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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B
管理番号 1224501
審判番号 不服2009-6297  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-24 
確定日 2010-09-29 
事件の表示 平成11年特許願第289928号「ゴルフクラブ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月28日出願公開、特開2000-325511〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年10月12日(優先権主張・平成11年3月16日)の出願であって、平成20年7月4日付け拒絶理由通知に対して、同年9月16日付けで手続補正がなされたが、平成21年2月17日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月8日付けで明細書の手続補正がなされたものである。
これに対し、当審において、平成21年6月17日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成21年8月26日付けで審尋を行ったところ、審判請求人は同年10月14日付けで回答書を提出した。
さらに、平成22年4月20日付けで拒絶の理由(最初)を通知したところ、同年6月25日付けで明細書の手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ない5に係る発明は、平成22年6月25日付け手続補正書にて補正された請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、その請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。

「【請求項1】
一定の外径で先端から後端側へのびる等径部と、
この等径部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に小となる第1のテーパ部と、
この第1のテーパ部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に大となる第2のテーパ部とを含むとともに、
前記等径部の外径を9.0?15.0mmとしたインナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフトの前記等径部を前記ホーゼルのシャフト取付孔に挿入して該等径部の外周面のみを前記シャフト取付孔に接着し、かつ該ゴルフクラブ用シャフトの前記後端にグリップを取り付けるとともに、
前記等径部は、前記シャフト取付孔と接着剤を介して接着される接着部と、前記シャフト取付孔からはみ出すはみ出し部とを含み、
かつ前記接着部の軸方向長さを21.5?36.0mmとし、しかも前記はみ出し部の軸方向長さを20?50mmとしたことを特徴とするゴルフクラブ。」(下線は審決で付した。以下同じ。)

第3 刊行物の記載事項
1 当審の拒絶理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物である実願昭62-96118号(実開昭64-967号)のマイクロフィルム(以下「引用文献1」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1) 「2.実用新案登録請求の範囲
1.ヘッド1のホーゼル部3に、底面部5から内部突出部7を突設した盲状のシャフト挿入孔8を、形成すると共に、該シャフト挿入孔8にシャフト4の挿入部6を挿入して、該挿入孔8の内周面9と該シャフト4の挿入部6の外周面10、及び、該挿入部6の内周面11と上記内部突出部7の外周面12を、夫々接着したことを特徴とするアイアン型クラブ。」

(2)「一般に、アイアン型クラブは、シャフトとヘッドとグリップからなり、該シャフトとヘッドとは、該ヘッドのホーゼル部に、盲状のシャフト挿入孔を形成し、該挿入孔にシャフト先端部を挿入して固定していた。具体的には、挿入孔の内径寸法は、シャフト先端部の外径寸法よりも0.1?0.2mm大きく設定され、また、シャフト先端部の挿入長さは25?35mm位とされていた。
そして、この場合、挿入されたシャフトの外周面とシャフトの挿入孔との間に接着剤が介装されて接着されていた。従って、シャフトの挿入深さによって接着力が決定される。」(第1頁第17行ないし第2頁第8行)

(3)「近年、アイアン型ヘッドの外観は複雑化、多様化しており、上記シャフト挿入孔が形成されるホーゼル部が短く設定される傾向にあり、このホーゼルが短くなれば、シャフトの挿入長さが短くなり、接着力が低下する問題点があった。」(第2頁第9ない14行)

(4)「本考案では、上述のこのような従来の問題点を解決して、ホーゼル部が短い場合であっても、シャフトがヘッド部に強固に取付けられ、しかも、シャフトの重量に応じた重量のヘッドとすることができるアイアン型クラブを提供することを目的とする。」(第3頁第11ないし16行)

