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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1225289
審判番号 不服2008-23609  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-16 
確定日 2010-10-13 
事件の表示 特願2006-521743「表示制御方法及び関数電子計算機」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月 6日国際公開、WO2006/035962、平成19年 7月 5日国内公表、特表2007-518143〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯・優先権主張について
本願は、2005年9月27日(優先権主張2004年9月28日、日本国)を国際出願日とする出願であって、
平成18年7月10日付けで特許法第184条の5第1項の規定による書面、国際出願日における明細書、請求の範囲、図面の翻訳文が提出されるとともに、同日付けで審査請求がなされ、
平成20年6月6日付けで拒絶理由通知(平成20年6月10日発送)がなされ、
同年7月23日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出され、
平成20年8月18日付けで拒絶査定(同年8月26日発送)がなされ、
同年9月16日付けで審判請求がされると共に、
平成22年3月8日付けで拒絶理由通知(同年3月30日発送)(以下「当審拒絶理由通知」と記す)がなされ、
同年5月28日付けで意見書が提出されると共に、同日付けで手続補正書が提出されたものである。



第2.平成22年5月28日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成22年5月28日付けの手続補正を却下する。


[理由]
1.本件補正の内容
平成22年5月28日付けの手続補正(以下「本件補正」と記す。)は、特許請求の範囲について、下記補正前の特許請求の範囲から、下記補正後の特許請求の範囲に補正しようとするものである。

<補正前の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機の表示制御方法において、
前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を表示するメニュー表示ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた関数演算処理を実施する演算ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の画面の表示に戻る第2の入力無効表示ステップと、
を有することを特徴とする表示制御方法。
【請求項2】
前記関数メニューキーは、hyperbolic関数のメニューを表示させるキーであることを特徴とする請求項1記載の表示制御方法。
【請求項3】
前記第2の入力無効表示ステップ表示する特定マークは、表示画面が関数メニューキーを操作する前の表示画面に戻る旨を示すメッセージであることを特徴とする請求項1記載の表示制御方法。
【請求項4】
関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機であって、
前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を表示するメニュー表示手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた関数演算処理を実施する演算手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の画面の表示に戻る第2の入力無効表示手段と、
を有することを特徴とする関数電子計算機。
【請求項5】
前記関数メニューキーは、hyperbolic関数のメニューを表示させるキーであることを特徴とする請求項4記載の関数電子計算機。
【請求項6】
前記第2の入力無効表示手段が表示する特定マークは、表示画面が関数メニューキーを操作する前の表示画面に戻る旨を示すメッセージであることを特徴とする請求項4記載の関数電子計算機。」

<補正後の特許請求の範囲>
「 【請求項1】
関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機の表示制御方法において、
前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を、その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて、表示するメニュー表示ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた関数をメニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示し、当該関数の演算処理を実施する演算ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示ステップと、
前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の演算式と演算結果を表示していた画面の表示に戻る第2の入力無効表示ステップと、
を有することを特徴とする表示制御方法。
【請求項2】
前記関数メニューキーは、hyperbolic関数のメニューを表示させるキーであることを特徴とする請求項1記載の表示制御方法。
【請求項3】
前記第2の入力無効表示ステップ表示する特定マークは、表示画面が関数メニューキーを操作する前の表示画面に戻る旨を示すメッセージであることを特徴とする請求項1記載の表示制御方法。
【請求項4】
関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機であって、
前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を、その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて、表示するメニュー表示手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた関数をメニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示し、当該関数の演算処理を実施する演算手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の演算式と演算結果を表示していた画面の表示に戻る第2の入力無効表示手段と、
を有することを特徴とする関数電子計算機。
【請求項5】
前記関数メニューキーは、hyperbolic関数のメニューを表示させるキーであることを特徴とする請求項4記載の関数電子計算機。
【請求項6】
前記第2の入力無効表示手段が表示する特定マークは、表示画面が関数メニューキーを操作する前の表示画面に戻る旨を示すメッセージであることを特徴とする請求項4記載の関数電子計算機。」


2.本件補正の目的について
上記本件補正における特許請求の範囲についてする補正は、要するに、下記限定事項を付加するものである。

<限定事項1>
補正前の特許請求の範囲の請求項1記載の発明を特定するための事項(以下「発明特定事項」と記す。)である「メニュー表示ステップ」がメニュー画面を「その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて」表示するものである旨の限定。

<限定事項2>
補正前の特許請求の範囲の請求項1記載の発明特定事項である「演算ステップ」が、操作されたキーに割り当てられた関数を「メニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示」するものである旨の限定。

<限定事項3>
補正前の特許請求の範囲の請求項1記載の発明特定事項である「第2の入力無効表示ステップ」によって戻る画面が、「演算式と演算結果を表示していた」ものである旨の限定。

