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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F15B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F15B
管理番号 1223930
審判番号 不服2009-3604  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-18 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 特願2000-396940「油圧閉回路の油圧シリンダ保持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年7月10日出願公開,特開2002-195209〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は,平成12年12月27日の出願であって,平成21年1月14日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年2月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に,同年3月18日付け手続補正書による手続補正(以下,「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により補正された,特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)は,以下のとおりのものと認められる。
「(a)ロッドが取り付けられたピストン並びに該ピストンの両側のヘッド側油圧室及びロッド側油圧室を備える油圧シリンダ装置と,
(b)前記ヘッド側油圧室及びロッド側油圧室に一端がそれぞれ接続された第1管路及び第2管路と,
(c)2つの吐出口を備える2方向形のポンプと,
(d)該ポンプを駆動する駆動源と,
(e)前記2つの吐出口に一端がそれぞれ接続された第3管路及び第4管路と,
(f)前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端がそれぞれ接続される少なくとも4つのポートと,前記第1管路及び第2管路の他端と第3管路及び第4管路の他端とをそれぞれ連結する開放位置と,前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端を閉止する閉止位置との少なくとも2位置を備える切替弁と,
(g)停止している前記油圧シリンダ装置を作動させる時には,前記駆動源を制御して前記ポンプから圧油を吐出させ,前記第3管路又は第4管路の内部の圧力を前記第1管路又は第2管路の内部の圧力と等しくさせて,前記切替弁を閉止位置から開放位置に切替え,作動している前記油圧シリンダ装置を停止させる時には,前記駆動源を制御して,前記ポンプからの漏れ量を補うよう,回転方向の制御を行い,同時に回転数を微小回転数まで低下させて,前記切替弁を開放位置から閉止位置に切替える制御装置とを有することを特徴とする油圧閉回路の油圧シリンダ保持装置。」

上記補正は,請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ポンプ」について「該ポンプを駆動する駆動源」を有するとの限定を付加し,同じく「制御装置」について,「停止している前記油圧シリンダ装置を作動させる時」及び「作動している前記油圧シリンダ装置を停止させる時」に,「前記駆動源を制御して」との限定をそれぞれ付加するものであるので,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本願補正発明が,特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について,以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-256903(以下,「引用例」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。

・「〔発明の利用分野〕
本発明は,可変容量ポンプとアクチユエータとの間に切換弁を有し,可変容量ポンプを吐出し流量に応じてアクチユエータの速度を制御する油圧回路の制御装置に関するものである。」(第2頁左上欄第7-11行)

・「第4図はこのような制御装置が備えられた油圧回路の一例を示す回路図であり,第5図は第4図に示す制御装置の一例を示すブロツク図である。
この図において,1は可変容量ポンプ,1aは前記可変容量ポンプ1の吐出し量可変機構,例えば斜板,2は斜板1aを駆動するレギユレータ,3は斜板1aの位置を検出する変位計,4は可変容量ポンプ1と少くとも2本の主管路によって閉回路に接続され,可変容量ポンプ1から供給される圧油によって駆動されるアクチユエータ,例えば油圧シリンダ,5は油圧シリンダ4によって駆動される負荷,6は可変容量ポンプ1と油圧シリンダ4との間に介設され,可変容量ポンプ1から油圧シリンダ4に供給される圧油を断接する切換弁,7は可変容量ポンプ1の吐出し量,即ち,油圧シリンダ4の速度を指示する操作レバー,8は上記変位計3によって検出された斜板1aの傾転量信号Yと操作レバー7の操作量信号X_(L)とを入力し,上記切換弁6に切換信号を出力すると共に,上記レギユレータ2に斜板1aを駆動するための制御信号を出力する制御装置である。」(第2頁左上欄第17行-同頁右上欄第17行)

・「上記したステツプS-8における吐出量制御は,第7図に示す手順にて行われる。
即ち,まずステツプS-81において,吐出量指令値X(=0または=X_(0))から斜板傾転量Yを減ずる演算が行われ,偏差ΔYから算出される。
次いで,ステツプS-82に移り,偏差ΔYの符号が判断される。
偏差ΔYが負の数値(-)と判断された場合は,ステツプS-83に移り,中央演算処理装置8cから出力器8fを経てレギユレータ2に斜板1aを(-)方向へ動かす制御信号が出力される。
また,ステツプS-82において,偏差ΔY=0であると判断された場合は,ステツプS-84に移る。ここで,ΔY=0ということは,吐出量指令値Xと斜板傾転量Yとが一致しているということであるから,ステツプS-84においては,レギユレータ2に斜板1aを停止させる信号が出力される。
また,ステツプS-82において,偏差ΔYが正の数値(+)であると判断された場合は,ステツプS-85に移り,レギユレータ2に斜板1aを(+)方向へ動かす制御信号が出力される。」(第3頁左上欄第11行-同頁右上欄第12行)

