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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1224149 |
審判番号 | 不服2008-7494 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2010-09-24 |
事件の表示 | 特願2001-145374「情報入力装置、情報入力方法、情報入力プログラム及び記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月29日出願公開、特開2002-342015〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年5月15日の出願であって、平成20年2月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年4月24日日付けで手続補正がされたものである。 なお、平成20年1月28日付け手続補正書でした明細書についての補正は、同年2月15日付けで、特許法第17条の2第4項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものに該当せず、同法第17条の2第4項の規定に違反するという理由で同法第53条第1項の規定により却下された。 2.平成20年4月24日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年4月24日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正内容の適否 平成20年4月24日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2、並びに、明細書の段落【0010】及び【0025】を、それぞれ、次のとおり補正するものである。 「【請求項1】 二次元情報入力領域に光を発光する発光手段と、 前記発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段と、 前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段と、 前記受光手段で受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段とを有する ことを特徴とする情報入力装置。」 「【請求項2】 受光手段と、検出手段と、物体判別手段とを有する情報入力装置において実現される情報入力方法であって、 前記受光手段が、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光ステップと、 前記検出手段が、前記受光ステップで受光された前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出ステップと、 前記物体判別手段が、前記受光ステップで受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別ステップとを含む ことを特徴とする情報入力方法。」 「【0010】 【課題を解決するための手段】 請求項1記載の発明は、情報入力装置であって、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段と、前記発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段と、互いに異なるパターンの前記光反射手段を備える複数の前記所定物体のうち、前記受光手段で受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段とを有することを特徴とする。」 「【0025】 したがって、発光手段から出射された光が各種部材により乱反射された場合であっても、受光手段にて検出されることは無く、また、所定物体とは別の部材や手などが情報入力領域内に入った場合であっても、正確に所定物体だけをトレースすることが可能であり、装置の信頼性を向上させることが可能になる。また、例えば、蛍光波長のパターンが各々異なる蛍光部材を各々有する複数の所定物体がある場合に、筆記色を切り替える場合や字消しなどを検出する場合、太さを検出する場合等において、所定物体を替えるだけで、筆記色の切り替え等を容易に行うことができるようになる。 また、請求項2記載の発明は、受光手段と、検出手段と、物体判別手段とを有する情報入力装置において実現される情報入力方法であって、前記受光手段が、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光ステップと、前記検出手段が、前記受光ステップで受光された前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出ステップと、前記物体判別手段が、前記受光ステップで受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別ステップとを含むことを特徴とする。 また、請求項3記載の発明は、情報入力プログラムであって、請求項2に記載された情報入力方法をコンピュータで実行させることを特徴とする。 また、請求項3記載の発明は、コンピュータの読み取り可能な記憶媒体であって、請求項3に記載された情報入力プログラムを格納したことを特徴とする。」 これらの補正は、「受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する」事項が共通して含まれる。 