<限定事項4>
補正前の特許請求の範囲の請求項4記載の発明特定事項である「メニュー表示手段」がメニュー画面を「その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて」表示するものである旨の限定。

<限定事項5>
補正前の特許請求の範囲の請求項4記載の発明特定事項である「演算手段」が、操作されたキーに割り当てられた関数を「メニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示」するものである旨の限定。

<限定事項6>
補正前の特許請求の範囲の請求項4記載の発明特定事項である「第2の入力無効表示手段」によって戻る画面が、「演算式と演算結果を表示していた」ものである旨の限定。

上記限定事項の追加は、何れも、補正前の請求項1、4に対し発明特定事項の直列的付加または上位概念から下位概念への変更をするものであるから、特許請求の範囲を減縮するものである。
そして、上記限定事項の追加は、補正前の請求項1、4に記載した発明特定事項である「メニュー表示ステップ」「演算ステップ」「第2の入力無効表示ステップ」「メニュー表示手段」「演算手段」「第2の入力無効表示手段」を概念的により下位の発明特定事項とするものであり、しかも、これによって当該発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が格別変更されるものではない。
従って、本件補正の目的は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」(以下、単に「限定的減縮」と記す。)に該当する。


3.独立特許要件について
上記2.の通り、本件補正は、限定的減縮を目的とするものであるから、
本件補正後の請求項に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。

(1)優先権主張について
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?3に係る発明は「前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示ステップ」を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項4?6に係る発明は「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段」を有するものであるところ、本願の優先権主張の基礎となる先の出願(特願2004-282278号(平成16年9月28日出願)。以下「優先基礎出願」と記す。)の願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下「当初明細書等」と記す。)には、かかる「第1の入力無効表示ステップ」「第1の入力無効表示手段」を有するものは記載されておらず、また該当初明細書等の記載から自明なものでもない。
従って、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、上記優先基礎出願に基づく優先権の主張を認めることができないものである。

(2)本件補正発明
本件補正後の請求項4に記載されている事項により特定される発明(以下、「本件補正発明」という。)は、上記1.の補正後の特許請求の範囲の請求項4として記載した通りのものである。

(3)先行技術文献
ア.引用文献記載事項
上記当審拒絶理由通知書において引用された、下記引用文献には、それぞれ、下記引用文献記載事項が記載されている。

<引用文献1>
特開2001-166864号公報(平成13年6月22日出願公開)

<引用文献記載事項1-1>
「【請求項3】 複数の関数又は機能項目からなるメニューを表示する表示手段と、前記メニューの表示データを格納するメニューテーブルと、前記メニューテーブルに対応し、前記関数又は機能項目を表示するか否かを示すフラグを設定するフラグテーブルと、前記フラグテーブルのフラグに基づいて、前記メニューテーブルから該当する表示データを読み出して表示手段に表示させる制御手段と、を備えることを特徴とする関数電卓。」

<引用文献記載事項1-2>
「【0015】図1は、本発明の実施の形態による関数電卓の構成を示すブロック図である。図1に示す関数電卓は、CPU1(制御手段)、ROM2、RAM3、表示部4(表示手段)、キー入力部5、表示制御部6、入力制御部7及びメニュー表示プログラムを記録したCD-ROM9の読み取り装置であるCD-ROMドライブ8から構成される。
【0016】CPU1は、ROM2に格納されているプログラムに基づいて、関数電卓全体を制御する。特に、CPU1は、表示部4にメニューを表示する際に、フラグテーブル31に設定されているフラグに基づいて、メニューテーブル21から該当する関数又は機能(以下、関数等と呼ぶ)の項目の表示データを読み出して表示する制御を行う。
【0017】ROM2は、関数電卓の動作に必要なプログラム及び固定データを格納するとともに、メニューテーブル21(図3(B)参照)を格納している。メニューテーブル21は、メニューの表示データを格納するもので、ここでは関数等の項目毎の表示データを格納している。
【0018】RAM3は、関数電卓の処理に必要なデータを一時的に記憶するもので、記憶領域の一部は例えば電源バックアップされ、本体電源オフ後でもこの記憶領域のデータは保持される。また、この電源バックアップされたRAM3の所定領域には、メニューテーブル21と組になるフラグテーブル31(図3(C),(D)参照)が格納されている。フラグテーブル31は、メニューテーブル21に対応し、前記項目を表示するか否かを示すフラグを設定する。ここでは、関数等の項目を表示するか否かを示すフラグが設定されている。
【0019】表示部4は、関数電卓における関数等の項目からなるメニュー(図4参照)を表示するもので、表示制御部6を介してCPU1に接続される。表示制御部6は、CPU1からのメニューに関する処理データを表示部4で表示可能なデータに変えて表示部4に表示させる。
【0020】キー入力部5は、複数の入力キーからなり、所定のキーを操作してメニュー表示、フラグテーブル31におけるフラグの設定、関数等の項目の選択を行う。キー入力部5により操作されたキー情報は、入力制御部7を介してCPU1に入力される。」

