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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16B
管理番号 1224705
審判番号 不服2009-2988  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-09 
確定日 2010-07-28 
事件の表示 特願2002-102047「化粧キャップ付きホイールナットおよび組立方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年11月15日出願公開、特開2002-327725〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
【1】手続の経緯

本願は、平成14年4月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年4月5日、(US)アメリカ合衆国)の出願であって、平成20年11月4日(起案日)付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成21年2月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年3月11日付けで明細書に対する手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。
その後、当審において、平成21年8月18日(起案日)付けで審尋がなされ、平成21年11月25日に審尋に対する回答書が提出されたものである。

【2】補正の却下の決定

[結論]
本件補正を却下する。

[理由]

1.本件補正の内容

本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に対し、以下のような補正を含むものである。なお、下線は、審判請求人が付した補正箇所である。

(1)本件補正前の請求項1(平成20年8月12日付け手続補正)
「【請求項1】 車両の車輪用の装飾的なキャップおよび車輪締付であって、当該キャップおよび車輪締付が、
(a)ネジを有する締付挿入体の本体であって、該ネジが該本体の軸を取り囲むように形成されてなる締付挿入体を備え、
(b)前記本体が軸を取り囲む多角形断面の外面を有する一断面を備え、
(c)前記本体が軸を取り囲む円筒状断面の外面を有する他の断面を備え、
(d)当該キャップおよび車輪締付が、多角形断面の内面を有する一壁部をもつキャップを備え、
(e)前記キャップが円筒状断面の内面を有する他の壁部を備え、
(f)前記キャップが、半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材から形成され、
(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有し、
(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有し、
(i)前記所定の内径が前記所定の外径より十分に小さく、これによって前記キャップが前記挿入体上にはめ込むように適用され、キャップが本体に保持されるための引張周応力を供給するために、前記触れ合う円筒形状の表面の周囲に前記円筒状断面の外面と前記円筒状断面の内面との間に形成される少なくとも0.052mmの締りばめを形成することにより、前記キャップが塑性変形および弾性変形されるキャップおよび車輪締付であって、前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成されてなることを特徴とするキャップおよび車輪締付。」

(2)本件補正後の請求項1(平成21年3月11日付け手続補正)
「【請求項1】 車両の車輪用の装飾的なキャップおよび車輪締付であって、当該キャップおよび車輪締付が、
(a)ネジを有する締付挿入体の本体であって、該ネジが該本体の軸を取り囲むように形成されてなる締付挿入体を備え、
(b)前記本体が軸を取り囲む多角形断面の外面を有する一断面を備え、
(c)前記本体が軸を取り囲む円筒状断面の外面を有する他の断面を備え、
(d)当該キャップおよび車輪締付が、多角形断面の内面を有する一壁部をもつキャップを備え、
(e)前記キャップが円筒状断面の内面を有する他の壁部を備え、
(f)前記キャップが、半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材から形成され、
(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有し、
(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有し、
(i)前記所定の内径が前記所定の外径より十分に小さく、これによって前記キャップが前記挿入体上にはめ込むように適用され、キャップが本体に保持されるための引張周応力を供給するために、前記触れ合う円筒形状の表面の周囲に前記円筒状断面の外面と前記円筒状断面の内面との間に形成される少なくとも0.052mmの締りばめを形成することにより、前記キャップが塑性変形および弾性変形されるキャップおよび車輪締付であって、前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成され、
(j)前記他の壁部の前記弾性変形が、触れ合う円筒形状の表面の周囲に0.052?0.156mmの締りばめを形成するように適用され
(k)前記挿入体の外面にコーティングが設けられており、
(l)該コーティングの厚さが約0.026mmである
(m)前記コーティングが、クロムを含まないことを特徴とするキャップおよび車輪締付。」

2.補正の適否

上記補正は、審判請求書にその根拠が記載されていないものの、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0008】、【0014】などの記載に基づくものとして捉えることができ、本件補正前の「キャップおよび車輪締付」について、
「(j)前記他の壁部の前記弾性変形が、触れ合う円筒形状の表面の周囲に0.052?0.156mmの締りばめを形成するように適用され
(k)前記挿入体の外面にコーティングが設けられており、
(l)該コーティングの厚さが約0.026mmである
(m)前記コーティングが、クロムを含まない」
ものであることをさらに限定して特定するものである。
すなわち、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとして認めることができ、かつ、補正前の請求項に記載した発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更することのない範囲内において行われたものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって、上記補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものであり、かつ、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項追加禁止に違反するものではない。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

