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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1225278
審判番号 不服2008-7495  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-27 
確定日 2010-10-13 
事件の表示 特願2005-186645「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月27日出願公開、特開2005-302061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年9月22日に出願した特願2000-289115号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成14年9月3日に新たな特許出願(特願2002-258205号)とし、さらにその一部を、平成17年6月27日に新たな特許出願としたものであって、平成20年2月15日付けで拒絶査定がなされたところ、これに対して同年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年4月25日に手続補正書が提出されたものである。

2.補正却下の決定
平成20年4月25日に提出された手続補正書による補正の却下の決定

(1)[補正却下の決定の結論]
平成20年4月25日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

(2)[補正却下の決定の理由]
(a)補正の内容
本件補正によると、その特許請求の範囲の請求項1は、
「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有する第1ハウジングと、
第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを開閉可能に連結するヒンジ部と、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるキーボードと、
前記アンテナを用いて電磁波を放射する無線による通信を行う通信回路と、
前記キーボードを用いた操作に関連し、前記通信回路が提供する機能とは異なる機能を実現する電子回路と、
前記通信回路を停止することを指示する手段であって、前記キーボードが隠蔽される前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において機器の外部から操作可能な前記第2ハウジングの位置に設けられたスライドスイッチとを備え、
前記スライドスイッチからの指示に応じて前記無線による通信を停止することを特徴とする電子機器。」
と補正されている。

上記補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「アンテナを有する第1ハウジング」及び「前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽されるキーボード」に関し、それぞれ「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有する第1ハウジング」及び「前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるキーボード」と限定するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するといえる。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて以下検討する。

(b)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-308163号公報(以下、「引用例」という。)には、図とともに、以下のような記載がある。
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、携帯電話端末に係り、特に病院や飛行機等の携帯電話での通信ができない場所においても電子手帳や時計の機能を使えるようにして利便性を向上させることができる携帯電話端末に関する。」(段落【0001】)

(ロ)「【0007】そのため、従来は、無線信号の発着信を禁止されている場所、例えば病院や飛行機等において携帯電話端末を所持している場合は、使用者は、入力部6の電源切キーの押下等により携帯電話端末全体を停止させる必要があった。
【0008】従来の携帯電話端末では、入力部6の電源切キーが押下されると、制御部10を介して中央処理装置4にそのデータが入力され、中央処理装置4が制御部10に対して電源停止命令を出力し、それを受けた制御部10が電源制御部12に全電源線20?26の停止指示を出力し、電源制御部12が全電源線20?26への電力供給を停止することにより、装置全体の機能が停止するようになっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の携帯電話端末では、病院や飛行機等の携帯電話での通信が禁止されている場所では、携帯電話端末全体の電源を切らなければならず、通信機能とは無関係の電話帳や電子手帳機能等も使えなくなってしまい、不便であるという問題点があった。
【0010】また、上記従来の携帯電話端末では、基地局のあるエリアから相当離れた場所においても基地局との通信用接続情報の交信を試みるため、無線部2及びベースバンド処理部3を定期的に動作させなければならず、無駄な電力を消費してしまうという問題点があった。
【0011】本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、携帯電話端末での通信が禁止されている場所でも通信以外の機能を使用可能として利便性を向上させ、また、エリア外における無駄な電力消費を防ぐことができる携帯電話端末を提供することを目的とする。」(段落【0007】?【0011】)

