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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F02C
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F02C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02C
管理番号 1224177
審判番号 不服2009-19036  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-06 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 平成11年特許願第284722号「ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月17日出願公開、特開2001-107746〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成11年10月5日の出願であって、平成18年10月4日付けで手続補正書が提出され、平成21年1月19日付けで拒絶理由が通知され、平成21年3月19日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成21年5月1日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成21年6月4日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年6月30日付けで平成21年6月4日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年10月6日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に明細書を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成22年1月26日付けで書面による審尋がなされ、これに対して平成22年3月24日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成21年10月6日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の結論]
平成21年10月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
平成21年10月6日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年3月19日付けの手続補正書により補正された)以下のa.に示す請求項1を、b.に示す請求項1へと補正するものである。

a.本件補正前の特許請求の範囲
「【請求項1】 建屋屋上に吸気口を設け、同吸気口の入口に散水ノズルの散水部を設けて、同散水部を通過させた後の空気を前記吸気口から前記建屋の部屋内に吸い込み、フィルタを通してダクトよりガスタービンに導くガスタービン吸気系において、前記部屋内で前記フィルタの空気流入側の前面にデミスタを配設し、前記デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネルであり、同デミスタは、なめらかな波形又は三角形状に折り曲げた板を複数枚所定間隔を保って配列すると共に、各板には所定のピッチで流れ方向と交差するように付着する水滴の流れをせき止める部材を取付けてなることを特徴とするガスタービン吸気口への水滴流入防止装置。」

b.本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】 建屋屋上に吸気口を設け、同吸気口の入口に散水ノズルの散水部を設けて、同散水部を通過させた後の空気を前記吸気口から前記建屋の部屋内に吸い込み、フィルタを通してダクトよりガスタービンに導くガスタービン吸気系において、
前記部屋内で前記フィルタの空気流入側の前面にデミスタを配設し、前記デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネルであり、同デミスタは、なめらかな波形又は三角形状に折り曲げた板を複数枚所定間隔を保って配列すると共に、各板には所定のピッチで流れ方向と交差するように付着する水滴の流れをせき止める部材を取付けてなり、且つ、
前記散水部が前記建屋の屋根部に散水し、前記デミスタが前記部屋内であって前記建屋の屋根裏に配置されると共に前記建屋の屋根部に当接して支持されることを特徴とするガスタービン吸気口への水滴流入防止装置。」(なお、下線は補正箇所を示すためのものである。)

2.本件補正の適否についての判断
[理由1]
2.-1 新規事項
本件補正によって、請求項1には「前記散水部が前記建屋の屋根部に散水し、前記デミスタが前記部屋内であって前記建屋の屋根裏に配置されると共に前記建屋の屋根部に当接して支持される」という事項(以下、「補正事項」という。)が追加されたが、該補正事項は、願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には記載されていない。

審判請求書において請求人は、該補正事項は当初明細書等の図1の記載から明らかである旨を主張する。しかしながら、図1は、フィルタ16の空気流入側の前面にデミスタ1を配設すること等を示すための概略図にすぎず、「建屋の屋根部」が図番等を付して示されていないことからも分かるように、「建屋の屋根部」の形状や配置、「デミスタ」との関係について考慮して記載されたものではない。また、図1をみても、請求人のいう「建屋の屋根部」がどの部分を示すのかすら明らかではないことから、図1の記載からは、デミスタが屋根部に当接していることや、デミスタが屋根部に支持されることが記載されているとはいえない。

また、回答書において請求人は、デミスタの役割を考慮すれば、デミスタの上端部と屋根部との間に隙間が空いているとは考え難く、デミスタが屋根部に当接していると考えるのが自然である旨を主張する。しかしながら、デミスタは空気中の水滴を完全に除去するものではなく、また、本願の発明の詳細な説明でも、水滴が「ほとんど除去」されて「ガスタービンへの水滴の浸入を充分に防ぐ」ことができればよい旨が記載されている(段落【0022】ないし【0026】を参照。)ことからみて、本願では、実用上十分に水滴が除去できる配置形態であればよく、デミスタと屋根部との間に隙間があるような配置を排除しているとまでいえず、したがって、デミスタが屋根部に当接することが自明であるということはできない。仮に、水滴が通過するような隙間が空いていることが考え難いとしても、デミスタと屋根部とが直接に当接する必要はなく、両者がスペーサ等を介して支持され、隙間を設けないような形態も当然に想定されることから、デミスタが屋根部に当接することが自明であるということはできない。