<引用文献記載事項1-3>
「【0024】メニューキー51は、関数等を選択するためのメニューを表示させる入力キーである。ただし、メニューは、メニューキー以外の入力キーを押しても表示させることができる。その場合には、メニューキー以外の入力キーを押したときに参照できるようにするため、メニューテーブル21とフラグテーブル31が共に複数となる。」

<引用文献記載事項1-4>
「【0025】上矢印キー52と下矢印キー53は、表示されているメニューの中から、関数等の項目を選択するための入力キーである。この場合、項目の選択は、表示されている関数等の項目番号を数字キー58により直接入力することによっても可能である。」


<引用文献2>
米国特許出願公開第2003/0120997号明細書(2003年6月26日)
(国際公開第2002/008883号(以下単に「国際公開」と記す。)に対応)

<引用文献記載事項2-1>
「[0066]
[0067] FIG.4 is a flow chart showing a key-input correcting process executed by the OS 21. As an assumption, for example, the OS 21 and anyone of the applications 22 (e.g., the application 22-1) are started for an operation of an operator.
[0068] First, it is assumed that the operator of the computer 1 performs a key-input (key-input of a function start key) to execute the function of the application 22-1 (S1). In this manner, key-input information corresponding to the pressed key or the combination of the pressed keys is input from the KBD 15 to the OS 21.
[0069] When the OS 21 receives the key-input information, the OS 21 decides whether the key-input correcting function is valid or not (S2). More specifically, the OS 21 refers to the flag (not shown) of the key-input correcting process described above to decide whether the flag is “valid” or not. At this time, when the flag is valid (S2;Y), the OS 21 considers that the key-input correcting function is valid, the process shifts to step S3. When the flag is invalid (S2;N), the OS 21 understands that the key-input correcting function is invalid, and the process shifts to step S9.
[0070] In step S9, a key-input process in the applications 22 or the OS 21 is executed. More specifically, when the process shifts to step S 9 through step S2 , the OS 21 executes a function corresponding to the key-input information as in the conventional technique. More specifically, when the function is allocated to the key-input, the function is executed. When no function is allocated to the key-input, the key-input is neglected.
[0071] On the other hand, when the process shifts to step S3, the OS 21 decides on the basis of the key-input information whether the pressed key is valid or not. More specifically, the OS 21 retrieves a function retrieving table 35 shown in FIG.5 by using the key-input information as a key. As shown in FIG.5, the function retrieving table 35 holds the information of a function corresponding to the key-input information, and the OS 21 reads the information of the corresponding function from the function retrieving table 35.
[0072] Therefore, when the information of the function corresponding to the key-input information can be read, the OS 21 decides that a function is allocated to the key-input (valid key-input), and shifts the process to step S4.
[0073] In contrast to this, when the information of the function corresponding to the key-input information does not exist in the function retrieving table 35 (the information of the corresponding function cannot be read), the OS 21 decides that no function is allocated to the corresponding key-input (invalid key-input) (S3;N), and shifts the process to step S 10.」
(国際公開の対応部分:「〈キー入力修正処理〉
図4は、OS21によって実行されるキー入力修正処理を示すフローチャートである。前提として、例えば、OS21及び何れかのアプリケーション22(例えば、アプリケーション22-1)がオペレータの作業の為に起動しているものとする。
最初に、コンピュータ1のオペレータが、アプリケーション22-1の機能を実行するため、或るキー入力(機能開始キーのキー入力)を行ったとする(S1)。これにより、押されたキー又はキーの組み合わせに対応するキー入力情報がKBD15からOS21に入力される。
OS21は、キー入力情報を受け取ると、キー入力修正機能が有効か否かを判定する(S2)。即ち、OS21は、上述したキー入力修正処理のフラグ(図示せず)を参照し、フラグが“有効”か否かを判定する。このとき、フラグが有効である場合(S2;Y)には、キー入力修正機能が有効であるものとして、処理がS3に進み、フラグが無効である場合(S2;N)には、キー入力修正機能が無効であるものとして、処理がS9に進む。
S9では、アプリケーション22又はOS21内部のキー入力処理が実行される。即ち、S2を経てS9に処理が進んだ場合には、OS21は、従来と同様に、キー入力情報に対応する機能が実行される。即ち、当該キー入力に対して機能が割り当てられている場合には、その機能が実行され、機能が割り当てられていない場合には、当該キー入力は無視される。
一方、S3に処理が進んだ場合には、OS21は、キー入力情報に基づいて、押されたキーが有効か否かを判定する。即ち、OS21は、キー入力情報をキーとして、図5に示す機能検索テーブル35を検索する。図5に示すように、機能検索テーブル35は、キー入力情報に対応する機能の情報を保持しており、OS21は、該当する機能の情報を機能検索テーブル35から読み出す。
従って、OS21は、キー入力情報に対応する機能の情報を読み出すことができた場合には、当該キー入力に対して機能が割り当てられている(有効なキー入力である)と判定し(S3;Y)、処理をS4に進める。
これに対し、OS21は、キー入力情報に対応する機能の情報が機能検索テーブル35にない(該当する機能の情報を読み出すことができない)場合には、当該キー入力に対して機能が割り当てられていない(無効なキー入力である)と判定し(S3;N)、処理をS10に進める。」(第8頁第6行?第9頁第7行))