ここで、所定物体の判別のための「受光する光のパターン」が、直接的には、光の何についてのパターンであるのか判然としないが、当該補正事項においては、複数の所定物体が、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備えると記載されており、この文脈から判断するに、「受光する光のパターン」は、所定物体が備える光反射手段の蛍光する部材による光の波長についてのパターンであると認められる。 なお、この認定は、審判請求人が平成20年4月24日に提出した手続補正書の「4.本願発明が特許されるべき理由」の「(1)本願発明」において、「それぞれ異なる蛍光部材のパターンを有する複数の指示手段を用意した場合、異なる波長の光が反射されることは明らかである。」という主張にも沿うものである。 一方、上記補正事項に関して、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)には、以下の事項が記載されている。 (a)「【0107】 ここで、図21は本実施の形態の情報入力装置3Eに用いられる指示手段Aを示す斜視図である。図21に示すように、情報入力装置3Eの情報入力領域3a内の一点を指し示すために用いられるペン状の形状の指示手段Aの先端近傍には、光反射部材100が設けられている。この光反射部材100は、発光手段として機能する照明装置90により照射される光の波長を選択的に吸収して蛍光する部材で形成されている。 【0108】 そして、このような光反射部材100を配設した指示手段Aを用いる場合、情報入力装置3Eの照明装置90としては、光反射部材100を形成する蛍光部材を蛍光させる波長域の光を照射するものが選定され、情報入力装置3Eの受光手段である受光素子83としては、蛍光の光波長に感度を持つものが選定される。」(段落【0107】?【0108】) (b)「【0111】 なお、光反射部材100を形成する蛍光部材のパターンが異なる複数の指示手段Aを用意した場合には、受光素子83において検出されるパターンを判定することで指示手段Aを判別することが可能になる。これにより、例えば筆記色を切り替える場合や字消しなどを検出する場合、太さを検出する場合等において、指示手段Aを替えるだけで、筆記色の切り替え等を容易に行うことができるようになる。」(段落【0111】) 当初明細書には、光反射部材100が、照射される光の波長を選択的に吸収して蛍光する部材で形成されることと、光反射部材100を形成する蛍光部材のパターンが異なる複数の指示手段を用意し、受光素子83において検出されるパターンを判定することで指示手段Aを判別することが、それぞれ記載されているものの、それぞれの記載は、互いに関連することなく別個になされている。よって、蛍光部材のパターンが、蛍光する光の波長についてのパターンであることは、当初明細書に記載されていない。 上記の他、当初明細書又は図面には、蛍光部材のパターンが、蛍光する光の波長についてのパターンであることが記載されておらず、当初明細書又は図面の記載からみて自明であるということもできない。 そうすると、所定物体が備える光反射手段の蛍光する部材による光の波長についてのパターンであると認められる光のパターンを含むような本件補正は、当業者によって、当初明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 したがって、本件補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 (2)補正内容の適否のむすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によって却下すべきものである。 (3)補正目的の適否 上記「(2)補正内容の適否のむすび」に記載したように、本件補正は、却下すべきものであるが、念のため、特許法第17条の2第4項に規定する補正の目的に該当するかについて検討を加える。 (3-1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1及び2は、上記「(1)補正内容の適否」の【請求項1】及び【請求項2】に記載されるように補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「物体判別手段」について、補正前に「前記受光手段で受光する前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する」とあったのを、「前記受光手段で受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する」とするものを含み、 請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「物体判別ステップ」について、補正前に「物体判別手段が、前記受光ステップで受光された前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する」とあったのを、「前記物体判別手段が、前記受光ステップで受光する前記光のパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する」とするものを含んでいる。 すなわち、所定物体の判断材料が、補正前に「光の波長のパターン」とあったのを、「波長の」という記載を削除して、「光のパターン」に補正し(以下、「補正事項1」という。)、光反射手段に形成する部材が吸収して蛍光する光の波長が、補正前に「互いに異なる」とあったのを、「互いに」という記載を削除して「異なる」に補正するもの(以下、「補正事項2」という。)を含む。 補正事項1は、上記「(1)補正内容の適否」で検討したように、「光のパターン」は「光の波長についてのパターン」であると認められるから、補正の前後で実質的に内容が変更されるものでない。 補正事項2は、補正前の請求項に記載されている発明特定事項に付されている限定を削除する補正である。