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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F24F
管理番号 1223692
審判番号 不服2008-13134  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-22 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 特願2002-178894号「空気調和システム及び設備コントローラ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年1月22日出願公開、特開2004-20130号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年6月19日の出願であって、平成20年4月17日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成20年4月22日)、これに対し、同年5月22日に拒絶査定不服審判が請求されたものであって、請求項15に係る発明(以下、同項に係る発明を「本願発明」という。)は、平成19年10月5日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「室外機と室内機により構成される空気調和機の運転に係る空調機情報を収集して送信する設備コントローラにおいて、
上記空気調和機の運転に係る空調機情報を収集して記憶手段に記憶し、上記空調機情報の収集回数が所定値に達した場合に、上記記憶手段に記憶されている空調機情報を送信するよう指示する収集処理部と、
上記収集処理部の指示に基づき、上記記憶手段に記憶されている空調機情報を送信する送信処理部と、
時間を計測する計時手段とを備え、
上記計時手段が計測した時間に対応して、公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にすることを特徴とする設備コントローラ。」

2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-13790号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
ア)「この実施の形態のシステムは、図1に示すとおり、空調機110と、この空調機110に関する情報を送信する情報処理装置300を備えて構成されている。また、サーバ装置400と、ネットワーク500とを備えて構成されている。」(段落【0018】、下線は当審で付与。以下同様。)
イ)「空調機110は、図示しない室外機から供給される冷媒を利用して冷気等を生成しこれを送風することで室内環境を所望の状態に保つためのものであり、室内(たとえば、壁面)に設置される。空調機110の筺体111の正面には、図1に示すとおり、冷気等の吹き出し口112、情報処理装置300と信号を授受するための端子部113等が設けられている。」(段落【0020】)
ウ)「センサ122は、この空調機の状態、さらには、室内外の状態を検出するためのものである。この実施の形態としては、吹き出し口112における冷気などの温度を検出する温度センサ、室内の温度を検知する室温センサ、室外の温度を検知する室外温度センサ、湿度を検出する湿度センサを備えている。また、冷媒圧力を検出する圧力センサ等も備えている。
通信回路123は、情報処理装置300と各種信号を授受するためのものである。この通信回路123は、端子部113からこの信号を入出力する構成となっている。つまり、端子部113に接続されたケーブルを介して、情報処理装置300と信号の授受をおこなうようになっている。通信回路123は、制御回路125からの指示にしたがって動作している。
制御回路125は、この空調システム全体を制御統括するものである。この制御回路125は、具体的にはメモリ126と、CPU127を含んで構成されている。CPU127がメモリ126に格納されている制御プログラムを実行することで様々な機能を実現している。たとえば、制御回路125は、上述した各部および室外機(不図示)を制御して空調機としての機能動作を実現している。
さらに、この実施の形態の制御回路125は、この空調機110の運転状況等に関するデータを、通信回路123によって情報処理装置300へと送信する機能を備えている。この運転状況に関するデータとしては、各種センサ122の検出値、設定温度、稼働状況(ON/OFF、インバータ制御における周波数、PAM(Pulse Amplitude Modulation)制御における電圧、消費電力)等が上げられる。」(段落【0022】?【0025】)
エ)「情報処理装置300は、空調機110から送信されてきた運転状況などを示すデータを蓄積するとともに、この蓄積したデータをネットワーク500を通じてサーバ装置400へ送信するものである。また、ネットワーク500を通じて送信されてきた遠隔指示にしたがって、空調機110を制御するものである。
