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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1224168
審判番号 不服2009-4014  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-24 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2000-384758「包装機」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月26日出願公開,特開2002-179006〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成12年12月19日の出願であって,平成21年1月8日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年2月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたものである。

第2.原査定
原査定における拒絶の理由は,以下のとおりのものと認める。
「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
1;特開昭62-016308号公報
2;特開昭62-016309号公報
3;特許第2927500号公報
4;特開昭62-016307号公報 」
上記刊行物のうち,特開昭62-016308号公報を,以下,「引用例1」といい,特許第2927500号公報を,以下,「引用例2」という。

第3.平成21年2月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成21年2月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概要
本件補正は,平成19年12月11日付けで補正された明細書の特許請求の範囲をさらに補正するもので,補正前に
「【請求項1】帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成するためのフィルム送り手段と,被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給するべく該被包装物を搬送するための搬送手段と,前記被包装物を包んだ状態で前記筒状のフィルムに繰り返しシールを施すためのシール手段と,前記搬送手段を駆動するための第1の駆動手段と,前記フィルム送り手段を駆動するための第2の駆動手段と,前記シール手段を駆動するための第3の駆動手段とを備え,前記シール手段は,前記フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられた第1のシール体及び第2のシール体を備え,該第1のシール体及び第2のシール体が第3の駆動手段により作動させられるよう構成された包装機であって,前記第2の駆動手段を,前記第3の駆動手段を基準に同期制御するよう構成したことを特徴とする包装機。
【請求項2】前記第3の駆動手段を,前記第1の駆動手段を基準に同期制御するよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の包装機。
【請求項3】前記フィルムが一定速度で送り出されている理想状態時に対応する信号を発生可能な理想信号発生手段を設け,前記第1及び第3の駆動手段が,それぞれ前記理想信号発生手段との間で同期制御されるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の包装機。
【請求項4】帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成するためのフィルム送り手段と,被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給するべく該被包装物を搬送するための搬送手段と,前記被包装物を包んだ状態で前記筒状のフィルムに繰り返しシールを施すためのシール手段と,前記搬送手段を駆動するための第1の駆動手段と,前記フィルム送り手段を駆動するための第2の駆動手段と,前記シール手段を駆動するための第3の駆動手段とを備え,前記シール手段は,前記フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられた第1のシール体及び第2のシール体を備え,該第1のシール体及び第2のシール体が第3の駆動手段により作動させられるよう構成された包装機であって,少なくとも前記第2の駆動手段を制御するための制御手段を設け,該制御手段は,少なくとも前記シール手段の位相に合わせてフィルム送りが行われるよう第2の駆動手段を制御するものであることを特徴とする包装機。
【請求項5】前記制御手段は,さらに前記搬送手段の位相に合わせて前記筒状のフィルムにシールが施されるよう少なくとも第3の駆動手段を制御するものであることを特徴とする請求項4に記載の包装機。
【請求項6】前記フィルムが一定速度で送り出されている理想状態時に対応する信号を発生可能な理想信号発生手段を設け,前記被包装物の搬送及び前記フィルムのシールが前記信号の位相に合わせて行われるよう構成したことを特徴とする請求項4に記載の包装機。
【請求項7】前記シール手段は,前記フィルムのシールに際しフィルムの切断を行うカット機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の包装機。
【請求項8】前記第1,第2及び第3の駆動手段は,いずれもサーボモータにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の包装機。
【請求項9】前記フィルム送り手段は,帯状のフィルムを繰り出す繰り出しロールと,繰り出された前記フィルムを筒状に案内する案内部材と,前記フィルムの端縁同士をシールしてセンターシールを施すためのセンターシールロールとを備え,前記繰り出しロール及びセンターシールロールが前記第2の駆動手段により作動させられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の包装機。
【請求項10】前記搬送手段は,前記被包装物を所定間隔を隔てて搬送して前記筒状のフィルム内に順次供給可能なコンベアを備え,該コンベアが前記第1の駆動手段により作動させられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の包装機。」