<引用文献記載事項2-2>
「[0094] On the other hand, when the-process shifts to step S10, the OS 21 decides whether a valid key exists in the vicinity of the pressed key or not. More specifically, the OS 21 performs the same process as that in step S4, detects a valid key-input from a predetermined retrieving area corresponding to the corresponding invalid key-input by using the valid key retrieving table 36 and the function retrieving table 35. At this time, when at least one valid key-input is detected (S10;Y), the process shifts to step S12. When at least one valid key-input is not detected (S10;N), the process shifts to step S 11.
[0095] When the process shifts to step S11, the OS 21 notifies the operator that no valid key exists in the vicinity of the pressed key. More specifically, the OS 21 displays a valid key nonexistence notification screen (valid key nonexistence notification window) 39 shown in FIG.9 on the screen of the display unit 14. At the same time, the OS 21 outputs a predetermined voice for calling operator's attention from the loudspeaker 18.
[0096] As shown in FIG.9, on the valid key nonexistence notification screen 39, a fact that the key-input is invalid and a fact that no valid key exists in the vicinity of the valid key-input (in the retrieving area). In the example shown in FIG.9, the valid key nonexistence notification screen 39 obtained when the “Ctrl”+“F” keys are pressed as a key-input is displayed.
[0097] The OS 21 displays the valid key nonexistence notification screen 39 on the display unit 14 until the timer (not shown) measures a predetermined period of time (e.g., several seconds to several ten seconds). Thereafter, when the timer measures the predetermined period of time, the OS 21 closes the valid key nonexistence notification screen 39 to shift the process to step S9.
[0098] When the operator inputs a direction to close the valid key nonexistence notification screen 39 before the predetermined period of time has elapsed, the valid key nonexistence notification screen 39 can be closed even though the predetermined period of time has not elapsed to shift the process to step S9.
[0099] When the process shifts to step S9 through step S11, the OS 21 neglects the corresponding key-input because no valid key-input exist.」
(国際公開の対応部分:「一方、S10に処理が進んだ場合には、OS21は、押し下げられたキーの近傍に有効なキーがあるか否かを判定する。即ち、OS21は、S4と同様の処理を行い、有効キー検索テーブル36及び機能検索テーブル35を用いて当該無効なキー入力に対応する所定の検索範囲から有効なキー入力を検出する。このとき、1以上の有効なキー入力が検出された場合(S10;Y)には、処理がS12に進み、そうでない場合(S10;N)には、処理がS11に進む。
S11に処理が進んだ場合には、OS21は、押し下げたキーの近傍に有効なキーが無いことを通知する。即ち、OS21は、図9に示す有効キー無し通知画面(有効キー無し通知ウィンドウ)39を、ディスプレイ装置14の画面に表示する。これと同時に、OS21は、スピーカ18からオペレータに注意を喚起するための所定の音声を出力する。
図9に示すように、有効キー無し通知画面39には、キー入力が無効である旨と、近傍(検索範囲)に有効なキー入力がない旨とが表示される。図9に示す例では、キー入力として「Ctrl」+「F」が押された場合の有効キー無し通知画面39が示されている。
OS21は、図示せぬタイマが所定時間(数秒?数十秒)を計時するまで、有効キー無し通知画面39をディスプレイ装置14に表示する。その後、タイマが所定時間を計時すると、OS21は、有効キー無し通知画面39を閉じて処理をS9に進める。
なお、オペレータが、所定時間が経過する前に有効キー無し通知画面39を閉じる指示を入力すると、所定時間経過前でも有効キー無し通知画面39が閉じて処理がS9に進むようにすることもできる。
S11を経て処理がS9に進んだ場合には、OS21は、有効なキー入力が無いので、当該キー入力を無視する。」(第12頁第11行?第13頁第5行))