・「第8図はこの従来例の油圧回路の制御装置の構成を示す回路図であつて,第4図に示したと同様の部材については同一の符号をもつて表示されている。
この図において,8’は制御装置,9は油圧シリンダ4のヘツド側の回路の圧力を検出する圧力検出器,10は油圧シリンダ4のロツド側の回路の圧力を検出する圧力検出器,11は油圧シリンダ4のヘツド側の回路およびロツド側の回路の圧力の高低に応じて図上左右方向に移動するシヤトル,12,13はシヤトル11の移動に対応して信号を出力するスイツチ,例えば近接スイツチである。
この制御装置8’は,第9図に示すように,第5図に示した制御装置8に対し,マルチプレクサ8aに圧力検出器9,l0の信号入力を追加し,近接スイツチ12,13の入力用として入力器8gを追加した構造となつている。そしてこの制御装置8’のROM8dには,可変容量ポンプ1からの漏れ流量qlt+qliに相応する斜板傾転角度を求める第1の演算と,この第1の演算によつて求められた第1の演算値X_(1)を加えて可変容量ポンプ1の新たな吐出し流量(吐出量指令値)Xに相応する斜板傾転角度を求める第2の演算を行うための関数が記憶されている。」(第4頁左上欄第14行-同頁右上欄第18行)

・「かかる制御装置8’における制御は,例えば第12図および第13図のフローチヤートで示す手順によつて行われる。尚,このフローチヤート中,P_(L)は圧力検出器9によつて検出される圧力値,P_(R)は圧力検出器10によつて検出される圧力値,ΔXは可変容量ポンプ1の吐出し流量の変化量に相応する増分を示している。
まず,ステツプS-100において,制御装置8’の中央演算処理装置8cに,マルチプレクサ8aおよびA/D変換器8bを介して,操作レバー7の操作量X_(L),圧力検出器9,10の圧力信号P_(L),P_(R),ポンプの斜板傾転量Yが読込れ,また,入力器8gを介して近接スイツチ12,13の圧力信号L,Rが読込まれる。次いで,ステツプS-101において,第12図に示したメータリングテーブルに基づいて,操作レバー7の操作量X_(L)を特定値(目標吐出量)X_(0)に変換する処理が中央演算処理装置8cで行われる。次いで,ステツプS-200に移り,油圧シリンダ4に作用する負荷の方向検出が行われる。
このステツプS-200における負荷の方向検出は,第13図に示す手順に行われる。
即ち,まずステツプS-201において,近接スイツチ12の圧力信号Lが1か0であるかが判断される。
L=1と判断された場合,ステツプS-202に移り,油圧シリンダ4のロツド側が高圧であることを示すため,負荷方向フラグfを(-)とする処理が行われ,ステツプS-102に移る。
ステツプS-201において,L≠1と判断された場合は,ステツプS-203に移り,近接スイツチ13の圧力信号Rが1であるのか0であるのかが判断される。
ステツプS-203において,R=1(当審注:第13図のフローチャートのS-203→S-205の動作からみて,「R≠1」は上記のように「R=1」の誤記と認められる。)と判断された場合は,ステツプS-205に移り,油圧シリンダ4のヘツド側が高圧であることを示すため,負荷方向フラグfを(+)とする処理が行われ,ステツプS-102に移る。
また,ステツプS-203において,R≠1と判断された場合は,油圧シリンダ4のヘツド側およびロツド側が同圧であるから,ステツプS-204に移つてf=0とする処理が行われ,ステツプS-102に移る。
ステツプS-102においては,中央演算処理装置8cで操作量X_(L)が演算開始値A’?A以上であるかどうか判断される。」(第5頁右上欄第1行-同頁右下欄第6行)

