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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1224048 |
審判番号 | 不服2007-112 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-04 |
確定日 | 2010-09-22 |
事件の表示 | 特願2003-148250「光ピックアップの対物レンズ駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月12日出願公開、特開2004- 47060〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件審判請求に係る特許出願(以下、「本願」という)は、平成15年5月26日(パリ条約に基づく優先権主張 平成14年7月9日 大韓民国(KR))の出願であって、平成17年7月8日付けの拒絶理由通知に対して平成18年1月11日付けで手続補正され、平成18年6月1日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成18年9月4日付けで手続補正されたところ、平成18年9月22日付けで、平成18年9月4日付けの手続補正が却下されると共に、本願は拒絶すべきものである旨の査定がなされ、これに対して、平成19年1月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で明細書について手続補正がなされたものである。 その後、平成21年5月12日付けで、審査官による前置報告書を利用した審尋をしたところ、回答は、なされなかった。 II.平成19年1月4日付け手続補正についての却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成19年1月4日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 〔理 由〕 1.補正の内容 本件補正は、明細書の、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするものであるところ、そのうち、特許請求の範囲については、 (1)補正前(平成18年1月11日付け手続補正による)に、 「【請求項1】 対物レンズが搭載されたブレードと、 前記ブレードをホルダに対して弾力的に遊動自在に支持する弾力支持部材と、 前記ブレードを上下左右及び回転方向に駆動するサーボ機構とを含む光ピックアップの対物レンズ駆動装置において、 前記弾力支持部材は、 前記ブレードの回転中心から第1距離ほど離隔されて対称的に配される第1群の部材と、 前記第1群の部材と対をなし、前記ブレードの回転中心から第2距離ほど離隔された位置に対称的に配される第2群の部材とよりなり、 前記対をなす第1及び2群部材間の配置間隔は各群同士の配置間隔より極めて狭いことを特徴とする光ピックアップの対物レンズ駆動装置。」 とあったものを、 (2)「【請求項1】 対物レンズが搭載されたブレードと、 前記ブレードをホルダに対して弾力的に遊動自在に支持する複数の弾力支持部材と、 前記ブレードを上下左右及び回転方向に駆動するサーボ機構とを含む光ピックアップの対物レンズ駆動装置において、 前記複数の弾力支持部材は、 前記ブレードの回転中心から第1距離を有する半径の円周上に離隔されて対称的に配される第1群の弾力支持部材と、 前記第1群の弾力支持部材よりも外側となる位置で対をなし、前記ブレードの回転中心から前記第1距離よりも大きい半径からなる第2距離の円周上に離隔された位置に対称的に配される第2群の弾力支持部材とよりなり、 前記対をなす第1群の弾力支持部材と第2群の弾力支持部材との間の配置間隔は各群同士の配置間隔より極めて狭く、且つ垂直方向にずれていることを特徴とする光ピックアップの対物レンズ駆動装置。」 と補正しようとするものである。 2.補正の目的 本件補正は、補正前の請求項1に係る発明の要件である「弾力性支持部材」に「複数の」との限定を加え、「第1距離ほど」を「第1距離を有する半径の円周上に」と、「第2距離ほど」を「前記第1距離よりも大きい半径からなる第2距離ほどの円周上に」と、「第1群の部材」及び「第2群の部材」をそれぞれ「第1群の弾力支持部材」及び「第2群の弾力支持部材」と、 前記第2群の弾力支持部材について「第1群の部材と対をなし」を「第1群の部材と弾力支持部材よりも外側となる位置で対をなし」と、それぞれ限定を加えるとともに、「対をなす第1群の弾力支持部材と第2群の弾力支持部材との間」の配置関係について、「且つ垂直方向にずれている」なる要件を付加して、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。 