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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1223944
審判番号 不服2009-13581  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-29 
確定日 2010-09-16 
事件の表示 特願2000-222130「プロセスカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年2月8日出願公開、特開2002-40904〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯等
本願は、平成12年7月24日の出願であって、平成21年4月28日付で拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月29日に拒絶査定に対する審判請求と前置補正がなされ、平成22年4月23日付で当審から拒絶理由が通知され、同年6月25日付で意見書と共に手続補正書が提出されたものであり、「プロセスカートリッジ」に関する。

2.当審における拒絶理由の概要
2-1.
・平成22年4月23日付で当審から拒絶理由を通知するに際しての本願の特許請求の範囲・請求項1?4は以下の通りである。
『【請求項1】
画像形成を実行する構成要素と、アドレスに対応して所定の情報を記憶する不揮発性メモリとを備え、画像形成装置本体に着脱自在に装着されるプロセスカートリッジにおいて、
上記不揮発性メモリには、先頭アドレスから順に、
このプロセスカートリッジが画像形成装置本体に装着されているか否かを表す装着検出データと、
このプロセスカートリッジの出荷先を表す出荷先データと、
このプロセスカートリッジが形成する画像の色を表す色コードデータとが互いに同じ一定のデータサイズで格納されるようになっていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスカートリッジにおいて、
上記出荷先データは、アドレス順に、地域で区分した出荷先を表す出荷仕向データと、
このプロセスカートリッジが相手先ブランドで製造される場合の相手先を表すOEMコードデータとを含むことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスカートリッジにおいて、
上記不揮発性メモリには、上記色コードデータが格納されているアドレスの次のアドレスに、このプロセスカートリッジが新品であるか否かを表す新品検出データが格納されるようになっていることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項4】
請求項1、2または3のプロセスカートリッジにおいて、
上記画像形成を実行する構成要素として、
感光体ドラム、帯電器およびクリーナを含む感光体ユニットと、
現像器およびトナー溜めを含む現像ユニットとを備えて、
電子写真プロセスを実行することを特徴とするプロセスカートリッジ。』

2-2.
・平成22年4月23日付で当審から通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
『 理 由
1)本件出願は、明細書及び図面の記載が下記B-1.?B-2.の諸点で不備のため、特許法第36条第4項及び第6項第1?2号に規定する要件を満たしていない。
2)この出願の各請求項に係る発明は、下記Cに記載のとおり、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記Dの刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

A.平成21年7月29日付手続補正ついて
・平成21年7月29日付手続補正により、特許請求の範囲・請求項1でデータサイズ説明を付加して、本願発明の構成を明りょう化する補正がなされたが、依然として、公知技術との差異や本願発明の技術的事項等で不明瞭な点があるので、特許法第36条に係る指摘事項を中心に拒絶理由を通知することとした。

・当該補正後のクレームは下記の通りである。
《上記2-1.で掲示のものと同じなので転記を省略。》

B.特許法第36条第4項及び第6項第1?2号に係る拒絶理由について
B-1.
・特許請求の範囲・請求項1でいう「装着検出データと、このプロセスカートリッジの出荷先を表す出荷先データと、このプロセスカートリッジが形成する画像の色を表す色コードデータとが互いに同じ一定のデータサイズで格納される」の具体的・技術的な意味内容や定義が不明である。
・また、図7に示される実施例との対応関係も不明確である。

B-2.
・特許請求の範囲・請求項2でいう「出荷先データは、アドレス順に、地域で区分した出荷先を表す出荷仕向データと、このプロセスカートリッジが相手先ブランドで製造される場合の相手先を表すOEMコードデータとを含む」の具体的・技術的な意味内容や定義が不明である。
・また、特許請求の範囲・請求項1でいう「装着検出データと、このプロセスカートリッジの出荷先を表す出荷先データと、このプロセスカートリッジが形成する画像の色を表す色コードデータとが互いに同じ一定のデータサイズで格納される」との相互関係も不明確である。

B-3.
・特許請求の範囲・各請求項に係る本願発明の作用効果が依然として不明である。
適応分野や利用者毎に、メモリに格納するデータの種類や順序を決めて一般ルールとする「標準化」は、後述の引用文献1の「データキャリアの標準化」の項に種々示されている。
また、アクセスすべきアドレス順序の格納テーブルが省略できる構成や効能も、ICカード等データキャリアシステムの単純型の基本事項として本願出願前に確立されている技術事項に過ぎない。例えば、後述の引用文献1に於ける「物理アドレスしかもたないメモリデータ」や「シーケンシャル・アクセスしかできないメモリデータ」に係る説明事項を参照されたい。
したがって、審判請求人が主張する作用効果は、本願発明ゆえに奏される作用効果とは認められない。

・仮に「正常装着の確認が極めて容易である」などのプロセスカートリッジに具体的に即した作用効果をアピールするとしても、クレームの規定事項、即ち、本願発明の構成に係る規定が不足している。 「実質的に請求項1を削除して請求項2以降を繰り上げる」補正のみでは、新規性進歩性はアピールできない。

