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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1224148
審判番号 不服2008-6949  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-21 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2004- 40209「印刷装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 2日出願公開、特開2005-231076〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成16年2月17日の出願であって、平成17年2月23日及び平成19年9月21日に手続補正がなされ、平成20年2月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年3月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月10日に手続補正がなされ、当審において、平成20年4月10日付け手続補正が平成22年4月27日付けで却下されるとともに、同日付けで拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成22年7月7日付けで手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1ないし13に係る発明は、平成22年7月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものであると認める。

「装置情報を格納する着脱可能な記憶部と、
不揮発性記憶部材で構成され、前記記憶部に装置情報を格納する設定がなされたことを示す情報を格納する情報格納部と、
装置のエラー情報を装置外部に表示する表示部と、
前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知し、
また前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する装着管理部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」

3 刊行物の記載事項
(1)当審拒絶理由で引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-178567号公報(以下「引用例1」という。)」には、次の事項が記載されている。(下線は審決で付した。以下同じ。)
ア 「【請求項1】 各種印刷情報の設定や印刷回数,エラー回数などを記憶する第1の不揮発性のランダムアクセスメモリと、着脱自在で第1の不揮発性のランダムアクセスメモリとは異なった情報を記憶させる第2のランダムアクセスメモリとを有し、第1の不揮発性のランダムアクセスメモリにはトータル印刷回数を記憶させ、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには第1の不揮発性のランダムアクセスメモリよりも多くのカテゴリのカウンタ情報を記憶させることを特徴とするプリンタコントローラ。
【請求項2】 請求項1記載のプリンタコントローラにおいて、
プリンタコントローラに接続されるプリンタエンジンには、複数の色により印刷が可能なカラープリンタエンジンを使用し、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには印刷時に使用した色成分毎のカウンタ情報を記憶させることを特徴とするプリンタコントローラ。
【請求項3】 請求項1又は2記載のプリンタコントローラにおいて、
第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには複数の使用者,グループ毎に印刷した枚数を記憶させることを特徴とするプリンタコントローラ。
【請求項4】 請求項1,2又は3記載のプリンタコントローラにおいて、
第2の不揮発性のランダムアクセスメモリがハードディスクであることを特徴とするプリンタコントローラ。」

イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、レーザープリンタやマルチファンクションプリンタ等に搭載するプリンタコントローラ及びそれを使用したプリンタ装置、特に、1台のプリンタ装置を複数の人や部門,グループにて共有して使用するとき、個人毎又は部門毎の印刷枚数を管理して、各部門で管理しているプリンタ管理者の作業の容易化や利用者制限の容易化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ホストコンピュータにより作成された文書や画像を印刷する従来のプリンタ装置は、図7のブロック図に示すように、プリンタコントローラ1とプリンタエンジン2を有する。プリンタコントローラ1は、ホストインタフェース3と、装置全体の動作を制御するCPU4と、各種制御プログラムを記憶したROM5と、CPU4のワークメモリや画像メモリとして使用するRAM6と、ビデオDMAコントローラ7と、エンジンインタフェース8及び各種印刷条件等が設定されているNVRAM9を有する。そしてホストコンピュータ10により作成した画像等を印刷するとき、ホストコンピュータ10は印刷を行うプリンタ装置を指定して、作成した画像の印刷命令を出す。この印刷命令が出されると、ホストコンピュータ1では、接続されたプリンタ装置にあったプリンタドライバーソフト11により、プリンタコントローラ1側で解釈が可能な命令コードの体系に画像データを変換し、接続先のプリンタ装置のホストインタフェース3に変換された画像データを出力する。プリンタコントローラ2のホストインタフェース3で印刷する画像データの受信が開始すると、CPU4は送られてきた画像データをROM5に格納されているコード情報にしたがってRAM6にイメージ描画,展開する。画像データがCPU4によりRAM6にイメージ展開がされた後、エンジンインタフェース8を介してプリンタエンジン2に印刷起動命令を出して印刷を開始するとともに、イメージ展開した画像データをエンジンインタフェース8を介してプリンタエンジン2に出力して印刷を実行する。このプリンタエンジン2に画像を出力する(ビデオ出力)場合、膨大な量のデータを短期間で転送しなければならないため、通常は、ビデオDMAコントローラ7でDNA処理を行って、高速化を図っている。ビデオDMAコントローラ7でDMA転送が終了すると、CPU4にビデオDMA終了のインタラプトを発行して終了を知らせる。CPU4は、次に続く画像データを出力させるために、バンドのDMAパラメータをビデオDMAコントローラ7に設定し、同様なビデオDMA動作を行うことによりプリンタエンジン2への出力を完了する。この処理を行うことにより、ホストコンピュータ10の使用者が作成した画像の印刷をプリンタエンジン2で実行することができる。また、印刷する際には、NVRAM9に設定されている各種設定に従って印刷画像が作成される。
【0003】NVRAM9に記憶されている印刷条件等の設定には、例えば、印刷用紙が複数段の給紙ユニットで構成されている場合には、デフォルトで給紙する給紙ユニットの設定や、マルチパーパストレイが接続されている場合には、使用者によりセットされる用紙のサイズがプリンタ装置にはわからないため、その用紙サイズの設定や、プリンタ装置のシリアル番号の設定、印刷用紙を排紙する際の排紙トレイが複数存在するプリンタの場合には、排紙トレイの設定や、省電力モードへ移行させる際の移行時間の設定や、プリンタコントローラ2内に装着されているRAM6をどのように割り振るかの設定や、各種ホストインタフェースの設定や、ネットワークインタフェースが装着されている場合には、IPアドレス等ネットワークの設定や、プリンタが印刷したトータルの印刷枚数の設定値や、あるいは印刷した際の用紙ジャム回数などのエラーの発生回数等が記憶されている。
【0004】また、利用者制限を行う場合には、印刷する際に、ホストコンピュータ10上であらかじめ決められた暗証コードをユーザが打ち込み、暗証コードがあっていた場合にのみ印刷を行うことが可能なような構成にすることにより実現している。また、マルチファンクションプリンタでは、複写機に接続するコインラックへ使用料金が投入された場合にのみ印刷が可能な構成とするコインラックによる利用者制限をかける場合や、カードリーダーを接続して、カードの残り度数がある場合にのみ印刷が可能な構成とするカードリーダーによる利用者制限を行っている。また、特開平2000-47534号公報に示すように、マルチファンクションプリンタにて暗証コードを用いて利用者制限する方法や、特開平9-97140公報に示すように、プリンタ装置において暗証コードを用いて利用者制限する方法や、特開平8-98038号公報や特開平10-111626号公報に示すように、ネットワーク化した複写機に各々利用者制限機能を有する場合に、他の複写機の利用制限機能を利用して、操作性や作業効率を向上させる利用者制限方法が開示されている。」

ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年レーザプリンタ装置は高速な機械が多くなりつつあり、また、カラーレーザプリンタ装置も飛躍的に高速になってきている。また、タンデム方式のプリンタエンジンによりカラーレーザプリンタ装置であってもモノクロのプリンタ装置と同等のスピードで印刷が行えるようになってきている。また、利用者による不正な印刷や、不用な経費の削減が必要であり、より精度の高い利用者制限技術が求められている。さらに、プリンタエンジンの高速化や信頼性技術の進歩に伴い、印刷枚数の耐久性も飛躍的に向上してきている。
【0006】しかしながら、従来のプリンタコントローラでは、トータルの印刷枚数のカウント値をNVRAMに記憶させて管理していたため、印刷のトータル枚数のみを記憶させている場合や暗証コードでの利用者制限をかけている場合、1つのプリンタ装置を複数の人や部門,グループにて共有して使用する際に、コインラックやカードリーダによる利用者制限を行うためにNVRAMへ設定する項目が多岐に渡っている。また、電源遮断時においてもプリンタシステムが記憶しておかなければならない情報が非常に多いため、個人や部門毎の印刷枚数や印刷ページ数を記憶させておくNVRAMの容量が存在しないため、そのような管理ができなかった。また、カラーレーザプリンタ装置の場合には、ユーザによりモノクロの印刷は利用可能とするが、カラー印刷の利用制限をする場合や、各印刷色毎の課金管理を行う場合などがあり、そのために、各色成分毎のカウンタ情報を持つ必要があり、より大容量の不揮発性メモリが必要であるが、NVRAMではそれに対応することはできなかった。
【0007】また、プリンタ装置で印刷する際には、どの用紙サイズで、それぞれ何枚印刷されているかを記憶させる場合や、どのような紙種例えば普通紙や再生紙やOHO又は厚紙等で印刷が何枚されているかを記憶させる場合や、複数のプリンタエミュレーション言語を搭載している機種では、各エミュレーションが何枚印刷されているか等を管理する要望がでている。また、マルチファンクションプリンタの場合には、プリンタ機能だけでなく、複写機能やスキャナ機能及びファクシミリ機能等各種アプリケーションが存在しており、複写機能やスキャナ機能の場合には、プリンタ機能と同様に、用紙サイズ毎にどの部門が何枚使用しているかを管理したいという要望や、ファクシミリ機能の場合は、それに加えて、各個人や部門毎にどの相手先と送受信したかを管理したいという要望が顕在化している。しかし、これらの設定を記憶させるためには、飛躍的に不揮発性メモリの容量を大きくする必要がある。
【0008】この発明は係る要望を満たすためになされたものであり、1台のプリンタ装置を複数のメンバーや部門,グループにて共有して使用する際に、個人や部門毎のより多くの種類の利用者制限や課金管理を行うとともに、ユーザやプリンタ管理者の機器管理を容易にさせることができるプリンタコントローラ及びそれを使用したプリンタ装置を提供することを目的とするものである。」

エ 「【0017】
【発明の実施の形態】この発明のプリンタ装置は、プリンタコントローラとプリンタエンジンを有する。プリンタコントローラは、ホストインタフェースと、装置全体の動作を制御するCPUと、各種制御プログラムを記憶したROMと、CPUのワークメモリや画像メモリとして使用するRAMと、ビデオDMAコントローラと、エンジンインタフェースと各種印刷条件等が設定されているNVRAM及び拡張NVRAMモジュールを有する。拡張NVRAMモジュールは各部門の管理項目を有するアドレスマップで構成されている。各部門の管理項目にはプリンタ機能と複写機機能とスキャナ機能及びファクシミリ機能が別々に管理されており、プリンタ機能では、用紙サイズ毎に分けられ、用紙サイズの中には、各現像色の印刷枚数を記憶しておく。また、現像色毎の印刷枚数以外にも各種の内容が記憶されている。また、各アプリケーションの中でもそれぞれ多くのカテゴリーに分けられている。
【0018】このプリンタ装置で利用者制限するとき、CPUは拡張NVRAMモジュールのアドレスマップにあらかじめ登録されている部門であるかどうかの認証を行い、登録されている場合にのみ印刷を許可して印刷動作を行う。また、印刷が実行された場合には、アドレスマップのうち該当する項目の印刷枚数のデータを読み込み、+1をした値を再度書き込むことによりカウントアップを行う。この際、カラー印刷を行った場合には、現像した色成分に対して全てカウントアップを行う。例えばフルカラー印刷を行った場合には、CMYKの各現像色のカウントアップを行う」

