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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B |
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管理番号 | 1224080 |
審判番号 | 不服2008-25701 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-06 |
確定日 | 2010-09-22 |
事件の表示 | 特願2007- 6335「情報取得装置及び情報取得方法」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月 5日出願公開、特開2007-172825〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成19年1月15日の出願(パリ条約による優先権主張1995年7月26日、米国)であって、平成19年9月5日付けの拒絶理由通知に対して、平成20年3月11日付けで手続補正がされたが、平成20年6月30日付けで拒絶査定となり、平成20年10月6日付けで拒絶査定不服審判が請求された。平成21年7月28日付けの当審から拒絶理由通知に対して、平成21年9月29日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願請求項1-10のうち請求項1に係る発明は、平成21年9月29日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項1】 音楽用コンパクトディスクから読み出された目録情報(TOC:Table of Contents)より生成された識別情報を、インターネット上のリモートデータベースに照会する手段と、 上記リモートデータベースから、上記識別情報に対応する上記音楽用コンパクトディスクに関連する関連情報をローカルデータベースにダウンロードする手段と、 上記ダウンロードした関連情報をメモリにダウンロードする手段と、 上記関連情報を、リストとして表示するためのユーザインターフェースを提供する手段と、 上記リモートデータベースからの上記関連情報による上記ローカルデータベースの更新を実行しながら、上記音楽用コンパクトディスクを音楽再生させる手段と、 を備える情報取得装置。」 3.引用例発明 1)引用例1 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前である平成3年9月26日に頒布された「特開平3-219486号公報」(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「本発明は、コンパクトディスク(以下CDと称す)システムにセットされたCDのデータを管理するデータ管理システムに関し、特にCDのリードインエリアに記憶されているデータを識別子として、セットされたCDに関するデータを管理するデータ管理システムに関する。」(1頁右欄1?6行) (2)「本発明のデータ管理システムでは、読み取り手段により、CDシステムにセットされているCDのリードインエリアのデータを読み取り、抽出し、抽出したデータを識別子として持つデータファイル(以下、データベースと称す)を補助記憶上に作成する作成手段と、CDのデータと同じ識別子を持つデータを補助記憶装置上に存在するデータベースから検索する検索手段と、検索されたデータを視覚的にわかりやすく出力装置に表示する出力手段とを備え、セットされた各々のCDのデータを記憶し、データファイルとして構築する。」(2頁右上欄12?20行) (3)「第一図は本発明を示すシステム構成ブロック図である。 本システムは、コンピュータ101、コンパクトディスクプレーヤ102、補助記憶装置103、インターフェース104、出力装置105で構成されている。」(2頁左下欄6?11行) (4)「次に本システムの動作について第一図、第二図、第三図、第四図を用いて説明する。 まずコンピュータ101は、常時インターフェース104を介して、コンパクトディスクプレーヤ102を監視しており、コンパクトディスクプレーヤ102にCDがセットされた時点で、セットされたCDのリードインエリアに格納されているTOCデータを、インターフェース104を介してコンパクトディスクプレーヤ102を制御して読み取る(STEP1)。 コンピュータ101は読み取ったTOCデータ群のPMIN、PSEC,PFRAMEをそれぞれ抽出し、各々のCDに格納されているトラック数は最小1トラックから最大99トラック、またその各々のトラックの長さは最小2秒から最長約74分、そのうえ1秒は75フレームで構成されているために、確率的にいって同じ長さのトラックが同じ順序で同じトラック数並ぶことは非常に低くなることから、本実施例では、-例として、PMIN、PSEC,PFRAMEの並びをそのCD固有の識別子(ID)として使用する(STEP2)。 