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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1223928
審判番号 不服2009-2653  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-05 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 特願2005-370095「走査プローブ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-171022〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成17年12月22日の特許出願(2005年特許願第370095号。「以下、「本件出願」という。)につき、平成20年12月19日付けで拒絶査定(発送日:平成21年1月6日)がなされたところ、これに対し、平成21年2月5日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年3月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
1 補正却下の決定の結論
平成21年3月9日付けの手続補正を却下する。

2 補正却下の決定の理由
(1)平成21年3月9日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容
本件補正は、本件出願の明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のとおり補正することを含むものである。

ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成20年6月18日付け手続補正書によるもの)
「【請求項1】
探針と、試料を保持する試料ステージと、を有し、前記探針と前記試料とを相対的に移動させながら、試料の情報を取得するか、又は試料の加工を行う走査プローブ装置において、
前記試料ステージは、試料保持台を移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、を有し、
前記試料ステージは、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とが一体的に、装置本体に対して、交換可能に構成されていることを特徴とする走査プローブ装置。」

イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
探針と、試料ステージと、を有し、前記探針と前記試料ステージとを相対的に移動させながら、試料の情報を取得するか、又は前記試料の加工を行う走査プローブ装置において、
前記試料ステージは、前記試料を保持する試料保持台と、該試料保持台を3次元方向に移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部と、を有し、
前記試料ステージは、装置本体に対して、一体的に交換可能に構成されていることを特徴とする走査プローブ装置。」
(なお、下線部は補正箇所を示す。)

(2) 本件補正の適否について
(2-1)本件補正において、本件補正前の請求項1に係る発明について、「前記試料ステージは、試料保持台を移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、を有し」を「前記試料ステージは、前記試料を保持する試料保持台と、該試料保持台を3次元方向に移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部と、を有し」と補正することは、本件補正前の「試料ステージ」が、「前記試料を保持する試料保持台」と「前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部」とをさらに含むことを減縮して特定するとともに、「試料保持台を移動させるための駆動素子」が、「3次元方向に」移動することを減縮して特定するものである。
(2-2)上記(2-1)で検討したように、試料ステージが「試料を保持する試料保持台」を有すると補正したことにより、試料ステージが、試料を保持することが明らかであることから、本件補正において、本件補正前の請求項1に係る発明について、「試料を保持する試料ステージ」を「試料ステージ」と補正することは、「試料を保持する」点を削除して、不明りょうな記載を明確にしたものであり、明りょうでない記載の釈明にあたるものである。
(2-3)上記(2-2)で検討したように、「試料を保持する試料ステージ」を「試料ステージ」と補正したことにより、「前記探針と前記試料とを相対的に移動させながら」の構成要件の記載の前文に、「試料」という構成要件が削除されていることから、本件補正において、本件補正前の請求項1に係る発明について、「前記探針と前記試料とを相対的に移動させながら」を「前記探針と前記試料ステージとを相対的に移動させながら」と補正することは」、「試料」という構成要件が、削除されたことに伴う不明りょうな記載を明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明にあたるものである。
(2-4)上記(2-1)で検討したように、「前記試料ステージ」は、「前記試料を保持する試料保持台と、該試料保持台を3次元方向に移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部と、を有」する補正したことにより、試料ステージが、「前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部と」を含むことは明らかであり、本件補正において、本件補正前の請求項1に係る発明について、「前記試料ステージは、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とが一体的に、装置本体に対して、交換可能に構成されている」を「前記試料ステージは、装置本体に対して、一体的に交換可能に構成されている」と補正することは、「試料ステージ」が、「前記試料を保持する試料保持台と、該試料保持台を3次元方向に移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部と、を有」すると補正したことに伴う、不明りょうな記載を明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明にあたるものである。
(2-5)そうすると、上記(2-1)?(2-4)で検討したように、本件補正は、明りょうでない記載の釈明及び減縮を含む補正を含む補正であり、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前(以下「平成18年改正前」という。)の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮及び同法同条同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当する。

(3) 独立特許要件について
そこで、本件補正は減縮する補正を含む補正であるから、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(ア)引用刊行物記載の発明
(3A)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2004-333350号公報(以下、引用刊行物A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付与したものである。以下、同様である。)

