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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20056282 審決 特許
不服200627219 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1224500
審判番号 不服2008-32300  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-22 
確定日 2010-09-29 
事件の表示 特願2003-523961「循環腫瘍細胞、断片およびデブリスの分析」拒絶査定不服審判事件〔平成15年3月6日国際公開、WO03/19141、平成17年1月27日国内公表、特表2005-502863〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年8月23日(パリ条約による優先権主張 平成13年8月23日 平成14年4月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし61に係る発明は、平成17年2月22日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし61に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】
a.テスト対象から得た生物学的検体を用い、該検体は無傷の稀な細胞を含有することが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらに
i.稀な細胞に由来する細胞断片、または
ii.稀な細胞に由来する細胞デブリス;
を含み;
b.磁気-標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され;
c.該磁気-標識試料を、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ;
d.該標識された稀な細胞、および該標識された細胞断片または該標識された細胞デブリスを分析することを含み、該標識された稀な細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は病気の存在を示す;
ことを特徴とするテスト対象において病気を診断する方法。」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物1及び刊行物2には以下の事項がそれぞれ記載されている。

(1)刊行物1:CANCER,vol.88,no.12,2000,p.2787-2795の記載事項、日本語訳
「材料と方法」として
(1a)「血液採取
インフォームドコンセントを行い、10-20mLの血液が、対照被験者と前立腺癌患者の肘正中静脈から、抗凝固剤としてクエン酸デキストロース溶液Aを収容した真空採血管(Becton Dickinson,Frankin Lakes,NJ)に採取された。採血から24時間以内に単離過程により室温で必要な処理が行われた。」(第2788頁左欄31行?40行)
(1b)「前立腺癌患者グループの循環腫瘍細胞の単離
患者の血液10-20mLが、コーニング50mLポリプロピレン管(コーニンググラスワークス,コーリング、NY)中で、室温の1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で30mLに希釈された(15-30℃) 。管は蓋をして反転により穏やかに3-6分混合された。1.068g/mL密度勾配10mLが試料管の底部に添加され、1.083g/mLの勾配が、1.068g/mL密度勾配の真下に続けられた。試料管は、400gで30分、20℃で分離ができるまで遠心分離された。上部の勾配界面(1.068g/mL)と下部の勾配界面(1.083g/mL)は、使い捨てピペットで、勾配(それぞれの層約10mL)と共に収集された。2つの収集物は、新しい50mLのコーニングのポリプロピレン管に入れられた。PBS40mLが、界面を入れたこれら2つの新しい管に加えられ、管は穏やかにしかし完全に反転により混合された。2つの管は、収集した細胞を洗うために、258gで10分遠心分離された。2つの管の上澄は、25mLのピペットまたは真空ポンプにより穏やかに吸引され廃棄され、細胞ペレットは、管の底に保持された。」(第2788頁左欄43行?右欄18行)
(1c)「磁気細胞分離とスライド調製
過剰な白血球を除去し、血中の標的癌細胞を濃縮するために、CD-45マウス抗ヒトイムノグロブリンG磁気ビーズ単離システムが採用された。1.083g/mL勾配収集物は、0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)1.0mLに再懸濁され、磁気細胞分離のために氷の上に置かれた。200μlの磁気ダイナビーズ(M450;Dynal,Oslo,Norway)がピペットで5mLのポリプロピレン管にいれられた。ビーズは、アジ化ナトリウムを除去するために3.0mLの0.1%BSAで洗浄された。1.083g/mL勾配の細胞懸濁液(約1.0mL)は、洗ったビーズが入った管に移された。残った細胞は遠心管の壁から、1.0mLの0.1%BSAで洗い落とされ、磁気ビーズが入った管に移され、合計量2.0mLとした。細胞はビーズと共に、4-8℃で30分間、オービトロンロータ(Dynal)で10rpmインキュベートされた。それから、最大の白血球枯渇が得られるように、管は磁気粒子濃縮器(Dynal)中に2分間置かれた。1.068g/mL細胞懸濁液は、5mLファルコン2005管に移され、1.083g/mL細胞懸濁液のCD45+インキュベーションの間、氷の上に置かれた。白血球枯渇後、1.083g/mL細胞懸濁液のCD45陰性収集物 の上清は、1.068g/mL細胞懸濁液と同じ管に移された。2つの収集物を混合した後、1000rpmで10分間室温でサイトファネルとサイトスピンにかけられた。スライドは、染色前に少なくとも2時間空気で乾燥させた。」(第2788頁右欄19行?最終行)
(1d)「免疫組織学的染色
スライドは、2%のパラホルムアルデヒドで15分間固定され、1×PBSで2回洗浄された。それから、スライドは、1×PBSで10分間、室温でインキュベートされた。次に、30μLの抗サイトケラチン抗体フルオレセインイソチオシアネート(CAM5.2、;Becton-Dickinson)、前立腺特異的抗原に対する抗体(PSA;DAKO,Carpinteria,CA)、抗PSMA抗体が、それぞれのスライドに加えられた。この工程で用いられた、PSMAに対する7E11-C5と9H10-A4抗体は、ハイブリドーマから作られた(Americai Type Culture Collection,Rockvill,MD)。この工程で用いられた、PSMAに対するJ591抗体は、ニューヨークのCornell medical病院のNeil Bander博士から気前よく提供された。試料領域にカバーガラスが置かれ、スライドは加湿された箱の中で、室温で60分間インキュベートされた。スライドからカバーガラスが取り除かれ、スライドは、1×PBSの入ったコプリン広口瓶中で、室温10分間洗浄された。最後に、スライドは、10分間室温で空気乾燥された。」(第2789頁左欄1行?右欄22行)
(1e)「蛍光インサイチューハイブリダイゼーション
スライドは、コプリン広口瓶中で、75%、85%、95%のアルコールでそれぞれ1分間水分を除いた。次にスライドは、10分間室温で乾燥された。蛍光インサイシューハイブリダイゼーション(FISH)混合物(容量/スライド)が、FISH緩衝液19μLと、1μLの染色体原動体プローブ(Cell Works,Baltimore,MD)、PSM mRNAプローブ(Cell Works)、又はアンドロゲンレセプタープローブ(Vysis,Downers Grove,IL)とを用いて準備された。FISH混合物はスライドの試料領域に添加され、カバーガラスがかけられ、そしてゴム接着剤で封入された。・・・試料は、封入剤中(1.0μg/mL;Vector Laboratories,CA)で、4,6-ジアミノ-2-フェニルインドール(DAPI)により対比染色され、カバーガラスをかけ、FLO-TEXX封入剤(Lerner laboratories,New Haven,CT)で封入された。スライドは、暗くして室温で10分間置かれた。染色したスライドの分析は、コンピュータ化された蛍光顕微鏡で行われた。染色された癌細胞は画像化され電子的に保存された。」(第2789頁左欄23行?最終行)
(1f)「陰性コントロール
インフォームドコンセントのもと、10-20mLの血液が、癌でない20人の女性および43人の男性から、陰性コントロールとして採取された。血液サンプルは、上述のような完全な単離と染色工程を受けた。染色スライドは、顕微鏡で観察された。」(第2789頁右欄21行?27行)