セットされたCDのTOCからIDを作成したコンピュータ101は、補助記憶装置103の中にある任意の形のデータベースから現在持っているIDと一致するIDを持ったファイルを検索する(STEP3)。 ここでいうデータベースとは、例えばタイトル名,曲名などを管理するものであり、もしここで一致するIDが見つからなければ新たに現在持っているIDを検索キーとする新たなファイルをデータベースに作成する(STEP4)。 ここで一致するIDを持つファイルが見つかった場合には、そのデータをコンピュータ101が適宜処理を行い、その結果を出力装置105に適した型のデータに変換して出力装置105に出力する(STEP5)。」(2頁右下欄20行?3頁右上欄16行) これらの記載事項によると、引用例1には、 「コンピュータ、コンパクトディスクプレーヤ、補助記憶装置、出力装置等で構成され、 コンパクトディスクプレーヤにセットされたCDのTOCからIDを作成したコンピュータは、補助記憶装置の中にある、タイトル名,曲名などを管理するデータベースから現在持っているIDと一致するIDを持ったファイルを検索し、 一致するIDを持つファイルが見つかった場合には、その検索されたデータをコンピュータが適宜処理を行い、その結果を出力装置に適した型のデータに変換して、視覚的にわかりやすく出力装置に表示し、 一致するIDが見つからなければ新たに現在持っているIDを検索キーとする新たなファイルをデータベースに作成する データ管理システム。」 の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 2)引用例2 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前である平成2年10月4日に頒布された「特開平2-249187号公報」(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 (1)「次に、上記実施例の動作を第2図に示したフローチャートに基づいて説明すると、入力装置4によって希望するカラオケ曲の識別コードを入力すれば、CPU3が作動してドライブ2を制御し、CD-RAM1の中から識別コードの付されたカラオケデータ全体を取り出し、CPU3の内蔵RAMにセーブし、シーケンサ5に出力する。その内、文字情報についてはシーケンサ5からの順次出力に応じて表示装置6に歌詞表示が行われる。 また、音楽情報はやはりシーケンサ5で順次処理をされたのちに再生装置10でアナログ処理をされてスピーカ9から音楽として再生される。 ところで、CPU3によってCD-RAM1を検索しても入力された識別コードが見当たらなかった場合(NO)は、CPU3が直ちに公衆回線12を通じてホストコンピュータ11に希望のカラオケデータの伝送を要求する。これによって要求したカラオケデータはダウンロードされ、CD-RAM1にセーブされた後、上述と同様に表示装置6には歌詞表示が、再生装置10からは音楽再生が行われるのである。」(2頁右下欄19行?3頁左上欄19行) (2)「さらに、光ディスクに収録されていない情報で、必要な情報に関しては、ホストコンピュータをデータベースとしてこれからダウンロードさせることによって、より内容の充実したものとすることができるなど、利用範囲が大変広いカラオケシステムを提供することができた。」(3頁右上欄11?16行) 4.対比 引用例1記載の発明における「CD」は、「タイトル名,曲名など」と関係するものであるから、本願発明における「音楽用コンパクトディスク」に相当することが明らかである。引用例1記載の発明における「ID」は、本願発明における「識別情報」に相当する。引用例1記載の発明は、「コンパクトディスクプレーヤにセットされたCDのTOCからIDを作成したコンピュータは、補助記憶装置の中にある、タイトル名,曲名などを管理するデータベースから現在持っているIDと一致するIDを持ったファイルを検索し」との構成を有するものであるから、本願発明における「音楽用コンパクトディスクから読み出された目録情報(TOC:Table of Contents)より生成された識別情報を」「データベースに照会する手段」に相当する構成を備えている。 引用例1記載の発明は「一致するIDを持つファイルが見つかった場合には、その検索されたデータをコンピュータが適宜処理を行い、その結果を出力装置に適した型のデータに変換して、視覚的にわかりやすく出力装置に表示」するものであり、前記検索・表示されるデータにCDの曲名等の一連の情報が含まれていることから、引用例1記載の発明は、本願発明における「上記識別情報に対応する上記音楽用コンパクトディスクに関連する関連情報」を、「リストとして表示するためのユーザインターフェースを提供する手段」に相当する構成を備えていることは明らかである。 引用例1記載の発明における「コンパクトディスクプレーヤ」が、本願発明における「上記音楽用コンパクトディスクを音楽再生させる手段」に相当することは明らかである。 引用例1記載の発明の「データ管理システム」は、セットされたCDに関するデータを検索するものであるから、本願発明の「情報取得装置」に相当する。 