C.特許法第29条第2項に係る拒絶理由について
C-1.
・下記Dの引用文献1は、1990年頃までに確立されたICカードなどのデータキャリアシステム一般の基本的な構成と効能・機能などをまとめた成書の一部である。
《1ア》「4.2 ICカードの基本構成(10頁?)」?「4.9 ICカードのアクセス方法(?76頁)」には、EEPROMなどの不揮発性メモリを備えたICカードの基本構成(4.2.1)や接触式ICカード、非接触式ICカードなどの種類と各特徴など(4.5)が説明されている。
特に「4.5.4 メモリ・アクセス方式による分類」の項では、データメモリの内容を物理アドレス順にしか読み書きできないシーケンシャル・アクセス方式が、単純制御ゆえに高速の読み書きが可能である点などで、対比されるランダム・アクセス方式に比して長じた特徴がある旨説明されている。
また、「4.7.1 メモリの階層構造」の項では、ICカードのメモリも、フロッピーディスクなどと同様に、メモリ全体-ファイル-エリア-レコードの如く簡単な階層構造を持っているものが多く、「不良ビットのあるメモリのアドレス」や「ファイルやエリアのID番号と、実際のメモリ上の格納アドレスとの対応を示すテーブル」を記憶する「システム情報」の格納部を有するものもあることが説明されている。
さらに「4.9 ICカードのアクセス法(71?76頁)」の項では、ICカード内のデータメモリを物理的に均等割して単純な物理アドレスと均等サイズのデータブロックで構成し、アクセスを簡略化した方法なども説明されている。
《1イ》「6.1 非接触データキャリアの概要と必要性(137頁?)」?「6.4 近接型非接触式ICカードの構成(?163頁)」には、非接触式ICカードの基本構成などが説明され、「6.3.7(2)情報処理機能を持たないもの」では、メモリのアクセスはシーケンシャルに行われ、データキャリア内のメモリへのデータ入出力の際には、データが一切加工・処理されずに直接入出力されるものが多く、IDタグやIDチップの大半はこのタイプである旨が説明され、 「6.4.1 『LSIカード』の構成」事例では、メモリのアクセス方式のうちのシーケンシャル・アクセス方式では、「リーダ/ライタは少なくともカード内のメモリ容量と同じメモリを持っている必要があり、カード内のある特定のアドレスにデータを書き込む場合には、
(1)カード内のすべてのデータをリーダ/ライタ内のメモリに転送する、(2)対応するリーダ/ライタ内のメモリのアドレスを指定してデータを書き込む、
(3)すべてのデータの書き込みが終了すると、リーダ/ライタ内のメモリの内容をカード内のメモリに転送する、
という手順で行われる。」と記載されている。
《1ウ》「6.7 非接触式データキャリアの標準化(181頁?)」?「6.8.2 遠隔型非接触式IDシステムの例(?193頁)」では、種々の非接触式データキャリアで標準化が進展していることが説明され、「6.7.2 海上コンテナ貨物の個体認識システムの標準化」の項では、「(タグの)書込みデータとして次の項目が挙げられている。
(1)タグを取り付けた機器の種類
(2)タグの形式
(3)所有者コード
(4)識別番号、
(5)チェックディジット
(6)寸法
(7)コンテナ・タイプ・コード
(8)最大総重量
(9)風袋
さらにタグのデータを読出した際に、以下のデータのタグへの書込みを義務付けている。
(1)読出し機器ユニットの識別情報
(2)読出した日時
(3)コンテナの移動状況(搬入か、搬出か)など」と記載されている。
《1エ》「6.9 非接触式データキャリアの適用システム(209頁?)」?「6.9.4 物流管理分野(?225頁)」では、非接触式データキャリアの適用システム事例が種々紹介され、物流管理分野の「(4)ガスボトル」の事例では、「アセチレンやプロパン、酸素、窒素等のガスボトルは一般的に何回かリサイクルされる。その際、ボトルの使用回数や寿命などの経歴情報を明らかにしておくことは安全管理の面から極めて重要である。そこで外観上区別のつきにくいボトルにIDタグが取り付けられ、管理されている。」と記載されている。

・してみると、引用文献1には、装置に着脱自在の補充ボトルに付設のIDタグの不揮発性メモリに、メモリを均等割して単純な物理アドレスを付し、内容データや所有者データなどを先頭アドレスから順次格納し常に一連のものとして読み書きすることが記載されているから、実質的に、本件請求項1に係る発明の「カートリッジ」に係るデータ構成などが具体的に示されているといえる。

C-2.
・画像形成を実行する構成要素として、感光体ドラム、帯電器、クリーナを含む感光体ユニットと、現像器、トナー溜めを含む現像ユニットと、不揮発性メモリのIDタグとを備え、画像形成装置に装着使用され電子写真プロセスを実行する様に構成されているプロセスカートリッジは、例えば、下記Dの引用文献2に示されている。
してみると、不揮発性メモリIDタグのデータ構成など引用文献1記載の事項を取り入れて、本願各請求項に示される発明を構成することは、引用文献1?2の記載から、当業者が容易に想到し得ることである。

C-3.
・なお、審判請求人が審判請求書や回答書で、本願発明の作用効果として主張している下記の事項、即ち、特定のデータ順序に並べてデータが格納されているので、検査機などの「制御系は不揮発性メモリを先頭アドレスから順にアクセスしてゆけば良い。これにより、アクセスすべきアドレス順序を格納したテーブルを予め用意しておかなくても、プロセスカートリッジの検査を行うことができる。」との作用効果は、後述Eの引用文献1の「データキャリアの標準化」の項に示されている様に、分野毎でデータキャリア利用者相互に決めた手順に沿ってデータを並べるルール「標準化」の便宜として認識されていることに過ぎない。
・また、アクセスすべきアドレス順序の格納テーブルが省略できる点も、例えば、後述の引用文献1に於ける「物理アドレスしかもたないメモリデータ」や「シーケンシャル・アクセスしかできないメモリデータ」に係る説明事項で明らかな様に、ICカード等データキャリアシステムの単純型の基本事項として本願出願前に確立されている技術事項に過ぎない。
結局、本願発明の作用効果は特段のものでない。

D.引用文献等一覧
引用文献1:
「データキャリア II ICカード・光カード・IDシステム編」竹田晴見著、平成3年3月15日 日刊工業新聞社発行 のうち、
《1ア》「4.2 ICカードの基本構成(10頁?)」?「4.9 ICカードのアクセス方法(?76頁)」、
《1イ》「6.1 非接触データキャリアの概要と必要性(137頁?)」?「6.4 近接型非接触式ICカードの構成(?163頁)」、
《1ウ》「6.7 非接触式データキャリアの標準化(181頁?)」?「6.8.2 遠隔型非接触式IDシステムの例(?193頁)」、
《1エ》「6.9 非接触式データキャリアの適用システム(209頁?)」?「6.9.4 物流管理分野(?225頁)」

引用文献2:
特開平8-69214号公報 』

3.審判請求人による手続補正及び意見書における主張
3-1.審判請求人による手続補正について
・上記拒絶理由に対し、審判請求人は、平成22年6月25日付手続補正により、特許請求の範囲を以下のものとした。 (以下、「本願補正発明」という。)