(5)「上述の如く構成されたホーゼル部3の挿入孔8に、第2図に示す様に、シャフト4の挿入部6にて内部突出部7を外嵌するように、該シャフト4の・・・(略)・・・を、夫々接着する。即ちシャフト4の内外両面から接着する。
このように、シャフト4をヘッド1に取付ければ、その接着面積は、内部突出部7を有さない挿入孔に比べて増大し、その接着力は増加する。具体的には、実験では、挿入部6の外径寸法Cを9.4mm、該挿入部6の内径寸法を8.5mm、挿入孔8の内径寸法Eを9.5mm、内部突出部7の外径寸法Aを8.4mmとし、かつ、挿入孔8の内周面9とシャフト4の挿入部6の外周面10との接着長さ寸法l_(1)を30mm、挿入部6の内周面11と内部突出部7の外周面12との接着長さ寸法l_(2)を20mmとした場合において、内部突出部7を有さない場合に比べて接着強度が60%増加した。なお、接着後、より安全のために、ビス又はピン等でさらに固定するも好ましい。」(第6頁第2行ないし第7頁第6行)

(6)第1、2図から、外径が等しい挿入部を含むインナーホーゼルタイプのシャフトを、シャフト挿入孔に挿入したアイアン型クラブが看取される。

(7)上記(2)に「一般に、アイアン型クラブは、シャフトとヘッドとグリップからなり」と記載されているように、アイアン型クラブはシャフト後端部にグリップを備えていることは明らかである。

上記のことから、引用文献1には次の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)と認められる。

「ヘッドのホーゼル部に底面部から内部突出部を突設したシヤフト挿入孔を形成すると共に、シャフト挿入孔にシャフト挿入部を挿入して、シャフト挿入孔の内周面とシヤフト挿入部の外周面及びシャフト挿入部の内周面と内部突出部の外周面を、夫々接着したアイアン型クラブにおいて、
外径が等しい挿入部を含むインナーホーゼルタイプのアイアン型クラブ用シャフトであって、シャフトの後端部にグリップを備え、
シャフト挿入部の外径寸法を9.4mm、シャフト挿入部の内径寸法を8.5mm、シャフト挿入孔の内径寸法を9.5mm、内部突出部の外径寸法を8.4mmとし、かつ、シャフト挿入孔の内周面とシャフト挿入部の外周面との接着長さ寸法l_(1)を30mm、シャフト挿入部の内周面と内部突出部の外周面との接着長さ寸法l_(2)を20mmとした、アイアン型クラブ。」

2 当審の拒絶理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-89605号公報(以下「引用文献2」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 繊維強化プラスチックからなる中空ゴルフクラブシャフトにおいて、
(i)シャフトのチップ側先端の内径が少なくとも7mmで、外径が少なくとも8mmであること、
(ii)シャフトのチップ側先端からH_(1)点までのシャフトの外径が実質的に同じであり、該H_(1)点はシャフトのチップ側先端から20?170mmの範囲に位置すること、
(iii)シャフトのチップ側先端からG_(1)点までのシャフトの内径が実質的に同じであり、該G_(1)点は、シャフトの全長に対するシャフトのチップ側先端からの距離の比で表わした位置において、20?50%の範囲に位置すること、
(iv)シャフト全長に対するシャフトのチップ側先端からの距離の比で表わした位置において、10?45%の範囲の位置に捩り剛性値極小点C又は極小域F有し、かつ40?47%の範囲の位置にキックポイントQを有すること、
(v)前記H_(1)点と極小点C又は極小域Fとの間の外径が、極小点C又は極小域Fの方向に向けて徐々に減少すること、を特徴とするゴルフクラブシャフト。」