してみると、両発明の一致点、相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「音楽用コンパクトディスクから読み出された目録情報(TOC:Table of Contents)より生成された識別情報を、データベースに照会する手段と、 上記識別情報に対応する上記音楽用コンパクトディスクに関連する関連情報を、リストとして表示するためのユーザインターフェースを提供する手段と、 上記音楽用コンパクトディスクを音楽再生させる手段と、 を備える情報取得装置。」である点。 [相違点] (A)本願発明では、「識別情報を、インターネット上のリモートデータベースに照会する手段」及び「上記リモートデータベースから、上記識別情報に対応する上記音楽用コンパクトディスクに関連する関連情報をローカルデータベースにダウンロードする手段」を備え、表示される関連情報が、「識別情報を、インターネット上のリモートデータベースに照会」して「上記リモートデータベースから、」「ローカルデータベースにダウンロード」されるものであるのに対し、引用例1記載の発明では前記各手段を備えておらず、かつ、表示される関連情報が、識別情報をデータベースに照会して得られるものである点。 (B)本願発明では、「上記リモートデータベースからの上記関連情報による上記ローカルデータベースの更新を実行しながら、上記音楽用コンパクトディスクを音楽再生させる手段」を備えるのに対し、引用例1記載の発明では前記構成について特定されていない点。 (C)本願発明では、「上記ダウンロードした関連情報をメモリにダウンロードする手段」を有しているのに対して、引用例1記載の発明には、このような手段を備えていない点。 5.当審の判断 (相違点Aについて) 引用例2には、識別コードを検索しても見当たらなかった場合に、識別コードに対応するデータを公衆回線を通じてホストコンピュータ上のデータベースから検索してダウンロードし保存することが記載されている。そして、引用例2は、識別情報に対応するデータを検索して取得する点、及び、識別情報が検索できなかった場合に新たにデータを追加する点で、引用例1記載の発明と共通する。 したがって、引用例1記載の発明においても、識別情報が検索できなかった場合に新たにデータを追加する構成として、公衆回線を通じてアクセスされるホストコンピュータ上のリモートデータベースからダウンロードする構成を採用することは、当業者が容易に想到しうることである。そして、その際、ネットワークとしてインターネットを利用することも適宜なしうる程度のことである。 (相違点Bについて) 引用例1記載の発明は、コンピュータが、常時コンパクトディスクプレーヤを監視しており、コンパクトディスクプレーヤにCDがセットされた時点で、セットされたCDのTOCデータをコンパクトディスクプレーヤを制御して読み取り、セットされたCDのTOCからIDを作成し、データベースから一致するIDを持ったファイルを検索するものであり(上記記載事項(d)参照)、また、前記引用例1記載の発明において、リモートデータベースからのダウンロード(ローカルデータベースの更新)の構成を採用することが、当業者により容易に想到されうるものであることは、上記(相違点Aについて)において示したとおりである。 ところで、CDを再生することを目的としてコンパクトディスクプレーヤにCDをセットする行為は、通常行われているものであるから、当該行為に対応した処理をシステムに担わせることは、当業者が普通に設計することにすぎない。 また、複数の処理を並行して行うことは、情報処理分野における慣用手段である。 すると、CDを再生することを目的としてコンパクトディスクプレーヤにCDがセットされた時点で、上記ローカルデータベースの更新処理と音楽再生処理とを並行して実行させることは、当業者が普通に設計する事項にすぎない。 (相違点Cについて) データを表示するに当たって、本願発明のように、データをメモリにダウンロードする手段は以下に示すとおり周知事項であり、このような周知事項を必要に応じて引用例1記載の発明に対して適用し、相違点Cの構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。(特開平7-104772号公報(段落番号0011参照)、特開平6-324690号公報(段落番号0014参照)、特開平7-72879号公報(段落番号0011参照)) そして、上記相違点についての判断を総合しても本願発明の奏する効果は、各刊行物から当業者が十分予測可能なもので格別のものではない。 6.むすび したがって、本願発明は周知技術を勘案し引用例1記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-04-16 |
結審通知日 | 2010-04-20 |
審決日 | 2010-05-07 |
出願番号 | 特願2007-6335(P2007-6335) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松尾 淳一 |
特許庁審判長 |
山田 洋一 |
特許庁審判官 |
小松 正 石川 正二 |
発明の名称 | 情報取得装置及び情報取得方法 |
代理人 | 小池 晃 |
代理人 | 伊賀 誠司 |