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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A63F
管理番号 1225359
審判番号 無効2010-800030  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2010-02-23 
確定日 2010-10-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第3970511号発明「遊技機」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯、本件発明
1.手続の経緯
本件特許の経緯概要は次のとおりである。

平成12年10月 3日 特許出願(特願2000-303812号)
平成14年 4月 5日 審査請求
平成19年 6月15日 設定登録(特許第3970511号)
平成22年 2月23日 無効審判請求
平成22年 5月 7日 答弁書(被請求人)
平成22年 7月29日 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同 上 口頭審理陳述要領書(請求人)
同 上 口頭審理
同 上 審理終結通知(口頭審理にて告知)

2.本件審判事件にかかる両当事者の主張
本件特許第3970511号の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなる高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機において、
前記特別遊技内部入賞態様およびこれに応じた図柄の組合せが互いに異なる複数の前記特別遊技のうちの所定の特別遊技が発生したときに、前記所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に抽選する継続回数抽選手段を備え、
前記遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続回数抽選手段によって抽選された回数の前記高配当遊技を行わせることを特徴とする遊技機。
【請求項2】複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなる高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機において、
前記特別遊技内部入賞態様およびこれに応じた図柄の組合せが互いに異なる複数の前記特別遊技のうちの所定の特別遊技において、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に行なえる前記高配当遊技が終了したときに、さらに、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上に前記高配当遊技を行わせるか否かを抽選する継続抽選手段を備え、
前記遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続抽選手段によって抽選された結果に応じて前記高配当遊技を行わせることを特徴とする遊技機。
【請求項3】前記高配当遊技の終了時毎に前記高配当遊技が継続するか終了するかを遊技者に演出表示する演出手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遊技機。
【請求項4】前記演出手段は前記演出表示を遊技者の操作を含めて行うことを特徴とする請求項3に記載の遊技機。」

以下、請求項1乃至4に係る発明を、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」、「本件発明3」及び「本件発明4」という。

第2 当事者の主張の概要
1.請求人の主張
本件発明1?4についての特許は、甲第1号証?甲第15号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反し、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものであると主張し、これらの特許を無効とするとともに、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求めている。証拠方法として、以下の甲第1号証?甲第16号証を提出している。
甲第1号証: 特開平11-216224号公報
甲第2号証: 特開2000-245898号公報
甲第3号証: 特開平9-285596号公報
甲第4号証: 特開平11-151345号公報
甲第5号証: 特開平11-276663号公報
甲第6号証: 特開平11-216221号公報
甲第7号証: 特開平10-277206号公報
甲第8号証: 特開2000-5380号公報
甲第9号証: 特開2000-116849号公報
甲第10号証:特開平11-333122号公報
甲第11号証:特開2000-70443号公報
甲第12号証:特開2000-5381号公報
甲第13号証:登録実用新案第3070014号公報
(審判請求書には「実用新案登録第3070014号公報」と記載されているが、「登録実用新案第3070014号公報」の誤記と認める。)
甲第14号証:特開平9-182853号公報
甲第15号証:特開平11-319213号公報
甲第16号証:特許第3970511号公報(本件特許公報)

2.被請求人の主張
本件特許発明1?4は、特許法第29条第2項の規定に該当しないため、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。

第3 当審の判断
無効理由(特許法第29条第2項違反)について検討する。
1.本件発明1について
(1)本件発明1の認定
本件発明1は、特許第3970511号の特許請求の範囲における請求項1の記載によって特定される、前記「第1 2.」の【請求項1】に示したとおりのものである。そして、請求人はこれを次のように分説している。

「1a.複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、
1b.遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、
1c.遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、
1d.乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、
1e.この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、
1f.前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなる高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機において、
1g.前記特別遊技内部入賞態様およびこれに応じた図柄の組合せが互いに異なる複数の前記特別遊技のうちの所定の特別遊技が発生したときに、前記所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に抽選する継続回数抽選手段を備え、
1h.前記遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続回数抽選手段によって抽選された回数の前記高配当遊技を行わせることを特徴とする
1i.遊技機。」