オ 「【0019】
【実施例】図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。図に示すように、マルチファンクションプリンタ装置は、プリンタコントローラ1とプリンタエンジン2を有する。プリンタコントローラ1は、ホストインタフェース3と、装置全体の動作を制御するCPU4と、各種制御プログラムを記憶したROM5と、CPU4のワークメモリや画像メモリとして使用するRAM6と、ビデオDMAコントローラ7と、エンジンインタフェース8と各種印刷条件等が設定されているNVRAM9及び拡張NVRAMモジュール12を有する。
【0020】NVRAM9に記憶されている印刷条件等の設定には、例えば、印刷用紙が複数段の給紙ユニットで構成されている場合には、デフォルトで給紙する給紙ユニットの設定や、マルチパーパストレイが接続されている場合には、使用者によりセットされる用紙のサイズがプリンタ装置にはわからないため、その用紙サイズの設定や、プリンタ装置のシリアル番号の設定、印刷用紙を排紙する際の排紙トレイが複数存在するプリンタの場合には、排紙トレイの設定や、省電力モードへ移行させる際の移行時間の設定や、プリンタコントローラ2内に装着されているRAM6をどのように割り振るかの設定や、各種ホストインタフェースの設定や、ネットワークインタフェースが装着されている場合には、IPアドレス等ネットワークの設定や、プリンタが印刷したトータルの印刷枚数の設定値や、あるいは印刷した際の用紙ジャム回数などのエラーの発生回数等が記憶されている。
【0021】拡張NVRAMモジュール12は、図2に示すようなアドレスマップ13で構成されている。図2におけるアドレスマップ13には各部門毎に一つの管理内容が書かれているが、各部門に相当するデータは数千部門程度マッピングする。すなわち各部門の管理項目には、プリンタ機能と複写機機能とスキャナ機能及びファクシミリ機能が別々に管理されており、また、各アプリケーションの中でもそれぞれ多くのカテゴリーに分けられている。図2の例では、プリンタ機能では、まず用紙サイズ毎に分けられており、用紙サイズの中には、各現像色の印刷枚数を記憶しておく。また、現像色毎の印刷枚数以外にも各種の内容が記憶されている。また、図2の例では用紙サイズ毎に管理しているが、それ以外にも、さらに紙種毎にごとに分けて管理することもできる。このように拡張NVRAMモジュール12をアドレスマップ13として管理することにより、各部門や個人の印刷枚数を管理することができる。
【0022】上記のように構成したプリンタ装置を使用してホストコンピュータ10の使用者が印刷をしようとするとき、ホストコンピュータ10上で動作するアプリケーションソフトウェアを利用して印刷を行いたい画像データを作成する。このとき使用者によって作成される画像データは複数ページに渡っているものや、カラーデータとして作成されるもの等各種の画像データが存在する。画像データの作成が完了した時点で、使用者はホストコンピュータ10に接続されて、印刷が可能なプリンタ装置のうち、印刷を行いたいプリンタ装置を選択して印刷命令を発行する。この印刷命令には印刷部数の指定や両面印刷を行うかどうかの指定、カラーかモノクロかの指定、拡大,縮小率の指定、用紙のサイズ指定や、1枚の用紙に複数のページをまとめて印刷する集約印刷を行うか、そうでないかの指定、印刷動作をするときに速度を優先するか、画質を優先するか、またはコストを優先するかの指定など各種の印刷モードが指定される。なお、ホストコンピュータ10とプリンタコントローラ1が接続される形態は、1対1で接続されている場合や、ネットワークを介して接続されている場合などがある。使用者により印刷命令が発行されると、使用者から指定された各種モードを満足するように、ホストコンピュータ10内部に記憶されているプリンタドライバ11と呼ばれるソフトウェアにより接続されているプリンタコントローラ1が解読できるコードに変換してプリンタコントローラ1に変換した画像データのコードを出力する。
【0023】プリンタコントローラ1は、ネットワークや各種インターフェースにて構成されるホストインタフェース3によりホストコンピュータ10からの画像データの受信を開始する。ホストインタフェース3は画像データの受信が始まると、CPU4に対してインタラプトを発生させて印刷命令が発行されたことを知らせるとともに、受信した画像データをRAM6にバッファリングして一時的に記憶させる。CPU4は受信してRAM6にバッファリングした画像データをプリンタエンジン2にて印刷が可能なようにするため、RAM6にイメージ展開してコード情報として受信された画像をビットマップ情報に変換して記憶させていく。但しその際には、接続されるプリンタエンジン2の種類によって、多値で印刷が可能なプリンタエンジンの場合には多値にてイメージ展開し、2値のみ印刷が可能なプリンタエンジンの場合には2値にてイメージ展開を行う。また、RAM6の空き容量等を考慮して適宜イメージ展開した画像データを圧縮させて記憶させる。
【0024】CPU4によりホストコンピュータ10から送られてきた全ての画像データがビットマップイメージとしてRAM6にイメージ展開された時点、複数ページに渡る画像データの場合には、1ページ目の画像データのイメージ展開が完了した時点で、CPU4はビデオDMAコントローラ7にビデオDMA開始アドレス、転送バイト数、階調数等のビデオDMAパラメータをセットする。さらにCPU4は接続されているプリンタエンジン2の状態を確認して、プリンタエンジン2が印刷可能となった時点で、ビデオDMAコントローラ7にビデオDMA動作開始命令を発行し、プリンタエンジン2に印刷動作を開始させる。ビデオDMA動作開始命令が発行されると、ビデオDMAコントローラ7はプリンタエンジン2からエンジンインタフェース8を通して入力された主走査方向の同期信号LSYNCと副走査方向の同期信号FGATEといったビデオ制御信号線にしたがって画像データをエンジンインタフェース8に出力し、プリンタエンジン2で印刷を実行させる。この印刷動作が完了すると、プリンタコントローラ1は再びアイドル状態に復帰し、再びホストコンピュータ10からの印刷命令がきた時点で印刷を行う。
【0025】また、用紙ジャムなどのエラーが発生しなかった場合には、印刷動作が完了するとCPU4はNVRAM9内のトータルカウント値が書かれているアドレスの値を読み出し、その値に+1した値を上書きすることにより、カウントアップさせる。同時に拡張NVRAMモジュール12には、NVRAM9よりも詳細なカウント情報を上書きする。」

カ 「【0026】また、利用者制限する際に、CPU4は拡張NVRAMモジュール12のアドレスマップ13にあらかじめ登録されている部門であるかどうかの認証を行い、登録されている場合にのみ印刷を許可して印刷動作を行う。また、印刷が実行された場合には、アドレスマップ13のうち該当する項目の印刷枚数のデータを読み込み、+1をした値を再度書き込むことによりカウントアップを行う。この際、カラー印刷を行った場合には、現像した色成分に対して全てカウントアップを行う。例えばフルカラー印刷を行った場合には、CMYKの各現像色のカウントアップを行う。また、利用者制限の管理方法として、月にカラー印刷は何枚まで、モノカラー印刷は何枚までといったある期間内での印刷枚数の上限値を設定して管理する方式もある。この場合、アドレスマップ13をトータルのカウンタ情報と、ある期間内例えば、月毎のカウンタ情報との2種類を用意して、印刷実行時には、その両者をカウントアップさせて対象となる部門(個人)が、あらかじめ決められた上限値を越えた場合には印刷を制限する。さらに、拡張NVRAMモジュール12に登録されたカウンタ情報により、各部門への課金管理などが可能になる。課金管理の方法としては、例えば印刷枚数の応じて単純に課金する場合や、カラー印刷の場合には、その現像色それぞれの印刷した枚数により課金する方法など契約状況により多岐にわたる。この場合もアドレスマップ13を用いることによって印刷枚数の管理が行えるため、どのような課金方式でも実現することができる。また、拡張NVRAMモジュール12内の情報には、モノクロ及びカラープリンタの両者とも現像色単位での印刷枚数が管理されているため、印刷時に使用するトナーやインクといった消耗品が消費されてなくなる時期を推定することもできる。但し、この場合、印刷枚数のみの管理となるため、印刷した画像データの濃度やトナー又はインクの使用量により消耗頻度は変動するため、あくまで消費される目安が得られるだけである。しかし、ある程度の目安が得られる場合には、プリンタ管理者は、次回以降に補充するトナーやインクなどの消耗品をあらかじめ調達する目安が得られるため、プリンタ管理者の管理業務をサポートすることができる。
【0027】また、例えばフルカラー印刷の場合には、CMYKの全色のカウントデータをカウントアップすればよいが、CMYKそれぞれの単色印刷の場合には、カウントアップはその現像色のみ+1ずつカウントアップをする。また、RGBといったCMYKのうちの2色を混合して印刷が行える場合には、使用した現像色のみの値をそれぞれ+1カウントアップする。また、CMYKのうち3色の混合の場合も同様に使用した現像色のみの値をそれぞれ+1カウントアップを行う。このようにカウントアップすることにより、実際に使用した状態に即した精度の良い課金管理を行うことができる。」

キ 「【0028】上記実施例は拡張NVRAMモジュール12を使用して各部門や個人毎の印刷枚数の管理や利用者制限,課金管理等を行った場合について説明したが、図3のブロック図に示すように、不揮発性メモリとしてハードディスク(HDD)14を使用して各種管理を行うようにしても良い。このようにHDD14を使用と、HDD14は一般的に半導体メモリとしてのNVRAM9と比較すると、非常に大容量、すなわち半導体メモリとしてのNVRAM9が数KB?数10KBであるのに対してHDD14はGBのオーダであるため、アドレスマップ13の部門数を非常に多く格納することができる。例えば、大規模な事業所などに使用する場合には、管理する部門数も飛躍的に多く必要であるため、数10KBでは容量が不足する場合が有るが、HDD14を使用することにより、ほぼ無限大といっていい部門数の管理を行うことができる。
【0029】但し、HDD14は半導体メモリ素子に比べてアクセス速度が非常に遅く、例えばSRAMのアクセススピードは数10nsに対して、EEPROMは100ns程度に対してHDD14は数μs?数10μs程度であるため、大容量のカウンタデータの記憶時には非常に役立つが、高速機のようにカウントアップするタイミングが非常に短いプロダクトの場合には、管理するパラメータが多いと書き込み速度が間に合わない場合が存在する。そこで、図4のブロック図に示すように、拡張NVRAMモジュール12とHDD14の両方をプリンタコントローラ1に設けると良い。このように拡張NVRAMモジュール12とHDD14の両方をプリンタコントローラ1に設けることにより、非常に高速にカウントアップを行い、かつ、非常に大容量のカウンタパラメータでも記憶することができる。」

