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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1224684 |
審判番号 | 不服2007-28905 |
総通号数 | 131 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-11-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-10-24 |
確定日 | 2010-10-06 |
事件の表示 | 特願2002- 39940「検索メモリ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月10日出願公開、特開2003-256265〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成14年2月18日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成19年6月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであり、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 複数のバンクを有し、各々の前記バンクには同一のデータが格納されているメモリセルと、 前記メモリセルに接続し、少なくとも一以上の前記バンクごとに対応して設けられる複数の検索用コントローラと、 前記複数の検索用コントローラに接続し、さらにインターフェイスを介して外部のCPUとに接続する分配器であって、セレクタを有し、前記CPUから受け取る検索コマンドに応答して、前記セレクタが前記バンクの中で検索可能なバンクに対応する前記検索用コントローラを選択し、当該選択された検索用コントローラに前記検索コマンドを送るための分配器と、 を含む検索メモリ。」 2.引用例記載の発明 (1)当審による平成22年1月6日付けの拒絶理由通知書で引用した特開平9-305476号公報(以下、「引用例1」と呼ぶ。)には、次の記載がある。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、データ処理装置、詳しくは、RAMに格納されたデータの探索に連想メモリと同等の探索機能を実現し、データ検索の高速化を図ったデータ処理装置に関する。」 イ.「【0006】・・・この発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、データ探索に際してのCPUの冗長的な動作を廃することができ、また、データ探索の高速化を可能とするデータ処理装置を提供することを目的とする。」 ウ.「【0018】比較回路15は、分配回路14と並列的に探索データレジスタ16が接続して探索データ信号が入力し、また、マスクレジスタ17が接続してマスクデータ信号が入力する。この比較回路15は、探索データレジスタ16から入力する探索データ信号の一部のビットをマスクレジスタ17から入力するマスクデータ信号によりマスクし、この一部マスクされた検索データ信号と分配回路14を経て入力するSRAM3の出力データ信号とを比較する。そして、比較回路15は、一部マスクされた検索データ信号と出力データ信号が一致した場合に一致信号をアドレス発生回路12に出力する。 【0019】探索データレジスタ16は、CPU1と接続され、CPU1が出力する探索データ信号を格納する。マスクレジスタ17は、CPU1と接続され、CPU1が出力するマスクデータ信号を格納する。」 エ.「【0021】一方、データ探索を行う場合は、CPU1がイネイブルの探索制御信号を出力する。このため、アドレス発生回路12がアドレス信号を所定の周期で順次出力し、セレクタ11がアドレス発生回路12の出力するアドレス信号をSRAM3に出力し、また、このアドレス信号に基づきSRAM3が出力するデータ信号を分配回路14が比較回路15に出力する。 【0022】そして、比較回路14(審決注:「比較回路15」の誤記と認められる。)は、探索データレジスタ16から入力する探索データ信号の一部のビットをマスクレジスタ17から入力するマスクデータ信号によりマスクし、この一部マスクされた探索データ信号と分配回路14が出力するデータ信号とを照合し、一致する場合に一致信号をアドレス発生回路12に出力する。そして、アドレス発生回路12は、比較回路14から一致信号が入力すると、該当するアドレス信号、すなわち、比較結果が一致したデータのアドレスを一致アドレス格納レジスタ13に出力して格納する。 【0023】また、アドレス発生回路12は、SRAM3の全アドレスに対応するアドレス信号の出力が完了、すなわち、探索が終了すると、探索終了信号をCPU1に出力する。このため、CPU1は、探索制御信号をディセイブルとするとともに、一致アドレス格納レジスタ13からアドレス信号を読み出し、この読み出したアドレス信号によりSRAM3から一致するデータ信号を読み出す。 【0024】上述のように、この実施の形態にかかるデータ処理装置は、CPU1がイネイブルの探索制御信号を出力するのみでデータ探索を行え、データ探索に際してCPU1が他のタスクを実行する必要がない。このため、図2に示すように、データ探索に際しては、CPU1が1回のROMリードサイクルを実行した後は、CPU1がタスクを実行することなくSRAM3の各アドレスデータの読出から比較までが順次行われる。