さらに、審判請求書において請求人は、上記補正事項によって、「b)この散水により、建屋の屋根部が冷却されます。このとき、デミスタが『前記建屋の屋根部に当接して支持される』ので、デミスタから屋根部への伝熱作用により、デミスタが冷却されます。…(中略)…かかる構成では、デミスタが冷却されて空気温度よりも低温となっているので、…(後略)…」と主張する。しかしながら、散水により建屋の屋根部が冷却されるとしても、伝熱作用によってデミスタが冷却されるかどうかは、屋根部の材質や、デミスタの支持形態等によって異なるものであり、例えば断熱材が介在すれば伝熱作用で冷却されることはないため、請求人が主張する事項が図1の記載から明らかであるとはいえない。
しかも、上記主張によれば、デミスタが伝熱作用で空気温度より低温となるまで冷却されるという新たな作用効果が実質的に追加されており、上記補正事項は当初明細書等の記載の範囲を超えたものである。

よって、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由2]
2.-2 本件補正の目的
本件補正は、請求項1において、「前記散水部が前記建屋の屋根部に散水し、前記デミスタが前記部屋内であって前記建屋の屋根裏に配置されると共に前記建屋の屋根部に当接して支持される」という事項を追加するものである。
この補正によって、請求項1において、散水部、屋根部、及びデミスタの配置関係が特定されることとなったが、これらの配置関係は本件補正前の請求項1では特定されていない事項である。そして、該配置関係を新たに特定することによって、デミスタと屋根部との伝熱作用によりデミスタを空気温度より低温となるまで冷却し、水分除去効率を向上するという、本件補正前の請求項1に係る発明が有しない課題を解決することになった。
よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明特定事項を限定するものではなく、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の解決しようとする課題が同一でもないので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない。
さらに、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことも明らかである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[理由3]
2.-3 独立特許要件
仮に、本件補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正による補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.-3-1 引用文献記載の発明
2.-3-1-1 引用文献1記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-195809号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a.「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば火力発電所等に使用されるガスタービンに係り、特に大気温度が高くなることによるガスタービン出力の減少を抑制しようとするものに関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、ガスタービンに供給する燃焼用空気は、それに直結された空気圧縮機から発生される。この場合、燃焼用空気の体積は、空気圧縮機の回転数が一定であることから常に同一体積であるが、その質量は、大気温度が低く空気密度が高いときは大きく、大気温度が高く空気密度の低いときは小さくなる。
【0003】一方、ガスタービンの出力は、燃焼ガスの量と燃焼ガス温度とに比例するが、通常、ガスタービンは、燃焼ガス温度を一定とするように運転されることから、大気温度が高くなると燃焼ガス量が減少し、ガスタービン出力が減少することになる。」(段落【0001】ないし【0003】)

