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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F03G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F03G
管理番号 1224161
審判番号 不服2008-20252  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-07 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2000-163712「流体エネルギ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月27日出願公開、特開2001- 82316〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年10月4日に出願した特願平9-307781号(以下、「原出願」という。)の一部を平成12年4月24日に新たな特許出願としたものであって、平成18年10月10日付けで拒絶理由が通知され、同年12月12日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成19年6月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成20年6月26日付けで上記平成19年8月30日付けの手続補正が却下される共に、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年8月7日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同日付けで明細書について手続補正がなされ、その後、当審において平成21年8月31日付けで書面による審尋がなされ、これに対して同年12月4日付けで回答書が提出されたものである。
なお、平成21年12月4日付けで上記回答書と共に提出された手続補正書による手続補正は、不適法なものとして平成22年1月28日付けで却下されている。


第2 平成20年8月7日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成20年8月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正の内容
平成20年8月7日付けの明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成19年8月30日付けの手続補正は却下されているので、平成18年12月12日付けの手続補正により補正された)下記の(a)に示す請求項1を下記の(b)に示す請求項1ないし4と補正するものである。

(a)本件補正前の特許請求の範囲
「「閉路管の外周に熱交換管を巻きつけ、ここに冷水を通すと加熱されて湯になると共に、流体は冷却されて加工し再び太陽熱により過熱されて上昇循環し発電機を回転させ発電し、給湯することを特徴とする流体エネルギ装置。」」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 液体を封入した循環路管と、前記循環路管内に設けられた前記液体の流動に基づいて回転する回転体と、前記回転体と回転軸により一体化されて前記循環路管の外部に設けられ前記回転体の回転に基づいて発電する発電機とを備え、
前記循環路管の一部を太陽熱により加熱することにより前記液体を加熱し流動させることを特徴とする流体エネルギ装置。
【請求項2】 前記液体が前記循環路管に給水される水であり、前記太陽熱により加熱された前記水を温水として給湯することを特徴とする請求項1記載の流体エネルギ装置。
【請求項3】 給水される熱交換管を前記循環路管に巻き付けることにより前記給水された水を加熱して温水とし給湯することを特徴とする請求項1記載の流体エネルギ装置。
【請求項4】 太陽熱により給水を加熱して温水を得る水管と、前記加熱された水管から第1の温水を給湯する第1の給湯管および第2の給湯管と、前記第2の給湯管に複数回巻き付けて第2の温水を給湯する給水される熱交換管と、
を備えることを特徴とする流体エネルギ装置。」(なお、下線は補正箇所を示す。)

[2]本件補正の適否
1)本件補正により、新たに請求項2ないし4が追加されて、特許請求の範囲の請求項数が1から4となった。しかしながら、請求項数が1から4となったことにより、本件補正前後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明が一対一又はこれに準ずるような対応関係となっておらず、新たな3個の請求項を増加させる増項補正となっているから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない(必要であれば、平成15年(行ケ)第230号の判決を参照。)。
また、本件補正が同条同項その他各号に規定する請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

2)本件補正により、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明における発明特定事項である「閉路管の外周に熱交換管を巻きつけ」る構成、「ここ(熱交換管)に冷水を通すと加熱されて湯になる」構成、「流体は冷却され」る構成及び「給湯する」構成が削除されたものとなっているから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としたものではない。
また、本件補正が同条同項その他各号に規定する請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しないことは明らかである。

[3]むすび
以上のとおり、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年8月7日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月12日付けの手続補正により補正された明細書(なお、平成19年8月30日付けの手続補正は却下されている。)及び願書の最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定された、次のとおりのものである。

「「閉路管の外周に熱交換管を巻きつけ、ここに冷水を通すと加熱されて湯になると共に、流体は冷却されて加工し再び太陽熱により過熱されて上昇循環し発電機を回転させ発電し、給湯することを特徴とする流体エネルギ装置。」」

