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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A01G
管理番号 1224578
審判番号 不服2008-31268  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-10 
確定日 2010-10-07 
事件の表示 特願2002- 29906「屋上緑化システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 4日出願公開、特開2003- 33112〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成14年2月6日の出願であって、平成20年11月6日付けで拒絶査定がなされ、同年12月10日付けで拒絶査定に対する審判の請求がなされたものである。
これに対し、当審において、平成22年5月10日付けで拒絶理由通知がなされたところ、平成22年7月12日付けで意見書が提出された。

2 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成19年8月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されたとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】 火山灰風化土、炭、および、ゼオライトを混合してなる土壌の下に導水性シートを敷設し、該導水性シートから前記土壌へ給水するよう構成した屋上緑化システムであって、
火山灰風化土、炭、および、ゼオライトは、前記土壌のpHが中性値となるような組成比で混合され、
前記導水性シートを、排水性部材からなる排水層の上に設置したことを特徴とする屋上緑化システム。」

3 刊行物の記載内容
(1)当審における拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-8114号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、建築構造物において防水処理が施された屋上路盤等の基盤部を緑化するための緑化構造物及び緑化方法に関する。」、
「【0008】本発明は…その目的とするところは、土壌に対する保水構造を改良することにより、建築構造物の屋上等の基盤部に配置される土壌層の厚さを薄くして建築構造物への荷重負担を軽減しながら、その厚さの薄い土壌層に対し常に安定して均一に保水させることができるようにし、土壌の水管理を容易化することにある。」、
「【0022】
【作用】上記の構成により、請求項1又は8の発明では、土壌層の下側に保水拡散層が配置されているので、潅水された水はこの保水拡散層により保持され、この水が土壌層に徐々に供給される。このため、土壌層の厚さが薄い場合であっても、その土壌層に十分に安定して保水させることができる。しかも、保水拡散層では水が拡散するので、土壌層での保水むらをなくすことができる。一方、上記保水拡散層の下側に排水層が形成されているので、天然雨水や過剰給水により余剰水が発生したとしても、それらを排水層により保水拡散層から外部にスムーズに排出することができる。また、この排水層にある間隙により、土壌層に生育している植物の地下根系への空気接触を促進させることができる。よって、これらの相乗効果により、土壌層の植物に安定して十分に水を供給することができ、その生育を良好に維持することができる。
【0023】また、このように保水拡散層により土壌層に安定して水が供給されるので、その分、潅水の頻度が少なくて済み、潅水を容易化することができる。さらに、こうして土壌層に対する水の管理が容易で、土壌層の厚さを薄くできるので、その重量を軽くすることができ、建築構造物に対する荷重負担を低減することができる。」、
「【0034】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示し、1は建築構造物における基盤部としての屋上路盤1で、この屋上路盤1には一側(図で右側)にある側壁2から他側に向かって下がる所定角度θ(例えばθ=2°)の勾配がつけられ、その上面ないし側壁2の内側面には耐久性を持った防水層3が形成されている。」、
「【0039】上記緑化構造物Aにおける排水材5は、天然雨水や潅水時の過剰給水を屋上路盤1表面に沿って排出させるためのもので、例えば合成繊維を間隙(排水用空間)が形成されるように絡めてなり、…」、
「【0042】保水拡散材7は、供給された水を保持しかつ拡散するものであり、シート状の繊維製不織布で構成される。…」、
「【0046】次に、この緑化構造物Aにより建築構造物の屋上を緑化する方法について説明する。まず、建築構造物の耐久性防水処理が施された屋上路盤1上に排水材5を載せ、その上に透水性遮根シート6を載置し、さらにその透水性遮根シート6の上に保水拡散材7を載せて複合層状構造物9とする。
【0047】次いで、上記保水拡散材7上にポンプ式潅水装置12の導水管13を配置した後、その上から植生に適する土壌層10を積層し、該土壌層10表面に植物としての天然芝Pを張芝により植える。そして、上記導水管13をポンプ15に接続するとともに、底面式潅水装置17の一部をなしている保水拡散材7の端部を貯水槽18内に垂らし込めばよい。」、
「【0054】また、上記実施例では、透水性遮根シート6を保水拡散材7と排水材5との間に配置したが、排水材5の下側に配置してもよく、…」、
「【0062】さらに、保水拡散シート上に砂70%、バーミキュライト10%、ピートモス10%、ゼオライト10%を混合した土壌を導水管を埋めるように厚さ5cmだけ捲土し、その上に天然芝の張芝を行い、張芝の目地には砂を充填した。」。
上記記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「砂、バーミュキュライト、ピートモス、ゼオライトを混合してなる土壌層10の下に保水拡散材7を敷設し、該保水拡散材7から前記土壌層10へ給水するよう構成した屋上路盤等の基盤部を緑化するための緑化方法であって、
前記保水拡散材7を、排水材5の上に設置した屋上路盤等の基盤部を緑化するための緑化方法。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

