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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D
管理番号 1224185
審判番号 不服2010-3345  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-02-16 
確定日 2010-09-24 
事件の表示 特願2004-337976「ダイクッション駆動装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-142357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年11月22日の出願であって、同21年3月11日付けで拒絶の理由が通知され、同21年5月7日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同21年11月20日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し、同22年2月16日付けで本件審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成21年5月7日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

[本願発明]
「プレス機のダイクッションをサーボモータで駆動し、該プレス機のスライドからのエネルギーがダイクッションへ伝達され、該サーボモータが回生動作を行うダイクッション駆動装置であって、該サーボモータからの回生エネルギーを交流電源へ回生する回生機能付き電源回路を備え、該回生機能付き電源回路は前記交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と前記変換された直流を前記サーボモータに供給する交流に変換するインバータ回路とを備えたインバータ装置であることを特徴とするダイクッション駆動装置。」


3.引用刊行物及びその記載事項
平成21年3月11日付けの拒絶の理由には、本件出願前に頒布された刊行物である次の刊行物が引用されている。

[引用刊行物]
刊行物1:特開平6-544号公報
刊行物2:特開2004-154961号公報

(1)刊行物1の記載事項
(ア)特許請求の範囲
「【請求項1】 下方よりクッションピンを介して下型を支持するパッド3にラック杆7を接続し、かつこのラック杆7とサーボモータ10の間を減速ギヤ列8を介して接続することによりダイクッション組立体1を構成すると共に、上記ダイクッション組立体1をプレスの工程毎にベッド2に装着することを特徴とするプレスのNCサーボクッション装置。」

(イ)段落【0006】-【0008】
「【0006】
【実 施 例】この発明の一実施例を図面を参照して詳述する。図において1はユニット化されたダイクッション組立体で、図示しないプレスのベッド2に取付けて使用できるようになっている。上記ダイクッション組立体1は上部に2分割されたパッド3を有していて、これらパッド3毎にクッション機構4が設けられている。
【0007】上記クッション機構4は図4に示すように、各パッド3毎に支持杆5を有していて、これら支持杆5の上端は各パッド3に固着されていると共に、各支持杆5の下端は、上記ベッド2に固着されたギヤケース6に上下摺動自在に支承された2本のラック杆7の上端に接続されている。上記各ラック杆7にはそれぞれラック7aが形成されていて、これらラック7aに減速ギヤ列8の初段ギヤを構成するピニオン8aがそれぞれ噛合されている。上記減速ギヤ列8は図5に示すように、各ラック杆7毎に設けられていて、ギヤケース6内の上部と下部にそれぞれ収容されている。
【0008】また上記減速ギヤ列8は、互に噛合する2組の中間ギヤ8b,8cと、1個の終段ギヤ8dを有していて、中間ギヤ8b,8cの一方8bはピニオン8aの軸8eに固着されていると共に、他方は終段ギヤ8dに噛合されている。上記終段ギヤ8dの各軸8fはギヤケース6の側面に突設されていて、これら軸8fに、ギヤケース6の側面にブラケット9を介して取付けられた4基のサーボモータ10の各軸10aが継手11を介して図3に示すように接続されている。上記各サーボモータ10は図示しないNC装置に接続されていて、NC装置により後述するよう位置及びトルクがNC制御されるようになっている。」

(ウ)段落【0011】
「【0011】いま例えば図6に示すようにW_(1)からW_(6)の6工程の成形工程に対して、各工程毎にクッョン作用を得ようとする場合は、プレスのベッド2に3基のダイクッション組立体1を、各パッド3の中心が等間隔となるように装着して作業を開始する。各ダイクッション組立体1のパッド3には、各工程毎に設けられた金型の下型がクッションピン(ともに図示せず)を介して下方より支持されており、スライドに取付けられた上型(ともに図示せず)がスライドとともに下降されて、上型とブランクホルダの間でワークがクランプされる。このときタッチ音が発生して騒音の原因となることから、NC装置は上型がブランクホルダ上のワークと接する直前にサーボモータ10の回転を開始して減速ギヤ列8を介してラック杆7を下降させ、各パッド部材3_(1)ないし3_(4)を下方へ予備加速する。この予備加速はワークや金型の種類などに応じて予め入力されたデータを基に行われる。この後上型とブランクホルダの間でワークの周辺が挟着された状態でさらに上型が下降されることにより、上型と下型の間で絞り成形が行われる共に、絞り成形の進行とともにサーボモータ10の回転がNC制御装置により制御され、絞り成形に必要なクッション作用がパッド3に得られるようにしてパッド3がさらに下降される。そしてプレスの図示しないスライドが下死点に達して成形が終了すると、スライドの上昇とともにサーボモータ10が逆転され、パッド3も上昇を開始する。」