(ハ)「【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明の実施の形態に係る携帯電話端末は、使用者の要求により、無線部及びベースバンド処理部を停止できるようにしており、無線信号の発着信が禁止されている場所においては通信機能のみを停止させ、電話番号帳、電子手帳、時計等の通信とは無関係の機能を使用できるようにして利便性を向上させ、また、エリア外における消費電力を低減することができるものである。
【0018】まず、本発明の実施の形態に係る携帯電話端末の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る携帯電話端末(本装置)の構成ブロック図である。図1に示すように、本装置の基本的な構成は、図7に示した従来の携帯電話端末とほぼ同様であり、従来と同様の部分としてアンテナ1と、無線部2と、ベースバンド処理部3と、表示部7と、マイク8と、スピーカ9と、バッテリ11と、電源制御部12とを備え、本装置の特徴部分として停止認識部13が新たに設けられている。また、入力部6と、中央処理装置4と、記憶部5と、制御部10は従来とは一部構成又は処理が異なっている。
【0019】本装置の特徴部分について図1を用いて説明する。まず、停止認識部13は、入力部6の特定キーが押下された場合に、入力信号を受けて通信機能の停止を要求する停止要求信号を制御部10に出力するものである。
【0020】そして、制御部10は、停止認識部13からの停止要求信号を受けて、中央処理装置4に通信機能の停止処理に移行するよう、中央処理装置4が認識できる形の停止要求フラグ又は割り込み信号を出力するものである。更に、制御部10は、中央処理装置4からの指示に従って、電源制御部12に対して無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止する制御を行うものである。
【0021】そして、中央処理装置4は、制御部10からの停止要求フラグを受けて、通信機能の停止処理を行うものである。具体的には、中央処理装置4は、制御部10に対して、無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止する指示を出力するものである。
【0022】また、記憶部5は、従来と同様のプログラムコードや電話帳データ及び電子手帳データの他に、通信機能の停止処理を行うためのプログラムコードを記憶しているものである。
【0023】次に、本装置の外観について図2を用いて説明する。図2は、本装置の外観説明図である。図2に示すように、本装置の上部にはアンテナ1が設けられ、前面部分には、従来と同様のスピーカ9と、マイク8と、入力部6として従来と同様の基本機能キー6aと、特定機能キーとしてオフフックキー6b及びオンフックキー6c及び本装置の特徴部分である通信停止キー6dと、手帳/時計切り替えキー6eとが設けられている。
【0024】本装置の特徴部分である通信停止キー6dは、特定機能キーの一種で、使用者が通信機能の停止指示を入力するキーであり、このキーが押下されると携帯電話端末の通信機能が停止するようになっている。具体的には、通信停止キー6dが押下されると、無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給が停止して、通信機能が停止する。通信停止キー6dには、使用者が機能を認識しやすいようなイラストが描かれている。
【0025】また、手帳/時計切り替えキー6eは、通信機能が停止している状態において電子手帳機能(電話帳機能を含む)と、時計機能とを切り替えるものである。」(段落【0017】?【0025】)

(ニ)「【0042】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、電源がオンの状態で特定の指示が入力された場合に、特定フォーマットのデータ列と無線信号とを相互変換して送受信を行う無線部と、送信データを特定フォーマットのデータ列に変換して無線部に送出し、無線部から入力された特定フォーマットのデータ列から受信データを取り出すベースバンド処理部への電力供給を停止し、他の部分への電力供給は継続する携帯電話端末としているので、病院等の無線通信禁止区域において、通信機能のみを停止させて電子手帳機能や電話帳機能等はそのまま用いることができ、利便性を向上させることができ、また、エリア外において通信機能を停止させて消費電力を低減することができる効果がある。
・・・(中略)・・・
【0045】請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2又は3記載の携帯電話端末において、無線部とベースバンド部への電力供給を停止している状態のときに、通信機能が停止していることを示すアイコンを表示する携帯電話端末としているので、使用者に、通信機能が停止していることを容易に認識させることができる効果がある。
【0046】請求項5記載の発明によれば、請求項1又は2又は3又は4記載の携帯電話端末において、特定の指示を入力するキーを設け、当該キーが通信機能停止を実行させるキーであると認識可能な形状又は図柄である携帯電話端末としているので、使用者は、通信機能を停止させたい場合に、指示を入力するキーを容易に認識して操作することができ、使い勝手を向上させることができる効果がある。」(段落【0042】?【0046】)