3.本願補正発明について

3-1.本願補正発明

本願補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、上記「【2】1.本件補正の内容」に示した本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。

3-2.引用刊行物とその記載事項

刊行物1:米国特許第4764070号明細書

[刊行物1]
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物1には、「CAPPED WHEEL NUT ASSEMBLY」に関して、図面とともに、以下の事項が記載されている。(日本語訳は、当審による仮訳である。なお、「°」など半角で表記できない英文の記載は適宜変更した。)

(ア)「This invention relates generally to a wheel nut assembly and refers more particularly to a capped wheel nut assembly for automobile wheels.
BACKGROUND AND SUMMARY OF THE INVENTION
The capped wheel nut assembly of the present invention is designed to replace the construction presently in use in which the cap is welded to the nut. According to the present invention, the cap is secured to the nut by adhesive.
Usually in a capped wheel nut assembly, the nut is steel with a zinc plate and the cap is stainless steel. A welded joint between the nut and cap is a corrosive site because of the different metals involved. Elimination of the welded joint eliminates these corrosive sites which lead to weakening or failure of the bond. Elimination of the welded joint also eliminates stress risers in the cap which are caused by the welding of the cap to the nut.
The adhesive bond of the present invention insulates the two metals from each other and thus resists corrosion.
The adhesive bond also imparts flexibility and thus eliminates rattle.」(第1欄第4?27行)
(この発明は、車輪ナット組立体に係るものであり、特に、自動車の車輪のためのキャップ付き車輪ナット組立体に関するものである。
【発明の背景および要約】
本発明のキャップ付き車輪ナット組立体は、キャップがナットに溶接されて使用される従来の構造を置き換えるために設計されている。本発明によれば、キャップは接着剤によってナットに固定される。
一般に、キャップ付き車輪ナット組立体では、ナットは亜鉛メッキされた鋼であり、キャップはステンレス鋼である。ナットとキャップの間の溶接継ぎ目は、含まれる異種金属のために腐食する部分である。
溶接された継ぎ目をなくすことは、結合の弱体化あるいは欠陥の原因となる腐食する部分をなくすことになる。溶接された継ぎ目をなくすことは、さらにキャップの溶接によってナットにもたらされる、キャップ中の応力集中部をなくすことができる。
本発明の接着結合は、2つの金属を相互に隔離することにより、耐腐食性を有する。
また、接着結合は、柔軟性を与えることによってがたつきを防止する。)