ここで、請求項1における「複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数」との記載では、「他の特別遊技で行える回数」が予め定められた回数であるのか、所定の特別遊技と同じく抽選により決定する可変なものであるのか、が必ずしも明らかではないが、仮に、抽選により決定する場合、「所定の特別遊技が発生したときに・・・抽選する継続回数抽選手段」の技術的意義がなくなること、特許明細書には、予め定められた回数であることしか記載されていないこと、から、「他の特別遊技で行える回数」は抽選により決定するのではなく、予め定められたものであると解釈して、以下検討を進める。

(2)請求人主張の進歩性欠如理由の要点
請求人は、本件発明1を上記のように分説した上で、構成要件1a?1e、1h、1iは甲第1号証(以下、「甲1」と略記する。甲2?甲15についても同様。)に記載されている。甲1との相違点である構成要件1fは、甲2?甲6に記載のとおり周知技術であり、同じく甲1との相違点である構成要件1gは、甲7?甲9の記載から設計的事項、甲10の記載、甲2、甲11、甲12に記載のとおり周知技術であり、想到容易である。

(3)甲1記載の発明と本件発明1との対比
甲1には、図面と共に以下の記載がある。
(ア)「【0008】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明によるスロットマシンの構成例を示す正面図である。スロットマシン1のほぼ中央部には、可変表示装置の一例であるCRT2が設置されている。CRT2の表示画面には、左中右の可変表示部5L,5C,5Rの表示領域が設けられる。左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rは、それぞれ上下3段に識別情報を表示できるように構成されている。」

(イ)「【0011】CRT2の設置部の下部には、コイン投入口18、1枚賭ゲームを選択するための1枚賭ボタン41、2枚賭ゲームを選択するための2枚賭ボタン42、および3枚賭ゲームを選択するためのMAXボタン43が設けられている。さらにその下部には、クレジットからの自動投入枚数を設定するための自動BETスイッチ20、ゲームを開始するためのスタートレバー12と、左中右の可変表示部5L,5C,5Rの変動を停止させるためのストップボタン4L,4C,4Rとが設けられている。また、コインゲームを行うのかクレジットゲームを行うのかを選択するためのゲーム切替ボタン16、ゲームスタートの条件としてスタートレバー12の押下を必要とするか否か決めるためのオートモードボタン17、およびカードユニット50に挿入されたプリペイドカードからのクレジット貸出を行うための貸出ボタン64が設けられている。」

(ウ)「【0014】クレジットから設定枚数分のコインに相当する価値が引き落とされるか、または、遊技者がコインを投入してスタート条件が成立すると、CRT2における左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が開始する。そして、遊技者が、各ストップボタン4L,4C,4Rを押圧すると、対応する左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が停止するように制御される。
なお、後で詳しく説明するが、この実施の形態におけるスロットマシン1は、より簡略化された操作によって、左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動の開始と停止を行うことができる。」

(エ)「【0017】1枚賭ゲームでは、各可変表示部5L,5C,5Rにおける中段の横1列のライン(当たりライン)が有効になる。中段の横1列の有効ラインにおいてあらかじめ定められた特定の識別情報の組合せが成立した場合に、ビッグボーナスゲームやボーナスゲーム(レギュラーボーナスゲームおよびシングルボーナスゲーム)の開始、または所定枚数のコインの払出等の所定の遊技価値の付与が可能な状態となる。また、2枚賭ゲームでは、各可変表示部5L,5C,5Rにおける横3列のラインが有効になる。横3列の有効ラインのいずれかにおいてあらかじめ定められた特定の識別情報の組合せが成立した場合に、所定の遊技価値の付与が可能な状態となる。さらに、3枚賭ゲームでは、各可変表示部5L,5C,5Rにおける横3列および斜め対角線上の2列のラインが有効になる。計5列の有効ラインのいずれかにおいてあらかじめ定められた特定の識別情報の組合せが成立した場合に、所定の遊技価値の付与が可能な状態となる。
なお、表示画面において、1枚賭ゲーム時には、有効ライン表示部21のみが明るく表示され、2枚賭ゲーム時には、有効ライン表示部21?23が明るく表示され、3枚賭ゲーム時には、有効ライン表示部21?25が明るく表示される。以下、有効ライン表示部21?25が明るく表示されることを点灯といい、暗く表示されることを消灯という。」

