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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G
管理番号 1223810
審判番号 不服2008-22609  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-04 
確定日 2010-09-13 
事件の表示 特願2004-350205「ピッキングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-160388〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成16年12月2日の出願であって、平成20年1月4日付けの拒絶理由通知に対して、同年2月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月9日付けの手続補正書によって明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、さらに、平成21年1月26日付けで上申書が提出され、その後、当審において平成22年3月19日付けで補正の却下の決定がなされて平成20年9月9日付けの手続補正は却下されるとともに、当審において同年4月8日付けで拒絶理由通知がなされ、同年6月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものであって、その請求項1ないし3に係る発明は、平成22年6月7日付けの手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
複数のキャリアに物品を収納してピッキングエリアに配置すると共に、作業者にピッキングする作業位置を指示するようにしたシステムにおいて、
ロケーションにIDタグを設けてロケーションデータを記憶させ、キャリアにもIDタグを設けて収納物品の種類を特定する情報から成る物品のIDを記憶させると共に、
IDリーダライタを備えた作業者が装着自在な携帯端末で、携帯端末のIDリーダライタにより、ロケーションのIDタグからロケーションデータを読み取って、キャリアのIDタグにロケーションデータを書き込むものと、
位置認識手段を備えたカートに設けられた車載端末で、IDリーダライタと、ピッキングエリアの地図データの記憶部と、表示画面を備えた表示部と、ピッキングシステムを管理するコンピュータとの通信部、とを備えたものを設け、
前記車載端末は、コンピュータからピッキングする物品のIDと個数のリストを入力され、車載端末のIDリーダライタにより、物品のIDをブロードキャストしてキャリアのIDタグからロケーションデータを受信し、受信したロケーションデータと、位置認識手段で認識したカートの位置とにより、記憶部の地図データを用いて、表示画面に作業位置を表示するように構成されている、ことを特徴とする、ピッキングシステム。」


【2】刊行物記載の発明
(1)当審の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平1-317904号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(ア)「1)物品を格納する1以上の格納棚と、該格納棚に物品を搬入および搬出するための物品搬送装置に配置された端末装置と、
該物品搬送装置の端末装置から物品に関係する情報および格納棚の棚番地情報を非接触で読取りおよび書込み可能な記憶装置と、
前記物品搬送装置の端末装置との間で前記物品の入出庫に関係する情報の交信および処理を行う情報処理装置と、
を備え、前記記憶装置を前記物品または当該物品を載置する搬送台および前記格納棚に取付けてなることを特徴とする物流設備。」(特許請求の範囲の請求項1)

(イ)「本発明は物品の搬送および入出庫にともなって物品に関する情報を記憶するための物流設備に関する。」(第1ページ左下欄第18ないし20行)

(ウ)「このように、従来の物流設備においては、在庫情報の更新、製造コスト、操作性等に対して全体的にバランスの取れた物流設備がなかった。
そこで、本発明の目的は、上述の欠点を除去し、物流設備における入出庫情報および在庫情報を精度が高く確実に情報処理装置に記憶させることができ、かつ物流変化に対して弾力性や柔軟性に優れ製造コストが廉価で、かつ情報の保存性に優れた物流設備を提供することにある。」(第2ページ右上欄第15行ないし同ページ左下欄第3行)

