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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1224751
審判番号 不服2008-28581  
総通号数 131 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-07 
確定日 2010-10-04 
事件の表示 特願2004-336297「AFエリア生成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月 8日出願公開、特開2006-145872〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年(2004年)11月19日の出願(特願2004-336297号)であって、平成20年7月2日付けで拒絶理由が通知され、同年9月16日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされ、同年10月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年12月3日付けで手続補正がなされたものである。
なお、平成20年12月3日付けの手続補正による特許請求の範囲の補正は、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする補正であり、適法な補正である。

第2 本願の請求項1に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年12月3日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「カメラに交換可能に装着されるレンズ装置であって、前記カメラの撮像範囲のうち所定のAFエリアの範囲の被写体に合焦するようにフォーカスを制御するオートフォーカス手段を備えたレンズ装置に組み込まれ、又は、前記レンズ装置に付属装置として接続されるAFエリア生成装置であって、
前記オートフォーカス手段において現在設定されている前記AFエリアの範囲を取得するAFエリア取得手段と、
前記AFエリア取得手段によって取得したAFエリアの範囲を表示するための映像信号を生成する映像信号生成手段と、
前記映像信号生成手段によって生成された映像信号を出力する映像信号出力手段と、を備えたことを特徴とするAFエリア生成装置。」

第3 引用例
1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2002-365519号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下記「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はピント状態検出装置に係り、特にオートフォーカスやピント状態表示におけるピント状態検出に適用されるピント状態検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ビデオカメラなどのオートフォーカスは、コントラスト方式によるものが一般的である。このコントラスト方式は、撮像素子から得られた映像信号(輝度信号)のうちある範囲(フォーカスエリア)内の映像信号の高域周波数成分を積算して焦点評価値とする。そして、その焦点評価値が最大となるようにピント調整を自動で行う。これによって、撮像素子で撮像された画像の鮮鋭度(画像のコントラスト)が最大となる最良ピント(合焦)が得られる。
【0003】また、従来、光路長の異なる位置に配置された複数の撮像素子を用いて撮影レンズのピント状態(前ピン、後ピン、合焦)を検出する方法が提案されている(特開昭55-76312号公報、特公平7-60211号公報)。例えば、映像用の画像を撮像する撮像素子(映像用撮像素子)に対して同一撮像範囲の画像を撮像する2つのピント状態検出用撮像素子を、それぞれ映像用撮像素子よりも光路長が長くなる位置と短くなる位置に配置する。そして、これらのピント状態検出用撮像素子から得られた映像信号の高域周波数成分に基づいて各ピント状態検出用撮像素子の各撮像面に対する焦点評価値を上述と同様にして求め、比較する。これによって、焦点評価値の大小関係から映像用撮像素子の撮像面におけるピント状態、即ち、前ピン、後ピン、合焦のどの状態にあるかが検出される。このようなピント状態の検出方法は、オートフォーカスのための合焦検出等に適用することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、民生用ビデオカメラのオートフォーカスでは、一般に、画面中央部の被写体にピントが合わせられる。しかしながら、この場合には、オートフォーカスの使用条件が限定されてしまうため、特に多様な条件下での使用が要求される放送用カメラでは、撮影画像の範囲内でピントを合わせたいポイント(AFポイント)を指定できるようにすることが求められる。例えば、ビューファインダの画面上でピントを合わせたい所望のAFポイントをタッチパネル等により指定できるようにすると好適である。
【0005】一方、AFポイントの指定を可能にした場合に、画面上の全範囲でピント状態の検出が可能な場合には問題ないが、コストや消費電力の削減等のため、ピント状態の検出可能な範囲(オートフォーカスによりピント合わせが可能な範囲)が、映像用撮像素子の撮像範囲よりも小さい一定範囲内に制限される場合がある。例えば、上述のようにピント状態検出用撮像素子を用いた場合に、ピント状態検出用撮像素子の画素数を映像用撮像素子よりも少なくし、映像用撮像素子の撮像範囲の一部をピント状態検出用撮像素子の撮像範囲とする場合等が考えられる。このような場合に、カメラマンがピント状態の検出可能な範囲を認識できずにその範囲を超えてAFポイントを指定してしまう不具合や、ピント状態の検出可能な範囲を超えてAFポイントを指定した場合に、実際にはその指定したAFポイントの被写体には合焦せず、ピンぼけの状態となっているにもかかわらず、カメラマンがそのことに気付かない等の不具合が生じることになる。
【0006】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ピント状態検出の対象ポイントの指定が可能であり、かつ、ピント状態の検出可能な範囲が映像用撮像素子の撮像範囲に対して一定範囲内に制限されている場合において、ピント状態の検出可能な範囲をカメラマンが確実に認識することができ、また、実際にピント状態検出の対象となったポイントを正確に認識することができるピント状態検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、カメラで撮影している撮影画像を表示する撮影画像表示手段と、前記撮影画像表示手段の表示画面上に表示されている前記撮影画像の範囲内において任意のポイントを指定するポイント指定手段と、前記ポイント指定手段によって指定されたポイントの被写体に対するピント状態を検出するピント状態検出手段であって、前記撮影画像の全範囲に対してピント状態の検出が可能な範囲を一定範囲内に制限しているピント状態検出手段と、前記ピント状態検出手段によりピント状態の検出が可能な範囲を前記撮影画像表示手段の表示画面上に表示するピント状態検出可能範囲表示手段と、を備えたことを特徴とするピント状態検出装置。」