(イ)「Referring now more particularly to the drawings, the capped wheel nut assembly comprises a wheel nut 10 and a cap 12.
The wheel nut 10 is in the form of an elongated tubular body 14. The body 14 has a main body portion 16 extending from the end 18 throughout a major portion of its length. The main body portion 16 has a polygonal side wall. More specifically, it is in the form of a six sided regular polyhedron in which all six outer surfaces or flats 20 are identical and in which the angles between adjacent flats 20 are all equal. The flats 20 extend parallel to the longitudinal center line of the tubular body.
The nut body 14 is tapered at the nose end 22 to provide a frusto-conical seat 24 adapted to engage a complementary seating surface around a bolt on which the nut is threaded. The nut is interiorly threaded where indicated at 26 from its nose end 22 part way towards the opposite end of the nut body.
The nut body 14 has a circular enlargement 28 between the seat 24 and the main body portion 16, providing a radially outwardly extending circular abutment surface or shelf 29 where the main body portion 16 meets the enlargement 28. The large end of the frusto-conical seat 24 merges into the circular enlargement 28.
The cap 12 has an elongated side wall 30 and an end wall 32 closing one end of the cap. The opposite end of the cap is open. The end wall 32 has a marginal portion 33 which is at right angles to the longitudinal centerline of the cap, and an outwardly domed central portion.
The side wall 30 of the cap is polygonal. More specifically, it is in the form of a regular six sided polyhedron in which all six surfaces or flats 34 are identical and parallel to the longitudinal centerline of the side wall 30 and in which the angles separating the six flats are all equal. The inside dimensions of the side wall 30 are slightly larger than the outside dimensions of the main body portion 16 of the nut.
The side wall 30 of the cap at the open end terminates in an outwardly flared circular marginal portion 36 which has a radial outwardly extending flange 38 and a terminal cylindrical portion 40 concentric with the longitudinal centerline of the side wall.
The cap is assembled on the nut by sleeving it over the main body portion 16 to the point where the flange 38 of the marginal portion 36 of the side wall 30 of the cap engages the abutment surface 29 on the nut throughout a full 360.degree., substantially as shown in FIG. 3. The marginal portion 36 of the cap encircles the enlargement 28 of the nut with the cylindrical portion 40 thereof contacting the radially outer surface of the enlargement 28 throughout a full 360.degree. The cap is, of course, turned about its axis before assembly so that when assembled the flats and angles on the side wall 30 of the cap are aligned with and confront the flats and angles on the main body portion 16 of the nut. The flats of the nut and cap are laterally or radially spaced from one another, and the marginal portion 33 of the end wall 32 of the cap is axially spaced from the annular end 18 of the nut. These spaces are completely filled with or occupied by adhesive 50.
In other words, adhesive 50 completely coats all of the flats 20 and 34 of the nut and cap to uniformly separate or space them apart, and completely coats the annular end 18 of the nut and marginal end portion 33 of the cap to uniformly separate or space them apart. The adhesive 50 may be applied to the surfaces of the nut and cap before assembling them together.」(第1欄第64行?第2欄第62行)
(より詳しくは図面を参照すると、キャップ付き車輪ナット組立体は、車輪ナット10およびキャップ12を有する。
車輪ナット10は、細長い管状のナット本体14の形をしている。ナット本体14にはその長さの大部分の全体にわたる端部18から伸びる本体部16がある。本体部16には多角形の側壁がある。より具体的には、側壁は、6つの外部の表面あるいは平面20がすべて同一で、その中で隣接した平面20間の角度がすべて等しい6つの面を有する正多面体の形をしている。平面20は、管状体の長さ方向の中心線に平行に延びている。
ナット本体14は、截頭円錐台座24を構成する終端部22にかけてテーパー状に形成されて、ボルトに係合するネジ山を有するナットの着座表面になっている。ナットは、終端部22に26で示される部分からナット本体の反対側の端部にかけて内部にネジ山が形成されている。
ナット本体14は、截頭円錐台座24と本体部16の間に環状拡大部28を有し、半径方向外方に延びる環状段部29において本体部16が環状拡大部28と接続している。截頭円錐台座24の大径端部は、環状拡大部28につながっている。
キャップ12は、長方形の側壁30とキャップの端部を閉鎖する端部壁32を有する。キャップの反対端は開いている。端部壁32は、キャップの長さ方向の中心線に直角で、外方に向かってドーム形の中央部分と周辺部33を有している。
キャップの側壁30は、多角形である。より具体的には、それは正六角形であり、6つの表面、又は平面34は、同一で側壁30の長さ方向の中心線に対して平行である。側壁30の内部の寸法は、ナットの本体部16の外形寸法よりわずかに大きい。
開放端におけるキャップの側壁30は、半径方向外方に拡張したフランジ38と、側壁の長さ方向の中心線と同心の円筒状端部40を有する外方に拡がった円形周辺部36により端部を形成している。
キャップは、図3に示されるように、キャップの側壁30の周辺部36のフランジ38が、ナット上の全周360度にわたって環状段部29に嵌合し、本体部16に挿通してナットに組み込まれる。キャップの周辺部36は、十分な全周360度にわたって拡大部28の半径方向の外部表面に接することにより、円筒状端部40でナットの拡大部28を囲んでいる。キャップは、もちろん、その軸が回されて、キャップの側壁30の平面と角度が、ナットの本体部16の平面と角度と対応するように整列されて組み立てられる。ナットとキャップの平面は、相互に側方又は半径方向に隙間を有し、キャップの端壁32の周辺部33は、ナットの環状端部18から軸方向に隙間を有する。これらのスペースは、接着剤50で完全に満たされる。換言すれば、接着剤50は、ナットとキャップの平面20と34の間を完全に被覆して両者を均一に分離するか、間隔を保ち、ナットの環状端部18とキャップの周辺部33を完全に被覆して両者を均一に分離するか、間隔を保つ。接着剤50は、ナットとキャップを組み立てる前に表面に付着することができる。)