「結果」として
(1g)「女性コントロール試料(培養細胞非添加)中には、循環上皮細胞は発見されなかった。43中3人の男性コントロール(7%、培養細胞非添加)は、サイトケラチン7/18陽性上皮細胞が循環していた。しかしながら、これらの細胞は、前立腺特異的シグナルと、染色体の異数性は欠如していた。循環前立腺細胞数の平均は、前立腺患者では17.28±37.45(平均±標準偏差;n=106細胞)、そして中位数は、血液10-20mL中5(1-259細胞)であった。進行前立腺癌の25人の患者からのデータが、表2に示されている。」(第2789頁右欄44行?第2790頁左欄5行)
(1h)「蛍光染料で染色された循環腫瘍細胞が示す形態的特徴は、パパニコローの従来法により示されるものと異なる。コンピューター化された蛍光顕微鏡による形態分析に基づき、主要クラス、つまりクラス1(図1A)であり、丸い癌細胞が70%をしめる細胞は、次のような構造的特徴を示す:第1に、大きな細胞体(直径20-30μm)を持つ、そして、癌細胞の形は、不定形、楕円形、又は円形。染色の後、癌細胞の細胞質中に2つのシグナルを検出できる。サイトケラチン染色は、細胞質の領域を覆う網目を形成し、核は、強い蛍光フィラメントで構成される。PSMA抗体染色は、細胞質の中央に均一な濃度のシグナルを形成し、細胞質の縁には、さらに濃い染色を伴っている。癌細胞の最外部縁では、蛍光の縁を形成する。癌細胞核は、DAPI染色で、同様に形が様々である。核の形態は、不定形、楕円形、円形である。このグループの丸い癌細胞の大多数は、細胞の大きさと形にかかわらず、異数性を示す。
上述の循環腫瘍細胞の主要クラスに加えて、蛍光顕微鏡を使って特定される6つの付加的なクラスがある。クラス2は、周りの赤血球に比べてとても大きい細胞で構成される。DAPI染色の観察で、核は非常に大きく、構造が緩んでいる。これらの細胞は、軽く、壊れやすく、1.068g/mL勾配中に拘留されうる。これら細胞の壊れやすさは、循環腫瘍細胞のこのクラスを磁気ビースを含んだ分離工程に耐えられない。第3のクラス(図1B,C)は、サイトカイン及びPSMA抗体で染色することができるが、DAPI染色を受けても核がない。このクラスは、患者血中を循環することにより、除核されて出現する。第4のクラスは細胞デブリスから構成され(図1D)、サイトケラチン及びPSMA抗体で特異的に染色される。同時に、DAPI染色された核デブリスが、細胞質デブリスの間に観察される。第5のクラス(図1E)は、幹細胞様の形態的特徴を有し、その特徴は、小さなサイズ(大きな単球と比べて)、高密度、サイトケラチンシステム及びPSMA発現、異数性である。第6のクラスは、サイトケラチン及びPSMA陽性のM期細胞(図1F)を含み、循環間期細胞の大集団の中で希である。第7の最後のクラスは、患者血液中で、クラスターに集塊している(図1G,H)。これらの循環腫瘍細胞は、様々な大きさの3-100細胞でクラスターを形成し、サイトケラチン(図1G)とPSMA(図示しない)を発現する。クラスターの形態的特徴は、粗い表面の巨大なボールの様である。」(第2790頁右欄19行?第2793頁左欄15行)