b.「【0008】
【課題を解決するための手段】この発明に係るガスタービン燃焼用空気冷却装置は、大気中に開口された空気取入口からガスタービンの燃焼用空気を取り込むシステムにおいて、空気取入口の近傍に水噴霧手段を設け、この水噴霧手段で噴霧された微細粒水の気化熱により取り込まれる空気を冷却するように構成したものである。
【0009】
【作用】上記のような構成によれば、空気取入口の近傍に設けられた水噴霧手段で噴霧された微細粒水の気化熱により取り込まれる空気を冷却するようにしたので、大規模な設備を用いることなく簡易でかつ経済的にも有利な構成でガスタービンに供給する燃焼用空気の温度を下げて、大気温度の上昇によるガスタービン出力の減少を抑制することができるようになるものである。
【0010】
【実施例】以下、この発明の一実施例について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施例で説明する火力発電所設備の一部を抜き出して示している。図1中符号11は火力発電所設備の屋上であり、略傘状に形成された複数(図示の場合は2つ)の空気取入部12,13が突設されている。これら空気取入部12,13は、その一方の空気取入部12を例にとると、図2に示すように、正面略傘状の長形状に形成されている。
【0011】そして、これら空気取入部12,13の内部は、図1に示すように空洞状になっており、その傘下が大気中に開口された空気取入口14,15となっている。なお、各空気取入口14,15には、それぞれ約1cm×1cm程度の升目の金網16,17が張られ、小石等の侵入が防がれている。
【0012】また、各空気取入部12,13の内部は、それぞれ仕切り板18,19によって中央から縦に分割されている。そして、空気取入口14,15から金網16,17を介して取り込まれた空気は、図中矢印で示すように、空気フィルタ20,21を介して混合された後、ダクト22を通って、床面23の台座24に載置されたガスタービン25に燃焼用空気として供給される。
【0013】以上の構成は、1つのガスタービン25に対して大気中から燃焼用空気を供給するための空気流通経路であるが、この火力発電所設備では、同様な構成の空気流通経路が6つ形成されており、6つのガスタービンを駆動できるようになっている。この場合、図1に示す空気取入部12,13の仕切り板18,19より左及び右側が、それぞれ他の図示しないガスタービンへの空気流通経路を構成する如くして、6つの空気流通経路が形成されている。
【0014】ここで、上記空気取入口14,15の近傍には、水噴霧機構26,27が設けられている。これら水噴霧機構26,27は、その一方の水噴霧機構26を例にとると、図3に示すように、空気取入口14の周縁に沿って並設された2本のパイプ28,28と、これら2本のパイプ28,28にそれぞれ取り付けられる複数のスプレーノズル29,29,……とよりなり、各パイプ28,28に水供給用パイプ30を介して圧力水を注入することにより、各スプレーノズル29,29,……から水を霧状に放出させるようにしたものである。」(段落【0008】ないし【0014】)

c.「【0018】したがって、上記実施例のような構成によれば、空気取入口14,15に設けた水噴霧機構26,27によって水を霧状に放出させることにより、噴霧された微細粒水の気化熱により取り込まれる空気を冷却するようにしたので、大規模な設備を用いることなく簡易でかつ経済的にも有利な構成でガスタービン25に供給する燃焼用空気の温度を下げて、大気温度の上昇によるガスタービン25の出力の減少を抑制することができる。」(段落【0018】)

上記a.ないしc.及び図面から、次のことが分かる。

d.上記b.の段落【0012】及び【0013】並びに図1から、空気取入口14,15とダクト22との間には、仕切り板18,19で仕切られた空気流通経路が存在することが分かる。

e.上記b.及びd.並びに図1から、空気フィルタ20,21は、空気流通経路内であって屋上11の裏に配置されることが分かる。

f.上記a.ないしd.及び図面から、空気取入部12,13、空気取入口14,15、空気流通経路等によって、ガスタービンの吸気系が構成されていることが分かる。

上記a.ないしf.から、引用文献1には、次の発明が記載されているといえる。

「屋上11に空気取入部12,13を設け、該空気取入部12,13の空気取入口14,15に水噴霧機構26,27を設けて、該水噴霧機構26,27を通過させた後の空気を空気取入口14,15から空気流通経路内に吸い込み、空気フィルタ20,21を通してダクト22よりガスタービン25に導くガスタービン吸気系において、
水噴霧機構26,27が屋上11に水を霧状に放出し、空気フィルタ20,21が空気流通経路内であって屋上11の裏に配置される、
ガスタービン吸気装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