(ウ)「To complete the assembly, the outer edge portion 52 of the cylindrical portion 40 of the marginal portion 36 of the cap is mechanically crimped over the enlargement 28 so as to press inward and bear against the frusto-conical seat 24 at the nose end of the nut.
After the adhesive has set, it provides a highly effective bond between the parts with sufficient inherent flexibility to eliminate rattle.
The bond also insulates the two metals from each other and thus resists corrosion.
The adhesive provides an effective bond even at extremely high and low temperatures.
The mechanical clinching of the parts together by crimping of the outer edge portion 52 of the marginal portion of the cap over the enlargement 28 on the nut improves axial retention and reduces stress concentration.」(第2欄第66行?第3欄第14行)
(組み立てを完成するために、キャップの円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52が、拡大部28において内側に圧力を加えられ、ナットの終端において截頭円錐台座24を保持するように機械的にかしめられる。
接着によって固定された後、両部材は、がたつきがなく、必要十分な柔軟性をもって結合される。
上記結合によって、2つの金属は相互に隔離され、腐食が防止される。
接着剤は、非常に高温および低温でさえ有効な結合を提供する。
キャップの周辺部の外端部52をナットの拡大部28に機械的に折り曲げてかしめたことは、軸方向の保持を改善し、応力集中を減少させている。)

(エ)キャップ12とナット本体14は、その軸が回され、整列されて組み立てられ(上記記載事項(イ))、キャップ12の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52が、ナット本体14の拡大部28において内側に圧力を加えられてかしめられるものであるから(上記記載事項(ウ))、キャップ12の円形周辺部36が所定の内径を有し、ナット本体14の環状拡大部28が所定の外径を有しているものとして捉えられる。

そうすると、上記記載事項及び図面の記載からみて、上記刊行物1には次の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。なお、各構成には適宜(a’)?(m’)の符号を付した。

「自動車の車輪のためのキャップ付き車輪ナット組立体であって、当該キャップ付き車輪ナット組立体が、
(a’)内部にネジ山が形成されているナット本体14を備え、
(b’)ナット本体14が長さ方向の中心線に平行に延びる6つの外部の平面20からなる多角形の側壁を備え、
(c’)ナット本体14が長さ方向の中心線に平行に延びる環状拡大部28を備え、
(d’)当該キャップ付き車輪ナット組立体が、長さ方向の中心線に対して平行な正六角形を構成する6つの側壁30を有するキャップ12を備え、
(e’)上記キャップ12が側壁の長さ方向の中心線と同心の円筒状端部40を有する外方に拡がった円形周辺部36を備え、
(f’)上記キャップ12はステンレス鋼から形成され、
(g’)キャップ12の円形周辺部36が所定の内径を有し、
(h’)ナット本体14の環状拡大部28が所定の外径を有し、
(i’)(j’)上記キャップ12の内部の寸法はナットの本体部16の外形寸法よりわずかに大きく、キャップ12とナット本体14は、その軸が回され、整列されて組み立てられ、接着剤50は、キャップ12の平面34とナット本体14の平面20の間を完全に被覆して両者を均一に分離し、キャップ12の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52が、ナット本体14の拡大部28において内側に圧力を加えられてかしめられ、
(k’)(l’)(m’)ナット本体14は、亜鉛メッキされている、
キャップ付き車輪ナット組立体。」