(2)「【0002】
【従来の技術】従来、繊維強化プラスチック(FRP)製の中空ゴルフクラブシャフトは広く利用されている。このシャフトは、ゴルフクラブを形成するために、一般的には、そのチップ側先端部をクラブヘッドのシャフト取付け穴内に挿入し、接着剤により接着固定化される。しかしながら、このようなゴルフクラブの場合、スチール製シャフトを有するゴルフクラブとは異なり、そのゴルフクラブシャフトのチップ側先端部における捩り剛性値が比較的小さいことから、スイングをし、打球する際に、そのチップ側のシャフト先端部に捩れを生じやすく、打球の方向性が損われるという難点がある。特に、この打球方向の不安定性は、ヘッドスピードを速くして打球する際に著しくなる。前記FRP製中空ゴルフクラブシャフトのチップ側先端部における捩り剛性値は、原理的には、そのシャフトのチップ側先端部の外径を大きくすることにより増加させることができる。しかし、チップ側先端部の外径を大きくすると、この場合には、そのチップ側先端部をクラブヘッドのホーゼル内に挿入することができなくなるため、クラブヘッドのホーゼルとシャフトのチップ側先端部との結合は、オーバーホーゼル型の結合、即ち、ホーゼルをシャフトのチップ側先端部の中空孔内に挿入する方式の結合や、ジョイントを用い、そのジョイントの一方の端部をホーゼル内に挿入し、他方の端部をシャフトのチップ側先端部の中空孔内に挿入する方式の結合により行うことが必要となる。そして、このような結合方式によると、シャフトのチップ側先部の内径も必然的に大きくなり、その結果、そのシャフトの平均内径及び平均外径が、従来のシャフトの平均内径及び平均外径よりも、相当に大きくなる。この理由は、従来のシャフトの場合シャフトの内径が、シャフトのチップ先端からシャフトのグリップ側先端に向けて、徐々に増加し、それに応じてシャフトの外径も徐々に増加しているからである。一方、シャフトの平均内径及び平均外径が大きくなりすぎると、FRP製中空シャフトの特徴であるしなり性が損われるとともに、シャフトのキックポイントがグリップ側に大きく移動するため、ゴルフクラブとしての特性が損われ、打球が上らない、飛距離が低下する、スイング感触がわるい等の問題が生じる。」

(3)【0006】本発明のシャフトは、そのチップ側先端部にジョイントをあらかじめ連結させたものであってもよいし、連結させないものであってもよい。本発明のシャフトに対してジョイントを用いる場合、そのジョイントは、繊維強化プラスチック又は金属で構成することができる。繊維強化プラスチックとしては、前記したシャフトに関して示したものと同様のものを例示することができる。金属としては、スチールや、チタン等を例示することができる。また、このジョイントは、円筒形であることができる他、円柱形等であることができる。」

(4)「【0007】次に、本発明のジョイントを有しないシャフトについて図面を参照して説明する。図1は、本発明シャフトを中心線に沿って縦方向に切断したときの断面図を示す。この図において、11はシャフトの外表面の切断線を示し、12はシャフトの内表面の切断線を示す。Bは、シャフトのチップ側先端部における外径が実質的に同じである部分を示す。Fは、シャフトにおける外径分布の極小域を示す。F_(1)?F_(2)はその極小域の長さを示し、その長さは300mm以下、好ましくは250mm以下である。また、この外径分布極小域Fの長さはゼロ、即ち極小点Cであってもよい。Dはシャフトのグリップ側先端部における外径が実質的に同じである部分を示す。H_(1)点は、シャフトの外径分布変化点を示し、シャフトのチップ側先端からこのH_(1)点までの外径は実質的に同じであり、シャフトの外径は、このH_(1)点からグリップ側に向けて徐々に減少する。H_(2)点は、シャフトの外径分布変化点を示し、シャフトのグリップ側先端からこのH_(2)点までの外径は実質的に同じであり、シャフトの外径は、このH_(2)点からシャフトのチップ側に向けて徐々に減少する。・・・(略)・・・。」

