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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06Q 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1225226 |
審判番号 | 不服2008-15896 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-23 |
確定日 | 2010-10-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第550691号「企業企画モデルの被制御最適化の方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月26日国際公開、WO98/53416、平成14年 5月 8日国内公表、特表2002-513489〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件出願は、1998年 5月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年 5月21日、米国)を国際出願日とする出願であって、 平成19年 4月27日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年 9月 5日付けで手続補正書が提出されたが、平成20年 3月14日付けで拒絶査定され、これに対して同年 6月23日付けで拒絶査定不服審判が請求されると共に、同年 7月23日付けで手続補正書が提出され、平成21年10月 9日付けで審尋が通知され、これに対して平成22年 1月12日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成20年 7月23日付けでした手続補正について (1)本件補正の内容について 平成19年 9月 5日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲は、平成20年 7月23日付けでした手続補正(以下、「本件補正」という。)により、以下のとおり補正された。 <<本件補正前の特許請求の範囲>> 「1.企業企画モデル中に考慮されていない価格イメージを含む少なくとも1つの戦略的な制約を同時に満足させながらも、前記企業企画モデルの最適化を制御するコンピュータ実現化方法であって、 プロセッサの目標選択手段が、荒利益最大化の主要目標に影響を与える業務決定の集合を含む前記主要目標を選択するステップと; プロセッサの目標選択手段が、市場占有率増大の補助目標に影響を与える前記業務決定の集合の部分集合を含む前記補助目標を選択するステップと; プロセッサの事前処理手段が、前記補助目標が前記主要目標に対する戦略的な制約となるように、前記主要目標を前記補助目標と組み合わせることによって前記業務決定の集合に依存し、荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を生成するステップと; プロセッサのシナリオ分析手段が、前記補助目標を同時に達成しながらも、前記主要目標を最大化する業務決定の集合を生成するため前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化するステップと; を含む方法。 2.前記有効目標を最適化するために前記最適化ステップで用いられる企業データを記憶するデータ記憶装置を準備するステップをさらに含む請求項1のコンピュータ実現化方法。 3.前記主要目標が主要目的関数によって表され、前記主要目的関数はユーザが主要目標を達成するために最適化しようとする単一の業務決定を各々が表している業務変数の集合に依存し、前記業務変数の各々が前記業務決定の内の1つに対応する請求項1のコンピュータ実現化方法。 4.前記少なくとも1つの補助目標が、前記業務変数集合の部分集合に依存する非線形制約関数によって表される請求項3のコンピュータ実現化方法。 5.前記有効目標が、前記業務変数の集合に依存する有効目的関数によって表される請求項4のコンピュータ実現化方法。 6.前記有効目的関数が、前記補助関数の各々に対して重み係数を与え、次に、前記主要関数から各重み付け済み補助関数を減算することによって形成される請求項5のコンピュータ実現化方法。 7.前記最適化ステップが、前記業務変数の各々に対して前記有効目的関数を最適化し、これによって、前記行目変数の各々に対する最適値を得るステップをさらに含む請求項6のコンピュータ実現化方法。 8.前記選択手段が前記少なくとも1つの補助目標の各々に対して重み付け範囲を選択するステップと; 前記最適化手段が前記重み付け範囲にわたって前記重み係数の各々を変えるステップと; をさらに含み、 前記最適化手段が前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを、前記重み付け範囲中の重み係数をすべて組み合わせるために実行する、請求項7のコンピュータ実現化方法。 9.前記重み付け範囲の各々の範囲中の重み係数毎に、前記業務変数の前記最適値が、前記主要目標と前記少なくとも1つの補助目標の値を決定するために利用され; 前記記憶装置が前記主要目標と、前記補助目標及び前記重み係数を制約概括テーブル中に記憶する、請求項8のコンピュータ実現化方法。 