3-3.発明の対比

本願補正発明と刊行物1発明を対比する。
刊行物1発明の「キャップ付き車輪ナット組立体」は、その機能からみて、本願補正発明の「キャップおよび車輪締付」に相当し、以下同様に、「ナット本体14」は「ネジを有する締付挿入体」に相当し、「多角形の側壁」は「多角形断面の外面」に相当し、「環状拡大部28」は「円筒状断面の外面」に相当し、「正六角形を構成する6つの側壁30」は「多角形断面の内面を有する一壁部」に相当し、「円筒状端部40を有する外方に拡がった円形周辺部36」は「円筒状断面の内面を有する他の壁部」に相当し、「亜鉛メッキ」は「コーティング」に相当する。
そうすると、刊行物1発明の「自動車の車輪のためのキャップ付き車輪ナット組立体であって、当該キャップ付き車輪ナット組立体」は、実質的に、本願補正発明の「車両の車輪用の装飾的なキャップおよび車輪締付であって、当該キャップおよび車輪締付」に相当し、以下同様に、「(a’)内部にネジ山が形成されているナット本体14を備え」は、「(a)ネジを有する締付挿入体の本体であって、該ネジが該本体の軸を取り囲むように形成されてなる締付挿入体を備え」に相当し、「(b’)ナット本体14が長さ方向の中心線に平行に延びる6つの外部の平面20からなる多角形の側壁を備え」は、「(b)前記本体が軸を取り囲む多角形断面の外面を有する一断面を備え」に相当し、「(c’)ナット本体14が長さ方向の中心線に平行に延びる環状拡大部28を備え」は、「(c)前記本体が軸を取り囲む円筒状断面の外面を有する他の断面を備え」に相当し、「(d’)当該キャップ付き車輪ナット組立体が、長さ方向の中心線に対して平行な正六角形を構成する6つの側壁30を有するキャップ12を備え」は、「(d)当該キャップおよび車輪締付が、多角形断面の内面を有する一壁部をもつキャップを備え」に相当し、「(e’)上記キャップ12が側壁の長さ方向の中心線と同心の円筒状端部40を有する外方に拡がった円形周辺部36を備え」は、「(e)前記キャップが円筒状断面の内面を有する他の壁部を備え」に相当するものである。
また、刊行物1発明の「(f’)上記キャップ12はステンレス鋼から形成され」は、その物性とキャップの構成を併せて考慮すれば半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材であることは明らかであるから、実質的に、本願補正発明の「(f)前記キャップが、半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材から形成され」に相当する。
さらに、刊行物1発明の「(g’)キャップ12の円形周辺部36が所定の内径を有し」は、実質的に、本願補正発明の「(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有し」に相当し、以下同様に、「(h’)ナット本体14の環状拡大部28が所定の外径を有し」は、「(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有し」に相当し、「(k’)(l’)(m’)ナット本体14は、亜鉛メッキされている」は「(k)前記挿入体の外面にコーティングが設けられており」に相当するものである。

したがって、本願補正発明の用語にならってまとめると、両者は、
「車両の車輪用の装飾的なキャップおよび車輪締付であって、当該キャップおよび車輪締付が、
(a)ネジを有する締付挿入体の本体であって、該ネジが該本体の軸を取り囲むように形成されてなる締付挿入体を備え、
(b)前記本体が軸を取り囲む多角形断面の外面を有する一断面を備え、
(c)前記本体が軸を取り囲む円筒状断面の外面を有する他の断面を備え、
(d)当該キャップおよび車輪締付が、多角形断面の内面を有する一壁部をもつキャップを備え、
(e)前記キャップが円筒状断面の内面を有する他の壁部を備え、
(f)前記キャップが、半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材から形成され、
(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有し、
(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有し、
(k)前記挿入体の外面にコーティングが設けられている、
キャップおよび車輪締付。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願補正発明が、「(i)前記所定の内径が前記所定の外径より十分に小さく、これによって前記キャップが前記挿入体上にはめ込むように適用され、キャップが本体に保持されるための引張周応力を供給するために、前記触れ合う円筒形状の表面の周囲に前記円筒状断面の外面と前記円筒状断面の内面との間に形成される少なくとも0.052mmの締りばめを形成することにより、前記キャップが塑性変形および弾性変形されるキャップおよび車輪締付であって、前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成され、(j)前記他の壁部の前記弾性変形が、触れ合う円筒形状の表面の周囲に0.052?0.156mmの締りばめを形成するように適用され」ているのに対し、刊行物1発明は、「(i’)(j’)上記キャップ12の内部の寸法はナットの本体部16の外形寸法よりわずかに大きく、キャップ12とナット本体14は、その軸が回され、整列されて組み立てられ、接着剤50は、キャップ12の平面34とナット本体14の平面20の間を完全に被覆して両者を均一に分離し、キャップ12の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52が、ナット本体14の拡大部28において内側に圧力を加えられてかしめられ」ている点。

[相違点2]
本願補正発明が、「(l)該コーティングの厚さが約0.026mmである、(m)前記コーティングが、クロムを含まない」のに対し、刊行物1発明は、亜鉛メッキの厚さが明らかではなく、当該亜鉛メッキがクロムを含むか含まないかも明らかではない点。