「議論」として
(1i)「循環腫瘍細胞の細胞学的動態
循環腫瘍細胞の発生は、癌の存在の強い証拠であるが、成長でき、転移を形成できることは証明されていない以上、転移の存在の明確な証拠とみなすことはできていない。成長を証明することは難しい。なぜなら、血中の循環腫瘍細胞の数は一般に少なく、これら分離細胞の単一細胞の培養が難しいことが判明している。何人かの著者は、血液感染性の腫瘍細胞は成長し、急速に増殖し転移成長を形成すると仮定したが(医学分野で)、この仮説の直接的な証拠は提供されていない。上述の循環前立腺癌細胞の7つの形態学的クラスの記述は、循環癌細胞の運命の洞察を提示する。これらの7つの細胞クラスは、2つの限定的カテゴリーに分類できる:1)終末期と2)生存/成長
終末期の循環腫瘍細胞は、3つの異なった細胞形態学的クラスを含む(図2)。循環腫瘍細胞の第1のクラスは、循環腫瘍細胞の主要集団に比べてとても大きい。これらの細胞は、軽く、壊れやすく、低密度の勾配中に捕捉され、単離工程で簡単に壊れる(図2、細胞D)。第2のクラスは、除核され、サイトケラチン及びPSMA抗体で染色される(図2細胞E)。第3のクラスは、サイトケラチン及びPSMA抗体で陽性シグナルの細胞デブリスで構成され、たまに、細胞質デブリスの間に観察される核デブリスを伴う(図2細胞F)。循環腫瘍細胞の死滅と破壊につながるプロセスは、前述したクラス(図2細胞C-D)の観察をとおして、とりあえず系統立てて説明されることができる。
成長癌細胞も3つのクラスを含む:幹細胞様細胞、分裂細胞、細胞クラスター。これらの3つのクラスは、患者血中で生きており、増殖していることを示す第1のクラス、幹細胞様細胞では、循環腫瘍細胞は、「未分化」であることを示し、比較的小さく、異数性で、発達したサイトケラチンシステムを有し、染色されたときに強いPSMA発現を示し、1.077g/mKまたは高勾配に収集されるに高密度である(図2、細胞クラスターC)。成長する循環腫瘍細胞の多くは、細胞分裂の間期である;例外的に、少数の細胞は、第2のクラス(図2細胞クラスターG)を構成するM期である。この生きた細胞の存在は、循環腫瘍細胞が生き残り、循環中に有糸分裂する証拠を提示している。第3のクラスは、循環腫瘍細胞の分裂であり、患者血中でクラスターを形成する傾向に基づいて分類できる(図2細胞クラスターH)。循環中の細胞コロニーの形成につながるプロセスは、これらの異なった細胞形態学的クラスに基づいて、仮説を立てることができる(図2細胞C-H)。」(第2793頁右欄27行?第2794頁左欄最終行)
(1j)「循環ミクロ腫瘍形成と転移経路の仮説
クラスター形成は、患者血中の循環腫瘍細胞のクローン成長の結果であるだろう。クラスターは、循環腫瘍細胞が患者血中で一旦生き残る能力を獲得すると、それらは有糸分裂とクローン成長で急速に増殖し、循環腫瘍細胞クラスター:循環ミクロ腫瘍を形成することを示す。この腫瘍は、小さな静脈や毛細血管に拘束され、血管内で、充分な栄養が与えられれば、成長を続けるだろうする。成長は、ミクロ腫瘍を血管の内側に圧迫を加えることを可能にする。ジョセフライトン博士(Greene、1965)から提供されたある顕微鏡写真は、拡張した毛細血管の外胚葉と中胚葉の接合部に停止した、癌細胞或いは疑わしい細胞のクラスターを示す。」(第2794頁右欄1行?19行)
(1k)「この研究の中で、少数の患者の血中に多数の循環前立腺癌細胞が観察された:血液20mL中に50-200細胞も。我々は、終末期経路、対、生存/増殖経路という観点で、これらの細胞集団の特徴を分析してきている。これらの患者の病気の進行と、循環腫瘍細胞集団の異なるステージ(総細胞数とクラス/カテゴリー間の分散の観点から)へのダイナミックな変化の相関は、循環マイクロ癌の前述の仮説が、臨床/診断背景への応用への洞察を提供するかもしれない。」(第2794頁右欄最終行?第2795頁左欄12行)