『【請求項1】
画像形成を実行する構成要素として、感光体ドラム、帯電器およびクリーナを含む感光体ユニットと、現像器およびトナー溜めを含む現像ユニットとを備え、
また、或る一定のバイト数毎に設定された物理アドレスの並びをシーケンシャル・アクセス可能に有する不揮発性メモリと、この不揮発性メモリにデータバスを介して電気的に接続されたコネクタとを備え、画像形成装置本体に上記コネクタを介して着脱自在に装着され、上記画像形成装置本体の制御系によって上記コネクタ、データバスを通して上記不揮発性メモリにアクセスを受けて、上記不揮発性メモリに格納されているデータに基づく上記画像形成装置本体の制御系による制御に応じて上記画像形成を実行する構成要素を動作させて電子写真プロセスを実行するプロセスカートリッジにおいて、
上記不揮発性メモリには、上記シーケンシャル・アクセス可能な先頭の物理アドレスから順に、
このプロセスカートリッジが画像形成装置本体に装着されているか否かを表す装着検出データと、
このプロセスカートリッジの出荷先を表す出荷先データと、
このプロセスカートリッジが形成する画像の色を表す色コードデータと、
このプロセスカートリッジが新品であるか否かを表す新品検出データと
が上記物理アドレスを単位として格納されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。』

3-2.審判請求人の意見書における主張について
・審判請求人は、上記拒絶理由に対して 以下のように主張している。
『(三)理由1(特許法第36条第4項及び第36条第6項第1?2号に係る拒絶理由)について
B-1.・・・
B-2.・・・今回の補正によって・・・解消したものと信じます。
B-3.・・・さらに、上記不揮発性メモリには、先頭の物理アドレスから順に、
「装着検出データ」、「出荷先データ」、「色コードデータ」に加えて、「新品検出データ」が上記物理アドレスを単位として格納されている旨の限定を加えています(上記補正事項v)。これは、先頭の物理アドレスから順に「装着検出データ」、「出荷先データ」、「色コードデータ」までシーケンシャル・アクセスすることによって、「正常装着」されているか否かを判断した上、さらに「新品検出データ」までシーケンシャル・アクセスすることによって、そのプロセスカートリッジが新品であれば、画像形成のための他の制御の前に必要な、そのプロセスカートリッジの濃度調整を行えることを可能にしたものです。この結果、画像形成装置本体に装着されている他のプロセスカートリッジとのカラーバランスをとることができます(本願明細書の段落0010)。このように、本願発明のプロセスカートリッジによれば、正常装着の確認が極めて容易であり、濃度調整を円滑に行うことができ、したがって、画像形成のための本来の制御を円滑に開始することができます。
このような作用効果は、正に本願発明ゆえに奏される作用効果です。引用文献1に記載の一般的なデータキャリア(例えばICカード)では、上述の作用効果を奏することは決してできません。
これにより、請求項1に係る本願発明の作用効果が明確になったものと信じます。・・・
(四)理由2(特許法第29条第2項に係る拒絶理由)について
(1)本願請求項1の内容
a) 既述のように、本願発明のプロセスカートリッジでは、上記不揮発性メモリには、先頭の物理アドレスから順に、「装着検出データ」、「出荷先データ」、「色コードデータ」に加えて、「新品検出データ」が上記物理アドレスを単位として格納されている旨の限定を加えています(上記補正事項v)。・・・このように、本願発明のプロセスカートリッジによれば、正常装着の確認が極めて容易であり、濃度調整を円滑に行うことができ、したがって、画像形成のための本来の制御を円滑に開始することができます。
b) このようにした場合、アクセスすべきアドレス順を格納したテーブルを予め用意しておかなくても、画像形成装置本体の制御系はプロセスカートリッジの不揮発性メモリを先頭の物理アドレスから順にシーケンシャル・アクセスしてゆけば良く、したがって、上記不揮発性メモリに対するアクセスに関する制御を簡素化できます(本願明細書の段落0011)。また、このプロセスカートリッジが出荷前や回収後の検査機などに装着される場合も、検査機の制御系はプロセスカートリッジの不揮発性メモリを先頭の物理アドレスから順にシーケンシャル・アクセスしてゆけば良く、これにより、アクセスすべきアドレス順を格納したテーブルを予め用意しておかなくても、プロセスカートリッジの検査を行うことができます(本願明細書の段落0011)。
c) また、このプロセスカートリッジを感光体ユニットと現像ユニットとでユニット化して構成しているので、プロセスカートリッジを簡単に製造できます(本願明細書の段落0012)。
このような本願請求項1の構成および作用効果、特に今回の補正事項v)と、上記作用効果a),b)は、引用文献1、2には、何ら記載も示唆もされていません。・・・このため、たとえ当業者といえども引用文献1、2から本願請求項1に係る発明を容易に導くことはできません。
したがって、本願請求項1に係る発明は理由2(特許法第29条第2項)に該当するものではないと確信します。』

4.当審の判断
・上記3-2.のとおり特許法第36条に係る拒絶理由に対処する補正がなされ、かつ、プロセスカートリッジ自体の機器構成を具体的に加入する補正とプロセスカートリッジのメモリに格納する属性データ種類を追加する補正とがなされたので、当審の主要な検討・判断対象は、特許法第29条第2項の拒絶理由に関するものとなった。
そこで、先の拒絶理由通知で示したプロセスカートリッジに係る引用文献2(特開平8-69214号公報)の記載事項、及び、プロセスカートリッジのメモリに格納する属性データ種類に係る周知引例(拒絶査定時の引用文献など)の記載事項を以下に把握しておく。

4-1.引用文献2(特開平8-69214号公報)記載の発明
《2ア》
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 交換可能なプロセスユニットを本体に取り付けて画像の複写を行なう画像形成装置において、複写回数に応じて、前記プロセスユニットに設けられた第1の記憶手段の内容を変更する記憶内容変更手段と、前記本体に設けられた第2の記憶手段と、該第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較する比較手段と、第1および第2のタイミングを発生するタイミング発生手段とを備え、前記記憶内容変更手段は前記第1のタイミングで前記第1の記憶手段の内容を変更し、前記比較手段は前記第2のタイミングで前記第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 前記比較された内容が不一致のとき、前記画像の複写を禁止することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】 交換可能なプロセスユニットを本体に取り付けて画像の複写を行なう画像形成方法において、前記プロセスユニットに第1の記憶手段を設け、複写回数に応じて前記第1の記憶手段の内容を変更し、前記本体に第2の記憶手段を設け、該第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較する際に、第1および第2のタイミングを発生し、該第1のタイミングで前記第1の記憶手段の内容を変更し、前記第2のタイミングで前記第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較することを特徴とする画像形成方法。」

