ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B |
---|---|
管理番号 | 1224141 |
審判番号 | 不服2007-21300 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-02 |
確定日 | 2010-09-24 |
事件の表示 | 特願2004-106473「長尺炭素製品、炭素含有長尺製品及びこれらの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月27日出願公開、特開2005- 22957〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年3月31日(優先権主張 平成15年6月11日 日本)の出願であって、平成19年2月23日付けで拒絶理由が通知され、平成19年4月27日付けで意見書及び明細書に係る手続補正書が提出され、平成19年6月29日付けで拒絶査定され、平成19年8月2日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに平成19年9月3日付けで明細書に係る手続補正書が提出されたものであり、その後、平成22年1月5日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋を通知し、期間を指定して請求人の意見を求めたところ、請求人からの回答書の提出が無かったものである。 2.平成19年9月3日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年9月3日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 平成19年9月3日付けの手続補正(以下、必要に応じて「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 炭素質フィラーを結合剤と混練し、混練後に平均粒径1?50μmに粉砕した原料粉末の全てを、ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形して得た、アスペクト比が3以上20以下、密度のバラツキが全体にわたって0.05Mg/m^(3)以下である長尺炭素成形体を、熱処理して得たことを特徴とする長尺炭素製品。」 と補正された。 上記補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「原料粉末を、乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することを、「原料粉末の全てを、ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することに限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)について、特許出願の際独立して特許を受けることができるものかについて以下に検討する。 (2)刊行物に記載された事項 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平8-59348号公報(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「本発明は上記の問題点を解決する中空状高密度炭素材料の製造方法を提供することを目的とする。本発明において炭素質原料51?100重量%と炭化物,硼化物,窒化物の1種又は2種以上を含む組成の原料を用い、成形に必要な無機質又は有機質バインダーを添加し、捏和し、捏和物を平均粒径100μm以下に粉砕し、これを成形用の原料坏土とする。炭素物原料としては天然または人造黒鉛,メソフェンズカーボン,カーボン,カーボンブラック,ピッチ,コークス等で、90%以上の高純度のものが望ましい。50%以下では炭素材としての優位性が得られない。炭化物,硼化物,窒化物としてはSiC,TiC,B_(4)C,Ti,B_(2),Si_(3)N_(4)等で、耐酸化性と強度を上げるために効果が大きい。又成形用の原料坏土として捏和物を平均粒径100μm以下に粉砕するのは、原料坏土をゴム型に均一に充填し易いためである。次に成形において、ゴム製モールドの中に中空状高密度炭素材の中空形状となる熱可塑性樹脂製の中子をセットし、原料坏土を充填し、後静水圧を加え原料坏土と熱可塑性樹脂製の中子を一体として成形を行なう。熱可塑性樹脂として、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,ポリ塩化ビニール,ポリウレタン,ポリカーボネイト,ポリアミド,ポリエステル,ポリアセダール,フッ素樹脂を用いると復元力があるため、成形後には応力が開放されて、成形体及び樹脂製中子が変形することはない。 次にこの成形体を焼成する炭素材料の酸化を防ぐために非酸化雰囲気で焼成することが望ましい。熱可塑性樹脂は200℃以下で軟化し、800℃に達するまでに炭素分を残さずに分解、揮発する。したがって熱可塑性樹脂で製造した中子は成形体と1体として800℃以上で焼成すれば熱可塑性樹脂部分は完全に分解揮発して中空状とすることができる。この様な熱可塑性樹脂の特性を利用して、中子として熱可塑性樹脂を用いるとCIP成形による中空状の高密度炭素材料の長尺品が安価に製造することが可能である。」(段落【0004】、【0005】) (イ)「【実施例1】平均粒径3μmの仮焼コークス粉100重量部にピッチ35重量部加え、双腕混練機により150℃の温度で1時間加熱混練し、冷却後平均粒径20μmに粉砕した。