(エ)「本発明は物品を載置する搬送台および物品を格納する格納棚に例えばRAMを用いた記憶装置が配置され、搬送台に配置された記憶装置には物品に関係する情報を倉庫に入庫する以前に書き込まれており、物品搬送装置により倉庫内を搬送中に該物品搬送装置に配置された端末装置から搬送台に配置された記憶装置の情報を読み出して情報処理装置に送信される。この情報を受信した情報処理装置は入庫情報として所定の記憶手段に記憶すると同時に前記搬送台の格納棚への棚番地情報を物品搬送装置の端末装置に送信する。この棚番地情報に基づいて物品搬送装置を該当する格納棚の棚番地に移送させて搬送台を棚に搬入する。このとき物品搬送装置の端末装置から格納棚に配置した記憶装置の棚番地情報を読み出し該端末装置において情報処理装置から指示された棚番地情報と前記読み出された棚番地情報とを比較して一致しているか否かを確認させる。これにより情報処理装置の記憶手段の所定のアドレスに記憶された物品に関係する情報と実際に倉庫の格納棚の所定の棚番地に搬入された物品とが一致するので、管理台帳としての情報処理装置における記憶手段に記憶された内容と格納棚に搬入された物品との一致精度が高くなる。
倉庫から物品を搬出する際には、物品搬送装置の端末装置から情報処理装置を呼び出して出庫に関する情報を前記端末装置で受信する。出庫に関する情報には物品の種類,個数等と格納棚から搬出すべき棚番地情報が含まれており、これに基づいて物品搬送装置を指示された棚番地まで移送させる。ここで再び物品搬送装置の端末装置から格納棚に配置した記憶装置の棚番地情報を読み出して端末装置において棚番地情報を比較することにより出庫に関する情報と搬出される物品との一致性が確認され、一致が確認されると物品の搬出が行なわれる。
また、棚卸しの際には端末装置から格納棚に配置された記憶装置の棚番地情報を読み出して情報処理装置に送信し、情報処理装置にて該棚番地情報に該当する物品に関係する情報を端末装置に送信する。端末装置では情報処理装置からの物品に関係する情報を表示することにより、格納棚位置で現物との照合が行なわれる。」(第2ページ左下欄第17行ないし第3ページ左上欄第19行)

(オ)「第1図において、1は在庫情報を利用して商品の入出庫や在庫に関する統計処理や、その他、利用者が所望する演算処理を行い、情報処理装置としての機能を果たす中央装置である。中央装置1において、1-1は無線により情報を送信する送受信回路である。送受信回路1-1は後述の端末装置10と通信を行い、パレットおよび格納棚に設けられた応答器20から送られてくる在庫情報等を端末装置10を中継して受信すると共に、中央装置1側から端末装置10に対して、情報を送信する。
1-2はコンピュータであり、送受信回路1-1から受信した情報を外部記憶装置(不図示)に記憶すると共に、表示装置に表示させる。
1-3はコンピュータ1-2に対して情報を入力するキーボードである。
このような中央装置1は倉庫や事務所内の一室に設置されている。」(第3ページ右上欄第5行ないし同ページ左下欄第2行)

(カ)「10は中央装置lと無線により情報の授受を行う端末装置であり、フォークリフトなどの物品搬送装置に設置されている。
端末装置10において、10-1は中央装置1の送受信回路1-1と無線により情報の授受を行う送受信回路である。
10-2は本発明に係り、物品情報の書き込みおよび読み出しを後述の応答器20に対して行う質問器であり、キーボード10-3からの指示入力に応じて、応答器20に対して動作指示を行い、例えば、応答器20から電波により送信される物品情報を受信する。
この受信された入出庫情報や物品情報は送受信回路10-1を介して中央装置1に上記情報を転送する。
端末装置10と中央装置1とを無線により情報を授受することおよびその装置構成は公知なので詳細な説明を省略する。
また、質問器10-2はキーボード10-3の操作又は中央装置1からの指示に従って応答器20に呼び掛けを行ない、応答器20に記憶された情報を受信及び更新を行う。
このような端末装置10は第2図に示すようにフォークリフトなどの物品搬送装置に設置されている。本例においては送受信回路10-1をフォークリフトの天井に設置し、運転席の操作パネル近くに、キーボード10-3および表示器10-4を配置している。
また、質問器10-2は応答器20と交信可能な位置に配置している。」(第3ページ左下欄第3行ないし同ページ右下欄第18行)

(キ)「応答器20はそれぞれ質問器10-2との間で電波により情報の授受が可能な記憶装置である。応答器20の中で応答器20Aは第3図に示すようにその上に物品を載荷して搬出するパレット40に設置される。応答器20Bは格納棚30に配置されている。応答器20Aには入出庫時にそのパレット40上に載荷された物品の種類,個数,製造年月日,入庫年月日等の物品情報を記憶するとともに応答器20A自身を識別するためのID情報(識別情報)を予め記憶させている。応答器20Bは、パレット40を収納する格納棚30に対して割り合てた棚番地および応答器20Bの識別のためのID情報を予め記憶する。」(第3ページ右下欄第20行ないし第4ページ左上欄第12行)

(ク)「なお特定の応答器からの送信情報のみ受信したい場合は、第1送信回路の交信可能な範囲を応答器20の配置間隔以内に設定したり、受信方向を限定するとよい。後述するように、複数の応答器と交信する場合には所望に応じて第1送信回路の交信範囲を定めればよい。」(第4ページ右上欄第10ないし15行)