<引用文献記載事項2-3>
「[0116] As described above, the OS 21 is executed by the CPU 2, and the OS 21 executes the key-input correcting process, so that the deciding means, the changing means, the notifying means, the extracting means, and the specifying means according to the present invention are realized.
[0117] The display modes of the first valid key-input notification screen 37, the second valid key-input notification screen 38, the valid key nonexistence notification screen 39, the valid key existence notification screen 40, and the key shift information setting screen 43 can be appropriately set. Each of these screens may be displayed on a work screen (not shown) of the OS 21 or the application 22-1 such that the screen overlaps the working screen or is switched to the working screen.」
(国際公開の対応部分:「以上説明したように、CPU2によってOS21が実行され、OS21がキー入力修正処理を実行することにより、本発明の判定手段,変更手段,通知手段,抽出手段,特定手段が実現される。
なお、第1有効キー入力通知画面37,第2有効キー入力通知画面38,有効キー無し通知画面39,有効キー有り通知画面40,キーシフト情報設定画面43の表示態様は適宜設定可能であり、OS21又はアプリケーション22-1の図示せぬ作業画面に重ねて表示されても良く、或いは作業画面と切り替えて表示されても良い。」(第15頁第23行?第16頁第1行))

<引用文献記載事項2-4>
「What is claimed is:
1. A key-input correcting device comprising:
deciding means for deciding whether a key-input using a single key or button or a plurality of keys or buttons arranged in an input unit of an electronic apparatus is valid or not; and
changing means for, when the key-input is invalid, changing the corresponding key-input into another valid key-input.
・・・<中略>・・・
6. A key-input correcting device according to any one of claims 1 to 4, further comprising notifying means for, when the key-input is invalid, notifying an operator that the key-input is invalid.」
(国際公開の対応部分:「請求の範囲
1.電子機器の入力装置に設けられた単数又は複数のキー又はボタンを用いたキー入力が有効か無効かを判定する判定手段と、
前記キー入力が無効である場合に、当該キー入力を有効な他のキー入力に変更する変更手段と
を備えたキー入力修正装置。
・・・<中略>・・・
6.前記キー入力が無効である場合に、その旨を通知する通知手段をさらに備えた請求項1?4の何れかに記載のキー入力修正装置。」)


<引用文献3>
特開平09-286141号公報

<引用文献記載事項3-1>
「【0075】S12において押下されたキーが前記色選択キーであるならば(S12:Yes 、S13:No、S15:Yes )、図12に示す色選択処理制御が実行される(S16)。尚、制御装置CDがこの印字色選択処理制御を行うことにより、本願発明の請求項1に係る印字色選択手段が構成される。
【0076】この色選択処理制御が開始されると、先ず、印字色を選択する選択画面が表示される(S45)。この選択画面においては、ディスプレイ5の入力データ表示部5bに「1:色1 2:色2 3:色3」と表示される。
【0077】そして、キー入力が待たれ(S46:No)、ここで、キーボード4に設けられている数字の「1」キーが押下されると(S46・S47:Yes )、印字色メモリ122に記憶されている印字色データCの値が「1」に変更される(S48)。また、キーボード4に設けられている数字の「2」キーが押下されると(S46:Yes 、S47:No、S49:Yes )、印字色データCの値が「2」に変更される(S50)。また、キーボード4に設けられている数字の「3」キーが押下されると(S46:Yes 、S47・S49:No、S51:Yes )、印字色データCの値が「3」に変更される(S52)。これら印字色データCの変更後、ディスプレイ5のマーク表示部5bに表示されているマークMが、この印字色データCの値に対応する印字色を指し示す位置に変更される(S54)。尚、制御装置CDがこのS54を実行することにより、本発明の請求項4に係る表示制御手段を構成する。
【0078】例えば、「1」キーが押下されると、印字色データCの値が「1」に変更されると共にマークMが印字色表示部5cの「色1」を指し示す位置に変更され、「2」キーが押下されると、印字色データCの値が「2」に変更されると共にマークMが「色2」を指し示す位置に変更され、「3」キーが押下されると、印字色データCの値が「3」に変更されると共にマークMが「色3」を指し示す位置に変更される。
【0079】前記S54が実行された後、第1?第3テキストメモリ121a?121cのうち印字色データCの値に対応する1つのテキストメモリ121、即ち、印字色データCが「1」ならば第1テキストメモリ121aに、印字色データCが「2」ならば第2テキストメモリ121bに、印字色データCが「3」ならば第3テキストメモリ121cに格納されているデータとフォントROM111に格納されているデータとからドットパターンデータが作成され、第2イメージデータメモリ125に格納される(S55)。続いて、この第2イメージデータメモリ125に格納されているドットパターンデータが読み出されてディスプレイ5の入力データ表示部5bに表示される。そして、この色選択処理制御を終了して印字テープ作成処理のS11にリターンする。
【0080】一方、キーボード4に設けられている取消キーが入力されると(S46:Yes 、S47・S49・S51:No、S53:Yes )、印字色データCの値が変更されることなく、前記S55が実行され、その後、印字テープ作成処理制御のS11へリターンする。尚、前記選択画面が表示されている状態で、「1」?「3」キー及び取消キー以外のキーが押下された場合には(S46:Yes 、S47・S49・S51・S53:No)、無効なキーが押下されたことになり、そのキー入力は無視され、前記S45へ戻る。その際、警告ブザー105を鳴動して無効なキーが押下されたことを使用者に報知するように構成しても良い。」