(2)刊行物2:米国特許第6190870号明細書の記載事項、日本語訳
「技術背景」として
(2a)「細胞を仕分ける代替えの提案がなされ、そこでは、抗体が結合した磁気マイクロ粒子が、特異的な細胞のタイプを選別するのに用いられる。Shpall等(1991)は、肺癌細胞を、高量の化学療法を受けた癌患者の自己移植のための骨髄細胞試料から免疫磁気パージする装置と方法を記載した。
腫瘍細胞を、末梢血またはその他の組織源から分離する進歩した磁気選別方法は、腫瘍診断の分野に多くの恩恵を提供するだろう。そして、この磁気選別法は、多数のサンプルをベンチに追いやることを許す。」(第2欄13行?23行)
(2b)「Miltenyi等(1990)Cytometry 11:231-238に、高勾配磁気細胞選別が記述されている。Molday,U.S.Pat.No.4452773は、磁気鉄デキストランミクロスフェアの調製と生物材料に結合させるのに適切な粒子の多数の調整方法を記述した要約が記述されている。HGMSで用いられる高分子被覆磁気粒子が、DE3720844(Miltenyi)とMiltenyi等、U.S.Pat.No.5385707に見出される。」(第2欄下から10行?下から1行)
(2c)「クレーム
1.全血細胞懸濁液試料からの、播種性腫瘍細胞の分離方法であって、以下の工程からなる 全血細胞試料に1つ以上の前記腫瘍細胞により発現されるが血液細胞にはない抗原に特定的な抗体を加え、ここで、前記結合した抗体が前記抗原と特異的に結合するのに充分な条件下で、前記抗体は磁気応答性試薬と結合しており;
前記試料を、磁界の存在下でフェロ磁性マトリックスをとおして、磁気応答性試薬と結合した抗体と結合した細胞を磁気的に固定化し;
前記マトリックスの未結合細胞を洗い流し;そして、
磁界を解除し、結合細胞を前記マトリックスから、直接固体支持体上に流出させ、遠心分離または真空濾過により、腫瘍細胞富化試料を提供する。」(第19欄下から7行?第20欄11行)
(2d)「実施例1
肺癌細胞の人工的な血液細胞混合物からの、抗サイトケラチン8/18抗体を化学的に結合した超磁性ミクロ粒子コロイドを用いた高勾配磁気細胞分離方法による免疫磁気分離。
材料と方法
細胞試料調製。健康な提供者からの末梢血液から、400×gの遠心分離で白血球に富んだ軟膜が調製された。5mlの軟膜試料4つが、30,000、3000、300、0個のほ乳類癌細胞SK-BR-3と混合された。
赤血球溶解と有核細胞の透過性上昇。細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)と0.1%サポニン(赤血球溶解/サイトケラチン非マスク溶液)中で、5分間室温でインキュベートされた。
固定化。細胞は、PBS、0.05%サポニン、2%ホルムアルデヒド中で、30分間室温で固定化され、0.5%BSAと0.5%サポニン含有PBS(PBS/BSA/サポニン緩衝液)で1回洗浄された。
サイトケラチン8/18発現細胞の磁気標識。細胞は、コロイド状超磁性マイクロビーズと結合した抗サイトケラチン8/18抗体と、PBS/BSA/サポニン緩衝液中で35分間室温でインキュベートされた(Moll et al.(1982)Cell 31:11)。その後、抗サイトケラチン抗体-PE結合体とビオチン化HEA-125抗体が加えられ、細胞は、さらに10分間室温でインキュベートされた。細胞は、PBS/BSA/サポニン緩衝液で洗浄され、CD45-FITCとストレプトアビジン-Cyクロムで、10分間室温でPBS/BSA/サポニン緩衝液中で染色された。
サイトケラチン8/18発現細胞の高勾配磁気細胞分離(HGMS)による積極的選択。磁気ラベルサイトケラチン発現細胞は、MiniMACS常磁性磁石中のMiniMACSカラム(magnetizable steelball matrix,Miltenyi Biotec GmbH,Bergisch Gladbach))による2つの連続した選択により富化された。」(第9欄下から3行?第10欄35行)

