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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1224173
審判番号 不服2009-12119  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-07-03 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2003-415852「コンベア装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月30日出願公開、特開2005-170641〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成15年12月15日に出願されたものであって、平成20年12月9日付けで拒絶理由が通知され、平成21年1月22日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月11日付けで拒絶査定がなされ、同年7月3日付けで同拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年1月22日付け手続補正書により補正された明細書及び特許請求の範囲、並びに願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下の事項により特定されるとおりのものであると認められる。

「【請求項1】
被搬送物間の設定距離が大きい区域及び小さい区域が混在する工程を含む生産ラインに用いられる、台車に載置された被搬送物の上流側から下流側への搬送を行うコンベア装置であって、
前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第1の駆動力伝達手段と、前記設定台車間隔DLと前記被搬送物間の設定距離が小さい区域における設定台車間隔DSとの差(DL-DS)分だけ前記第1の駆動力伝達手段の上流側に前記コンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第2の駆動力伝達手段とを、前記和(L+DL)ごとに前記コンベアに周期的に配設し、
前記牽引手段と前記第1の駆動力伝達手段との係合を選択的に解除する係合解除手段とを備えたコンベア装置。」

第3 引用文献
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭58-189065号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「本発明は、少なくとも塗装ブースと乾燥炉とを連続して配設した塗装ラインの製品搬送装置に関するものである。
この種の塗装ラインでは、ライン全体にわたつてコンベアを設け、製品を積載した台車等を前記コンベアに所定のピツチで係合保持させることによつて塗装ブースから出た製品を自動的に乾燥炉内に搬入して乾燥させるようにしている。
ここに、塗装品質を向上させるためには、塗装ブース内の製品ピツチを大きくする必要があるが、乾燥炉では製品が相互に干渉しない程度にピツチを小さくして乾燥炉の小型化とエネルギ消費量の節減とを図ることが望まれる。」(第1ページ左下欄第16行ないし右下欄第9行)

(2)「本発明は上記の如き従来の欠点に鑑みてなされたものであり、塗装ブースと乾燥炉とのコンベアを独立させることなく、乾燥炉内では製品ピツチを自動的に小さくできるようにした搬送装置を提供するものである。」(第1ページ右下欄第15ないし19行)

(3)「従来公知のスプレーノズル等を備えた塗装ブース1の出口部には、従来公知の乾燥炉2を連接し、前記塗装ブース1から乾燥炉2を経て図示しない積卸ピツト等に至る走行路3を設けている。走行路3は、製品を積み込んだ台車4の走行路であり、例えばレール等で構成されている。
又、前記台車4の全長は、製品の全長より大きくされており、台車4が相互に突き当ろうとも、各台車4に積載した製品が干渉しないようになつている。
一方、前記走行路3に沿うコンベア5は、例えばチエンコンベアで構成されており、図示しないモータ等で駆動されるようになつている。そして、前記コンベア5には、台車4に設けたフツク6の後面に当接係合してコンベア5による推力を台車4に伝達するチエンドツグ7を台車4の全長より大きなピツチで取り付けている。
又、前記コンベア5は、塗装ブース1内ではチエンドツグ7が台車4のフツク6に係合する位置に設けられているが、乾燥炉2の入口部にはチエンドツグ7がフツク6から外れる位置までコンベア5を下方に偏位案内させる離脱ガイド8を設けている。そして、乾燥炉2の出口部には、逆に、離脱位置にあるコンベア5をチエンドツグ7がフツク6に係合する位置まで上昇偏位させる復帰ガイド9を設けることにより、乾燥炉2の内部でチエンドツグ7がフツク6から外されるようにしている。
上記の構成において、図示しないモータでコンベア5を駆動すると、コンベア5に装着しているチエンドツグ7が台車4のフツク6に係合して塗装ブース1内の台車を出口部に向つて移動させる。尚、チエンドツグ7のピツチを台車4の全長よりも大きくしているので、すべてのチエンドツグ7に台車4が係合していようとも、台車相互の前後間隔が所定値以上に保持されており、所期の塗装品質が得られる。
このようにして塗装ブース1の出口部まで移動してきた台車4は、コンベア5からの推進力を受けて乾燥炉2内に入る。すると、この乾燥炉2の入口部では、離脱ガイド8による案内作用でコンベア5が下方に偏位してフツク6と係合しない位置までチエンドツグ7を下降させるので、台車4には推進力が伝わらない。
従つて、台車4を乾燥炉2の入口部に放置したままでコンベア5が運動するが、後続する台車4が衝突すると、この台車に押されて出口部に移動する。以下、同様にして後続する台車から前方の台車へと推進力が伝わるので、乾燥炉2内では、台車4がいわゆる押せ押せの状態で出口部へと移動する。尚、この時は、相前後する台車が相互に当接して台車間の距離がゼロとなつているので、乾燥炉2内での製品ピツチが小さくなる。
又、上記のようにして乾燥炉2の出口部まで押し寄せ移動させられた台車4のフツク6には、係合ガイド9による案内作用で上昇偏位したコンベア5のチエンドツグ7が係合する。このために、乾燥炉2の出口部に位置した台車4には再びコンベア5からチエンドツグ7及びフツク6を介して推進力が与えられるので、台車4のピツチが再び塗装ブース1内と同一値に戻され、コンベア5とともに積卸ピツト等へと移動する。
尚、実施例では、コンベア5を昇降させてコンベアと台車とを係脱させるようにしているが、係脱手段及び、係合手段の具体構造は任意である。又、コンベアは必ずしもチエンコンベアである必要はなく、かつ、必要に応じてコンベアの速度を可変制御できるようにしても良いことは詳述するまでもない。」(第2ページ左上欄第2行ないし右下欄第12行)