(オ)「【0022】図2は、左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rに表示される識別情報としての図柄を示す説明図である。図2(A)は左可変表示部5Lに表示される各図柄を示し、図2(B)は中可変表示部5Cに表示される各図柄を示し、図2(C)は右可変表示部5Rに表示される各図柄を示す。各可変表示部5L,5C,5Rにおいて、図柄番号「0」の図柄から図柄番号「20」の図柄が可変表示され、図柄番号「20」の図柄の次には、図柄番号「0」の図柄が表示される。
【0023】この実施の形態では、1枚賭ゲーム時には、各可変表示部5L,5C,5Rの表示停止時の表示結果が、有効ライン上で、「AAA」になるとビッグボーナスゲームが開始されるとともに、コイン15枚が払い出されるとする。また、有効ライン上で、「BBB」になるとレギュラーボーナスゲームが開始されるとともに、コイン15枚が払い出されるとする。また、「CCC」になるとシングルボーナスゲームが開始されるとともに、コイン5枚が払い出されるとする。なお、以下、特に断らない限り、ボーナスゲームは、レギュラーボーナスゲームを意味することにする。
さらに、A,B,C以外の図柄が有効ライン上に揃った場合には小役が成立し、あらかじめ定められた枚数のコインが遊技者に付与される。例えば、「DDD」になると15枚のコインが払い出され、「EEE」になると8枚のコインが払い出され、「FFF」になると4枚のコインが払い出される。「G」の図柄は単図柄と呼ばれる図柄であり、有効ライン上でこの図柄が停止した場合には、他の停止図柄がいずれであっても2枚のコインが払い出される。また、有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合には、リプレイゲームが可能になる。リプレイゲームでは、クレジットまたはコインを使用せずに1ゲームを行うことができる。」

(カ)「【0026】ビッグボーナスゲーム中において、有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合には、ボーナスゲームが発生する。ボーナスゲーム中には、入賞図柄は「JAC」のみとなる。また、有効ラインは、中段の横1列だけになる。そして、有効ライン上に「JAC,JAC,JAC」と揃った場合には、1枚賭ゲーム時には、15枚のコインが遊技者に付与される。また、シングルボーナスゲームが開始されると、1ゲームのみ1枚賭ゲームが可能になる。」

(キ)「【0035】この実施の形態では、スロットマシン1の可変表示装置はCRT2で実現されている。すなわち、図柄が配されたリールの変動は画像表示される。表示制御回路240は、例えば、CPU101からの表示制御用データに従ってCRT2に表示するための画像データを生成し、その画像データをVRAM(図示せず)に格納する。そして、VRAM内の画像データは、CRT2側に転送されて画像表示される。」

(ク)「【0039】図7は、CRT2の表示画面におけるルーレット部35を示す説明図である。図に示すように、ルーレット部35を構成する各扇形の外周側および内周側には、遊技状態に応じて各種の数字が表示される。図7(A)は、ビッグボーナス入賞時に表示例を示し、外周側の数字はビッグボーナスゲーム中の最大ゲーム数に対応し、内周側の数字はそのビッグボーナスゲームにおける最大突入ボーナスゲーム数に対応する。図7(B)は、ボーナス入賞時の表示例を示し、外周側の数字はボーナスゲーム中の最大ゲーム数に対応し、内周側の数字はそのボーナスゲームにおける最大入賞回数に対応する。後で詳しく説明するが、ビッグボーナス入賞があったときまたはボーナス入賞があったときに、図7(A)または図7(B)に示されるルーレット部35の表示がなされ、複数の扇形部分のうちの1つの部分が明るく表示され、かつ、明るい部分が変動していく。そして、変動停止時の明るい部分の数字が、ビッグボーナスゲーム数およびボーナスゲームのゲーム可能回数(図7(A)の場合)またはボーナスゲーム数およびボーナスゲーム時の入賞可能回数(図7(B)の場合)となる。
図7(C)は、有効ライン上に「DDD」が揃った場合の表示例を示し、数字は払出数を示す。この場合、小役入賞があったときに図7(C)に示されるルーレット部35の表示がなされ、複数の扇形部分のうちの1つの部分が明るく表示され、かつ、明るい部分が変動していく。そして、変動停止時の明るい部分の数字が払出数となる。すなわち、この実施の形態では、小役が成立したときの払出数もルーレットで決定される可変値とすることができ、ボーナスゲーム以外の入賞についても遊技者にとって面白く演出を行うことができる。なお、図7(C)では最大15枚のコインが払い出される小役の例を示したが、他の小役についても、同様にルーレットによる払出数の抽選が行われる。」