以上の記載によれば、この引用例には以下のような発明(以下、「引用例発明」という。)が開示されていると認められる。

「装置の上部に設けられたアンテナと、
装置の前面部分に設けられた基本機能キー6a、特定機能キー6b、手帳/時計切り替えキー6e等を有する入力部6と、
特定フォーマットのデータ列と無線信号とを相互変換して送受信を行う無線部2及び送信データを特定フォーマットのデータ列に変換して無線部に送出し、無線部から入力された特定フォーマットのデータ列から受信データを取り出すベースバンド処理部3と、
前記無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止する指示を出力するための通信停止キー6dとを備え、
前記通信停止キー6dからの指示に応じて前記前記無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止することにより、通信機能のみを停止させ、通信とは無関係の電話番号帳、電子手帳、時計等の機能はそのまま用いることができることを特徴とする携帯電話端末。」

(c)対 比
本願補正発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「携帯電話端末」は、本願補正発明の「電子機器」に相当し、引用例発明は、アンテナが装置上部に設けられており、アンテナは携帯電話端末のハウジングに固定取り付けされていることは明らかであるから、本願補正発明の「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有する第1ハウジング」を備え、と「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有するハウジング」を備える点で共通する。
引用例発明の「入力部6」は、基本機能キー6a、特定機能キー6b等の複数のキーを有しているから、本願補正発明の「キーボード」に相当するといえる。
引用例発明の「無線部2及びベースバンド処理部3」は、本願補正発明の「前記アンテナを用いて電磁波を放射する無線による通信を行う通信回路」に相当する。
引用例発明の「通信とは無関係の電話番号帳、電子手帳、時計等の機能」は、基本機能キー6a、手帳/時計切り替えキー6eを用いた操作に関連しており、当該機能を実現する電子回路を備えることは明らかであるから、本願補正発明の「前記キーボードを用いた操作に関連し、前記通信回路が提供する機能とは異なる機能を実現する電子回路」を備え、に相当するといえる。
引用例発明は、前記無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止する指示を出力するための通信停止キー6dを備え、前記通信停止キー6dからの指示に応じて前記前記無線部2及びベースバンド処理部3への電力供給を停止することにより、通信機能のみを停止するから、本願補正発明の「前記通信回路を停止することを指示する手段であって、前記キーボードが隠蔽される前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において機器の外部から操作可能な前記第2ハウジングの位置に設けられたスライドスイッチを備え、前記スライドスイッチからの指示に応じて前記無線による通信を停止する」と「前記通信回路を停止することを指示する手段であって、機器の外部から操作可能なハウジングに設けられたスイッチを備え、前記スイッチからの指示に応じて前記無線による通信を停止する」点で共通する。

そうすると、両者は、
「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有するハウジングと、
キーボードと、
前記アンテナを用いて電磁波を放射する無線による通信を行う通信回路と、
前記キーボードを用いた操作に関連し、前記通信回路が提供する機能とは異なる機能を実現する電子回路と、
前記通信回路を停止することを指示する手段であって、機器の外部から操作可能な前記ハウジングに設けられたスイッチとを備え、
前記スイッチからの指示に応じて前記無線による通信を停止することを特徴とする電子機器。」
で一致するものであり、次の(1)?(3)の点で相違している。

(1)本願補正発明は、第1ハウジングと第2ハウジングとがヒンジ部により開閉可能に連結されており、キーボードは、第1ハウジングと第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるのに対し、引用例発明は、ハウジングが開閉可能なハウジングではなく、キーボードは、ハウジングの前面部分に設けられている点。

(2)アンテナが、本願補正発明は、第1ハウジングに固定取り付けされるのに対し、引用例発明は、装置の上部に設けられている点。

(3)通信回路を停止することを指示する手段であるスイッチが、本願補正発明は、「スライドスイッチ」であり、「前記キーボードが隠蔽される前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において機器の外部から操作可能な前記第2ハウジングの位置に」設けられてるのに対し、引用例発明は、「通信停止キー6d」であって「装置の前面部分に設けられた入力部6」にある点。