情報処理装置300は、図3に示すとおり、内部的には、表示回路311、入力回路312、通信回路313、ネットワーク接続回路314、記憶回路315および制御回路316を備えて構成されている。」(段落【0028】、【0029】)
オ)「通信回路313は、他の装置(ここでは、空調機110)と信号を授受するためのものである。この通信回路313は、制御回路316からの指示にしたがって動作するように構成されている。
ネットワーク接続回路314は、この情報処理装置300をネットワーク500へ接続するためのものである。この実施の形態では、ネットワーク500として、主にインターネットを想定している。このため、ネットワーク接続回路314は、TCP/IPなどのインターネットにおいて採用されているプロトコルに対応している。
記憶回路315は、制御プログラム、各種データを記憶するためのものである。この制御プログラムは、必要に応じてメモリ317にロードされ、CPU318によって実行されるようになっている。
この記憶回路315に格納されるデータとしては、空調機110から送信されてきた運転状況などに関するデータ、使用者によって入力装置302を用いて入力されたデータ等が上げられる。さらに、この蓄積されたデータを整理し、サーバ装置400へ送信するプログラムなども格納されている。」(段落【0032】?【0035】)
カ)「制御回路316は、この情報処理装置300の全体を制御統括するものであり、メモリ317とCPU318とを含んで構成されている。上述したとおり、記憶回路315に格納されたプログラムをメモリ317にロードし、これをCPU318が実行することで、上記各部を制御して各種機能を実現している。たとえば、空調機110から送信されてきた運転状況等に関するデータ、および、入力装置302によって入力されたデータを、サーバ装置400へと送信する機能を備えている。」(段落【0037】)
キ)「さらに、制御回路316は、通信回路313を通じて所定の動作指示を空調機110へ送信することで、空調機110を制御する機能を備えている。なお、この動作指示は、入力装置302によって、あるいは、ネットワーク接続回路314を通じてネットワーク500から入力されるようになっている。
情報処理装置300としては、実際にはいわゆるパーソナルコンピュータなどのコンピュータシステム上で、本実施の形態の動作を実現するためのソフトウエアを実行することで実現可能である。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウエアを含むものとする。また、上述した構成以外にも専用のハードウエアによって実現してもよい。」(段落【0039】、【0040】)
ク)「空調機110は、該空調機110の状態などを検出し、情報処理装置300へと送信する(ステップS101)。より詳しくは、以下の通りである。空調機110のセンサ122は、常に、温度、湿度などを検出している。制御回路125は通信回路123を制御することで、各センサ122の検出値等の運転状況に関するデータを、端子部113に接続されたケーブルを通じて、情報処理装置300へと逐次送信している。この他、自己診断の結果、さらには、故障時等にはそのエラーコード等も情報処理装置300へと送信している。」(段落【0045】)
ケ)「情報処理装置300の制御回路316は、空調機110から送られてきた各種データを通信回路313を通じて受信し、この受信したデータを記憶回路315へ蓄積する(ステップS102)。
制御回路316は、この記憶回路315に蓄積されたデータを、所定期間ごとに、ネットワーク接続回路314によってサーバ装置400へと送信する(ステップS103)。」(段落【0047】、【0048】)
コ)「サーバ装置400は、以上のようにして各家庭の空調機110から送信されてきたデータを蓄積し解析する(ステップS104)。たとえば、この蓄積されたデータを解析し、故障時の現象とその故障要因との関係を示すデータベースを構築しておけば、故障部位の特定等にこのデータを活かすことができる。」(段落【0051】)
サ)「上述した実施の形態では、空調機110の状態を示す情報のうちすべての時間分を送信していたが、必ずしもすべてを送信する必要はない。」(段落【0054】)
シ)「上述した実施の形態では、ネットワーク500としてインターネットを想定していたが、インターネットへの接続形態は、特に限定されるものではない。専用線によって、情報処理装置300を、直接、インターネットに接続してもよい。あるいは、途中の一部の回線部分については公衆回線を利用して、インターネットに接続してもよい。」(段落【0056】)
ス)上記カ)、ケ)及びサ)によれば、制御回路316は、情報処理装置300の全体を制御統括するものであり、この記憶回路315に蓄積されたデータを、所定期間ごとに、すべての時間分を送信するものであるから、制御回路316は、データの蓄積が所定期間に達した場合に、記憶回路315に記憶されているデータをすべて送信するよう指示するものといえ、また、ネットワーク接続回路314にデータの送信を指示するものといえる。

