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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1224551
審判番号 不服2007-30915  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-15 
確定日 2010-10-07 
事件の表示 特願2002- 19810「移動通信ネットワークのルータおよび移動通信端末」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開,特開2003-224874〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成14年1月29日の出願であって,平成19年10月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対して同年11月15日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年12月17日付けで手続補正がなされたものである。


第2 平成19年12月17日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成19年12月17日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[補正却下の決定の理由]
(1)本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正により,少なくとも特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。

「第1の移動通信ネットワークに設けられた複数のルータの少なくとも1つと無線通信を行う第1の通信部と,
第2の移動通信ネットワークに設けられた複数のルータの少なくとも1つと無線通信を行う第2の通信部と,
前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置する第1のルータと通信している状態において,該第1のルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2のルータからの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を開始し,その後該第2のルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部と,を有する移動通信端末。」

本件補正は,補正前の請求項1に記載された「前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置するルータと通信している状態において,該端部に位置するルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた前記ルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部」を,「前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置する第1のルータと通信している状態において,該第1のルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2のルータからの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を開始し,その後該第2のルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部」へと限定するものであるから,本件補正は,特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に係る発明(以下,「本願補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。


(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願日前に頒布された刊行物である,特開平9-121376号公報(平成9年5月6日公開。以下,「刊行物」という。)には,図面とともに以下の技術事項(ア)?(オ)が記載されている。

(ア)「図5にこの発明の第2実施形態のシステム構成を示す。この例は,衛星通信のサービスエリア1内に地上系セルラ電話のサービスエリア2が包含されている場合である。これらサービスエリア1,2を,衛星通信システムと地上系セルラ電話システムとの何れとも切り換えて通信することができる移動局30が移動して,両システムの何れかのサービスを受けるものとする。」(段落【0030】)

(イ)「移動局30は,衛星通信用無線基地局40から通信衛星120を介して送信される報知情報および地上系セルラ電話基地局41から送信される報知情報を受信して,衛星モードまたは地上モードの何れかを選択する。衛星モードを選択する場合は,通信衛星120を介して位置登録情報を送信する。衛星通信用無線基地局40では移動局30から送信された位置登録を衛星通信用回線制御局42に送り,衛星通信用回線制御局42は,位置記録メモリ45に移動局30が衛星モードで運用していることを登録する。同様に,移動局30が地上モードを選択した場合は,移動局30は地上系セルラ電話基地局41に位置登録情報を送信する。地上系セルラ電話基地局41は,移動局30から送信された位置登録を,地上系セルラ電話回線制御局43に送り,地上系セルラ電話回線制御局43は位置登録メモリ45に移動局30が地上モードで運用していることを登録する。
【0033】移動局30に着信する場合,交換局44は衛星通信用回線制御局42または地上系セルラ電話回線制御局43を通して移動局30の位置登録メモリ45にアクセスし,移動局30が衛星モードか地上モードのどちらに登録しているかを読み出す。衛星モードに登録している場合は,衛星通信用無線基地局40を通じて移動局30に着信をかけ,地上モードに登録している場合は,地上系セルラ電話基地局41を通して移動局30に着信をかける。」(段落【0032】?【0033】)

(ウ)「図6に移動局30の構成例を示す。移動局30は衛星通信用移動機34および地上系セルラ電話用移動機35からなる。」(段落【0034】)

(エ)「図7に基地局40,41の構成例を示す。衛星通信用無線基地局40では,送信機51,受信機52が送受共用器82を介してアンテナ70と接続され,送信機51の入力側には,フレーム構成回路60が接続される。このフレーム構成回路60には報知情報,呼処理信号,モード切り換え情報,エッジ情報が入力される。ここで,エッジ情報は,移動局がサービスエリア端にあることを示す情報である。地上系セルラ電話基地局41では送信機53,受信機54が送受共用器83を介してアンテナ71に接続され,送信機53の入力側にフレーム構成回路60と同様のフレーム構成回路61が接続される。移動局30は衛星通信用移動機34を切り離し,地上系セルラ電話移動機35を地上系セルラ電話単独モードで動作させると,地上系セルラ電話移動局となる。衛星通信用無線基地局40と地上系セルラ電話基地局41では,フレーム構成回路60,61でそれぞれ報知情報に加えてモード切り換え情報とエッジ情報を無線フレームに構成し,共通制御チャネルで送信する。」(段落【0037】)