(ケ)「第6図は第2図示の質問器10-2が実行する制御手順を示し、第7A図,第7B図は応答器20A,Bが実行する制御手順を示す。これらの制御手順は、応答器20Aが設置されたパレット40に載置された物品をフォークリフトにより倉庫に入庫する場合を示す。ここで、フォークリフトにより搬送されるパレット40に設置された応答器20Aには、パレット40上に載置された物品の一般情報が無線により非接触状態で書き込まれているものであり、応答器20Aには予じめID情報が登録されている。」(第4ページ右下欄第17行ないし第5ページ左上欄第7行)

(コ)「次に、端末装置10の表示10-4に第8図(A)に示すように表示された内容に従って操作者がフォークリフトにより、パレット40および入庫物品を指定された格納棚30まで搬送して所定の棚番地にパレット40を移送させる。このとき操作者は端末装置10のキーボード10-3の所定のキーを操作して格納棚30に配置された応答器20Bに呼び掛け命令を出力する(ステップS9)。これにより応答器20Bでは第7B図のステップS51,52の閉ループを抜け出してステップS53でID情報の確認を行う。応答器20BにおいてステップS53によりID情報が確認されるとステップS54に進んでRAM20-2に記憶された棚番地情報を読み出して送信する。この応答器20Bから送信された棚番地情報は端末装置10の質問器10-2により受信される。質問器10-2は棚番地情報を受信するとステップS10から抜け出してステップS11にて質問器10-2のRAMl0-2Cに一時記憶されている棚番地と比較する。ステップS11の一致・不一致状態はステップ12,13によりそれぞれ表示装置10-4(第5図参照)に表示して操作者に確認させ、不一致の場合はステップS9へ戻り、一致している場合には終了する。
なお、応答器20Bからの棚番地情報と中央装置1から指示された棚番地とが不一致の場合に操作者の判断によりキーボード10-3を操作して応答器20Bの棚番地情報を中央装置1に送信して中央装置1の棚番地を修正することもできる。
上述のような手順でパレット40上に載置された物品は格納棚30に収納され、中央装置1には格納棚30の各棚番地とその棚番地に収納した物品に関する入出庫情報が書き込まれる。
なお、第7A図において、ステップS 3 5,3 7は応答器20Aへの一般情報の書き込みであるが、これはパレット40に物品が載置されて倉庫へ搬入される以前に他の書き込み手段により書き込まれる手順である。」(第5ページ右下欄第1行ないし第6ページ左上欄第17行)

(サ)「次に、格納棚30からの物品を出庫するときにはフォークリフト上の端末装置10のキーボード10-3を操作して中央装置1を呼び出して出庫情報の要求を行なう。これに基づき中央装置1からフォークリフト上の端末装置10へ第8図(B)に示すように出庫すべき物品コード、格納棚番地、個数、出庫日等の出庫情報が送信され表示装置10-4に表示される。
・・・(中略)・・・
操作者はこの表示に基き、フォークリフトを指定された格納棚30の棚番地へ移動させる。ここで再び端末装置10の質問器10-2から格納棚30に配置した応答器20Bに呼び掛け信号を送信して応答器20Bからの棚番地情報を読み込み、端末装置10内において前記棚番号情報が出庫情報として指定された棚番地と一致するか否かを判定する。この判定結果が「一致」の場合には端末装置10の表示装置10-4で確認してパレット40と共に指定物品をフォークリフトで搬出する。・・・(中略)・・・フォークリフトによる運び出しが終了すると端末装置10から中央装置lに出庫実績として出庫情報が送信され、これにより中央装置1は在庫を確認する。」(第6ページ左上欄第18行ないし同ページ左下欄第5行)

(シ)「さらには、質問器10-2を介さないと入出庫、在庫情報を知ることができないという点で、入出庫、在庫情報を機密にしておくことも可能であり、かつ応答器20A,Bの記憶情報に対する不正修正をも防止することができる。」(第6ページ右下欄第11ないし15行)

(ス)「(1) 本実施例においては、端末装置10を物品搬送装置に搭載しているが、端末器10を携帯可能な大きさに一体構成し、操作者が端末装置10を保持するようにしてもよい。」(第7ページ左上欄第3ないし6行)