10.前記選択手段が前記少なくとも1つの補助目標に対して目標決定された値を選択するステップと; 前記シナリオ分析手段が前記制約概括テーブルからデータを内挿して、前記少なくとも1つの補助目標に対する前記所望の目標値を生じる重み係数の値を推測するステップと; 前記シナリオ分析手段が前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを前記重み係数の前記推測値に対して繰り返すステップと; をさらに含む請求項9のコンピュータ実現化方法。 11.前記主要目的関数が需要モデルである請求項3のコンピュータ実現化方法。 12.前記主要目的関数が利益関数である請求項3のコンピュータ実現化方法。 13.前記少なくとも1つの制約関数が価格イメージ関数を含む請求項4のコンピュータ実現化方法。 14.前記シナリオ分析手段が前記有効目的関数をシミュレーションされたアニーリングによって最適化し、これによって、前記業務変数集合が少なくとも1つの離散変数を含む場合でさえも、前記主要目標と前記少なくとも1つの補助目標に対する解を与える請求項7のコンピュータ実現化方法。 15.前記補助目標が、 N 1/NΣPi/_Pi×wi i=1 で与えられる価格イメージ関数によって表される、 但し、_Piは関心市場における品目iの平均価格であり、wiは品目iの重み付け関数であり、Nは企業企画モデルにおける前記品目の総数である、請求項1乃至14のいずれか1項の方法。 16.企業企画モデルの中に考慮されていない価格イメージを含む少なくとも1つの補助制約を同時に満足させながらも、企業企画モデルの最適化を制御する企業企画モデル最適化制御装置であって、 業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を記憶装置から選択する選択手段と; 前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせる組合せ手段と; 前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する最適化手段と; を備える企業企画モデル最適化制御装置。 17.プロセッサの選択手段に業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標を選択させる命令と; 前記選択手段に前記業務決定の集合の部分集合を含む少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を選択させる命令と; プロセッサの事前処理手段に前記補助目標が前記主要目標に関する戦略的制約として作用するように前記主要目標と前記補助目標とを組み合わせることによって、前記業務決定集合に依存し、荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を作成させる命令と; プロセッサのシナリオ分析手段に前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化させる命令と; を含むプログラムを記憶しているコンピュータ読取り可能記憶媒体。」 (ただし、上記「_Pi」は、アッパーラインを付した「Pi」を表記したもの。以下同様。) <<本件補正後の特許請求の範囲>> 「【請求項1】表示デバイスと、結果及び企業データを記憶するための記憶装置と;プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶するためのメモリと、プロセッサとを含むコンピュータシステムを用いて、企業企画モデル中に考慮されていない価格イメージを含む少なくとも1つの戦略的な制約を同時に満足させながらも、前記企業企画モデルの最適化を制御するコンピュータ実現化方法であって、 荒利益最大化の主要目標及び市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置に記憶するステップと、 前記プロセッサが、前記記憶装置から選択された補助目標に影響を与える業務決定の集合の部分集合を含む前記補助目標が前記記憶装置から選択された主要目標に影響を与える業務決定の集合を含む前記主要目標に対する戦略的制約となるように前記主要目標を前記補助目標と組み合わせることによって前記業務決定の集合に依存し、前記荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を生成する制約マッピングを実行するステップと、 前記プロセッサが、前記制約マッピングにおいて発生したデータを事前処理するステップと、 前記プロセッサが、前記事前処理されたデータに基づき、主要目標及び補助目標を達成するための各シナリオについて前記補助目標を同時に達成しながらも、前記主要目標を最大化する業務決定の集合を生成するため前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化するためシナリオ分析を実行するステップと、 を含む方法。 【請求項2】前記有効目標を最適化するために前記最適化ステップで用いられる企業データを前記記憶装置に記憶するステップをさらに含む請求項1のコンピュータ実現化方法。 