(オ)「次に図12を参照して地上系セルラモードを選択している移動局30が衛星モードを選択する場合を説明する。移動局30は地上系セルラ電話移動機35より地上モードで受信し(S1),その受信レベルがデュアル出圏レベル以下になったかを監視する(S2)。デュアル出圏レベル以下になると,送信地上基地局のその報知情報中のエッジ情報を確認する(S3)。エッジ情報によって現在の在圏ゾーンが地上系セルラ電話のサービスエリア端であると確認された場合には,衛星通信用移動機34で衛星通信用無線基地局40から通信衛星を介して送信される報知情報を受信する(S4)。ここで衛星通信用無線基地局40から送信される報知情報を受信できなかった場合は,衛星通信,地上系セルラの各サービスエリアの圏外となる(S5)。
【0043】一方,衛星通信用無線基地局40から送信される報知情報が移動局で受信されると,報知されたモード切り換え情報が,デュアルモード制御回路101に記憶されているモード切り換え情報と異なるかを調べる(S6)。異なる場合はデュアルモード制御回路101内のモード切り換え情報を変更する(S7)。報知されたモード切り換え情報が記憶されているモード切り換え情報と一致する場合には,地上系の回線品質が劣化したかを調べ(S10),劣化した場合はデュアルモードタイマ98をスタートさせる(S11)。このタイマ値は例えば1分程度とされる。
【0044】次に受信レベルがデュアル地上系出圏レベル以下になったかが監視される(S12)。受信レベルが出圏レベル以下になると,報知情報中のエッジ情報が地上系セルラのサービスエリア端であることを指示するかを調べる(S13)。サービスエリア端であれば衛星通信からの報知情報を受信できるかを調べる(S14)。受信できた場合は,その報知情報中のモード切り換え情報がデュアルモード制御回路100内に記憶してあるものと異なるかを調べ(S15),異なっていればその受信したモード切り換え情報に更新する(S16)。ここで,衛星通信からの報知情報が受信できない場合には,移動局30は,衛星通信システムおよび地上系セルラシステムの各サービスエリアの圏外と判断される(S20)。報知されたモード切り換え情報が記憶されているモード切り換え情報と一致する場合には,地上系セルラ基地局からの信号の回線品質が所定値より劣化していないかを調べる(S17)。回線品質が劣化していればデュアルタイマ98のタイマ値が報知情報中のタイマ値より大となったかを調べ(S18),大になっていなければステップS12に戻り,デュアルタイマ98のタイマ値が報知情報中のタイマ値より大となるまで,ステップS12からステップS18までの処理を繰り返す。この後,衛星通信用移動機34による通信に移行し,地上モードから衛星モードに切り換える(S19)。つまり,以上のモード切り換えの条件を満たし続け,かつ,タイマ値がデュアルモード切り換え情報のタイマ値よりも大きくなった場合には衛星モードにモードを切り換えて衛星通信による位置登録を行う。
【0045】以上図11,図12の説明では,モード切り換え条件として,受信レベル,回線品質,エッジ情報,タイマ値を用いる例を示したが,これらのモード切り換え条件をすべて用いる必要がない場合は,受信レベル,回線品質,エッジ情報,タイマ値の内1つ以上の任意のモード切り換え情報をモード切り換えの条件として用いることもできる。その場合は図11,図12で記載された条件を除外すればよい。また,図11,図12の説明で,地上系セルラ電話モードと衛星モードをそれぞれ入れ換えて実施することもできる。さらに衛星通信を地上系セルラ電話と異なる他の地上系セルラ電話として読替え,二つの地上系セルラ電話同士でのモード切り換え判定方法として用いることもできる。」(段落【0042】?【0045】)

したがって,刊行物には,以下の発明(主として第2実施形態について,段落【0045】に記載されているように,モード切り換え条件としてエッジ情報を用い,衛星通信を地上系セルラ電話と異なる他の地上系セルラ電話として読替え,二つの地上系セルラ電話同士でのモード切り換え判定を行うようにしたもの。以下,「刊行物記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「他の地上系セルラ電話用移動機および地上系セルラ電話用移動機からなり,
他の地上系セルラ電話用無線基地局から送信される報知情報および地上系セルラ電話基地局から送信される報知情報を受信して,他の地上モードまたは地上モードの何れかを選択する移動局であって,
地上モードを選択している移動局が他の地上モードを選択する場合には,
移動局は地上系セルラ電話用移動機より地上モードで受信し(S1),
送信地上基地局のその報知情報中のエッジ情報を確認し(S3),
エッジ情報によって現在の在圏ゾーンが地上系セルラ電話のサービスエリア端であると確認された場合には,他の地上系セルラ電話用移動機で他の地上系セルラ電話用無線基地局から送信される報知情報を受信し(S4),
他の地上系セルラ電話用無線基地局から送信される報知情報が移動局で受信されると,他の地上系セルラ電話用移動機による通信に移行し,地上モードから他の地上モードに切り換えて(S19),他の地上系セルラ電話による位置登録を行う,
移動局。」