(3A-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡の走査機構に関する。」

(3A-2)「【0002】
【従来の技術】
米国特許第6323483B1号は、走査型プローブ顕微鏡の走査機構のひとつを開示している。図9は、米国特許第6323483B1号に開示されている走査機構を示している。
【0003】
図9に示されるように、この走査機構114は、支持部122に片持ち支持されたxy方向に変位するxyスキャナ130と、xyスキャナ130の自由端部に固定されたz方向に変位する二本のzスキャナ134と136とを有している。二本のzスキャナ134と136は、例えば積層型圧電体で構成され、zスキャナ固定部132からz軸に沿って上下に対称的に延びている。下側のzスキャナ134の下端にはカンチレバー固定部102が固定されている。カンチレバー固定部102には、自由端にプローブ110を有するカンチレバー108が取り付けられる。
【0004】
走査機構114は、xyスキャナ130によりサンプル104に対してプローブ110をxy方向に移動させると共に、zスキャナ134を伸縮させ、例えばサンプル104からプローブ110までの距離を一定に保つようにプローブ110をz方向に移動させる。zスキャナ134によりプローブ110をz方向に移動させる際、zスキャナ134の伸縮によりzスキャナ固定部132が受ける力を打ち消すように、zスキャナ136がzスキャナ134とは逆方向に伸縮される。これにより、zスキャナ固定部132の不要な振動の発生が抑えられる。このため、xyスキャナ130の不要な振動の発生も抑えられる。これにより、安定した走査型プローブ顕微鏡測定を可能にする。」

(3A-3)「【0022】
図1と図2に示されるように、本実施形態の走査型プローブ顕微鏡の走査機構10は、サンプル等の被走査物18をz軸に沿って移動させるためのzスキャナ12と、z軸に沿って変位し得る一つのzスキャナ14と、zスキャナ12とzスキャナ14をx軸とy軸に沿って移動させるためのxyスキャナ16とを備えている。
【0023】
zスキャナ14は、図1に示されるように、zスキャナ12を取り囲む形状を有している。zスキャナ14は、zスキャナ12の中心軸すなわちzスキャナ12の中心を通りz軸に平行な軸に対して対称性良く位置している。より詳しくは、zスキャナ14は、zスキャナ12の中心軸に対して軸対称な形状を有している。
【0024】
被走査物18はzスキャナ12に取り付けられる。zスキャナ12は、これに限定されないが、例えば、積層型圧電素子で構成される。zスキャナ14は、これに限定されないが、例えば、矩形の筒状の積層型圧電素子で構成される。このようなzスキャナ14は、例えば、積層型圧電素子に貫通孔を形成して作製される。
【0025】
xyスキャナ16は、これに限定されないが、例えば、特開2001-330425号公報に開示されている一体切り抜きバネを利用したスキャナで構成される。xyスキャナ16はx軸とy軸に沿って移動し得る可動部を有し、zスキャナ12とzスキャナ14は共にxyスキャナ16の可動部に保持されている。つまり、xyスキャナ16の可動部は、zスキャナ12とzスキャナ14とを共に保持するスキャナ保持部を構成している。zスキャナ12とzスキャナ14は共に、xyスキャナ16の可動部から同じ側に延出している。
【0026】
本実施形態の走査機構10では、被走査物18を移動させるために、zスキャナ12に適宜電圧が印加される。zスキャナ12は電圧印加に応じてz軸に沿って伸縮する。その結果、zスキャナ12に取り付けられた被走査物18がz軸に沿って移動される。
【0027】
zスキャナ12への電圧印加に対応して、zスキャナ14にも適宜電圧が印加される。印加電圧の時間的変化に注目すると、zスキャナ14には、zスキャナ12に印加される電圧波形に対して、周波数が同じで位相が逆の波形の電圧が印加される。更に、zスキャナ14に印加される電圧波形の振幅は、zスキャナ12の伸縮によりxyスキャナ16の可動部が受ける衝撃を打ち消すように調整される。
【0028】
zスキャナ12は電圧印加に応じてz軸に沿って伸縮する。zスキャナ12の伸縮は、これを保持している部材、すなわち、xyスキャナ16の可動部をz軸に沿って振動させる。また、zスキャナ14も電圧印加に応じてz軸に沿って伸縮する。zスキャナ14の伸縮は、zスキャナ12の伸縮に対して逆となるため、zスキャナ12の伸縮によって引き起こされたxyスキャナ16の可動部の動を減衰させる。
【0029】
予め、zスキャナ12やzスキャナ14やxyスキャナ16の諸特性を考慮して、zスキャナ14に印加する電圧の波形を調整しておくことにより、理想的には、zスキャナ12の伸縮によって引き起こされたxyスキャナ16の可動部の振動が打ち消される。つまり、xyスキャナ16の可動部の不所望な振動を無くすことが可能となる。
【0030】
本実施形態の走査機構10では、zスキャナ12とzスキャナ14は共に、xyスキャナ16に対して同じ側に配置されている。このため、走査機構10のz軸に沿った寸法を比較的小さく抑えることが可能である。これにより、走査機構10は、z軸に沿った寸法の狭い空間に対しても、比較的容易に設置することが可能である。
【0031】
また、zスキャナ12とzスキャナ14が共にxyスキャナ16に対して同じ側に位置するため、走査機構10の組立が比較的容易に行なわれ得る。これは、走査機構10の諸特性の向上にとって有利である。」