また、以下の事項を認定することができる。

(4)上記(1)、(3)、及び第1図から、「塗装ラインは塗装ブース1と乾燥炉2が混在する工程を含むものであること。」を認定することができる。

(5)上記(3)及び図面から、「台車4の全長と塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔との和の長さ範囲内において、前記台車4のフツク6に係合するチエンドツグ7をコンベア5に取り付けたこと。」を認定することができる。

(6)上記(3)及び図面から、「塗装ブース1内におけるチエンドツグ7は、台車4の全長と塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔の和ごとにコンベア5に配設されていること。」を認定することができる。

上記(1)ないし(3)の記載事項、(4)ないし(6)の認定事項、及び図面の記載からみて、引用文献1には、次の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「塗装ブース1及び乾燥炉2が混在する工程を含む塗装ラインに用いられる、台車4に載置された製品の上流側から下流側への搬送を行う搬送装置であって、
前記台車4の全長と前記塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔との和の長さ範囲内においてコンベア5に取り付けられた、前記台車4のフツク6に係合するチエンドツグ7を前記コンベア5に配設し、
前記フック6と前記チエンドツグ7との係合を解除する離脱ガイド8を乾燥炉2の入口部に配設した搬送装置。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である実願昭50-75118号(実開昭51-153992号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1)「本考案はダンボール箱等の被搬送物品を搬送の途中で、箱詰挿入、又は封函するために一時停止させる方式のコンベア装置に関するものである。」(明細書第1ページ第15ないし17行)

(2)「(1)はコンベアのチエンベルトであり、駆動源(2)からチエンホイル(3)(4)と伝動チエン(5)を介して駆動力を伝達される駆動軸(6)及びスプロケツト(7)により連続回動されている。(8)(9)は前記チエンベルト(1)の軌道を挟んで添設されたガイドレールであり、その一方のガイドレール(8)は第1図の矢印に示す搬送方向において、その搬送開始位置から図示する第1の停止位置Aまで上部案内面(8a)を有し、他方のガイドレールは同様に該停止位置Aから停止位置Bまで上部案内面(9a)を有しており、更にこれらガイドレール(8)(9)は夫々上部案内面の搬送方向両側に傾斜案内面(8b)(9b)を有している。
(10)(11)(12)は夫々送り爪であり、前記チエンベルト(1)に所定間隔毎に順次取付けられたものを一組として複数組取付けられており、このうち送り爪(10)(11)は夫々支軸(13)(14)によつて起き倒れ可能に枢支され、一方送り爪(12)は支軸(15)及びスプリング(16)によつて常時は非回転的に支持されている。また前記送り爪(10)はチエンベルト(1)の軌道側方ガイドレール(8)側に前記支軸を中心として揺動しうる案内ローラ(17)を有し、同様に送り爪(11)はガイドレール(9)側に案内ローラ(18)を有している。尚、(19)(20)は夫々安定ローラである。
又更に送り爪(10)及び(11)の垂直に立つた当接面(10a)及び(11a)は夫々支軸(13)(14)を支点としてコンベア搬送方向に対して前方向には該当接面(10a)(11a)の下端部(10b)(11b)がチエンベルト(1)のリンクプレート(1a)に当つて、倒れないが、後方向には90度まで回転して倒れる構造となつている。
送り爪(12)は、当接面(12a)と、その下部にチエンベルト(1)のリンクプレート(1a)に当たる回り止め部(12b)とを有し、更に前記支軸(15)の両端には安定ローラ(21)を装着しており、当接面(12a)は前記スプリング(16)で直立した状態を保つように構成されている。尚、(22)は搬送される函体である。」(明細書第2ページ第19行ないし第4ページ第14行)