(ケ)「【0046】オートモードに設定されていない場合には、クレジットゲームモードでは、スタートレバー12が押下されると、それぞれの賭ゲームのスタート条件が成立する。また、コインゲームモードでは、コイン投入後スタートレバー12が押下されると、投入コイン数に応じた賭ゲームのスタート条件が成立する。」

(コ)「【0051】ゲームスタート条件が成立した場合には、CPU101は、乱数発生器105からそのときの乱数値Rを入力し(ステップS112)、リール回転処理を開始する。
図9および図10は、リール回転処理を示すフローチャートである。リール回転処理において、CPU101は、まず、1ゲームタイマがタイムアップしているか否か判断する(ステップS201)。1ゲームタイマとは、1ゲームが開始されてから終了するまで最低限経過しておかなければならない時間(たとえば4.1秒)を計時するためのものであり、ステップS202でセットされる。1ゲームタイマがタイムアップしていない場合には、CPU101は、CRT2の表示画面におけるウェイト表示部32を点灯するように表示制御回路240に制御データを与える。表示制御回路240は、制御データに従って、ウェイト表示部32を点灯する。
【0052】1ゲームタイマがタイムアップしている場合には、1ゲームタイマを新たにセットし、全リールの回転を開始する(ステップS202)。このスロットマシン1は可変表示装置としてCRT2を有するので、CPU101は、表示制御回路240に対して、各リールの図柄変動を開始させるための制御データを与える。表示制御回路240は、その制御データに応じて、CRT2の表示画面の左中右の可変表示部5L,5C,5Rに変動する図柄が表示されるように制御する。
【0053】次に、CPU101は、ボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断する(ステップS203)。ボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、ビッグボーナスフラグがセットされているか否か判断する(ステップS204)。ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、入力されている乱数値Rを各判定値と比較する処理を行う(ステップS205)。各判定値として、ビッグボーナスゲーム当選の判定値、ボーナスゲーム当選の判定値、シングルボーナス当選の判定値、小役当選の判定値、集中突入当選の判定値、集中パンクの当選判定値およびリプレイ当選の判定値の7種類がある。なお、各判定値との比較は、1つの乱数値にもとづいて行われてもよいし、複数の乱数値にもとづいて行われてもよい。」

(サ)「【0056】CPU101は、乱数値Rがビッグボーナス当選判定値と一致した場合には(ステップS206)、ビッグボーナス当選フラグをセットする(ステップS207)。ボーナス当選判定値と一致した場合には(ステップS208)、ボーナス当選フラグをセットする(ステップS209)。シングルボーナス当選判定値と一致した場合には(ステップS231)、シングルボーナス当選フラグをセットする(ステップS232)。集中突入判定値と一致した場合には(ステップS233)、集中モードにセットする(ステップS234)。集中パンクの判定値と一致した場合には(ステップS235)、集中モードをリセットする(ステップS236)。集中モードでは、シングルボーナスゲームの発生(この実施の形態では「CCC」)の確率が、例えば、(1/数)に上げられる。従って、シングルボーナスゲームが頻繁に発生することになる。乱数値Rがリプレイ当選判定値と一致した場合には(ステップS237)、リプレイ当選フラグをセットする(ステップS238)。そして、小役当選判定値と一致した場合には(ステップS210)、小役当選フラグをセットする(ステップS211)。なお、小役の種類は複数種類あるので、それに応じて小役当選判定値も複数種類ある。
【0057】ボーナスゲームフラグがセットされている場合には(ステップS203)、CPU101は、ボーナスゲームカウンタがJAC入賞許容値になっているか否か判断する。この実施の形態では、ボーナスゲームは最大12回行われ、各ボーナスゲームのうち規定回(例えば8回)JACの図柄(図2参照)が有効ライン上に揃うJAC入賞となるように制御される。JAC入賞になればコインが15枚払出される。また、ボーナスゲームはその上限回数が12回であるが、上限回数に到達する以前においてJAC入賞が規定回発生すればその時点でボーナスゲームが終了する。JAC入賞が何回目のボーナスゲームで発生するかは、ランダムにかつ事前に決定される。そして、今回行われるボーナスゲームがJAC入賞を発生させるように決定された回のボーナスゲームであるか否かがステップS220で判断される。JAC入賞を発生させるように決定された回のボーナスゲームであった場合には、JAC入賞フラグをセットする(ステップS221)。
【0058】ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合には(ステップS223)、CPU101は、ビッグボーナスゲームカウンタがボーナスゲーム開始時になっているか否か判断する(ステップS224)。ビッグボーナスゲームは所定回(例えば30回)繰り返され、その間にボーナスゲームが3回発生するように制御される。ビッグボーナスゲームが所定回に到達する以前においてボーナスゲームが3回発生すると、3回目のボーナスゲームが終了した時点でビッグボーナスゲームが終了する。ボーナスゲームが何回目のビッグボーナスゲームで発生するかが事前にかつランダムに決定される。そして、ステップS222において、現在行われるビッグボーナスゲームの回がボーナスゲームを開始させるように決定された回であるか否かの判断が行われる。ボーナスゲームを開始させるように定められた回である場合には、JAC入賞フラグがセットされる(ステップS223)。なお、図示されていないが、ステップS222からS210に進む段階で、ステップS205と同様の処理が行われる。
【0059】次に、全リールが停止したか否かの判断がなされる(ステップS301)。停止していない場合には、左中右のリール停止操作があったか否かの判断がなされる。すなわち、CPU101は、遊技者がストップボタン4Lを押圧操作したことを検出すると(ステップS302)、左リール停止フラグをセットする(ステップS303)。また、遊技者がストップボタン4Cを押圧操作したことを検出すると(ステップS304)、中リール停止フラグをセットする(ステップS305)。そして、遊技者がストップボタン4Rを押圧操作したことを検出すると(ステップS306)、右リール停止フラグをセットする(ステップS307)。」

