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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04H
管理番号 1223942
審判番号 不服2009-12372  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-07 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 特願2007-186267「プログラム実行装置及びプログラム実行方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月21日出願公開,特開2008- 42900〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明

本願は,平成9年12月25日(優先権主張平成8年12月25日)を国際出願日とする特願平10-529853号の一部を平成19年7月17日に新たな特許出願としたものであって,平成21年3月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年7月7日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同時に手続補正がなされたものであり,その請求項1に係る発明は,明細書及び図面の記載からみて,平成21年7月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下「本願発明」という。)と認める。

「ゲームプログラムを識別する識別情報とゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において広告部に広告を表示させる広告データとを記憶する記憶手段に記憶された識別情報を,更新対象となる広告データを送信するデータ送信装置に,通信回線を介して送信する送信手段と,
上記送信手段により送信された識別情報に対応する広告データと上記ゲームプログラムの起動を許可する許可情報とを,上記データ送信装置から,通信回線を介して受信する受信手段と,
上記記憶手段に記憶された広告データを上記受信手段により受信された広告データに更新する更新手段と,
上記受信手段により許可情報が受信されたことが確認された場合に,上記ゲームプログラムの起動が許可されることによって,上記ゲームプログラムを起動し,上記更新手段により更新した広告データを上記ゲームプログラムに取り込んで上記ゲームプログラムを実行して,ゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において上記広告部の広告を入れ替えた場面を生成する生成手段と,
を備えるプログラム実行装置。」


第2 刊行物に記載された発明

原査定の拒絶の理由に引用された,特開平8-280934号公報(平成8年10月29日公開。以下「刊行物1」という。)には,図面と共に以下の事項が記載されている。

(ア)「図1は本発明に係るパッケージメディアを利用した通信式ゲームシステムのネットワーク構造を示すブロック図である。
【0012】以下,図1について説明する。図1中,1はホストコンピューター,2は公衆電話回線網,3はホストコンピューター1に公衆電話回線網2を介して接続された端末機である。なお,図では端末機3は1台しか示さなかったが,これ以外にも端末機3と同様のものがホストコンピューター1に多数接続されているものである。
【0013】ホストコンピューター1は課金システム10及び修正データ管理システム11を有している。」(段落番号【0011】?【0013】)

(イ)「修正データ管理システム11は,随時更新される修正データをストックするものである。この修正データとは,社会情勢などが次々と変化してゆくため,その変化に合わせて修正が必要となるデータ,例えばゲームがスポーツものであれば登場人物名,出走馬名,チーム名,それらの運動能力等,また,社会経済ものであれば社会情勢,株価市況等,さらに,各端末機から送出されたゲームの結果の集計や最近のリクエストベストテン等のデータである。また,新規なゲームが提供されたときは,そのゲームソフトと選択メニューの変更データなども修正データ管理システム11で管理されている。
【0015】端末機3は,CPU30と,CD-ROMドライブ31と,修正データメモリ32と,拡張インターフェイス33と,通信モデム34と,使用データRAM35と,音声再生部36と,音声RAM37と,スピーカー38と,映像再生部39と,ビデオRAM40と,CRTビデオディスプレイ41と,I/O制御部42と,コントローラー43とを具備する。
【0016】CPU30は,CD-ROMドライブ31と,修正データメモリ32と,拡張インターフェイス33と,使用データRAM35と,音声再生部36と,映像再生部39と,I/O制御部42とに接続され,各種の情報に基づいてそれらの作動を制御するものである。CD-ROMドライブ31は,図示しないCD-ROMをセットするものである。
【0017】このCD-ROMは,端末機3のユーザーに予め無料で配送されるものであり,このCD-ROMには,複数のゲームプログラムと共に,ゲームプログラムの種類に応じて異なった識別コードが記録されている。
【0018】また,このCD-ROMにはプロテクトがかけられており,ホストコンピューターからの使用許諾がないと端末機では読み取りが不可能なようになっている。従って,ユーザーがこのCD-ROMに記録されたゲームソフトを使用するときは,それに先立ってホストコンピューターからプロテクトを解除する旨の指令が入力されるものである。
【0019】修正データメモリ32は,不揮発性メモリであり,CD-ROMドライブ31から送られたゲームプログラムと,ホストコンピューター1から送られた修正データとを記録し,その修正データメモリ32に記録されるゲームプログラムについて修正が必要な場合,その修正を行って常時最新のゲームプログラムを保持するものであり,このためユーザーは常に最新のプログラムによりゲームを楽しむことができるようになる。」(段落番号【0014】?【0019】)