(5)「【0101】実施例3(アイアンゴルフクラブシャフトの製造例)
(シャフト本体の製造)下記No.1?No.7のプリプレグを用意した。これらのプリフレグは炭素繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させて形成したものである。なお、以下において示す繊維配向角度において、+は長さ方向に対して右廻りの角度であることを示し、-は左廻りの角度であることを示す。
・・・(略)・・・
【0102】
・・・(略)・・・
(5)前記のようにして得られたプリプレグ巻成体を加熱炉において加熱し、プリプレグ中の樹脂を一体に硬化させた後、マンドレルを除去し、チップ側10mmとバット側19mmを切断除去してシャフト素管を得た。ついで素管の表面を研磨・研削かこうしてアイアンゴルフクラブ用シャフト本体を得た。このシャフトにおいて、チップ側先端の外径(Y_(1))は11.6mm及び内径(X_(1))は8.5mm、そのバット側外径(Y_(2))は15.0mm及び内径(X_(2))は12.0mm、その長さは991mm、である。また、前記で示したH_(1)点及びG_(1)の位置は、それぞれチップ側先端から40mm及び370mmの位置であり、前記で示したH_(2)=G_(2)点は、シャフトバット側先端から31mmの位置にある。また、前記図1で示したF_(1)点とF_(2)点はチップ側先端から、それぞれ、130mm及び370mmの位置であり、領域Fの長さは240mmである。」

(6)「【0111】
【発明の効果】本発明のゴルフクラブシャフト及びゴルフクラブは、そのシャフトのチップ側先端部が従来一般のシャフトよりも太径に形成されていることから、そのシャフトのチップ側先端部の捩り剛性値は非常に高く、打球の方向安定性において著しくすぐれたものである。また、本発明のシャフトにおいては、そのキックポイントがシャフト全長に対するチップ側先端からの距離の比で表わした位置において、40?47%の範囲に保持されていることから、打球が上方に上りやすいという特徴を有している。さらに、本発明の場合には、捩り剛性値の極小点又は極小域が、シャフト全長に対するチップ側先端からの距離の比で表わした位置において、10?45%の範囲の位置に存在することから、打球の際に、ゴルフクラブヘッドに与えられた衝撃によって生じるゴルフクラブの捩りの衝撃の一部が、捩り剛性値極小点又は極小域近辺のシャフト部分で吸収され、衝撃がかなり小さくなって手に伝わるので打球の感触がよい等の効果を有する。さらに、本発明のシャフトは、そのチップ側先端部が太径に形成されているにもかかわらず、シャフトの中間部の外径はそれ程太くないことから、ゴルフクラブとしてスイングしたときに、クラブのしなり性がよく、スイングの感触がよい。本発明のゴルフクラブシャフト及びゴルフグラブは、ハードヒッター用に好適のものであり、スイングし、打球する際にシャフトの捩りが小さく、方向性の安定した打球を与える。」

(7)図1から、シャフトのチップ側先端に外径が実質的に同じである部分(以下「等径部」という。)と、
この等径部に連なり外径が後端側に向けて徐々に小さくなる部分(以下「第1のテーパ部」という。)と、
この第1のテーパー部に連なる外径分布極小域と、
この外径分布極小域に連なり外径が後端側に向けて徐々に大きくなる部分(以下「第2のテーパ部」という。)と、を含む中空ゴルフクラブシャフトが看取される。

(8)上記(4)から、上記(7)の中空ゴルフクラブシャフトにおいて、「外径分布極小域」の長さをゼロとした場合、「第1のテーパー部に連なり外径が後端側に向けて徐々に大きくなる第2のテーパ部と、を含む中空ゴルフクラブシャフト」ということになる。

上記のことから、引用文献2には次の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)と認められる。

「シャフトのチップ側先端の等径部と、
この等径部に連なり外径が後端側に向けて徐々に小さくなる第1のテーパ部と、
この第1のテーパー部に連なり外径が後端側に向けて徐々に大きくなる第2のテーパ部と、
を含む中空ゴルフクラブシャフトにおいて、
シャフトのチップ側先端の内径を少なくとも7mm、外径を少なくとも8mm、等径部の長さを25?170mmとすることにより、
チップ側先端部が太径に形成されているにもかかわらず、シャフトの中間部の外径はそれ程太くないことから、ゴルフクラブとしてスイングしたときに、クラブのしなり性がよく、スイングの感触がよい、中空ゴルフクラブシャフト。」

