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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1224027
審判番号 不服2009-1262  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-01-15 
確定日 2010-09-22 
事件の表示 特願2002-557836「真空パネル、ロゴ、グリップ部が一体とされた容器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月25日国際公開、WO02/57146、平成16年 6月17日国内公表、特表2004-517784〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年1月22日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成20年12月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年1月15日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、平成21年2月12日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

2.明細書を対象とする平成21年2月12日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
本件手続補正を却下する。
〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「上半部と下半部とを有する本体部よりなる高温充填可能な容器であって、
前記上半部は、肩部と、前記肩部の下方にあって本体中へ内側に窪んだグリップ部と、
前記グリップ部の内側への窪みによって該グリップ部の少なくとも1つの側端に沿って設けられた突出帯とを備え、
前記グリップ部は少なくとも1つの第一真空パネルを規定し、
前記下半部は、複数の第二真空パネルと、前記複数の第二真空パネルの下方の基底部とを備え、
前記複数の真空パネルの各々が、前記少なくとも1つの第一真空パネルの変形能と異なる変形能を有し、
前記少なくとも1つの第一真空パネルの変形能が、前記各第二真空パネルの変形能より小さく、
前記突出帯が、グリップ部全体を取り囲んでいる、高温充填可能な容器。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である「第一真空パネル」と「第二真空パネル」とについて限定する「前記少なくとも1つの第一真空パネルの変形能が、前記各第二真空パネルの変形能より小さく」との事項を付加し、同じく請求項1に記載された発明を特定する事項である「突出帯」について限定する「前記突出帯が、グリップ部全体を取り囲んでいる」との事項を付加するものである。
そして、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではない。
したがって、上記補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である米国特許第6044997号明細書(以下、「引用例」という。)には、次の記載がある。
a.「The present invention relates to grippable blow-molded
plastic containers, and more particularly, the present invention
relates to hot-fillable blow-molded plastic containers having grip
features that facilitate lifting and pouring.」(第1欄4?7行)
(日本語訳:この発明は、把持可能なブロー成形プラスチック容器に関する。より詳細に言えば、この発明は、高温充填可能なブロー成形プラスチック容器であって、持ち上げたり、注いだりするのに便利なグリップ部を備えたものに関する。(日本語訳は当審による。以下同様。))
b.「Referring now to the drawings, FIG. 1 illustrates a
grippable container 10 which is particularly suited for hot fill
applications. As best seen therein, the container 10 has a body
portion 11, which may be of tubular cross section, such as
cylindrical or rectangular, having a plurality of circumferentially
spaced vacuum panels, such as the panels 12 and 13.」(第2欄52?58行)
(日本語訳:図面を参照して説明すると、図1は、高温充填用途に特に適した、把持可能な容器10を示している。この図に最も良く示されているように、容器10は、断面が筒状、例えば円筒形状や矩形状、の胴部11を備え、この胴部11は、周方向に間隔を空けて設けた複数の真空パネル、例えばパネル12、13、を備えている。)
c.「The base 19 is of conventional construction having
appropriate reinforcing ribs, such as radial ribs, to provide the
desired stiffness and anti-everting capabilities preferred for a
hot fill container, as well known in the art.」(第3欄4?8行)
(日本語訳:基部19は、慣用の構造で、強化用の適当なリブ、例えば放射状のリブ、を備えており、高温充填容器に適した所望の剛性と反転耐性とを有する、この技術分野で周知のものである。)
d.「The container 10 has a dome portion 14 superposed on the
body portion 11. The dome portion 14 has a conventional flanged
finish 15 with threads (not shown) adapted to receive a cap. The
dome portion 14 has an upper section 14a, an intermediate section
14b, and a lower section 14c」(第3欄9?13行)
(日本語訳:容器10は、胴部11の上部にドーム部14を備える。ドーム部14は、慣用のフランジ付き端口部15を備え、この端口部15のねじ(不図示)は、蓋に適合する。ドーム部14は、上部域14a、中部域14b、下部域14cを備える。)
e.「Referring to FIG. 2, the upper section 14a of the dome 14
has an inwardly concave vertical cross-section providing a chamber
having a generally bulbous concave configuration. The upper dome
section 14a terminates in a continuous curved undulating brow rib
25 having an opposed pair of flattened apogees 25a and 25b located
in the dome sidewalls, and having an opposed pair of perigees 25c
and 25d located in the dome endwalls. Anti-slip ledges, or shoulders
26a and 26b are provided above each apogee, such as apogee 25a,」(第3欄34?43行)
(日本語訳:図2を参照すると、ドーム部14の上部域14aは、縦断面で見て内面が凹んでおり、概ね球状の凹み構造の室を形成している。上部域14aの終端は、湾曲した波が連なる形状の額リブ25となっている。この額リブ25は、互いに対向する一対の平坦な最上部25a、25bを、ドームの側壁部分に備え、互いに対向する一対の最下部25c、25dを、ドームの端壁部分に備える。滑り防止用の出っ張り、すなわち、肩26a、26bが、上記の各最上部、例えば最上部25a、によって提供される。)
f.「The intermediate dome section 14b has a pair of opposed
transversely elongate grip surfaces 20 and 21 which are inset deeply
into the dome 14 below the brow rib apogees 25a and 25b,
respectively, and are preferably outwardly concave to afford
engagement between a user's thumb and finger, such as the index
finger.」(第3欄45?50行)
(日本語訳:ドーム中部域14bは、互いに対向する一対の横長の把持面20、21を備える。この把持面20、21は、それぞれ、額リブの最上部25a、25bの下方で、ドーム部14に深く入り込んでいる。そして、好適には、使用者の親指と他の指、例えば人差し指、との間でうまく挟めるように、外面が凹んでいる。)
g.「In the present invention, the grip surfaces 20 and 21 are
mounted to flex inwardly toward one another by means of flexible
webs to accommodate volumetric shrinkage in the dome 14. Such
flexural movement may be seen in FIG. 5 which schematically
illustrates in phantom lines the inward deflection of the grip
surfaces 20 and 21 in their inwardly-flexed positions.」(第4欄46?52行)
(日本語訳:この発明では、把持面20、21は、内側に曲がって互いに近づけるように柔軟な膜で作られており、ドーム部14内の体積減少に適応可能である。この屈曲動作を概略的に示す図5において、把持面20、21の内側に曲がった位置が2点鎖線で示されている。)
そして、上記g及び図5の記載から、把持面20、21が真空パネルの機能を兼ね備えていることが見て取れる。また、上記b、c及び図1の記載から、基部19が真空パネル12、13の下方にあることが見て取れる。