(ウ)「映像再生部39にはビデオRAM40及びCRTビデオディスプレイ41が接続されており,このビデオRAM40には,修正データメモリ32から出力される映像データが記録される。
【0026】この映像再生部39は,CPU30の指令に基づき,修正データメモリ32から出力される,又は,ビデオRAM40から呼び出される映像データを再生信号に変換してCRTビデオディスプレイ41に出力するものである。I/O制御部42にはコントローラー43が接続されており,コントローラー43の操作データを信号に変換し,CPU30に出力するものである。
【0027】而して,この通信式ゲームシステムでは,CD-ROMを端末機3にセットし,CD-ROMを使用するための操作をして,使用したいゲームを選択すると,端末機3が自動的にホストコンピューター1を呼び出す。
【0028】端末機3がホストコンピューター1と繋がると,自動的に予め端末機ごとに付与されているIDコード及び選択したゲームの識別コードが送出されると共に,使用データRAM35に使用データが記録されている場合,その使用データがホストコンピューター1に転送され,その使用データRAM35の記録はリセットされる。
【0029】ホストコンピューター1では,IDコードに基づいて端末機3を特定し,その端末機3の使用料納付状況を課金システム10でチェックすると共に,使用データが送出されてきたときには,その使用データ中のゲームの使用回数を課金システム10に記録し,その使用料を集計して予め定められたプログラムに従ってユーザーに請求し,さらに,その使用データを修正データ管理システム11にストックするものである。
【0030】課金システム10でのチェックをパスし,また,その他のその端末機3によるゲームプログラムの使用を拒否すべき問題もなければ,修正データ管理システム11にそのCD-ROMに記録されているゲームプログラムに関し,ユーザーに提供すべき修正データがストックされている場合,ホストコンピューター1は,使用データ管理システム11からその修正データを呼び出し,端末機3に向けて送出する。
【0031】このようにして,修正データが送出された場合,端末機3が受け入れた修正データは,修正データメモリ32に記録され,必要に応じて随時元のゲームプログラムの修正が行われるので,ユーザーは極めて安価な費用で常時最新バージョンのゲームを楽しむことができるものである。
【0032】こうして選択されたゲームのプログラムが修正され,使用され,ゲームが終了すると,使用データRAM35に,新たにそのゲームの識別コードとその結果が記録されると共に,CRTビデオディスプレイ41には同じゲームプログラムを再使用するか否かの選択画面が映し出される。」(段落【0025】?【0032】)

(エ)「さらに,本発明は叙上の実施例に限定されるものではない。例えば,上記には,CD-ROMに記録されたゲームプログラムと,ホストコンピューターから送られた修正データとを修正データメモリに記録するようにしたが,これらは別異のメモリに記録されるようにしてもよく,また,修正されたゲームプログラムのみを記録するようにしてもよいものである。また,この修正データは,新しいプログラムの追加やビデオ情報の変更,追加を含むものである。」(段落【0035】)