2.-3-1-2 引用文献2記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-253029号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

a.「【0002】
【従来の技術】図8に示す通り、ガスタービンaは運転時に外気bを吸入する。この外気bには微粉塵や雨水、ミスト、排気ガス中のカーボン微粒子、塩分粒子等の大気塵が浮遊しているので、このような大気塵がガスタービン内部の腐食、汚染の原因となると共に、特に空気圧縮機cに付着して空気圧縮機cの性能低下を生じさせ、発電出力を低下させるという問題がある。そこで大気塵の吸い込みを未然に防止するために、ガスタービンaの空気吸込口dには、空気から大気塵を機械的に分離除去して清浄化するための集塵装置(フィルタユニット)eが設置されている。このフィルタユニットeは、特開平5-106464号公報にも開示されるように、巻取式帯状ガラス繊維の濾材から成る粗フィルタfと、イオン交換繊維フィルタを折込型とした中性能フィルタgの2段式に構成されている。尚、図中hはガスタービンaのタービン部、iはガスタービンaによって駆動される発電機を示す。前記従来のガスタービン吸気用フィルタユニットは、充分に大気塵を除去できないためガスタービンの発電出力の低下を生じさせ、また、粉塵保持容量が小さいため年2?3回の頻度でフィルタ交換が必要となる。このため、発電出力を低下させない高効率な吸気用フィルタユニットで年1回義務づけられているガスタービンの定期点検時にフィルタ交換ができる長寿命のガスタービン吸気用フィルタユニットの提案が望まれている。」(段落【0002】)

b.「【0005】本発明のガスタービン吸気用フィルタユニットを構成する前記パネル型デミスターは、雨水の浸入を防止するためのものであり、従来種々公知のものがあるが、例えば、動植物性繊維および合成繊維をスプリング状にカール加工して多くの小さな弾性体をつくり、これを結合剤で被覆結合したものを板状にして金枠内に封入したものが知られている。このデミスターは、一般には、厚みが10?50mm、風速2m/sの時の濾過効率(JIS8種,比色法)が15?60%、圧力損失が1?10mmAqである。前記デミスターは圧力損失が小さく、即ち、通気抵抗が小さく、水滴に対して濾過効率が高いことが特徴で、また、汚れた場合に枠から外して洗浄することで再使用できる。もちろん、前記パネル型デミスターとして雨水の浸入を屈折路で防ぐようにした屈折型の羽根式エリミネータ等も使用できる。」(段落【0005】)

c.「【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に付き説明する。図1は、本発明ガスタービン吸気用フィルタユニットの実施例を示すもので、図略のガスタービンの吸気用ダクトに連設したケーシング1内にガスタービンの連続運転にとって有害な塵埃等の有害物質を吸気空気中から除去するために、パネル型デミスター2、巻取帯状型あるいは吹流し型プレフィルタ3、更に本発明の高性能フィルタ4から成る3段式のフィルタユニット5を設けるようにした。
【0010】デミスターは、サラン繊維(サランロック,登録商標)を金枠内に封入固定したもので、定格風速が2.5m/s、圧力損失が3mmAq、濾過効率(JIS8種,重量法)が28%で、寸法がタテ610mm×ヨコ610mm×厚さ35mmのものを前記ケーシング1内に16個(4列4段)設置するようにした。」(段落【0009】及び【0010】)

上記a.ないしc.及び図面から、次のことが分かる。

d.上記c.及び図1から、フィルタ3、4の空気流入側の前面に、パネル型デミスタ-2が配設されていることが分かる。

e.上記c.から、パネル型デミスター2は、複数のデミスタ-を配設してなるパネルであることが分かる。

f.上記a.及びb.並びに図1及び8から、パネル型デミスタ-2によって雨水浸入防止装置が構成されることが分かる。

上記a.ないしf.から、引用文献2には、次の発明が記載されているといえる。

「フィルタ3、4の空気流入側の前面にパネル型デミスタ-2を配設し、該パネル型デミスタ-2は、複数のデミスターを配設してなるパネルとした、雨水浸入防止装置。」(以下、「引用文献2記載の発明」という。)