(3)「(i) 搬送開始位置より図の矢印方向にガイドレール(8)の上部案内面(8a)上を走行してきた送り爪(10)の案内ローラ(17)は第2図(イ)に示す如く第1の停止位置Aに至つてガイドレール(8)の傾斜面(8b)を降下する。従つて函体(21)(当審注:「(21)」は「(22)」の誤記と認める。以下、同様である。)を搬送していた該送り爪(10)の当接面(10a)と該函体(22)の係合が外れて、チエンベルト(1)及び送り爪(10)はそのまま走行を続けるが前記函体(21)は停止する。
(ii) 次いで前記(i)の場合には倒れた状態で走行している送り爪(11)がチエンベルト(1)の走行につれて停止位置Aに至ると、第2図(ロ)に示す如く案内ローラ(18)はガイドレール(9)の傾斜面(9b)を上昇して、上部案内面(9a)に至り、従つて該送り爪(11)は起き上がつてその当接面(11a)は函体(22)に係合する。このため停止していた函体(22)を搬送するように作用し、更に次の停止位置Bを終点として該送り爪(11)は倒れ前記(i)の場合と同様に係合が外れるように構成しているので函体(22)は第2回目の停止をする。
(iii) この後チエンベルト(1)はそのまま走行しているので、第2図(ハ)に示す如く送り爪(12)が前記停止位置Bに至ると函体(22)は再び搬送される。」(明細書第4ページ第17行ないし第5ページ第18行)

(4)「以上の説明の如く、本考案はコンベア自体は連続して走行させつつ、起し倒しのガイドレールの案内によつて送り爪(10)が倒れてから次の送り爪(11)が来るまで、又は、送り爪(11)が倒れてから次の送り爪(12)が来るまでの間、即ち、送り爪(10)(11)(12)の取付ピツチによつて生ずる所要時間だけ一時停止させることができ、かつ構造が簡単で、高速でも低速でも確実に作用する装置であり、その実用効果は大なるものである。」(明細書第6ページ第3ないし11行)

また、以下の事項を認定することができる。

(5)第2図から、「送り爪(10)が函体(22)の搬送方向の長さと前記函体(22)の前後間隔との和の長さ範囲内に配設されていること。」を認定することができる。

(6)上記(3)及び第2図から、「送り爪(12)が送り爪(10)より、函体(22)を一時停止させる時間に相当するピッチだけ上流側に配設されていること。」を認定することができる。

(7)上記(3)及び第2図から、「送り爪(10)と送り爪(12)とを、函体(22)の搬送方向の長さと前記函体(22)の前後間隔との和ごとにチエンベルト(1)に配設されていること。」を認定することができる。

上記(1)ないし(4)の記載事項、(5)ないし(7)の認定事項、及び図面の記載からみて、引用文献2には、次の発明(以下、「引用文献2記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「コンベア装置において、チエンベルト(1)自体は連続して走行させつつ、函体(22)を一時停止させるために、
函体(22)の搬送方向の長さと前記函体(22)の前後間隔との和の長さ範囲内においてチエンベルト(1)に取り付けられた、前記函体(22)に係合する送り爪(10)と、前記函体(22)を一時停止させる時間に相当するピッチだけ前記送り爪(10)の上流側に前記チエンベルト(1)に取り付けられた、前記函体(22)に係合する送り爪(12)を、前記和ごとに前記チエンベルト(1)に配設し、
前記函体(22)と前記送り爪(10)との係合を選択的に解除するガイドレール(9)とを備えるようにした、コンベア装置。」

第4 対比
本願発明と引用文献1記載の発明を対比する。

引用文献1記載の発明において、「塗装ブース1」中の「台車4」の間隔は、上記「第3 1 (4)」及び引用文献1の第1図の記載からみて、「乾燥炉2」中の「台車4」の間隔よりも大きいことから、引用文献1記載の発明における「塗装ブース1」及び「乾燥炉2」は、それぞれ、本願発明における「被搬送物間の設定距離が大きい区域」及び「(被搬送物間の設定距離が)小さい区域」に相当する。