3 対比・判断
刊行物1の上記記載事項(特に上記(1b)?(1e)、(1h))から、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる。
「採取した前立腺癌患者の血液を、
1.068g/mL密度勾配と1.083g/mLの勾配で遠心分離し、上部の勾配界面(1.068g/mL)と下部の勾配界面(1.083g/mL)をそれぞれ収集する工程、
1.083g/mL勾配収集物から、過剰な白血球を除去し、血中の標的癌細胞を濃縮するために、CD-45マウス抗ヒトイムノグロブリンG磁気ビーズ単離システムを採用し、1.083g/mL勾配収集物の細胞懸濁液を磁気ダイナビーズと共にインキュベートし、磁気粒子濃縮器中に置き白血球を除去する工程、
白血球除去後の1.083g/mL細胞懸濁液のCD45陰性収集物の上清を、1.068g/mL細胞懸濁液と同じ管に移し、2つの収集物を混合する工程、
2つの収集物の混合物をサイトファネルとサイトスピンにかけ、スライドを染色前に空気乾燥させる工程、
抗サイトケラチン抗体フルオレセインイソチオシアネート、前立腺特異的抗原に対する抗体(PSA)、抗PSMA抗体をスライドに加えインキュベートした後洗浄し免疫組織染色する工程、
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション、DAPIによる対比染色で核を染色する工程、
蛍光染料で染色された循環腫瘍細胞が示す形態的特徴が、コンピューター化された蛍光顕微鏡により、以下のクラス1?7に形態分析される工程、
を有する、循環前立腺癌細胞を特定し特徴付ける方法。
クラス1(図1A)は、大きな細胞体を持つ、癌細胞の形は、不定形、楕円形、又は円形。染色の後、癌細胞の細胞質中に2つのシグナルを検出できる。サイトケラチン染色は、細胞質の領域を覆う網目と、濃く高密度の蛍光フィラメントを形成する核を形成する。PSMA抗体染色は、細胞質の中央に均一な濃度のシグナルを形成し、細胞質の縁には、さらに濃い染色を伴っている。癌細胞の最外部縁では、蛍光の縁を形成する。癌細胞核は、DAPI染色で、同様に形が様々である。核の形態は、不定形、楕円形、円形である。このグループの丸い癌細胞の大多数は、細胞の大きさと形にかかわらず、異数性を示す。
クラス2は、周りの赤血球に比べてとても大きい細胞で構成され、DAPI染色の観察で、核は非常に大きく、構造が緩んでおり、軽く、壊れやすく、1.068g/mL勾配中に拘留され、細胞の壊れやすさは、循環腫瘍細胞のこのクラスを磁気ビースを含んだ分離工程に耐えられない。
クラス3(図1B,C)は、サイトケラチン及びPSMA抗体で染色することができるが、DAPI染色を受けても核がなく、患者血中を循環することにより、除核されて出現する。
クラス4は、細胞デブリスから構成され(図1D)、サイトケラチン及びPSMA抗体で特異的に染色され、同時に、DAPI染色された核デブリスが、細胞質デブリスの間に観察される。
クラス5(図1E)は、幹細胞様の形態的特徴を有し、小さなサイズ(大きな単球と比べて)、高密度、サイトケラチンシステム及びPSMA発現、異数性である。
クラス6は、サイトケラチン及びPSMA陽性のM期細胞(図1F)を含み、循環間期細胞の大集団の中で希である。
クラス7は、患者血液中で、クラスターに集塊し(図1G,H)、様々な大きさの3-100細胞でクラスターを形成し、サイトケラチン(図1G)とPSMA(図示しない)を発現し、クラスターの形態的特徴は、粗い表面の巨大なボールの様である。」(以下、「刊行物1発明」という。)