(シ)「【0062】次に、CPU101は、左リール停止フラグがセットされているか否か判断する(ステップS308)。セットされている場合には、リール停止処理(ステップS310)を行って、左リール停止フラグをクリアする(ステップS311)。また、中リール停止フラグがセットされているか否か判断する(ステップS312)。セットされている場合には、リール停止処理(ステップS314)を行って、中リール停止フラグをクリアする(ステップS315)。そして、右リール停止フラグがセットされているか否か判断する(ステップS316)。セットされている場合には、リール停止処理(ステップS318)を行って、右リール停止フラグをクリアする(ステップS319)。
そして、全てのリールが停止すると入賞判定の処理に移行する(ステップS301)。」

(ス)「【0071】ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合には、CPU101は、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否か判断する(ステップS521)。ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合には、他のリールが停止しているか否か判断する(ステップS522)。他のリールがまだ停止していない場合には、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄(本実施例ではA)があるか否か判断する(ステップS523)。ある場合にはビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行う(ステップS524)。現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合には、その回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めてステップS540に移行する。なお、ビッグボーナス当選フラグは引き続きセットされたままの状態であるため、次回のゲームにおいて再度ビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止さるための制御が試みられる。そして、実際にビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰り返し実行される。
【0072】ステップS522において、他のリールが停止していると判断された場合には、CPU101は、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否か判断する(ステップS525)。ある場合には、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断する(ステップS526)。ある場合には、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御を行う(ステップS527)。停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、その回のビッグボーナスゲームの開始を諦めてステップS540に移行する。」

(セ)「【0075】ステップS540において、小役当選フラグ、シングルボーナス(SB)当選フラグまたはリプレイ(RP)当選フラグがセットされていると判断した場合には、他のリールが停止しているか否か判断する(ステップS541)。まだ他のリールが停止していない段階では、小役当選フラグセット時にはセットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、シングルボーナス当選フラグセット時にはシングルボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、リプレイ当選フラグセット時にはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断する(ステップS545)。ない場合には、直ちにリールを停止させて処理を終了する(ステップS546)。小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があると判断した場合には、その図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行う(ステップS547)。
【0076】ステップS541において、他のリールが停止している段階では、有効ライン上に小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があるか否か判断する(ステップS542)。ある場合には、停止している小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断する(ステップS543)。ある場合には、その小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄を、停止しているリールの小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止表示する制御を行う(ステップS544)。」