ここで、本願発明におけるカギ括弧(「」)に特別な意味はないものと認められるので、以下、本願発明をカギ括弧がないものとして扱う。
また、本願発明において、「流体は冷却されて加工し再び太陽熱により過熱され」と記載されているが、願書に最初に添付された明細書の段落【0007】には「流体164は冷却されて下降し再び太陽熱2 により加熱されて」と記載されていることや、本願発明の技術的意味を考えると、「加工」は「下降」の、「過熱」は「加熱」の誤記と解するのが自然であるから、本願発明における上記記載は「流体は冷却されて下降し再び太陽熱により加熱されて」という記載として扱う。

2.引用発明
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願日前に頒布された刊行物である実公平3-22696号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

a)「実用新案登録請求の範囲
作動流体を封入したヒートパイプの一端部側が太陽熱集熱部に配置されるとともに、そのヒートパイプの他端部側が低温の受熱媒体流通部に配置され、かつ前記ヒートパイプの内部のうち前記太陽熱集熱部に位置する部分と受熱媒体流通部に位置する部分との間に、軸流タービンがその軸心をヒートパイプの軸線に沿わせて設けられるとともに、その軸流タービンが発電機に連結されていることを特徴とするヒートパイプ式太陽熱発電装置。」(実用新案登録請求の範囲)

b)「第1図はこの考案の一実施例を示す概略的な斜視図であり、ここに示す太陽熱発電装置は屋上や屋根等に太陽光線に対し垂直となるよう傾斜設置する構成であり、太陽熱集熱部1が矩形の箱状に構成されるとともに、その上端側に、受熱媒体としての水2を流す受熱媒体流通部3がほぼ水平に設けられており、さらに一端部側を太陽熱集熱部1内に露出させ、かつ他端部側を受熱媒体流通部3内に水密性を保持して挿入した複数本のヒートパイプ4が設けられている。」(公報第4欄第20ないし29行)

c)「他方、ヒートパイプ4は従来から知られているように、銅やアルミニウムなどの金属製密閉管7の内部に、空気などの非凝縮性気体を真空排気した後に水やフロンなどの凝縮性流体を作動流体8として封入し、かつ密閉管7の内周面には金属網や極細線あるいは細溝などからなるウイツク9を設けた構成であり、第2図に示すようにその内部のうち前記太陽熱集熱部1に位置する部分と受熱媒体流通部3に位置する部分との間に、軸流タービン10がその軸心をヒートパイプ4の軸線方向に沿わせて配置されている。軸流タービン10の回転軸11は、ヒートパイプ4の前記受熱媒体流通部3側の端部に設けた軸受・シール部12によつて回転自在に支持されるとともに、そこからヒートパイプ4の外部に突出し、その突出端に発電機13が連結されている。」(公報第4欄第43行ないし同第5欄第14行)

d)「したがつて上記の装置では、太陽光が照射することにより、その熱線を受けてヒートパイプ4が加熱され、内部の作動流体8が蒸発気化する。これに対し受熱媒体流通部3に温度の低い水2を流しておくことにより、ヒートパイプ4の端部が冷却されてその内部の圧力が低くなつている。その結果、作動流体蒸気が第2図の矢印方向へ高速で流れるとともに、軸流タービン10の部分で断熱膨張して軸流タービン10を回転させ、それに伴つて発電機13が駆動されて発電を行なう。こうして断熱膨張した作動流体は、ヒートパイプ4の他方の端部において受熱媒体流通部3内の水2に熱を与えて凝縮液化し、その結果、受熱媒体流通部3に供給した水2を温水として取出すことができる。またその温水は、給湯や冷暖房のための設備に供給される。そして液化した作動流体は、重力およびウイツク9によつて生じる毛細管圧力によりヒートパイプ4の太陽熱集熱部1側の端部に還流する。」(公報第5欄第15行ないし同第6欄第6行)

(2)上記(1)a)ないしd)及び図面の記載から分かること

イ)上記(1)b)及びc)並びに第1図及び第2図の記載より、受熱媒体流通部3内に金属製密閉管7が挿入されることで、金属製密閉管7の外周に受熱媒体流通部3が設けられた構成となっていることが分かる。