そこで、本願発明と刊行物1発明とを比較する。
(ア)刊行物1発明の「前立腺癌患者」、「血液」は、本願発明の「テスト対象」、「生物学的検体」にそれぞれ相当する。
(イ)刊行物1発明は、「蛍光染料で染色された循環腫瘍細胞が示す形態的特徴が、コンピューター化された蛍光顕微鏡により、以下のように形態分析される工程」により、クラス1ないし7の特徴を有する細胞に形態分析されるものである。
そして、「クラス1」は、サイトケラチン染色及びPSMA抗体染色され、癌細胞核は、DAPI染色で染色され、異数性を示すものであり「癌細胞」とされており、癌細胞は、本来血液中に含まれている細胞ではないから、稀な細胞といえるから、刊行物1発明の「クラス1」は、本願発明の「無傷な稀な細胞」に相当する。
また、刊行物1発明の「クラス4」は、「細胞デブリス」から構成されるものであり、細胞デブリスはサイトケラチン及びPSMA抗体で特異的に染色されることから、癌細胞由来のものといえ、本願発明の「稀な細胞に由来する細胞デブリス」に相当する。
また、刊行物1発明の「クラス3」は、サイトカイン及びPSMA抗体で染色することができるが、DAPI染色を受けても核がないものである。一方、本願発明の「稀な細胞に由来する細胞断片」は、本願明細書段落【0057】に「細胞断片は、デブリスが細胞に必ずしも似ていない点で「デブリス」とは異なる。段落【0076】に「図4Cに示された腫瘍細胞断片は、細胞に対して形態学的類似性を有しない核物質の解離の有りまたは無しにて4μmよりも大きな丸いサイトケラチン染色物体と定義された。」と記載されていることから、刊行物1発明の「クラス3」は、本願発明の「稀な細胞に由来する細胞断片」に相当する。
そうすると、刊行物1発明の「採取した前立腺癌患者の血液」は、無傷な稀な細胞、これに由来する細胞断片及び細胞デブリスを含んでいるから、本願発明の「テスト対象から得た生物学的検体」であって、「該検体は無傷の稀な細胞を含有することが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらにi.稀な細胞に由来する細胞断片、またはii.稀な細胞に由来する細胞デブリス」を含むものに相当する。
(ウ)刊行物1発明の「1.068g/mL密度勾配と1.083g/mLの勾配で遠心分離し、上部の勾配界面(1.068g/mL)と下部の勾配界面(1.083g/mL)をそれぞれ収集する工程、1.083g/mL勾配収集物から、過剰な白血球を除去し、血中の標的癌細胞を濃縮するために、CD-45マウス抗ヒトイムノグロブリンG磁気ビーズ単離システムを採用し、1.083g/mL勾配収集物の細胞懸濁液を磁気ダイナビーズと共にインキュベートし、磁気粒子濃縮器中に置き白血球を除去する工程、白血球除去後の1.083g/mL細胞懸濁液のCD45陰性収集物の上清を、1.068g/mL細胞懸濁液と同じ管に移し、2つの収集物を混合する工程」は、採取した前立腺癌患者の血液から、密度勾配遠心分離法及び磁気粒子を用いた白血球除去により、分析目的物である循環前立腺癌細胞を分離する工程であるから、本願発明の「b.磁気-標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合され」る工程とは、無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを他の検体成分から分離する点で共通している。
(エ)刊行物1発明の「2つの収集物の混合物をサイトファネルとサイトスピンにかけ、スライドを染色前に空気乾燥させる工程、抗サイトケラチン抗体フルオレセインイソチオシアネート、前立腺特異的抗原に対する抗体(PSA)、抗PSMA抗体をスライドに加えインキュベートした後洗浄し免疫組織染色する工程、蛍光インサイチューハイブリダイゼイゼーションで、核をDAPI染色する工程」は、循環腫瘍細胞を、フルオレセインイソチオシアネートで標識された抗体、つまり標識された生物特異的リガンドを用いて特異的に標識する工程であるから、本願発明の「c.該磁気-標識試料を、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと、他の検体成分の実質的排除まで、接触させ」ることとは、試料を、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと接触させる点で共通している。
(オ)刊行物1発明の「蛍光染料で染色された循環腫瘍細胞が示す形態的特徴が、コンピューター化された蛍光顕微鏡により、以下のクラス1?7に形態分析される工程、を有する循環前立腺癌細胞を特定し特徴付ける方法」と本願発明の「d.該標識された稀な細胞、および該標識された細胞断片または該標識された細胞デブリスを分析することを含み、該標識された稀な細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は病気の存在を示す;ことを特徴とするテスト対象において病気を診断する方法」とは、標識された稀な細胞、および標識された細胞断片または標識された細胞デブリスの存在を分析する方法である点で共通している。

したがって、本願発明と刊行物1発明との間には、以下のような一致点及び相違点がある。
(一致点)
テスト対象から得た生物学的検体を用い、該検体は無傷の稀な細胞を含有することが疑われる混合された細胞集団を含み、およびさらに
i.稀な細胞に由来する細胞断片、または
ii.稀な細胞に由来する細胞デブリス;
を含み;
無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを他の検体成分から分離し、
試料を、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと接触させ;
標識された稀な細胞、および標識された細胞断片または標識された細胞デブリスの存在を分析する方法である点。