(ソ)「【0085】ステップS606においてビッグボーナス入賞であると判断された場合には、CPU101は、ルーレット部35の各扇形(図7(A)参照)のうちの1つを明るくし、かつ、明るい部分を変動するように表示制御回路240に制御データを与える。表示制御回路240は、その制御データに応じてルーレット部35の明るい部分を変動表示する(ステップS620)。そして、所定時間後に変動を停止させ、停止時に明るく表示されている扇形の外周側に付されている数字をビッグボーナスゲームカウンタにセットする。また、扇形の内周側に付されている数字をボーナス回数カウンタにセットし、ビッグボーナス当選フラグをクリアし、払出予定数を「15(1枚賭の場合)」にセットし、ビッグボーナスゲームフラグをセットする処理を行う(ステップS621)。ビッグボーナスゲームカウンタはビッグボーナスゲーム中におけるゲーム可能回数を示し、ボーナス回数カウンタはビッグボーナスゲーム中におけるレギュラーボーナスゲーム可能回数を示す。
ビッグボーナスゲームカウンタおよびボーナス回数カウンタの値は、CRT2の表示画面におけるゲーム数表示部8およびゲーム回数表示部9に表示される。」

(タ)「【0087】なお、ステップS620およびS622のルーレット回転処理において停止する位置は、例えば、ステップS207およびS209においてフラグをセットする際に既に決定されている。つまり、当選判定値に応じてルーレット停止位置があらかじめ決定されている。しかし、このような処理によって、遊技者は、あたかもルーレットによってビッグボーナスゲーム回数等が決定されたかのように感ずる。すなわち、従来のスロットマシンに比べて、このスロットマシン1のゲーム性を向上させることができる。」

(チ)「【0091】ステップS602において、ビッグボーナスゲームフラグがセットされている場合には、CPU101は、ビッグボーナスゲームカウンタを「1」減算し(ステップS641)、有効ラインにJAC入賞があるか否か判断する(ステップS642)。ない場合にはステップS603に移行する。ある場合には、CPU101は、ルーレット部35の各扇形(図7(B)参照)のうちの1つを明るくし、かつ、明るい部分を変動するように表示制御回路240に制御データを与える(ステップS643)。そして、所定時間後に変動を停止させ、停止時に明るく表示されている扇形の外周側に付されている数字をボーナスゲームカウンタにセットする。また、内周側に付されている数字をJAC入賞カウンタにセットし、JAC入賞パターンを決定し、ボーナス当選フラグをクリアし、払出予定数を「0」にセットし、ボーナスゲームフラグをセットする処理を行う(ステップS644)。なお、ステップS622の処理はビッグボーナスゲームでない通常ゲーム時においてボーナスゲームが開始された場合に行われる処理であり、ステップS643は、ビッグボーナスゲームが開始されている段階でボーナスゲームが成立したときに行われる処理である。
なお、この実施の形態では、ビッグゲームボーナスカウンタの値、ボーナス回数カウンタの値、ボーナスゲームカウンタの値およびJAC入賞カウンタの値をルーレットによって抽選されるようにしたが、それらの値のうちの一部だけをルーレットによって抽選し、他の値は固定値としてもよい。」

(ツ)「【0094】次に、CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断する(ステップS713)。セットされていると判断された場合には、ボーナス回数カウンタを「1」減算し(ステップS714)、ボーナス回数カウンタが「0」であるか否か判断する(ステップS715)。「0」でない場合にはステップS720に移行するが、「0」になっている場合には、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアし、ビッグボーナスゲームフラグをクリアする(ステップS716)。つまりボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了する。
【0095】なお、この実施の形態では、有価価値を記憶した記憶媒体として遊技者所有のプリペイドカードを例にとったが、プリペイドカードは、磁気的に有価価値を記憶するものであってもよいし、ICカードのように電気的に有価価値を記憶するものであってもよい。
また、この実施の形態では、可変表示装置を実現する電気的表示装置としてCRT2を例示したが、LCDやプラズマディスプレイなどの他の電気的表示装置を用いることもできる。さらに、全ての表示要素が画像表示される画像式のスロットマシンにも本発明を適用することができ、また、遊技者が操作を行うためのボタン類も画像表示するタッチパネルを用いた画像式のスロットマシンにも本発明を適用することができる。
ここでは、可変表示装置が電気的表示装置によって実現されるスロットマシンを例にしたが、自動BETスイッチ20を有しその設定によって自動的にクレジットの払出が行われる形態は、各リールが機械的駆動手段によって回転される回胴式のスロットマシンに適用することもできる。」