イ.参考文献記載事項
本願の出願前に、頒布された刊行物である下記参考文献には、それぞれ、下記参考文献記載事項が記載されている。

<参考文献1>
特開平09-044452号公報

<参考文献記載事項1-1>
「【0061】すなわち、例えば「Deg sin30+Gra cos60=」と計算するのに、図9(A)に示すように、まず、「Deg」キー12c1を操作すると、角度キーレジスタFに“1”がセットされ、角度単位が「Deg」に設定されたことを示す「赤」色のマークがカラー液晶表示部16の画面左下に表示される(ステップC1→C2,C7)。
【0062】そして、「sin30+」と入力すると、その数値データ「30」が「Deg」単位のデータとして「赤」色で表示される(ステップC8→C9→C10)。続いて、図9(B)に示すように、「Gra」キー12c3を操作すると、角度キーレジスタFに“3”がセットされ、角度単位が「Gra」に設定されたことを示す「緑」色のマークがカラー液晶表示部16の画面左下に表示される(ステップC5→C6,C7)。
【0063】そして、「cos60」と入力すると、その数値データ「60」が「Gra」単位のデータとして「緑」色で表示される(ステップC8→C13→C14)。ここで、「=」と入力すると、「Deg sin30+Gra cos60」の計算処理が実行され、その演算結果「1.0878」が表示される(ステップC16→C17,C18)。」


<参考文献2>
特開平11-110357号公報

<参考文献記載事項2-1>
「【請求項2】 第1および第2の表示エリアを有する表示装置を備えた電子計算装置において、
計算式データを入力する入力手段と、
この入力手段によって入力された計算式データを前記第1の表示エリアに表示する第1の表示手段と、
計算の実行を指示する指示手段と、
この指示手段により計算の実行が指示された際、前記入力された計算式データの計算を実行する計算手段と、
この計算手段によって得られた計算結果を前記第2の表示エリアに表示する第2の表示手段と、
前記指示手段によって計算の実行が指示された際、前記第2の表示エリアに表示された計算結果を計算式データとして前記第1の表示エリアに表示させるように制御する表示制御手段とを具備し、
前記計算手段は、前記表示制御手段によって前記第1の表示エリアに表示された計算式データの計算を実行することを特徴とする電子計算装置。」

<参考文献記載事項2-2>
「【0031】次に、CPU11はこの「√0.75」の計算処理を行うことにより(ステップS29)、その計算結果として得られた値「0.866025403」を答レジスタ13dに格納した後(ステップS30)、これを表示駆動回路15を通じて表示部16の下段エリアに表示する(ステップS31)。
【0032】これにより、図3(c)に示すように、計算式「√0.75」に対し、その計算結果「0.866025403」が下段エリアに表示されることになる。計算結果を表示後、CPU11はフラグレジスタ13bのフラグFを“1”にセットすると共に、入力レジスタ13cをクリアして、次の入力に備える(ステップS32,S33)。
【0033】このように、例えば「√(3/4)」のような計算を行うときに、まず、「√」の中の計算を先に求め、その計算結果に「√」をかけて全体の計算結果を求める場合において、「3÷4」を実行する際に2段表示画面の上段にその入力式が表示され、下段に計算結果「0.75」が表示される。その後、「√」を計算するときに、上段には「√」と前記「3÷4」の計算結果「0.75」が表示され、下段にはその計算結果「0.866025403」が表示される。これにより、関数を用いた計算時において、ユーザは途中結果を確認しながら、その解を得ることができる。
【0034】なお、前記実施形態では、関数として「√」を用いた計算を例にして説明したが、例えば「cos」,「sin」,「tan」,「log」など、他の関数を用いた計算でも前記同様の手法を適用することができる。」


<参考文献3>
特開平11-249864号公報

<参考文献記載事項3-1>
「【0021】図3の様に“y=tan”と入力するばあい、キー操作は“y”→“=”→“メニュー画面”→“3(tan)”となる。このとき、表示状態13から表示状態14,表示状態14から表示状態15へは、前の表示が消え次の表示へと切り替わることになる。」


(4)引用発明の認定

ア.上記引用文献記載事項1-1等からみて、引用文献1には、「複数の関数又は機能項目からなるメニューを表示する表示手段と、前記メニューの表示データを格納するメニューテーブル」と、「前記メニューテーブルから該当する表示データを読み出して表示手段に表示させる制御手段と」、を備える「関数電卓」が記載されている。

イ.そして、該「関数電卓」は、上記引用文献記載事項1-3記載の通り、「メニューキー」と「数字キー」を有している。

ウ.該「メニューキー」は、上記引用文献記載事項1-3記載の通り、「関数等を選択するためのメニューを表示させる入力キーである」。

エ.さらに、該「数字キー」は、上記引用文献記載事項1-4記載の通り、「表示されている関数等の項目番号を」「直接入力することによって」「関数等の」「項目の選択」が可能なものと言える。