(相違点1)
無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを他の検体成分から分離することが、本願発明では、磁気-標識試料を調製し、ここに、該生物学的試料は、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスと特異的に反応する第1の生物特異的リガンドにカップリングした磁性粒子と、他の検体成分の実質的排除まで、混合することにより分離するのに対して、刊行物1発明は、密度勾配遠心分離法及び磁気粒子を用いた白血球除去により分離する点。

(相違点2)
試料を、該無傷の稀な細胞、および該細胞断片または該細胞デブリスを特異的に標識する少なくとも1つのさらなる生物特異的リガンドと接触させることが、本願発明では、磁気-標識試料をさらに標識するものであり、他の検体成分の実質的排除まで、接触させるのに対して、刊行物1発明では、試料は、密度勾配遠心分離法及び磁気粒子を用いた白血球除去により分離された試料であるから磁気標識を有しておらず、他の検体成分を実質的排除するものではない点。

(相違点3)
標識された稀な細胞、および標識された細胞断片または標識された細胞デブリスを分析する方法が、本願発明では、該標識された稀な細胞、該標識された細胞断片、および該標識された細胞デブリスの存在は病気の存在を示すテスト対象において病気を診断する方法であるのに対して、刊行物1発明は、クラス1?7に形態分析して循環前立腺癌細胞を特定し特徴付ける方法である点。

そこで、上記各相違点について検討するが、相違点1と2は関連するため、まとめて検討する。
(相違点1及び相違点2について)
血液に存在する微量の循環腫瘍細胞を検出するために、腫瘍細胞と特異的に反応する抗体を結合させた磁気粒子と血液試料を混合して、循環腫瘍細胞を磁気的に他の血液成分から分離すること、及び磁気標識された試料を、蛍光標識抗体で染色し、磁気分離することは、例えば、刊行物2及び以下の文献に記載されるように、本願優先日前に周知の循環腫瘍細胞の分離分析手法といえる。
刊行物2には、技術背景として、磁気マイクロ粒子により循環腫瘍細胞を分離することが知られていることが記載され(上記(2a))、関連文献として、米国特許第4452773号明細書等に記載されるカラムを用いない高勾配磁気細胞選別や、米国特許第5385707号明細書等に記載されるフェロフェロ磁性マトリックスのカラムを用いたHGMS法(高勾配磁気分離法)が記載されている(上記(2b))。そして、実施例1として、腫瘍細胞と特異的に反応する抗サイトケラチン抗体を結合した磁気応答性試薬を全血試料に加えインキュベートし、PEで標識した抗サイトケラチン抗体で染色し、HGMS法により磁界の存在下でフェロ磁性マトリックスをとおして、磁気応答性試薬と結合した循環腫瘍細胞を磁気的に分離し濃縮することが記載される(上記(2d))。
国際公開第99/41613号公報には、免疫磁気的試料で稀な細胞を標識して、磁気的に豊富化された稀な細胞を分析すること(第78頁2行?21行の請求項1)、上皮細胞接着分子に対する抗体を磁性ナノ粒子と結合させたものと血液をインキュベートし、磁気分離器中に試験管を置き分離後、蛍光標識であるフィコエリスルン標識抗サイトケラチン抗体を添加してインキュベートした後磁気的に分離すること(第37頁最終行?第38頁11行の試料の調製)が記載されている。
また、特表2000-513437号公報には、上皮細胞を含有した血液に抗体の結合した磁気粒子を混合してインキュベートし、磁気的に分離後、上皮細胞を識別する蛍光標識であるPE(フィコエリスルン)標識抗EPCAM(上皮細胞特異的抗原)抗体やPE標識抗サイトケラチン抗体を添加し、もう一度分離して収集した細胞を分析すること(第40頁17行?第41頁14行の実施例6)が記載されている。
そして、刊行物1には、図2の細胞Dは、軽く、壊れやすく、低密度勾配中に捕捉され、単離工程で簡単に壊れることが記載されている(上記(1i))ことから、単離工程の問題点が示唆されているといえる。
そうすると、上記周知技術と同様に血液中を循環する循環腫瘍細胞分析する方法である刊行物1発明において、循環腫瘍細胞の単離方法として、細胞にできるだけ影響を与えない方法を選択し、密度勾配遠心分離法及びCD-45抗体結合磁気粒子による白血球の除去を組み合わせた方法に代えて、上記のとおり周知の、血液中から微量の循環腫瘍細胞を分離し染色する磁気分離分析方法を採用し、抗サイトケラチン抗体のような細胞断片及び細胞デブリスを含む循環腫瘍細胞と特異的に標識する生物特異的リガンドを磁気粒子と結合したものを用いて、磁気-標識試料を調製し、磁気により他の検体成分が実質的に排除されるまで混合すること、さらに、磁気分離した後の磁気-標識試料に対して、細胞断片及び細胞デブリスを含む腫瘍細胞を特異的に標識する生物特異的リガンドと、他の成分を実質的に排除するまで、接触させることは、当業者が容易になし得たものといえる。