上記記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「室外機と空調機110により構成される空調システムの運転状況などに関するデータを蓄積して送信する情報処理装置300において、
上記空調システムの運転状況などに関するデータを記憶回路315に蓄積し、上記運転状況などに関するデータの蓄積が所定期間に達した場合に、上記記憶回路315に記憶されている運転状況などに関するデータをすべて送信するよう指示する制御回路316と、
上記制御回路316の指示に基づき、上記記憶回路315に記憶されている運転状況などに関するデータを送信するネットワーク接続回路314とを備え、
ネットワーク500から入力される動作指示で、空調機110を制御する情報処理装置300。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平4-123596号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次のように記載されている。
ア)「本発明は、複数の端末装置を電話回線を介して監視する遠隔監視装置に係り、特に、小規模の監視センタで比較的多くの台数の端末装置を監視するのに好適な遠隔監視装置に関する。」(第1ページ右下欄第3行?第6行)
イ)「この目的を達成するために本発明は、複数の端末装置を電話回線を介して監視する監視センタを有し、上記端末装置から送信されるデータを受信テキストとして格納するメモリを上記監視センタに備えた遠隔監視装置において、上記監視センタに、上記メモリの入力側に接続される情報伝達経路を開閉するスイツチと、上記メモリに格納される受信テキストの格納量をカウントし上記メモリの記憶容量に応じてあらかじめ定められる設定量に到達したときに出力信号を出力するカウント手段と、上記出力信号に応じて上記スイッチの開閉動作を制御するスイツチ制御部とを設け、上記受信テキストの格納量が上記設定量に到達したときに上記スイツチを開き、上記受信テキストの格納量が上記設定量より少なくなったときに上記スイツチを閉じる構成にしている。」(第2ページ左下欄第14行?右下欄第9行)
ウ)「本発明は上記のように構成したので、端末装置から送信されるデータを監視センタで受信し、受信テキストとしてメモリに格納する際、カウント手段によって受信テキストの格納量をカウントして、メモリの記憶容量に応じてあらかじめ定められる設定量に到達したときに出力信号を出力する。次いで、この出力信号に応じてスイツチ制御部の制御によりスイツチを動作させて、上記のメモリの入力側に接続される情報伝達経路を開く。この状態では監視センタと端末装置との回線接続は行なわれないので、端末装置から発報が出力されても端末装置で受信されないようになつている。
その後、上記のメモリに格納される受信テキストが取り出されて、格納量が上記の設定量より少なくなつたときに、スイツチ制御部の制御により上記のスイツチを閉じ、メモリへの受信テキストの格納を再開する。一方、端末装置は上記のようにスイツチが開いている間、発報が端末装置で受信されないので、所定時間後に再度発報を行なう。そして端末装置から送信されるデータを監視センタで受信し、上記のメモリに受信テキストを格納するようになっている。
これによって、監視センタの出力装置の処理能力やメモリの記憶容量を大きくすることなく、すなわち、監視センタの大型化を要することなく、監視センタへ集中する発報に対応できる。」(第2ページ右下欄第11行?第3ページ左上欄第16行)

上記記載事項及び図示内容からみて、引用例2には、次の事項が記載されている。
「端末装置からのデータをメモリに格納する際、上記データの格納量をカウントし、あらかじめ定められる設定量に到達してから、メモリに格納されたデータを取り出すこと。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「空調機110」は、その機能、構造、用語の意味に照らし、本願発明における「室内機」に相当し、同様に、「空調システム」は「空気調和機」に、「運転状況などに関するデータ」は「運転に係る空調機情報」及び「空調機情報」に、「情報処理装置300」は「設備コントローラ」に、「記憶回路315」は「記憶手段」に、「制御回路316」は「収集処理部」に、「ネットワーク接続回路314」は「送信処理部」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「蓄積」は本願発明の「収集」と同義であり、前者の「記憶回路315に蓄積」することは、後者の「収集して記憶手段に記憶」することに相当し、さらに、前者の「ネットワーク500から入力される動作指示で、空調機110を制御する」ことは、後者の「公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にする」ことに相当する。そして、前者の「運転状況などに関するデータの蓄積が所定期間に達した場合」は後者の「空調機情報の収集回数が所定値に達した場合」と、「空調機情報の収集が所定値に達した場合」で共通する。

したがって、上記両者は、
「室外機と室内機により構成される空気調和機の運転に係る空調機情報を収集して送信する設備コントローラにおいて、