《2イ》
「【0018】図2は画像形成装置としての複写機の制御部の構成を示すブロック図である。図において、101は画像形成装置としての複写機に設けられた各種センサからの入力、およびDCブラシレスモータ、ステッピングモータなど各負荷の出力を制御するコントローラ、102は画像形成に必要なプロセス条件、ジャム発生時のリカバリ情報、エラー発生時のバックアップなどを記憶するSRAM、103はコピーモードを設定する操作部、104はドラムユニット38(感光体12、一次帯電器13、クリーナを含む)に内蔵された不揮発性メモリ(EEPROM)である。
【0019】ドラムユニット38を本体に装着すると、ドロワーコネクタによりドラムユニット38に内蔵された不揮発メモリが自動的に接続される。図3は不揮発性メモリ104に記憶されているデータを示す説明図である。1アドレスに対して16ビットのデータが記憶される。
【0020】
アドレス0?1 シリアルナンバ
00XX XXXX H
アドレス2 カウンタ値
XXXX H
アドレス3 プロセス条件1
XXXX H
アドレス4 プロセス条件2
XXXX H
アドレス5?63 空き
FFFF H

ここで、プロセス条件1、2というのは、ドラムユニット38の感光体(ドラム)12のばらつきに応じて画像形成時の高圧印加条件を変更するために使用される。シリアルナンバはドラムユニット38の個々に対する番号で、2ワード(4バイト)の情報を有する。最上位バイトは必ず「00」である。また、空きアドレス5?63には「FFFFH」を入れておく。カウンタ値はコピーをとるごとに値1インクリメントする。」

《2ウ》
「【0021】不揮発性メモリ104(EEPROM)の読み出し、書き込み動作について説明する。図4は不揮発性メモリ104のオペレーションコードを示す説明図である。また、図5は3つのモード(データ読み出し、データ書き込み、データ消去)におけるタイミングチャートである。ここで、記号はそれぞれCS:チップセレクト、SK:クロック、DI:オペレーションコード、アドレス入力、DO:データ出力を示している。
【0022】DI端子にはオペレーションコードとアドレスがクロックの立ち上がりに同期して送られてくるので、それを読み込む。DO端子にはデータがクロックの立ち上がりに同期して出力される。オペレーションコード、アドレスの組み合わせで7つのモードが実現される。
【0023】まず、ドラムユニット38の製造段階について説明する。ドラム12には感度のばらつきがあるため、個々のドラムユニット38に対して補正値を測定する。測定された補正値がプロセス条件1、2である。また、カウンタ値には必ず0を図5に示したタイミングチャートにしたがって、不揮発性メモリ104内のデータとして書き込む。その結果、ドラムユニット38の出荷時には不揮発性メモリ104の内容は以下のように設定されている。
【0024】
アドレス0?1 シリアルナンバ 1から順次
アドレス2 カウンタ値 0
アドレス3 プロセス条件1 -10?10
アドレス4 プロセス条件2 -63?63
複写時の動作について説明する。図6は複写処理ルーチンを示すフローチャートである。新規にドラムユニット38が本体に設置されて電源をONにすると、本体はまずドラムユニット38内の不揮発性メモリ104の内容を読み込む(ステップS201)。
【0025】図7は不揮発性メモリの読込処理サブルーチンを示すフローチャートである。本サブルーチンでは、アドレス0?1のシリアルナンバの最上位バイトが「0」に等しいかどうかをチェックする(ステップS221)。等しいとき、さらにアドレス5?63(未使用アドレス)の内容が「FFH」になっているかどうかをチェックする(ステップS222)。「FFH」になっているとき、不揮発性メモリ104内のプロセス条件1、2を本体のSRAM102に格納して(ステップS223)メインルーチンに戻る。
【0026】一方、シリアルナンバあるいは未使用アドレスの内容が異なっている場合にはコピーを禁止する(ステップS224)。これは不揮発性メモリの内容が書き換えられて改ざんされたと判断したためである。」

《2エ》
「【0027】不揮発性メモリ104の読み込みが終わると、本体のSRAM102に記憶してある本体内カウンタと不揮発性メモリカウンタ(ドラムカウンタと呼ぶ)とを比較し(ステップS202、S203)、それぞれ同じであるかあるいは0でないとき、コピーキー入力待ちとなる(ステップS205)。いずれか一方が違うときはドラムユニット設置モードに移行する(ステップS204)。
【0028】図8はドラムユニット設置モードのサブルーチンを示すフローチャートである。ドラムユニット設置モードでは、所定の一次電圧を出力し、ドラム12からの電流値を測定し、このドラムユニット38での一次出力電圧を決定する(ステップS235?S237)。また、本体内カウンタをドラムカウンタの値と同じにすると共に不揮発性メモリ104に書き込まれたプロセス条件1、2を読み込んで(ステップS238)本サブルーチンを終了する。
【0029】コピーキーがオンされると給紙を行ない(ステップS206)、ドラムカウンタを読み込み(ステップS207)、本体カウンタと比較する(ステップS208)。本体カウンタと一致していれば、コピー動作を実行し(ステップS209)、本体カウンタおよびドラムカウンタを1ずつ増やして(ステップS210)ステップS205の処理に戻る。
【0030】不一致のときはドラムユニット38の書き込みエラーとしてコピーを禁止する(ステップS211)。」

