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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1224181
審判番号 不服2009-22570  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-18 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2004- 49640「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開、特開2005-237536〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯

本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成16年 2月25日 出願
平成21年 8月14日 拒絶理由通知
平成21年 9月14日 手続補正
平成21年10月 6日 拒絶査定
平成21年11月18日 拒絶査定不服審判請求、手続補正
平成22年 4月 5日 審尋
平成22年 6月 2日 回答書

2.補正内容、本願発明

(1)補正内容
平成21年11月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含んでおり、本件補正の前後における特許請求の範囲の記載は、下記のとおりである。

(補正前)
「【請求項1】
遊技球が遊技盤面上の始動入賞口に入賞することで抽選が実行され、所定期間の図柄変動を経て抽選結果報知図柄を表示する図柄変動パターン演出によって、当該抽選の結果を報知する表示装置が設けられた遊技機であって、
前記図柄変動パターン演出において、前記図柄変動の開始から終了まで連続した変動後に前記抽選結果報知図柄を表示する第1のモード、及び前記図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に前記抽選結果報知図柄を表示する第2のモードの何れかで前記図柄変動パターン演出の実行を制御する制御手段と、
前記第1のモード又は第2のモードを選択する選択手段と、
前記表示装置が前記図柄変動パターン演出を実行できない状態で、抽選に有効な前記遊技球の始動入賞口への入賞があった場合に、当該入賞回数を保留分として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された保留数に相当する数を表示する保留相当数表示手段と、
前記選択手段で第2のモードが選択された場合に、前記保留相当数表示手段を制御して、前記仮停止状態を前記抽選結果報知図柄の表示とみなして擬似的に保留分を消化する表示とすると共に、前記第2のモードによる図柄変動パターン演出の終了後に、前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された実保留分の表示に復帰させる保留表示制御手段とを有し、
前記保留表示制御手段による、実保留分の表示への復帰の際に、特別演出を実行する、ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記記憶手段に複数の保留分が記憶されているときに、前記選択手段による第2のモードの選択が可能であることを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記第2のモードが選択された場合には、前記複数パターンの各々の実行に際して特定のキャラクタを前記表示装置に表示させ、前記第1のモードが選択された場合には、前記特定のキャラクタを出現させるか否かを抽選するキャラクタ表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。
【請求項4】
前記特別演出が、前記図柄変動パターン演出中、或いは当該図柄変動パターン演出に続いて、キャラクタが保留分を増加する演出を実行して、実保留分の表示に復帰させることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項記載の遊技機。」

(補正後)
「【請求項1】
遊技球が遊技盤面上の始動入賞口に入賞することで抽選が実行され、所定期間の図柄変動を経て抽選結果報知図柄を表示する図柄変動パターン演出によって、当該抽選の結果を報知する表示装置が設けられた遊技機であって、
前記図柄変動パターン演出において、前記図柄変動の開始から終了まで連続した変動後に前記抽選結果報知図柄を表示する第1のモード、及び前記図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に前記抽選結果報知図柄を表示する第2のモードの何れかで前記図柄変動パターン演出の実行を制御する制御手段と、
前記第1のモード又は第2のモードを選択する選択手段と、
前記表示装置が前記図柄変動パターン演出を実行できない状態で、抽選に有効な前記遊技球の始動入賞口への入賞があった場合に、当該入賞回数を保留分として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された保留数に相当する数を表示する保留相当数表示手段と、
前記選択手段で第2のモードが選択された場合に、前記保留相当数表示手段を制御して、前記仮停止状態を前記抽選結果報知図柄の表示とみなして擬似的に保留分を消化する表示とすると共に、前記第2のモードによる図柄変動パターン演出の終了後に、前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された保留メモリ内の実保留分の表示に復帰させる保留表示制御手段とを有し、
前記記憶手段に複数の保留分が記憶されているときに、前記選択手段による第2のモードの選択が可能であり、
前記保留表示制御手段による、実保留分の表示への復帰の際に、特別演出を実行する、ことを特徴とする遊技機。
(審決注:提出された補正書には「前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された保留メモリ内の保留メモリ内の実保留分の表示に復帰実保留分の表示に復帰させる」と記載されているが、「保留メモリ内の保留メモリ内の」及び「実保留分の表示に復帰実保留分の表示に復帰させる」は明らかな誤記(重複記載)であるので、上記のように補正後の請求項1を認定した。)
【請求項2】
前記第2のモードが選択された場合には、前記複数パターンの各々の実行に際して特定のキャラクタを前記表示装置に表示させ、前記第1のモードが選択された場合には、前記特定のキャラクタを出現させるか否かを抽選するキャラクタ表示制御手段をさらに有することを特徴とする請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記特別演出が、前記図柄変動パターン演出中、或いは当該図柄変動パターン演出に続いて、キャラクタが保留分を増加する演出を実行して、実保留分の表示に復帰させることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遊技機。」