「【0014】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に従って本発明に係るピント状態検出装置の好ましい実施の形態について詳説する。
【0015】図1は、本発明に係るピント状態検出装置が適用されたテレビカメラシステムの全体構成を示した構成図である。同図に示すテレビカメラシステムは、カメラ本体10、交換可能な撮影レンズ12、ビューファインダ14、AFポイント指示部16、画像処理部18等から構成される。カメラ本体10には、放映用の画像を撮影する撮像素子(映像用撮像素子)が内蔵されており、撮影レンズ12を通じて結像された被写体光がその映像用撮像素子によって電気信号に変換される。また、カメラ本体10には、所要の信号処理回路が内蔵されており、映像用撮像素子によって変換された電気信号はその信号処理回路によって撮影画像を示す所定形式のビデオ信号に変換される。これによって生成されたビデオ信号は、放映用のビデオ信号としてカメラ本体10から出力され、又は、記録用のビデオ信号として記録媒体に記録されると共に、映像用撮像素子で撮影されているリアルタイムの撮影画像をカメラマンが視認可能なように、後述の画像処理部18を介してビューファインダ14に出力される。
【0016】撮影レンズ12には、詳細を後述するように、映像用撮像素子とは別のピント状態検出用撮像素子によりピント状態を検出するためのピント状態検出部20が搭載されており、このピント状態検出部20は、映像用撮像素子により撮影されている撮影画像の範囲内においてAFポイント指示部16によって指示されたポイント(AFポイント)の被写体に対するピント状態を検出する。そして、本実施の形態では検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用し、その検出したピント状態に基づいて、指定されたAFポイントの被写体にピントが合うように撮影レンズ12のフォーカスレンズを駆動させる。AFポイント指示部16は、例えば、ビューファインダ14の画面にタッチパネルを設置し、ビューファインダ14の表示されている撮影画像上でカメラマンがピントを合わせたいポイントを直接タッチすると、そのポイントの位置(座標)をAFポイントとして取得し、ピント状態検出部20に出力する構成となっている。尚、タッチパネルによりAFポイントを指定可能にするのではなく、所定のAFポイント操作部により位置制御でAFポイントの指定位置を設定変更できるようにしてもよいし、又は、中央復帰型のジョイスティックのように速度や移動方向の制御でAFポイントの指定位置を設定変更できるようにしてもよい。
【0017】ところで、詳細を後述するように、カメラ本体10の映像用撮像素子により撮影される撮影画像の全範囲(全撮像範囲)に対して、ピント状態検出部20においてピント状態を検出することができる範囲(以下、ピント状態検出可能範囲という)、即ち、オートフォーカスによるピント合わせが可能な被写体の範囲が、中央一部の範囲に制限されている。一方、AFポイント指示部16によるAFポイントの指定は、撮影レンズ12の種類によってピント状態検出可能範囲が異なる場合があることを考慮して、ピント状態検出可能範囲に特に制限されず、映像用撮像素子の全撮像範囲(ビューファインダ14に表示されている撮影画像の全範囲)で可能である。このため、ピント状態検出部20は、AFポイント指示部16から与えられたAFポイントがピント状態検出可能範囲内でない場合には、AFポイントをピント状態検出可能範囲内の所定の位置に修正し、その修正後のAFポイントの被写体に対してピント状態を検出し、その被写体にピントを合わせる等の処理を行っている。AFポイントを修正する場合、例えば、AFポイント指示部16から与えられたAFポイントに対してピント状態検出可能範囲内で、かつ、そのAFポイントに最も近いポイントを修正後のAFポイントとする。ただし、このような方法でAFポイントを修正する場合に限らない。
【0018】また、ピント状態検出部20は、ピント状態検出可能範囲の情報をカメラ本体10の画像処理部18に与えると共に、ピント状態検出の対象となったAFポイントの位置、即ち、AFポイント指示部16から与えられたAFポイントがピント状態検出可能範囲内である場合にはそのAFポイントの位置であり、AFポイントを修正した場合にはその修正後のAFポイントの位置を画像処理部18に与える。
【0019】画像処理部18は、映像用撮像素子によって撮影されている撮影画像上(カメラ本体10からビューファインダ表示画像用として出力された画像信号)に、ピント状態検出部20から与えられたピント状態検出可能範囲を示す枠と、ピント状態検出部20から与えられたAFポイントの位置を示すマークを重畳し、その画像をビューファインダ14に出力する。図2において、ビューファインダ14の画面14A(映像用撮像素子で撮影されている撮影画像)上にピント状態検出可能範囲を示す枠Hと、AFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)を示すマークPを表示した表示例を示す。尚、ピント状態検出可能範囲やAFポイントの表示は、カメラマンが認識できるような表示であれば、図2のような枠HやマークPによる方法でなくてもよい。」