《2オ》
「【0031】
【発明の効果】本発明の請求項1に係る画像形成装置によれば、交換可能なプロセスユニットを本体に取り付けて画像の複写を行なう際に、タイミング発生手段によって発生された第1のタイミングで記憶内容変更手段により複写回数に応じて前記プロセスユニットに設けられた第1の記憶手段の内容を変更し、前記タイミング発生手段によって発生された第2のタイミングで比較手段により前記本体に設けられた第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較するので、プロセスユニットの全複写回数を正確に把握でき、プロセスユニットの寿命までサービスやメインテナンスを適切に行なうことができる。また、第1および第2のタイミングに同期して確実にプロセスユニットの第1の記憶手段の内容をチェックできる。
【0032】請求項2に係る画像形成装置によれば、前記比較された内容が不一致のとき、前記画像の複写を禁止するので、プロセスユニットの第1の記憶手段に書き込みエラーがあったとしても複写を禁止することで、プロセスユニットのサービスやメインテナンスを適切に行なうことができる。
【0033】請求項3に係る画像形成方法によれば、交換可能なプロセスユニットを本体に取り付けて画像の複写を行なう画像形成方法において、前記プロセスユニットに第1の記憶手段を設け、複写回数に応じて前記第1の記憶手段の内容を変更し、前記本体に第2の記憶手段を設け、該第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較する際に、第1および第2のタイミングを発生し、該第1のタイミングで前記第1の記憶手段の内容を変更し、前記第2のタイミングで前記第2の記憶手段と前記第1の記憶手段との内容を比較するので、プロセスユニットの全複写回数を正確に把握でき、プロセスユニットの寿命までサービスやメインテナンスを適切に行なうことができる。また、第1および第2のタイミングに同期して確実にプロセスユニットの第1の記憶手段の内容をチェックできる。」

・上掲の段落【0020】には、不揮発性メモリ104の先頭部アドレス、データ配置、データ種類について、具体的な記載があり、その前後の段落で該データの読み書き動作が詳しく説明されており(《2イ》?《2エ》参照)、
アドレス0には、シリアルナンバの前半16bit(=2バイト)データの「00XX」、
アドレス1には、シリアルナンバの後半16bit(=2バイト)データの「XXXX」、
アドレス2には、複写枚数カウンタ値の16bit(=2バイト)データの「XXXX」、
アドレス3には、感光体プロセス条件1の16bit(=2バイト)データの「XXXX」、
アドレス4には、感光体プロセス条件2の16bit(=2バイト)データの「XXXX」
という一定バイト数毎の各データが順次記憶されていることが示されているし、審判請求人の見解(平成22年6月25日付意見書中の補正の根拠説明)でも説明されているとおり、
「互いに同じ一定のデータサイズで・・・物理アドレスを単位として格納されていれば、シーケンシャル・アクセスによって、それらのデータを順次読み出すことができる」から、不揮発性メモリ104は、「或る一定のバイト数毎に設定された物理アドレスにデータを格納しシーケンシャル・アクセス可能な不揮発性メモリ」の一種といえるから、引用文献2には、以下の様な発明が記載されていると認められる。

「画像形成を実行する構成要素として、感光体ドラム、帯電器およびクリーナを含む感光体ユニットを備え、
また、或る一定のバイト数毎に設定された物理アドレスの並びをシーケンシャル・アクセス可能に有する不揮発性メモリと、
感光体ユニットの画像形成装置本体への装着時に本体制御部と不揮発性メモリとを接続するドロワーコネクタとを備え、
画像形成装置本体に上記コネクタを介して着脱自在に装着され、上記画像形成装置の制御部によってドロワーコネクタを通して上記不揮発性メモリにアクセスを受けて、上記不揮発性メモリに格納されているデータに基づく上記画像形成装置の制御部による制御に応じて上記画像形成を実行する構成要素を動作させて電子写真プロセスを実行するプロセスユニットにおいて、
上記不揮発性メモリには、上記シーケンシャル・アクセス可能な先頭の物理アドレスから順に、
シリアルナンバの前半2バイト、
シリアルナンバの後半2バイト、
複写枚数カウンタ値の2バイト、
感光体プロセス条件1の2バイト、
感光体プロセス条件2の2バイト
が上記物理アドレスを単位として格納されている交換可能なプロセスユニット。」

4-2.周知引例A(特開平9-114166号公報)(拒絶査定の引例5)の記載事項
《Aア》
「【0002】
【従来の技術】従来この種の電子写真プリンタは、図7の如き構成をなしている。ここで201は、静電潜像を形成するための感光体ドラム、202は感光体ドラム201を一様に帯電するための帯電ローラ、203は感光体ドラム201上の静電潜像を可視像化するための現像器、204は現像剤となるトナーの容器、205は未転写のトナーをクリーニングするクリーナ、206は前記201?205によって構成されているプロセスカートリッジであり、本体に対して脱着可能である。」

《Aイ》
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、カートリッジ内に不揮発性メモリを搭載し、このメモリに例えばプリント枚数情報などをアクセスして記憶しておき、・・・
【0009】したがって、本発明は、カートリッジの有無を前記不揮発性メモリへのアクセスを利用して検出することによって、カートリッジの有無検出機構を新たに設ける必要が無い画像形成装置を提供することを目的とする。」

《Aウ》
「【0027】図5はエンジン制御部102におけるプロセスカートリッジ有無の判断処理を示している。
【0028】まず、前述したようなEEPROM6Aへのアクセス許可フラグがONになっているか否かをチェックし(S21)、ONであればカートリッジの有無チェック処理を開始する。
【0029】エンジン制御部102はあらかじめ決められたEEPOROM6A上の所定のアドレスをプロセスカートリッジ有無判断のための領域として決めており、後述のように、この領域に対して“0FFH”と“00H”の2種類のデータを書き込み、その結果を読み取って書き込んだデータとその後読み込んだデータが一致していればプロセスカートリッジが正常に装着されているものと判断する。すなわち、エンジン制御部102内のCPU102Aはエラーカウンタを有しており、このエラーカウンタの値がNより大きいか否かを判断し(S22)、エラーカウンタの値がNより小さければ、EEPROM6Aの所定アドレスに“0FFH”を書き込み(S23)、この書き込みが終了したならば(S24)、EEPROM6Aの前記所定アドレス内のデータの読み取りを行い(S25)、読み取ったデータが“0FFH”であるか否かを判断し(S26)、“0FFH”でなければエラーカウンタの値を1インクリメントし(S27)、S22に戻る。S22でエラーカウンタの値がNより大きければ、エンジン制御部102内のCPUのカートリッジ無しフラグをセットする(S28)。これによって、プロセスカートリッジ6がプリンタの所定位置に正常に接続されていないことが検出されたことになるので、エンジン制御部102は、プリンタコントローラ101にカートリッジ無しを報知し、これを受けてプリンタコントローラ101はカートリッジ無しを例えば、操作パネル上の表示手段等に表示する。」