・「また,上記したステツプS-102で操作レバー7の操作量X_(L)が演算開始値A’?Aより大きいと判断されたときは,ステツプS-106において,前回切換弁6がONであつたかどうかが判断される。
ここで,前回切換弁6がOFFであると判断された場合にはステツプS-107に移り,中央演算処理装置8cで負荷方向フラグfが(-)であるかどうかが判断される。」(第6頁左上欄第6-14行)

・「ステツプS-107において,f=(-)と判断された場合は,ステツプS-112に移り,中央演算処理装置8cで圧力検出器10の圧力値P_(R)(当審注:第12図のフローチャートのS-112からみて「PR」は上記のように「P_(R)」の誤記と認められる。)が予じめ設定された設定値C(第10図参照)以上か以下かが判断される。」(第6頁右上欄第13-17行)

・「また,ステツプS-112において,P_(R)<C(当審注:第12図のフローチャートのS-112→S-113の動作からみて「RR<C」は上記のように「P_(R)<C」の誤記と認められる。)と判断された場合は,ステツプS-113に移り,中央演算処理装置8cで演算値X_(1)から増分ΔXを減ずる第1の演算が行われ,その後,ステツプS-114に移り,中央演算処理装置8cから出力器8fを経て切換弁6にOFF信号が出力されて切換弁6が閉状態に保持され,ステツプS-115に移る。ステツプS-115においては,特定値X_(0)の操作レバー7の操作量X_(L)が不感帯F内にあるときの中立値X_(C)(=0)に演算値X_(1)を加算し,吐出量指令値Xとする処理が中央演算処理装置8cで行われる。その後,ステツプS-8において可変容量ポンプ1の吐出量が制御され,スタートへ戻る。
また,ステツプS-107においてf≠(-)と判断され,ステツプS-108においてf=(+)と判断された場合には,ステツプS-116に移り,圧力検出器9の圧力値P_(L)が設定値C以上か以下判断される。」(第6頁左下欄第5-同頁右下欄3行)

・「また,ステツプS-116において圧力値P_(L)が設定値C以下と判断された場合は,ステツプS-117に移り,ここで演算値X_(1)に増分ΔXを加算する第1の演算が行われ,その後,ステツプS-114,S-115,S-8を経てスタートへ戻る。」(第6頁右下欄第12-17行)

・「このように構成された従来の制御装置は,高圧側を形成する油圧シリンダ4のヘツド側回路あるいはロツド側回路とほぼ同じ圧力まで可変容量ポンプ1に吐出側回路の圧力を上昇させ,その状態において切換弁6を開き,第2の演算値(=X_(0)+X_(1))に等しい吐出量指令量Xを有する指令信号によつて制御するようにしであるので,油圧シリンダ4の駆動開始時には操作レバー7の操作量X_(L)に応じた油圧シリンダ4の速度制御を実現することができる。」(第7頁左上欄第10-19行)