上記(ア)?(ツ)の記載及び図面に示された事項を総合すると、甲1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(A.?K.は分節のための記号である。)。
「A.複数の識別情報を表示した左中右の各リールを機械的駆動手段によって回転させる可変表示装置と、
B.オートモードに設定されていない場合には、クレジットゲームモードでは、押下されると、それぞれの賭ゲームのスタート条件が成立し、コインゲームモードでは、コイン投入後押下されると、投入コイン数に応じた賭ゲームのスタート条件が成立し、ゲームを開始し図柄変動が開始するスタートレバー12と、
C.遊技者が押圧すると、対応する左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が停止するように制御される各ストップボタン4L,4C,4Rと、
D.ゲームスタート条件が成立した場合には、乱数発生器105からそのときの乱数値Rを入力し、リール回転処理を開始し、CPU101は、ボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、ビッグボーナスフラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、入力されている乱数値Rを各判定値と比較する処理を行うCPU101と、各判定値として、ビッグボーナスゲーム当選の判定値、ボーナスゲーム当選の判定値、シングルボーナス当選の判定値、小役当選の判定値、集中突入当選の判定値、集中パンクの当選判定値およびリプレイ当選の判定値を備え、
E.CPU101は、 全リールが停止したか否かの判断をし、停止していない場合には、左中右のリール停止操作があったか否かの判断をし、遊技者がストップボタン4Lを押圧操作したことを検出すると、左リール停止フラグをセットし、遊技者がストップボタン4Cを押圧操作したことを検出すると、中リール停止フラグをセットし、遊技者がストップボタン4Rを押圧操作したことを検出すると、右リール停止フラグをセットし、
F.次に、CPU101は、左リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、左リール停止フラグをクリアして、中リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、中リール停止フラグをクリアし、右リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、右リール停止フラグをクリアし、全てのリールが停止すると入賞判定の処理に移行し、
G.CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合には、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、他のリールがまだ停止していない場合には、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合にはビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合には、その回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めてビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰り返し実行され、
H.CPU101は、他のリールが停止していると判断された場合には、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御を行い、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、その回のビッグボーナスゲームの開始を諦めて、小役当選フラグ、シングルボーナス(SB)当選フラグまたはリプレイ(RP)当選フラグがセットされていると判断した場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、まだ他のリールが停止していない段階では、小役当選フラグセット時にはセットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、シングルボーナス当選フラグセット時にはシングルボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、リプレイ当選フラグセット時にはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ない場合には、直ちにリールを停止させて処理を終了し、小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があると判断した場合には、その図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、他のリールが停止している段階では、有効ライン上に小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止している小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、その小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄を、停止しているリールの小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止表示する制御を行い、
I.CPU101は、乱数値Rがビッグボーナス当選判定値と一致した場合には、ビッグボーナス当選フラグをセットし、有効ラインにおいて「AAA」の組合せが成立した場合に、ビッグボーナスゲームを開始し、ビッグボーナスゲーム中において、有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合には、ボーナスゲームが発生し、ボーナスゲームは最大12回行われ、各ボーナスゲームのうち規定回JACの図柄が有効ライン上に揃うJAC入賞となるように制御し、ビッグボーナスゲームは所定回繰り返され、その間にボーナスゲームが最大3回発生するように制御するスロットマシンにおいて、
J.ビッグボーナス入賞があったときに、ルーレット部35の表示がなされ、停止位置は当選判定値に応じてあらかじめ決定されており、複数の扇形部分のうちの1つの部分が明るく表示され、かつ、明るい部分が変動していき、変動停止時の明るい部分の数字を、ボーナス回数カウンタにセットし、その数字がボーナスゲーム可能回数となり、
K.CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、セットされていると判断された場合には、ボーナス回数カウンタを「1」減算し、ボーナス回数カウンタが「0」であるか否か判断し、「0」でない場合にはJAC入賞フラグをクリアし、小役当選フラグ、シングルボーナス当選フラグおよびリプレイ当選フラグをクリアしてゲームスタート処理に戻り、「0」になっている場合には、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアし、ビッグボーナスゲームフラグをクリアしてボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了するスロットマシン」