(3A-4)「【0032】
第二実施形態
本実施形態は、走査型プローブ顕微鏡の別の走査機構に向けられている。以下、図3?図5を参照しながら本実施形態について説明する。
【0033】
図3は、本発明の第二実施形態の走査機構の平面図である。図4は、図3に示された走査機構のIV-IV線に沿った断面図である。図5は、図3と図4に示されたチューブスキャナの側面図である。図3?図5において、図1と図2に示された部材と同一の参照符号で指示された部材は同様の部材であり、その詳しい説明の走査機構20は、zスキャナ12と、xyスキャナ16と、zスキャナ12を取り囲んでいるチューブスキャナ22とを備えている。zスキャナ12とチューブスキャナ22は共にxyスキャナ16の可動部に保持されている。
【0035】
チューブスキャナ22は、円筒形状をしており、zスキャナ12の中心軸に対して軸対称に配置されている。つまり、チューブスキャナ22は、zスキャナ12の中心軸に対して対称性良く位置している。
【0036】
チューブスキャナ22は、例えば、走査型プローブ顕微鏡においてよく使用される円筒型圧電素子であり、z軸に沿ってだけでなく、x軸とy軸に沿っても変位し得る。チューブスキャナ22すなわち円筒型圧電素子は、図5に示されるように、円筒形状の圧電体24と、円筒の外周面に四つの駆動電極26と、円筒の内周面に設けられた(図示しない)一つの共通電極とで構成されている。四つの駆動電極26は、互いに離れており、円筒の中心軸周りに、角度的に等間隔に位置している。
【0037】
このようなチューブスキャナ22は、例えば、円筒の内側の共通電極が接地され、円筒の外側の四つの駆動電極26に電圧が適宜印加されることで駆動される。例えば、チューブスキャナ22は、円筒の中心軸に対して反対側に位置する二つの駆動電極26に逆極性の電圧が印加されると、その二つの駆動電極26を横切る方向に湾曲する。従って、チューブスキャナ22は、軸対称に位置する二つの駆動電極26への印加電圧を制御することにより、その自由端がx軸あるいはy軸に沿って変位される。また、四つの駆動電極26に同じ電圧が印加されると、チューブスキャナ22はz軸に沿って伸縮する。
【0038】
本実施形態の走査機構20では、第一実施形態の走査機構10と同様に、zスキャナ12の伸縮に対して逆にチューブスキャナ22を伸縮させることにより、zスキャナ12の伸縮によって引き起こされるxyスキャナ16の可動部の不所望な振動を減衰させる、理想的には無くすことが可能となる。
【0039】
本実施形態の走査機構20では、チューブスキャナ22がz軸に沿ってだけでなくx軸とy軸に沿っても変位し得るので、xyスキャナ16の可動部のx軸とy軸に沿った変位を無くすことが可能である。言い換えれば、xyスキャナ16の可動部のx軸とy軸に沿った振動をも減衰させることが可能である。
【0040】
走査機構20の組立においては、zスキャナ12をxyスキャナ16の可動部に対して完全に垂直に取り付けることは、言い換えれば、xyスキャナ16のx軸とy軸に対してzスキャナ12の中心軸を完全に直交させてxyスキャナ16に取り付けることは非常に難しい。これは、本実施形態の走査機構20に限らず、通常の走査機構の組立についても一般的に言えることである。
【0041】
のため、走査機構20は、zスキャナ12の中心軸がxyスキャナ16のx軸とy軸に対して傾いて組み立てられることがある。このような走査機構20においては、zスキャナ12の伸縮は、z軸に沿った成分だけでなく、x軸やy軸に沿った成分をも含むものとなる。この場合、zスキャナ12の伸縮は、xyスキャナ16の可動部をx軸やy軸に沿って変位(振動)させる。
【0042】
また、zスキャナ12の製造時のバラツキにより、zスキャナ12の伸縮の方向が中心軸に対して傾いている場合もある。この場合も、zスキャナ12の伸縮は、xyスキャナ16の可動部をx軸やy軸に沿って変位(振動)させる。
【0043】
本実施形態においては、zスキャナ12のz軸に沿った伸縮に応じて発生するxyスキャナ16の可動部のx軸やy軸に沿った変位を予め測定しておき、zスキャナ12のx軸やy軸に沿った変位により引き起こされるxyスキャナ16の可動部のx軸やy軸に沿った振動を打ち消すように、チューブスキャナ22をx軸とy軸に沿って変位させるとよい。これにより、xyスキャナ16の可動部の振動を、z軸に沿った成分についてだけでなく、x軸とy軸に沿った成分についても、減衰させることが、理想的には無くすが可能となる。
【0044】
zスキャナ12の伸縮によって引き起こされるxyスキャナ16の可動部のx軸やy軸に沿った変位は、どのような手法によって測定されてもよい。例えば、xyスキャナ16の近くに変位センサを設置して測定しても、あるいは、xyスキャナ16に歪みゲージを設けて測定してもよい。
【0045】
これまでの説明から分かるように、本実施形態の走査機構20においても、第一実施形態の走査機構10と同様に、zスキャナ12とチューブスキャナ22が共にxyスキャナ16に対して同じ側に配置されている。このため、z軸に沿った寸法を比較的小さく抑えることが可能である。また、走査機構20の組立が比較的容易に行なわれ得る。
【0046】
さらに、チューブスキャナ22は、z軸に沿ってだけでなく、x軸とy軸に沿っても変位し得るため、走査機構20においては、zスキャナ12の伸縮により引き起こされるx軸とy軸に沿った成分を含む不所望な振動をも減衰させたり、理想的には打ち消したりすることも可能となる。」