・「〔実施例〕
以下,本発明の一実施例を第1図ないし第3図によつて説明する。尚,本実施例の油圧回路および制御装置は,第8図および第9図に示すものと全く同様のものである。
第1図は動作手順全体のフローチヤート,第2図はステツプS-300の動作手順の詳細を示すフローチヤート,第3図はステツプS-400の動作手順の詳細を示すフローチヤートである。
第1図のステツプS-102において,操作レバー7の操作量X_(L)が不感帯A’?Aの範囲内にあると判断され,かつ,ステツプS-118において,前回切換弁6がONされており,油圧シリンダ4と可変容量ポンプ1とがまだ接続されている状態にあると判断された場合,ステツプS-300に移る。
ステツプS-300に至つたときは,第2図に示すように,まず,ステツプS-301において,負荷方向フラグfが(-)となつているかどうかが中央演算処理装置8cで判断される。
ステツプS-301において,f=(-)と判断された場合,油圧シリンダ4の負荷状態はロツド側が高圧になつている。そこで可変容量ポンプ1の漏れ量qli+qltは,油圧シリンダ4のロツド側に接続されているポートから発生している。そこで,次にステツプS-302に移り,中央演算処理装置8cにおいて,可変容量ポンプ1の漏れ補正値である第1の演算値X_(1)=-|X_(1)|とする処理が行われ,次のステツプS-306へ移る。ステツプS-306においては,吐出量指令値X=X_(0)+X_(1)の演算,即ち,X=X_(0)-|X_(1)|の演算が行われ,第2の演算値Xが求められる。但し,このときの特定値X_(0)=X_(C)(=0)である。次いで,ステツプS-307において,吐出量指令量Xと変位計3の出力信号である斜板傾転量Yの偏差がある範囲α内に入つているかどうか,つまり,吐出量指令値Xと実際の可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yがほぼ一致しているかどうかについて判断される。この範囲αは,後記するように,切換弁6を切り換えるタイミングを決定するためのものであつて,この値が小さいほど油圧シリンダ4の微操作性が向上し,また,停止時のシヨツクを小さくすることができる。従つて,この範囲αの大きさは,実用上必要とされる微操作性およびシヨツク度を考慮して任意に設定される。
ステツプS-307において,|Y-X|>αと判断された場合は,ステツプS-308に移つて出力器8fより切換弁6へON信号を出力し,切換弁6を開状態に保ち,ステツプS-8を経てスタートに戻る。そして,制御装置8’の動作手順が上記のようにS-100→S-101→S-200→S-102→S-118→S-300→S-8と循環している間に,吐出量指令値Xと可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yとがαの範囲になつたことがステツプS-307において判断されると,ステツプS-309において出力器8gから切換弁6を閉状態に切り換えるOFF信号が出力され,切換弁6が閉状態に切り換えられ,次いでステツプS-8において,可変容量ポンプ1の吐出量を吐出量指令値X(X_(0)+X_(1))にする制御がなされる。次いで,ステツプS-8からスタートに戻り,再度ステツプS-118に至つたとき,前回切換弁6がOFFであつたことが判断されるので,ステツプS-103において,X_(1)=0とする処理がなされ,ステツプS-104において切換弁6を閉状態に保持する信号が出力され,ステツプS-8において,可変容量ポンプ1の斜板傾転角度を中立にする動作が行われる。
同様に,ステツプS-301においてf≠(-)と判断され,また,ステツプS-303においてf=(+)と判断された場合は,油圧シリンダ4のヘツド側が高圧になつているということであるから,ステツプS-304においてX_(1)=+|X_(1)|として上記の手順で制御が行なわれる。
また,ステツプS-301においてf≠(-)と判断され,また,ステツプS-303においてf≠(+)と判断された場合は,油圧シリンダ4のヘツド側およびロツド側が同圧になつているということであるから,ステツプS-305においてX_(1)=0とする処理が行われ,次いで上記の手順で制御が行われる。」(第7頁右下欄第16行-第8頁右下欄第16行)

・「従つて,本実施例の油圧回路の制御装置は,ステツプS-102において操作レバー7の操作量X_(L)が演算開始値A’?Aよりも小さいと判断され,かつ,ステツプS-118において前回切換弁6が開状態(当審注:第1図のフローチャートのS-118→S-300の動作からみて,「閉状態」は上記のように「開状態」の誤記と認められる。)であつたと判断された場合,停止時の負荷補正がなされ,吐出量指令値Xと変位計3の出力信号である斜板傾転量Yの偏差がある範囲α内に入つた状態,つまり,吐出量指令値Xと実際の可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yがほぼ一致した状態で切換弁6を閉状態に切り換えるようにしたので,可変容量ポンプ1の漏れ量qli+qltを第1の演算値X_(1)によつて相殺することができ,アクチユエータ(油圧シリンダ4)の速度がほぼ0になつたところで切換弁6を閉状態に切り換えることができるので,停止時のシヨツクを解消することができる。」(第9頁左上欄第6行-同頁右上欄第1行)

・「尚,本実施例の動作手順において,第1図のステツプS-102で操作レバー7の操作量X_(L)が演算開始値A’?Aよりも小さいと判断された場合,およびステツプS-102で操作レバー7の操作量X_(L)が演算開始値A’?Aよりも大きいと判断され,かつステツプS-102において前回切換弁6がOFFであつたと判断された場合の手順については,上記した従来例,および第1の実施例の場合と全く同様であるので,説明を省略する。」(第9頁右下欄第14行-第10頁左上欄第3行)

・「〔発明の効果〕
本発明の油圧回路の制御装置は,可変容量油圧ポンプとアクチユエータの接続を開始するとき,および可変容量油圧ポンプとアクチユエータが接続された状態,および可変容量ポンプとアクチユエータの接続を終了するときに,アクチユエータの負荷方向が変化したときに存在する可変容量ポンプからの漏れを考慮して切換弁およびレギユレータの制御を行うようにしたので,可変容量油圧ポンプとアクチユエータの接続を開始するときのアクチユエータの不要な動作が防止されるばかりでなく,可変容量油圧ポンプとアクチユエータが接続された状態でアクチユエータの負荷方向が変化したとき,および可変容量ポンプとアクチユエータの接続を終了するときに,アクチユエータの不要な動作が防止され,アクチユエータの微操作性をさらに向上することができる。」(第10頁左上欄第8行-同頁右上欄第4行)