2 引用例1に記載された発明の認定
【0016】段落及び【0019】段落の記載から、「ピント状態検出部20」がAFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)の位置を「画像処理部18」に与え、「画像処理部18」によって上記AFポイントの位置が表示されるのであるから、上記の「ピント状態検出部20」及び「画像処理部18」が、オートフォーカス判定エリアを取り込み(生成し)、その位置を表示する手段(以下、「AFエリア生成表示手段」という。)を構成しているといえる。
よって、引用例1には、テレビカメラシステムにおける上記の「AFエリア生成表示手段」に関し、
「カメラ本体10、交換可能な撮影レンズ12、ビューファインダ14、AFポイント指示部16、画像処理部18、並びに、撮影レンズ12に搭載されるピント状態検出部20を備えるテレビカメラシステムにおける、ピント状態検出部20及び画像処理部18から構成されるAFエリア生成表示手段であって、
ピント状態検出部20は、映像用撮像素子により撮影されている撮影画像の範囲内においてAFポイント指示部16によって指示されたAFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)の被写体に対するピント状態を検出し、検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用し、その検出したピント状態に基づいて、指定されたAFポイントの被写体にピントが合うように撮影レンズ12のフォーカスレンズを駆動させ、AFポイント指示部16は、そのポイントの位置(座標)をAFポイントとして取得し、ピント状態検出部20に出力し、
ピント状態検出部20は、ピント状態検出可能範囲の情報をカメラ本体10の画像処理部18に与えると共に、ピント状態検出の対象となったAFポイントの位置を画像処理部18に与え、画像処理部18は、映像用撮像素子によって撮影されている撮影画像上に、ピント状態検出部20から与えられたAFポイントの位置を示すマークを重畳し、その画像をビューファインダ14に出力するAFエリア生成表示手段。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-234144号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「(従来の技術)
従来公知のビデオカメラはレンズユニットとカメラ本体とが分離できるように構成されているので形態的な点からみると一眼レフレックスカメラと同様に多種類のレンズユニットを装着して使用することができる構造となっている。従って、カメラ本体に望遠レンズや顕微鏡を装着すれば、たとえば星座の動きや細胞の変化を撮影することができ、また、カメラ本体に一眼レフレックスカメラ用の各種交換レンズを装着すれば、たとえば運動会での子供の喜怒哀楽の表情をアップにして撮影することもできる。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、最近のビデオカメラでは露出が自動化されているのでカメラ本体には露出表示装置が設けられておらず、従って、自動絞り機能のないレンズユニットをカメラ本体に装着した場合は撮影者が露出状態をわからぬままで撮影しなければならないので実質的に前記のような撮影(ビデオカメラのカメラ本体に公知の望遠レンズや顕微鏡などを装着して露出を手動で行う撮影)は不可能であった。
本発明の目的は、自動露出機能のないレンズユニットを使用した時にも撮影者が露出状態を確認することができるビデオカメラを提供することである。
(課題を解決するための手段)
本発明によるビデオカメラは自動露出機能のないレンズユニットが使用される時に該レンズユニットとカメラ本体との間に装着されるアダプタを有していることを特徴とするものである。該アダプタはカメラ本体内のマイクロコンピュータとの間で各種データの授受を行う手段を内蔵するとともに外面には露出状態表示手段を備えている。本発明によるビデオカメラでは、自動露出機能のないレンズユニットを使用する場合には、該アダプタを該レンズユニットとカメラ本体との間に装着することによって露出状態を撮影者が確認しながら露出調整操作を行うことができる。
(作 用)
第1図の構成のビデオカメラで撮影を行う時には、信号処理回路6の出力信号の中から輝度信号を抽出して積分することによってAE回路7が撮影素子9の結像面上の露出情報を出力すると、マイコン8は該露出情報と基準値とを比較し、両者の間にどれ位のレベル差があるかを演算するとともにAE回路7からの入力と基準値との差を下記の第1表に示すようにシリアルデータに変換してアダプタ3内のマイコン10にシリアル伝送する。
アダプタ3内のマイコン10はカメラ本体2内のマイコン8から伝送されてきたシリアルデータをパラレルデータに変換し、更にそれをEV値として表示器11に表示させる。
従って、撮影者は表示器11に表示された露出情報を見ることによってその時の露出状態を知ることができるので該表示器11上の表示を見ながらレンズユニット1上の絞りリングlaを回動することによって自己の望む露出状態を実現することができる。
本発明のビデオカメラは前記アダプタを装着すればどんなレンズユニットをも使用することができるため、撮影を従来のビデオカメラよりも非常に多様に行うことができる。」(第1ページ右下欄第7行?第2ページ左下欄第11行)