上記空気調和機の運転に係る空調機情報を収集して記憶手段に記憶し、上記空調機情報の収集が所定値に達した場合に、上記記憶手段に記憶されている空調機情報を送信するよう指示する収集処理部と、
上記収集処理部の指示に基づき、上記記憶手段に記憶されている空調機情報を送信する送信処理部とを備え、
公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にする設備コントローラ。」
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
記憶手段に記憶されている空調機情報の送信指示が、本願発明では、空調機情報の収集回数が所定値に達した場合であるのに対し、引用発明では、運転状況などに関するデータの蓄積が所定期間に達した場合である点。

[相違点2]
本願発明では、時間を計測する計時手段を備え、上記計時手段が計測した時間に対応して、公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にするのに対し、引用発明では、公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にするものではあるが、時間を計測する計時手段を備えるか明らかでなく、また、計時手段が計測した時間に対応して、公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にするものではない点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用例2に記載された事項における「メモリ」は、その機能、構造、用語の意味に照らし、本願発明における「記憶手段」に、同様に、「格納」は「記憶」に、それぞれ相当する。したがって、引用例2に記載された事項は、「端末装置からのデータを記憶手段に記憶する際、上記データの記憶量をカウントし、あらかじめ定められる設定量に到達してから、記憶手段に記憶されたデータを取り出すこと。」と言い換えることができる。
ところで、引用発明は、運転状況などに関するデータの蓄積が所定期間に達した場合に送信指示がなされるものであるが、データの蓄積期間に代えてデータの蓄積量とすることは、引用例2に記載の事項に基づいて、当業者が容易になし得ることといえ、その蓄積量を定めるために、データの収集回数とする程度のことは、引用例2に記載の事項を適用するに際し、当業者が行う設計変更にすぎない。
してみれば、相違点1に係る本願発明の発明特定事項とすることは、引用例2に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
本願発明の「設備コントローラ」に相当する引用発明の「情報処理装置300」は、表示回路311、入力回路312、通信回路313、ネットワーク接続回路314、記憶回路315および制御回路316を備えたものであって、パーソナルコンピュータなどで構成されるものである(「2.(1)」の「エ)」、「キ)」参照)。そして、パーソナルコンピュータは、時間を計測する計時手段を備えるのが普通であることから、引用発明の「情報処理装置300」、即ち「設備コントローラ」に「時間を計測する計時手段」を備えることは当業者が容易になし得たことであると共に、外部から制御命令等を送信して運転制御を行う機器において、時間を決めて特定の時間だけ制御命令を受信できるようにすることは、周知の事項(必要ならば、特開平9-243148号公報(リモコンの出力を許可及び禁止するスケジュールタイマ)、特開平10-141738号公報(リモートコントローラの操作を禁止するプログラムタイマ)、特開昭62-258949号公報(所定時間だけ運転指令状態に維持するプログラムタイマー)参照。)であることから、計時手段が計測した時間に対応して、公衆回線を介した外部からの運転制御を可能にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
してみれば、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明が奏する作用、効果は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものにすぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-07 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-07-29 
出願番号 特願2002-178894(P2002-178894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長崎 洋一久保 克彦  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 豊島 唯
松下 聡
発明の名称 空気調和システム及び設備コントローラ  
代理人 濱田 初音  
代理人 田澤 英昭  

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