ク 「【0033】
【発明の効果】この発明は以上説明したように、第1の不揮発性のランダムアクセスメモリにはトータル印刷回数を記憶させ、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには第1の不揮発性のランダムアクセスメモリよりも多くのカテゴリのカウンタ情報を記憶させるようにしたから、1台のプリンタ装置を複数のメンバーや部門,グループで共有して使用する際に、個人や部門毎の印刷枚数や印刷ページ数の管理や利用者制限または部門毎の印刷枚数を集計して課金管理を容易に行うことができる。また、従来から使用されてきたソフトウェアとの共通化が容易であり、システム構成が簡素化できて開発コストを低減させることができる。
【0034】また、プリンタコントローラに接続されるプリンタエンジンには、複数の色により印刷が可能なカラープリンタエンジンを使用し、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには印刷時に使用した色成分毎のカウンタ情報を記憶させることにより、利用者や利用部門がカラープリントの使用比率や各色成分の使用統計を取ることや、現像色がフルカラーではなく使用するトナーやインクが2色又は3色だけの場合に、使用した現像色毎の課金管理を行うことにより、より正確な課金管理を行うことができるとともに、それぞれの使用枚数値によりトナーやインク等の消耗品がいつ補充する必要があるかを知ることが可能となり、ユーザやプリンタ管理者の機器管理を容易にさせることができる。
【0035】さらに、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには複数の使用者,グループ毎に印刷した枚数を記憶させることにより、プリンタ管理者が各部門やグループの課金管理を容易に行うことができる。
【0036】また、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリbにハードディスクを使用することにより、大規模な事業所など多くの部門にて多くのアプリケーションを使用する場合であっても、非常に多くの部門数を記憶させることができ、より機能を向上させることができる。」

ケ 上記アないしクから、引用例1には、
「プリンタコントローラとプリンタエンジンとを有し、ホストコンピュータにより作成された文書や画像を印刷するプリンタ装置であって、
前記プリンタコントローラは、ホストインタフェースと、装置全体の動作を制御するCPUと、各種制御プログラムを記憶したROMと、CPUのワークメモリや画像メモリとして使用するRAMと、ビデオDMAコントローラと、エンジンインタフェース及び各種印刷条件等が設定され、かつトータルの印刷枚数のカウント値を記憶させて管理しているNVRAMを有しており、
ホストコンピュータにより作成した画像等を印刷するとき、ホストコンピュータが印刷を行うプリンタ装置を指定して、作成した画像の印刷命令を出すと、ホストコンピュータでは、接続されたプリンタ装置にあったプリンタドライバーソフトにより、画像データを変換し、接続先のプリンタ装置の前記ホストインタフェースに該画像データを出力し、該ホストインタフェースで印刷する画像データの受信が開始すると、前記CPUが送られてきた画像データをRAMにイメージ描画・展開し、その後、前記プリンタエンジンに印刷起動命令を出して印刷を開始するとともに、前記プリンタエンジンでは、前記NVRAMに設定されているデフォルトで給紙する給紙ユニットの設定や、プリンタ装置のシリアル番号の設定、プリンタが印刷したトータルの印刷枚数の設定値や、あるいは印刷した際の用紙ジャム回数などのエラーの発生回数等を含む各種設定に従って印刷画像を作成し出力するプリンタ装置において、
1つのプリンタ装置を複数の人や部門、グループにて共有して使用する際のコインラックやカードリーダによる利用者制限を行うための設定、カラーレーザプリンタ装置のユーザによりモノクロの印刷は利用可能とするがカラー印刷の利用制限をして各印刷色毎の課金管理を行う場合などのための各色成分毎のカウンタ情報、どの用紙サイズでそれぞれ何枚印刷されているか、どのような紙種例えば普通紙や再生紙やOHO又は厚紙等で印刷が何枚されているかや、各エミュレーションが何枚印刷されているか等の管理、複写機能やスキャナ機能の場合にも用紙サイズ毎にどの部門が何枚使用しているかの管理、ファクシミリ機能の場合は、それに加えて、各個人や部門毎にどの相手先と送受信したかの管理に応えるためには、電源遮断時においてもプリンタシステムが記憶しておかなければならないこれらの設定の情報が非常に多くなるため、より大容量の不揮発性メモリが必要であるので、
前記NVRAM(第1の不揮発性のランダムアクセスメモリ)とは異なった情報を記憶させる着脱自在な第2のランダムアクセスメモリである拡張NVRAM又はハードディスクを備え、第1の不揮発性のランダムアクセスメモリにはトータル印刷回数(枚数)を記憶させ、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには第1の不揮発性のランダムアクセスメモリよりも多くのカテゴリのカウンタ情報を記憶させるようにしたプリンタ装置。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

(2)当審拒絶理由で引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭64-86164号公報(以下「引用例2」という。)」には、図とともに次の事項が記載されている。(審決注:丸付数字は便宜上[丸1]などと表記した。)
ア 「2.特許請求の範囲
1.携帯可能なカードの読取手段と、
暗証番号を入力するためのキースイッチと、
無条件で記録可能な状態とする第1のモードと、規定のカードが読取手段にセットされたとき記録可能な状態にする第2のモードと、キースイッチから所定の暗証番号が入力されたとき記録可能な状態とする第3のモードの少なくとも3つのモードから1つのモードを選択するモード選択手段とを具備することを特徴とする記録装置。
2.携帯可能なカードはICカードであることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の記録装置。
3.モード選択手段は、規定のカードあるいは所定の暗証番号が入力されたとき記録可能な状態とする第4のモードを選択可能であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の記録装置。」(1頁左下欄4?20行)

イ 「「産業上の利用分野」
本発明は複写機、ファクシミリ装置、プリンタ等の画情報の記録を行うための記録装置に係わり、特に管理者等が装置の使用者等を制限することのできる記録装置に関する。」(1頁右下欄10?14行)

ウ 「「従来の技術」
複写機を例にとって説明すると、近年、その機能を高度化させた製品の開発が活発に行われてきている。例えば原稿の複写倍率についてみると、等倍の複写だけを行う複写機の他に幾種類かの倍率を選択できるものが登場し、更に連続的に倍率を変化できる複写機も登場している。現像についてみても、1種類のトナーを用いていわゆる白黒で画像の再現を行う複写機の他に、2種類以上のトナーを用いて多色記録や記録を行う色を選択することのできる複写機が登場している。原稿の取り扱いについて見てみると、原稿を自動的に取り替える装置の付いた複写機が登場したり、製本原稿の見開き2ページを原稿自体を動かさずに1ページずつ順に複写していく複写機も登場している。
このような高機能の複写機は、一般にパーソナルユースとされている簡易な複写機と異なり、比較的小さな部署同士で共同して管理することが多い。このような場合には、複写機に関する経費をこれらの部署が共働で管理することになる。
このため、従来ではコピー枚数の管理を行う特別の装置を複写機にセットして使用することがあった。このような複写機では、各部署にそれぞれの部署専用の磁気カードを配付しておく。そして、磁気カードを装置にセットしないとコピーがとれないようにしておく。磁気カードを使用してコピーをとると、装置はどの部署のカードが使用されたかの判別を行い、部署間で経費の管理ができるようなデータを記憶することになる。
「発明が解決しようとする問題点」
ところがこのような複写システムでは、次のような問題点があった。
(i)複写機を共同管理する場合には、前記した特別の装置が必要であり、これを購入することになるが、その複写機を1つの部署が専用で使用するようになると、その特別の装置が無駄となった。
(ii)顧客に必要な書類のコピーを自由に採らせたりするように、特定の時間だけその複写機の使用を管理しないようにするような場合、一々特別の装置を取り外したり取りつけたりする手間が生じ、このような臨機応変な措置を採りにくかった。従って、このような例の場合にも顧客にカードを貸与するとか担当者が付き添うといったこと必要をとした。
そこで本発明の目的は、管理者等によって記録装置の管理形態を容易に変化させることができる記録装置を提供することにある。
「問題点を解決するための手段」
本発明では第1図に原理的に示すように、
(i)ICカード等の携帯可能なカードの読取手段11と、(ii)暗証番号を入力するためのテンキー等のキースイッチ12と、(iii)無条件で記録可能な状態とする第1のモードと、規定のカードが読取手段にセットされたとき記録可能な状態にする第2のモードと、キースイッチから所定の暗証番号が入力されたとき記録可能な状態とする第3のモードの少なくとも3つのモードから1つのモードを選択するモード選択手段13とを記録装置に具備させる。
モード選択手段13は、規定のカードあるいは所定の暗証番号が入力されたとき記録可能な状態とする第4のモードを選択できるようなものであってもよいし、更に他のモードを選択できるものであってもよい。また、カードあるいは暗証番号によってコピー等が可能になるばかりでなく、カードにセットされた情報の種類や暗証番号の内容によって、実行することのできる機能を差別してもよい。
本発明によれば、例えば複写機の管理者がモードを自在に設定することができるので、その記録装置が記録可能となる状態を臨機応変に変化させることができる。」(1頁右下欄15行?2頁右下欄7行)