とあるのを,次のとおりに補正するものである。

「【請求項1】帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成するためのフィルム送り手段と,被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給するべく該被包装物を搬送するための搬送手段と,前記被包装物を包んだ状態で前記筒状のフィルムに繰り返しシールを施すためのシール手段と,前記搬送手段を駆動するための第1の駆動手段と,前記フィルム送り手段を駆動するための第2の駆動手段と,前記シール手段を駆動するための第3の駆動手段とを備え,前記シール手段は,前記フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられた第1のシール体及び第2のシール体を備え,該第1のシール体及び第2のシール体が第3の駆動手段により作動させられるよう構成された包装機であって,前記第2の駆動手段を,前記第3の駆動手段を基準に位相について同期制御するよう構成したことを特徴とする包装機。
【請求項2】前記第3の駆動手段を,前記第1の駆動手段を基準に同期制御するよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の包装機。
【請求項3】前記フィルムが一定速度で送り出されている理想状態時に対応する信号を発生可能な理想信号発生手段を設け,前記第1及び第3の駆動手段が,それぞれ前記理想信号発生手段との間で同期制御されるよう構成したことを特徴とする請求項1に記載の包装機。
【請求項4】帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成するためのフィルム送り手段と,被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給するべく該被包装物を搬送するための搬送手段と,前記被包装物を包んだ状態で前記筒状のフィルムに繰り返しシールを施すためのシール手段と,前記搬送手段を駆動するための第1の駆動手段と,前記フィルム送り手段を駆動するための第2の駆動手段と,前記シール手段を駆動するための第3の駆動手段とを備え,前記シール手段は,前記フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられた第1のシール体及び第2のシール体を備え,該第1のシール体及び第2のシール体が第3の駆動手段により作動させられるよう構成された包装機であって,少なくとも前記第2の駆動手段を制御するための制御手段を設け,該制御手段は,少なくとも前記シール手段の位相に合わせてフィルム送りが行われるよう第2の駆動手段を制御するものであることを特徴とする包装機。
【請求項5】前記制御手段は,さらに前記搬送手段の位相に合わせて前記筒状のフィルムにシールが施されるよう少なくとも第3の駆動手段を制御するものであることを特徴とする請求項4に記載の包装機。
【請求項6】前記フィルムが一定速度で送り出されている理想状態時に対応する信号を発生可能な理想信号発生手段を設け,前記被包装物の搬送及び前記フィルムのシールが前記信号の位相に合わせて行われるよう構成したことを特徴とする請求項4に記載の包装機。
【請求項7】前記シール手段は,前記フィルムのシールに際しフィルムの切断を行うカット機構を備えていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の包装機。
【請求項8】前記第1,第2及び第3の駆動手段は,いずれもサーボモータにより構成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の包装機。
【請求項9】前記フィルム送り手段は,帯状のフィルムを繰り出す繰り出しロールと,繰り出された前記フィルムを筒状に案内する案内部材と,前記フィルムの端縁同士をシールしてセンターシールを施すためのセンターシールロールとを備え,前記繰り出しロール及びセンターシールロールが前記第2の駆動手段により作動させられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の包装機。
【請求項10】前記搬送手段は,前記被包装物を所定間隔を隔てて搬送して前記筒状のフィルム内に順次供給可能なコンベアを備え,該コンベアが前記第1の駆動手段により作動させられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の包装機。」

請求項1の補正は,「同期制御」を,「位相について」の同期制御に限定するものである。請求項2,請求項3,請求項7ないし請求項10は,記載自体に変更はないが,これらは請求項1を引用するものであるから,実質的に上記と同じ内容の補正がなされたといえる。そして,これらの請求項の補正が,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものでないことは明らかである。
したがって,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