3.独立特許要件 そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)を請求項1に記載された発明について、検討する。 (1)補正後発明 本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」という。)は、前記1.(2)の【請求項1】に記載されたとおりのものである。 (2)刊行物及びその記載 これに対して、原査定の拒絶の理由(平成18年6月1日付け拒絶理由通知で通知したもの)で引用された刊行物は、特開平6-84189号公報(平成6年3月25日公開、以下「刊行物1」という。)及び特開2001-93177号公報(平成13年4月6日公開、以下「刊行物2」という。)である。 (2-1)刊行物1の記載 刊行物1には、対物レンズ駆動装置に関する発明について、以下の記載がある。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光ビームをビームスポットとして光学式情報記録媒体に集束させる対物レンズを、前記ビームスポットが光学式情報記録媒体に対して所定の適正状態にあるように制御するフォーカシング用コイルとトラッキング用コイルを備えた対物レンズ駆動装置において、対物レンズの光軸を中心としてコイルボビンに巻回設置された前記フォーカシング用コイルと同軸に共振抑制用コイルを巻回設置したことを特徴とする対物レンズ駆動装置。 【請求項2】?【請求項8】 省 略 【請求項9】 前記フォーカシング用コイルとトラッキング用コイルと共振抑制用コイルとに、それぞれ電気的に接続される導電性及び弾性を有する複数のボビン支持線材を、コイルボビンの対向側部に対称に配設したことを特徴とする請求項1又は請求項5の対物レンズ駆動装置。」 (イ)「【0022】 【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。尚、図8に基づいて説明した部材と対応する部材には同一符号を付して詳しい説明を省略する。 【0023】図1は本発明の第1実施例における要部の分解斜視図であり、コイルボビン2の外周には、対物レンズ1の光軸Lを中心としてフォーカシング用コイル3とフォーカシング共振抑制用コイル11とが同軸で巻回されている。さらに対物レンズ1の光軸Lに対して直交する方向におけるコイルボビン2の対向する両側部のフォーカシング用コイル3及びフォーカシング共振抑制用コイル11上に設けられるトラッキング用コイル4の中心延長線と平行もしくは一致するようにしてトラッキング共振抑制用コイル12がそれぞれ設けられる。 【0024】尚、図中の13,14は、リード線であって、各コイル3,4,11,12に制御電流を供給するためのものであり、本実施例では合計8本(リード線14の1本は図示されていない)が設けられている。」 (ウ)「【0033】図5は第1実施例における他の支持機構を示す斜視図であり、コイルボビン2には、フォーカシング用コイル3,トラッキング用コイル4,フォーカシング共振抑制用コイル11,トラッキング共振抑制用コイル12が設けられており、電気リード線は少なくとも8本必要であるが、この支持機構では導電性及び弾性を有するボビン支持線材である8本の棒状ばね35の一端を、4本ずつコイルボビン2の上下両側方に張り出した受部2bに設け、さらに棒状ばね35の他端を固定部材36に固定している。そして4本1組をなす棒状ばね35の上下2組の各組において、棒状ばね35の各中心軸が同一平面にあり、その平面が互いに平行で、しかも上下4本の棒状ばね35が上下でそれぞれ対向するようにして、棒状ばね35をコイルボビン2に対して対称に配し、かつ棒状ばね35を介して各コイル3,4,11,12に電流を供給するようにしている。 【0034】上記の支持機構によれば、棒状ばね35が電気リード線とコイルボビン2の支持部材とを兼ねるため、コイルボビン2周部を簡潔にでき、しかもコイルボビン2のトラッキング方向のヨーイングに対して回転モーメントが低減できて、良好なサーボ特性が得られる。」 以上の記載及び【図5】の記載からみて、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認める。 「コイルボビンの外周に、対物レンズの光軸を中心としてフォーカシング用コイルとフォーカシング共振抑制用コイルとが同軸で巻回され、 さらに対物レンズの光軸に対して直交する方向におけるコイルボビンの対向する両側部のフォーカシング用コイル及びフォーカシング共振抑制用コイル上に設けられるトラッキング用コイルの中心延長線と平行もしくは一致するようにしてトラッキング共振抑制用コイルがそれぞれ設けられた対物レンズ駆動装置において、 導電性及び弾性を有するコイルボビン支持線材である8本の棒状ばねの一端を、4本ずつコイルボビンの上下両側方に張り出した受部に設け、さらに棒状ばねの他端を固定部材に固定した支持機構を有し、 棒状ばねは、4本1組をなす棒状ばねの上下2組の各組において、棒状ばねの各中心軸が同一平面にあり、その平面が互いに平行で、しかも上下4本の棒状ばねが上下でそれぞれ対向するようにして、棒状ばねをコイルボビンに対して対称に配し、かつ棒状ばねを介して各コイルに電流を供給するようにした 対物レンズ駆動装置。」 (2-2)刊行物2の記載 刊行物2には、対物レンズ駆動装置に関する発明について,以下の記載がある。 (エ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 光ビームを光ディスク上に集光させる対物レンズと、該対物レンズをその光軸方向に駆動するための第1の駆動コイルと、前記対物レンズをその光軸と直角方向に駆動するための第2の駆動コイルと、前記第1、第2の駆動コイルおよび前記対物レンズを保持するレンズホルダを含む可動部と、 該可動部に一端が固定され可動部を弾性支持する6本の直線状部材からなる弾性支持部材と、 該弾性支持部材の他端が固定される固定部と、 前記駆動コイルに駆動力を発生させるためのマグネットと、 前記可動部に配置された前記対物レンズあるいは前記可動部を前記光ディスク半径方向に傾動駆動する傾動駆動コイルと、 該傾動駆動コイルに対して磁束を発生するマグネットを備えたことを特徴とする対物レンズ駆動装置。 【請求項2】?【請求項8】 省 略 【請求項9】 前記6本の弾性支持部材が、前記可動部の光ディスク半径方向断面において、前記可動部の重心位置または支持中心位置を中心とした同一円周上に略一致するように配置されたことを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の対物レンズ駆動装置。」 (オ)「【0034】光ディスクから読み取った信号には、主に光ディスクと対物レンズ1との相対傾き角度により、その大きさが左右される時間軸方向の誤差(ジッター)が含まれている。従って、対物レンズ1を光ディスクの傾きに合わせて適切に傾けることにより、ジッター量を小さく抑えることができる。逆に、この読み取り信号に含まれるジッター量を算出し、ジッター量が最小になるように対物レンズ1の傾動駆動信号を作成し、この傾動駆動信号に応じて傾動コイル9に適切な傾動駆動電流を導電性弾性支持部材8を介して供給することにより、対物レンズ1の傾動制御(チルト制御)を行うことができる。」 (カ)「【0040】また、図6において6本の弾性支持部材8a?8fは、可動部の重心位置または6本の弾性支持部材8a?8fの支持中心位置を中心とした同一円周上に略一致するように配置されている。これにより可動部は、前記重心位置または前記支持中心位置を中心として傾動動作し、安定した傾動動作特性を得ることができる。」 以上の記載(特に、【0040】、【図6】)からみて、刊行物2には、対物レンズ駆動装置において、チルトに対応したサーボ機構を採用する場合、可動部の重心位置または弾性支持部材の支持中心位置を中心として、傾動(回転)動作を行うことが記載されている。 (3)対比 補正後発明と刊行物1記載の発明とを対比する。 刊行物1記載の発明における「コイルボビン」は、【図5】からみて、コイルボビン(2)に対物レンズ(1)が搭載されていることが見て取れることからすると、補正後発明における「対物レンズが搭載されたブレード」に相当することは明らかである。 又、刊行物1記載の発明における「固定部材」は、補正後発明における「ホルダ」に相当する。 又、刊行物1記載の発明における「導電性及び弾性を有するコイルボビン支持線材である8本の棒状ばね」は、補正後発明における「ブレードをホルダに対して弾力的に遊動自在に支持する複数の弾力支持部材」に相当する。 刊行物1記載の発明における「フォーカシング用コイル」及び「トラッキング用コイル」は、少なくとも補正後発明の「サーボ機構」と比較して「ブレードを上下左右」「に駆動する」点で一致する。 [弾力支持部材の配置について] 刊行物1記載の発明では、「4本1組をなす棒状ばねの上下2組の各組において、棒状ばねの各中心軸が同一平面にあり、その平面が互いに平行で、しかも上下4本の棒状ばねが上下でそれぞれ対向するようにして、棒状ばねをコイルボビンに対して対称に配し」とされ、刊行物1記載の発明における「8本の棒状ばね」は、【図5】にみられるとおりの配置関係を有するものである。 刊行物には上下各4本が「1組」と記載されているが、内側に位置する4本を一つの組、外側に位置する4本を別の一つの組と把握することができるのは自明である。 しかも、「上下2組の各組において、棒状ばねの各中心軸が同一平面にあり、その平面が互いに平行で、しかも上下4本の棒状ばねが上下でそれぞれ対向するように」と特定される配置関係からみて、内側に位置する4本、及び外側に位置する4本は、それぞれ、長方形の頂点に位置していることは明らかであるから、各4本の棒状ばねは、同じ中心位置の同心円上に配置され、且つ、外側に位置する4本の棒状ばねは、内側に位置する4本の棒状ばねのより、「大きい半径の円周上」に位置していることも明らかである。 しかも、内側の組の棒状ばねと外側の組の棒状ばねとの間の間隔は、同じ組の棒状ばねの間隔に対して「極めて狭い」ことも明らかである。 即ち、刊行物1記載の発明における、「内側に位置する4本の棒状ばね」、「外側に位置する4本の棒状ばね」は、それぞれ、補正後発明における「第1群の弾力支持部材」、「第2群の弾力支持部材」に相当し、配置関係においても、両発明に格別の差異はない。 又、両発明で、各同心円の中心位置は,支持中心でもあることは自明である。 以上のことから、両発明の間には、次のとおりの一致点及び相違点が認められる。 [一致点] 「対物レンズが搭載されたブレードと、 前記ブレードをホルダに対して弾力的に遊動自在に支持する複数の弾力支持部材と、 前記ブレードを上下左右に駆動するサーボ機構とを含む光ピックアップの対物レンズ駆動装置において、 前記複数の弾力支持部材は、 前記ブレードの中心から第1距離を有する半径の円周上に離隔されて対称的に配される第1群の弾力支持部材と、 前記第1群の弾力支持部材よりも外側となる位置で対をなし、前記ブレードの中心から前記第1距離よりも大きい半径からなる第2距離の円周上に離隔された位置に対称的に配される第2群の弾力支持部材とよりなり、 前記対をなす第1群の弾力支持部材と第2群の弾力支持部材との間の配置間隔は各群同士の配置間隔より極めて狭い光ピックアップの対物レンズ駆動装置。」 [相違点] (ア)サーボ機構について、補正後発明では、対物レンズを搭載するブレードを「回転方向に駆動する」、いわゆる、チルト対応のサーボ機構を更に備え、したがって、弾力支持部材の配置について「ブレードの回転中心」から第1距離または第2距離を有する半径の円周上に離隔されて対称的に配されると特定されるのに対し、刊行物1記載の発明は、チルト対応のサーボ機構を備えておらず、そのため、弾力支持部材に配置について「ブレードの回転中心」により特定することができない点。 (イ)各群の間での弾力支持部材の離間方向について、補正後発明では、「垂直方向にずれている」としているのに対して、刊行物1記載の発明では、少なくとも図5からすると、各群は水平方向にずれていると認められる点。 (4)判断 相違点(ア)について 光ピックアップの対物レンズ駆動装置において、チルトに対応する対物レンズ駆動装置は、前記刊行物2の他、特開平10-261233号公報(以下、「周知例1」という。)、特開2001-279460号公報(以下、「周知例2」という。)等にて周知の事項であって、チルト制御を行う場合、給電路を兼ねるワイヤが6本もあれば十分である(刊行物2,周知例1,2参照)ことからすると、ワイヤを8本備えた刊行物1記載の発明を、チルト対応のサーボ機構を採用する対物レンズ駆動装置とすることは、前記周知事項も考慮すると当業者が容易に想到しうるものである。 また、チルト制御の回転動作について、支持中心位置を「ブレードの回転中心」とすることも、前記刊行物2の記載、及び上記周知例1の、【0035】段落及び【図5】を参照すると明らかなように、当然の構成にすぎないものである。 相違点(イ)について 弾力支持部材を垂直方向に配置することは、例えば特開平4-57226号公報(以下、「周知例3」という。第3図参照。4a?4d、及び4e?4hは、それぞれ垂直方向に配置されている。)、特開2001-167458号公報(以下、「周知例4」という。【0057】、図10参照。