エ 「(1)複写機のシステム構成
第2図は本発明の一実施例における複写機のシステム構成を表わしたものである。
この図に示すように本実施例の複写機は、最も基本的な構成としてのベースマシン21に所望の付加装置を取りつけることによって実現される。ここでベースマシンとは、1段の供給トレイとマニュアルフィード用のトレイを備え、プラテンガラス上に原稿をマニュアルでセットしてコピーをとることのできる装置である。このベースマシンには、次のような付加装置を取りつけることができる。
(1)ICカード装置22;
ICカード装置22はICカードを用いて必要なデータをベースマシン21に供給したり、反対にベースマシン21からICカードにデータを書き込むときに使用する装置である。本実施例で複写機を第2のモードに設定したときには、所定のICカードをICカード装置22にセットしなければコピー作業を行うことができない。また第4のモードにセットした場合には、このようなICカードをICカード装置22にセットするか、後に説明するテンキーから所定の暗証番号を入力しなければ、コピー作業を行うことができない。
なお、この複写機で第1のモードとは、複写機が工場から出荷されたときの初期モードであり、ICカードを用意したり暗証番号を入力することなくコピー作業を開始させることのできるモードである。また第3のモードとは、テンキーから所定の暗証番号を入力したときのみコピー作業を開始させることのできるモードである。このように、この複写機では第1?第4の4種類のモードを選択することができ、このようなモード選択は、複写機の管理を一任された役職者(管理者)が、自己に用意された特別のICカードをICカード装置22にセットし、テンキーから特別の暗証番号を入力することによって初めて可能となるようになっている。モード変更作業の実際については後述する。
…略…
ところで、本実施例のICカード装置22に使用するICカードはISOタイプのインターフェイスを持ち、メモリ容量は64キロバイトである。ICカードを使用することにより、各種付加装置のプログラムやその他必要なデータをカードに格納することができ、複写機の自動化および多機能化に充分対処することができる。またICカードにその所有者の希望する複写条件(コピー用紙のサイズ、コピー濃度、コピー枚数、縮倍率等の組み合わせ)を記憶させておくことにより、複雑な機能を有する複写機であってもこれらの所有者に合った操作方法を実現することができ、だれもが簡単に、また間違いなく複写機を操作することができるようになる。」(3頁右上欄6行?4頁左上欄5行)

オ 「(2)ソフトウェアの構成
(2-1)ソフトウェアの組み合わせの長所
ところで、以上説明した複写機のシステム構成は、この実施例の複写機のソフトウェアの組み合わせとしても説明することができる。すなわち、この複写機は各種の付加装置を取りつけることができるのに対応して、ソフトウェアについてもこれら各付加装置に対応したシステム構成を採ることができるようになっている。
このような構成を採用した理由の1つは、
(i)これらの付加装置すべての動作制御プログラムを仮にベースマシン21に用意するとすれば、このために必要とするメモリの容量が膨大になってしまうことによる。また、(ii)将来新しい付加装置を開発したり、現在の付加装置の改良を行った場合に、ベースマシン21内のROM(リード・オンリ・メモリ)の交換や増設を行うことなく、これらの付加装置を活用することができるようにするためである。
このためICカードには、各種記録条件を登録した複数の記憶領域M_(1)?M_(N)を有する記録条件指定領域と、付加的なプログラムを格納するプログラム記憶領域とが設けられている。そしてこれに対応してベースマシン21には複写機の基本部分を制御するための基本記憶領域と、ICカードのプログラム記憶領域から取り込まれたプログラムを記憶する付加記憶領域と、ICカードの記録条件指定領域から取り込まれた記録条件を記憶する記録条件記憶領域とを配置したメモリが存在する。付加記憶領域には、ADF23の制御プログラム、DADF24の制御プログラム、コンソールパネル28の制御プログラム等の各種プログラムが格納されるようになっている。そして、ベースマシン21に所定の付加装置を取りつけた状態でICカードをICカード装置22にセットすると、コピー作業に必要なプログラムが読み出され、付加記憶領域にロードされるようになっている。このロードされたプログラムは、基本記憶領域に書き込まれたプログラムと共働して、あるいはこのプログラムに対して優先的な地位をもってコピ-作業の制御を行う。
(2-2)差別化の例
このようにこの実施例の複写機はICカードのプログラム記憶領域に格納されたプログラムが複写機の機能を左右することができ、記録条件指定領域では複写機本体の基本記憶領域およびICカードのプログラム記憶領域によって設定された機能に対する記録条件を指定することになる。従って、ICカードに格納されるプログラムをカード単位で変化させることで、複写機の使用に対する差別化が可能になる。これについて、分かり易い例を幾つか挙げて説明する。
第1の例として、雑居ビルに複数の会社が共同使用する複写機が備えられていたり、一つの会社内や工場内であっても異なった部門間で共同使用する複写機が備えられている場合を説明する。後者の共同使用は、予算管理上で必要となるものであり、従来ではコピーライザ等の機器を用いて各部門の使用管理を行っていた。
この複写機は、第2図で示したベースマシン21にICカード装置22、DADF24、ソータ38、コンソールパネル28、第2?第5の供給トレイ31-2?31-5、および中間トレイ33を備えた比較的高度なシステム構成の複写機であるとする。共同使用者の中には、DADF24やソータ38を必要とする人あるいは部門もあれば、なんら付加装置を必要としない人または部門もある。
これら使用態様の異なる複数の人または部門が複写機の費用負担を各自のコピーボリュームからだけで決定しようとすれば、低ボリュームのコピーしかとらない人または部門は、各種付加装置が装備された複写機の導入に反対してしまい、複写機を高度に使用しようとする人または部門との間の調整が困難となってしまう。
このような場合には、各人または各部門の使用態様に応じたICカードを用意しておき、高度な機能を望む人あるいは部門ほど基本的な費用を多く負担すると共に、多くの機能を活用することができるようにしておけばよい。例えば最も高度なICカードの所有者は、そのICカードをICカード装置22にセットした状態で複写機を動作させることにより、DADF24、ソータ38、第2?第5の供給トレイ31-2?31-5、および中間トレイ33を自在にベースマシン21に取りつけて使用することができ、事務効率も向上させることができる。これに対してコピー用紙のソーティングを必要としない人は、ソーティングについてのプログラムを欠くICカードをセットして、ソータ38の最上ビンを排紙トレイとして使用したり、ソータ38の代わりに排出トレイ37が取り付けられた状態の複写機でコピー作業を行い、複写機に関する経費を節減することができる。
第2の例として、コピー業者がICカードでセルフコピーサービス店を営む場合を説明する。
店の中には、複数台の複写機が配置されており、それぞれにICカード装置が取りつけられている。客はサービス態様に応じたICカードを請求し、これを自分の希望する複写機にセットしてセルフサービスでコピーをとる。複写機に不慣れな客は、操作説明の表示機能をプログラムとして備えたICカードを請求し、これをセットすることでコンソールパネル28に各種操作情報の表示を可能とし、コピー作業を間違いなく実行することができる。DADF24の使用の可否や、多色記録の実行の可否等も貸与するICカードによって決定することができ、また使用機種の制限も可能となって料金あるいは複写機能にあった客の管理およびそれぞれの複写機の用途別管理が可能になる。更にコピー枚数や使用したコピー用紙のサイズ等のコピー作業の実態をICカードに書き込むことができるので、料金の請求が容易になり、常連客に対するコピー料金の割り引き等の細かなサービスも可能になる。
第3の例として、特定ユーザ向けのプログラムを格納したICカードを用いたサービスについて説明する。例えば特許事務所では写真製版により縮小された特許公報類を検討するときに原寸と同一のコピーをとる必要から200%という比較的大きな拡大率でコピーをとる仕事がある。また官庁に提出する図面を作成する際に、その要請に応えるために元の図面を小刻みに縮小あるいは拡大する作業が行われる。また、市役所あるいは区役所等の住民票のコピーを行う部門では、請求の対象外となる人に関する記載箇所や個人のプライバシを保護するために秘密にすべき箇所の画情報を削除するようにして謄本や抄本を作成する。
このように使用者(ユーザ)によっては、複写機を特殊な使用態様で利用する要求がある。このような要求にすべて満足するように複写機の機能を設定すると、コンソールパネルが複雑となり、また複写機内部のROMが大型化してしまう。そこで特定ユーザ別にICカードを用意し、これをセットさせることで、あるいはそのICカードに適したコンソールパネル等の付加装置を適宜複写機本体に付加することで、そのユーザに最も適する機能を持った複写機を実現することができる。
例えば特許事務所の例では、専用のICカードを購入することで、固定倍率として通常の数種類の縮倍率の他に200%の縮倍率を簡単に選択できるようになる。また微調整を必要とする範囲で例えば1%刻みで縮倍率を設定することができるようになる。これらのとき、必要であればそれ専用のコンソールパネルをベースマシン21に取り付け、操作の便宜を図ることができる。
更に住民票の発行部門では、テンキー等のキーを操作することによって液晶表示部等のディスプレイに住民票の種類や削除すべき欄や項目を指示することができるようになり、この後スタートボタンを押すことでオリジナルの所望の範囲のみがコピーされたり、必要な部分のみが編集されて記録されるようになる。
以上説明したような複写機の使用における差別化は、記憶媒体としてのICカード131の表面になんらかの表示を行うことで明瞭となり、また間違って他人のカードを所持するという危険がなくなる。また他人がICカード131のプログラムを改変してより高度な機能を持たせたとしても、ICカードの外観との関係でその不正を発見することが可能である。このために、ICカード131の表面はその機能との関係で、金、銀、赤、青等の色で塗り別けることが好ましい。」(5頁左下欄1行?7頁左下欄2行)