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、本件補正は、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号のいずれに規定する補正の目的にも該当しない。 (3-2)補正目的の適否のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下する。 (4)独立特許要件 上記「(2)補正内容の適否のむすび」及び「(3-2)補正目的の適否のむすび」に記載したように、本件補正は、却下すべきものであるが、念のため、本件補正が、特許法第17条の2第4項第2号の規定に該当するとして、本件補正後の請求項1?4に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (4-1)本願の請求項1?4に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、上記「(1)補正内容の適否」の【請求項1】に記載されるとおりのものである。 ここで、上記「(1)補正内容の適否」で認定したのと同様に、「受光する光のパターン」は、所定物体が備える光反射手段の蛍光する部材による光の波長についてのパターンであると認められる。 (4-2)刊行物記載事項 原審の平成19年8月3日付け拒絶の理由に引用された特開平11-3170号公報(以下「刊行物」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 (a)「【0006】以上の点に鑑み、本発明はディスプレイから発する光を含めた外乱光に対して影響を受けることなく安定的に動作可能な光デジタイザを提供することを目的とする。また、指示体の輝点を検出するために用いられる検出ユニットの取り付け上の制約を除き、コンパクトな実装が可能な光デジタイザを提供することを目的とする。さらに、指やスタイラスなど指示体の色を検出して、複数の異なる指示体を識別したり複数の指示体による同時入力を可能にする光デジタイザを提供することを目的とする。また、位置情報に加え筆圧などの付帯情報を効率的に入力可能な光デジタイザを提供することを目的とする。さらに、光デジタイザと大型のディスプレイとを組み合わせた会議システムなどに好適な表示装置を提供することを目的とする。加えて、光デジタイザに最適な光スタイラスを提供することを目的とする。」 (b)「【0037】図23は、本発明に係る表示装置および光デジタイザの第8実施形態を示す平面図である。基本的には、本実施形態は図6に示した第2実施形態と類似している。ディスプレイ6の上に規定された座標面1上で放射光を発するスタイラス2の位置座標を求めるため、左右一対の検出ユニット3L,3Rが座標面の周辺に配されており、放射光を受光して電気信号に変換する。さらに、この電気信号を処理して位置座標を算出する。また、座標面1を照明する光源として、蛍光ランプ31eが配されている。蛍光ランプ31eはある波長の光源光を用いて座標面1を照明し、左右の検出ユニット3L,3Rは蛍光体22eを有するスタイラス2による光源光の反射により生じた別の波長の放射光を選択的に受光する光学フィルター39L,39Rをそれぞれ備えている。蛍光ランプ31eは紫外波長の光源光を用いて座標面1を照明し、左右の検出ユニット3L,3Rは蛍光体22eを備えたスタイラス2による光源光の反射で生じた可視波長の放射光を選択的に受光する光学フィルター39L,39Rを備えている。係る構成によれば、スタイラス2以外からの反射光を区別し排除できるので、大変強力な外乱光対策になる。また、フィルターを用いることにより、表示光や外乱光が検出ユニットに入るのを防ぐことができる。さらに、光源としては広く普及しているブラックライトブルー蛍光ランプ31e等を用いることができ、さらにスタイラス2の先端に設ける蛍光体22eは入手容易な蛍光物質を利用することができるので、経済性に優れている。また、照明が操作者の目に入って表示を妨害するのを防ぐことができる。」 (c)図23には、座標面が二次元平面であることが記載されている。 したがって、刊行物には次の発明(以下、「刊行物記載発明1」という。)が記載されている。 「二次元の座標面1を照明する光源として、蛍光ランプ31eが配され、 蛍光ランプ31eはある波長の光源光を用いて座標面1を照明し、左右の検出ユニット3L,3Rは、蛍光体22eを有するスタイラス2による光源光の反射により生じた別の波長の放射光を選択的に受光する光学フィルター39L,39Rをそれぞれ備えて、放射光を受光して電気信号に変換し、この電気信号を処理して二次元の座標面1上で放射光を発するスタイラス2の二次元位置座標を算出する、 光デジタイザ。」 また、上記刊行物には次の事項(以下、「刊行物記載事項2」という。)も記載されている。 (d)「【0023】図11は、本発明に係る光デジタイザの第3実施形態に用いる照明ユニットを示す模式的な平面図である。本実施形態では、照明ユニット30に内蔵された光源が赤色LED31r、緑色LED31gおよび青色LED31bの組からなる。また、これらのLEDの前方にはシリンドリカルレンズ32が配されている。照明ユニット30は各LED31r,31gおよび31bから発する複数の色光を切り替えて座標面をフラッシュ照明する。これに応じ、検出ユニットは特定の表面色を有する指示体の反射により生じた放射光をフラッシュ照明に同期して各色光別に受光する。検出ユニットに内蔵された演算手段はイメージセンサから出力される電気信号を処理して指示体の位置座標の算出に加えその表面色を識別する。 【0024】図12は、図11に示した照明ユニット30を組み込んだ光デジタイザの動作を説明するためのフローチャートである。まずステップS1で、赤色LED31rのみを点灯してCCDイメージセンサから画像データを読み出す。この画像データは赤色照明下で得られたものであり、赤の色分解画像(赤画像)を示している。次にステップS2で緑色LED31gのみを点灯して、同じくCCDイメージセンサから画像データを読み出す。