本件補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項1を引用する補正前の請求項2を独立形式として請求項1としたものである。また。当該補正に伴って、補正前の請求項3、4を項番を繰り上げて請求項2、3としたものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則3条1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法17条の2第4項1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

(2)本願発明
以上のように、本件補正は適法に行われたものであるから、本願の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、上記(補正後)の請求項1に記載された発明のとおりのものと認める。

3.引用文献、引用発明

原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-685号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊技者の操作に応じて変化する遊技状況を検出する遊技状況検出手段と、
前記遊技状況検出手段による検出結果に基づく所定の契機の発生によって、識別情報の変動表示を開始させ、所定時間経過後に停止表示可能な可変表示装置と、
前記識別情報が特定表示態様となって最終的に停止表示されることを必要条件に、遊技者に有利な特別遊技状態を発生させる特別遊技状態発生手段とを備えた遊技機において、
前記所定の契機の1回の発生によって、前記識別情報の変動停止表示を複数回行いうるようにしたことを特徴とする遊技機。
・【0043】・・・パチンコ機1の遊技盤2には、作動口3及び大入賞口4が設けられている。
・【0045】遊技盤2の中央部分には、可変表示装置としての特別図柄表示装置(以下、単に「表示装置」という)13が組込まれている。表示装置13は、液晶ディスプレイ(LCD)よりなる表示部13aを備えており、ここに複数の図柄列が表示される。図2に示すように、本実施の形態では、これらの図柄列として左図柄列14、中図柄列15及び右図柄列16の3つの図柄列が表示されるが、それ以外の数の図柄列が表示されてもよい。
・【0049】図2(a)に示すように、特別図柄表示装置13の表示部13aでは、各図柄列14?16の図柄変動(回転変動)が、遊技球5の作動口3への入賞に基づいて開始させられる。また、大当たり図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択され、これが停止図柄として設定される。停止図柄とは、各図柄列14?16が図柄変動を停止したときに有効枠に表示される図柄である。
・【0050】大当たり図柄は、リーチ状態を経た後、遊技者に有利な特別遊技状態としての大当たり状態を発生させるための図柄である。
・【0054】遊技球5の作動口3への入賞に基づいて各図柄列14?16の図柄変動が開始させられることはすでに説明したが、この変動表示中にさらに遊技球5が作動口3に入賞した場合には、その分の変動表示は、原則として現在行われている変動表示の終了後に行われる。つまり、変動表示が待機(保留)される。この保留される変動表示の最大回数は、パチンコ機の機種毎に決められている。本実施の形態では保留最大回数が4回に設定されているが、これに限られるものではない。
・【0055】図1に示すように、表示装置13において、表示部13aの上方には、遊技者に保留状態(記憶状態)を可視表示するための発光ダイオード(LED)からなる保留ランプ18a,18b,18c,18dが組み込まれている。保留ランプ18a?18dの数は、前述した保留最大回数と同じ(この場合4個)である。保留ランプ18a?18dは、原則として変動表示の保留毎に点灯させられ、その保留に対応した変動表示の実行に伴い消灯させられる。
・【0059】・・・図7?図13のフローチャートは、制御装置24によって実行される各種ルーチンを示している。
・【0061】図6に示すように、内部乱数カウンタCIは、表示装置13での大当たり状態を決定するためのものである。
・【0065】加えて、本実施の形態では、ノーマル外れリーチ変動処理なるものが行われるようになっている。これは、作動口3に遊技球5が入賞しない場合であっても、特別の条件が満たされることにより、制御装置24が表示装置13での図柄17A?17Hの変動表示を行わせるものである。より詳しくは、制御装置24は、ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTを獲得し、その獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTの分だけ、作動口3への遊技球5の入賞とは別に、いわば疑似的に表示装置13での図柄17A?17Hの変動表示を行うのである。図14(a)?(c)に示すように、ノーマル外れリーチ変動用乱数カウンタCHMZは、「00」?「99」までの値をとり、そのときどきのカウント値に基づいて、ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTや、該リーチ変動処理に際しての停止図柄(RHZ1,RHZ2)が設定されるようになっている。なお、このノーマル外れリーチ変動に際しては、変動表示が所定の図柄の組み合わせ(「7」「8」「7」等の外れリーチ図柄)で停止されやすいように設定されている。