(相違点3について)
刊行物1には、20人の女性陰性コントロール試料中には、循環上皮細胞、つまり循環腫瘍細胞は発見されず、43中3人の男性陰性コントロール試料は、循環上皮細胞が存在していたが、前立腺特異的シグナルと、染色体の異数性は欠如していたこと、前立腺癌患者では、癌細胞が検出されることが記載されおり(上記(1g))、血液中を循環する癌細胞の存在が癌の存在の指標となることが示されているといえる。
さらに、刊行物1には、図1に示された蛍光顕微鏡の観察に基づいた、循環腫瘍細胞、細胞デブリス及び細胞断片を含む循環腫瘍細胞の7つのクラスの特徴付け(上記(1h))に基づいて、図2に、循環腫瘍細胞の終末期と、生存/成長という2つの経路の細胞学的動態が示され(上記(1i))、さらに、転移経路の仮説が展開されている(上記(1j))。そして、循環前立腺癌細胞の終末期経路、対、生存/増殖経路という観点で分析がなされており、患者の病気の進行と、循環腫瘍細胞集団の異なるステージへのダイナミックな変化が相関することが、仮説を臨床/診断へ応用する可能性がありうること示唆されている(上記(1k))。
そして、一般に、「病気の診断」は、複数種類の検査結果及び医師の診察の結果を総合して、医者が判断する行為であることが技術常識であるところ、本願発明は「病気を診断」する方法に係るものであるが、本願明細書には、稀な細胞、細胞断片及び細胞デブリスの存在を分析した結果と癌を関連付けた実験結果が、表1及び表IIIに示され、明細書段落【0079】に、表1に基づき、患者の試料と健康なドナーからの試料のCell Spotterとフローサイトメトリーによる循環腫瘍細胞の計数結果の比較が記載されるに留まり、また、明細書段落【0089】に、表III基づき、明白なCTC/合計CTCの比率が、治療の指標の数字のインジケータとして用いることができることが記載されているだけであり、診断に役立つことが考えられるデータが提示されるだけであるから、本願発明の「病気の診断」は、実質的には、稀な細胞、細胞断片及び細胞デブリスの存在の分析結果を診断のための指標として用いるというものといえる。
以上のことから、刊行物1発明において、クラス1?7に形態分析して循環前立腺癌細胞を特定し特徴付けることを、刊行物1に記載された分析結果や示唆に基づいて、癌の存在や進行具合の診断に応用してみようとすることは当業者が当然に考えることであり、そのために採用した方法は、上記相違点1及び2についてで検討したように、刊行物2及び上記周知例に記載されるような、周知の磁気分離分析手法であり、これを採用することに上記のとおり困難性がない以上、刊行物1発明を癌、つまり病気を診断する方法に応用することは、当業者が容易になし得たものといえる。

(本願発明の効果について)
本願発明の、試料の採取及び処理による細胞損傷が防止でき、イメージ解析中に細胞の形態が維持できるという効果は、刊行物2及び上記周知例に記載された、血液に存在する微量の循環腫瘍細胞を検出するために、腫瘍細胞と特異的に反応する抗体を結合させた磁気粒子と血液試料を混合して、循環腫瘍細胞を磁気的に他の血液成分から分離するという周知の方法から予測し得たものといえ、格別顕著なものとはいえない。

(請求人の主張について)
請求人は、審判請求の理由で、刊行物2に記載されたマトリックスのカラムを用いたHGMSシステムによる磁気的豊富化は、細胞をひどく損傷させ喪失するから、標本獲得中の細胞損傷の除去及びイメージ解析中の細胞形態の維持という本願発明の課題解決には役立たないことを主張するが、磁気粒子を用いた循環腫瘍細胞の分離技術は、マトリックスのカラムを用いたHGMSシステムに限らないことは、刊行物2に技術背景として、磁気マイクロ粒子を用いた分離技術について、カラムを用いるHGMSシステムだけでなくカラムを用いない方法にも言及され、さらに上記周知例にカラムを用いない磁気分離法が記載されるとおりであり、上記のとおり、周知の磁気分離手法を採用することに困難性があるとはいえない。

4 むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、刊行物1及び2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-04-30 
結審通知日 2010-05-06 
審決日 2010-05-19 
出願番号 特願2003-523961(P2003-523961)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 白形 由美子  
特許庁審判長 秋月 美紀子
特許庁審判官 郡山 順
横井 亜矢子
発明の名称 循環腫瘍細胞、断片およびデブリスの分析  
代理人 山崎 宏  
代理人 田中 光雄  
代理人 佐藤 剛  
代理人 矢野 正樹  

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