この画像データは緑色照明下で得られたものであり、緑の色分解画像(緑画像)を表わしている。最後にステップS3で青色LED31bのみを点灯して、CCDイメージセンサから画像データを読み出す。この画像データは青色照明下で得られたものであり、青の色分解画像(青画像)を示している。以上のように、本実施形態ではモノカラータイプのイメージセンサを使用しつつ、照明ユニットの色光を例えば赤、緑、青で切り替えることにより、各色に対応した色分解画像(赤画像、緑画像、青画像)を得るようにしている。 【0025】図13は、上述した第3実施形態に用いるスタイラスの例を表わしている。図示するように、スタイラス2は軸部21と先端部22とを備えている。先端部22には緑の色光を強く反射する緑色部材27が取り付けられている。この他、赤色部材や青色部材を先端部22に取り付けたスタイラスも必要に応じ用いられる。 【0026】図14は、上述した第3実施形態に係る光デジタイザの演算処理を示すフローチャートである。まず、ステップS1で赤画像、緑画像および青画像を読み込む。この後ステップS2で、緑画像:赤画像:青画像の比演算を各検出ユニットの各画素に対して行い、1:0:0に近い画素を抽出する。これにより、緑色部材27を先端部22に取り付けたスタイラス2を識別することができる。その後、抽出結果に基づいて座標演算を行う。以上のように、本実施形態では、照明ユニットは複数の色(波長)を持つ光源光を切り替えて座標面上に照射する。各々の波長を照射した時検出ユニットから出力される電気信号の変化からスタイラス2の色を識別する。これにより、座標情報に加え色情報を光デジタイザに入力することができる。即ち、モノカラータイプのイメージセンサを用いても、スタイラス2の色を識別することができるので、大変経済性に優れている。また、色識別を行うことにより外乱光の除去にも効果がある。」 (4-3)対比 本願補正発明と刊行物記載発明1とを比較する。 刊行物記載発明1の、「二次元の座標面1」、「蛍光ランプ31e」は、本願補正発明の、「二次点情報入力領域」、「発光手段」にそれぞれ相当する。 刊行物記載発明1の、「蛍光体22e」、「スタイラス2」は、本願補正発明の、「光反射手段」、「所定物体」にそれぞれ相当する。 刊行物記載発明1には、「左右の検出ユニット3L,3Rは、蛍光体22eを有するスタイラス2による光源光の反射により生じた別の波長の放射光を選択的に受光する」と記載されているから、刊行物記載発明1において、スタイラス2の蛍光体22eが、光源光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段であることは、明らかである。 そして、刊行物記載発明1の「左右の検出ユニット3L,3R」は、蛍光体22eを有するスタイラス2による放射光を受光するから、本願補正発明の「所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段」に相当する。 さらに、刊行物記載発明1の「左右の検出ユニット3L,3R」は、「放射光を受光して電気信号に変換し、この電気信号を処理して二次元の座標面1上で放射光を発するスタイラス2の二次元位置座標を算出する」と記載されている。 すなわち、刊行物記載発明1の左右の検出ユニット3L,3Rは、受光した光の強度分布を電気信号の強度分布に変換して、その電気信号の強度分布に基づいて、二次元の座標面1上で放射光を発するスタイラス2の二次元位置座標を算出していることは明らかである。よって、刊行物記載発明1と、本願補正発明とは、「前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段」の点で一致する。 刊行物記載発明1の「光デジタイザ」は、本願補正発明の「情報入力装置」に相当する。 したがって、両者は、 [一致点] 「二次元情報入力領域に光を発光する発光手段と、 前記発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段と、 前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段とを有する ことを特徴とする情報入力装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点] 本願補正発明が、所定物体が備える光反射手段の蛍光する部材による光の波長についてのパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の所定物体から、二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段を有するのに対して、刊行物記載発明1には、そのことが記載されていない点。 (4-4)判断 [相違点]について 刊行物記載事項2には、スタイラス2の先端部22には緑の色光を強く反射する緑色部材27が取り付けられる他、赤色部材や青色部材を先端部22に取り付けたスタイラスも必要に応じ用られて、検出ユニットにおいて、スタイラス2の色を識別することにより、座標情報に加え色情報を光デジタイザに入力することが記載されているから、刊行物記載発明1に刊行物記載事項2を適用して、本願補正発明のように、所定物体が備える光反射手段の蛍光する部材による光の波長についてのパターンに基づいて、異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の所定物体から、二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段を設けることは、当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物記載発明1及び刊行物記載事項2から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、刊行物記載発明1及び刊行物記載事項2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4-5)独立特許要件のむすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成20年4月24日付けの手続補正は上記「(2)補正内容の適否のむすび」、「(3-2)補正目的の適否のむすび」及び「(4-5)独立特許要件のむすび」に記載したとおり却下され、そして、上記「1.