カ 「第7図はこの実施例の複写機で中枢的な役割を果たすメインCPUを中心とした回路構成を更に具体的に表わしたものである。
なお、複写機をCPUあるいはいわゆるマイクロコンピュータ等の制御装置で制御することはゼロックス社のシカンダ・シェイク(SIKANDAR SHEIKH)によるIEEEの論文「A Programmable Digital Control System for Copying Machines」IEEE Trans.Com,Vol IECI-21,No.1,Feb.1974および特開昭50-62644号公報「電子写真複写法およびその装置」等を起点とする論文や公報で周知となっている。他のCPUモジュールもメインCPUと同様に、ワンチップCPU、ROM、RAM、I/O等からなる構成を取っていることははいうまでもない。
(イ)メインCPU121は、第6図でも一部説明したようにシリアルな通信ライン123、124を通じて次の各部と接続されている。
(i)DADF24。
(ii)ソータ38。
(iii)液晶表示部112。
(iv)ICカード・エディタパッド用インタフェース(I・Eインタフェース)130;ICカード装置22に配置されたインタフェース回路であり、ICカード131やエディタパッド132を複写機本体に接続したときこれらとメインCPU121側とでデータの授受を行わせる。
(v)インターイメージランプコントローラ157。
(vi)第4、第5の供給トレイ31-4、31-5、中間トレイ33等を制御するトレイ制御部133。
(ロ)また、このメインCPU121はA/D変換器を内蔵しており、アナログデータライン134を通じて次の各部と接続されている。このようなCPUとしては、例えば日本電気株式会社のμPD7810CW、μPD7811CWや富士通株式会社のMB89713X等の8ビットワンチップCPUを挙げることができる。
(i)光量センサ135;露光ランプ56(第4図)の光量を検知してその制御を行う際に使用されるセンサである。
(ii)温度センサ群136;後に説明する定着温度コントロール用のソフト・タッチ・センサ等のセンサである。
(iii)用紙サイズセンサ群137;
供給トレイ31等に収容される用紙のサイズを検知するセンサである。本実施例の複写機のシステム構成によると、コピー用紙60を最大5種類のトレイから送り出すことができる。従って、1つの供給トレイに用紙サイズの検知用に4つのセンサを配置したとし、この処理にディジタルデータを用いるとすると、1つのトレイから4ビットのディジタルデータをメインCPU121に送出する必要が生じ、合計で最大20個のインプット用のポートが必要になるばかりでなく、コネクタの数やハーネスを構成するケーブルの数が多くなってしまう。これは、コストや小型化の要請および信頼性の観点から好ましくない。
そこで本実施例の複写機では、1つのトレイごとに4つのセンサの状態によって特定される状態をアナログデータとして送出することにする。メインCPU121側では送られてきたアナログデータをディジタルデータに変換し、それぞれのトレイに収容されているコピー用紙60のサイズを最大16種類まで判別することになる。
(ハ)更にメインCPU121はリセット回路138で暴走時やイニシャライズ時にリセットされる他、バスライン121Aを介して次の各部と接続されている。
(i)キーボード・デイスプレイLSI(大規模集積回路)121B;コンソールパネル28との間でデータの仲介を行う回路である。
(ii)タイマ・カウンタLSI121C;メインモータ164やキャリジモータ171の駆動を制御する回路である。
(iii)ROM121D;56Kバイトの容量を持ち、複写機の基本的な部分についての制御情報等を格納したリード・オンリ・メモリである。
(iv)RAM121E;最小の複写機システムではベースマシン21に56KバイトのRAM(ランダム・アクセス・メモリ)121Eが用意されているが、付加装置の取り付けの可能性によってRAM121Eの増設が行われる。この実施例の複写機では112Kバイトの容量をもつRAM121Eが使用される。このRAM121Eには、ICカード装置22を経由してICカードの複数枚分のデータが書き込まれる他、複写機の制御時にも必要なデータが一時的に格納される。ICカードから書き込まれるデータの主要なものは、各付加装置やそれらのインターフェイス回路に関する制御用のプログラムである。
RAM121Eには前述した不揮発性メモリ(NVM)121Fが接続されており、複写機の電源がオフとなった場合でも必要なデータを保存できるようになっている。
ここで不揮発性メモリ(NVM)121Fに格納される必要なデータとしては、例えば(a)コピー用紙60のレジストレーションを調整するためのセットアップ値や、(b)後に詳しく説明するインターイメージランプによる画像の先端部分の消込み量、(c)複写倍率を等倍に設定した場合における縦および横の倍率の微調整値、(d)綴代用の空白を設けてコピーを行う場合の綴代量のように複写機の生産ラインで行われる各パラメータの調整値や、(e)各供給トレイ31等のフィードカウンタの使用実績値等のように複写機の使用状態を把握するためのデータ等を挙げることができる。
(v)第1のI/Oコントローラ121G;フィルタ回路121Hを介して各種データの入力を行い、ドライバ回路121Iを介して各種部品の駆動を行う入出力コントローラである。ここでフィルタ回路121Hには、例えば各種スイッチやセンサが接続されている。またドライバ回路121Iには、後に説明するデベソレノイド等のソレノイドや供給トレイ31-1?31-5内の同じく後に説明するクラッチ233等が接続されている。
(vi)第2のI/Oコントローラ121J;フィルタ回路121Kを介して各種データの入力を行い、ドライバ回路121Lを介して各種部品の駆動を行う入出力コントローラである。ここでフィルタ回路121Kには、例えば各種スイッチやセンサが接続されている。またドライバ回路121Lは周知のD/A (アナログ-ディジタル)変換器やPWM(パルス幅変換器)を具備しており、プログラムの処理に従って、後に説明する現像装置59のデベバイアスの設定やチャージコロトロン52等の電流値の設定を行うようになっている。」(13頁右下欄10行?15頁右上欄20行)

キ 「(7)ICカードによるデータの読み込み
(7-1)ICカードの利点
さて、本実施例では第2および第4のモードでコピー作業を開始させる必要条件としての他に、複写機との間でデータの交換を行う記憶媒体としてICカード131を使用することにした。記憶媒体としては、カード状に形成することのできるものに限定しても代表的なものに(i)磁気カード、(ii)ICカードおよび(iii)光カードがある。
このうち(i)磁気カードは磁気ストライプに情報を記憶するもので、主として銀行のキャッシュカードや各種クレジットカードとして用いられているものである。この磁気カードは一般に72バイトの記憶容量を持ち、72文字の記憶が可能である。磁気ヘッドを用いて情報の読み書きを行うことができ、反復使用が可能である。カード自体の価格が大変安いが、カード上での演算ができないことと、記憶容量が大変に少ないことが欠点として挙げられている。
これに対して(ii)ICカードは、カード内にCPU(中央処理装置)とメモリを配置したもので、記憶容量が例えば2.8Kバイトと大変多く数百万程度の文字を記憶することができる。また、データの読み書きと反復使用が可能であり、救急医療カードやショッピングカード等への利用が期待されている。カード上での演算も可能であるが、製造単価が高いという欠点がある。
最後に(iii)光カードは写真製版法で情報を書き込み、これを光センサを用いて読みだそうとするものであり、記憶容量は例えば400Kバイトから2M(メガ)バイトと非常に大きい。製造価格は量産時にかなり安くなるが、カード上での演算や情報の追記が不可能であり、現状では書籍や辞書、電話帳、教育用ソフト等の用途が期待されている。
本発明で記憶媒体として要求されるのは、コピー作業を開始させる条件という点について考察するとICカード装置22にセットされて情報の読み出しを行なえるものである。従って、3つの媒体共、使用可能である。本実施例では磁気カードと較べて記憶容量が大きく、かつセキュリティでも格段に優れているICカードを記憶媒体として複写機に使用することにしている。
なお、本実施例の複写機に適用することのできる他の記憶媒体としては、3.5インチ等のフロッピーディスクや磁気テープあるいは磁気バブルメモリ等も存在する。
(7-2)ICカード装置の構成
第21図は、ICカード装置におけるICカードの接続部分の回路構成の要部を表わしたものである。ICカード装置22は第6図に示したようにカード用CPU129を備えている。カード用CPU129は4Kバイトの記憶容量をもつRAM511と、同じく4Kバイトの記憶容量をもつROM512を備えている。ここでROM512はICカード装置22の制御を行うためのプログラムを記憶したメモリであり、RAM511は各種データを一時的に記憶するための作業用メモリである。
カード用CPU129は2つのシリアルパラレル変換器513、514に接続されている。第1のシリアルパラレル変換器513はICカード装置22にセットされるICカード131との間でシリアルデータの送受を行い、カード用CPU129との間でパラレルデータの送受を行うようになっている。第2のシリアルパラレル変換器514は、ベースマシン21との間でシリアルデータの送受を行い、シリアルパラレル変換あるいはパラレルシリアル変換を行ってカード用CPU129との間でパラレルデータの送受を行う。
ICカード装置22内には2つのクロック発生回路515、516が用意されており、第1のクロック発生回路515は、10MHzのクロック信号をICカード131に供給する。また、第2のクロック発生回路516は、7.3728MHzのクロック信号をカード用CPU129に供給する。
カード用CPU129は出力ポート518を介してICカードに電圧V_(O)およびV_(PP)を供給し、またリセット信号RSTの供給も行う。また入力ポート519を介してICカード131からインサート信号INSおよびカード有り信号CARDの供給を受けるようになっている。
(7-3)データの読み込み
第22図は、第7図に対応したものでICカード131がICカード装置22にセットされる場合のデータの流れを表わしたものである。ICカード131をICカード装置22にセットすると、ベースマシン21はこれを検知し、所定のタイミングでデータの読み込みを開始する。このとき、19200BPS(ビット/秒)の転送速度でICカード131からICカード装置22にデータの転送が行われる。ICカード装置22ではこれを所定単位だけRAM511に格納した後、CRC方式によるデータのエラーチェックを行う。そして、転送されてきたデータに誤りがないときには、これを4800BPSの速度に変換し、シリアルデータとしてメインCPU121に大容量転送を行う。ここで大容量転送とは、メインCPU121がベースマシン21側の複写制御を行っていない状態で各付加装置との間のデータ交換を一時的に中断して、ICカード装置22との間でデータの転送に専念することをいう。
この大容量転送については、本特許出願人が昭和62年4月22日に「シリアル通信制御方法」という名称で出願した特願昭62-097440号に詳細な開示がある。
メインCPU121に送られたICカード131のプログラムは、RAM121Eに格納される。そしてBCC方式によるエラーチェックが行われた後、ROM121D内に格納されている所定のプログラムに沿って「使用可能」な状態にある付加装置に対する各種制御が行われることになる。
ROM121Dに格納されているプログラムには、ジョブ管理プログラム、タスク管理プログラム、入出力データ制御プログラム等がある。ここでジョブ管理プログラムとは、RAM121Eに格納されているプログラムのジョブ実行順序を管理するプログラムである。また、タスク管理プログラムとは、独立に実行可能な仕事の最小単位としてのタスクの生成と消滅を行うプログラムである。更に、入出力データ制御プログラムとは、ICカード131内にあるデータをRAM121E上に移動するためのプログラムである。ICカード131には、各種付加装置のプログラムの他にエディタパッド132によって読まれた座標データ等の各種データも格納することができる。このうち、各種付加装置のプログラムはRAM121Eまたは装置によっては不揮発性メモリ121F(第7図)に設けられたプログラム記憶領域に格納され、各種データはRAM121E(不揮発性メモリ121F)のデータ記憶領域に書き込まれることになる。
なお、以上ICカード131から複写機本体に対するデータの流れを説明したが、複写機本体に蓄えられたデータをICカード131に書き込む場合にもこれと同様な大容量転送が行われる。」(25頁右上欄1行?26頁右下欄19行)