2.引用刊行物
(1)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1には,図面とともに,次の事項が記載されている。
1a)「包装材を横シールするエンドシーラーを駆動するモーターと第1のエンコーダーが接続され,この第1のエンコーダーと第1のサーボコントローラーを介して入口コンベア用サーボモーターとが電気的に結合され,・・・第1のエンコーダーはF/F変換器を介して第2のサーボコントローラー,包装材の繰り出しローラー用サーボモーター及び第3のサーボコントローラー,縦シーラー用サーボモーターにそれぞれ電気的に結合され,」(特許請求の範囲)
1b)「本発明は包装材を用い被包装体を包装する包装装置に関し,特には包装装置の主要なる駆動モーターを別々に設け,それぞれの駆動モーターは電気的にサーボコントローラーを有して有機的に結合された包装装置に関する。」(1頁右下欄15?19行)
1c)「従来の三方シール包装装置の概要を第3図を用いて説明すると,商品名やカットマークが印刷された包装用フィルム1は繰り出しローラー2,3により素材リール4から繰り出され,ガイドローラー5を経て製袋器6に供給される。一方,被包装体7は入口コンベア8のチェーン9に取着されたチェーンブレード10に押され製袋器6内に送り込まれる。製袋器6で製袋化された包装用フィルム1は被包装体7を内蔵したままフィルム送りローラー11及び包装用フィルム1の耳部を連続的に長手方向(縦方向)にシールする縦シールローラー12とにより引張られながら矢印の方向に送られる。・・・17,18はエンドシーラーでエンドシーラー軸19,20に軸着され,エンドシーラー軸19,20が回転することに伴い,上下のエンドシーラー17,18が噛み合うことにより包装用フィルム1はフィルム1の送り方向と直角方向(横方向)にシールされる」(2頁左上欄2行?同頁右上欄1行)
1d)「本発明の一実施例を第1図及び第2図に基づき説明する。41はエンドシーラー軸19を回転させるエンドシーラー用インダクションモーターであり,」(2頁右下欄9?12行)
1e)「71はデジタル入力操作部でF/F変換器72の変換比を調整するようになっている。このF/F変換器72は従来の包装装置の変速装置31に当るもので,この変換比を変えることにより,エンドシーラー軸19が一回転するとき,即ち包装用フィルム1の1カット分の長さを適宜変えることができることになる。同一の包装速度(エンドシーラー軸19の回転速度が同一)で包装用フィルム1の1カット分の長さの異るものを包装するとき,素材リール4から繰り出す包装用フィルム1の繰り出しローラー2の回転数を所定値に調整しなければならないが,デジタル入力操作部71のデジタルスイッチをセットするのみで簡単にF/F変換器72の変換比を精緻に選択できる。」(3頁左上欄12行?同頁右上欄5行)
1f)「本発明は,包装速度は速度設定ボリューム51を選定することにより,インバータ53によりエンドシーラー用インダクションモーター41は所定回転数で回転が継続される。この回転速度は機械的に接続された第1エンコーダ-54によりパルス信号が第1サーボコントローラー55に入力され,入口コンベア用サーボモーター42を起動する。このサーボモーター42の回転速度は第2エンコーダー及びジェネレーター57により検出され第1サーボコントローラー55に信号が送られる。第1サーボコントローラー55はこれらの信号を演算し,エンドシーラー用インダクションモーター41と入口コンベア用サーボモーター42の速度が同期するよう制御する。これに対し,繰り出しローラー用サーボモーター43と縦シーラー用サーボモーター44はデジタル入力操作部71で設定された値でF/F変換器72が設定された変換比で定められた信号が第2,第3サーボコントローラー58,61に送られ同期運転される。」(3頁左下欄12行?同頁右下欄10行)
記載事項1cは,第3図に示された従来の包装装置に関する説明であるが,この説明は,第1図に示された実施例の包装装置にもあてはまる(ただし,第1図では,エンドシーラー18側のエンドシーラー軸については引き出し線によって示されておらず,また,ガイドローラー5は記載されていない。)。