手続の経緯」に記載したように、平成20年1月28日付け手続補正は、同年2月15日付けで却下されている。 (1)補正内容の適否 平成19年10月9日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2、並びに、明細書の段落【0010】、【0025】及び【0114】を、それぞれ、次のとおり補正するものである。 「【請求項1】 二次元情報入力領域に光を発光する発光手段と、 前記発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段と、 前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段と、 前記受光手段で受光する前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段とを有する ことを特徴とする情報入力装置。」 「【請求項2】 受光手段と、検出手段と、物体判別手段とを有する情報入力装置において実現される情報入力方法であって、 受光手段が、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光ステップと、 検出手段が、前記受光ステップで受光された前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出ステップと、 物体判別手段が、前記受光ステップで受光された前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別ステップとを含む ことを特徴とする情報入力方法。」 「【0010】 【課題を解決するための手段】 請求項1記載の発明は、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段と、前記発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光手段と、前記受光手段で受光する前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出手段と、前記受光手段で受光する前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段とを有することを特徴とする。」 「【0025】 したがって、発光手段から出射された光が各種部材により乱反射された場合であっても、受光手段にて検出されることは無く、また、所定物体とは別の部材や手などが情報入力領域内に入った場合であっても、正確に所定物体だけをトレースすることが可能であり、装置の信頼性を向上させることが可能になる。また、例えば、蛍光波長のパターンが各々異なる蛍光部材を各々有する複数の所定物体がある場合に、筆記色を切り替える場合や字消しなどを検出する場合、太さを検出する場合等において、所定物体を替えるだけで、筆記色の切り替え等を容易に行うことができるようになる。 また、請求項2記載の発明は、受光手段と、検出手段と、物体判別手段とを有する情報入力装置において実現される情報入力方法であって、受光手段が、二次元情報入力領域に光を発光する発光手段が発光する光のうち、所定の波長の光を選択的に吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を有する所定物体の前記光反射手段で反射される前記光を受光する受光ステップと、検出手段が、前記受光ステップで受光された前記光の強度分布に基づいて、前記光反射手段を有する所定物体が指示した前記二次元情報入力領域内の二次元位置座標を検出する二次元位置座標検出ステップと、物体判別手段が、前記受光ステップで受光された前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別ステップとを含むことを特徴とする。 また、請求項3記載の発明は、情報入力プログラムであって、請求項2に記載された情報入力方法をコンピュータで実行させることを特徴とする。 また、請求項4記載の発明は、コンピュータの読み取り可能な記憶媒体であって、請求項3に記載された情報入力プログラムを格納したことを特徴とする。」 「【0114】 【発明の効果】 請求項1乃至4記載の発明によれば、発光手段から出射された光が各種部材により乱反射された場合であっても、受光手段にて検出されることは無く、また、所定物体とは別の部材や手などが情報入力領域内に入った場合であっても、正確に所定物体だけをトレースすることが可能であり、装置の信頼性を向上させることが可能になる。また、例えば、蛍光波長のパターンが各々異なる蛍光部材を各々有する複数の所定物体がある場合に、筆記色を切り替える場合や字消しなどを検出する場合、太さを検出する場合等において、所定物体を替えるだけで、筆記色の切り替え等を容易に行うことができるようになる。」 (2)原査定の拒絶理由 平成19年11月21日付けで通知された最後の拒絶理由は、次のとおりである。 「 <<<< 最 後 >>>> この出願は、次の理由によって拒絶をすべきものです。これについて意見がありましたら、この通知書の発送の日から60日以内に意見書を提出してください。 