第4 対比・判断
1 対比
(1)本願発明と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「外径が等しい挿入部」は、本願発明の「等径部」に相当し、同様に、
「シャフト挿入部の外径寸法」は「等径部の外径」に、
「インナーホーゼルタイプのアイアン型クラブ用シャフト」は「インナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフト」に、
「シヤフト挿入孔」は「シャフト取付孔」に、相当する。

イ 引用発明1は「シャフト挿入孔の内周面とシヤフト挿入部の外周面及びシャフト挿入部の内周面と内部突出部の外周面を、夫々接着した」ものであるから、引用発明1と本願発明は「等径部は、前記シャフト取付孔と接着剤を介して接着される接着部を含み」という点で共通する。

ウ 上記イより、 引用発明1の「接着長さ寸法l_(1)」 は、本願発明の「接着部の軸方向の長さ」に、相当する。

エ 上記アないしウより、
引用発明1の「外径が等しい挿入部を含むインナーホーゼルタイプのアイアン型クラブ用シャフトであって、シャフトの後端部にグリップを備え、
シャフト挿入部の外径寸法を9.4mm、シャフト挿入部の内径寸法を8.5mm、シャフト挿入孔8の内径寸法を9.5mm、内部突出部の外径寸法を8.4mmとし、かつ、シャフト挿入孔の内周面とシャフト挿入部の外周面との接着長さ寸法l_(1)を30mm、シャフト挿入部の内周面と内部突出部の外周面との接着長さ寸法l_(2)を20mmとした」と、

本願発明の「等径部の外径を9.0?15.0mmとしたインナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフトの前記等径部を前記ホーゼルのシャフト取付孔に挿入して該等径部の外周面のみを前記シャフト取付孔に接着し、かつ該ゴルフクラブ用シャフトの前記後端にグリップを取り付けるとともに、
前記等径部は、前記シャフト取付孔と接着剤を介して接着される接着部と、前記シャフト取付孔からはみ出すはみ出し部とを含み、
かつ前記接着部の軸方向長さを21.5?36.0mmとし、しかも前記はみ出し部の軸方向長さを20?50mmとした」とは、

「等径部の外径を9.0?15.0mmの範囲内に設定したインナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフトの前記等径部を前記ホーゼルのシャフト取付孔に挿入して該等径部の外周面を前記シャフト取付孔に接着し、かつ該ゴルフクラブ用シャフトの前記後端にグリップを取り付けるとともに、
前記等径部は、前記シャフト取付孔と接着剤を介して接着される接着部を含み、
かつ前記接着部の軸方向長さを21.5?36.0mmの範囲内に設定した」という点で共通する。

(2)してみると、本願発明と引用発明1とは以下の点で一致する。
<一致点>
「一定の外径で先端から後端側へのびる等径部を含み、
前記等径部の外径を9.0?15.0mmの範囲内に設定したタインナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフトの前記等径部を前記ホーゼルのシャフト取付孔に挿入して該等径部の外周面を前記シャフト取付孔に接着し、かつ該ゴルフクラブ用シャフトの前記後端にグリップを取り付けるとともに、
前記等径部は、前記シャフト取付孔と接着剤を介して接着される接着部を含み、
かつ前記接着部の軸方向長さを21.5?36.0mmの範囲内に設定した、ゴルフクラブ。」

(3)一方で、本願発明と引用発明1は、以下の点で相違する。
<相違点1>
シャフトの形状に関し
本願発明が「等径部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に小となる第1のテーパ部と、
この第1のテーパ部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に大となる第2のテーパ部とを含む」と特定されるものであるのに対して、引用発明1では上記特定を備えているか否か不明である点。