ク 「(8)管理者によるモードの設定
それでは、次に本実施例で管理者がどのようにして各モードを設定するかの説明を行う。すでに説明したように、第1のモードは無条件でコピー作業を行うことのできるモードであり、第2のモードは所定のICカード131がICカード装置22にセットされた場合のみコピー作業を許すモードである。第3のモードは、テンキー80から所定の暗証番号が入力されたときのみコピー作業を許すモードである。第4のモードは、所定のICカード131がICカード装置22にセットされるか、テンキー80から予め設定された暗証番号が入力されたとき、すなわちいずれかの方法を満足したときにコピー作業を許すモードである。
第23図は、工場から出荷されオフィスに設置された初期状態の複写機を第2のモードに設定するための流れを表わしたものである。この初期状態で複写機が第1のモードに設定されているものとすれば、この図では第1のモードから第2のモードへのモード変換の作業を表わしているということになる。
さて、複写機の図示しない電源スイッチが投入されると、液晶表示部112には「コピーできます」という表示が行われ、スタートボタン117を押せば、コピー作業がいつでも開始される状態となる(ステップ[丸1])。もちろんこのためには、指定された供給トレイに用紙が収容されており、ジャム(紙づまり)が発生した場合にもこれが除去されているといったように、コピー作業を開始することのできる諸条件が具備されていることが前提となる。
この状態は第1のモードであり、このままではコピー作業の制限を行うことができない。モードの変更を行う管理者は、この状態でオーディトロン・ボタンという特別のボタンを押す。オーディトロン・ボタンは第3図に示したコンソールパネル28に独自に配置してもよいが、そうすると第3者に不用意に押され、モード変更の手順を解明されるおそれがある。そこで本実施例の複写機ではオールクリアボタン114と自動濃度調整スイッチ97(共に第5図)をオーディトロン・ボタンとして定義し、オールクリアボタン114を押し続けた状態で自動濃度調整スイッチ97を押すとオーディトロン・ボタンが押された状態になるようにした。複写機によっては、特別のICカード131をICカード装置22にセットした状態で所定のオーディトロン・ボタンを押すことで、より厳格に操作適格者をチェックすることができる。
このようにしてオーディトロン・ボタンが押されたら(ステップ[丸2])、液晶表示部112に「オーディトロンは使えません」という表示が行われる(ステップ[丸3])。この状態でテンキー80から所定の暗証番号を入力しないで(ステップ[丸4];N)6秒が経過したら(ステップ[丸5];Y)、複写機はステップ[丸1]に戻る。すなわち、この場合には管理者が複写機を各種操作するためのモード(管理者モード)に設定するための操作が成功しなかったことになる。
これに対してテンキー80から所定の暗証番号(ここでは“00001”)が入力されたら(ステップ[丸4];Y)、複写機は管理者モードに設定され、液晶表示部112に「ファンクション番号を選んで下さい」という表示が行われる(ステップ[丸6])。この状態で管理者は複写機の操作内容に応じてそれぞれ定められたファンクション番号を入力することになる。ここで複写機のモード設定を行うための番号を“99”とすると、操作者はテンキー80から数値“99”を入力する(ステップ[丸7])。すると、複写機は不揮発性メモリ121Fに書き込まれているデータを読み出し、その結果として現在設定されているモードの表示を行う。この場合には第1のモードに設定されているので液晶表示部112に「マシーン・モード=0」と表示が行われる(ステップ[丸8])。このときテンキー80から数値を入力すると、複写機はそれに対応するモードに設定される。すなわち数値“2”を入力すると、それが入力ミスでないことすなわち数値“0”および数値“5”以上が入力されなかったことが確認された後(ステップ[丸10])、変更後のモードが液晶表示部112に表示される。この例の場合には、「マシーン・モード=2」と表示が行われることになる(ステップ[丸11])。この時点で新たなモードを示すデータは不揮発性メモリ121Fに書き込まれている。従ってこの状態で複写機の電源がオフとなっても、複写機は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持する。
もし、管理者等が電源をオンにした状態に保持するする場合には、オールクリアボタン114を押せばよい(ステップ[丸12])。すると複写機は現在設定されているモードにおけるコピー作業開始のための条件を液晶表示部112に表示する。すなわちこの第2のモードでは、「カードを入れて下さい」という表示が行われる(ステップ[丸13])。なお、ステップ[丸10]で入力ミスがあった場合には、液晶表示部112に「その番号は登録されていません」というメツセージが3.5秒間表示される(ステップ[丸14])。そして、その後ステップ[丸6]に戻り、再度ファンクション番号の入力が促される。
以上、第1のモードから第2のモードへの変換について説明したが、他のモードへの変換も同様にして行われる。もちろん、他のモードに変換した場合に、更にこれをその他のモードに変換したり、第1のモード等に戻すこともできる。
第24図?第27図はこのようにして複写機が所定のモードに設定された場合における液晶表示部112の表示状態を表わしたものである。複写機が第1のモードに設定されている場合には、第24図に示すように「コピーできます」という表示が行われる。第2のモードに設定されている場合には、第25図に示すように「カードを入れて下さい」という表示が液晶表示部112で行われる。更に第3のモードに複写機が設定されている場合には、第26図に示すように「ユーザ番号を入力してAボタンを押して下さい」という表示が行われる。ここでユーザ番号とは、複写機を管理している各セクションに割り当てられている暗証番号である。またAボタンとは、先に説明したオーディトロン・ボタンをいう。最後に複写機が第4のモードに設定されている場合には、第27図に示すように「カードを入れるかユーザ番号を入力して下さい」という表示が液晶表示部112で行われることになる。」(26頁右下欄20行?28頁左下欄3行)

ケ 「(9)各モードによるコピー作業
(9-1)第2のモード
第28図は、複写機が第2のモードに設定された場合におけるコピー作業開始のための動作を説明するためのものである。すでに第23図および第25図で説明したように、第2のモードでは電源を投入して複写機がレディ状態となると、「コピーできます」という表示の代わりに「カードを入れて下さい」という表示が行われる(ステップ[丸1])。この状態でオペレータがICカード装置22に所定のICカード131を入れると(ステップ[丸2])、複写機はICカードからその暗証番号を読み出し、複写機の不揮発性メモリ121Fに格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別する。(ステップ[丸3])これらの暗証番号は、この複写機ではそれぞれ5桁に設定されている。
なお、部署側の管理が行われている複写機では、暗証番号が部署側に設定されており、更に同じ部署でも複写機の使用にランクを設けている場合がある。従って、暗証番号の一致判断は、複写機側に用意されている複数の暗証番号の1つに一致するかどうかの判別作業である。
暗証番号が一致しなければ(ステップ[丸4];N)、ICカード装置22からICカードが自動的に排出され(ステップ[丸5])、再び初期状態の表示(ステップ[丸1])が行われる。これに対して、暗証番号が一致していれば(ステップ[丸4];Y)、液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われる(ステップ[丸6])。そして、スタートボタン117が押されれば(ステップ[丸7];Y)、コピー作業が実行されることになる(ステップ[丸8])。このとき、暗証番号の種類によって規制された複写機能に対してはコピー作業を実行することができないことはもちろんである。
(9-2)第3のモード
第29図は複写機が第3のモードに設定された場合におけるコピー作業開始のための動作を説明するためのものである。この第3のモードでは電源を投入して複写機がレディ状態となると、「コピーできます」という表示の代わりに「ユーザ番号を入力してAボタンを押して下さい」という表示が行われる(ステップ[丸1])。この状態でオペレータがテンキー80を用いて所定の数値を入力しAボタンを押すと(ステップ[丸2])、複写機はその数値(暗証番号)が複写機の不揮発性メモリ121Fに格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別する。(ステップ[丸3])これらの暗証番号は、この複写機ではそれぞれ5桁に設定されている。
暗証番号が一致しなければ(ステップ[丸4];N)、RAM121Eの所定の記憶領域に初期的に書き込まれている数値“0”に数値“1”が加算される(ステップ[丸5])。そしてこの数値が“3”未満のこの状態では(ステップ[丸6];Y)、再び初期状態の表示(ステップ[丸1])が行われる。これにより、オペレータは再び暗証番号を入力する機会を与えられる。2度目に入力された暗証番号も一致しなければ(ステップ[丸4];N)、RAM121Eの前記した記憶領域に書き込まれている数値が更に+1が加算される。そして、ステップ[丸1]に戻る。
このようにして、オペレータは暗証番号の入力を3回だけ許されることになる。もし、3回目に入力した暗証番号も一致しなければ、前記した記憶領域に書き込まれだ数値が“3”以上となる。これと共に複写機は1分間ブザー音を鳴動させ(ステップ[丸7])、ステップ[丸1]に戻る。すなわち、暗証番号を知らない者がコピー作業をしようとしてテンキー80から数値を入力しても、4回目からはその度にブザー音が鳴動することになり、事実上暗証番号を探り当てることが不可能になる。
一方、入力した暗証番号が一致した場合には(ステップ[丸4];Y)、前記した記憶領域の数値が“0”にクリアされると共に、液晶表示部112に「コピーできます」という表示が行われる(ステップ[丸8])。そして、スタートボタン117が押されれば(ステップ[丸9];Y)、コピー作業が実行されることになる(ステップ[丸10])。
(9-3)第4のモード
第4のモードは、第2および第3のモードの組合わされた形なので、その詳細な説明は省略する。本実施例の複写機ではICカード131について複写機機能の差別化を行ったが、最低ランクのICカードによって実行される機能を、この第4のモードではテンキー80から入力された場合の機能と一致させることができる。このようにすることにより、比較的高度な地位をもったICカード131を所有する者は、カードを取り出すことなくコンソールパネル28の操作のみで比較的簡単なコピー作業を行い、高度なコピー作業についてはICカードでプログラムをロードしてその実行を行うといった効率的な操作が可能となる。
以上第1?第4のモードについて説明したが、この他、例えばICカードとテンキーの双方で暗証番号を二重に入力するモード等のモード設定が可能である。」(28頁左下欄4行?29頁左下欄18行)

コ 「「発明の効果」
このように本発明では、ICカード等の携帯可能な記録媒体と、テンキー等のキースイッチといった2種類の入力手段を用いて記録可能な状態への選択を行なえるようにしたので、安全性や使用の便宜といった各種状況を把握しながら記録装置を適切なモードに設定することができる。
また複数のモードから1つのモードを選択させてコピー作業を行わせることとしたので、記録装置の所属の変更等があってもその装置の性格を変えることができ、これにより記録装置の使用期間を延長することができて経済的である。」(32頁左上欄5?16行)