4 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-248164号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年ではハイビジョン放送が一般化するにつれてテレビカメラシステムで使用される撮影レンズ、カメラの性能が非常に高くなっている。
【0007】一方、実際の番組製作現場では、カメラマンがビューファインダの像を参考に肉眼でピント調整を行っており、ビューファインダや肉眼での解像力には限界があるため、最良ピントを探すのが困難になっている。撮影時に合焦していると判断した場合であっても、大型モニターで再生した際にピンボケが発覚することも少なくない。このような事情から肉眼では困難な正確かつ確実な合焦検出を行うことができるオートフォーカスの必要性が高まっている。
【0008】しかしながら、従来の放送用カメラには、一般にオートフォーカス機能は内蔵されておらず、また、必ずしも全てのカメラマンがオートフォーカス機能を使用するとも限らないため、今後、全てのカメラにオートフォーカス機能を搭載することは現実的ではない。したがって、既に市販されているカメラシステムや、今後市販されるカメラシステムにおいてオートフォーカスを使用したくても使用できないというケースがこれまで以上に増えるものと予想される。
【0009】本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、既存のカメラシステムに簡単に組み込むことができ、簡単にオートフォーカス機能を追加することができるオートフォーカスアダプタを提供することを目的する。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成するために、撮影レンズとカメラ本体との間に着脱自在に装着され、前記撮影レンズのピント状態を検出して、前記撮影レンズをオートフォーカス制御するオートフォーカスアダプタであって、前記撮影レンズを通過した被写体光を映像用被写体光とピント状態検出用被写体光とに分割する光分割手段と、前記光分割手段によって分割され、所定の第1結像面に結像した映像用被写体光を前記カメラ本体の映像用撮像素子の受光面(第2受光面)に結像させるリレー光学系と、前記光分割手段によって分割されたピント状態検出用被写体光が入射されるピント状態検出用撮像素子と、前記ピント状態検出用撮像素子で撮像された画像に基づいて前記撮影レンズのピント状態を検出するピント状態検出手段と、前記ピント状態検出手段で検出されたピント状態に基づいて前記撮影レンズをオートフォーカス制御する制御手段と、を備えたことを特徴とするオートフォーカスアダプタを提供する。」