また、引用文献1記載の発明における「塗装ライン」は、その機能、構成、又は技術的意義からみて、「生産ライン」に相当し、以下、同様に、「台車4」は「台車」に、「台車4に載置された製品」は「台車に載置された被搬送物」に、「搬送装置」は「コンベア装置」に、「台車4の全長」は「台車の搬送方向の長さL」に、「塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔」は「被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DL」に、「和」は「和(L+DL)」に、「コンベア5」は「コンベア」に、「フツク6」は「牽引手段」に、それぞれ相当する。

さらに、引用文献1記載の発明における「前記台車4の全長と前記塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔との和の長さ範囲内においてコンベア5に取り付けられた、前記台車4のフック6に係合するチエンドッグ7」は、図示しないモータで「コンベア5」を駆動すると、「台車4」の「フツク6」に係合して、「台車4」を移動させるものであるから、
本願発明における「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第1の駆動力伝達手段と、前記設定台車間隔DLと前記被搬送物間の設定距離が小さい区域における設定台車間隔DSとの差(DL-DS)分だけ前記第1の駆動力伝達手段の上流側に前記コンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第2の駆動力伝達手段」と、
「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する駆動力伝達手段」である限りで、一致する。

さらにまた、引用文献1記載の発明における「乾燥炉2の入口部に配設」した「離脱ガイド8」は、「フツク6」と「チエンドツグ7」の係合を解除するものであるから、
本願発明における「前記牽引手段と前記第1の駆動力伝達手段との係合を選択的に解除する係合解除手段」と、
「前記牽引手段と前記駆動力伝達手段との係合を解除する係合解除手段」である限りで、一致する。

したがって、本願発明と引用文献1記載の発明は、以下の点で一致する。

「被搬送物間の設定距離が大きい区域及び被搬送物間の設定距離が小さい区域が混在する工程を含む生産ラインに用いられる、台車に載置された被搬送物の上流側から下流側への搬送を行うコンベア装置であって、
前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する駆動力伝達手段を前記コンベアに配設し、
前記牽引手段と前記駆動力伝達手段との係合を解除する係合解除手段とを備えたコンベア装置。」

そして、以下の点で相違する。

<相違点>
本願発明では、
「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する駆動力伝達手段」は、「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第1の駆動力伝達手段と、前記設定台車間隔DLと前記被搬送物間の設定距離が小さい区域における設定台車間隔DSとの差(DL-DS)分だけ前記第1の駆動力伝達手段の上流側に前記コンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第2の駆動力伝達手段」であり、
「前記牽引手段と前記駆動力伝達手段との係合を解除する係合解除手段」は、「前記牽引手段と前記第1の駆動力伝達手段との係合を選択的に解除する係合解除手段」であり、さらに、
上記「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第1の駆動力伝達手段と、前記設定台車間隔DLと前記被搬送物間の設定距離が小さい区域における設定台車間隔DSとの差(DL-DS)分だけ前記第1の駆動力伝達手段の上流側に前記コンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する第2の駆動力伝達手段」は「和(L+DL)」ごとに「周期的に」配設されているのに対し、
引用文献1記載の発明では、
「前記台車の搬送方向の長さLと前記被搬送物間の設定距離が大きい区域における設定台車間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記台車の牽引手段に係合する駆動力伝達手段」は、「前記台車4の全長と前記塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔との和の長さ範囲内においてコンベア5に取り付けられた、前記台車4のフツク6に係合するチエンドツグ7」であり、
「前記牽引手段と前記駆動力伝達手段との係合を解除する係合解除手段」は、「乾燥炉2の入り口部に配設」された「離脱ガイド8」であり、さらに
上記「前記台車4の全長と前記塗装ブース1内における台車4相互の前後間隔との和の長さ範囲内においてコンベア5に取り付けられた、前記台車4のフツク6に係合するチエンドツグ7」は本願発明における「和(L+DL)」に相当する「和」ごとに「周期的に」配設されているか不明な点(以下、「相違点」という。)。