・【0072】次に、図8のフローチャートに示す「格納処理ルーチン」について説明する。このルーチンの主な機能は、遊技球5が作動口3に入賞する毎に、乱数カウンタCI,CO,CDL,CDC,CDRの値を図柄乱数エリア41(i)?45(i)に格納することである。
・【0073】当該「格納処理ルーチン」が開始されると、制御装置24は、ステップS10において、作動口用スイッチ21の検出結果に基づき、遊技球5が作動口3に入賞したか否かを判定する。そして、この判定条件が満たされていない場合には、その後の処理を一旦終了し、満たされている場合には、ステップS11において、保留カウンタCHの値が最大保留回数(この場合「4」)よりも小さいか否かを判定する。
・【0074】保留カウンタCHの値が最大保留回数よりも小さい場合には、ステップS12において、保留カウンタCHに「1」を加算する。また、続くステップS13において、制御装置24は対応する保留ランプ(18aから18dのうちの1つ)を点灯させ、ステップS14へ移行する。一方、前記ステップS11の判定条件が満たされていない場合には、前述したステップS12以降の処理を行うことなくその後の処理を一旦終了する。従って、図柄変動表示は、4回までしか保留されず、それ以上の入賞があっても保留は記憶されない。
・【0078】この「特別電動役物制御ルーチン」が開始されると、制御装置24はまずステップS20において、保留カウンタCHの値が「0」でないか否かを判定する。そして、否定判定された場合、つまり、保留カウンタCHの値が「0」の場合には、その後の処理を一旦終了する。これに対し、前記判定条件が満たされている(CH=1,2,3,4)場合には、ステップS30において、「i」を「0」に設定し、次のステップS40において保留カウンタCHが「i」と同一でないか否かを判定する。
・【0081】次に、制御装置24は、ステップS90において、図柄の変動開始処理を実行する。詳しくは、図11の「変動開始処理ルーチン」に示すように、ステップS901において、内部乱数カウンタCIの値が大当たり値であるか否かを判定する。そして、内部乱数カウンタCIの値が大当たり値の場合には、ステップS902において、大当たり値に対応する大当たり図柄を停止図柄としてメモリに記憶し、ステップS905へ移行する。
・【0085】そして、ステップS905又はステップS906から移行して、ステップS907においては、ノーマル外れリーチ変動回数獲得処理を実行する。
・【0086】より詳しくは、図12の「ノーマル外れリーチ変動回数・停止図柄獲得処理ルーチン」に示すように、ステップS9081において、制御装置24は、ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTを獲得する。この変動回数RHCNTの獲得に際しては、図14(a)に示すノーマル外れリーチ変動回数設定テーブルが参酌される。
・【0095】さて、上記「ノーマル外れリーチ変動回数・停止図柄獲得処理ルーチン」、すなわち、「変動開始処理ルーチン」におけるステップS907の処理を実行した後、制御装置24は、ステップS908において、前記表示装置13の図柄変動を開始させ、「変動開始処理ルーチン」を終了する。
・【0096】上記のように、ステップS90(「変動開始処理ルーチン」)の処理を実行した後、制御装置24は、図9のステップS100において、ノーマル外れリーチ連続演出処理を実行する。詳しくは、図13の「ノーマル外れリーチ変動処理ルーチン」に示すように、ステップS1001において、制御装置24は、今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「0」回であるか否かを判定する。そして、肯定判定された場合には、何らの処理をも行うことなく、この「ノーマル外れリーチ変動処理ルーチン」を一旦終了する。また、ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「0」回でない場合には、実際にノーマル外れリーチ変動処理を行うべくステップS1002へ移行する。ステップS1002においては、今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「1」回であるか否かを判定する。