4-3.周知引例B(特開平10-198150号公報)(拒絶査定の引例2)の記載事項
《Bア》
「【0024】本発明によれば、図1および図2で参照されるように、カートリッジ30は、カートリッジ30が機械10内のその基準位置に収まっている場合に、カートリッジ内に残っているトナーの量に関する(機械の動作中)連続データを含むカートリッジ特性、あるいは/および、例えばカートリッジのタイプまたはサイズ、トナー容量、トナーのタイプ、光導電性ドラムのタイプなど、予め選択されたカートリッジ特性に関する情報を機械10へ伝送または伝達するためのエンコーダ・ホイール・センサまたはリーダ31aと協働するようになされたエンコーダ・ホイール31を含む。」

《Bイ》
「【0042】・・・スロットまたは窓0?6を含む開始/基準窓54の後縁から停止窓55の後縁までのエンコーダ・ホイール31のセクションである。これは、パドル34が当たらないエンコーダ・ホイール31のセクション内またはサンプ33内のトナー35内にあることが好ましい。このセクションが光センサ31上を通過すると、カートリッジに関する読出し専用情報を収集するために復号されるシリアル・ビット・ストリームが生成される。このセクションに含まれる情報は、その特定のEPカートリッジ情報、または「知りたい」情報を有する機械の動作に不可欠な情報を含む。この情報は、例えば2つまたはそれ以上の異なる種別に分類できる。1つは、カートリッジ「製造」詳細、すなわちカートリッジ・サイズ、トナー容量、トナー・タイプ、光導電(PC)ドラム・タイプを示す情報であり、カートリッジを製造する際に個別設定される。もう1つは、例えばOEM宛先に応じてカートリッジ出荷の前に個別設定される一意の「カートリッジ種類」の数を見込む情報である。後者の分類では、例えば、カートリッジが粗悪な印刷をもたらしたり、何らかの安全問題を有したり、機械を何らかの形で破壊すると思われるベンダからのカートリッジの使用を抑止する。あるいは、機械がOEMユニットとしてベンダ自身のロゴに対してベンダに供給される場合、カートリッジは、ベンダのロゴ・カートリッジが機械にとって容認できるものとなるようにコード化される。」

4-4.周知引例C(特開平7-23199号公報)の記載事項
《Cア》
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 原稿の画像情報を読取る読取手段と、画像情報を記録紙に印画する印画手段と、複数の印画消耗品を個別に交換できるカートリッジ部とを含む画像印画装置において、各印画消耗品の交換時期を判断する交換判定手段と、交換判定手段からの交換指示に応答して上記印画手段を停止状態に保持する一方、新たな消耗品カートリッジに付されている識別情報を読取り、該読取った識別情報と予め定められている識別情報とを比較して、両識別情報が一致したときに上記印画手段の停止状態保持を解除する制御手段とを含むことを特徴とする画像印画装置。」

《Cイ》
「【0035】記録部23が停止された後、交換すべき消耗品カートリッジが交換されると開閉センサ63によって消耗品カートリッジの交換が検出され、ファクシミリ装置20の読取部21だけが稼働状態とされる。このとき交換された消耗品カートリッジに添付される後述の取扱カード50を読取部21で読取らせる。CPU24は取扱カード50の識別番号59から交換された消耗品カートリッジがファクシミリ装置20に適合するものかどうかを判断し、適合するものであれば、前述の消耗品カウンタを初期化し、ファクシミリ装置20を稼働状態に復帰する。さらに読取られた上記識別番号59は不揮発性メモリ60に書込まれ、消耗品カートリッジに関する情報が蓄積される。また、交換された消耗品カートリッジがファクシミリ装置20に適合しないものと判断された場合には、読取部21だけを稼働状態とし、消耗品カウンタの初期化は行われない。
【0036】図3は取扱カード50の情報記載例を示す平面図であり、図4は感光カートリッジ32およびその取扱カード50の梱包状態を示す斜視図である。取扱カード50は、たとえば当該カートリッジのファクシミリ装置20への装着方法、ファクシミリ装置20からの取外方法、取扱いの注意などが記載され、消耗品カートリッジに同梱される。上記取扱カード50の裏面には、図3の矢符Rで示す読取方向に向かってスタート検知マーク55とさらに社名識別記号56、流通経路識別記号57および製品毎に連続番号を付した製造番号58などの識別記号59が記載される。
【0037】上記取扱カード50は、図2に示すファクシミリ装置20の読取部21に裏面を下にして矢符R方向に挿入することによって上記識別記号59が読取られる。スタート検知マーク55は、取扱カード50が読取部21に挿入されるときのずれなどによって識別記号59の読取りミスが生じないよう設けられ、識別記号59が記載される基準位置を示す。さらに、上記スタート検知マーク55は、メモリ25内に記憶されている基準データと照合され、照合の結果両者が一致すれば、上記識別記号59が社名識別記号56から順次メモリ25内に記憶されている基準データと照合される。
【0038】流通経路識別記号57は、消耗品カートリッジの流通経路を示す番号であり、流通経路によって販売価格が異なる消耗品カートリッジの価格を管理するために設けられる。交換された消耗品カートリッジがCPU24によってファクシミリ装置20に適合しないと判断された場合は、消耗品カウンタが初期化されず、読取部21だけの稼働状態とされる。製造番号58は、同一の取扱カード50が再度使用されることによってファクシミリ装置20の消耗品カートリッジの交換時期がずれることを防止するために設けられ、不揮発性のメモリ60内に蓄積されている製造番号58との照合によって両者が一致したときには、交換された消耗品カートリッジがファクシミリ装置20に不適合であると判断される。
【0039】前述のようにして、取扱カード50の識別記号59のうち社名識別記号56と流通経路識別記号57とはメモリ内に予め記憶されている基準データと照合されて両者が一致した場合に、また製造番号58はメモリ内に蓄積された識別記号59の製造番号58と照合されて両者が一致しなかった場合に、交換された消耗品カートリッジがファクシミリ装置20に適合すると判断される。」