第5 当審の判断
そこで、上記相違点について、以下に検討する。

本願発明と引用文献2記載の発明を対比する。

引用文献2記載の発明における「函体(22)」と本願発明における「台車」は、その機能、構成、又は技術的意義からみて、「被搬送物」である限りで一致し、以下、同様に、
「函体(22)の搬送方向の長さ」と「台車の搬送方向の長さL」は、「被搬送物の搬送方向の長さL」である限りで、
「函体(22)の前後間隔」と「設定台車間隔DL」は、「設定された被搬送物の間隔DL」である限りで、
「函体(22)の搬送方向の長さと前記函体(22)の前後間隔との和」と「台車の搬送方向の長さLと設定台車間隔DLとの和(L+DL)」は、「被搬送物の搬送方向の長さLと設定された被搬送物の間隔DLとの和(L+DL)」である限りで、
それぞれ一致する。

また、引用文献2記載の発明における「チエンベルト(1)」は、その機能、構成、又は技術的意義からみて、本願発明における「コンベア」に相当し、以下、同様に、「送り爪(10)」は「第1の駆動力伝達手段」に、「送り爪(12)」は「第2の駆動力伝達手段」に、「ガイドレール(9)」は「係合解除手段」に、それぞれ相当する。

したがって、引用文献2記載の発明は、以下のとおり言い換えることができる。

「コンベア装置において、コンベア自体は連続して走行させつつ、被搬送物を一時停止させるために、
被搬送物の搬送方向の長さLと設定された被搬送物の間隔DLとの和(L+DL)の長さ範囲内においてコンベアに取り付けられた、前記被搬送物に係合する第1の駆動力伝達手段と、前記被搬送物を一時停止させる時間に相当するピッチだけ前記第1の駆動力伝達手段の上流側に前記コンベアに取り付けられた、前記被搬送物に係合する第2の駆動力伝達手段を、前記和(L+DL)ごとに前記コンベアに配設し、
前記被搬送物と前記第1の駆動力伝達手段との係合を選択的に解除する係合解除手段とを備えるようにした、コンベア装置。」

引用文献1記載の発明は、上記「第3 1 (2)」に記載されているように、塗装ブース内の製品ピツチを大きくし、乾燥炉では製品が相互に干渉しない程度にピツチを小さくすることを目的とし、そのために「前記フック6と前記チエンドツグ7との係合を解除する離脱ガイド8を乾燥炉2の入口部に配設した」という発明特定事項を有するものである。

一方、コンベアで搬送される被搬送物間のピツチに関し、
先頭の被搬送物の搬送が一時的に停止され、後続の被搬送物の搬送が停止されなければ、コンベアで搬送される被搬送物間のピツチが小さくなること、及び、
コンベアで搬送される被搬送物間のピツチを小さくするために、先頭の被搬送物の搬送を一時的に停止し、後続の被搬送物の搬送を停止しないようにすることは、
それぞれ、技術常識である(前者については、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭58-183343号公報の第4ページ左上欄第7行ないし右上欄第1行及び図面を参照。後者については、本件出願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開平6-345291号公報の【0023】ないし【0030】及び図面、並びに同じく特開2002-347925号公報の【0020】ないし【0022】及び図面を参照。)。

また、塗装ラインにおいて、被搬送物である製品の搬送間隔が均一となるようにすることは、当業者が当然考慮すべき事項であるから、塗装ラインの製品搬送装置において、被搬送物である製品に係合し搬送する手段を被搬送物である製品の搬送方向の長さと設定された被搬送物である製品の間隔ごとに周期的にコンベアに配設することは、当業者が適宜行う設計的事項にすぎない。

したがって、引用文献1記載の発明において、上記技術常識を考慮し、小さくするピツチ分、即ち塗装ブース内の製品ピッチと乾燥炉での製品ピッチとの差分(本願発明における「前記設定台車間隔DLと前記被搬送物間の設定距離が小さい区域における設定台車間隔DSとの差(DL-DS)分」に相当する。)、先頭の被搬送物である台車の搬送を一時停止するようにし、その際、そのための機構として、被搬送物の搬送を一時停止するための発明である引用文献2記載の発明を適用し、相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

そして、本願発明を全体としてみても、本願発明のようにしたことにより奏するとされる効果は、引用文献1及び2記載の発明からみて格別のものともいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用文献1及び2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-23 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-12 
出願番号 特願2003-415852(P2003-415852)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 基樹  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 八板 直人
加藤 友也
発明の名称 コンベア装置  
代理人 柳野 隆生  
代理人 関口 久由  
代理人 森岡 則夫  

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