上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-1)?(3A-4)の記載のうち、(3A-1)及び(3A-4)の記載を特に参照すると、上記引用刊行物Aには、
「走査機構20を有する走査型プローブ顕微鏡において、
走査機構20は、サンプル等の被走査物18をz軸に沿って移動させるための積層型圧電素子からなるzスキャナ12と、zスキャナ12を取り囲んでいるチューブスキャナ22と、zスキャナ12とチューブスキャナ22を可動部に保持し、x軸とy軸に沿って移動させるためのxyスキャナ16と、を備えている走査型プローブ顕微鏡。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

(3B)原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に頒布された特開2005-233669号公報(以下、引用刊行物B」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(3B-1)「【技術分野】
【0001】本発明は、主として試料表面の3次元形状を観察するために用いられる走査型プローブ顕微鏡(SPM=Scanning Probe Microscope)に関する。」

(3B-2)「【0003】
従来から知られている原子間力顕微鏡の検出部の原理的構成を図6に示す(例えば特許文献1など参照)。すなわち、スキャナ100の上部に取り付けられた試料ホルダ11上に試料12を載置し、カンチレバー13に取り付けられた尖鋭なプローブ14の先端を試料12のごく近傍(数nm以下の間隙)に近づける。このとき、プローブ14の先端と試料12の原子との間には原子間力(引力又は反発力)が作用する。この状態で、試料表面に沿ってプローブ14と試料12とがX-Y平面内で相対移動するようにスキャナ100により走査を行いつつ、上記原子間力を一定に保つようにプローブ14の試料12からの距離(Z軸方向高さ)をフィードバック制御する。このときのZ軸方向のフィードバック量は試料12の表面の凹凸に応じたものとなるから、これに基づいて試料表面の3次元画像を得ることができる。
【0004】
図6の構成においては、カンチレバー13の変位を検出するために、その上部に測光部が設けられている。すなわち、レーザダイオード15から出射したレーザ光をレンズ16で集光した後にビームスプリッタ17で反射させ、カンチレバー13の先端付近に照射する。そして、その反射光をミラー18を介して光検出器19で検出する。光検出器19はカンチレバー13の変位方向(Z軸方向)に複数(通常2つ)に分割された受光面を有する。したがって、カンチレバー13が上下に変位すると複数の受光面に入射する光量の割合が変化するから、その複数の受光光量に応じた検出信号を演算処理することでカンチレバー13の変位量を算出することができる。
【0005】
スキャナ100はピエゾ素子を含む略円筒形状体であり、外部から印加される電圧によってX軸、Y軸、及びZ軸方向にそれぞれ所定範囲で自在に変位する。試料上の狭い範囲を高い分解能で観察したい場合には同一印加電圧に対して変位量の小さなスキャナを用いるとよく、分解能は粗くてもよいが試料上の広い範囲を観察したい場合には同一印加電圧に対して変位量の大きなスキャナを用いるとよい。そのため、観察目的などに応じて適宜の特性のスキャナを使用することが好ましく、従来の走査型プローブ顕微鏡では、スキャナの交換が比較的容易であるように配慮がなされている。