オ.以上のア.?エ.より、引用文献には、下記引用発明が記載されていると認められる。

<引用発明>
「複数の関数又は機能項目からなるメニューを表示する表示手段と、前記メニューの表示データを格納するメニューテーブルと、前記メニューテーブルから該当する表示データを読み出して表示手段に表示させる制御手段と、を備える関数電卓であって、
メニューキーと、数字キーを有し、該メニューキーは、上記メニューを表示させる入力キーであり、該数字キーは、表示されている関数等の項目番号を直接入力することによって関数等の項目の選択が可能なものである関数電卓」


(5)対比
以下、本件補正発明と引用発明とを比較する。

ア.「電卓」は「電子計算機」に他ならないものであり、引用発明の「関数電卓」も、本件補正発明と同様に「関数電子計算機」と言えるものである。

イ.引用発明の「メニューキー」は本件補正発明の「関数メニューキー」に、対応付けられるものであるところ、前者は「関数等を選択するためのメニューを表示させる入力キー」であるから、両者は「関数メニューキー」と言えるものである点で共通する。
そして、引用発明の「数字キー」は本件補正発明の「数字キー」に相当するものであり、引用発明の「表示手段」は、本件補正発明の「表示部」に相当するものであるから、引用発明も本件補正発明も「関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機」である点で共通する。

ウ.引用発明の「制御手段」は本件補正発明の「表示手段」に対応付けられるものであり、両者を比較すると、前者は「前記メニューテーブルから該当する表示データを読み出して表示手段に表示させる」ものであり、これは「メニューキー」の操作によってなされるものであることは明らかであるから、両者は「前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、」「メニュー画面を、」「表示するメニュー表示手段」と言える点で共通する。
そして、引用発明における「メニュー」は、「複数の関数又は機能項目からなる」ものであるから、本件補正発明におけるメニュー画面と同様に「複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面」とも言えるものである。
さらに、引用発明においては「数字キー」によって「表示されている関数等の項目番号を直接入力することによって関数等の項目の選択が可能」なのであるから、引用発明においても、本件補正発明と同様に「当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられている」とも言えるものである。
よって、引用発明と本件補正発明とは「前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を」「表示するメニュー表示手段」を有している点で共通すると言える。

エ.引用発明は「関数電卓」であるから、数字キーによって選択された関数の演算処理をも行うことは明らかであり(必要があれば、上記参考文献記載事項1-1の「ここで、「=」と入力すると、「Deg sin30+Gra cos60」の計算処理が実行され、その演算結果「1.0878」が表示される(ステップC16→C17,C18)。」との記載や、上記参考文献記載事項2-1の「前記計算手段は、前記表示制御手段によって前記第1の表示エリアに表示された計算式データの計算を実行する」との記載等参照。)、引用発明における上記「制御手段」(上記引用文献記載事項1-2における「CPU1」)は選択された関数の演算処理を実施する演算手段としても機能することは明らかである。
してみると、引用発明と本件補正発明とは「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた」「関数の演算処理を実施する演算手段」を有する点でも共通すると言える。

オ.よって、本件補正発明は、下記の一致点で引用発明と一致し、下記の相違点で引用発明と相違する。

<一致点>
「関数メニューキー及び数字キーが設けられたキー入力部と表示部とを有する関数電子計算機であって、
前記キー入力部に設けられた関数メニューキー操作に応じて、複数の関数演算処理を選択するためのメニュー画面であって当該各関数演算処理には前記キー入力部に設けられた数字キーの一部が割り当てられているメニュー画面を」「表示するメニュー表示手段と、
前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中にいずれかの前記関数演算処理に割当られた数字キーが操作されると、操作されたキーに割り当てられた」「関数の演算処理を実施する演算手段と、」
「を有する」「関数電子計算機。」

<相違点1>
本件補正発明は、「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段」と「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の演算式と演算結果を表示していた画面の表示に戻る第2の入力無効表示手段」を有する点。
(これに対し、引用文献1においては、割当られていない数字キーが操作された場合や数字キー以外のキーが操作された場合の処理については記載されていない。)

<相違点2>
本件補正発明における「メニュー画面」は「その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて、」表示されるものであり、上記第2の入力無効表示手段によって戻る画面も「演算式と演算結果を表示していた画面」である点。
(これに対し、引用文献1においては「メニュー」が表示される際の画面遷移については記載されていない。)

<相違点3>
本件補正発明における「演算手段」は、操作されたキーに割り当てられた関数を「メニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示」するものである点。
(これに対し、引用文献1には、演算手段が関数を「メニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示」する旨の記載はない。)