これを外径10mm,長さ1200mmのポリプロピレンン製中子を挿入した内径100mm,長さ1500mmのゴム型内へ充填し、1500kg/cm^(2)の圧力で等方加圧成形を行った。この成形体を非酸化性雰囲気中、約1100℃にて焼成を行った。その結果素材の曲がりは無く、外径80mm,長さ1200mmの素材に対して内径10mm,長さ1200mmの穴が貫通した。」(段落【0007】) (2-2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平6-238498号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「加圧された圧力媒体により、成形しようとする粉末に一様に等しい圧力を加えて成形を行う等方加圧成形法は、得られた成形体の密度が均一であること、プレス成形では製造困難な長尺の丸棒の成形が容易であること等から、セラミックス粉末や黒鉛粉末、金属粉末の成形に利用されている。また、等方加圧成形法は、円柱状やパイプ状製品の製造、あるいは他の成形方法では均質な成形体を得ることが困難であった直径1m程度の棒状体の製造や、板状さらには複雑な形状の製品の製造に適用されている。」(【0002】) (イ)「図3は、従来の等方加圧成形法のうちの湿式法の概要を示したものである。」(段落【0003】)として、段落【0003】、【図3】には従来の等方加圧成形法のうちの湿式法について記載されており、また、「乾式法の一例として、周方向加圧タイプの乾式法の概要を図6に示す。」(段落【0005】)として、段落【0005】、【図6】には従来の等方加圧成形法のうちの乾式法について記載されている。 (ウ)「また、図5のような構成では、粉末26の上下方向に硬いパンチ25、25が設けられているため、周方向に硬度の低い成形用ゴム型を使用する場合には、円柱体の製造において、上下両端部の外径が広がるという、いわゆる象の足現象が発生する。」(段落【0007】) ここで、上記記載のうち「図5」が「図6」の誤記であることは、「粉末26」、「パンチ25、25」が、【図5】には示されておらず、【図6】に示されていることからみて、明らかである。 (エ)「次に、乾式法に用いる成形用ゴム型の実施例について説明する。図2は本発明の成形用ゴム型40を用いた場合の乾式等方加圧装置を示している。成形用ゴム型40は高圧容器38内に固定され、高圧容器38の内側にはシール用ゴム型39が設けられている。成形用ゴム型40の上下開口部には、それぞれリング状蓋体42、42を介してパンチ43、43が設置されている。パンチ43、43はいずれも成形用ゴム型40の上下開口部とそれぞれ嵌合するようにパッド41、41が取りつけられている。そして、成形用ゴム型40は本体部40aと硬質層40bとからなり、硬質層40bは本体部40aの内表面に設けられている。同様に、パッド41も本体部41aと硬質層41bとからなり、硬質層41bは本体部41aにおいて成形用ゴム型40の内側に設けられている。すなわち、成形用ゴム型40内に充填される粉末46は、成形用ゴム型40の硬質層40b及びパッド41の硬質層41bに囲まれている。・・・。 ・・・。また、本実施例では、パンチ43、43と粉末46との間に比較的軟らかいパッド41、41が介在しているので、パンチ43、43近傍で圧縮されることがなく、いわゆる象の足現象の発生を防止できる。」(段落【0017】、【0018】) (オ)【図2】から、パッド41、41は、粉末46と接する部分の成形用ゴム型40の上下に設けられていることが窺える。 (2-3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である「カーボン用語辞典」、アグネ承風社、2000年10月5日発行、第386頁「冷間等方圧成形(CIP)」の欄(以下、「刊行物3」という。)には、次の事項が記載されている。 (ア)「CIP成形には弾性体であるゴム型を用いるので,型と成形原料との摩擦がないため圧力損失が少なく,しかも水圧によって等方的に加圧されることにより,次のような特徴がある. 1)異方形状の原料でもランダム配向し,等方性となる. 2)潤滑性に乏しい原料でも成形可能. 3)成形粉が微粉でも成形可能. 4)シリンダー状,るつぼ状などの異形品や,アスペクト比の大きい長尺物などの成形が可能. 5)モールド成形に比較して,大型素材の成形が可能. 6)成形品内の密度分布は均一で,そのばらつきは金型成形品の半分以下. 7)同一材質においては,成形サイズ,形状に関係なく,特性およびそのばらつきはほぼ一定. 8)上記1?7により高密度,高強度,高信頼性の等方性黒鉛を製造することが可能.」(第386頁、「冷間等方圧成形(CIP)」の欄 8?27行) (3)対比、判断 刊行物1の記載事項(ア)には、「炭素質原料51?100重量%と炭化物,硼化物,窒化物の1種又は2種以上を含む組成の原料を用い、成形に必要な無機質又は有機質バインダーを添加し、捏和し、捏和物を平均粒径100μm以下に粉砕し、これを成形用の原料坏土と」し、「ゴム製モールドの中に中空状高密度炭素材の中空形状となる熱可塑性樹脂製の中子をセットし、原料坏土を充填し、後静水圧を加え原料坏土と熱可塑性樹脂製の中子を一体として成形を行な」い、「この成形体を焼成する炭素材料の酸化を防ぐために非酸化雰囲気で焼成する」ことにより、「中空状の高密度炭素材料の長尺品」を製造することができることが記載されている。 そして、記載事項(イ)に記載された具体例には、「平均粒径3μmの仮焼コークス粉100重量部にピッチ35重量部加え、・・・加熱混練し、冷却後平均粒径20μmに粉砕した」こと、「これを外径10mm,長さ1200mmのポリプロピレンン製中子を挿入した内径100mm,長さ1500mmのゴム型内へ充填し、・・・等方加圧成形を行った」こと、「この成形体を非酸化性雰囲気中、約1100℃にて焼成を行った」こと、「その結果・・・、外径80mm,長さ1200mmの素材に対して内径10mm,長さ1200mmの穴が貫通した」ことが記載されている。 