そして、否定判定された場合には、今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「2」回であるものとして、ステップS1003において、外れリーチ第2停止図柄RHZ2(上記ステップS9083で獲得した図柄)で一旦図柄17A?17Hの変動を停止させる。・・・そして、続くステップS1005において、現在のノーマル外れリーチ変動回数RHCNTから「1」を減算した値を、新たなノーマル外れリーチ変動回数RHCNTとして設定する。さらに続くステップS1006においては、図柄17A?17Hの再度の変動を開始させる。但し、このときには、対応する保留ランプ18a?18dの消灯は行われず、保留カウンタCHの減算も行われない。つまり、遊技球5の作動口3への入賞とは直接関係することなく、ステップS1006での変動が行われる。
・【0097】また、ステップS1002において、肯定判定された場合には、今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「1」回であるか、又は当初ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「2」回であった場合の2回目のノーマル外れリーチ変動処理を行う場合であるかのいずれかであるもの(つまり、あと1回のノーマル外れリーチ変動処理を行うもの)として、ステップS1004へ移行する。そして、ステップS1004において、制御装置24は、外れリーチ第1停止図柄RMZ1(上記ステップS9083又はステップS9085で獲得した図柄)で一旦図柄17A?17Hの変動を停止させる。・・・そして、続くステップS1005において、現在のノーマル外れリーチ変動回数RHCNTから「1」を減算した値を、新たなノーマル外れリーチ変動回数RHCNTとして設定する。従って、この場合には、新たなノーマル外れリーチ変動回数RHCNTは「0」となり、次回以降は、再度ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「0」以外の回数が獲得されない限りステップS1001で肯定判定されることとなり、ノーマル外れリーチ変動処理は行われない。そして、続くステップS1006においては、図柄17A?17Hの再度の変動を開始させる。もちろん、このときにも、保留ランプ18a?18dの消灯、保留カウンタCHの減算は行われない。その後、ステップS1001で肯定判定されることにより、この「ノーマル外れリーチ変動処理ルーチン」を一旦終了する。
・【0098】さて、ノーマル外れリーチ変動処理を実行した後、制御装置24は、図9のステップS110において、左右両図柄列14,16(中図柄列15以外)における図柄17A?17Hを、停止図柄に差替える。この停止図柄というのは、前記ステップS902,S904,S906のいずれかの処理で記憶した図柄である。また、差替え後の図柄17A?17Hが左右両図柄列14,16にて表示されるよう図柄変動を停止させる。
・【0100】上記のように、ステップS120(「リーチ動作処理ルーチン」)の処理を実行した後、制御装置24は、ステップS130において、中図柄列15での図柄変動を停止させる。
・【0102】さて、再変動処理を行った後、制御装置24は、次に、ステップS140において、図柄17A?17Hの組合せが大当たりの組合せであるか否かを判定する。なお、この際には、停止図柄の差替えが正しく行われたか否かの確認も行われる。そして、この判定条件が満たされていない場合には、「特別電動役物制御ルーチン」を終了する。また、図柄17A?17Hの組合せが大当たりの組合せである場合(実際に再変動が行われた場合も、この場合に該当する)には、ステップS150において、ラウンドカウンタCRを「0」にクリヤする。なお、このとき、制御装置24によって大当たり報知表示がなされる。
・【0107】以上詳述したように、本実施の形態によれば、獲得されたノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「1」回又は「2」回となることにより、その回数に応じた分だけ、遊技球5の作動口3への入賞とは別に表示装置13での図柄17A?17Hの変動表示が行われる。このため、作動口3に遊技球5が1つしか入賞しなかったとしても、2回以上変動表示が行われる場合も起こりうる。従って、遊技者は作動口3に遊技球5を入賞させることだけに集中する必要がなくなり、仮に作動口3に1つしか入賞しなかった場合であっても、2回目又は3回目の変動に際し大当たり状態の発生を期待しうる。そのため、遊技内容の面白味が一層増すこととなり、ひいては興趣の飛躍的な向上を図ることができる。
・【0126】(j)上記実施の形態では、複数回の図柄の変動表示が行われている際には、一旦図柄が停止されても保留ランプ18a?18dの消灯を行わないこととしたが、図柄が一旦停止される毎に疑似的に保留ランプ18a?18d消灯させることとし、当該複数回の図柄の変動表示が終了した後に、現状に復帰させることとしてもよい。