(エ)段落【0014】
「【0014】
【発明の効果】
・・・・・・さらにプレス成形中はパッドの下降によりサーボモータが強制駆動されることにより発生する回生エネルギーをパッドの上昇時に利用したり、他の動力源として利用することにより、省エネルギーシステムを構築することも可能である。」

上記摘記事項(ア)ないし(エ)を、技術常識をを勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明]
「プレスのダイクッション組立体1をサーボモータ10で駆動し、プレス成形中のダイクッション組立体1のパッド3の下降によりサーボモータ10が強制駆動されることにより回生エネルギーを発生するNCサーボクッション装置。」

(2)刊行物2の記載事項
(a)段落【0020】-【0021】
「【0020】
図1は、本発明を適用した回生機能を有する電動射出成形機の駆動制御装置を含む要部構成ブロック図である。同図1において、参照符号10は三相交流電源、参照符号12は射出軸22の駆動用電動モータ20の駆動制御装置、参照符号14は電動射出成形機であって、射出装置14A、型締装置14Bを備えている。参照符号14Cは射出装置14A内の射出機構を示し、前記射出軸22によって前記電動モータ20と結合されている。駆動制御装置12内の上部には左方側から、三相交流電源10の各相巻線に接続されたコンバータ26、抵抗器回路28及びインバータ34がブロックとして示されている。前記コンバータ26は、大容量のパワートランジスタTrとフライホイールダイオードFDの複数対から構成されており、力行時(非回生時)には三相交流電源10から与えられる三相交流電力が直流に変換され、ラインP、ラインN及び平滑コンデンサ32を介してインバータ34への直流電源として供給される。
【0021】
また、インバータ34はコンバータ26と同様に大容量のパワートランジスタTrとフライホイールダイオードFDの複数対から構成されゲート信号g3によりPWM(パルス幅変調)されてその各相の周波数が変化され、前記電動モータ20の各相巻線に供給される。即ち、電動モータ20に対しサーボアンプとして機能するようになっている。前記ラインP、ラインNはこのサーボアンプの電源電圧ラインである。」

(b)段落【0024】-【0025】
「【0024】
参照符号24A、24B及び24Cはそれぞれ比較器を示し、予め設定されたサーボ電源電圧V1、V2及びVemと前記検出信号DTSとが比較される。
【0025】
ここで、前記設定されたサーボ電源電圧V1は前記検出信号DTSと比較されDTSの値が設定値V1より大きい場合は、電動モータ20が減速状態にあり且つその回生エネルギーがコンバータ26を経て三相交流電源10の側に回生されていることを示す。その際ゲート信号g1の各々はコンバータ26が回生動作をするようなタイミングで生成される。」

上記摘記事項(a)及び(b)を、技術常識を勘案しながら本願発明に照らして整理すると、刊行物2には、次の事項(以下、「刊行物2記載事項」という。)が記載されていると認められる。

[刊行物2記載事項]
「電動モータからの回生エネルギーを三相交流電源へ回生する回生機能付き電源回路であって、該回生回路付き電源回路は前記三相交流電源からの交流を直流に変換するコンバータと前記変換された直流を前記電動モータに供給する交流に変換するインバータとを備えたインバータ装置であること。」