2.-3-2 対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「屋上11」は、その構成及び機能等からみて、本願補正発明における「建屋屋上」に相当し、以下同様に、「空気取入部12,13」は「吸気口」に、「空気取入口14,15」は「吸気口の入口」に、「水噴霧機構26,27」は「散水ノズルの散水部」に、「空気流通経路」は「建屋の部屋」に、「空気フィルタ20,21」は「フィルタ」に、「ダクト22」は「ダクト」に、「ガスタービン25」は「ガスタービン」に、「屋上11に水を霧状に放出する」は「建屋の屋根部に散水し」に、「屋上11の裏」は「建屋の屋根裏」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1記載の発明における「ガスタービン吸気装置」は、本願補正発明における「ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置」に、「ガスタービン吸気装置」の限りにおいて相当する。

よって、本願補正発明と引用文献1記載の発明とは、
「建屋屋上に吸気口を設け、同吸気口の入口に散水ノズルの散水部を設けて、同散水部を通過させた後の空気を前記吸気口から前記建屋の部屋内に吸い込み、フィルタを通してダクトよりガスタービンに導くガスタービン吸気系において、
前記散水部が前記建屋の屋根部に散水する、
ガスタービン吸気装置。」
の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願補正発明は、「前記部屋内で前記フィルタの空気流入側の前面にデミスタを配設し、前記デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネルであり、同デミスタは、なめらかな波形又は三角形状に折り曲げた板を複数枚所定間隔を保って配列すると共に、各板には所定のピッチで流れ方向と交差するように付着する水滴の流れをせき止める部材を取付けてなり」、「前記デミスタが前記部屋内であって前記建屋の屋根裏に配置されると共に前記建屋の屋根部に当接して支持される」、「ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置」であるのに対し、
引用文献1記載の発明は、「ガスタービン吸気装置」であるものの、本願補正発明のような「ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置」を備えていない点(以下、「相違点」という。)。

2.-3-3 判断
(1)上記相違点について検討する。
本願補正発明と引用文献2記載の発明とを対比すると、引用文献2記載の発明における「雨水浸入防止装置」は、その機能からみて、本願補正発明における「水滴流入防止装置」に相当し、同様に、「フィルタ3、4の空気流入側の前面にパネル型デミスタ-2を配設し、該パネル型デミスタ-2は、複数のデミスターを配設してなるパネルとした」は「前記フィルタの空気流入側の前面にデミスタを配設し、前記デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネルであり」に相当する。
よって、引用文献2には、本願補正発明の用語を用いると、「フィルタの空気流入側の前面にデミスタを配設し、デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネルである、水滴流入防止装置。」の発明が記載されている。

一方、デミスタとして、「なめらかな波形又は三角形状に折り曲げた板を複数枚所定間隔を保って配列すると共に、各板には所定のピッチで流れ方向と交差するように付着する水滴の流れをせき止める部材を取付け」たものを用いることは、従来周知の技術(以下、「周知技術1」という。例えば、実願昭58-203089号(実開昭60-108327号)のマイクロフィルム、及び実願昭60-185007号(実開昭62-90719号)のマイクロフィルムを参照。)である。
また、ガスタービン装置において、大量の水分流入による構成部品の腐食を防止するため、デミスタで空気中の水分を減少させることは、従来周知の技術課題(以下、「周知技術2」という。例えば、上記引用文献2の段落【0002】及び【0005】、特開平10-238365号公報の段落【0002】、【0037】ないし【0039】、図4、並びに特開平11-137938号公報の段落【0016】及び図1を参照。)である。

上記周知技術2に照らせば、引用文献1記載の発明においても、水噴霧機構26,27によって放出された水が大量に流入した場合、構成部品が腐食することは明らかであることから、引用文献1記載の発明において、大量の水分の流入を防止するために、引用文献2記載の発明を適用して「空気フィルタ20,21の空気流入側の前面にデミスタを配設し、同デミスタは複数のデミスタエレメントを配設してなるパネル」とするとともに、上記周知技術1を適用して該デミスタを「なめらかな波形又は三角形状に折り曲げた板を複数枚所定間隔を保って配列すると共に、各板には所定のピッチで流れ方向と交差するように付着する水滴の流れをせき止める部材を取付け」たものとして構成することによって、「ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置」を設けることは、当業者が格別の創意を要することなく想到できたことである。