(セ)「さらに、格納棚に応答器を設置する代わりに搬送台に設置した応答器を用い、物品を格納棚に格納後搬送台の応答器に棚番地を書き込むことにより搬送台の応答器に格納棚に設置した応答器と同一の機能を持たせることができる。」(第7ページ右上欄第2ないし6行)

(2)ここで、上記(1)の(ア)ないし(セ)並びに図面からみて、次のことがわかる。
(ソ)上記(1)の(ア)、(エ)、(オ)、(キ)及び(ケ)ないし(サ)並びに第1、3、6、7A、7B及び8図からみて、物流設備は、搬送台であるパレット40に物品を載荷してフォークリフトにより倉庫に入庫する場合、複数あるパレット40に載荷された物品を、倉庫内にある1以上の格納棚30のエリアに収納させていることがわかる。
一方、物流設備は、格納棚30から物品を出庫する場合、中央装置1から端末装置10の表示装置10-4に、指定物品を出庫のため判定し搬出するための作業位置である棚番地情報を送信して指示し、フォークリフトにより搬出させていることがわかる。

(タ)上記(1)の(ア)、(エ)、(キ)、(ケ)、(コ)並びに第1、3、6、7A、7B及び8図からみて、物流設備は、格納棚30の棚番地を有する棚に非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置である応答器20Bを設けて棚番地情報を記憶させ、一方、搬送台であるパレット40にも非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置である応答器20Aを設けて収納物品の種類,個数,製造年月日,入庫年月日等の物品情報を記憶させていることがわかる。

(チ)上記(1)の(ア)、(エ)及び(カ)並びに第1及び2図からみて、物品搬送装置としてのフォークリフトに設けられた端末装置10は、質問器10-2と、表示画面を備えた表示装置10-4と、物流設備を管理する中央装置1との送受信回路10-1とを備えたものであることがわかる。

(ツ)上記(1)の(ア)、(エ)、(カ)ないし(ク)、(コ)及び(サ)並びに第1、2,6、7A、7B及び8図からみて、端末装置10は、中央装置1から出庫すべき物品コード、格納棚番地、個数、出庫日等の出庫情報、すなわち、物品情報である物品コードと個数の2つを含む出庫情報を受信し、端末装置10の質問器10-2により、呼び掛け信号を送信してパレット40の応答器20Aからの棚番地情報を受信し、受信した棚番地情報を端末装置10内において判定し、判定結果が「一致」の場合には、端末装置10の表示装置10-4で確認することになるが、このとき、表示装置10-4の表示画面には、第8図(B)に示されるように格納棚番地や物品コード等の情報が表示されており、したがって、前記判定結果が「一致」した格納棚番地が、指定物品をフォークリフトで搬出するための作業位置であることがわかる。

(3)上記(1)及び上記(2)並びに図面の記載を総合すると、刊行物には、次の発明(以下、「刊行物記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数のパレット40に物品を載荷して倉庫内にある1以上の格納棚30のエリアに収納すると共に、操作者に指定物品を出庫のため判定し搬出する作業位置を指示するようにした物流設備において、
格納棚30の棚番地を有する棚に応答器20Bを設けて棚番地情報を記憶させ、パレット40にも応答器20Aを設けて収納物品の種類を特定する情報から成る物品情報を記憶させると共に、
物品搬送装置としてのフォークリフトに設けられた端末装置10で、質問器10-2と、表示画面を備えた表示装置10-4と、物流設備を管理する中央装置1との送受信回路1-1、とを備えたものを設け、
前記端末装置10は、中央装置1から指定物品を出庫のため判定し搬出する物品情報と個数の出庫情報を受信し、端末装置10の質問器10-2により、呼び掛け信号を送信して格納棚30の棚番地を有する棚の応答器20Bから棚番地情報を受信し、受信した棚番地情報により、表示画面に作業位置を表示するように構成されている、物流設備。」