(3B-3)「【0021】
図1において、上述したピエゾ素子を含んで成るスキャナ100は顕微鏡本体20に対して着脱自在なスキャナユニット10の一部であり、スキャナユニット10はスキャナ100以外に、このスキャナ100を本体20のベース21上に固定するための台座部101と、本体20側に設けられたコネクタ22に接続されるケーブルコネクタ103と、このケーブルコネクタ103とスキャナ100の間の配線であるケーブル線102と、を含む。
【0022】
スキャナユニット10には、観察対象である試料の種類や観察目的等に応じて、X-Y平面内の最大走査範囲及びZ軸方向の最大測定範囲が相違するような複数種類のものが存在する。したがって、ベース21上に装着されているスキャナユニットが試料の種類等に適さない場合には、測定者が適宜のスキャナユニットを選定して交換する。
【0023】
上述したようにプローブ14の先端を試料12に近接させて表面観察を行うとき、Z軸方向に2分割された光検出器19からの検出信号は変位量算出部30に入力され、変位量算出部30は両受光面における受光光量の差や比などからカンチレバー13の変位量を算出して制御部31に入力する。制御部31は、プローブ14と試料12表面との間の原子間力が常に一定になるように、つまりプローブ14と試料12表面との間の距離が常に一定になるように、カンチレバー13の変位量に基づいてスキャナ100をZ軸方向に変位させる電圧値を算出し、スキャナ駆動部32を介してスキャナ100をZ軸方向に微動させる。また、制御部31は予め決められた走査パターンに従って、試料12がX-Y平面内でプローブ14に対して相対移動するようにX軸、Y軸方向の電圧値を算出し、スキャナ駆動部32を介してスキャナ100をX軸及びY軸方向に微動させる。Z軸方向のフィードバック量(スキャナ電圧)を反映した信号はデータ処理部34にも送られ、データ処理部34はX軸、Y軸方向の各位置においてその信号を処理することによって試料表面の3次元画像を再現し、これを表示部35の画面上に描出する。
【0024】
制御部31が上述したようにスキャナ100を三軸方向に独立に微動させる際に、スキャナ100への印加電圧(スキャナ電圧)とそれに対応したスキャナ100の変位量との関係を示す制御用パラメータが必要となる。そこで、本実施例の走査型プローブ顕微鏡では、次のようにしてスキャナ駆動のための制御用パラメータを制御部31に設定するようにしている。
【0025】
すなわち、各スキャナユニット10は予めそのスキャナ100に応じた制御用パラメータが書き込まれた例えばフラッシュメモリなどのICメモリ104を備えている。一方、顕微鏡本体20にはコネクタ103、22を介してスキャナユニット10のICメモリ104からデータを読み出すためのデータ読み出し部33が設けられ、読み出されたデータが制御部31に与えられるようになっている。
【0026】
この実施例の走査型プローブ顕微鏡では、電源投入時などの初期設定の際に、データ読み出し部33によりベース21上に装着されているスキャナユニット10のICメモリ104に記憶されているデータつまり制御用パラメータを読み出し、制御部31の内部メモリにこの制御用パラメータを設定する。制御用パラメータは、例えばX軸、Y軸、Z軸方向毎の単位印加電圧当たりの変位量である。一旦、制御部31の内部メモリに保存された制御用パラメータは電源が遮断されるまで保持され、上記のようなスキャナ駆動制御の際に利用される。
【0027】
上述したようにスキャナユニットが他の種類のものに交換される際には、顕微鏡本体20の電源は遮断されるから、電源投入時毎にスキャナユニット10のICメモリ104から新たにデータを読み込むことによって、試料観察に使用されるスキャナユニット10に対応した制御用パラメータを確実に且つ自動的に制御部31に設定することができる。
【0028】
この第1実施例の走査型プローブ顕微鏡における制御用パラメータ設定方法の特徴は、個々のスキャナユニット10がそれぞれ制御用パラメータをデータとして保持している点にある。そのため、同種類のスキャナユニットであっても、製造ロットの相違などに起因する個体差を反映した正確な制御用パラメータをそれぞれのスキャナユニット10に保持させることができ、これに基づいて非常に高い精度で以てスキャナの駆動制御を行うことができる。
【0029】
なお、上記実施例ではケーブル線102を介してデータ読み出し部33がICメモリ104のデータを読み出すようにしていたが、例えば無線式のICタグなどを利用することによって非接触でデータの読み出しを行うようにしてもよい。また、ケーブル線を用いる場合でも、スキャナ駆動部32からの電力供給用のケーブル線とは別にケーブル線を設けてもよい。」