サ 上記アないしコから、引用例2には、
「複写機、プリンタ等の画情報の記録を行うための記録装置において、
特別の装置を記録装置にセットし、各部署にそれぞれの部署専用の磁気カードを配付し、磁気カードを特別の装置にセットしないと記録できないようにしておき、磁気カードを使用して記録をすると、特別の装置はどの部署のカードが使用されたかの判別を行い、部署間で経費の管理ができるようなデータを記憶するようにした従来の記録装置では、記録装置を1つの部署が専用で使用するようになると、その特別の装置が無駄となり、特定の時間だけその記録装置の使用を管理しないようにするような場合、一々特別の装置を取り外したり取りつけたりする手間が生じるので、管理者等によって記録装置の管理形態を容易に変化させることができる記録装置を提供することを目的として、
リード・オンリ・メモリ(ROM)、付加装置の取り付けの可能性によって増設が可能なRAMなどと接続されているメインCPUを有するベースマシンに、
液晶表示部と、
ICカードを用いて必要なデータを前記ベースマシンに供給したり、反対に前記ベースマシンからICカードにデータを書き込むときに使用する装置であるICカード装置と、
暗証番号などを入力するためのキースイッチと、
ICカードを用意したり暗証番号を入力することなく記録作業を開始させることのでき、無条件で記録可能な状態とする第1のモードと、所定のICカードをICカード装置にセットしなければ記録作業を行うことができず、規定のカードが読取手段にセットされたとき記録可能な状態にする第2のモードと、キースイッチから所定の暗証番号が入力されたとき記録可能な状態とする第3のモードの少なくとも3つのモードから1つのモードを選択するモード選択手段とを取り付け、
前記ICカード装置に使用するICカードは、CPU(中央処理装置)とメモリとインターフェイスを持ち、記憶容量が大きく記憶媒体として使用でき、かつセキュリティでも格段に優れていて、データの読み書きと反復使用が可能なものであって、
前記RAMを、前記ICカード装置を経由してICカードの複数枚分のデータが書き込まれる他、記録装置の制御時にも必要なデータが一時的に格納されるものとし、
前記RAMに不揮発性メモリ(NVM)を接続し、記録装置の使用状態を把握するためのデータ等の必要なデータを格納し、記録装置の電源がオフとなった場合でも必要なデータを保存できるようになし、
前記ICカード装置は、前記ICカードからインサート信号およびカード有り信号の供給を受けるようになっており、前記ICカード内にある各種データを前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込むことができるとともに、前記ベースマシンに蓄えられたデータを前記ICカードに書き込むこともでき、
記録装置が工場から出荷されたときの初期モードは前記第1のモードであり、電源スィッチが投入されると、前記液晶表示部に記録できる旨の表示が行われ、ここで記録装置を管理者モードに設定し、モード設定を行うための番号を入力すると、記録装置は前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込まれているデータを読み出し、その結果として現在設定されている第1のモードの表示を行い、前記キースイッチから第2のモードに対応する数値を入力すると、記録装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行い、この時点で新たなモードを示すデータは前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込まれており、この状態で記録装置の電源がオフとなっても、記録装置は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持するから、この第2のモードで、前記ICカード装置に所定のICカードを入れない状態で電源を投入して記録装置がレディ状態となると、「カードを入れて下さい」という表示が行われ、この状態でオペレータが前記ICカード装置に所定のICカードを入れると、記録装置はICカードからその暗証番号を読み出し、前記不揮発性メモリ(NVM)に格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別し、暗証番号が一致しなければ前記ICカード装置からICカードが自動的に排出され、再び初期状態の表示が行われ、これに対して、暗証番号が一致していれば、前記液晶表示部に記録できる旨の表示が行われるようになして、
ICカードを使用することにより、各種付加装置のプログラムやその他必要なデータをカードに格納することができ、記録装置の自動化および多機能化に充分対処することができ、ICカード等の携帯可能な記録媒体と、テンキー等のキースイッチといった2種類の入力手段を用いて記録可能な状態への選択を行なえるようにしたので、安全性や使用の便宜といった各種状況を把握しながら記録装置を適切なモードに設定することができ、また複数のモードから1つのモードを選択させることとしたので、記録装置の所属の変更等があってもその装置の性格を変えることができ、これにより記録装置の使用期間を延長することができるようにした記録装置。」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

4 引用発明1との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明1とを対比する。
ア 引用発明1の「プリンタ装置」、「着脱自在な第2のランダムアクセスメモリである拡張NVRAM又はハードディスク」、「カウンタ情報」、「記憶させる」、「各種印刷条件等が設定され、かつトータルの印刷枚数のカウント値を記憶させて管理している」及び「NVRAM(第1の不揮発性のランダムアクセスメモリ)」は、それぞれ、本願発明の「印刷装置」、「着脱可能な記憶部」、「装置情報」、「格納する」、「情報を格納する」及び「『不揮発性記憶部材で構成され』た『情報格納部』」に相当する。

イ 上記アからみて、本願発明と引用発明1とは、
「装置情報を格納する着脱可能な記憶部と、
不揮発性記憶部材で構成され、情報を格納する情報格納部とを備えた印刷装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記「情報」が、本願発明においては、「前記記憶部に装置情報を格納する設定がなされたことを示す」ものであるのに対して、引用発明1においては、設定された「各種印刷条件等」及び「トータルの印刷枚数のカウント値」の情報であり、そのような情報ではない点。

相違点2:
本願発明では「装置のエラー情報を装置外部に表示する表示部と、前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知し、また前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する装着管理部とを」を備えているのに対して、引用発明1では、そのような表示部及び装着管理部を備えていない点。

(2)判断
上記相違点1及び2について検討する。
ア 引用例2には、上記3(2)で述べたとおりの引用発明2が記載されている(上記3(2)サ参照。)。

イ 引用発明1は、1つのプリンタ装置を複数の人や部門、グループにて共有して使用する際のコインラックやカードリーダによる利用者制限を行うための設定、カラーレーザプリンタ装置のユーザによりモノクロの印刷は利用可能とするがカラー印刷の利用制限をして各印刷色毎の課金管理を行う場合などのための各色成分毎のカウンタ情報、どの用紙サイズでそれぞれ何枚印刷されているか、どのような紙種例えば普通紙や再生紙やOHO又は厚紙等で印刷が何枚されているかや、各エミュレーションが何枚印刷されているか等の管理、複写機能やスキャナ機能の場合にも用紙サイズ毎にどの部門が何枚使用しているかの管理、ファクシミリ機能の場合は、それに加えて、各個人や部門毎にどの相手先と送受信したかの管理に応えるためには、電源遮断時においてもプリンタシステムが記憶しておかなければならないこれらの設定の情報が非常に多くなるため、より大容量の不揮発性メモリが必要であるので、前記NVRAM(第1の不揮発性のランダムアクセスメモリ)とは異なった情報を記憶させる着脱自在な第2のランダムアクセスメモリである拡張NVRAM又はハードディスクを備え、第1の不揮発性のランダムアクセスメモリにはトータル印刷回数(枚数)を記憶させ、第2の不揮発性のランダムアクセスメモリには第1の不揮発性のランダムアクセスメモリよりも多くのカテゴリのカウンタ情報を記憶させるようにしたものであるところ、このプリンタ装置(記録装置)を1つの部署が専用で使用するような場合、上述のような、利用者制限を行うための設定、複数の人や部門、グループ毎の、各色成分毎のカウンタ情報、各用紙毎の何枚印刷されているか等の管理に応えるために必要な情報が非常に多くなることはないため、より大容量の不揮発性メモリは必要ではないから、上記第2のランダムアクセスメモリである拡張NVRAM又はハードディスクが無駄となることは、当業者に自明なことである。

ウ 上記ア及びイからして、引用発明1において、プリンタ装置(記録装置)を1つの部署が専用で使用するような場合、第2のランダムアクセスメモリが無駄とならないように、液晶表示部と、キースイッチと、無条件で記録可能な状態とする第1のモードと、所定の第2のランダムアクセスメモリをセットしなければ記録作業を行うことができず、規定の第2のランダムアクセスメモリがセットされたとき記録可能な状態にする第2のモードからいずれか1つのモードを選択するモード選択手段とを設け、プリンタ装置が工場から出荷されたときの初期モードは前記第1のモードであり、電源スイッチが投入されると、前記液晶表示部に記録できる旨の表示が行われ、ここでプリンタ装置を管理者モードに設定し、モード設定を行うための番号を入力すると、プリンタ装置は前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに書き込まれているデータを読み出し、その結果として現在設定されている第1のモードの表示を行い、前記キースイッチから第2のモードに対応する数値を入力すると、プリンタ装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行い、この時点で新たなモードを示すデータは前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに書き込まれており、この状態でプリンタ装置の電源がオフとなっても、プリンタ装置は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持するから、この第2のモードで、所定の第2のランダムアクセスメモリを装着しない状態で電源を投入してプリンタ装置がレディ状態となると、「第2のランダムアクセスメモリを装着して下さい」といった表示が行われ、この状態でオペレータが所定の第2のランダムアクセスメモリを装着すると、プリンタ装置は第2のランダムアクセスメモリからその暗証番号を読み出し、前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別し、暗証番号が一致しなければ前記第2のランダムアクセスメモリが排出指示により手動で又は自動的に排出され、再び初期状態の表示が行われ、これに対して、暗証番号が一致していれば、前記液晶表示部に記録できる旨の表示が行われるようになして、プリンタ装置の所属の変更等があってもその装置の性格を変えることができ、これによりプリンタ装置の使用期間を延長することができるようにすることは、当業者が引用発明2に基づいて容易に想到することができた程度のことである。

エ 上記ウにおいて、プリンタ装置が第2のモードに設定され、液晶表示部に第2モードの表示を行いった時点で第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに書き込まれている「新たなモードを示すデータ」は、「所定の第2のランダムアクセスメモリをセットしなければ記録作業を行うことができず、規定の第2のランダムアクセスメモリがセットされたとき記録可能な状態にする第2のモード」に設定されていることを示すデータであり、「着脱自在な第2のランダムアクセスメモリ」は、第1の不揮発性のランダムアクセスメモリよりも多くのカテゴリのカウンタ情報を記憶するものであるから、上記「新たなモードを示すデータ」は、本願発明の「前記記憶部に装置情報を格納する設定がなされたことを示す情報」に相当する。

オ 上記ウにおいて、「第2のランダムアクセスメモリを装着して下さい」といった表示は、本願発明の「装置のエラー情報を装置外部に表示する」ことに相当し、それを表示する「液晶表示部」は、本願発明の「装置のエラー情報を装置外部に表示する表示部」に相当する。