第4 本願発明と引用発明の対比、及び、当審の判断
1 対比
(1)ここで、本願発明と引用発明を対比する。

引用発明の「交換可能な撮影レンズ12」が本願発明の「カメラに交換可能に装着されるレンズ装置」に相当する。
また、引用発明の「AFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)」が本願発明の「AFエリア」に相当するから、引用発明の「映像用撮像素子により撮影されている撮影画像の範囲内においてAFポイント指示部16によって指示されたAFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)の被写体に対するピント状態を検出し、検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用し、その検出したピント状態に基づいて、指定されたAFポイントの被写体にピントが合うように撮影レンズ12のフォーカスレンズを駆動させ」るための「ピント状態検出部20」が搭載された「撮影レンズ12」が、本願発明の「カメラの撮像範囲のうち所定のAFエリアの範囲の被写体に合焦するようにフォーカスを制御するオートフォーカス手段を備えたレンズ装置」に相当する。
さらに、本願発明の「AFエリア生成装置」は、「生成された映像信号を出力する映像信号出力手段」も備えることから、引用発明の「AFエリア生成表示手段」と本願発明の「AFエリア生成装置」とは、「AFエリア生成表示手段」である点で一致し、また、引用発明の「ピント状態検出部20」は「AFエリア生成表示手段」の一部であるといえることから、引用発明において「撮影レンズ12」に「ピント状態検出部20」が「搭載される」ことと、本願発明において「レンズ装置」に「AFエリア生成装置」が「組み込まれ」ることとは、「レンズ装置にAFエリア生成表示手段の少なくとも一部が組み込まれる」点で一致する。

引用発明の「ピント状態検出部20」は、「撮影レンズ12に搭載され」、また、「検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用」するための部位であるといえるから、撮影レンズ12に接続されていることは明らかである。よって、引用発明の「検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用」するための「ピント状態検出部20」を備えた「AFエリア生成表示手段」と、本願発明の「レンズ装置に付属装置として接続されるAFエリア生成装置」とは、「レンズ装置に接続されるAFエリア生成表示手段」である点で一致する。

引用発明の「AFポイント」は「AFポイント(フォーカス位置及びフォーカス判定エリア)の被写体に対するピント状態を検出し、検出したピント状態をオートフォーカスにおける合焦検出に利用」するのであるから、本願発明の「オートフォーカス手段において現在設定されている前記AFエリアの範囲」に相当する。そして、引用発明においては「AFポイント指示部16は、そのポイントの位置(座標)をAFポイントとして取得し、ピント状態検出部20に出力」することから、引用発明のAFエリア生成表示手段は、AFポイント指示部16からのAFポイントの出力を受ける手段を有するものであることは明らかである。
そして、引用発明の上記の「AFエリア生成表示手段」における「AFポイント指示部16からのAFポイントの出力を受ける手段」が、本願発明の「オートフォーカス手段において現在設定されている前記AFエリアの範囲を取得するAFエリア取得手段」に相当する。

引用発明の「画像処理部18」は「映像用撮像素子によって撮影されている撮影画像上に、ピント状態検出部20から与えられたAFポイントの位置を示すマークを重畳し、その画像をビューファインダ14に出力する」ものであるから、引用発明の「画像処理部18」が、本願発明の「前記AFエリア取得手段によって取得したAFエリアの範囲を表示するための映像信号を生成する映像信号生成手段」及び「前記映像信号生成手段によって生成された映像信号を出力する映像信号出力手段」に相当する。