段落【0126】には「図柄が一旦停止される毎に疑似的に保留ランプ18a?18d消灯させることとし、当該複数回の図柄の変動表示が終了した後に、現状に復帰させることとしてもよい。」と記載されていることから、当該構成を採用することとして整理すると、上記記載事項を含む全記載及び図示によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「遊技球5が遊技盤2に設けられた作動口3に入賞する毎に、大当たり状態を決定するためのものである乱数カウンタCIの値が図柄乱数エリア41(i)に格納され、所定時間の図柄変動の後、大当り図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択されて停止する特別図柄表示装置13が設けられ、制御装置24を有する遊技機であって、
制御装置24は、
(1)各図柄列14?16の変動表示中にさらに遊技球5が作動口3に入賞した場合には、その分の変動表示は、保留最大回数を限度として、現在行われている変動表示の終了後に行う、つまり、変動表示を待機(保留)させ、
(2)「特別電動役物制御ルーチン」が開始され、保留カウンタCHの値が「0」でない(CH=1,2,3,4)場合には、ステップS907においてノーマル外れリーチ変動回数設定テーブルを参酌してノーマル外れリーチ変動回数RHCNTを獲得し、ステップS908において前記表示装置13の図柄変動を開始させ、
(3)今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「0」回である場合には、何らの処理をも行うことなく、「ノーマル外れリーチ変動処理ルーチン」を終了した後、
ステップS110において、左右両図柄列14,16(中図柄列15以外)における図柄17A?17Hを、停止図柄に差替え、差替え後の図柄17A?17Hが左右両図柄列14,16にて表示されるよう図柄変動を停止させ、ステップS120(「リーチ動作処理ルーチン」)の処理を実行した後、ステップS130において、中図柄列15での図柄変動を停止させ、図柄17A?17Hの組合せが大当たりの組合せである場合(実際に再変動が行われた場合も、この場合に該当する)には、ステップS150において、ラウンドカウンタCRを「0」にクリヤし、大当たり報知表示をし、
(4)今回獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTが「1」回又は「2」回である場合には、その回数に応じた分だけ、遊技球5の作動口3への入賞と別に表示装置13での図柄17A?17Hの変動の一旦停止と再度の変動開始を行わせ、「ノーマル外れリーチ変動処理ルーチン」を終了した後、
ステップS110において、左右両図柄列14,16(中図柄列15以外)における図柄17A?17Hを、停止図柄に差替え、差替え後の図柄17A?17Hが左右両図柄列14,16にて表示されるよう図柄変動を停止させ、ステップS120(「リーチ動作処理ルーチン」)の処理を実行した後、ステップS130において、中図柄列15での図柄変動を停止させ、図柄17A?17Hの組合せが大当たりの組合せである場合(実際に再変動が行われた場合も、この場合に該当する)には、ステップS150において、ラウンドカウンタCRを「0」にクリヤし、大当たり報知表示をし、
保留ランプ18a?18dは、原則として変動表示の保留毎に点灯させられ、その保留に対応した変動表示の実行に伴い消灯させられ、
複数回の図柄の変動表示が行われている際に、図柄が一旦停止される毎に疑似的に保留ランプ18a?18d消灯させることとし、当該複数回の図柄の変動表示が終了した後に、現状に復帰させる遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