したがって,刊行物1には次の発明(以下「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「ホストコンピューターに公衆電話回線網を介して接続された端末機であって,
ホストコンピューターは,修正データをストックする修正データ管理システムを有し,この修正データとは,社会情勢などが次々と変化してゆくため,その変化に合わせて修正が必要となるデータであり,また,新しいプログラムの追加やビデオ情報の変更,追加を含むものであり,
端末機は,CD-ROMをセットするCD-ROMドライブと,CPUと,修正データメモリと,使用データRAMと,映像再生部と,ビデオRAMと,CRTビデオディスプレイとを具備し,
CD-ROMには,複数のゲームプログラムと共に,ゲームプログラムの種類に応じて異なった識別コードが記録され,また,このCD-ROMにはプロテクトがかけられており,ホストコンピューターからの使用許諾がないと端末機では読み取りが不可能なようになっており,ユーザーがこのCD-ROMに記録されたゲームソフトを使用するときは,それに先立ってホストコンピューターからプロテクトを解除する旨の指令が入力され,
修正データメモリは,不揮発性メモリであり,CD-ROMドライブから送られたゲームプログラムと,ホストコンピューターから送られた修正データとを記録し,その修正データメモリに記録されるゲームプログラムについて修正が必要な場合,その修正を行って常時最新のゲームプログラムを保持し,
映像再生部にはビデオRAM及びCRTビデオディスプレイが接続され,このビデオRAMには,修正データメモリから出力される映像データが記録され,この映像再生部は,CPUの指令に基づき,修正データメモリから出力される,又は,ビデオRAMから呼び出される映像データを再生信号に変換してCRTビデオディスプレイに出力するものであって,
CD-ROMを端末機にセットし,使用したいゲームを選択すると,端末機が自動的にホストコンピューターを呼び出し,端末機がホストコンピューターと繋がると,自動的に予め端末機ごとに付与されているIDコード及び選択したゲームの識別コードが送出されると共に,使用データRAMに使用データが記録されている場合,その使用データがホストコンピューターに転送され,
ホストコンピューターでは,IDコードに基づいて端末機を特定し,その端末機によるゲームプログラムの使用を拒否すべき問題がなければ,修正データ管理システムにそのCD-ROMに記録されているゲームプログラムに関し,ユーザーに提供すべき修正データがストックされている場合,ホストコンピューターは,使用データ管理システムからその修正データを呼び出し,端末機に向けて送出し,
このようにして,修正データが送出された場合,端末機が受け入れた修正データは,修正データメモリに記録され,必要に応じて随時元のゲームプログラムの修正が行われるので,ユーザーは常時最新バージョンのゲームを楽しむことができ,こうして選択されたゲームのプログラムが修正され,使用され,ゲームが終了すると,使用データRAMに,新たにそのゲームの識別コードとその結果が記録される,
端末機。」


第3 本願発明と刊行物1記載発明との対比

刊行物1記載発明の「端末機」は,ゲームのプログラムを使用し,ゲームを楽しむことができるものであるから,ゲームのプログラムを実行する「プログラム実行装置」に該当する。

刊行物1記載発明の「ゲームプログラム」及び「ゲームの識別コード」は,本願発明の「ゲームプログラム」及び「ゲームプログラムを識別する識別情報」にそれぞれ相当し,また,ゲームが終了するとそのゲームの識別コードが記録される,刊行物1記載発明の「使用データRAM」は,本願発明の「記憶手段」と,「ゲームプログラムを識別する識別情報」「を記憶する」識別情報「記憶手段」である点で一致する。

刊行物1記載発明において,修正データメモリは常時最新のゲームプログラムを保持し,また修正データメモリから出力される映像データは映像再生部で再生信号に変換されてCRTビデオディスプレイに出力されるから,刊行物1記載発明の「修正データメモリ」は,本願発明の「記憶手段」と,「ゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた」「場面において」映像「を表示させる」「データ」「を記憶する」データ「記憶手段」である点で共通する。

刊行物1記載発明において,ホストコンピューターから端末機に向けて送出する修正データは,ビデオ情報の変更,追加を含み,修正データメモリに記録されるから,修正データメモリから映像再生部へ出力される映像データを含むものと解され,刊行物1記載発明の「ホストコンピューター」は,本願発明の「データ送信装置」と,「更新対象となる」「データを送信するデータ送信装置」である点で一致する。

刊行物1記載発明の端末機は,ホストコンピューターに公衆電話回線網,すなわち通信回線,を介して接続されており,端末機がホストコンピューターと繋がると選択したゲームの識別コードを送出するから,刊行物1記載発明の端末機は,本願発明の「送信手段」と,「ゲームプログラムを識別する識別情報」「を,更新対象となる」「データを送信するデータ送信装置に,通信回線を介して送信する送信手段」である点で共通する手段を,備えている。