(2)当審における拒絶理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-70635号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次のことが記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、土壌粉末を主要成分とする農園芸用の人工粒状培土及びその製造法に関する。」、
「【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、黒ぼくを含む土壌粉末100重量部に籾殻燻炭粉末0.1?50重量部を混合、造粒してなる農園芸用人工培土(人工粒状培土)にある。
【0006】本発明はまた、黒ぼくを含む土壌粉末100重量部に、籾殻燻炭粉末0.1?50重量部及び水を混合したのち、これを造粒することからなる農園芸用の人工粒状培土の製造法にもある。
【0007】土壌粉末成分として用いる「黒ぼく」は、火山灰土壌の表層土で、5?10重量%の有機物を含有し肥料成分に富んでいることが知られている。しかし黒ぼくは粘土分が非常に多いことから、単独では培土として使いにくいことが知られている。
【0008】本発明では、有機物を多量含有する黒ぼくを含む土壌粉末を用いながら、これに特定範囲の量にて籾殻燻炭粉末を混合し、これを造粒して人工粒状培土とすることにより、ピートモスやパーライトなどの保水材、結着材を特に用いなくとも、農園芸用の人工培土として優れた特性を有する培土が得られることを見い出したことに基づき完成されたものである。本発明の人工粒状培土において、籾殻燻炭粉末は、肥料成分として作用するのみではなく、保水材として、そして更に微生物活着材としても作用する。微生物活着材としての作用とは、粒状培土の表面層に多量の微生物を活性状態で付着させる作用を意味し、培土として機能を高めるために有利なものである。」、
「【0016】なお、本発明の人工粒状培土は、上記の必須成分以外に、肥料成分、pH調製のための中和剤などの添加成分を更に加えてもよいことは勿論である。また、粉末粒子の強度を特に高めたい場合には、造粒時に、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子物質を結合剤として0.1?10重量%(上記の人工粒状培土の必須成分に対する割合)添加することもできる。」、
「【0017】
【実施例】
[実施例1]籾殻燻炭をディスクリファイナリーで粉砕し、16メッシュ/インチ(タイラー篩)で篩分けし、通過分を取り出して粒子径が1mm以下の籾殻燻炭粉末を得た。別に水分含量が10重量%以下になるように乾燥した黒ぼくと山土とを重量比で1:2の割合で混合し、この混合物70リットル(70kg)と、籾殻燻炭粉末10kg、そして肥料(窒素、リン酸及びカリ成分を含む複合肥料)600gとを混合し、pH6.5の原料混合物を得た。」、
「【0020】[実施例2]実施例1において、土壌粉末として黒ぼくを単独で用い、回転式造粒機内で原料組成物に水を加える際に、ポリビニルアルコールの2重量%水溶液を用いた以外は同様にして人工粒状培土を得た。」。

4 判断
本願の請求項1に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、請求項1に係る発明の目的は「土壌厚みを薄くしても土壌の適切な水分状態を維持することが可能な屋上緑化システムを提供すること」(本願明細書の段落【0004】参照)であり、刊行物1記載の発明の目的である「【0008】…建築構造物の屋上等の基盤部に配置される土壌層の厚さを薄くして建築構造物への荷重負担を軽減しながら、その厚さの薄い土壌層に対し常に安定して均一に保水させることができるようにし、土壌の水管理を容易化することにある。」と異ならない。
そして、刊行物1記載の発明の「土壌層10」が、請求項1に係る発明の「土壌」に相当し、以下、「保水拡散材7」が「導水性シート」に、「屋上路盤等の基盤部を緑化するための緑化方法」が「屋上緑化システム」に、「排水材5」が「排水層」に、それぞれ相当するから、両者は、
「土壌の下に導水性シートを敷設し、該導水性シートから前記土壌へ給水するよう構成した屋上緑化システムであって、
前記導水性シートを、排水性部材からなる排水層の上に設置した屋上緑化システム。」である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
土壌が、請求項1に係る発明では「火山灰風化土、炭、および、ゼオライトを混合してなる土壌」であるのに対し、刊行物1記載の発明では「砂、バーミュキュライト、ピートモス、および、ゼオライトを混合してなる土壌」である点。
(相違点2)
相違点1に関連して、請求項1に係る発明は、「火山灰風化土、炭、および、ゼオライトは、土壌のpHが中性値となるような組成比で混合」されたものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、このようなものでない点。