【請求項3】前記主要目標が主要目的関数によって表され、前記主要目的関数はユーザが主要目標を達成するために最適化しようとする単一の業務決定を各々が表している業務変数の集合に依存し、前記業務変数の各々が前記業務決定の内の1つに対応する請求項1のコンピュータ実現化方法。 【請求項4】前記少なくとも1つの補助目標が、前記業務変数集合の部分集合に依存する非線形制約関数によって表される請求項3のコンピュータ実現化方法。 【請求項5】前記有効目標が、前記業務変数の集合に依存する有効目的関数によって表される請求項4のコンピュータ実現化方法。 【請求項6】前記有効目的関数が、前記補助関数の各々に対して重み係数を与え、次に、前記主要関数から各重み付け済み補助関数を減算することによって形成される請求項5のコンピュータ実現化方法。 【請求項7】前記最適化ステップが、前記業務変数の各々に対して前記有効目的関数を最適化し、これによって、前記行目変数の各々に対する最適値を得るステップをさらに含む請求項6のコンピュータ実現化方法。 【請求項8】前記プロセッサが前記少なくとも1つの補助目標の各々に対して選択された重み付け範囲にわたって前記重み係数の各々を変更するステップと; をさらに含み、 前記プロセッサが前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを、前記重み付け範囲中の重み係数をすべて組み合わせるために実行する、請求項7のコンピュータ実現化方法。 【請求項9】前記重み付け範囲の各々の範囲中の重み係数毎に、前記業務変数の前記最適値が、前記主要目標と前記少なくとも1つの補助目標の値を決定するために利用され; 前記メモリは、前記主要目標と、前記補助目標及び前記重み係数を制約概括テーブル中に記憶する、請求項8のコンピュータ実現化方法。 【請求項10】前記プロセッサが前記メモリのプログラム命令に従って前記制約概括テーブルからデータを内挿して、前記少なくとも1つの補助目標に対して選択された目標値を生成する重み係数の値を推測するステップと; 前記プロセッサが前記メモリのプログラム命令に従って前記有効目標を生成するステップと前記有効目標を最適化するステップを前記重み係数の前記推測値に対して繰り返すステップと; をさらに含む請求項9のコンピュータ実現化方法。 【請求項11】前記主要目的関数が需要モデルである請求項3のコンピュータ実現化方法。 【請求項12】前記主要目的関数が利益関数である請求項3のコンピュータ実現化方法。 【請求項13】前記少なくとも1つの制約関数が価格イメージ関数を含む請求項4のコンピュータ実現化方法。 【請求項14】前記プロセッサが前記メモリのシナリオ分析部分のプログラム命令に従って前記有効目的関数をシミュレーションされたアニーリングによって最適化し、これによって、前記業務変数集合が少なくとも1つの離散変数を含む場合でさえも、前記主要目標と前記少なくとも1つの補助目標に対する解を与える請求項7のコンピュータ実現化方法。 【請求項15】前記補助目標が、 【数1】 N 1/NΣPi/_Pi×wi i=1 で与えられる価格イメージ関数によって表される、 但し、_Piは関心市場における品目iの平均価格であり、wiは品目iの重み付け関数であり、Nは企業企画モデルにおける前記品目の総数である、請求項1乃至14のいずれか1項の方法。 重み付け関数であり、Nは企業企画モデルにおける前記品目の総数である、請求項1乃至14のいずれか1項の方法。 【請求項16】企業企画モデルの中に考慮されていない価格イメージを含む少なくとも1つの補助制約を同時に満足させながらも、企業企画モデルの最適化を制御する企業企画モデル最適化制御装置であって、 プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶するためのメモリと、 業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を記憶する記憶装置と、 メニューを表示する表示デバイスと; 前記荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置から選択するため前記表示デバイスに表示されたメニューの項目を選択する入力デバイスと、 前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサと; 前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサと; を備える企業企画モデル最適化制御装置。 【請求項17】コンピュータを、業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標を選択する選択手段と、前記業務決定の集合の部分集合を含む少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を選択する選択手段と、前記補助目標が前記主要目標に関する戦略的制約として作用するように前記主要目標と前記補助目標とを組み合わせることによって、前記業務決定集合に依存し、荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を作成する有効目標作成手段と、前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する最適化手段として機能させるためのプログラムを記憶しているコンピュータ読取り可能記憶媒体。」 