(イ)本願補正発明と引用発明との対比・判断
(イ-1)本願補正発明と引用発明とを対比する。
(i)引用発明の「走査機構20」は、zスキャナ12と、xyスキャナ16と、チューブスキャナ22とを備え、また、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-3)の段落【0024】に「被走査物18はzスキャナ12に取り付けられる。」と記載されているように、zスキャナ12はサンプル等の被走査物18を載置する台、すなわち、ステージを伴っていることから、本願補正発明の「試料ステージ」に相当し、さらに、引用発明の「走査型プローブ顕微鏡」は、その機能・構成からみて、本願補正発明の「走査プローブ装置」に相当する。

(ii)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-2)には、従来例として、カンチレバーのプローブとサンプルのZ方向の距離を一定にしながらxy方向に移動させる走査機構を有する走査型プローブ顕微鏡が記載され、さらに、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)の段落【0003】には、カンチレバーに取り付けられたプローブの試料からの距離(Z軸方向高さ)が常に一定になるようにフィードバックする走査型プローブ顕微鏡が記載されていることから、引用発明の走査型プローブ顕微鏡においても、本願補正発明の走査プローブ装置と同様にカンチレバーのプローブ、すなわち探針と試料ステージを有することは明らかである。
そうすると、引用発明の走査型プローブ顕微鏡の走査機構20は、サンプル等の被走査物18をz軸に沿って移動させるzスキャナ12と、x軸とy軸に沿って移動させるためのxyスキャナ16を備えていることから、引用発明の走査型プローブ顕微鏡は、カンチレバーのプローブと走査機構20とを相対的に移動させているものといえ、さらに、上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-2)及び上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-1)に、それぞれ、走査型プローブ顕微鏡によりサンプルの測定をすること、及び、走査型プローブ顕微鏡により試料表面の3次元形状を観察することが記載されているように、走査型プローブ顕微鏡が、サンプルを測定して、サンプルの情報を得ることは技術常識であることから、引用発明の走査型プローブ顕微鏡は、本願補正発明の走査プローブ装置と同様に、「前記探針と前記試料ステージとを相対的に移動させながら、試料の情報を取得する」「走査プローブ装置」であることは明らかである。

(iii)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-3)には「被走査物18はzスキャナ12に取り付けられる。」ことが記載されていることから、引用発明の「走査機構20」では、被走査物18がzスキャナ12に設置されることになる。
他方、本願補正発明の「試料ステージ」では、試料が試料保持台で保持されることから、引用発明の「走査機構20」と本願補正発明の「試料ステージ」とは、「試料を設置する手段」を備えている点で共通する。

(iv)引用発明の「走査機構20」は、サンプル等の被走査物18をz軸に沿って移動させるためのzスキャナ12と、zスキャナ12を可動部に保持し、x軸とy軸に沿って移動させるためのxyスキャナ16とを備えていることから、zスキャナ12と、xyスキャナ16とを駆動することにより、3次元方向に移動することは明らかである。
そうすると、引用発明の「zスキャナ12、xyスキャナ16」と本願補正発明の「駆動素子」とは、「試料を設置する手段を3次元方向に移動させるための駆動手段」である点で共通する。

