)を算出する。
【0039】インターフェース回路6は、演算回路5が算出した遮光物301の座標を、マウスインターフェースを経由してコンピュータ(図示を省略)に送る。」(段落【0025】?【0039】)

(c)対 比
本願補正発明と引用例1発明とを対比する。
引用例1発明の「座標入力面上」及び「ビーム」は、本願補正発明の「所定の範囲の入力領域」及び「進行する光」に相当し、引用例1発明の「座標入力面と平行なビームを出射する少なくとも2組の発光検出装置2、3の発光部2-1、2-2」は、本願補正発明の「所定の範囲の入力領域を進行する光を出射する少なくとも二つの光出射手段」に相当する。
引用例1発明の「前記座標入力面の任意の位置を指し示す位置指示手段に設けられ、発光検出装置2、3から発せられた光を反射する再帰性反射部(コーナーキューブ)」は、本願補正発明の「前記入力領域の周縁部における所定の位置に設けられ、各光出射手段から出射された光を反射する反射する反射手段」と「前記入力領域において、各光出射手段から出射された光を反射する反射手段」である点で共通するといえる。
引用例1発明の「受光角度検出部3-1、3-2に設けられた座標入力面と平行な方向に細長い構造のPSD」は、受光点S0と出力端子までの距離に反比例した電流(I1,I2)を出力し、電流(I1,I2)から、PSD中央位置からの受光点S0の位置(距離)を求めているから、本願補正発明の「前記反射手段で反射された光を受光し、受光した光の強度分布を検出する少なくとも二つの強度分布検出手段」に相当するといえる。
引用例1発明の「PSDから出力される電流(I1,I2)から、PSD中央位置からの受光点S0の位置(距離)を求めることにより、反射光の入射角度を求め、当該入射角度から前記位置指示手段によって指示された座標入力面上の位置座標X,Yを演算する制御回路」は、本願補正発明の「各強度分布検出手段で検出された強度分布を利用して、前記入力領域を進行する光を遮る遮光位置の座標を特定する座標特定手段」と「各強度分布検出手段で検出された強度分布を利用して、前記入力領域を進行する光の特定位置の座標を特定する座標特定手段」である点で共通するといえる。
引用例1発明の発光検出装置2、3の発光部2-1、2-2は、「LED6から発せられた光を座標入力面と垂直な方向の光を光学レンズ7によって座標入力面と平行になるように集光し、さらに、座標入力面と平行な扇形状のビームとなるようにする」から、本願補正発明の「前記光出射手段は、光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えた」と「光源からの光を予め定められた方向にコリメートし、集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射するレンズを備えた」点で共通するといえる。
引用例1発明の「座標検出装置」は、本願補正発明の「座標入力/検出装置」に相当するといえる。

そうすると、両者は、
「所定の範囲の入力領域を進行する光を出射する少なくとも二つの光出射手段と、
前記入力領域において、各光出射手段から出射された光を反射する反射手段と、
前記反射手段で反射された光を受光し、受光した光の強度分布を検出する少なくとも二つの強度分布検出手段と、
各強度分布検出手段で検出された強度分布を利用して、前記入力領域を進行する光の特定位置の座標を特定する座標特定手段と、を備え、
前記光出射手段は、
光源からの光を予め定められた方向にコリメートし、集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射するレンズを備えたこと、
を特徴とする座標入力/検出装置。」
で一致するものであり、次の(1)?(3)の点で相違している。

(1)反射手段が、本願補正発明は、「前記入力領域の周縁部における所定の位置」に設けられているのに対し、引用例1発明は、「前記座標入力面の任意の位置を指し示す位置指示手段」に設けられている点。

(2)座標特定手段が、本願補正発明は、「前記入力領域を進行する光を遮る遮光位置の座標」を特定するのに対し、引用例1発明は、「位置指示手段によって指示された座標入力面上の位置座標」を演算する点。

(3)光出射手段が、本願補正発明は、「光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えた」のに対し、引用例1発明は、「LED6から発せられた光を座標入力面と垂直な方向の光を光学レンズ7によって座標入力面と平行になるように集光し、さらに、座標入力面と平行な扇形状のビームとなるようにする」点。

(d)当審の判断
上記相違点について検討する。
・相違点(1)、(2)について
引用例2には、タッチパネルの異なる隅の位置に設置され、タッチパネルにほぼ平行に、かつ、設置位置を中心に光束を回転して射出する2つの光源部と、タッチパネルの3辺に設置され、前記光源部からの光束を、この光源部に向けて反射する反射部と、光源部の設置位置にそれぞれ設置され、反射部からの反射光を受光し、反射光が遮られたとき、設置位置間を結ぶ直線部分に対する、射出される光束の角度を検出する2つの検出部と、直線部分の長さと、2つの検出部が検出したそれぞれの角度とから、光束の遮光点の座標を算出する演算部を備える座標検出装置が記載されている。
したがって、引用例1発明において、引用例2に記載された技術を適用することにより、反射手段を前記入力領域の周縁部における所定の位置に設け、座標特定手段を、前記入力領域を進行する光を遮る遮光位置の座標を特定するようにすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点(3)について
光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズを用いる光学系は、本願優先日前周知の技術(特開昭62-92632号公報第2頁右下欄第9行?第13行、第3図の記載、特開昭59-147206号公報第3頁左下欄第20行?右下欄第2行、第10図の記載、特開平5-113481号公報段落【0025】、図5の記載参照)である。
したがって、引用例1発明において、光出射手段が、光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えた構成にすることは、当業者が適宜なし得る設計事項にすぎない。

そして、本願補正発明により奏される効果は当業者であれば引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術から予想できる範囲内のものである。

(e)結論
そうすると、本願補正発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月29日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「所定の範囲の入力領域を進行する光を出射する少なくとも二つの光出射手段と、
前記入力領域の周縁部における所定の位置に設けられ、各光出射手段から出射された光を反射する反射手段と、
前記反射手段で反射された光を受光し、受光した光の強度分布を検出する少なくとも二つの強度分布検出手段と、
各強度分布検出手段で検出された強度分布を利用して、前記入力領域を進行する光を遮る遮光位置の座標を特定する座標特定手段と、を備え、
前記光出射手段は、光源からの光を扇形状に成形して出射すること、
を特徴とする座標入力/検出装置。」

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)(b)」に記載したとおりである。

5.対比
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「前記光出射手段は、光源からの光を予め定められた第1方向にコリメートする第1レンズと、コリメートされた光を前記第1方向と直交する第2方向に集光することによって、光源からの光を扇形状に成形して出射する第2レンズと、を備えた」から限定を省き「前記光出射手段は、光源からの光を扇形状に成形して出射すること」としたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「2.」に記載したとおり、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1発明、引用例2に記載された技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-14 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-03 
出願番号 特願平11-115473
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 慎太郎日下 善之  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 圓道 浩史
安久 司郎
発明の名称 座標入力/検出装置および電子黒板システム  
代理人 酒井 宏明  

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