すなわち、1アドレスデータの比較時間に付いての対比からも明らかなように、1アドレスデータの比較処理はCPU1に依存しないSRAMリードサイクル、データ比較サイクルおよびデータ格納サイクルからなり、1アドレスデータの比較時間が前述した従来例(図4参照)と比較して格段に短くなる。 【0025】 【発明の効果】以上説明したように、この発明にかかるデータ処理装置によれば、探索制御信号に基づきアドレス発生回路が出力するアドレス信号をRAMに入力し、このアドレス信号によりRAMが出力するデータ信号を分配回路により比較回路に導いて検索データ信号と比較し、一致する場合に一致信号をアドレス発生回路に出力して該当するアドレスデータを一致アドレス格納レジスタに格納するため、データ探索に際してCPUがなすべきタスクを少なくでき、また、データ探索時間を短縮できるという効果が得られる。」 ここで、上記記載中の「SRAM3」がメモリセルを有していることは当然のことである。 また、本願発明でいう「検索用コントローラ」は、その呼称と、本願の請求項1の記載や、本願明細書の段落【0013】、【0014】等の記載によれば、「自身はCPUを有さず、CPUからの検索コマンドを受け、メモリセル内のデータを検索し、その検索結果のデータをCPUへ返却する機能を有するもの」全般を指すものと解されるところ、上記記載中の「アドレス発生回路12」、「比較回路15」、「探索データレジスタ16」、「マスクレジスタ17」、「一致アドレス格納レジスタ13」からなる部分も、「自身はCPUを有さず、CPUからの検索コマンドを受け、メモリセル内のデータを検索し、その検索結果のデータをCPUへ返却する機能を有するもの」といえるから、該「アドレス発生回路12」、「比較回路15」、「探索データレジスタ16」、「マスクレジスタ17」、「一致アドレス格納レジスタ13」からなる部分は、まとめて「検索用コントローラ」とも呼び得るものと認められる。 さらに、本願発明でいう「検索メモリ」は、その呼称と、本願の請求項1の記載や、本願明細書の段落【0001】、【0007】等の記載によれば、CAM(連想メモリ)のような、「記憶機能と検索機能の両方を有する装置」全般を指すものと解されるところ、引用例1の「データ処理装置」も、連想メモリと同等の探索機能を実現したものであり、「記憶機能と検索機能の両方を有する装置」といえるから、該「データ処理装置」は、「検索メモリ」とも呼び得るものと認められる。 以上を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。 「メモリセルと、 前記メモリセルに接続した検索用コントローラと、 を含む検索メモリ。」 (2)当審による平成22年1月6日付けの拒絶理由通知書で引用した特開平11-143884号公報(以下、「引用例2」と呼ぶ。)には、次の記載がある。 オ.「【要約】 【課題】 検索を実行するホストコンピュータを、ホスト端末の検索要求プログラムが検索条件によって自動的に選択できるようにし、ホストコンピュータの負荷を分散して検索時間を短縮する。 【解決手段】 主ホストコンピュータ1、副ホストコンピュータ2及びホスト端末3はネットワーク4によって相互に結ばれており、互いに静的な同一のデータから構成されている主データ5及び副データ6がそれぞれ主ホストコンピュータ1及び副ホストコンピュータ2によって管理されている。ホスト端末3が有しているホスト自動選択機能付き検索要求およびデータ表示プログラム11はホスト選択条件13に基づいて、検索要求を主ホストコンピュータ1及び副ホストコンピュータ2のいずれに対して優先的に振り分けて与えるかを決定する。ホスト選択条件は、検索時間帯、所要時間等に基づいている。」 カ.「【0031】ここで「優先的に」とは、必ずしも振り分けられたホストコンピュータが検索要求に応えることを意味するのではない。例えば検索A,Eがこの順に連続して選択された場合、表1に基づけばいずれの検索要求も主ホストコンピュータ1が優先的に振り分けられる。しかし検索Aの検索完了を待って検索Eを行うのでは処理の迅速が図れない。そこで検索Aの検索完了以前に検索Eを行うため、検索Eの検索要求には副ホストコンピュータ2が対応する事になる。勿論、検索Eの検索要求が生じた際に既に検索Aの検索が完了していれば、検索Eの検索要求は主ホストコンピュータ1が対応する事になる。」 ここで、上記引用例2の記載は、ホストコンピュータが検索要求に応えるものを前提としたものとなっているが、上記引用例1の記載や本願明細書にも従来技術として記載されているCAM(いわゆる連想メモリ)の存在等からホストコンピュータに依存しないで検索する技術が周知であったと認められること、上記引用例2に記載された検索時間を短縮できる原理が、ホストコンピュータの利用にあるのではなく複数の検索ユニットに検索処理を振り分ける点にあることは当業者に自明であること、等の事情にかんがみれば、当業者は、上記引用例2の記載から、「データ検索システムにおいて、検索時間を短縮するために、同一のデータを複数の装置に格納しておき、検索要求を、該複数の装置の中で検索可能な装置に優先的に振り分けて与えるようにする」といった、ホストコンピュータの使用を前提としない技術思想(以下、この技術思想を「引用例2記載発明」と呼ぶ。)をも当然に把握可能であったといえる。 3.対比 本願発明と引用例1記載発明を対比すると、両者間には、以下の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「メモリセルと、 前記メモリセルに接続した検索用コントローラと、 を含む検索メモリ。」である点。 (相違点1) 本願発明の「メモリセル」は、「複数のバンクを有し、各々の前記バンクには同一のデータが格納されている」ものであり、本願発明は、「少なくとも一以上の前記バンクごとに対応して設けられる複数の検索用コントローラ」を有するものであるのに対し、引用例1記載発明の「メモリセル」は、複数のバンクを有するものではなく、引用例1記載発明は、複数の検索用コントローラを有するものではない点。 (相違点2) 本願発明は、「前記複数の検索用コントローラに接続し、さらにインターフェイスを介して外部のCPUとに接続する分配器であって、セレクタを有し、前記CPUから受け取る検索コマンドに応答して、前記セレクタが前記バンクの中で検索可能なバンクに対応する前記検索用コントローラを選択し、当該選択された検索用コントローラに前記検索コマンドを送るための分配器」を有するものであるのに対し、引用例1記載発明は、そのような分配器を有するものではない点。 4.当審の判断 (1)上記相違点について ア.(相違点1)について 引用例1記載発明と、上記引用例2記載発明は、いずれも、検索時間の短縮を目的とするものであり、引用例2記載発明が引用例1記載発明においても有用であることは、当業者に自明であるから、引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用することは、当業者が容易に推考し得たことである。 その際、引用例1記載発明は、引用例1の上記段落【0024】、【0025】等の記載からも明らかなように、CPUがなすべきタスクを少なくするようにしたものであるから、当業者は、CPUを複数設けるのではなく、引用例1記載発明のメモリセルと検索用コントローラのセットを複数設け、複数設けた各セットのメモリセルに同一のデータを格納するようにすることを当然に考える。 また、複数のバンクからなるメモリは周知であり、メモリをバンク単位で管理することも、ごく普通のことであるから、上記のように引用例1記載発明のメモリセルと検索用コントローラのセットを複数設け、複数設けた各セットのメモリセルに同一のデータを格納するようにする際、その「同一のデータを格納するメモリセル」を、「複数のバンクを有し、各々の前記バンクには同一のデータが格納されている」ものとすることも、当業者が容易に推考し得たことである。 以上の事実ないし事情にかんがみれば、引用例1記載発明の「メモリセル」を、「複数のバンクを有し、各々の前記バンクには同一のデータが格納されている」ものとし、引用例1記載発明を、「少なくとも一以上の前記バンクごとに対応して設けられる複数の検索用コントローラ」を有するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことである。 イ.(相違点2)について 上記ア.で検討したように、引用例1記載発明の「メモリセル」を、「複数のバンクを有し、各々の前記バンクには同一のデータが格納されている」ものとし、引用例1記載発明を、「少なくとも一以上の前記バンクごとに対応して設けられる複数の検索用コントローラ」を有するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことであるが、その際、引用例2記載発明の機能を実現するために、いずれかの部分に、「検索要求を、該複数の装置の中で検索可能な装置に優先的に振り分ける」機能を持たせる必要があることは当然のことである。引用例2においては、その機能をホスト端末3に持たせているが、そのような機能をどこに持たせるかは当業者が適宜決定し得ることであり、「セレクタを有する分配器」と呼び得る装置を設け、それに上記機能を持たせるようにすることも、当業者が適宜なし得たことである。 また、引用例1記載発明においても、検索要求は外部のCPUが出すものと認められるから、引用例1記載発明に引用例2記載発明を適用して上記「セレクタを有する分配器」と呼び得る装置を設ける場合には、該「セレクタを有する分配器」は当然に、複数の検索用コントローラと外部のCPUとに接続されるものとなり、該「セレクタを有する分配器」は、それを設ける目的から、当然に、「CPUから受け取る検索コマンドに応答して、前記セレクタが前記バンクの中で検索可能なバンクに対応する前記検索用コントローラを選択し、当該選択された検索用コントローラに前記検索コマンドを送る」といった機能を有するものとされる。 したがって、引用例1記載発明を「前記複数の検索用コントローラに接続し、さらにインターフェイスを介して外部のCPUとに接続する分配器であって、セレクタを有し、前記CPUから受け取る検索コマンドに応答して、前記セレクタが前記バンクの中で検索可能なバンクに対応する前記検索用コントローラを選択し、当該選択された検索用コントローラに前記検索コマンドを送るための分配器」を有するものとすることも、当業者が容易に推考し得たことである。 (2)本願発明の効果について 本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例1、2の記載事項や周知の事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであっ て、格別のものとはいえない。 5.むすび 以上によれば、本願発明は、引用例1記載発明、引用例2記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-06 |
結審通知日 | 2010-05-11 |
審決日 | 2010-05-24 |
出願番号 | 特願2002-39940(P2002-39940) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 和樹 |
特許庁審判長 |
小曳 満昭 |
特許庁審判官 |
飯田 清司 池田 聡史 |
発明の名称 | 検索メモリ |
代理人 | 市位 嘉宏 |
代理人 | 上野 剛史 |
代理人 | 太佐 種一 |
代理人 | 坂口 博 |