上記相違点1について検討するため、上記刊行物2をみると、刊行物2には、黒ぼく(火山灰土、請求項1に係る発明の「火山灰風化土」に相当する。)と籾殻燻炭(請求項1に係る発明の「炭」に相当する)粉末と含む培土が記載され、実施例2として、黒ぼく、籾殻燻炭、肥料を混合し、ポリビニールアルコール水溶液を添加した培土が記載されている。
そして、刊行物2の【0016】には、肥料及びポリビニールアルコールは必須でない旨の記載があるから、結局、上記刊行物2には、火山灰風化土及び籾殻燻炭のみからなる土壌(培土)の発明が記載され、さらに火山灰風化土及び籾殻燻炭からなる土壌には、必要に応じて、肥料やポリビニールアルコール水溶液を添加できることが記載されていると認められる。
刊行物2には、「籾殻燻炭」は、保水材、微生物活着材として機能するものであることが記載されているが、土壌(培土、培地)に、燻炭と同様に吸着作用を有し、さらにイオンの交換作用によりpHを調整・安定させる作用があるゼオライトを添加することは周知慣用である。
例えば、ゼオライトを添加することは刊行物1にも記載されているが、当審の拒絶理由で例示した特開平3-297331号公報3頁左上欄10?14行には、有害物の吸着のために活性炭又はゼオライトを添加することが、特開平10-210855号公報【0009】【0010】及び特開2000-135035号公報【0006】には、ゼオライトは含まれるイオンの交換作用により、pHを調整・安定させることが記載されている。
そうすると、上記刊行物1記載の発明において、刊行物2記載の発明に基いて、植物栽培用の土壌の主材料として「火山灰風化土と炭」を採用し、これに、吸着やpH調整等を目的としてゼオライトを添加することは、当業者であれば容易に推考できたものである。

上記相違点2について検討すると、植物の育成を最適にするために土壌のpH値を中性値の近傍とすることは当業者が当然考慮すべき技術事項であり、上記特開平10-210855号公報にも、段落【0010】「…植物育成培地のpHはできるだけ6.5?7.5の範囲であることが望ましく、このため添加するゼオライトはpHが6.5以上のものが望ましい。」と記載され、ゼオライトにより土壌のpH値を中性値の近傍に調整することが示唆されている。
そして、火山灰風化土、炭、及び、ゼオライトには種々の種類があり、pHも酸性からアルカリ性まで様々なものがあるから、上記相違点1で検討したように、上記刊行物1記載の発明の土壌を、請求項1に係る発明のように「火山灰風化土、炭、および、ゼオライトを混合してなる土壌」とする際に、それぞれの材料のpHを考慮して組成を調整することは適宜なしうることである。

なお、請求人は、平成22年7月12日付け意見書において、
「刊行物2(特開平6-70635号公報)でも、その段落【0016】に『肥料成分、pH調製のための中和剤などの添加成分を更に加えてもよい』と記載され、段落【0017】に肥料を混合してpH6.5の原料混合物を得たことが記載されていることから、やはり、資材の添加によりpH調製を行っていることは明らかです。・・・従来、土壌のpH調製は資材の添加により行われており、土壌成分の組成比のみでpH調製を行うことは当業者が容易に着想し得ることではありません。」と主張している。
しかし、刊行物2には、「肥料やpH調製のための中和剤」などの成分を添加できることが記載されているにすぎず、肥料や中和剤によらない土壌のpH調製を行わないことを示すものではない。また、最終的に肥料や中和剤により、土壌のpH調製を行うとしても、予め土壌そのもののpHを植物生育に適した中性の近い値に調整することは、上記のとおり当業者が適宜なしうることである。
そもそも、本願明細書には、段落【0020】に「土壌8は、例えば厚み約5cmの層をなす混合土であり、火山灰風化の下層土、木炭、ゼオライトを適宜な組成比で混合したものである。この組成比は、好ましくは、土壌8のpHが中性値となるように設定される。」と記載されているだけであり、段落【0023】には、必要に応じて栄養分(肥料)を添加することが記載されているのであって、「火山灰風化土、炭、および、ゼオライト」の配合割合のみにより、土壌のpHが中性値となるようにすることに格別の技術的意義は認められない。

そして、「土壌の適切な水分状態を維持することができる」との明細書記載の効果は、導水性シート(保水拡散材7)を有する刊行物1記載の発明も奏するものであり、請求項1に係る発明の作用効果は、全体として、刊行物1及び2記載の発明並びに周知技術から予測できる程度のものである。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-09 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-23 
出願番号 特願2002-29906(P2002-29906)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
草野 顕子
発明の名称 屋上緑化システム  
代理人 一色国際特許業務法人  

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