4.対比

本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明の「遊技盤2に設けられた作動口3」は本願補正発明の「遊技盤面上の始動入賞口」に相当し、以下同様に、「所定時間の図柄変動の後・・・停止する」は「所定期間の図柄変動を経て・・・図柄を表示する図柄変動パターン演出」に、「大当り図柄、外れリーチ図柄、外れ図柄の中から1つが選択されて停止する」は「抽選結果報知図柄を表示する」に、「特別図柄表示装置13」は「表示装置」に、「原則として変動表示の保留毎に点灯させられ、その保留に対応した変動表示の実行に伴い消灯させられ」る「保留ランプ18a?18d」は「前記記憶手段に記憶された保留数に相当する数を表示する保留相当数表示手段」に、それぞれ相当する。
引用発明について、以下のことがいえる。
・遊技球5が入賞した時に格納された「乱数カウンタCIの値」が特定の値の場合に大当たりになるものであるから、「作動口3に入賞する毎に、大当たり状態を決定するためのものである乱数カウンタCIの値が図柄乱数エリア41(i)に格納され」は本願発明の「始動入賞口に入賞することで抽選が実行され」に相当する。
・制御装置24が実行するステップS908における図柄変動の開始及び(3)の制御は、ステップS908で図柄が変動開始した後ステップS130において中図柄列15での図柄変動が停止して抽選結果報知図柄が表示までの間、連続して変動を行うものと認められるから、本願発明の「前記図柄変動の開始から終了まで連続した変動後に前記抽選結果報知図柄を表示する第1のモード」に相当する。また、制御装置24が実行するステップS908における図柄変動の開始及び(4)の制御は、ノーマル外れリーチ変動回数RHCNTの回数に応じた分だけ、遊技球5の作動口3への入賞と別に表示装置13での図柄17A?17Hの変動の開始及び一旦停止を行わせた後、再度変動を開始させステップS130において中図柄列15での図柄変動が停止して抽選結果報知図柄を表示させるものであり、「一旦停止」は「仮停止」といいかえることができるから、本願発明の「前記図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に前記抽選結果報知図柄を表示する第2のモード」に相当する。そして、制御装置24は、第1のモードと第2のモードの何れかで図柄変動パターン演出の実行を制御するための手段として機能している。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記図柄変動パターン演出において、前記図柄変動の開始から終了まで連続した変動後に前記抽選結果報知図柄を表示する第1のモード、及び前記図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に前記抽選結果報知図柄を表示する第2のモードの何れかで前記図柄変動パターン演出の実行を制御する制御手段」に相当する構成を実質的に具備している。
・制御装置24は、獲得したノーマル外れリーチ変動回数RHCNTに応じて、第1のモード又は第2のモードの何れかを実行するものであるから、引用発明は、本願発明の「前記第1のモード又は第2のモードを選択する選択手段」に相当する構成を実質的に具備している。
・「制御装置24は、(1)各図柄列14?16の変動表示中にさらに遊技球5が作動口3に入賞した場合には、その分の変動表示は、保留最大回数を限度として、現在行われている変動表示の終了後に行う、つまり、変動表示を待機(保留)させ、」について検討する。
図柄列14?16が変動表示している間は、新たに図柄変動を開始させることは不可能であるから、「表示装置が図柄変動パターン演出を実行できない状態」ということができる。また、保留最大数となっていない状態で遊技球5が作動口3に入賞した場合にはその変動は保留されるのであるから、そのような遊技球5の作動口3への入賞は「抽選に有効な遊技球の始動口への入賞」ということができ、その時の入賞回数は保留分として記憶されることは自明であって、制御装置24はそのための手段として機能している。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記表示装置が前記図柄変動パターン演出を実行できない状態で、抽選に有効な前記遊技球の始動入賞口への入賞があった場合に、当該入賞回数を保留分として記憶する記憶手段」に相当する構成を実質的に具備している。
・「複数回の図柄の変動表示が行われている際に、図柄が一旦停止される毎に疑似的に保留ランプ18a?18d消灯させることとし、当該複数回の図柄の変動表示が終了した後に、現状に復帰させる」について検討する。
「複数回の図柄の変動表示が行われ」るのは、制御装置24が(4)の制御を実行する時であって、本願発明の「第2のモード」に相当することは上記のとおりであり、図柄が一旦停止された時には当然に図柄は停止表示された状態となるから、このような状態を抽選結果報知図柄の表示とみることができ、更に、「疑似的に保留ランプ18a?18d消灯させる」は本願発明の「擬似的に保留分を消化する表示とする」に相当する。また、「現状に復帰させる」は、擬似的に保留ランプ18a?18d消灯させる前の状態、すなわち実際の保留記憶数の表示に復帰させることを意味することは明らかで、本願発明の「前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された保留メモリ内の実保留分の表示に復帰させる」に相当する。そして、制御装置24はこれらの保留表示の制御を実行する手段として機能している。
そうすると、引用発明は、本願発明の「前記選択手段で第2のモードが選択された場合に、前記保留相当数表示手段を制御して、前記仮停止状態を前記抽選結果報知図柄の表示とみなして擬似的に保留分を消化する表示とすると共に、前記第2のモードによる図柄変動パターン演出の終了後に、前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された保留メモリ内の実保留分の表示に復帰させる保留表示制御手段」に相当する構成を実質的に具備している。