4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「プレス」は本願発明の「プレス機」に相当し、以下同様に、「ダイクッション組立体1」は「ダイクッション」に、「サーボモ-タ10」は「サーボモータ」に、「NCサーボクッション装置」は「ダイクッション駆動装置」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「プレス成形中のダイクッション組立体1のパッド3の下降によりサーボモータ10が強制駆動されることにより回生エネルギーを発生する」は、パッド3の下降がプレス機のスライドからのエネルギーがダ
イクッションに伝達されたことによるものであることは技術常識からみて明らかであるから、「該プレス機のスライドからのエネルギーがダイクッションへ伝達され、該サーボモータが回生動作を行う」に相当するということができる。
そうすると、両者の一致点と相違点は以下のとおりと認められる。

[一致点]
「プレス機のダイクッションをサーボモータで駆動し、該プレス機のスライドからのエネルギーがダイクッションへ伝達され、該サーボモータが回生動作を行うダイクッション駆動装置。」である点。

[相違点]
本願発明は、「サーボモータからの回生エネルギーを交流電源へ回生する回生機能付き電源回路を備え、該回生機能付き電源回路は前記交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と前記変換された直流を前記サーボモータに供給する交流に変換するインバータ回路とを備えたインバータ装置である」のに対し、引用発明は、そのような回路を有するか明らかでない点。


5.判断
刊行物2記載事項における「三相交流電源」は本願発明の「交流電源」に相当し、以下同様に、「コンバータ」は「コンバータ回路」に、「インバータ」は「インバータ回路」に、それぞれ相当する。
そうすると、上記刊行物2記載事項は、「電動モータからの回生エネルギーを交流電源へ回生する回生機能付き電源回路であって、該回生回路付き電源回路は前記交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と前記変換された直流を前記電動モータに供給する交流に変換するインバータ回路とを備えたインバータ装置であること。」ということができる。
そして、引用発明において、サーボモータを駆動するための回路が必要であることは技術常識からみて明らかであり、また、サーボモータが回生動作を行う以上、回生エネルギーを利用するための回路が必要なことも明らかである。
さらに、引用発明と刊行物2記載事項とは、モータ駆動装置という共通の技術分野に属し、モータにより回生動作を行うという機能も共通するから、引用発明のサーボモータを駆動するための回路及び回生エネルギーを利用するための回路として、刊行物2記載事項を適用し、「サーボモータからの回生エネルギーを交流電源へ回生する回生機能付き電源回路を備え、該回生機能付き電源回路は前記交流電源からの交流を直流に変換するコンバータ回路と前記変換された直流を前記サーボモータに供給する交流に変換するインバータ回路とを備えたインバータ装置である」ように構成することは、当業者が格別の創意を要することなく容易になし得た程度のことである。
請求人は、審判請求書第4ページ第4-10行において、「引用文献2(当審注:特開2004-154961号公報)では、(2)の項で述べましたように、駆動軸(サーボモータ)自身の慣性力により発生する回生エネルギーを対象としており、回生エネルギーの発生メカニズムが異なります。
したがいまして、引用文献1(当審注:特開平6-544号公報)に記載された発明における外部的な力により発生する回生エネルギーの回収のために、駆動軸の慣性力により発生する回生エネルギーの回収のための引用文献2の構成を用いることは、決して困難性がないとはいえない」と主張している。
しかしながら、「外部的な力」及び「慣性力」は、いずれもモータに作用する力であって、モータに回生エネルギーを生じさせるという機能において変わりはないから、回生エネルギーの発生メカニズムが異なるからといって、引用発明に刊行物2記載事項を適用できないとする特段の事情があるということはできない。
よって、上記請求人の主張は採用することができない。


6.本願発明の効果について
本願発明によってもたらされる効果も、引用発明と刊行物2記載事項とから当業者が予測できる範囲内のものであって格別顕著なものではない。


7.結び
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された事項とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-26 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-10 
出願番号 特願2004-337976(P2004-337976)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B21D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馬場 進吾  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 豊原 邦雄
佐々木 一浩
発明の名称 ダイクッション駆動装置  
代理人 鶴田 準一  
代理人 青木 篤  
代理人 森 啓  
代理人 水谷 好男  

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