【3】対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明における「パレット40」は、その機能及び形状や構造からみて、本願発明における「キャリア」に相当し、以下同様に、「載荷して」は「収納して」に、「倉庫内にある1以上の格納棚30のエリア」は「ピッキングエリア」に、「収納する」は「配置する」に、「操作者」は「作業者」に、「指定物品を出庫のため判定し搬出する」は「ピッキングする」に、「格納棚30の棚番地を有する棚」は「ロケーション」に、「棚番地情報」は「ロケーションデータ」に、「物品情報」は「物品のID」に、「物品搬送装置としてのフォークリフト」は「カート」に、「端末装置10」は「車載端末」に、「質問器10-2」は「IDリーダライタ」に、「表示装置10-4」は「表示部」に、「中央装置1」は「コンピュータ」に、「送受信回路1-1」は「通信部」に、「出庫情報」は「リスト」に、「受信し」は「入力され」に、それぞれ相当する。
また、刊行物記載の発明における「物流設備」は、その機能及び形状や構造からみて、本願発明における「システム」と「ピッキングシステム」とにそれぞれ相当する。
さらに、刊行物記載の発明における「応答器20B」及び「応答器20A」は、「非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置」の限りにおいて、それぞれ本願発明におけるロケーションの「IDタグ」及びキャリアの「IDタグ」に相当する。
さらにまた、刊行物記載の発明における「呼び掛け信号を送信して格納棚30の棚番地を有する棚の応答器20Bから」は、「呼び掛け信号を送信して非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置から」の限りにおいて、本願発明における「物品のIDをブロードキャストしてキャリアのIDタグから」に相当する。
したがって、本願発明と刊行物記載の発明は、次の一致点及び相違点を有するものである。

<一致点>
「複数のキャリアに物品を収納してピッキングエリアに配置すると共に、作業者にピッキングする作業位置を指示するようにしたシステムにおいて、
ロケーションに非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置を設けてロケーションデータを記憶させ、キャリアにも非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置を設けて収納物品の種類を特定する情報から成る物品のIDを記憶させると共に、
カートに設けられた車載端末で、IDリーダライタと、表示画面を備えた表示部と、ピッキングシステムを管理するコンピュータとの通信部、とを備えたものを設け、
前記車載端末は、コンピュータからピッキングする物品のIDと個数のリストを入力され、車載端末のIDリーダライタにより、呼び掛け信号を送信して非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置からロケーションデータを受信し、受信したロケーションデータにより、表示画面に作業位置を表示するように構成されている、ピッキングシステム。」

<相違点>
(1)相違点1(なお、括弧内に、相当する本願発明の発明特定事項を示す。)
ロケーション及びキャリアの非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置と、キャリアの非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置にロケーションデータを書き込むことに関し、
本願発明では、それぞれ「IDタグ」であり、「IDリーダライタを備えた作業者が装着自在な携帯端末で、携帯端末のIDリーダライタにより、ロケーションのIDタグからロケーションデータを読み取って、キャリアのIDタグにロケーションデータを書き込むもの」としているのに対し、刊行物記載の発明では、そせぞれ「応答器20B」及び「応答器20A」であるが、それぞれIDタグであるか明確でなく、本願発明のようなパレット40(キャリア)の応答器20Aに棚番地情報(ロケーションデータ)を書き込みをしているか不明である点(以下、「相違点1」という。)。

(2)相違点2(なお、括弧内に、相当する本願発明の発明特定事項を示す。)
端末に関し、
本願発明では、「装着自在な携帯端末」及び「車載端末」を備えているのに対し、刊行物記載の発明では、端末装置10(車載端末)を備えている点(以下、「相違点2」という。)。

(3)相違点3(なお、括弧内に、相当する本願発明の発明特定事項を示す。)
呼び掛け信号を送信して非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置からロケーションデータを受信することに関し、
本願発明では、「物品のIDをブロードキャストしてキャリアのIDタグから」ロケーションデータを受信しているのに対し、刊行物記載の発明では、「呼び掛け信号を送信して格納棚30の棚番地を有する棚(ロケーション)の応答器20Bから」ロケーションデータを受信している点(以下、「相違点3」という。)。

(4)相違点4
車載端末で、表示画面に作業位置を表示することに関し、
本願発明では、「位置認識手段を備えた」カートに設けられた車載端末で、車載端末は「ピッキングエリアの地図データの記憶部」も備え、「ロケーションデータと、位置認識手段で認識したカートの位置とにより、記憶部の地図データを用いて、」表示画面に作業位置を表示するのに対し、刊行物記載の発明では、物品搬送装置としてのフォークリフトに設けられた車載端末で、ロケーションデータにより、表示画面に作業位置を表示する点(以下、「相違点4」という。)。