(3)本願補正発明と刊行物記載発明との対比
刊行物記載発明の「地上系セルラ電話」は本願補正発明の「第1の移動通信ネットワーク」に相当し,刊行物記載発明の「地上系セルラ電話基地局」は本願補正発明の「ルータ」と中継装置である点で共通するから,刊行物記載発明の「地上系セルラ電話用移動機」は,本願補正発明の「第1の通信部」と,「第1の移動通信ネットワークに設けられた複数の」中継装置「の少なくとも1つと無線通信を行う第1の通信部」である点で,一致する。

刊行物記載発明の「他の地上系セルラ電話」は本願補正発明の「第2の移動通信ネットワーク」に相当するものであり,また刊行物記載発明の「他の地上系セルラ電話用無線基地局」は,本願補正発明の「ルータ」と中継装置である点で共通するから,刊行物記載発明の「他の地上系セルラ電話用移動機」は,本願補正発明の「第2の通信部」と,「第2の移動通信ネットワークに設けられた複数の」中継装置「の少なくとも1つと無線通信を行う第2の通信部」である点で,一致する。

刊行物記載発明の移動局は,地上系セルラ電話用移動機より地上モードで受信し,送信地上基地局のその報知情報中のエッジ情報を確認し,エッジ情報によって現在の在圏ゾーンが地上系セルラ電話のサービスエリア端であると確認された場合には,他の地上系セルラ電話用移動機で他の地上系セルラ電話用無線基地局から送信される報知情報を受信し,他の地上系セルラ電話用無線基地局から送信される報知情報が移動局で受信されると,他の地上系セルラ電話用移動機による通信に移行し,地上モードから他の地上モードに切り換えて他の地上系セルラ電話による位置登録を行うように,前記他の地上系セルラ電話用移動機を制御する制御手段を備えていることは明らかであって,刊行物記載発明の当該制御手段は,本願補正発明の「制御部」と,「前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置する第1の」中継装置「と通信している状態において,該第1の」中継装置「から送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2の」中継装置「からの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を」行い「,その後該第2の」中継装置「との通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部」である点で共通する。

そして刊行物記載発明の「移動局」は「移動通信端末」である。


したがって,本願補正発明と刊行物記載発明は,以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「第1の移動通信ネットワークに設けられた複数の中継装置の少なくとも1つと無線通信を行う第1の通信部と,
第2の移動通信ネットワークに設けられた複数の中継装置の少なくとも1つと無線通信を行う第2の通信部と,
前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置する第1の中継装置と通信している状態において,該第1の中継装置から送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2の中継装置からの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を行い,その後該第2の中継装置との通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部と,を有する移動通信端末。」である点。

<相違点1>
中継装置について,本願補正発明では「ルータ」であるのに対して,刊行物記載発明では「地上系セルラ電話基地局」及び「他の地上系セルラ電話用無線基地局」であってこれら基地局が「ルータ」の機能を有するとは記載されていない点。

<相違点2>
端部に位置することを示すメッセージを受信すると行われる,第2の移動通信ネットワークに設けられた第2の中継装置からの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出について,本願発明では当該メッセージを受信すると「開始」するのに対して,刊行物記載発明ではいつ開始されるのか不明な点。


(4)相違点についての判断
<相違点1について>
ネットワークにおいて,ルータの機能を有する無線基地局は周知(特開平8-274792号公報の段落【0013】には「通信ネットワークC100は,ルータR101,R102,およびネットワークN102によって互いに接続された基地局B103,B104,B105を含む。基地局B103,B104,B105は,一方では有線ネットワークN102に接続され,他方ではそれぞれN103,N104,N110など多数の無線ネットワークに接続されている。基地局B103,B104,B105はそれぞれ,ルータの役目もする。」と記載され,特開平11-112565号公報の段落【0025】には「基地局CS1?CSnは,アンテナ11を備えた無線部1と…を備え,さらにルータ部6を備えている。」と記載され,特開2000-183945号公報の段落【0011】には,「モバイルIPの観点及び本明細書の以下の部分全てにおいては,基地局は従来技術に係る無線基地局に関連する全ての機能を含んでおり,さらに,従来技術に係るルータに関連する機能も含むものとする。この二重機能性は,ルータ及び基地局を統合するという方法…で実現されうる。」と記載され,原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-92562号公報の段落【0002】,【0008】,【0057】には,それぞれ「ルータ装置は…データグラム(データパケット)を転送する…データグラムには…最終宛先のネットワーク層アドレス(例えば,IPの場合はIPアドレス)が記載されており,ルータ装置では,そのアドレス情報に基づいて…次の転送先ノード(ルータ装置もしくは通信端末となる)を決定している。」,「移動先には,フォーリンエージェントというルータ(FA)103が設置されている。」,「フォーリンエージェント3は,…パケットを無線携帯端末5宛に配送する。なお,無線携帯端末は,無線基地局を介してエージェント広告メッセージや…を送受信することになる。」と記載されている。)であり,相違点1は格別なものではない。