3-4.当審の判断

(1)相違点1について
上記相違点1を検討するに先立って、「締りばめ」(「しまりばめ」と表記されることもある。)の技術的意義について検討するに、「締りばめ」とは、「穴と軸のはめあいで、穴の最大寸法より軸の最小寸法の方が大きい場合をいう。」(越後亮三、大橋秀雄、竹中俊夫、中山一雄、米谷 茂、「機械工学辞典」、株式会社朝倉書店、1993年6月1日第3刷発行、第405ページ)や、「穴と軸との間に必ず締めしろのあるはめあい。」(工業教育研究会、「図解 機械用語辞典」、日刊工業新聞社、昭和44年11月30日9版発行、第206ページ)のことをいう(ここで、「締めしろ」とは、「はめあいにおいて、穴の寸法が軸の寸法より小さいとき、この差を締めしろという。負のゆとりである。締りばめにおいて最大締めしろ=軸の最大寸法-穴の最小寸法、最小締めしろ=軸の最小寸法-穴の最大寸法。」(工業教育研究会、「図解 機械用語辞典」、日刊工業新聞社、昭和44年11月30日9版発行、第206ページ)のことをいう)。すなわち、締りばめとは、一方の部材の穴に他方の部材の軸を締めしろをもってはめあわせることにより2つの部材を固着する手段であり、この場合の締めしろは、はめあいを設定した分だけ穴の寸法が軸の寸法より小さくなっている。このような固着手段は、いわゆる要素技術として周知の技術といえるものであって、技術分野や用途を問わず、2つの部材を固着する手段として用いられるものである。そして、上記固着手段において、2つの部材は全体の形状が穴や軸である必要はなく、固着をする部分が相互に穴に相当する部分と軸に相当する部分であればよい。
そこで、上記相違点1について検討するに、上記相違点1は、要するに、キャップと車輪締付を固着する手段として、本願補正発明が締りばめを採用してその具体的構成を特定したのに対し、刊行物1発明が、車輪締付(ナット14)の本体部16に対して接着の手段を採用するとともに、キャップ(キャップ12)の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52に対してかしめの手段を採用したことに基づくものということができる。
ところで、上記のキャップと車輪締付のような2つの部材を固着する手段は、当業者が、周知の技術として知られているさまざまな固着手段の特徴を考慮して当該部材の使用環境や用途などに応じて適宜選択できるものである。このことは、例えば、特開昭61-286606号公報には、本願補正発明に類似したキャップと車輪締付を「圧力ばめか、縁曲げか、溶接されるかなどして固着される」ことが記載されている(同公報の第4ページ右下欄第19?20行)ことからも裏付けられる。ここでいう「圧力ばめ」とは、「締りばめの際、圧力を加えて押し込む程度の締めしろを与えたはめあいをいう。」(越後亮三、大橋秀雄、竹中俊夫、中山一雄、米谷 茂、「機械工学辞典」、株式会社朝倉書店、1993年6月1日第3刷発行、第15ページ)や、「締りばめの1種。結合すべき2つの部分、たとえば軸を穴にはめる場合、液圧、その他の圧力を加えて押し込む程度のしめしろを与えたはめあいをいう。焼きばめよりはめあい圧力は小さい。」(工業教育研究会、「図解 機械用語辞典」、日刊工業新聞社、昭和44年11月30日9版発行、第10ページ)ことをいうものであり、圧力ばめによって固着された2つの部材は実質的に「締りばめ」されているということができる。刊行物1発明は、従来、キャップと車輪締付を固着する手段として採用されていた溶接が、両者が異種金属であることに起因して腐食することを課題として、これを防止するために両者を接着によって固着することにより上記異種金属が直接接触しないようにするとともに、キャップ12の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52を車輪締付(ナット14)の拡大部28においてかしめたものである。これらのことから、キャップと車輪締付のような2つの部材を固着する手段として、上記に周知の技術として例示した、締りばめ(圧力ばめ)、溶接、接着、縁曲げ(刊行物1発明の「かしめ」に相当するものと解される。)などの手段の中から「締りばめ」を選択することは、当業者が適宜実施できることと解される。