そして、引用文献1記載の発明においてこのような構成を採用すれば、空気フィルタ20,21が空気流通経路内であって屋上11の裏に配置されるものであることから、該空気フィルタ20,21の空気流入側の前面に配設されたデミスタは、当然に空気流通経路内であって屋上11の裏(すなわち、「前記部屋内であって前記建屋の屋根裏」)に配置されることとなる。また、デミスタを空気流通経路内(すなわち、「部屋内」)に配置するためには、空気流通経路内(すなわち、「部屋内」)の所定の位置に何らかの態様でデミスタを支持させる必要があることは明らかであり、デミスタの配置を具体化するに際し、屋根に当接して支持させることは、当業者が設計上適宜に決定し得た程度のことにすぎない。

(2)そして、本願補正発明を全体としてみても、本願補正発明の奏する効果は、引用文献1及び2記載の発明並びに周知技術1及び2から当業者が予測できた範囲内のものであり、格別に顕著な効果ではない。

なお、審判請求書において請求人は、散水部が屋根部に散水し、デミスタが屋根部に当接して支持されることによって、伝熱作用によりデミスタが冷却されて空気温度よりも低温となり、空気中の湿分の除去効率が向上する効果がある旨を主張するが、このような効果が認められないことは、上記第2.[理由]2.[理由1]2.-1で既に示したとおりである。

また、審判請求書において請求人は、特開2000-265585号公報及び特開2000-297502号公報を例示して、屋根部に散水することによって屋根裏の部屋内のデミスタが冷却されることは技術常識である旨を主張する。しかしながら、屋根部の材質等(例えば、屋根部に断熱材を介在させる。)によっては、屋根裏の部屋内のデミスタが必ずしも冷却されないことも想定されるので、本件補正発明において、部屋内のデミスタが冷却されることが明らかであるとはいえない。さらに、仮に、輻射効果によって部屋内が必ず冷却されるならば、引用文献1記載の発明でも同様に、屋根裏の部屋に相当する「空気流通経路」は必ず冷却され、空気流通経路に配設したデミスタも冷却されることになるので、引用文献1記載の発明との対比においてはこの主張に意味はない。さらに、デミスタが冷却されると湿分の除去効率が向上することは周知の事項(必要ならば特開昭58-170501号公報を参照。)でもある。したがって、いずれにしろ、請求人のこの主張からは、本願補正発明の奏する効果が格別に顕著なものであるとはいえない。

(3)よって、本願補正発明は、引用文献1及び2記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(4)以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.むすび
よって、[理由1]、[理由2]又は[理由3]により、結論のとおり決定する。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成21年10月6日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2.[理由]1.a.の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用文献記載の発明
引用文献1には、上記第2.[理由]2.[理由3]2.-3-1に記載したとおりの発明が記載されている。
また、引用文献2には、上記第2.[理由]2.[理由2]2.-3-2に記載したとおりの発明が記載されている。

3.対比及び判断
本願発明は、上記第2.[理由]2.[理由3]2.-3で検討した本願補正発明における発明特定事項から、「前記散水部が前記建屋の屋根部に散水し、前記デミスタが前記部屋内であって前記建屋の屋根裏に配置されると共に前記建屋の屋根部に当接して支持される」という事項を削除して、本願補正発明を上位概念化したものである。
したがって、上記第2.[理由]2.[理由3]2.-3で検討したとおり、本願発明の発明特定事項をすべて含む本願補正発明が引用文献1及び2記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて当業者が格別の創意を要することなく想到できたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が格別の創意を要することなく想到できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1及び2記載の発明並びに周知技術1及び2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-21 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-11 
出願番号 特願平11-284722
審決分類 P 1 8・ 572- Z (F02C)
P 1 8・ 121- Z (F02C)
P 1 8・ 561- Z (F02C)
P 1 8・ 575- Z (F02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 泰井上 茂夫  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 加藤 友也
西山 真二
発明の名称 ガスタービン吸気口への水滴流入防止装置  
代理人 酒井 宏明  
代理人 高村 順  

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