(v)上記引用刊行物Aの摘記事項(3A-4)の【0046】には、「チューブスキャナ22は、z軸に沿ってだけでなく、x軸とy軸に沿っても変位し得るため、走査機構20においては、zスキャナ12の伸縮により引き起こされるx軸とy軸に沿った成分を含む不所望な振動を・・・理想的には打ち消したりすることも可能となる。」ことが記載されており、このことは、例えば、上記引用刊行物Cの摘記事項(3C-2)に「(3)・・・前記複数の可動部における一方の可動部を、他方の可動部に対して相対的に駆動し、それぞれの可動部の生じる慣性力が、互いに打ち消し合うように構成することにより、作用反作用の法則により、上記のバネ支持された一方の可動部と他方の可動部が互いに逆方向に駆動されるために、それぞれの慣性力が打ち消し合う」ことが記載されている点からも明らかなように、引用発明の「zスキャナ12を取り囲んでいるチューブスキャナ22」が、zスキャナ12の伸縮により引き起こされるx軸とy軸に沿った成分を含む不所望な振動からくる慣性力を打ち消すように駆動されることは、物理的にみて自明な事項である。
よって、引用発明の「zスキャナ12を取り囲んでいるチューブスキャナ22」と本願補正発明の「可動部」とは、「該試料設置手段の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部」である点で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「探針と、試料ステージと、を有し、前記探針と前記試料ステージとを相対的に移動させながら、試料の情報を取得する走査プローブ装置において、
前記試料ステージは、前記試料を設置する手段と、該試料を設置する手段を3次元方向に移動させるための駆動手段と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、を有する走査プローブ装置。」である点で一致し、次の相違点(あ)?相違点(え)において相違する。

・相違点(あ)
本願補正発明では、試料ステージが有する試料を設置する手段が、「試料を保持する試料保持台」であるのに対して、引用発明では、走査機構20が有する試料を設置する手段が、zスキャナ12である点。

・相違点(い)
3次元方向に移動させるための駆動手段が、本願補正発明では、「駆動素子」であるのに対して、引用発明では、積層型圧電素子からなるzスキャナ12とx軸とy軸に沿って移動させるためのxyスキャナ16である点。

・相違点(う)
本願補正発明では、試料ステージが、「試料保持台と駆動素子と可動部とを支持する支持部」を有するのに対して、引用発明では、走査機構20がそのような構成を有しない点。

・相違点(え)
本願補正発明では、「試料ステージは、装置本体に対して、一体的に交換可能に構成されている」のに対して、引用発明では、走査機構20がそのような構成を有しない点。

(イ-2)当審の判断
そこで、上記相違点(あ)?相違点(え)について判断する。

・相違点(あ)について
走査型プローブ顕微鏡において、走査機構に試料を設置する際に、試料を保持する試料保持台を用いることは、例えば、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)に記載されている試料ホルダ11や、例えば特開2000-88983号公報の9頁15欄の段落【0025】に記載されている移動台705のように周知(他に、特開2004-325075号公報の3頁1?2行に記載の試料台103を参照)であることから、引用発明において、サンプル等の被走査物18を、走査機構20のzスキャナ12に取り付ける代わりに試料保持台に取り付ける周知の構成を採用して、本願補正発明のごとく構成することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(い)について
引用発明のzスキャナ12は、積層型圧電素子からなることから、本願補正発明と同様に駆動素子であることは明らかである。そして、zスキャナと同様にxyスキャナを駆動素子を用いて構成することは、例えば、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)の段落【0005】に記載されているピエゾ素子や、例えば特開2000-88983号公報の8頁13欄の段落【0021】に記載されている圧電素子500のように周知(他に、特開2004-325075号公報の3頁8?10行に記載の円筒型圧電素子102を参照)であることから、引用発明において、zスキャナ12と同様にxyスキャナ16を周知の構成のごとく駆動素子で構成することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(う)について
走査機構20に試料保持台を設けることは、上記「相違点(あ)について」で検討したとおりであり、さらに、zスキャナ12と同様にxyスキャナ16を駆動素子で構成することは、上記「相違点(い)について」で検討したとおりである。
そして、走査機構を構成する際に、試料保持台とスキャナを構成する駆動素子と支持部で支持することは、上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-2)の段落【0003】、及び(3B-3)の段落【0021】に記載されている台座部101や、例えば特開2000-88983号公報の9頁15欄の段落【0025】に記載されている固定台701のごとく周知(他に、特開2001-330425号公報の6頁5頁7欄4?6行、9欄48行?10欄6行、図5の走査機構保持台501参照)であり、さらに、引用発明のチューブスキャナ22も走査機構20が備える構成要素であることから、引用発明において、走査機構20に試料保持台を設けるとともに、zスキャナ12と同様にxyスキャナ16を駆動素子で構成した際に、周知の走査機構の構成を採用して、走査機構20を構成する、試料保持台、駆動素子で構成したzスキャナ12とxyスキャナ16、及びチューブスキャナ22を、支持部で支持するように構成することは当業者が容易になし得るものである。