上記記載a?g及び図面の記載などからみて、引用例には、次の発明が記載されているといえる。(以下、「引用発明」という。)
「ドーム部14と胴部11とよりなる高温充填可能な容器10であって、
前記ドーム部14は、概ね球状の室を形成する上部域14aと、前記上部域14aの下方にあって内側に窪んだ把持面20、21と、
前記把持面20、21の上端の一部に沿って設けられた肩26a、26bを備え、
前記把持面20、21は、真空パネルとしても機能し、
前記胴部11は、複数の真空パネル12、13と、前記複数の真空パネル12、13の下方の基部19とを備えている、
高温充填可能な容器10。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ドーム部14」、「胴部11」は、それぞれ本願補正発明の「上半部」、「下半部」に相当し、引用発明のドーム部14と胴部11とを合わせたものが、本願補正発明の「本体部」に相当する。
また、引用発明のドーム部14の「上部域14a」は、その形状等からみて、本願補正発明の「肩部」に相当し、同様に、「内側に窪んだ把持面20、21」は「本体中へ内側に窪んだグリップ部」に、「複数の真空パネル12、13」は「複数の第二真空パネル」に、「基部19」は「基底部」に、それぞれ相当する。
引用発明の把持面20、21は、真空パネルとしても機能するから、この把持面20、21は、第一真空パネルを規定しているといえる。
本願補正発明の突出帯は、本願明細書の段落[0009]に記載されているように「突出帯(ledge)」であり、同じく段落[0028]の「各グリップ部65は、本体部40中へ約2?10mm窪んでいることが好ましく、約5mm窪んでいることがより好ましい。かかる構成により、各グリップ部65の境界には握り性を向上させるための突出帯が備えられる。」という記載からみて、握り性を向上させるための突出(ledge)である。一方、引用発明の肩26a、26bは、上記(2)eに記載されているように、滑り防止用の出っ張り(anti-slip ledges)であり、上記(2)e、f及び図2の記載などからみて、把持面20、21を本体内に深く凹ませることにより、額リブ25の平坦な最上部25a、25bと、把持面20、21との接続部分が、滑り防止用の出っ張り、すなわち、肩26a、26bとなっているものである。
そうすると、引用発明の「把持面20、21の上端の一部に沿って設けられた肩26a、26b」と、本願補正発明の「グリップ部の内側への窪みによって該グリップ部の少なくとも1つの側端に沿って設けられた突出帯」とは、「グリップ部の内側への窪みによって該グリップ部の少なくとも1つの端に沿って設けられた突出帯」である限りにおいて一致する。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、本願補正発明の記載に倣うと、次の一致点で一致する。
《一致点》
「上半部と下半部とを有する本体部よりなる高温充填可能な容器であって、
前記上半部は、肩部と、前記肩部の下方にあって本体中へ内側に窪んだグリップ部と、
前記グリップ部の内側への窪みによって該グリップ部の少なくとも1つの端に沿って設けられた突出帯とを備え、
前記グリップ部は少なくとも1つの第一真空パネルを規定し、
前記下半部は、複数の第二真空パネルと、前記複数の第二真空パネルの下方の基底部とを備えている、高温充填可能な容器。」