・引用例の第8図には,ロツドが取り付けられたピストン並びに該ピストンの両側のヘッド側油圧室及びロッド側油圧室を備えた油圧シリンダ4が示されている。また,同図には,前記ヘツド側油圧室及びロツド側油圧室に一端がそれぞれ接続された油圧シリンダ4側のヘツド側回路及び油圧シリンダ4側のロツド側回路,前記可変容量ポンプ1の2つの吐出口に一端がそれぞれ接続された可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路が示されている。さらに,同図には,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路,油圧シリンダ4側のロツド側回路,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端がそれぞれ接続される4つのポートと,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路及び油圧シリンダ4側のロツド側回路の他端と可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端とをそれぞれ連結する開状態と,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路,油圧シリンダ4側のロツド側回路,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端を閉止する閉状態との2位置を備える切換弁6が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると引用例には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「(a)ロツドが取り付けられたピストン並びに該ピストンの両側のヘツド側油圧室及びロツド側油圧室を備える油圧シリンダ4と,
(b)前記ヘツド側油圧室及びロツド側油圧室に一端がそれぞれ接続された油圧シリンダ4側のヘツド側回路及び油圧シリンダ4側のロツド側回路と,
(c)2つの吐出口を備える2方向形の可変容量ポンプ1と,
(d)該可変容量ポンプ1の斜板1aを駆動するレギユレータ2と,
(e)前記2つの吐出口に一端がそれぞれ接続された可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路と,
(f)前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路,油圧シリンダ4側のロツド側回路,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端がそれぞれ接続される4つのポートと,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路及び油圧シリンダ4側のロツド側回路の他端と可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端とをそれぞれ連結する開状態と,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路,油圧シリンダ4側のロツド側回路,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路及び可変容量ポンプ1側のロツド側回路の他端を閉止する閉状態との2位置を備える切換弁6と,
(g)停止している前記油圧シリンダ4を作動させる時には,前記レギユレータ2により前記可変容量ポンプ1の吐出量を制御して,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路又は可変容量ポンプ1側のロツド側回路の内,油圧シリンダ4の高圧側に対応する可変容量ポンプ1の吐出側回路の圧力を,前記油圧シリンダ4側のヘツド側回路又は油圧シリンダ4側のロツド側回路の高圧側とほぼ同じ圧力まで上昇させ,前記切換弁6を閉状態から開状態に切換え,作動している前記油圧シリンダ4を停止させる時には,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路又は可変容量ポンプ1側のロツド側回路の内,油圧シリンダ4の高圧側に対応する可変容量ポンプ1のポートからの漏れ量qli+qltを相殺する漏れ補正値である第1の演算値X_(1)を用いて吐出量指令値X=X_(0)(=0)+X_(1)の演算を行い,前記レギユレータ2に前記吐出量指令値Xに応じて前記斜板1aを駆動するための制御信号を出力し,前記吐出量指令値X(=X_(1))と可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yとがある範囲α内に入ったとき,前記切換弁6を開状態から閉状態に切換える制御装置8’とを有する,油圧シリンダ4と可変容量ポンプ1とを少くとも2本の主管路によって閉回路に接続した油圧回路の油圧シリンダ4の不要な動作を防止する装置。」

(3)対比
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比すると,後者の「ロツド」は,前者の「ロッド」に相当し,以下同様に,「ヘツド側油圧室」は「ヘッド側油圧室」に,「ロツド側油圧室」は「ロッド側油圧室」に,「油圧シリンダ4」は「油圧シリンダ装置」に,「油圧シリンダ4側のヘツド側回路」は「第1管路」に,「油圧シリンダ4側のロツド側回路」は「第2管路」に,「可変容量ポンプ1」は「ポンプ」に,「可変容量ポンプ1側のヘツド側回路」は「第3管路」に,「可変容量ポンプ1側のロツド側回路」は「第4管路」に,「開状態」は「開放位置」に,「閉状態」は「閉止位置」に,「切換弁6」は「切替弁」に,「可変容量ポンプ1側のヘツド側回路又は可変容量ポンプ1側のロツド側回路の内,油圧シリンダ4の高圧側に対応する可変容量ポンプ1のポートからの漏れ量qli+qlt」は「ポンプからの漏れ量」に,「制御装置8’」は「制御装置」に,「油圧シリンダ4と可変容量ポンプ1とを少くとも2本の主管路によって閉回路に接続した油圧回路」は「油圧閉回路」に,「油圧シリンダ4の不要な動作を防止する装置」は「油圧シリンダ保持装置」に,それぞれ相当する。