そして、締りばめにおいて、程度の大小を別にすると、少なくとも「塑性変形および弾性変形」することは技術常識であって、その締めしろをどの程度の寸法関係にするかは、2つの部材の弾性率などの材料特性や固着の必要強度などに応じて決定できる設計的事項にすぎない。そうすると、本願補正発明において、「(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有」する部分と「(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有」する部分がキャップおよび車輪締付のどの部分に位置するのかという特定がない以上、刊行物1発明の固着手段として締りばめを選択し、キャップの穴に相当する部分と車輪締付の軸に相当する部分に必要に応じた寸法関係の締めしろを設定して、上記相違点1における「(i)前記所定の内径が前記所定の外径より十分に小さく、これによって前記キャップが前記挿入体上にはめ込むように適用され、キャップが本体に保持されるための引張周応力を供給するために、前記触れ合う円筒形状の表面の周囲に前記円筒状断面の外面と前記円筒状断面の内面との間に形成される少なくとも0.052mmの締りばめを形成することにより、前記キャップが塑性変形および弾性変形されるキャップおよび車輪締付であって」、「(j)前記他の壁部の前記弾性変形が、触れ合う円筒形状の表面の周囲に0.052?0.156mmの締りばめを形成するように適用され」るようにすることに当業者が格別の困難を要するとは認められない。
次に、本願補正発明が、「前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成され」ている点について検討する。刊行物1発明は、上記のとおり、キャップ(キャップ12)の円形周辺部36の円筒状端部40の外端部52に対してかしめの手段を採用したものであるが、接着する部分は、多角形断面の内面が、多角形断面の外面に容易に滑動できるような機能を有するものと解される。他方、本願補正発明の上記「前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成され」ている構成は、「はめあい」などが特定されているわけではないから、この点に関して両者に相違があるものとは言い難いが、仮に何らかの差異があるとしても、上記構成は、次のとおり、当業者が容易に想到できたものである。すなわち、本願補正発明は、「(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有」する部分と「(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有」する部分がキャップおよび車輪締付のどの部分に位置するのかという特定がないことを前提にした上で、「前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成され」ていることに照らせば、この構成は、キャップの穴に相当する部分と車輪締付の軸に相当する部分が全体にわたって締りばめされるのではなく、任意の部分に締めしろを形成して締りばめするとともに、当該任意の部分以外の部分を滑動できるようにしたことを意味するものと解される。しかしながら、2つの部材を締りばめによって固着する場合に、穴に相当する部分と軸に相当する部分の任意の部分に締めしろを形成して締りばめすることは、当該2つの部材の用途や形状に応じて適宜実施されている周知の技術にすぎず(例えば、特開2000-170735号公報の図4に記載された「つば部つめ挿入用溝付きテーパコマ1」の締りばめ代は全体の長さの一部のFであり、特開平8-105424号公報に記載された図3のナット2は図の上部で「中間リング3」に締りばめにされ、同下部では座金1に螺合されている。)、本願補正発明において上記周知の技術にはみられないような締りばめに関する特段の工夫がなされたとも認められず、かつ、締りばめの部分以外の部分をどのようにはめあわせるかは必要に応じて適宜設計できる事項にすぎない。
以上のことから、刊行物1発明のキャップおよび車輪締付に締りばめを適用し、その任意の部分に適当な締めしろを有するキャップの穴に相当する部分と車輪締付の軸に相当する部分を設けて上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到できたことである。