以上を総合すると,引用例1には,次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明」という。)。
「繰り出しローラー2,3により素材リール4から繰り出された包装用フィルム1が製袋器6に供給される一方,被包装体7が入口コンベア8のチェーン9に取着されたチェーンブレード10に押されて製袋器6内に送り込まれることにより,製袋化され被包装体7を内蔵した包装用フィルム1が,フィルム送りローラー11及び縦シールローラー12によって引張られながら搬送され,エンドシーラー軸が回転して上下のエンドシーラー17,18が噛み合うことにより,該包装用フィルム1が横方向にシールされるようにした包装装置であって,エンドシーラー用インダクションモーター41は速度設定ボリューム51で設定された速度で回転駆動され,また,エンドシーラー用インダクションモーター41に機械的に接続された第1エンコーダ-54が,入口コンベア用サーボモーター42を制御する第1サーボコントローラー55に電気的に接続されるとともに,F/F変換器72を介して,繰り出しローラー用サーボモーター43を制御する第2サーボコントローラー58に電気的に接続されており,F/F変換器72はエンドシーラー軸の一回転に対する繰り出しローラーの回転数に相当する変換比を定めるもので,デジタル入力操作部71で変換比を変えることにより,同一の包装速度(同一のエンドシーラー軸回転速度)で包装用フィルム1の1カット分の長さが異なるものを包装することができるようにした包装装置。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である引用例2には,図面とともに,次の事項が記載されている。
2a)「【請求項1】帯状フィルムを引き出して筒状フィルムを形成する手段と,被包装物を搬送するとともに該筒状フィルム内に順次供給する搬送手段と,該筒状フィルムの所定位置を横方向にシールカットあるいはカットする手段とを有する包装機において,該搬送手段を駆動する第1の駆動モータと,該シールカットあるいはカットする手段を駆動する第2の駆動モータと,該帯状フィルムを引き出す第3の駆動モータとがそれぞれ独立して駆動され,かつ,該帯状フィルムを一定速度で引き出している理想状態のときに該第3の駆動モータから出力される信号に対応した駆動信号を安定的に発生する理想駆動信号発生手段をさらに設け,該第1?3の駆動モータは,それぞれ該理想駆動信号発生手段との間でのみ同期をとるように制御駆動するようにしたことを特徴とする包装機における駆動制御方法。」
2b)「 従来,横ピロー包装機,その他により包装体を製造するには,ロール状に巻き取られた原反フィルムを連続した帯状フィルムとして引き出し,その途中で筒状フィルムに形成し,一方,その筒状フィルム内に被包装物を順次供給し,筒状フィルムの被包装物間毎を横方向にシールカットあるいはカットして包装体を製造している。そして,上記した帯状フィルムには所定間隔毎に意匠,模様などの印刷が施されている物がある。
このように構成された包装機にて包装作業を行うには,包装体の正規の位置に印刷部が配置されるようにするため等の要請から,被包装物の供給位置と,被包装物間毎を横方向にシールカットする位置及び,帯状フィルムを供給するタイミングのすべてが合致していることが要求される。
そして,従来は一つの駆動モータからの運動をカム,ギヤー等の伝達手段を用いてすべての駆動手段に伝達していたが,上記した種々の位置合わせを包装機の運転に先駆けて行うためには,その都度,各伝達手段を解除して仮設定した後伝達手段をつないで試運転し,設定位置で各駆動系の状態が合致するか否かを調べ,仮にその設定では位置が合致しない場合には,ふたたび伝達手段を解除して再設定するなどその取り扱いが煩雑であるため,最近では,各駆動系にそれぞれ独立の駆動用の駆動モータを配設したものが用いられている。すなわち,それぞれ独立しているため,他の駆動系の状態にかからわず,単独で駆動,すなわち状態を換えることができるので,初期設定が容易になる。しかし,一度設定した後正常の包装作業を確実かつ円滑に行うためには,各駆動モータに何等かの制御を行い,各モータ同士を同期させながら運転させる必要がある。
そこで,本出願人は先に特開昭63-281911号に示す制御方法を提供した。すなわち,この先提案にかかる方法は,帯状フィルムを引き出すモータを基準として他の2つの駆動系を制御し,その基準となる帯状フィルムを一定速度で引き出させておいて,帯状フィルムのカットマークの間隔を検出して所定間隔(カットマークピッチ)と異なる場合に,搬送装置の速度(被包装物の搬送速度)とエンドシーラーの回転速度並びに噛合タイミングを増減速してすべてのモータが同期するようにしていた。」(2欄10行?3欄34行)

(3)周知例として引用する,本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-66906号公報(以下,「引用例3」という。)には,次の事項が記載されている。
3a)「【0046】(分離コンベヤと包装機の動作について)・・・包装機11のサーボモータSM1,SM2の夫々が駆動され,フィルム繰出し機構68と横シール機構18は位相を同期させて運転を開始する。」