(d)当審の判断
・相違点(1)について
第1ハウジングと第2ハウジングとがヒンジ部により開閉可能に連結されており、キーボードは、第1ハウジングと第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出される携帯電話端末(折りたたみ式携帯電話機又はフリップ式携帯電話機)は、本願の原出願日前周知(特開2000-184023号公報段落【0005】?【0009】、図1、2、特開平8-242308号公報、図3、特開平5-211464号公報段落【0011】、【0012】、特開平9-289685号公報段落【0010】、図1、2、特開平8-163638号公報【0012】、図1、2参照)である。
したがって、引用例発明の携帯電話端末を、第1ハウジングと第2ハウジングとがヒンジ部により開閉可能に連結されており、キーボードは、第1ハウジングと第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

・相違点(2)、(3)について
折りたたみ式携帯電話やフリップ式携帯電話において、通常固定(キーボードが設けられている)側の本体にアンテナを取り付けることは、本願の原出願日前周知(上記特開平5-211464号公報段落【0012】「図示していないが、前記ケース本体1には、電波を受信するアンテナ、呼出報知用の発音体、電源電池なども内蔵されている。」の記載、上記特開2000-184023号公報【0011】、【0012】「図1、図2は、従来のフォルダータイプの携帯電話の一例である。図1、図2で示すように、この携帯電話は、本体10と、フォルダー20と、本体10とフォルダー20を互いに所定の角度まで開閉できるように機械的に接続するヒンジ装置(図示略)と、を備えている。本体10には、電波を受信するアンテナ装置110と、ヒンジ装置に接続するためのサイドアーム101と、データ入力手段となる一つ以上のキーを有するキーパッド40と、キーパッド40の下側に送話部に連結されたマイクロホン装置116とが備わっている。」の記載参照)である。
そして、折りたたみ式携帯電話機やフリップ式携帯電話機において、キーボードが隠蔽される第1ハウジングと第2ハウジングの閉状態において機器の外部から操作可能な第2ハウジングの位置に機能をオン・オフするスイッチを設けることは、本願の原出願日前周知(上記特開平5-211464号公報段落【0011】「2はこのケース本体1の上面右側縁部においてケース本体1に軸止された開閉部材である。この開閉部材2の上面には、電話機能のオンオフを制御するON/OFFキー、・・・操作するSキーを備えた電話用のキーボード3が設けられている。」の記載、段落【0019】「電話用キーボード3に設けられているON/OFFキーの操作信号とケース本体1に設けられている検出スイッチ6の状態信号に基づいて前記スイッチング回路をオンまたはオフし、無線通話回路部21への電力供給を制御する。・・・つまり、本実施例の携帯電話装置は、開閉部材2が閉められているときには、前記ON/OFFキーの操作により任意に無線通話回路部21への電力の供給及び供給停止が出来」の記載、段落【0030】「勿論、無線通話回路部21への電力供給の制御は通常の携帯電話装置と同様に、ON/OFFスイッチのみによって行うようにしてもよい。この場合も、検出スイッチ6の状態信号により、モードは電話モードから電子手帳モード、或いはその逆に切換わるようにする。」の記載、上記特開平9-289685号公報段落【0010】「この折りたたみ式携帯電話機8は、第1の本体と第2の本体とから構成される。第1の本体及び第2の本体は結合部3を介して開閉可能に結合されている。第1の本体1には、各種情報を可視表示する液晶表示器4,アンテナ5及びボタンスイッチ6が設けられている。このボタンスイッチ6は、通常音量切替え用のスイッチとして機能するが、この発明においては、後に詳細に述べる特殊機能のためのスイッチとして兼用される。この実施の一形態では、ボタンスイッチ6を第1の本体1の側壁面に設けているが、閉じた状態で操作できる位置であれば、他のどこの位置にあってもよい。また、第2の本体2には、文字・数字入力スイッチを含む各種機能ボタンスイッチ7が設けられている。」の記載、上記特開平8-163638号公報段落【0012】「この折りたたみ式携帯電話機10は、第1の本体と第2の本体とから構成される。第1の本体及び第2の本体は結合部3を介して開閉可能に結合されている。第1の本体1には、各種情報を可視表示する液晶表示器4,アンテナ5及びボタンスイッチ6が設けられている。このボタンスイッチ6は、通常、音量切替え用のスイッチとして機能するが、この発明においては、後に詳細に述べる特殊機能のためのスイッチとして兼用される。この実施の一形態では、ボタンスイッチ6を第1の本体1の側壁面に設けているが、閉じた状態で操作できる位置であれば、他のどこでもよい。」の記載参照)である。
したがって、引用例発明において、携帯電話端末を第1ハウジングと第2ハウジングとがヒンジ部により開閉可能に連結されており、キーボードは、第1ハウジングと第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるものとする際に、アンテナを第1ハウジングに取り付け、もう一方の第2ハウジングの閉じた状態で操作できる位置に「通信停止キー6d」を設けることは、当業者が容易になし得る設計事項にすぎない。
さらに、電子機器において、動作状態の切り替えを指示する入力手段をスライドスイッチとすることは、本願の原出願日前周知(特開2000-40970号公報段落【0049】「この送信停止専用入力部14としては、例えば、スライドスイッチや入力キー等が考えられる。」の記載、上記特開平8-242308号公報段落【0018】「また、図3(d)において、40は、当該PHS端末の電源、およびトランシーバ、電話機のいずれかで用いるかを切り換えるスライドスイッチである。」の記載、特開平10-178468号公報段落【0036】「キー入力部72を操作して着信報知方法を設定するように説明したが、これに限定されるものではなく、スライドスイッチなど独立した切換スイッチで着信方法を切り換えてもよい。」の記載、特開平7-74806号公報段落【0024】「7は電源ボタンまたは等価な機能を有するスライドスイッチである。この実施例では電源スイッチとする。」の記載参照)であり、引用例発明において、「通信停止キー6d」に代えて「スライドスイッチ」を用いることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る設計事項である。