後者の「可変容量ポンプ1の斜板1aを駆動するレギユレータ2」と,前者の「ポンプを駆動する駆動源」とは,「ポンプを吐出制御する吐出制御手段」との概念で共通している。
後者の「レギユレータ2により可変容量ポンプ1の吐出量を制御して,可変容量ポンプ1側のヘツド側回路又は可変容量ポンプ1側のロツド側回路の内,油圧シリンダ4の高圧側に対応する可変容量ポンプ1の吐出側回路の圧力を,油圧シリンダ4側のヘツド側回路又は油圧シリンダ4側のロツド側回路の高圧側とほぼ同じ圧力まで上昇させ,切換弁6を閉状態から開状態に切換え」る態様と,前者の「駆動源を制御してポンプから圧油を吐出させ,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力と等しくさせて,切替弁を閉止位置から開放位置に切替え」る態様とは,「吐出制御手段を制御してポンプから圧油を吐出させ,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力に基づいて制御して,切替弁を閉止位置から開放位置に切替え」るとの概念で共通している。

後者の「斜板1aを駆動するための制御信号」は,「漏れ量qli+qltを相殺する漏れ補正値」から演算されて「レギユレータ2」を制御するものであるから,後者の「斜板1aを駆動するための制御信号を出力」する態様と,前者の「駆動源を制御して,ポンプからの漏れ量を補う」態様とは,「吐出制御手段を制御して,ポンプからの漏れ量を補う」との概念で共通している。
後者の「可変容量ポンプ1側のヘツド側回路又は可変容量ポンプ1側のロツド側回路の内,油圧シリンダ4の高圧側に対応する可変容量ポンプ1のポートからの漏れ量qli+qltを相殺する漏れ補正値である第1の演算値X_(1)を用いて吐出量指令値X=X_(0)(=0)+X_(1)の演算を行い,レギユレータ2に前記吐出量指令値Xに応じて斜板1aを駆動するための制御信号を出力し,前記吐出量指令値X(=X_(1))と可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yとがある範囲α内に入ったとき,切換弁6を開状態から閉状態に切換える」態様と,前者の「駆動源を制御して,ポンプからの漏れ量を補うよう,回転方向の制御を行い,同時に回転数を微小回転数まで低下させて,切替弁を開放位置から閉止位置に切替える」態様とは,「吐出制御手段を制御して,ポンプからの漏れ量を補うよう,該ポンプを吐出制御して,切替弁を開放位置から閉止位置に切替える」との概念で共通している。

したがって両者は,
「(a)ロッドが取り付けられたピストン並びに該ピストンの両側のヘッド側油圧室及びロッド側油圧室を備える油圧シリンダ装置と,
(b)前記ヘッド側油圧室及びロッド側油圧室に一端がそれぞれ接続された第1管路及び第2管路と,
(c)2つの吐出口を備える2方向形のポンプと,
(d)該ポンプを吐出制御する吐出制御手段と,
(e)前記2つの吐出口に一端がそれぞれ接続された第3管路及び第4管路と,
(f)前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端がそれぞれ接続される少なくとも4つのポートと,前記第1管路及び第2管路の他端と第3管路及び第4管路の他端とをそれぞれ連結する開放位置と,前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端を閉止する閉止位置との少なくとも2位置を備える切替弁と,
(g)停止している前記油圧シリンダ装置を作動させる時には,前記吐出制御手段を制御して前記ポンプから圧油を吐出させ,前記第3管路又は第4管路の内部の圧力を前記第1管路又は第2管路の内部の圧力に基づいて制御して,前記切替弁を閉止位置から開放位置に切替え,作動している前記油圧シリンダ装置を停止させる時には,前記吐出制御手段を制御して,前記ポンプからの漏れ量を補うよう,該ポンプを吐出制御して,前記切替弁を開放位置から閉止位置に切替える制御装置とを有する油圧閉回路の油圧シリンダ保持装置。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