そこで、記載事項(イ)に記載された具体例を中心としてこれらの記載事項を整理すると、刊行物1には、 「仮焼コークス粉にピッチを加え、混練し、冷却後平均粒径20μmに粉砕した原料坏土を、外径10mm,長さ1200mmのポリプロピレンン製中子を挿入した内径100mm,長さ1500mmのゴム型内へ充填し、等方加圧成形を行い、この成形体を焼成して得た外径80mm,長さ1200mmの素材に対して内径10mm,長さ1200mmの穴が貫通した中空状の高密度炭素材料の長尺品。」 の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているものと認められる。 本願補正発明と刊行1発明とを対比すると、刊行1発明の「仮焼コークス粉」、「ピッチ」は、それぞれ本願補正発明の「炭素質フィラー」、「結合剤」に相当し、刊行1発明の「原料坏土」は、本願補正発明の「原料粉末」に相当することは明らかである。 また、刊行1発明の「等方加圧成形」は、本願補正発明の「静水圧プレス成形」に相当するものであって、原料坏土の全てをゴム型にて覆った状態により行われることは明らかであり、刊行1発明の「焼成」は、本願補正発明の「熱処理」に相当することも明らかである。 そして、刊行1発明の「成形体」は、原料坏土の組成からみて「炭素成形体」であって、ゴム型の内径及び長さからみて「長尺」であるから、「長尺炭素成形体」といえるものであり、刊行1発明の「中空状の高密度炭素材料の長尺品」は「長尺炭素製品」といえるものである。 よって、両者は、 「炭素質フィラーを結合剤と混練し、混練後に平均粒径20μmに粉砕した原料粉末の全てを、ゴム型にて覆った状態による静水圧プレス成形によって所定の形状に成形して得た長尺炭素成形体を、熱処理して得た長尺炭素製品」 で一致し、次の点で相違する。 相違点a:本願補正発明は、静水圧プレス成形が「乾式静水圧プレス成形」であり、しかも、原料粉末の全てを、「ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による」乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形するものであるのに対し、刊行1発明は、静水圧プレス成形についてかかる特定が無く、しかも、原料粉末の全てを、「ゴム型にて覆った状態による」静水圧プレス成形によって所定の形状に成形するものである点 相違点b:本願補正発明は、長尺炭素成形体が、「アスペクト比が3以上20以下」であるのに対し、刊行1発明にはかかる特定が無い点 相違点c:本願補正発明は、長尺炭素成形体が、「密度のバラツキが全体にわたって0.05Mg/m^(3)以下」であるのに対し、刊行1発明にはかかる特定が無い点 そこでまず、相違点aについて検討する。 刊行物2の記載事項(イ)に、従来の等方加圧成形法として湿式法と乾式法について記載されていることからも明らかなように、「等方加圧成形法」、即ち「静水圧プレス成形」として、「湿式静水圧プレス成形」と「乾式静水圧プレス成形」は、本願の優先権主張日前いずれも広く行われていたものである。 そして、刊行物2の記載事項(ウ)に記載されているように、乾式静水圧プレス成形により円柱体を製造する場合、上下両端部の外径が広がるという、いわゆる象の足現象が発生することも、本願の優先権主張日前より当該技術分野において知られていたことであり、刊行物2の記載事項(エ)、(オ)には、「パンチ43、43はいずれも成形用ゴム型40の上下開口部とそれぞれ嵌合するようにパッド41、41が取りつけられ」、換言すると、パッド41、41を粉末46と接する部分の成形用ゴム型40の上下に設け、「成形用ゴム型40内に充填される粉末46」を「成形用ゴム型40の硬質層40b及びパッド41の硬質層41bに囲まれている」状態で乾式静水圧プレス成形することにより、「パンチ43、43と粉末46との間に比較的軟らかいパッド41、41が介在している」ために、いわゆる象の足現象の発生を防止できることが記載されている。 刊行物2に記載の「パッド41、41」は、その機能からみて、本願補正発明の「緩衝材」に相当することは明らかであり、また「成形用ゴム型40の硬質層40b」、「パッド41の硬質層41b」は、いずれも「成形用ゴム型40」、「パッド41」の一部であるから、刊行物2には、乾式静水圧プレス成形で問題となる象の足現象は、ゴム型内に充填される原料粉末を、ゴム型、及び原料粉末と接する部分のゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態で乾式静水圧プレス成形することにより防止できることが示されているといえる。 してみると、刊行1発明において、静水圧プレス成形として「乾式静水圧プレス成形」を採用すること、そして、その場合に問題となる象の足現象を防止することを目的として緩衝材を用い、原料粉末の全てを、「ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による」乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形するようにすることは、刊行物2に記載された事項から当業者が容易に想到し得たことであると認められる。 次に、相違点bについて検討する。 刊行1発明において、長尺炭素成形体のアスペクト比は特定されていない。 しかし、刊行1発明において、長尺炭素成形体を成形するためのゴム型の寸法は内径100mm,長さ1500mmであり、長尺炭素成形体を熱処理して得られた長尺炭素製品の寸法は外径80mm,長さ1200mmである。 