また、本願補正発明により奏される効果は、引用例発明及び周知技術から、当業者が予想し得る範囲内のものと認められる。

(e)結論
そうすると、本願補正発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例とされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
上記のとおり、上記本件補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年1月28日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「アンテナを有する第1ハウジングと、
第2ハウジングと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとを開閉可能に連結するヒンジ部と、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽されるキーボードと、
前記アンテナを用いて電磁波を放射する無線による通信を行う通信回路と、
前記キーボードを用いた操作に関連し、前記通信回路が提供する機能とは異なる機能を実現する電子回路と、
前記通信回路を停止することを指示する手段であって、前記キーボードが隠蔽される前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において機器の外部から操作可能な前記第2ハウジングの位置に設けられたスライドスイッチとを備え、
前記スライドスイッチからの指示に応じて前記無線による通信を停止することを特徴とする電子機器。」

4.引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)(b)」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の「当該ハウジングに固定取り付けされるアンテナを有する第1ハウジング」及び「前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽され、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの開状態において視認可能に露出されるキーボード」から限定を省き、それぞれ「アンテナを有する第1ハウジング」及び「前記第1ハウジングと前記第2ハウジングの閉状態において該第1ハウジングと該第2ハウジングによって隠蔽されるキーボード」とするものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに限定したものに相当する本願補正発明が前記「2.」に記載したとおり、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-24 
出願番号 特願2005-186645(P2005-186645)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 正明  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 圓道 浩史
稲葉 和生
発明の名称 電子機器  
代理人 松本 昂  

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