[相違点1]
ポンプの吐出制御に関し,本願補正発明は,「ポンプを駆動する駆動源」を制御しているのに対し,引用発明は,「可変容量ポンプの斜板を駆動するレギユレータ」を制御する点。
[相違点2]
停止している油圧シリンダ装置を作動させる時のポンプの吐出制御に関し,本願補正発明は,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力と「等しく」させるのに対し,引用発明は,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力と「ほぼ同じ」にする点。
[相違点3]
作動している油圧シリンダ装置を停止させる時のポンプの吐出制御に関し,本願補正発明は,ポンプからの漏れ量を補うよう,「回転方向の制御を行い,同時に回転数を微小回転数まで低下させ」るのに対し,引用発明は,そのような構成とされていない点。

(4)判断
上記相違点について,以下に検討する。

・相違点1,3について
作動している油圧シリンダ装置を停止させる時における,本願補正発明の,「ポンプを駆動する駆動源」を制御して,前記ポンプからの漏れ量を補うよう,「回転方向の制御を行い,同時に回転数を微小回転数まで低下させ」るという構成は,本願明細書の段落【0077】,【0117】,【図4】,【図7】のフローチャートからみて,ポンプの回転数を,該ポンプからの漏れ量を補い,油圧シリンダを停止させる回転数である微小回転数とし,ポンプの回転方向を,ポンプからの漏れを補うように,ヘッド側油圧室で保持し油圧シリンダを縮長している場合,及び,ロッド側油圧室で保持し油圧シリンダを伸長している場合には停止し逆転させるように,駆動源を制御するものであり,実質的に,ポンプからの漏れ量を補い,油圧シリンダを停止させるのに必要な圧油を,第3管路又は第4管路の内,保持側油圧室に接続される管路に吐出させるように,ポンプの吐出制御をするものといえる。
そして,当該構成により奏される作用効果は,圧力差による衝撃が発生することなく,油圧シリンダ装置を円滑に停止させることといえる。
一方,引用発明も,引用例の第8頁左上欄第5行-同頁右下欄第16行の記載及び第2図のフローチャートからみて,第3管路(可変容量ポンプ1側のヘツド側回路)又は第4管路(可変容量ポンプ1側のロツド側回路)の内,油圧シリンダの保持側(高圧側)に対応するポンプ(可変容量ポンプ1)のポートからの漏れ量を相殺する漏れ補正値である第1の演算値X_(1)を用いて吐出量指令値X=X_(0)(=0)+X_(1)の演算を行い,レギユレータ2に前記吐出量指令値Xに応じて斜板1aを駆動するための制御信号を出力するものであり,実質的に,ポンプからの漏れ量を相殺するのに必要な圧油を,第3管路又は第4管路の内,保持側油圧室に接続される管路に吐出させるように,ポンプの吐出制御をするものといえる。
また,引用例の第9頁左上欄第6行-同頁右上欄第1行の「・・・吐出量指令値Xと実際の可変容量ポンプ1の斜板傾転量Yがほぼ一致した状態で切換弁6を閉状態に切り換えるようにしたので,可変容量ポンプ1の漏れ量qli+qltを第1の演算値X_(1)によつて相殺することができ,アクチユエータ(油圧シリンダ4)の速度がほぼ0になつたところで切換弁6を閉状態に切り換えることができるので,停止時のシヨツクを解消することができる。」という記載からみて,引用発明は,ポンプからの漏れ量を相殺するのに必要な圧油を吐出させることにより,油圧シリンダを停止させるという動作も達成しているものといえる。
そして,当該構成により奏される作用効果は,油圧シリンダ装置(アクチユエータ)の不要な動作が防止されるという作用効果を奏するものといえる。
ここで,本願明細書の段落【0034】には,「なお,可変容量ポンプとしては,斜軸式,斜板式等の並列ピストン形式のポンプが一般的であるが,いかなる形態のものであってもよい。」と記載されており、また,一般的に,2つの吐出口を備える2方向形のポンプであれば,その種類によらず本願補正発明のように圧油を吐出制御できることは自明といえるから,本願補正発明において,2つの吐出口を備える2方向形のポンプの種類は任意に選択すべきものといえる。
そして,油圧シリンダの駆動に用いる,2つの吐出口を備える2方向形のポンプとして,駆動源により駆動され,回転方向により吐出方向を制御し,回転数により吐出量を制御するものは,例えば,原査定の拒絶の理由で示した特開平1-145999号公報(第4頁左上欄第16行-同頁右上欄第5行,第2図を参照。),他にも,特開平11-156412号公報(段落【0016】,【図4】を参照。)にも示されているように,本願の出願前において周知技術である。
そうすると,引用発明に上記周知技術のポンプを適用することは,油圧回路を設計するに当たり当業者が適宜選択すべき事項であり,その際に,ポンプからの漏れ量を補い,油圧シリンダを停止させるのに必要な圧油を,第3管路又は第4管路の内,保持側油圧室に接続される管路に吐出させるように,上記周知技術のポンプの回転方向と回転数とを制御するようにして,上記相違点1,3に係る本願補正発明の構成とすることは,当業者が容易に想到することができたものである。