サスペンションワイヤ53a?53c、及び53d?53fは、それぞれ垂直方向に配置されている)、前掲周知例2(【0018】、図1参照。)等にて周知の配置にすぎない。 一方で、本願明細書の【0017】段落には、【実施の形態】について、 「それは全てのワイヤを仮想の円周上に精密に配することが負担になる場合、従来のように垂直に配するが、一部ワイヤに圧縮力が作用する現象を最小化できる方案である。 すなわち、図のように円周上に配される第1群のワイヤw2,w3,w6,w7と、そうでない第2群のワイヤw1,w4,w5,w8とをすぐに隣接すべく配すれば、たとえ変形量の差が発生しても非常に微小なレベルであるゆえに、ワイヤを坐屈させる圧縮力も軽微な程度にしか生じない。それにより、安定したブレード20の制御が可能となる。」と記載されている。 すなわち、第1群のワイヤの長さと第2群のワイヤの長さがごく近い値の場合に、変形量の差が非常に微小なレベルであることで、ワイヤを座屈させる圧縮力が軽微な程度になるというものである。 このことからすると、第1群のワイヤと第2群のワイヤとを、その長さがごく近い値となるように隣接すべく配置すれば十分であって、離間方向の違いで、その効果に格別の差異が生じるものとも認められない。 すると、離間方向が垂直方向であっても、水平方向であっても、同じ群同士の弾力性支持部材の距離に比して,各群の間の弾力性支持部材間の間隔が、ごく狭い間隔を有する刊行物1記載の発明においても同様の効果が生じることは明らかであり、弾力性支持部材の離間方向を垂直方向とするか水平方向とするかは、前記周知事項も考慮すると、当業者が適宜選択し得ることである。 そして、上記各相違点を総合的に判断しても、補正後発明が奏する効果は、各刊行物に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。 以上のとおりであるから、補正後発明は、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (5)補正後発明の独立特許要件についてのむすび 以上のとおりであるから、補正後の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 4.本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成19年1月4日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年1月11日付けの手続補正で補正された明細書及び図面からみて、前記「II.1.(1)」に補正前の請求項1として記載したとおりのもの(以下、「本願発明」という。)と認める。 2.刊行物及びその記載 これに対して原査定の理由で引用された刊行物及びその記載は、前記「II.3.(2)刊行物及びその記載」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記「II.3(3)対比・判断」で、検討した補正後発明に対して、 補正前の請求項1に係る発明の要件である、 弾力支持部材について「複数の」、「第1距離を有する半径の円周上に」を「第1距離ほど」と、「前記第1距離よりも大きい半径からなる第2距離の円周上に」を「第2距離ほど」と、第1群及び第2群の「部材弾力支持部材」をそれぞれ単に「部材」と、「第1群の弾力支持部材よりも外側となる位置で対をなし」を「第1群の部材と対をなし」と、それぞれ限定を削除すると共に「対をなす第1群の弾力支持部材と第2群の弾力支持部材との間」の配置関係について、「且つ垂直方向にずれている」との特定を削除したものに相当する。 すると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後発明が、前記[独立特許要件について]の「(3)対比・判断」に記載したとおり、刊行物記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-08 |
結審通知日 | 2010-04-13 |
審決日 | 2010-05-11 |
出願番号 | 特願2003-148250(P2003-148250) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 浩昌、山澤 宏 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
酒井 伸芳 ▲吉▼澤 雅博 |
発明の名称 | 光ピックアップの対物レンズ駆動装置 |
代理人 | 伊東 忠彦 |