(2)相違点2について
キャップおよび車輪締付において、挿入体の外面に設けたコーティングの厚さをどの程度にするかは、当業者が使用する環境や用途に応じて適宜決定できる設計的事項にすぎない。
また、上記コーティングを実施するにあたって、水質や大気に関する環境汚染を防止するなどのために、クロムを含まないようにすることは適宜実施されていることであるから(例えば、特開平6-123307号公報の段落【0007】の被覆にはクロムは使用されていない。)、具体的なコーティングの手段を特定することなく、単にクロムを含まないようにすることは当業者が容易に想到できることである。
したがって、刊行物1発明のコーティングについて、厚さを特定し、クロムを含まないようにすることにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到することができたことである。

(3)効果について
本願補正発明が奏する「高速の組立速度で、さらなるコスト削減が達成」されるといった効果は、締りばめの採用に付随する効果にすぎず、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術から当業者が予測できないようなものではない。

(4)まとめ
本願補正発明は、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)審判請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の平成21年4月22日付けの手続補正書において、「引用文献1では、接着剤を用いるため、接着剤を用いる必要があるだけでなく、組み立て前にナットとキャップの双方に接着剤を塗布するという余分な工程が必要であり、時間がかかり、かつ接着剤を乾燥させる必要があり、温度の影響も受けてしまい、さらに本願発明の2つの構成部品のみで簡単にかつ高速にホイールナットを組み立てるという技術的思想はありません。」(審判請求書の手続補正書の【本願発明が特許されるべき理由】(2)の項参照)と述べるなど、本願は特許されるべき旨主張している。
しかしながら、いわゆる締りばめによる固着手段は、要素技術として技術分野や用途を問わず用いられるものであり、これをキャップおよび車輪締付に採用することに当業者が困難を要することはなく、その効果もキャップおよび車輪締付の任意の部分に締めしろを形成して締りばめすることに付随する効果にすぎない。
また、審判請求人は、審尋に対する平成21年11月25日付けの回答書において、さらに別の固着手段を追加する補正をする用意がある旨述べているが、当該補正は周知技術の付加にすぎず、上記の判断を左右するものではない。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび

以上のとおり、本願補正発明、すなわち本件補正後の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
よって、本願補正発明、すなわち本件補正後の請求項1に係る発明は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。
したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について

1.本願発明

平成21年3月11日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成20年8月12日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 車両の車輪用の装飾的なキャップおよび車輪締付であって、当該キャップおよび車輪締付が、
(a)ネジを有する締付挿入体の本体であって、該ネジが該本体の軸を取り囲むように形成されてなる締付挿入体を備え、
(b)前記本体が軸を取り囲む多角形断面の外面を有する一断面を備え、
(c)前記本体が軸を取り囲む円筒状断面の外面を有する他の断面を備え、
(d)当該キャップおよび車輪締付が、多角形断面の内面を有する一壁部をもつキャップを備え、
(e)前記キャップが円筒状断面の内面を有する他の壁部を備え、
(f)前記キャップが、半径方向に塑性変形および弾性変形可能なシート材から形成され、
(g)前記キャップの前記円筒状断面の内面が所定の内径を有し、
(h)前記挿入体の前記円筒状断面の外面が所定の外径を有し、
(i)前記所定の内径が前記所定の外径より十分に小さく、これによって前記キャップが前記挿入体上にはめ込むように適用され、キャップが本体に保持されるための引張周応力を供給するために、前記触れ合う円筒形状の表面の周囲に前記円筒状断面の外面と前記円筒状断面の内面との間に形成される少なくとも0.052mmの締りばめを形成することにより、前記キャップが塑性変形および弾性変形されるキャップおよび車輪締付であって、前記キャップを前記本体に取り付ける際に、前記多角形断面の内面が、前記多角形断面の外面に容易に滑動できるように形成されてなることを特徴とするキャップおよび車輪締付。」

2.引用刊行物とその記載事項

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物は次のとおりであり、その記載事項は、上記【2】3-2.のとおりである。

刊行物1:米国特許第4764070号明細書

3.対比・判断

本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、「キャップおよび車輪締付」についての限定事項である
「(j)前記他の壁部の前記弾性変形が、触れ合う円筒形状の表面の周囲に0.052?0.156mmの締りばめを形成するように適用され
(k)前記挿入体の外面にコーティングが設けられており、
(l)該コーティングの厚さが約0.026mmである
(m)前記コーティングが、クロムを含まない」
との事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、審判請求時の手続補正によってさらに構成を限定した本願補正発明が、上記「【2】3-4.当審の判断」に示したとおり、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記限定を省いた本願発明も実質的に同様の理由により、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願発明、すなわち、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2ないし14に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。



 
審理終結日 2010-02-26 
結審通知日 2010-03-02 
審決日 2010-03-15 
出願番号 特願2002-102047(P2002-102047)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16B)
P 1 8・ 575- Z (F16B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 立花 啓竹村 秀康  
特許庁審判長 川上 益喜
特許庁審判官 川本 真裕
大山 健
発明の名称 化粧キャップ付きホイールナットおよび組立方法  
代理人 朝日奈 宗太  

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