なお、上記【請求項16】での「入力バイス」なる記載は、「入力デバイス」の明らかな誤記であるから、上記のとおり認定した。 (2)本件補正前後の各請求項の対応関係について 本件補正後の請求項1乃至15の「コンピュータ実現化方法」に係る発明は、本件補正前の請求項1乃至15の「コンピュータ実現化方法」に係る発明にそれぞれ対応する。 また、本件補正後の請求項16の「企業企画モデル最適化制御装置」に係る発明は、本件補正前の請求項16の「企業企画モデル最適化制御装置」に係る発明に対応する。 また、本件補正後の請求項17の「コンピュータ読取り可能記憶媒体」に係る発明は、本件補正前の請求項17の「コンピュータ読取り可能記憶媒体」に係る発明に対応する。 (3)本件補正の目的について 本件補正後の請求項1の「表示デバイスと、結果及び企業データを記憶するための記憶装置と;プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶するためのメモリと、プロセッサとを含むコンピュータシステムを用いて」は、本件補正前の請求項1に係る発明が当該「表示デバイス」、当該「記憶装置」、当該「メモリ」及び当該「プロセッサ」とのハードウェア資源を備えた当該「コンピュータシステム」を利用することを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項1の「荒利益最大化の主要目標及び市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置に記憶するステップ」は、本件補正前の請求項1の「プロセッサの目標選択手段が、荒利益最大化の主要目標に影響を与える業務決定の集合を含む前記主要目標を選択するステップ」及び「プロセッサの目標選択手段が、市場占有率増大の補助目標に影響を与える前記業務決定の集合の部分集合を含む前記補助目標を選択するステップ」において、当該「選択する」との処理が当該「記憶する」との処理であることを明確にするとともに、その動作の主体である当該「プロセッサの目標選択手段」が当該「記憶装置」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項1の「前記プロセッサが、前記記憶装置から選択された補助目標に影響を与える業務決定の集合の部分集合を含む前記補助目標が前記記憶装置から選択された主要目標に影響を与える業務決定の集合を含む前記主要目標に対する戦略的制約となるように前記主要目標を前記補助目標と組み合わせることによって前記業務決定の集合に依存し、前記荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を生成する制約マッピングを実行するステップと、前記プロセッサが、前記制約マッピングにおいて発生したデータを事前処理するステップ」は、本件補正前の請求項1の「プロセッサの事前処理手段が、前記補助目標が前記主要目標に対する戦略的な制約となるように、前記主要目標を前記補助目標と組み合わせることによって前記業務決定の集合に依存し、荒利益最大化及び市場占有率増大の両方を達成する有効目標を生成するステップ」が当該「制約マッピングを実行するステップ」と当該「事前処理するステップ」からなる処理であることを明確にするとともに、その動作の主体である当該「プロセッサの事前処理手段」が当該「プロセッサ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項1の「前記プロセッサが、前記事前処理されたデータに基づき、主要目標及び補助目標を達成するための各シナリオについて前記補助目標を同時に達成しながらも、前記主要目標を最大化する業務決定の集合を生成するため前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化するためシナリオ分析を実行するステップ」は、本件補正前の請求項1の「プロセッサのシナリオ分析手段が、前記補助目標を同時に達成しながらも、前記主要目標を最大化する業務決定の集合を生成するため前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化するステップ」において、当該「最適化する」との処理が当該「前記事前処理されたデータに基づき、主要目標及び補助目標を達成するための各シナリオについて、最適化するためシナリオ分析を実行する」との処理であることを明確にするとともに、その動作の主体である当該「プロセッサのシナリオ分析手段」が当該「プロセッサ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項8の「前記プロセッサが前記少なくとも1つの補助目標の各々に対して選択された重み付け範囲にわたって前記重み係数の各々を変更するステップ」及び「前記プロセッサが前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを、前記重み付け範囲中の重み係数をすべて組み合わせるために実行する」は、本件補正前の請求項8の「前記選択手段が前記少なくとも1つの補助目標の各々に対して重み付け範囲を選択するステップと;前記最適化手段が前記重み付け範囲にわたって前記重み係数の各々を変えるステップ」及び「前記最適化手段が前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを、前記重み付け範囲中の重み係数をすべて組み合わせるために実行する」との処理において、その動作の主体である当該「前記選択手段」及び当該「前記最適化手段」がいずれも当該「前記プロセッサ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項9の「前記メモリは、前記主要目標と、前記補助目標及び前記重み係数を制約概括テーブル中に記憶する」は、本件補正前の請求項9の「前記記憶装置が前記主要目標と、前記補助目標及び前記重み係数を制約概括テーブル中に記憶する」との処理において、その動作の主体である当該「前記記憶装置」が当該「前記メモリ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項10の「前記プロセッサが前記メモリのプログラム命令に従って前記制約概括テーブルからデータを内挿して、前記少なくとも1つの補助目標に対して選択された目標値を生成する重み係数の値を推測するステップ」及び「前記プロセッサが前記メモリのプログラム命令に従って前記有効目標を生成するステップと前記有効目標を最適化するステップを前記重み係数の前記推測値に対して繰り返すステップ」は、本件補正前の請求項10の「前記選択手段が前記少なくとも1つの補助目標に対して目標決定された値を選択するステップと;前記シナリオ分析手段が前記制約概括テーブルからデータを内挿して、前記少なくとも1つの補助目標に対する前記所望の目標値を生じる重み係数の値を推測するステップ」及び「前記シナリオ分析手段が前記有効目標を形成するステップと前記有効目標を最適化するステップを前記重み係数の前記推測値に対して繰り返すステップ」において、その動作の主体である当該「前記選択手段」及び当該「前記シナリオ分析手段」がいずれも当該「前記プロセッサ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項14の「前記プロセッサが前記メモリのシナリオ分析部分のプログラム命令に従って前記有効目的関数をシミュレーションされたアニーリングによって最適化し」は、本件補正前の請求項14の「前記シナリオ分析手段が前記有効目的関数をシミュレーションされたアニーリングによって最適化し」との処理において、その動作の主体である当該「前記シナリオ分析手段」が当該「前記プロセッサ」であることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項16の「プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶するためのメモリ」及び「メニューを表示する表示デバイス」は、本件補正前の請求項16に係る発明が当該「メモリ」及び当該「表示デバイス」とのハードウェア資源を備えることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項16の「前記荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置から選択するため前記表示デバイスに表示されたメニューの項目を選択する入力デバイス」及び「記憶する記憶装置」は、本件補正前の請求項16の「記憶装置から選択する選択手段」において、当該「選択する選択手段」が当該「入力デバイス」であることを明確にするとともに、本件補正前の請求項16に係る発明が当該「入力デバイス」及び当該「記憶装置」とのハードウェア資源を備えることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項16の「前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサ」及び「前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサ」は、本件補正前の請求項16の「前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせる」及び「前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する」との動作の主体が、メモリのプログラムに従って動作するプロセッサであることを明確にしたものである。 また、本件補正後の請求項17の「コンピュータ」、「選択手段」、「有効目標作成手段」及び「最適化手段」は、本件補正前の請求項17に係る発明が当該「コンピュータ」、「選択手段」、「有効目標作成手段」及び「最適化手段」とのハードウェア資源を備えることを明確にしたものである。 してみると、本件補正後の請求項1、8、9、10、14,16及び17に係る発明は、本件補正前の請求項1、8、9、10、14,16及び17に係る発明において、明りょうでない記載の釈明を行ったものと認められる。 (4)本件補正の適否の判断 よって、本件補正は、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであるので、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第4号に掲げられた事項を目的とするものに該当するので、同法第17条の2第4項に規定する要件を満たしており、適法になされたものである。 