(4)周知例として引用する,本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-114058号公報(以下,「引用例4」という。)には,次の事項が記載されている。
4a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は同期制御装置に関し,シャフトレス新聞輪転機等,複数のモータによって回転駆動される複数の機械の機械軸の相互の位相(回転角度)を一定の関係に保持するように前記複数のモータを同期制御する場合に適用して有用なものである。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「繰り出しローラー2,3」,「被包装体7」,「入口コンベア8」,「入口コンベア用サーボモーター42」,「繰り出しローラー用サーボモーター43」及び「エンドシーラー用インダクションモーター41」は,それぞれ本願補正発明の「フィルム送り手段」,「被包装物」,「搬送手段」,「第1の駆動手段」,「第2の駆動手段」及び「第3の駆動手段」に相当し,引用発明の「エンドシーラー17,18」は,本願補正発明の「シール手段」ないし「第1のシール体及び第2のシール体」に相当する。
引用発明は,繰り出しローラー2,3により素材リール4から繰り出された包装用フィルム1が製袋器6に供給されるものであるから,本願補正発明における「帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成する」との要件を備え,引用発明は,被包装体7が入口コンベア8のチェーン9に取着されたチェーンブレード10に押されて製袋器6内に送り込まれるものであるから,本願補正発明における「被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給する」との要件を備える。
引用発明のエンドシーラー17,18は,フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられるものであることは明らかである。
したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば,
「帯状のフィルムを繰り出して筒状のフィルムを形成するためのフィルム送り手段と,被包装物を前記筒状のフィルム内に順次供給するべく該被包装物を搬送するための搬送手段と,前記被包装物を包んだ状態で前記筒状のフィルムに繰り返しシールを施すためのシール手段と,前記搬送手段を駆動するための第1の駆動手段と,前記フィルム送り手段を駆動するための第2の駆動手段と,前記シール手段を駆動するための第3の駆動手段とを備え,前記シール手段は,前記フィルムの移送経路を挟んで互いに対向するように配設され,互いに接触方向・離間方向へと移動可能に設けられた第1のシール体及び第2のシール体を備え,該第1のシール体及び第2のシール体が第3の駆動手段により作動させられるよう構成された包装機。」の点で一致し,次の点で一応相違する。
[相違点]
本願補正発明は,第2の駆動手段を,第3の駆動手段を基準に位相について同期制御するよう構成したのに対して,引用発明は,そのように構成されていない点。
上記相違点について検討する。
引用発明は,エンドシーラー用インダクションモーター41に機械的に接続された第1エンコーダ-54が,F/F変換器72を介して,繰り出しローラー用サーボモーター43を制御する第2サーボコントローラー58に電気的に接続されたものであり,このF/F変換器72は,エンドシーラー軸の一回転に対する繰り出しローラーの回転数に相当する変換比を定めるものであるから,繰り出しローラー用サーボモーター43はエンドシーラー用インダクションモーター41の回転と同期して運転されるというべきである。仮に,そのことが明確であるとはいえないとしても,包装機において,フイルムを引き出す手段を駆動するモータと,横方向にシールする手段を駆動するモータとを同期して運転することは,引用例2に記載されており(記載事項2a及び2b参照),引用発明において,繰り出しローラー用サーボモーター43をエンドシーラー用インダクションモーター41と同期して運転することは,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。ここで,「同期して」とは,「同一の回転速度で」との意味に限定されるものではない。
また,関連して動作する二つの機構をそれぞれモータにより駆動するに際して,位相について同期させることは,引用例3や引用例4に示されるように(記載事項3a及び4a参照),従来からよく知られている。なお,本願明細書の発明の詳細な説明には,「位相」に関して,「シール手段の位相に合わせて」(段落【0016】,【0017】),「フィルム2のエンドシールと,フィルム2の送り出しとの位相が合うように」(段落【0049】,【0059】)と記載されており,本願補正発明における「位相」は,シール手段ないしはフィルム送り手段の位相の意味に解される。
以上のことから,上記相違点は,引用例2及び周知技術を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことであり,したがって,本願補正発明は,引用発明,引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおりであるから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第4.本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明は,平成19年12月11日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下,「本願発明」という。「第3」の「1.本件補正の概要」参照。)

第5.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.引用刊行物」に記載したとおりである。

第6.対比・判断
本願発明は,本願補正発明から,「位相について」との限定を外したものであるから,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7.むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-21 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願2000-384758(P2000-384758)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 千馬 隆之
特許庁審判官 佐野 健治
鳥居 稔
発明の名称 包装機  
代理人 川口 光男  

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