・相違点2について
本願補正発明において,停止している油圧シリンダ装置を作動させる時に,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力と「等しく」することにより奏される作用効果は,圧力差による衝撃が発生することなく,油圧シリンダ装置を円滑に作動させることといえる。
一方,引用発明も,停止している油圧シリンダ装置を作動させる時に,第3管路又は第4管路の内部の圧力を第1管路又は第2管路の内部の圧力と「ほぼ同じ」にすることにより,油圧シリンダ装置(アクチユエータ)の不要な動作が防止されるという作用効果を奏するものといえるから,両者の作用効果は軌を一にするものということができる。
そして,引用発明において,停止している油圧シリンダ装置を作動させる時に,該油圧シリンダ装置を円滑に作動させるために,第3管路又は第4管路の内部の圧力と第1管路又は第2管路の内部の圧力をどの程度一致させるかは,当業者が適宜決定すべき設計事項に過ぎない。
したがって,上記相違点2は,格別のものではない。

そして,本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって,本願補正発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって,本件補正は,改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成20年12月8日付け手続補正書によれば,以下のとおりのものと認められる。
「(a)ロッドが取り付けられたピストン並びに該ピストンの両側のヘッド側油圧室及びロッド側油圧室を備える油圧シリンダ装置と,
(b)前記ヘッド側油圧室及びロッド側油圧室に一端がそれぞれ接続された第1管路及び第2管路と,
(c)2つの吐出口を備える2方向形のポンプと,
(d)前記2つの吐出口に一端がそれぞれ接続された第3管路及び第4管路と,
(e)前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端がそれぞれ接続される少なくとも4つのポートと,前記第1管路及び第2管路の他端と第3管路及び第4管路の他端とをそれぞれ連結する開放位置と,前記第1管路,第2管路,第3管路及び第4管路の他端を閉止する閉止位置との少なくとも2位置を備える切替弁と,
(f)停止している前記油圧シリンダ装置を作動させる時には,前記ポンプから圧油を吐出させ,前記第3管路又は第4管路の内部の圧力を前記第1管路又は第2管路の内部の圧力と等しくさせて,前記切替弁を閉止位置から開放位置に切替え,作動している前記油圧シリンダ装置を停止させる時には,前記ポンプを,ポンプからの漏れ量を補うよう,回転方向の制御を行い,同時に回転数を微小回転数まで低下させて,前記切替弁を開放位置から閉止位置に切替える制御装置とを有することを特徴とする油圧閉回路の油圧シリンダ保持装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例,及びその記載事項は,上記2.(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は,上記2.(1)で検討した本願補正発明から「ポンプ」について「該ポンプを駆動する駆動源」を有するとの限定を省き,同じく「制御装置」について,「停止している前記油圧シリンダ装置を作動させる時」及び「作動している前記油圧シリンダ装置を停止させる時」に,「前記駆動源を制御して」との限定をそれぞれ省いたものである。
そうすると,本願発明を特定する事項の全てを含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,上記2.(3)及び2.(4)に記載したとおり,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから,本願発明は特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-14 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-02 
出願番号 特願2000-396940(P2000-396940)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F15B)
P 1 8・ 121- Z (F15B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久保 竜一細川 健人  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 冨江 耕太郎
仁木 浩
発明の名称 油圧閉回路の油圧シリンダ保持装置  
代理人 川合 誠  
代理人 清水 守  
代理人 青木 俊明  

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