ロ)上記(1)b)ないしd)並びに第1図及び第2図の記載より、受熱媒体流通部3に温度の低い水2を流すと、該温度の低い水2が金属製密閉管7内の蒸発気化した作動流体8により加熱されて温水になることが分かる。

ハ)上記(1)b)ないしd)並びに第1図及び第2図の記載より、金属製密閉管7内の蒸発気化した作動流体8は、受熱媒体流通部3の温度の低い水2により冷却されて凝集液化し重力により下降していることが分かる。

ニ)上記(1)b)ないしd)並びに第1図及び第2図の記載より、金属製密閉管7内の作動流体8は太陽熱により加熱されて蒸発気化して上昇し発電機13を回転させて発電していることが分かる。

ホ)上記(1)b)ないしd)並びに第1図及び第2図の記載より、金属製密閉管7内の作動流体8は、太陽熱によって加熱されることによる蒸発気化と、温度の低い水2によって冷却されることによる凝縮液化とを繰り返していることが分かる。そして、このことから、作動流体8は、温度の低い水2によって冷却された後、再び太陽熱により加熱されて循環していると云える。

ヘ)上記(1)a)ないしd)並びに第1図及び第2図の記載より、ヒートパイプ式太陽熱発電装置は、発電し、給湯するものであることが分かる。

(3)引用発明
したがって、上記(1)及び(2)並びに図面を総合すると、引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「金属製密閉管7の外周に受熱媒体流通部3を設け、ここに温度の低い水2を流すと加熱されて温水になると共に、作動流体8は冷却されて下降し再び太陽熱により加熱されて上昇循環し発電機13を回転させ発電し、給湯するヒートパイプ式太陽熱発電装置。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・構造からみて、引用発明における「金属製密閉管7」は本願発明における「閉路管」に相当し、以下同様に、「温度の低い水2」は「冷水」に、「流す」は「通す」に、「温水」は「湯」に、「作動流体8」は「流体」に、「発電機13」は「発電機」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「受熱媒体流通部3を設け」は、「熱交換器を設け」という限りにおいて、本願発明における「熱交換管を巻きつけ」と一致する。
さらに、引用発明における「ヒートパイプ式太陽熱発電装置」は、本願発明における「流体エネルギ装置」に包含される。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「閉路管の外周に熱交換器を設け、ここに冷水を通すと加熱されて湯になると共に、流体は冷却されて下降し再び太陽熱により加熱されて上昇循環し発電機を回転させ発電し、給湯する流体エネルギ装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

<相違点>
閉路管の外周に設けられた熱交換器が、本願発明では、「閉路管の外周に」「巻きつけ」られた「熱交換管」であるのに対して、引用発明では、そのような「熱交換管」ではない点(以下、「相違点」という。)。

上記相違点について検討する。
熱交換器を設ける技術として、管の外周に熱交換管を巻きつける技術は、例えば、特開昭53-48263号公報(第1図及び第1図に関する記載を参照。)、特開昭55-162597号公報(第2図及び第2図に関する記載を参照。)、実願昭61-21449号(実開昭62-136767号)のマイクロフィルム及び原査定の拒絶の理由に引用された特開昭57-52760号公報(第2図及び第2図に関する記載を参照。)に記載されているように周知(以下、「周知技術」という。)である。
よって、引用発明における「金属製密閉管7」の外周に「受熱媒体流通部3を設け」る構成に、上記周知技術を採用し、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることに格別な困難性はない。

そして、本願発明を全体としてみても、引用発明及び周知技術から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

なお、閉路管の流体は冷却されて下降し再び加熱されて上昇循環し発電機を回転させ発電する流体エネルギ装置は、例えば、特開昭61-223204号公報、実願昭61-24435号(実開昭62-137306号)のマイクロフィルム、実願昭50-83314号(実開昭51-162142号)のマイクロフィルム及び特開昭57-52608号公報に記載されているように一般的に知られている技術であることを付言する。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-13 
結審通知日 2010-07-20 
審決日 2010-08-05 
出願番号 特願2000-163712(P2000-163712)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F03G)
P 1 8・ 121- Z (F03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 隆司平岩 正一  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 加藤 友也
八板 直人
発明の名称 流体エネルギ装置  

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