カ 上記ウにおいて、プリンタ装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行い、この時点で新たなモードを示すデータは前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに書き込まれており、この状態でプリンタ装置の電源がオフとなっても、プリンタ装置は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持するから、この第2のモードで、所定の第2のランダムアクセスメモリを装着しない状態で電源を投入してプリンタ装置がレディ状態となると、「第2のランダムアクセスメモリを装着して下さい」といった表示が行われるまでのプリンタ装置の処理は、本願発明の「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示する」に相当するといえる。

キ 本願明細書の発明の詳細な説明には、本願発明の「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断する」事項に関して、次の(ア)ないし(エ)の記載がある。
(ア)「【0036】
本実施例2の印刷装置31において、上記実施例1と異なる点は、図6に示すように、着脱可能な不揮発性メモリ5にプリンタ管理ファイル32が設けられている点である。このプリンタ管理ファイル32は図7に示す構成となっており、デバイス識別情報となる、印刷装置と同一のシリアルナンバーが格納される。このように、プリンタ管理ファイル32にそれぞれの印刷装置毎に異なるシリアルナンバーを格納することで、着脱可能な不揮発性メモリ15がどの印刷装置31の印刷集計情報を格納するメモリであるのかを装置側で認識することができる。すなわち、印刷装置31のシリアルナンバーと現在、印刷装置31に装着されている着脱可能な不揮発性メモリ5のシリアルナンバーとが一致がするか否かにより、その印刷装置31に装着されるべき着脱可能な不揮発性メモリ5が装着されているか否かを装置側で認識することができる。」
(イ)「【0042】
ステップS13で、ジョブ管理部3は、印刷装置のシリアルナンバーを着脱可能な不揮発性メモリ5内のプリンタ管理ファイル32に格納する。」
(ウ)「【0049】
ステップS22からステップS23に進むと、デバイス管理部10はプリンタ管理ファイル32に格納されているシリアルナンバーと、印刷装置31のシリアルナンバーとを比較し、ナンバーが一致しているか否かを判断する。ここで一致していると判断した場合には、ステップS24に進む。一方「否」の場合にはステップS26に進む。」
(エ)「【0055】
なお、プリンタ管理ファイル32を設ける代わりに、予め、印刷集計情報ファイルを備えた着脱可能な不揮発性メモリ5にシリアルナンバーを付与しておき、印刷装置31側には、上記着脱可能な不揮発性メモリ5のシリアルナンバーを格納する識別情報記憶部であるデバイス管理ファイルを着脱不可能なメモリとして設けても良い。
【0056】
そして、デバイス管理部10は印刷集計機能初期化処理時に着脱可能な不揮発性メモリ5のデバイスシリアルナンバーと同一のナンバーを印刷装置側のデバイス管理ファイルに格納する。
【0057】
そして、着脱可能な不揮発性メモリ5のデバイスシリアルナンバーと印刷装置側の識別情報であるシリアルナンバーとを比較し、ナンバーが一致しているかを判断し、判断結果に応じて、本実施例2と同様に処理を変えるようにしても良い。」

ク 上記キによれば、本願発明の「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断する」事項は、「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前記記憶部に識別情報を付与しておき、識別情報記憶部を印刷装置に設け、電源投入されたときの初期化処理時に、着脱可能な記憶部に付与された前記識別情報と同一の識別情報を印刷装置側の識別情報記憶部に格納し、印刷装置の識別情報と現在、印刷装置に装着されている着脱可能な記憶部の識別情報とが一致がするか否かにより、その印刷装置に装着されるべき着脱可能な記憶部が装着されているか否かを印刷装置側で認識する」ものを含んでいるものと解されるところ、本願明細書の発明の詳細な説明には、「その印刷装置に装着されるべき着脱可能な記憶部」が1つだけであるとの記載も必要性も認められないから、「着脱可能な記憶部に付与された前記識別情報と同一の識別情報を印刷装置側の識別情報記憶部に格納」する「電源投入されたときの初期化処理」は、「前回」に限らず、「前々回の電源投入されたときの初期化処理」でも構わないものと解さざるを得ず、本願発明の「前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否か」の点は、「その印刷装置に装着されるべき記憶部であるか否か」といった意味以上を超える技術上の意味を有するものとは認められない。

ケ 上記キからすると、上記ウにおいて、プリンタ装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行い、この時点で新たなモードを示すデータは前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに書き込まれており、この状態でプリンタ装置の電源がオフとなっても、プリンタ装置は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持するから、この第2のモードで、所定の第2のランダムアクセスメモリを装着しない状態で電源を投入してプリンタ装置がレディ状態となると、「第2のランダムアクセスメモリを装着して下さい」といった表示が行われ、この状態でオペレータが所定の第2のランダムアクセスメモリを装着すると、プリンタ装置は第2のランダムアクセスメモリからその暗証番号を読み出し、前記第1の不揮発性のランダムアクセスメモリに格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別し、暗証番号が一致しなければ前記第2のランダムアクセスメモリが排出指示により手動で又は自動的に排出され、再び初期状態の表示が行われるまでのプリンタ装置の処理は、本願発明の「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する」事項に実質上含まれるものと解される。

コ また、引用発明1において、上記ウのようにする際に、プリンタ装置に、そのような処理を行うため、本願発明の「装着管理部」に相当する構成を備えることは、当業者に自明の事項である。

サ 上記ウないしコからみて、引用発明1において、上記相違点1及び2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が引用発明2に基づいて容易になし得た程度のことである。

シ 効果
本願発明の奏する効果は、当業者が、引用発明1の奏する効果及び引用発明2の奏する効果から予測できた程度のものである。

ス まとめ
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 引用発明2との対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明2とを対比する。
ア 引用発明2の「ベースマシンに蓄えられたデータ」、「『CPU(中央処理装置)とメモリとインターフェイスを持ち、記憶容量が大きく記憶媒体として使用でき、かつセキュリティでも格段に優れていて、データの読み書きと反復使用が可能』なものであって、『ICカード装置に』入れる『ICカード』」、「『ベースマシンに蓄えられたデータを』書き込むこともできる『データの読み書き』が可能な『ICカード』」、「不揮発性メモリ(NVM)」、「『記録装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行』った時点で『前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込まれて』いる『この新たなモードを示すデータ』」、「第2のモード」、「液晶表示部」、「『カードを入れて下さい』という表示」、「オペレータが前記ICカード装置に所定のICカードを入れると」、「再び初期状態の表示が行われ」及び「複写機、プリンタ等の画情報の記録を行うための記録装置」は、それぞれ、本願発明の「装置情報」、「着脱可能な記憶部」、「装置情報を格納する着脱可能な記憶部」、「『不揮発性記憶部材で構成』された『情報格納部』」、「記憶部に装置情報を格納する設定がなされたことを示す情報」、「記憶部に装置情報を格納する設定」、「情報を装置外部に表示する表示部」、「装置のエラー情報」、「前記記憶部が装着されている場合」、「前記表示部に対して前記エラー情報を表示する」及び「印刷装置」に相当し、上記4(2)クのとおりであるから、引用発明2の「記録装置はICカードからその暗証番号を読み出し、前記不揮発性メモリ(NVM)に格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別し」及び「暗証番号が一致しなければ」は、それぞれ、本願発明の「前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し」及び「前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると」に実質的に相当するといえる。

イ 引用発明2では、ICカード装置は、ICカードからインサート信号およびカード有り信号の供給を受けるようになっており、前記ICカード装置に所定のICカードを入れない状態で電源を投入して記録装置がレディ状態となると、「カードを入れて下さい」という表示が行われ、この状態でオペレータが前記ICカード装置に所定のICカードを入れると、記録装置はICカードからその暗証番号を読み出すようになっているから、引用発明2は、ICカード(記憶部)が記録装置のICカード装置(装置)に入れて(装着されて)いるか否かを検出し、前記ICカードがICカード装置にいれてない(未装着である)と判断すると、前記液晶表示部(表示部)に対して『カードを入れて下さい』という表示(エラー情報を表示)することを通知する何らかの手段を有しているといえる。したがって、引用発明2のこの手段は本願発明の「前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知し、前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する装着管理部」に相当する。そうすると、引用発明2の「記録装置は前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込まれているデータを読み出し、その結果として現在設定されている第1のモードの表示を行い、前記キースイッチから第2のモードに対応する数値を入力すると、記録装置は第2のモードに設定され、前記液晶表示部に第2モードの表示を行い、この時点で新たなモードを示すデータは前記不揮発性メモリ(NVM)に書き込まれており、この状態で記録装置の電源がオフとなっても、記録装置は新たなモードとしての第2のモードに設定された状態を保持するから、この第2のモードで、前記ICカード装置に所定のICカードを入れない状態で電源を投入して記録装置がレディ状態となると、「カードを入れて下さい」という表示が行われ、この状態でオペレータが前記ICカード装置に所定のICカードを入れると、記録装置はICカードからその暗証番号を読み出し、前記不揮発性メモリ(NVM)に格納されている暗証番号に一致するかどうかを判別し、暗証番号が一致しなければ前記ICカード装置からICカードが自動的に排出され、再び初期状態の表示が行われ、これに対して、暗証番号が一致していれば、前記液晶表示部に記録できる旨の表示が行われる」事項は、本願発明の「前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知し、また前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する装着管理部とを備えたこと」に相当するといえる。

ウ 上記ア及びイからみて、本願発明と引用発明2とは、
「装置情報を格納する着脱可能な記憶部と、
不揮発性記憶部材で構成され、前記記憶部に装置情報を格納する設定がなされたことを示す情報を格納する情報格納部と、
装置のエラー情報を装置外部に表示する表示部と、
前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装置に未装着であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知し、
また前記設定がなされた後に再電源投入されたときの初期化処理において、前回の電源投入による装置の動作時に格納された前記情報格納部の情報を取得し、前記記憶部に装置情報を格納することを示す情報が前記情報格納部に格納されていて、かつ前記記憶部が装置に装着されているか否かを検出し、前記記憶部が装着されている場合に、前記記憶部が前回の電源投入による装置の動作時に装着されていた記憶部であるか否かを判断し、前回装着されていた記憶部と異なる記憶部であると判断すると、前記表示部に対して前記エラー情報を表示することを通知する装着管理部とを備えたことを特徴とする印刷装置。」の点で一致し、相違するところはない。

エ したがって、本願発明は、引用例2に記載された発明である。

6 むすび
本願発明は、上記4のとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、本願発明は、上記5のとおり、引用例2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-22 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願2004-40209(P2004-40209)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (B41J)
P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清水 康司清水 督史  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 鈴木 秀幹
藏田 敦之
発明の名称 印刷装置  
代理人 鈴木 弘一  
代理人 鈴木 弘一  

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