(6)判断
以下、上記相違点について検討する。

<相違点1について>
誤操作時にその旨を一時的に表示することや、メニュー表示後に、その取消を可能とすること、割り当てられたキー以外のキーが操作された場合に再びメニュー表示に戻るようにすること等は、マンマシンインタフェースを有する情報処理装置の誤操作対策として、当業者が適宜に採用している常套の設計事項に過ぎないものである(必要があれば、上記引用文献記載事項2-1?2-4、3-1等参照。)。
そして、かかる誤操作対策は、引用発明や本願発明の如き「関数電卓」に特有の課題と言うものではなく、マンマシンインタフェースを有する情報処理装置全般にわたって、須く追求される一般的な課題にほかならないものであるから、引用発明の関数電卓において、引用文献2、3記載の如き誤操作対策の適用を試みることは、当業者の通常の創作力の発揮にほかならない。
してみると、引用発明において「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段」と、「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に数字キー以外のキーが操作されると、特定マークを表示し、その後メニュー画面が表示される前の演算式と演算結果を表示していた画面の表示に戻る第2の入力無効表示手段」を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
電卓において「その時点までに操作された演算式と演算結果を表示」することは、従来から適宜に採用されている周知慣用の画面デザインであり(必要があれば参考文献記載事項1-1、2-1、2-2等参照。)、また、「電卓」等の比較的狭隘な表示部にメニューやメッセージを表示する必要がある場合には、現在表示している画面に代えて該メニューやメッセージの画面を表示し、その後元の画面に戻るよう画面遷移させることも、当業者が従来から適宜採用していた常套の設計思想に過ぎないものである(必要があれば上記引用文献記載事項2-3(特に、「作業画面と切り替えて表示されても良い。」との記載。)、上記参考文献記載事項3-1等参照。)から、引用発明における「メニュー画面」を「その時点までに操作された演算式と演算結果を表示している画面に代えて」表示されるものとし、該「メニュー画面」から戻る画面も「演算式と演算結果を表示していた画面」とすることは、当業者であれば適宜に採用し得た設計的事項にすぎないものである。

<相違点3について>
「関数電卓」において、選択された関数を演算式表示領域に表示することも、従来から適宜に採用されている周知慣用の画面デザインに過ぎないものである(必要があれば上記参考文献記載事項1-1、2-1、2-2、3-1等参照)から、引用発明における演算手段を「操作されたキーに割り当てられた関数をメニュー画面が表示される前の演算式表示領域に表示」するものとすることも、当業者であれば、適宜に採用し得た設計的事項にすぎない。

以上の通りであるから、本件補正発明の構成は引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、当該構成の採用によって奏される作用効果も、当業者であれば容易に予測し得る程度のものであって、格別顕著なものではない。
よって、本件補正発明は、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)小結
以上の通り、本件補正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正却下の決定の結論の通り決定する。



第3.本件審判請求の成否について

1.手続きの経緯
本願の手続きの経緯は上記第1.記載の通りのものであり、さらに、平成22年5月28日付けの手続補正は上記第2.の通り却下された。
従って、本願の特許請求の範囲は、上記第1.に記載した、平成20年7月23日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載の通りのものである。

2.優先権主張について
本願の請求項1?3に係る発明は、上記本件補正後の請求項1?3に係る発明と同様に「前記メニュー表示ステップによるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示ステップ」を、本願の特許請求の範囲の請求項4?6に係る発明は、上記本件補正後の請求項4?6に係る発明と同様に「前記メニュー表示手段によるメニュー画面の表示中に前記関数演算処理に割当られた数字キー以外の数字キーが操作されると、特定マークを表示し、その後前記メニュー画面の表示に戻る第1の入力無効表示手段」を有するものであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明も、上記第2.(1)記載の理由と同様の理由で上記優先基礎出願に基づく優先権の主張を認めることができないものである。

3.本願発明の認定・引用文献の記載内容・引用発明の認定
本願の請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第1.1.において【請求項4】として記載した通りのものである。
当審拒絶理由通知において引用された上記引用文献、および、本願の出願前に、頒布された刊行物である上記参考文献には、上記第2.3.(3)記載の引用文献記載事項、参考文献記載事項が記載されており、上記引用文献1には上記第2.3.(4)で認定した通りの引用発明が記載されていると認められる。

4.対比・判断
本願発明は、上記第2.3.でその独立特許要件を検討した本件補正発明から、上記第2.2.の限定事項4?6を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2.に記載した通り、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
従って、本願請求項4に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項についての検討をするまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2010-06-30 
結審通知日 2010-07-27 
審決日 2010-08-09 
出願番号 特願2006-521743(P2006-521743)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
P 1 8・ 575- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塚田 肇鳥居 稔  
特許庁審判長 山崎 達也
特許庁審判官 清木 泰
冨吉 伸弥
発明の名称 表示制御方法及び関数電子計算機  

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