理 由 平成19年10月9日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 請求項1には,「前記受光手段で受光する前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する物体判別手段」が記載されている。 一方,当初明細書等には,「光反射部材100を形成する蛍光部材のパターンが異なる複数の指示手段Aを用意した場合には、受光素子83において検出されるパターンを判定することで指示手段Aを判別することが可能になる。」こと(段落【0111】)が記載されており,「蛍光部材のパターン」に基づいて指示手段を判別することは記載されているものの,「蛍光部材」からの「光の波長のパターン」に基づいて判別することや,複数の指示手段が「互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段」を備えることについては何ら記載されていない。 請求項2-4,段落【0010】,【0025】,【0114】についても同様である。 なお,当該補正がなされた明細書又は図面における請求項1-4に記載した事項は,願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかであるから,当該請求項に係る発明については新規性,進歩性等の特許要件についての審査を行っていない。 最後の拒絶理由通知とする理由 最初の拒絶理由通知に対する応答時の補正によって通知することが必要になった拒絶の理由のみを通知する拒絶理由通知である。 拒絶の理由が新たに発見された場合には拒絶の理由が通知される。」 (3)当審の判断 平成19年10月9日付けの、特許請求の範囲の請求項1及び請求項2、並びに、明細書の段落【0010】、【0025】及び【0114】に対する補正は、受光する前記光の波長のパターンに基づいて、互いに異なる波長の光を吸収して蛍光する部材で形成された光反射手段を備える複数の前記所定物体から、前記二次元位置座標を指示する前記所定物体を判別する点、及び、蛍光波長のパターンが各々異なる蛍光部材を各々有する複数の所定物体がある点を含んでいる。 一方、上記補正事項に関して、当初明細書には、上記「2.(1)補正内容の適否」で述べたとおりの事項が記載されているが、改めて記載すると以下のとおりである。 (a)「【0107】 ここで、図21は本実施の形態の情報入力装置3Eに用いられる指示手段Aを示す斜視図である。図21に示すように、情報入力装置3Eの情報入力領域3a内の一点を指し示すために用いられるペン状の形状の指示手段Aの先端近傍には、光反射部材100が設けられている。この光反射部材100は、発光手段として機能する照明装置90により照射される光の波長を選択的に吸収して蛍光する部材で形成されている。 【0108】 そして、このような光反射部材100を配設した指示手段Aを用いる場合、情報入力装置3Eの照明装置90としては、光反射部材100を形成する蛍光部材を蛍光させる波長域の光を照射するものが選定され、情報入力装置3Eの受光手段である受光素子83としては、蛍光の光波長に感度を持つものが選定される。」(段落【0107】?【0108】) (b)「【0111】 なお、光反射部材100を形成する蛍光部材のパターンが異なる複数の指示手段Aを用意した場合には、受光素子83において検出されるパターンを判定することで指示手段Aを判別することが可能になる。これにより、例えば筆記色を切り替える場合や字消しなどを検出する場合、太さを検出する場合等において、指示手段Aを替えるだけで、筆記色の切り替え等を容易に行うことができるようになる。」(段落【0111】) 当初明細書には、光反射部材100が、照射される光の波長を選択的に吸収して蛍光する部材で形成されることと、光反射部材100を形成する蛍光部材のパターンが異なる複数の指示手段を用意し、受光素子83において検出されるパターンを判定することで指示手段Aを判別することが、それぞれ記載されているものの、それぞれの記載は、互いに関連することなく別個になされている。よって、蛍光部材のパターンが、光の波長のパターンであることは、当初明細書に記載されていない。 上記の他、当初明細書又は図面には、蛍光部材のパターンが、光の波長のパターンであることが記載されておらず、当初明細書又は図面の記載からみて自明であるということもできない。 そうすると、所定物体の判別が、受光する光の波長のパターンに基づく点、及び、蛍光波長のパターンが各々異なる蛍光部材を各々有する複数の所定物体がある点をそれぞれを含むような補正は、当業者によって、当初明細書又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえず、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、平成19年10月9日付け手続補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 したがって、上記手続補正は、特許法第49条第1項の規定に該当するから、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-07-22 |
結審通知日 | 2010-07-27 |
審決日 | 2010-08-12 |
出願番号 | 特願2001-145374(P2001-145374) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(G06F)
P 1 8・ 57- Z (G06F) P 1 8・ 561- Z (G06F) P 1 8・ 121- Z (G06F) P 1 8・ 55- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 森田 充功、廣瀬 文雄 |
特許庁審判長 |
江口 能弘 |
特許庁審判官 |
篠塚 隆 清水 稔 |
発明の名称 | 情報入力装置、情報入力方法、情報入力プログラム及び記憶媒体 |
代理人 | 酒井 宏明 |