4-5.周知引例D(特開平11-161113号公報)(拒絶査定の引例3)の記載事項
《Dア》
「【0059】そこで、本実施の形態では、プロセスカートリッジとしてのカートリッジユニット317?320に自己の現像剤の色情報に応じた現像器色を識別するための情報(現像色情報)を記憶手段としてのEEPROM317A?320Aに記憶させておき、カートリッジユニット317?320が画像形成装置本体510の画像形成ステーション503?506に挿入されたとき、その挿入されたカートリッジユニット317?320のEEPROM317A?320Aに記憶された現像器色識別情報(現像色情報)を読み出し、この情報がカートリッジユニット317?320を正規に挿入されるべき画像形成ステーション503?506の色情報と異なる場合に画像形成動作を禁止することによって、画像形成ステーション503?506へのカートリッジユニット317?320の誤挿入があった場合に生ずる上述の如き色味変化などの画質の劣化、或いは機械故障といった不測の事態に対処している。」

《Dイ》
「【0063】工場においては色識別情報(現像色情報)として、例えば、Yカートリッジユニット317のEEPROM317Aには「1」、Mカートリッジユニット318のEEPROM318Aには「2」、Cカートリッジユニット319のEEPROM319Aには「3」、Kカートリッジユニット320のEEPROM320Aには「4」というように挿入されるべき画像形成ステーション503?506のステーション番号と同じ数値を書き込む。」

《Dウ》
「【0080】(他の電子写真画像形成装置のカートリッジユニットの誤挿入について)本実施の形態では、カートリッジユニットの誤挿入を次のようなアルゴリズムで検知する(図12参照)。
【0081】画像形成装置本体510では、電源投入時、カートリッジ(カートリッジユニット)が装着されているかどうかをチェックし(1201)、カートリッジが装着されていない場合は、カートリッジの挿入を促すメッセージを表示し(1202)、カートリッジが挿入されている場合は、まず、画像形成装置本体のCPUの機体情報格納エリアに格納されている本体シリアル番号データを読み出す(1203)。次にカートリッジのEEPROMの機体情報格納エリアに格納されているデータを読み出し(1204)、読み出したデータが0かチェックし(1205)、0である場合には、カートリッジが出荷直後で一度も使用されてない状態であり、始めて装置本体に挿入されたカートリッジであるため、1204で読み出された本体シリアル番号データをカートリッジの機体情報格納エリアに書き込んでチェック動作を終了する(1206)。
【0082】処理1205でカートリッジから読み出したデータが0でない場合は、処理1203で読み出したデータとカートリッジから読み出したデータを比較し(1207)、同じ場合には、チェック処理を終了し、異なる場合には、異なる機体のカートリッジが誤って挿入されている事になるので警告メッセージを表示する(1208)。」

4-6.周知引例E(特開平6-35258号公報)(拒絶査定の引例4)の記載事項
《Eア》
「【0013】・・・複写機本体1内には感光体を含む感光体ユニット7が着脱自在に備えられている。感光体ユニット7は少なくとも感光体9および不揮発性メモリ8を有している。
不揮発性メモリ8は例えばEEPROMやバッテリバックアップされたRAM等からなる記憶内容が消去されてしまわないメモリである。なお感光体ユニット7は他に帯電器,現像器等の像形成プロセス部を含んでいてもよい。」

《Eイ》
「【0014】図2は感光体ユニットに備えられた不揮発性メモリ8のメモリマップである。・・・
【0016】感光体は製造ロッドや製造条件の変化等によって特性が変わってくる。例えば図3に示したように、新品のとき(使用枚数が0枚のとき)でも感光体A、感光体B、感光体Cはそれぞれ異なる感度特性を持っている。・・・
【0017】メモリエリアM4にはコピー処理された枚数が記憶される。複写機本体内のRAM4には複写処理が終了するごとにインクリメントされてゆくカウンタが設けられており、コピー枚数が記憶されている。RAM4でカウントしたコピー枚数が感光体ユニットの不揮発性メモリ8に書き込まれる。メモリエリアM5には感光体の使用時間が記憶される。この使用時間も複写機本体1内のRAM4により積算されてゆき、その使用時間が不揮発性メモリ8に書き込まれる。ところで、感光体の感度は複写処理を行ってゆくと低下してゆく。すなわち、図3に示したようにコピー枚数がχ枚、y枚と増加してゆくと、それに伴って感光体感度が低下してゆく。したがって、何枚かの複写処理を行った後の感光体の感度は、初期時の感光体感度特性(AまたはBまたはC)と現在のコピー枚数とから求めることができる。このようにして求められた感光体感度に基づいて帯電電圧,露光量,現像バイアス等の複写条件が設定される。」

4-7.本願補正発明と引用文献2記載の発明との対比
・そこで、本願補正発明と引用文献2記載の発明とを対比するに、
引用文献2記載の発明の
「本体制御部と不揮発性メモリとを接続する『ドロワーコネクタ』」は、19段落前後の文脈からして、「いわゆるコネクタ(接続部)とそれに繋がるデータバス(経路)」とを意味するものであることがあきらかであるから、
引用文献2記載の発明の
「交換可能なプロセスユニット」、
「画像形成装置の制御部」、
「画像形成装置の制御部によってドロワーコネクタを通して上記不揮発性メモリにアクセスを受けて」、
「不揮発性メモリの先頭の物理アドレスから順に2バイト毎で格納される
シリアルナンバの前半、シリアルナンバの後半、
複写枚数カウンタ値、感光体プロセス条件1、
感光体プロセス条件2の各データ」
は、それぞれ、本願補正発明の
「プロセスカートリッジ」、
「画像形成装置本体の制御系」、
「画像形成装置本体の制御系によって上記コネクタ、データバスを通して上記不揮発性メモリにアクセスを受けて」、
「不揮発性メモリの先頭の物理アドレスから順に、
一定バイト数で格納され、プロセスカートリッジ装着制御に用いられるデータ」に相当し、
両者は、
「画像形成を実行する構成要素として、感光体ドラム、帯電器およびクリーナを含む感光体ユニットを備え、
また、或る一定のバイト数毎に設定された物理アドレスの並びをシーケンシャル・アクセス可能に有する不揮発性メモリと、この不揮発性メモリにデータバスを介して電気的に接続されるコネクタとを備え、画像形成装置本体に上記コネクタを介して着脱自在に装着され、上記画像形成装置本体の制御系によって上記コネクタ、データバスを通して上記不揮発性メモリにアクセスを受けて、上記不揮発性メモリに格納されているデータに基づく上記画像形成装置本体の制御系による制御に応じて上記画像形成を実行する構成要素を動作させて電子写真プロセスを実行するプロセスカートリッジにおいて、
上記不揮発性メモリには、上記シーケンシャル・アクセス可能な先頭の物理アドレスから順に、一定バイト数の数件のプロセスカートリッジ装着制御に用いられるデータが上記物理アドレスを単位として格納されているプロセスカートリッジ。」
で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
プロセスカートリッジの備える構成要素について、本願補正発明が、感光体ユニットのみならず、現像器やトナー溜めを含む現像ユニットをも備えると明記されているのに対して、引用文献2記載の発明では、現像ユニットを備えるか否かは明記されない点。