したがって、本願発明と引用発明は、
「遊技球が遊技盤面上の始動入賞口に入賞することで抽選が実行され、所定期間の図柄変動を経て抽選結果報知図柄を表示する図柄変動パターン演出によって、当該抽選の結果を報知する表示装置が設けられた遊技機であって、
前記図柄変動パターン演出において、前記図柄変動の開始から終了まで連続した変動後に前記抽選結果報知図柄を表示する第1のモード、及び前記図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に前記抽選結果報知図柄を表示する第2のモードの何れかで前記図柄変動パターン演出の実行を制御する制御手段と、
前記第1のモード又は第2のモードを選択する選択手段と、
前記表示装置が前記図柄変動パターン演出を実行できない状態で、抽選に有効な前記遊技球の始動入賞口への入賞があった場合に、当該入賞回数を保留分として記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された保留数に相当する数を表示する保留相当数表示手段と、
前記選択手段で第2のモードが選択された場合に、前記保留相当数表示手段を制御して、前記仮停止状態を前記抽選結果報知図柄の表示とみなして擬似的に保留分を消化する表示とすると共に、前記第2のモードによる図柄変動パターン演出の終了後に、前記擬似的な保留分の表示状態を前記記憶手段に記憶された保留メモリ内の実保留分の表示に復帰させる保留表示制御手段とを有する遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、記憶手段に複数の保留分が記憶されているときに、選択手段による第2のモードの選択が可能であるのに対し、引用発明ではそのような構成を有するか不明である点。
<相違点2>
本願発明では、保留表示制御手段による、実保留分の表示への復帰の際に、特別演出を実行するのに対し、引用発明ではそのような構成を有していない点。

5.判断

上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用発明は、図柄変動の開始から終了までを1パターンとし仮停止状態を挟んで複数パターンを繰り返した後に抽選結果報知図柄を表示する際に、仮停止状態を抽選結果報知図柄の表示とみなして擬似的に保留分を消化する表示とするものであるが、擬似的に保留分を消化するためには消化する対象となる保留数の表示が必要であるから、当該変動の契機となる保留も含めて複数の保留が必要である。
そうすると、引用発明において、記憶手段に複数の保留分が記憶されているときに選択手段による第2のモードの選択を可能とすることは、擬似的に保留分を消化する表示とすることに必要不可欠な構成であって、相違点1は実質的な相違点ではない。
(2)相違点2について
原査定の理由に引用された、特開2000-140286号公報(段落0110?0118、図23、図24参照。以下、「引用文献2」という。)には、キャラクタを出現させて保留玉を追加させる特別演出を行うことが記載されている。
そして、引用発明は実保留分の表示への復帰の際には当然保留数の表示は追加されるものであるから、保留数を追加する点で引用発明も引用文献2に記載された技術事項も共通している。
そうすると、引用発明において、実保留分の表示への復帰の際に、引用文献2に記載された技術事項、すなわちキャラクタによる特別演出を実行することを採用し、相違点2に係る本願発明の構成とすることに当業者であれば想到容易である。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-26 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願2004-49640(P2004-49640)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増嶌 稔  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 井上 昌宏
川島 陵司
発明の名称 遊技機  
代理人 中島 淳  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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