<相違点2>
接着箇所に関し
本願発明が「等径部の外周面のみを前記シャフト取付孔に接着し」と特定されるものであるのに対して、引用発明1では上記特定を有していない点。

<相違点3>
等径部に関し
本願発明が「シャフト取付孔からはみ出すはみ出し部とを含み」、かつ「しかも前記はみ出し部の軸方向長さを20?50mmとした」と特定されるものであるのに対して、引用発明1では、上記特定を有していない点。

2 判断
(1)上記<相違点1>について
ア 引用発明2の「中空ゴルフクラブシャフト」は、等径部の内径が少なくとも7mm、外径が少なくとも8mm及び長さが25?170mmであることから、引用発明1の「シャフト挿入孔」に挿入可能であり、しかも、ゴルフクラブとしてスイングしたときに、クラブのしなり性がよく、スイングの感触がよいものであるから、引用発明2の「中空ゴルフクラブシャフト」
を引用発明1のインナーホーゼルタイプのゴルフクラブ用シャフトとして採用することは、当業者が容易に着想し得ることである。

イ 引用発明2の「中空ゴルフクラブシャフト」を採用した引用発明1は「等径部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に小となる第1のテーパ部と、
この第1のテーパ部に連なりかつ外径が後端側に向けて徐々に大となる第2のテーパ部とを含む」との構成を備えることになる。

ウ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点1>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易になし得たことである。

(2)上記<相違点2>について
ア 引用文献1には、従来のシャフトの固定に関し「シャフト先端部の挿入長さは25?35mm位とされていた。
そして、この場合、挿入されたシャフトの外周面とシャフトの挿入孔との間に接着剤が介装されて接着されていた。従って、シャフトの挿入深さによって接着力が決定される。」(摘記(2)を参照。)と記載されている。
上記接着力の大小は、シャフトの挿入深さだけではなく、シャフト挿入部の外径、接着剤の種類及び接着面の構造等にも依存することは、当業者にとって明らかである。

イ してみれば、引用発明1において、シャフトの挿入深さやシャフト挿入部の外径等を調節し、シャフト挿入部の外周面とシャフト挿入孔の内周面との間を接着により接着することは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ そして、上記イのように接着することで必要な接着力が得られる場合に、「シャフト挿入部の内周面と内部突出部の外周面」との間を接着しないようにすることも、適宜なし得たことである。

エ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点2>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

(3)上記<相違点3>について
ア シャフト取付孔の先端において、応力集中によるシャフト破損のおそれのあることは、本願出願前に周知の事実である(例えば、特開平10-151228号公報の【0003】、特開平10-57533号公報の【0003】を参照。以下「周知事実」という。)。

イ してみると、引用発明1において、引用発明2の「中空ゴルフクラブシャフト」を採用した際に、シャフト取付孔の先端にシャフトの外径が細くなる「第1のテーパ部」が位置しないように、等径部の長さを「50?80mm」とすることは、当業者が適宜なし得たことである。

ウ 等径部の長さを「50?80mm」とした引用発明2の「中空ゴルフクラブシャフト」を採用した引用発明1は、「シャフト取付孔からはみ出すはみ出し部とを含み」、かつ「しかも前記はみ出し部の軸方向長さを20?50mmとした」との構成を備えることになる。

エ 以上のことから、引用発明1において、上記<相違点3>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が適宜なし得たことである。

また、本願発明の効果も、引用発明1、2の奏する効果及び周知事実から当業者が予測し得る範囲内のものである。

<相違点についてのまとめ>
以上のことから、引用発明1において、上記<相違点1>乃至<相違点3>に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が引用発明2及び周知事実に基づいて容易になし得たことである。
また、本願発明の奏する効果も、引用発明1、2の奏する効果及び周知事実から当業者が予測し得る範囲内のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知事実に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-15 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-10 
出願番号 特願平11-289928
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之高木 亨  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 星野 浩一
藏田 敦之
発明の名称 ゴルフクラブ  
代理人 住友 慎太郎  

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