(2)本願発明と引用発明の一致点
したがって、本願発明の「レンズ装置に組み込まれ、又は、前記レンズ装置に付属装置として接続される」という選択的特定が「レンズ装置に組み込まれ、かつ、前記レンズ装置に付属装置として接続される」ことも含むものであることを勘案すると、本願発明と引用発明とは、
「カメラに交換可能に装着されるレンズ装置であって、前記カメラの撮像範囲のうち所定のAFエリアの範囲の被写体に合焦するようにフォーカスを制御するオートフォーカス手段を備えたレンズ装置に少なくとも一部が組み込まれ、又は、前記レンズ装置に接続されるAFエリア生成表示手段であって、
前記オートフォーカス手段において現在設定されている前記AFエリアの範囲を取得するAFエリア取得手段と、
前記AFエリア取得手段によって取得したAFエリアの範囲を表示するための映像信号を生成する映像信号生成手段と、
前記映像信号生成手段によって生成された映像信号を出力する映像信号出力手段と、を備えたAFエリア生成表示手段。」の発明である点で一致する。
そして、上記のように本願発明の「レンズ装置に組み込まれ、又は、前記レンズ装置に付属装置として接続される」という選択的特定を勘案すれば、本願発明と引用発明は、次のいずれかの点において相違することになる。

(3)本願発明と引用発明の相違点
ア AFエリア生成表示手段の少なくとも一部がレンズ装置に組み込まれることに関し、本願発明は、AFエリア生成表示手段全体である「AFエリア生成装置」がレンズ装置に組み込まれるのに対して、引用発明はAFエリア生成表示手段の一部である「ピント状態検出部20」が撮影レンズ(レンズ装置)に組み込まれる点。

イ レンズ装置に接続されるAFエリア生成表示手段が、本願発明においては「付属装置」としてのAFエリア生成表示手段であり、それを「AFエリア生成装置」としたものであるのに対して、引用発明においてはそのような限定がない点。

2 当審の判断
(1)相違点の検討
次に、上記相違点について検討する。なお、上記のように、本願発明の「レンズ装置に組み込まれ、又は、前記レンズ装置に付属装置として接続される」という選択的特定にかんがみれば、上記相違点ア又はイのいずれか一方について検討すれば十分であるところ、念のため両方(ア及びイ)について検討する。

ア 相違点1について
一般に、複数の機能を含む部位(複数機能部位)を、分割された複数の部分(装置部分)からなる装置に組み込むに際して、当該複数機能部位を一体としてどちらか一方の装置部分に配置することも、複数の機能部位を分割して異なる装置部分に分配して配置することも周知の技術的事項であり、各機能部位の配置は、当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項に過ぎない。
引用発明においても、ピント状態検出手段20及び画像処理部18という2つの機能部位を、両者とも撮影レンズ(レンズ装置)の方に搭載して(組み込んで)、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
引用例1の「このような場合に、カメラマンがピント状態の検出可能な範囲を認識できずにその範囲を超えてAFポイントを指定してしまう不具合や、ピント状態の検出可能な範囲を超えてAFポイントを指定した場合に」(【0005】段落)や「本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ピント状態検出の対象ポイントの指定が可能であり、かつ、ピント状態の検出可能な範囲が映像用撮像素子の撮像範囲に対して一定範囲内に制限されている場合において、ピント状態の検出可能な範囲をカメラマンが確実に認識することができ、また、実際にピント状態検出の対象となったポイントを正確に認識することができるピント状態検出装置を提供することを目的とする。」(【0006】段落)の記載から引用発明は、従来の装置において備えられていなかったAFエリアの生成表示手段を設けた(組み込んだ)ことにあるといえる。
そして、カメラ装置において、当該カメラ装置が従来備えていなかった機能を付加するために、当該機能を実現する手段を付属装置としてカメラ装置に装着して当該機能を備えさせることは、例えば、引用例2,3に記載されているように周知の技術である。
引用発明においても、従来の装置において備えられていなかったAFエリアの生成表示手段を設ける手法として、上記周知技術を採用して、「付属装置として」撮影レンズ(レンズ装置)に接続し、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得たことである。

(2)そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、又は、引用発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第5 結言
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-09 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-24 
出願番号 特願2004-336297(P2004-336297)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
伊藤 幸仙
発明の名称 AFエリア生成装置  
代理人 松浦 憲三  

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