【4】当審の判断
上記各相違点について以下に検討する。
(1)相違点1について
物流システムにおいて、ロケーション及びキャリアの非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置として、それぞれIDタグを用い、キャリアのIDタグに物品のIDだけでなくロケーションデータも記憶させるようにした技術は従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。必要があれば、例えば、当審の拒絶理由に例示された特開平3-36199号公報の特に、第5ページ左上欄末行ないし同ページ右上欄第12行及び第6ページ左上欄第14行ないし同ページ右上欄第7行並びに第1、7及び11図、当審の拒絶理由に例示された特開2001-225915号公報の特に、段落【0010】、【0011】、【0015】及び【0018】並びに図1及び2参照。)である。
また、物品の管理システム等において、IDリーダライタを備えた作業者が装着自在な携帯端末で、携帯端末のIDリーダライタにより、ロケーションのIDタグからロケーションデータを読み取って、物品を設置したキャリアのIDタグ若しくは物品に直接配付したIDタグにロケーションデータを書き込む技術は従来周知の技術(以下、「周知技術2」という。必要があれば、例えば、当審の拒絶理由に例示された特開2001-250086号公報の特に、段落【0006】、【0041】、【0067】、【0080】及び【0081】並びに図1、2及び10ないし12参照。)である。
そうすると、刊行物記載の発明において、上記周知技術1を採用してロケーション及びキャリアの非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置としての「応答器20B」及び「応答器20A」に代えてそれぞれ「IDタグ」とし、またパレット40の応答器20Aに物品情報だけでなくロケーションデータも記憶させるようにして、その際、書き込み方として上記周知技術2を採用し、当該相違点1に係る本願発明のようにすることは当業者が容易になし得ることである。

(2)相違点2について
物流システムにおいて、作業者及び物品搬送車側の端末として、装着自在な携帯端末及び車載端末を備える技術は従来周知の技術(以下、「周知技術3」という。必要があれば、例えば、特開2003-285908号公報の特に、【請求項6】及び段落【0028】ないし【0030】並びに図14及び15参照。)である。
そうすると、刊行物記載の発明において、操作者(作業者)及び物品搬送装置としてのフォークリフト(カート)側の端末として、上記周知技術3を採用し、当該相違点2に係る本願発明のようにすることは当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点3について
物品の管理システム等において、物品のID等の物品情報をブロードキャストして物品を設置したキャリアのIDタグ若しくは物品に配付したIDタグからロケーションデータを得て、当該ロケーションデータに基づいて、物品の位置について作業者に対し何らかの信号を送るか、あるいは何らかの表示を行うかする技術は従来周知の技術(以下、「周知技術4」という。必要があれば、例えば、当審の拒絶理由に例示された特開昭63-171703号公報の特に、請求項1、第2ページ左上欄末行ないし同ページ右上欄第8行、第2ページ左下欄第5ないし16行及び第1図、当審の拒絶理由に例示された特開2000-306062号公報の特に、段落【0065】ないし【0070】、図2、3及び5参照。)である。
そうすると、刊行物記載の発明において、呼び掛け信号を送信して非接触で読取り及び書込み可能な記憶装置からロケーションデータを得る際、上記周知技術4を採用し、当該相違点3に係る本願発明のようにすることは当業者が容易になし得ることである。

(4)相違点4について
物流システムにおいて、位置認識手段を備えた車載端末であって、車載端末は作業エリアの地図データも備え、ロケーションデータと、位置認識手段で認識した物品搬送装置の位置とにより、前記地図データを用いて、表示画面に作業位置を表示する技術は従来周知の技術(以下、「周知技術5」という。必要があれば、例えば、再公表特許WO96/30288の特に、第15ページ第13ないし24行、第24ページ第13ないし19行及び第24ページ第26行ないし第25ページ第2行並びに図1ないし4参照。)である。
そうすると、刊行物記載の発明において、車載端末で表示画面に作業位置を表示するのに際し、上記周知技術5を採用し、当該相違点4に係る本願発明のようにすることは当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明を全体として検討しても、本願発明の奏する効果は刊行物記載の発明及び周知技術1ないし5から当業者が予測し得る程度のものである。


【5】むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術1ないし5に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-07-16 
審決日 2010-07-30 
出願番号 特願2004-350205(P2004-350205)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 見目 省二  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 柳田 利夫
西山 真二
発明の名称 ピッキングシステム  
代理人 塩入 みか  
代理人 塩入 明  

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