3.本願を拒絶するべき理由 (1)本願の請求項16に係る発明 上記2.「平成20年 7月23日付けでした手続補正について」の項で示したように、平成20年 7月23日付け手続補正は適法になされたものであるから、本願の請求項16に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成20年 7月23日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲である上記「<<本件補正後の特許請求の範囲>>」の項の請求項16に記載された事項により特定されるとおりのものである。 (2)特許法第29条第1項柱書きについて (2-1)本願発明の分説 まず、本願発明を、便宜上分説すると、以下のようになる。 「(ア)企業企画モデルの中に考慮されていない価格イメージを含む少なくとも1つの補助制約を同時に満足させながらも、企業企画モデルの最適化を制御する企業企画モデル最適化制御装置であって、 (イ)プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶するためのメモリと、 (ウ)業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を記憶する記憶装置と、 (エ)メニューを表示する表示デバイスと; (オ)前記荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置から選択するため前記表示デバイスに表示されたメニューの項目を選択する入力デバイスと、 (カ)前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサと; (キ)前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサと; (ク)を備える企業企画モデル最適化制御装置。」 (2-2)特許法第2条の発明該当性についての判断 してみれば、本願発明は、コンピュータである「企業企画モデル最適化制御装置」が、上記(イ)乃至(キ)の手段による処理を行う発明であるから、その発明の実施にソフトウェアを必要とするところのいわゆるコンピュータ・ソフトウェア関連発明である。そして、こうしたコンピュータ・ソフトウェア関連発明が「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるためには、上記ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されていることを要件とする。 そして、本願発明のソフトウェアによる情報処理は、上記(イ)乃至(キ)の手段による処理を含むものである。 そこで、本願発明が特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するか否かについて、以下上記(イ)乃至(キ)の手段による処理にしたがって検討する。 (上記(イ)について) 上記(イ)の記載での「プログラム命令、テーブルおよび結果を記憶する」は、単にメモリに記憶する内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。 (上記(ウ)について) 上記(ウ)の記載での「業務決定の集合を含む荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を記憶する」は、単に記憶装置に記憶する内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。 (上記(エ)について) 上記(エ)の記載での「メニューを表示する」は、単に表示デバイスが表示する内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。 (上記(オ)について) 上記(オ)の記載での「前記荒利益最大化の主要目標、及び前記業務決定の部分集合を含み、前記主要目標に関する戦略的制約を表す少なくとも1つの市場占有率増大の補助目標を前記記憶装置から選択するため前記表示デバイスに表示されたメニューの項目を選択する」は、単に入力デバイスにて選択する内容を特定するに留まり、具体的な情報処理が記載されているとは認められない。 (上記(カ)について) 上記(カ)の「前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサ」には、「メモリのプログラム」及び「プロセッサ」とのハードウェア資源の記載があるものの、当該「メモリのプログラム」は、ソフトウェアを記憶する場所を特定し、当該「プロセッサ」はソフトウェアによる処理を実行する手段を特定するに留まり、これらのハードウェア資源を用いて具体的にどのような情報処理を行っているのか記載されていない。 してみると、上記(カ)の記載は、単にコンピュータである「企業企画モデル最適化制御装置」が備える上記「プロセッサ」が行う漠然とした機能を特定するに留まり、上記(カ)には、上記「主要目標」、上記「補助目標」及び上記「有効目標」をどのように情報処理して、補助目標が主要目標を制約するように、上記「組み合わせる」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。 (上記(キ)について) 上記(キ)の「前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサ」には、「メモリのプログラム」及び「プロセッサ」とのハードウェア資源の記載があるものの、当該「メモリのプログラム」はソフトウェアを記憶する場所を特定し、当該「プロセッサ」はソフトウェアによる処理を実行する手段を特定するに留まり、これらのハードウェア資源を用いて具体的にどのような情報処理を行っているのか記載されていない。 してみると、上記(キ)の記載は、単にコンピュータである「企業企画モデル最適化制御装置」が備える上記「プロセッサ」が行う漠然とした機能を特定するに留まり、上記(キ)には、上記「業務決定の各々」及び上記「有効目標」をどのように情報処理して、上記「最適化する」ことが実現されているのか、何ら具体的な事項が記載されているとは認められない。 (2-3)特許法第29条第1項柱書きについての結論 以上の検討によれば、上記(イ)乃至(キ)の手段による処理では、形式的にはコンピュータである「企業企画モデル最適化装置」によって行われ、「メモリ」、「記憶装置」、「表示デバイス」、「入力デバイス」、「メモリのプログラム」及び「プロセッサ」とのハードウェア資源を利用しているものの、上記処理において、コンピュータのハードウエア資源をどのように利用して、どのように情報処理が実現されるのかという点に関しては、何ら具体的な事項が記載されているものとは認められない。 そして、請求項16の各手段の記載では、上記「プロセッサ」が行う漠然とした機能を単に特定したにすぎず、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されているとはいえないから、本願発明は、特許法第2条で定義される「発明」、すなわち「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていない。 (3)特許法第36条第6項第2号について (3-1)請求項16の「前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサ」について 請求項16の「前記メモリのプログラムに従って前記補助目標が前記主要目標を制約するように前記主要目標と前記補助目標を有効目標に組み合わせるプロセッサ」には、「メモリのプログラム」及び「プロセッサ」とのハードウェア資源の記載があるものの、当該「メモリのプログラム」は、ソフトウェアを記憶する場所を特定し、当該「プロセッサ」はソフトウェアによる処理を実行する手段を特定するに留まり、これらのハードウェア資源を用いて具体的にどのような情報処理を行っているのか不明である。 してみると、請求項16の上記記載は、単にコンピュータである「企業企画モデル最適化制御装置」が備える上記「プロセッサ」が行う漠然とした機能を特定するに留まり、上記「主要目標」、上記「補助目標」及び上記「有効目標」をどのように情報処理して、補助目標が主要目標を制約するように、上記「組み合わせる」ことが実現されているのか、明確でない。 (3-2)請求項16の「前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサ」について 請求項16の「前記メモリのプログラムに従って前記業務決定の各々に対して前記有効目標を最適化する前記プロセッサ」には、「メモリのプログラム」及び「プロセッサ」とのハードウェア資源の記載があるものの、当該「メモリのプログラム」は、ソフトウェアを記憶する場所を特定し、当該「プロセッサ」はソフトウェアによる処理を実行する手段を特定するに留まり、これらのハードウェア資源を用いて具体的にどのような情報処理を行っているのか不明である。 してみると、請求項16の上記記載は、単にコンピュータである「企業企画モデル最適化制御装置」が備える上記「プロセッサ」が行う漠然とした機能を特定するに留まり、上記「業務決定の各々」及び上記「有効目標」をどのように情報処理して、上記「最適化する」ことが実現されているのか、明確でない。 (3-3)特許法第36条第6項第2号についての結論 したがって、本願は、請求項16の記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項16に係る発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしておらず、また、本願は、請求項16の記載が明確でないため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-05-07 |
結審通知日 | 2010-05-11 |
審決日 | 2010-06-01 |
出願番号 | 特願平10-550691 |
審決分類 |
P
1
8・
1-
Z
(G06Q)
P 1 8・ 537- Z (G06Q) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青柳 光代、小山 和俊 |
特許庁審判長 |
赤穂 隆雄 |
特許庁審判官 |
田代 吉成 山本 章裕 |
発明の名称 | 企業企画モデルの被制御最適化の方法 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 峰 隆司 |