刊行物1記載発明では,CD-ROMにはプロテクトがかけられており,ホストコンピューターからの使用許諾がないと端末機では読み取りが不可能なようになっており,CD-ROMに記録されたゲームソフトを使用するときは,それに先立ってホストコンピューターからプロテクトを解除する旨の指令が入力されるから,刊行物1記載発明の「プロテクトを解除する旨の指令」は,本願発明の「ゲームプログラムの起動を許可する許可情報」に相当する。
そして,刊行物1記載発明において,端末機で使用したいゲームを選択し端末機がホストコンピューターと繋がると,選択したゲームの識別コードと使用データRAMに記録されている使用データがホストコンピューターに転送されること,その端末機によるゲームプログラムの使用を拒否すべき問題がなければ,ホストコンピューターは,使用データ管理システムからそのCD-ROMに記録されているゲームプログラムに関し,ユーザーに提供すべき修正データを呼び出し端末機に向けて送出すること,端末機の使用データRAMに終了したゲームの識別コードとその結果が記録されること,を考慮すると,刊行物1記載発明において,ゲームプログラムの使用許諾及び修正データ管理は,少なくともゲームの識別コードと対応付けてなされるものと解される。
したがって,刊行物1記載発明において,端末機に向けて送出される修正データは,端末機により送信されたゲームの識別コードに対応しており,また,プロテクトを解除する旨の指令は,当該識別コードにより識別される「上記ゲームプログラムの起動を許可する許可情報」に相当し,刊行物1記載発明の端末機は,本願発明の「受信手段」と,「上記送信手段により送信された識別情報に対応する」「データと上記ゲームプログラムの起動を許可する許可情報とを,上記データ送信装置から,通信回線を介して受信する受信手段」である点で一致する手段を,備えていると言える。

刊行物1記載発明の修正データメモリは,CD-ROMドライブから送られたゲームプログラムと,ホストコンピューターから送られた修正データとを記録し,修正データはビデオ情報の変更,追加を含み,その修正データメモリに記録されるゲームプログラムについて修正が必要な場合,その修正を行って常時最新のゲームプログラムを保持するものであるから,刊行物1記載発明の端末機は,本願発明の「更新手段」と,「上記」データ「記憶手段に記憶された」「データを上記受信手段により受信された」「データに更新する更新手段」である点で共通する手段を,備えている。

刊行物1記載発明では,ゲームソフトを使用するときは,それに先立ってホストコンピューターからプロテクトを解除する旨の指令が端末機に入力され,また,ホストコンピューターから修正データが送出された場合,端末機が受け入れた修正データは,修正データメモリに記録され,必要に応じて随時元のゲームプログラムの修正が行われ,ユーザーは常時最新バージョンのゲームを楽しむことができるから,刊行物1記載発明の端末機は,本願発明の「生成手段」と,「上記受信手段により許可情報が受信されたことが確認された場合に,上記ゲームプログラムの起動が許可されることによって,上記ゲームプログラムを起動し,上記更新手段により更新した」「データを上記ゲームプログラムに取り込んで上記ゲームプログラムを実行して,ゲームの進行に応じた」「場面を生成する生成手段」である点で一致する手段を,備えている。

したがって,本願発明と刊行物1記載発明は,以下の点において一致ないし相違する。


<一致点>
「ゲームプログラムを識別する識別情報を記憶する識別情報記憶手段と,
ゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面において映像を表示させるデータを記憶するデータ記憶手段と,
ゲームプログラムを識別する識別情報を,更新対象となるデータを送信するデータ送信装置に,通信回線を介して送信する送信手段と,
上記送信手段により送信された識別情報に対応するデータと上記ゲームプログラムの起動を許可する許可情報とを,上記データ送信装置から,通信回線を介して受信する受信手段と,
上記データ記憶手段に記憶されたデータを上記受信手段により受信されたデータに更新する更新手段と,
上記受信手段により許可情報が受信されたことが確認された場合に,上記ゲームプログラムの起動が許可されることによって,上記ゲームプログラムを起動し,上記更新手段により更新したデータを上記ゲームプログラムに取り込んで上記ゲームプログラムを実行して,ゲームの進行に応じた場面を生成する生成手段と,
を備えるプログラム実行装置。」である点。

<相違点1>
記憶手段及び送信手段について,本願発明では,「ゲームプログラムを識別する識別情報とゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において広告部に広告を表示させる広告データとを記憶する」単一の記憶手段を有し,送信手段は当該「記憶手段」に記憶された識別情報を送信するのに対して,刊行物1記載発明では,ゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面において映像を表示させるデータを記憶するデータ記憶手段が記憶するデータは,「ゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において広告部に広告を表示させる広告データ」ではなく,また,当該データ記憶手段と,ゲームプログラムを識別する識別情報を記憶する識別情報記憶手段とが,同一の記憶手段であるとは記載されておらず,さらに,送信手段はいずれに記憶又は記録された識別情報を送信するのか明らかでない点。