[相違点2]
プロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの先頭の物理アドレスから順に、一定バイト数で格納される、数件のプロセスカートリッジ装着制御用データについて、本願補正発明が、装着検出データ、出荷先データ、色コードデータ、新品検出データと規定しているのに対して、引用文献2記載の発明では、シリアルナンバの前半、シリアルナンバの後半、複写枚数カウンタ値、感光体プロセス条件1、感光体プロセス条件2と規定している点。

4-8.相違点の検討
[相違点1について]
プロセスカートリッジに感光体ユニットのみならず現像器やトナー溜めを含む現像ユニットをも装備させることは、例えば、周知引例A(前掲《Aア》参照)や周知引例E(前掲)に記載される様に、斯界の周知技術であるから、引用文献2記載のプロセスカートリッジについて、感光体ユニットのみならず現像ユニットをも備える構成とすることは当業者にとって容易である。

[相違点2について]
・引用文献1には、ガス装置に着脱自在のガス補給ボトル等の流通容器に付設される不揮発性メモリについて、メモリ内部を均等割し単純な物理アドレスを付して、内容物データや所有者データや使用回数など数個の属性データを先頭アドレスから順次格納し、常に一連のものとして読み書きすることでシステムや機器を簡略化できることや、格納するデータの種類や順序を標準化して決めておくことで物流管理、安全管理を推進できることが記載されている。(先の拒絶理由通知中の《1ア》?《1エ》参照)
・そして、画像形成装置に着脱自在の補給容器であるプロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの先頭近傍アドレスに格納するデータとして、「装着検出データ」、「出荷先データ」、「色コードデータ」、「新品検出データ」は、下記に示す如くいずれも周知のものに過ぎない。

・「装着検出データ」
プロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの装着直後の初期読み取りチェック領域、即ち、該メモリの先頭近傍アドレスなどに、プロセスカートリッジの正常装着や適正カートリッジの挿入を確認できるデータ領域、即ち、「装着検出データ」を設けて記録することは、例えば、周知引例A(前掲《Aイ》?《Aウ》参照)や周知引例D(前掲《Dウ》参照)に記載される様に、斯界の周知技術である。

・「出荷先データ」
電子写真装置用カートリッジ付設のコード化データ記録領域の一部に「トナー・タイプ」等の製造データとともに、「出荷先データ」のデータ領域を設けて、該データを記録することは、例えば、周知引例B(前掲《Bア》?《Bイ》参照)や周知引例C(前掲《Cア》?《Cイ》参照)に記載される様に、斯界の周知技術である。

・「色コードデータ」
プロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの装着直後の初期読み取りチェック領域、即ち、該メモリの先頭近傍アドレスなどに、プロセスカートリッジ固有の「色コードデータ」の記録領域を設けて該データを記録することは、例えば、周知引例D(前掲《Dア》?《Dイ》参照)に記載される様に、斯界の周知技術である。

・「新品検出データ」
プロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの装着直後の初期読み取りチェック領域、即ち、該メモリの先頭近傍アドレスなどに、プロセスカートリッジの「新品検出データ」の記録領域を設けて該データを記録することは、例えば、周知引例D(前掲《Dウ》参照)や、周知引例E(前掲《Eウ》参照)に記載される様に、斯界の周知技術である。

・してみると、引用文献2記載の発明の不揮発性メモリの先頭物理アドレスから順に格納するデータについて、引用文献1の記載事項や周知技術をもとに、「装着検出データ、出荷先データ、色コードデータ、新品検出データと規定」することは、当業者にとって容易である。
審判請求人が当審からの拒絶理由通知に対して反論する意見書の主張について検討するに、「画像形成装置本体・・・正常装着の確認が極めて容易であり、」、「検査機の制御系は・・・アクセスすべきアドレス順を格納したテーブルを予め用意しておかなくても、プロセスカートリッジの検査を行うことができます。」(前掲「3-2.」参照)等の作用効果は、画像形成装置本体、検査機、プロセスカートリッジの全般でデータ格納順序を標準化し統一しておくことで奏される当然の効果に過ぎない。(引用文献1《1ア》?《1エ》参照)
また、「画像形成装置本体・・・濃度調整を円滑に行うことができ、したがって、画像形成のための本来の制御を円滑に開始することができます。」(前掲「3-2.」参照)の作用効果は、当該画像形成装置に設定されている装着直後のチェック項目や作業手順に合致させたデータ格納順序としたことで奏される効果に過ぎず、プロセスカートリッジ付設の不揮発性メモリの「装着検出データ、出荷先データ、色コードデータ、新品検出データ」なるデータ格納順序そのものの作用効果自体では無い。

・結局、特許法第29条第2項の拒絶理由に関して、審判請求人の反論・主張は認めることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件出願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-03 
出願番号 特願2000-222130(P2000-222130)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
P 1 8・ 536- WZ (G03G)
P 1 8・ 537- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑井 順一  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 伏見 隆夫
一宮 誠
発明の名称 プロセスカートリッジ  
代理人 仲倉 幸典  
代理人 山崎 宏  
代理人 田中 光雄  

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