<相違点2について>
他の移動通信ネットワークとの境界に位置する基地局から所定の情報を受信した場合に,当該他の移動通信ネットワークに設けられた中継装置からの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を「開始」することは周知(特開平11-164344号公報の段落【0026】?【0029】には,「端末200は,はじめ広域サービスネットワーク2に対してのみ基地局捕捉動作を行い…無線キャリア受信部151は,待受けを行っている無線基地局の報知する制御信号から当該無線基地局の識別符号を読み出し…端末200の記憶部153には,自動的に基地局捕捉動作を開始すべき狭域サービスネットワーク3のサービスエリア130に,最寄りの無線基地局の識別符号が,参照識別符号として記憶され…端末200が,サービスエリア130に近づいて…無線キャリア受信部151から通知される待受け中の無線基地局の識別符号と,上記参照識別符号とが…一致した場合には…狭域サービスネットワーク3に対する基地局捕捉動作を開始する。」と記載されており,特開2001-60910号公報の段落【0010】には,「PHS無線基地局は…近傍にMMACサービスエリアが存在する旨の情報を報知し…無線端末1011においては,第2の受信部1015がPHSの報知チャネルを受信しており…A地点で近傍にMMACサービスエリアが存在することを認識する。すると…該第1の受信部1012はMMACシステムの電波の受信動作を行う。その後…MMACサービスエリア外に出たことを認識し…MMACシステムの電波の受信を停止する…無線端末は近傍にMMACシステムのサービスエリアが存在する場合にのみMMACシステムの電波を受信する…電力消費の低減を図ることが可能となる」と記載されている。)であって,当該周知技術を刊行物記載発明に適用して,「端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2のルータからの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を開始」するようにすることは,当業者が容易になし得たことである。


また,本願補正発明のように構成したことによる効果も,刊行物記載発明及び周知技術から予測できる程度のものである。

したがって,本願補正発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


(5)まとめ
本願補正発明は,上記「(4)相違点についての判断」で示したとおり,特許出願の際独立して特許を受けることができないから,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明・刊行物

平成19年12月17日付け手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成18年12月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。

「第1の移動通信ネットワークに設けられた複数のルータの少なくとも1つと無線通信を行う第1の通信部と,
第2の移動通信ネットワークに設けられた複数のルータの少なくとも1つと無線通信を行う第2の通信部と,
前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置するルータと通信している状態において,該端部に位置するルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた前記ルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部と,を有する移動通信端末。」

また,原査定の拒絶の理由に引用された刊行物に関する記載事項は,前記「第2 (2)刊行物」に記載したとおりである。


第4 当審の判断

本願発明は,前記「第2 平成19年12月17日付け手続補正についての補正却下の決定」で検討した本願補正発明における「前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置する第1のルータと通信している状態において,該第1のルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた第2のルータからの信号を送信するアンテナからの受信電波の検出を開始し,その後該第2のルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部」の限定を省いて,「前記第1の通信部が,前記第1の移動通信ネットワークの通信エリアの端部に位置するルータと通信している状態において,該端部に位置するルータから送信される,端部に位置することを示すメッセージを受信すると,前記第2の移動通信ネットワークに設けられた前記ルータとの通信を開始するように前記第2の通信部を制御する制御部」としたものである。

そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第2 (4)相違点についての判断」に記載したとおり,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,刊行物記載発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について論及するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-04 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-23 
出願番号 特願2002-19810(P2002-19810)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 久松 和之  
特許庁審判長 大野 克人
特許庁審判官 近藤 聡
圓道 浩史
発明の名称 移動通信ネットワークのルータおよび移動通信端末  
代理人 林 恒徳  
代理人 土井 健二  

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