<相違点2>
送信手段が送信し,受信手段が受信し,更新手段が更新する「データ」について,本願発明では「広告」データであるのに対して,刊行物1記載発明では広告データではない点。

<相違点3>
生成手段が生成する場面について,本願発明では「ゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において上記広告部の広告を入れ替えた場面」であるのに対して,刊行物1記載発明では「ゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において上記広告部の広告を入れ替えた場面」ではない点。


第4 相違点についての当審の判断

<相違点1について>
原査定の拒絶の理由に引用された「“タワービジョン”,セガサターン必勝法スペシャル 高層ビルシミュレーションゲーム『ザ・タワー』,株式会社勁文社,1996年4月5日,初版,p.56-57」(以下「刊行物2」という。)の第56ページの中段には,ゲームの内容に関して,「このタワービジョンの一番大きな特徴は放映することができるCMがすべて実在の企業のものだということだ。そのひとつひとつを見ていくと,テレビや街の巨大モニターで実際に見たことがあるものばかりのはず。つまりプレイヤーはこれら実際の企業の広告を自分が作り上げたビルの外壁で放映し,さらに広告収入ももらえてしまうということなのである。現実感たっぷりのこのCM。放映しない手はないはずだ。」と記載されている。また同ページの下段には,三菱自動車のCMの画像とともに「新感覚RVの顔,バックス・バニー。もちろんきちんと動くのだ。」,「草原を駆けるRVRの勇姿。テレビよく見た有名なCMだ。」,「まるまる15秒スポットのCMがすべて楽しめるようになっている。」と記載されている。

そして,実際の企業の広告について検討すると,社会情勢などの変化に合わせて広告映像を修正することは,例えば,自動車等のテレビCMに見られるように,当業者が通常行っていることである。また,金寿美,ほか3名,“ServiceIsland:日常生活を支援する仮想空間の提案”,情報処理学会研究報告,社団法人情報処理学会,1994年7月8日,第94巻,第58号,p.9?16の第13ページ右欄第9?14には,「現在のカタログショッピングでは,商品価格の改定,掲載商品そのものの変更などが起こった場合,以前のカタログが古くなってしまう危険性があったが,本システム上のカタログはネットワークを通じて内容を変更・改定するので,常に新しいカタログを提供することが可能である。」と記載されており,社会情勢などの変化に合わせて,実際の企業の広告情報を修正することが示されている。

したがって,刊行物2に記載された,ゲームの中で放映される実際の企業の広告は,刊行物1記載発明の「社会情勢などが次々と変化してゆくため,その変化に合わせて修正が必要となるデータ」,すなわち「修正データ」に相当すると言え,刊行物1記載発明のデータ記憶手段が記憶するデータが,「ゲームプログラムが実行されてゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において広告部に広告を表示させる広告データ」を含むようにすることは,当業者が容易に想到できたことである。
また,刊行物1記載発明において,データ記憶手段及び識別情報記憶手段を単一の記憶手段として実装するとともに,送信手段が,当該単一の記憶手段に記憶された識別情報を送信するようにすることは,当業者が適宜なし得る設計的事項である。

<相違点2及び3について>
刊行物1記載発明において,送信手段が送信し,受信手段が受信し,更新手段が更新する「データ」を,「広告」データとすること,また,刊行物1記載発明の生成手段において,「ゲームの進行に応じた場面のうち画像の一部に広告が現れる場面において上記広告部の広告を入れ替えた場面」を生成するようにすることは,いずれも,前記<相違点1について>で指摘したものと同様の理由により,当業者が容易になし得たことである。


また,本願発明のように構成したことによる効果は,刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術から当業者が予測可能なものであって格別のものでない。


第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明及び刊行物2に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-09 
結審通知日 2010-07-13 
審決日 2010-08-02 
出願番号 特願2007-186267(P2007-186267)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川口 貴裕  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 圓道 浩史
安久 司郎
発明の名称 プログラム実行装置及びプログラム実行方法  
代理人 野口 信博  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 藤井 稔也  
代理人 小池 晃  
代理人 祐成 篤哉  

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