そして、本願補正発明と引用発明とは、次の相違点1、2で相違する。
《相違点1》
本願補正発明では、下半部に設けた複数の第二真空パネルの各々が、上条半部に設けたグリップ部によって規定される第一真空パネルの変形能と異なる変形能を有し、第一真空パネルの変形能が、各第二真空パネルの変形能より小さいのに対して、引用発明では、第一真空パネル(ドーム部14に設けられ真空パネルとしても機能する把持面20、21)の変形能と、各第二真空パネル(胴部11に設けた真空パネル12、13)の変形能との関係について特定していない点。
《相違点2》
本願補正発明では、突出帯が、グリップ部全体を取り囲んでいるのに対して、引用発明では、突出帯(肩26a、26b)は、グリップ部(把持面20、21)の上端の一部に沿って設けられている点。

(4)相違点の検討
ア.相違点1について
容器が、第1の真空パネルと第2の真空パネルとを備えている場合、それぞれの変形能の関係は、a.両者が同等である、b.第1の真空パネルの変形能が、第2の真空パネルの変形能より大きい、c.第1の真空パネルの変形能が、第2の真空パネルの変形能より小さい、のいずれかに限られる。
また、第1の真空パネルと第2の真空パネルの変形能をどの程度にするかは、容器に生じる減圧の大きさ、第1の真空パネル及び第2の真空パネルのそれぞれの形状や個数、容器の成形性や取扱性等を考慮して、当業者が適宜決定すべき設計的事項である。
そうすると、容器の成形性や取扱性等を考慮して第1の真空パネル及び第2の真空パネルの変形能を適宜決定することにより、第1の真空パネル及び第2の真空パネルの変形能の関係を上記cにすること、すなわち、相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
イ.相違点2について
握り性を向上させるための突出(ledge)、若しくは滑り防止用の出っ張り(anti-slip ledges)として機能する構造を、グリップ部全体を取り囲むように設けることは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用した、本願の出願前に頒布された刊行物である特表平7-503688号公報(6頁左上欄8?18行及び図1、2を参照)や、米国特許第5971184号明細書(図1、4、8、9及びそれらの説明参照)に記載されており、周知である。引用発明に、この周知の事項を適用して、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に推考し得たことである。
ウ.本願補正発明の独立特許性について
そして、本願補正発明が奏する効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成21年2月12日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「上半部と下半部とを有する本体部よりなる高温充填可能な容器であって、
前記上半部は、肩部と、前記肩部の下方にあって本体中へ内側に窪んだグリップ部と、
前記グリップ部の内側への窪みによって該グリップ部の少なくとも1つの側端に沿って設けられた突出帯とを備え、
前記グリップ部は少なくとも1つの第一真空パネルを規定し、
前記下半部は、複数の第二真空パネルと、前記複数の第二真空パネルの下方の基底部とを備え、
前記複数の真空パネルの各々が、前記少なくとも1つの第一真空パネルの変形能と異なる変形能を有する、高温充填可能な容器。」
(以下、請求項1に係る発明を、「本願発明1」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、上記2(2)に記載したとおりである。

(3)対比・検討
本願発明1は、上記2(1)で検討した本願補正発明から、「第一真空パネル」と「第二真空パネル」とについて限定する「前記少なくとも1つの第一真空パネルの変形能が、前記各第二真空パネルの変形能より小さく」との事項を省き、同請求項1に記載された発明を特定する事項である「突出帯」について限定する「前記突出帯が、グリップ部全体を取り囲んでいる」との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明1を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2(4)に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-27 
結審通知日 2010-07-28 
審決日 2010-08-11 
出願番号 特願2002-557836(P2002-557836)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 村上 聡
鈴木 由紀夫
発明の名称 真空パネル、ロゴ、グリップ部が一体とされた容器  
代理人 市川 誠  

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