・相違点(え)について
上記引用刊行物Bの摘記事項(3B-3)には、観察対象である試料の種類や観察目的等に応じて、スキャナ100、台座部101、ケーブルコネクタ103、及びケーブル線102とを含むスキャナユニット10を、走査型プローブ顕微鏡本体20に対して、一体的に交換可能に構成することが記載されており、このスキャナユニット10は、引用発明の、zスキャナ12、チューブスキャナ22、及びxyスキャナ16を含む走査機構20と同様に、走査型プローブ顕微鏡の走査機構を構成することは明らかである。
そして、走査機構を構成する際、引用発明のごとく、zスキャナ12とxyスキャナ16、及びチューブスキャナ22で構成する場合や、上記引用刊行物Bのごとく、スキャナのほかに、支持部を含んで構成する場合や、上記周知例の特開2001-330425号公報の図2や図5に記載されているように、スキャナのほかに支持部や試料保持台を含む場合があることから、走査機構としてどのような構成要素を含むように構成するかは当業者が適宜選択しうる設計的事項にすぎないものである。
そうすると、引用発明の走査機構20も上記引用刊行物Bに記載された発明のスキャナユニット10もともに走査型プローブ顕微鏡の走査機構である点で共通することから、引用発明の走査型プローブ顕微鏡において、上記「相違点(あ)について」及び「相違点(う)について」で検討したように、zスキャナ12とxyスキャナ16、及びチューブスキャナ22を含む走査機構20に、さらに試料保持台や支持部を含んだ場合においても、上記引用刊行物Bに記載された発明の構成を採用して、観察対象である試料の種類や観察目的等に応じて、走査機構20を、走査型プローブ顕微鏡本体20に対して、一体的に交換可能に構成すること、すなわち、本願補正発明のごとく「試料ステージは、装置本体に対して、一体的に交換可能に構成されている」ようにすることは当業者が容易になし得るものである。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、上記引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、上記引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下しなければならないものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成21年3月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本願の請求項1?10に係る発明は、平成20年6月18日付け手続き補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 2 (1)」の「ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1」に記載したように、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
探針と、試料を保持する試料ステージと、を有し、前記探針と前記試料とを相対的に移動させながら、試料の情報を取得するか、又は試料の加工を行う走査プローブ装置において、
前記試料ステージは、試料保持台を移動させるための駆動素子と、該試料保持台の移動の際に生じる慣性力を相殺する方向に動く可動部と、を有し、
前記試料ステージは、前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とが一体的に、装置本体に対して、交換可能に構成されていることを特徴とする走査プローブ装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は上記「第2 2 (3)」の(ア)に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
上記「第2 2 (3)」の(イ)で検討した本願補正発明は、上記本願発明の「走査プローブ装置」の構成要件の「試料ステージ」に、「前記試料を保持する試料保持台」と「前記試料保持台と前記駆動素子と前記可動部とを支持する支持部」の構成を付加するとともに、「試料保持台を移動させるための駆動素子」に、「3次元方向に」の構成を付加することにより、「走査プローブ装置」の構成要件を減縮して特定するものであり、言い換えれば本願発明の構成要件にさらなる構成要件を付加したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (3)」の(イ)において検討したとおり、引用発明、上記引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることから、本願発明も同様の理由により、引用発明、上記引用刊行物Bに記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、本件出願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-05 
結審通知日 2010-07-06 
審決日 2010-07-27 
出願番号 特願2005-370095(P2005-370095)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01N)
P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡▲辺▼ 純也西村 直史  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 郡山 順
居島 一仁
発明の名称 走査プローブ装置  
代理人 阿部 琢磨  
代理人 黒岩 創吾  

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