してみると、刊行1発明において、長尺炭素成形体を成形するためのゴム型のアスペクト比が3以上20以下の範囲内の値であり、長尺炭素成形体を熱処理して得られた長尺炭素製品のアスペクト比も3以上20以下の範囲内の値であるから、刊行1発明において長尺炭素成形体のアスペクト比は3以上20以下であることは明らかである。 よって、相違点bは実質的な相違点ではない。 最後に、相違点cについて検討する。 確かに、刊行1発明には、長尺炭素成形体の密度のバラツキについて何らの特定もない。 しかし、刊行物2の記載事項(ア)に「等方加圧成形法は、得られた成形体の密度が均一である」との記載があり、刊行物3の記載事項(ア)にも「冷間等方圧成形(CIP)」の特徴として「6)成形品内の密度分布は均一で,そのばらつきは金型成形品の半分以下」との記載があることからみて、冷間等方圧成形、即ち静水圧プレス成形により成形された成形品内の密度のバラツキが少ないことは、本願の優先権主張日前広く知られていたことである。しかも、刊行物3の記載事項(ア)に「8)上記1?7により高密度,高強度,高信頼性の等方性黒鉛を製造することが可能」と記載されているとおり、成形品内の密度のバラツキが少ないことは目的とする特性を有する製品を製造するために、あるいは製品の信頼性を高めるために重要な要件である。 してみれば、刊行1発明の長尺炭素成形体も、密度のバラツキは全体にわたって少ないものと予測されるところ、長尺炭素成形体の密度のバラツキについてその上限を定めることは、目的とする特性を有し、しかも信頼性の高い長尺炭素製品を製造するために当業者が必要に応じて行うことであると認められるから、かかる長尺炭素成形体の密度のバラツキについて検討することにより、「長尺炭素成形体の密度のバラツキが全体にわたって0.05Mg/m^(3)以下」と定めることは当業者が必要に応じて適宜為し得たことであると認められる。 そして、本件補正後の本願明細書及び図面の記載を検討しても、本願補正発明において静水圧プレス成形として乾式静水圧プレス成形を採用し、原料粉末の全てを、ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形するようにしたこと、長尺炭素成形体の密度のバラツキが全体にわたって0.05Mg/m^(3)以下としたこと、あるいはそれらを組み合わせたことにより、当業者が予測し得ない格別顕著な効果が奏されたものとは認められない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成19年9月3日付けの手続補正は前記2.のとおり却下されたので、本願の請求項1?12に係る発明は、平成19年4月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりのものである。 【請求項1】 炭素質フィラーを結合剤と混練し、混練後に平均粒径1?50μmに粉砕した原料粉末を、乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形して得た、アスペクト比が3以上20以下、密度のバラツキが全体にわたって0.05Mg/m^(3)以下である長尺炭素成形体を、熱処理して得たことを特徴とする長尺炭素製品。 (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1?3及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明1は、前記2.で検討した本願補正発明に関し、「原料粉末の全てを、ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することを「原料粉末を、乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することに拡張したものである。 してみると、本願発明1の発明特定事項のうち「原料粉末を、乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することを「原料粉末の全てを、ゴム型、及び前記原料粉末と接する部分の前記ゴム型の上下に設けられた緩衝材にて覆った状態による乾式静水圧プレス成形によって所定の形状に成形」することに限定したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)に記載したとおり、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明と同様の理由により、本願発明1も、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明1は、刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-26 |
結審通知日 | 2010-07-27 |
審決日 | 2010-08-11 |
出願番号 | 特願2004-106473(P2004-106473) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(C04B)
P 1 8・ 121- Z (C04B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 正 知晃、大橋 賢一、武重 竜男 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
安齋 美佐子 中澤 登 |
発明の名称 | 長尺炭素製品、炭素含有長尺製品及びこれらの製造方法 |
代理人 | 梶 良之 |
代理人 | 須原 誠 |