引用発明の「複数の識別情報を表示した左中右の各リールを機械的駆動手段によって回転させる可変表示装置」は、
本件発明1の「複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部」に相当する。以下同様に、
「オートモードに設定されていない場合には、クレジットゲームモードでは、押下されると、それぞれの賭ゲームのスタート条件が成立し、コインゲームモードでは、コイン投入後押下されると、投入コイン数に応じた賭ゲームのスタート条件が成立し、ゲームを開始し図柄変動が開始するスタートレバー12」は、
「遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバー」に相当する。
「遊技者が押圧すると、対応する左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が停止するように制御される各ストップボタン4L,4C,4R」は、
「遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタン」に相当する。
「ゲームスタート条件が成立した場合には、乱数発生器105からそのときの乱数値Rを入力し、リール回転処理を開始し、CPU101は、ボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、ビッグボーナスフラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、入力されている乱数値Rを各判定値と比較する処理を行うCPU101」は、
「乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段」に相当する。
「CPU101は、乱数値Rがビッグボーナス当選判定値と一致した場合には、ビッグボーナス当選フラグをセットし」は、
「前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され」に相当する。
「有効ラインにおいて「AAA」の組合せが成立した場合に、ビッグボーナスゲームを開始し」は、
「この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ」に相当する。
「ビッグボーナスゲーム中において」は、
「この特別遊技において」に相当する。
「有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合」は、
「所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると」に相当する。
「ボーナスゲーム」は、
「高配当遊技」に相当する。
「最大12回行われ」は、
「複数回の遊技の実行」に相当する。
「規定回JACの図柄が有効ライン上に揃うJAC入賞」は、
「予め定められた複数回の入賞」に相当する。
「最大3回発生する」は、
「複数回行われる」に相当する。
「CPU101」の機能の一部は、「遊技処理制御部」に相当する。
そして、「スロットマシン」は、「遊技機」に相当する。

また、引用発明では、「CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合には、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、他のリールがまだ停止していない場合には、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合にはビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合には、その回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めて、実際にビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰り返し実行され、
CPU101は、他のリールが停止していると判断された場合には、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御を行い、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、その回のビッグボーナスゲームの開始を諦めて、小役当選フラグ、シングルボーナス(SB)当選フラグまたはリプレイ(RP)当選フラグがセットされていると判断した場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、まだ他のリールが停止していない段階では、小役当選フラグセット時にはセットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、シングルボーナス当選フラグセット時にはシングルボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、リプレイ当選フラグセット時にはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ない場合には、直ちにリールを停止させて処理を終了し、小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があると判断した場合には、その図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、他のリールが停止している段階では、有効ライン上に小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止している小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、その小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄を、停止しているリールの小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止表示する制御を行」っているのであるから、
本件発明1における「この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部」を備えているといえる。

よって、引用発明は構成要件1a?1e及び1iを備え、これらの点で本件発明1と一致することは認める。
しかしながら、引用発明は図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えていないのであるから、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技を備えておらず、また、「高配当遊技」が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであるのかが明記されていないため「前記高配当遊技を行わせ」ておらず 、構成要件1hは、本件発明1と引用発明との相違点となる。

以上を整理すると、本件発明1と引用発明とは、
「複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機において、
前記特別遊技内部入賞態様およびこれに応じた前記特別遊技が発生すると、前記特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を抽選する継続回数抽選手段を備え、
前記遊技処理制御部は、前記特別遊技において、前記継続回数抽選手段によって抽選された回数の前記高配当遊技を行わせることを特徴とする遊技機。」 で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点1>
本件発明1では、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであるのに対して、引用発明では、その点が明記されていない点。

<相違点2>
本件発明1では、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備え、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技が発生したときに、前記所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に抽選する継続回数抽選手段を備えているのに対して、引用発明では、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えていない点(相違点2-1)、それにより、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に抽選していない点(相違点2-2)、抽選を行わない特別遊技を備えていない点(相違点2-3)、抽選を内部で行う時期が異なる点(相違点2-4)。

<相違点3>
本件発明1では、遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続回数抽選手段によって抽選された回数の前記高配当遊技を行わせているのに対して、引用発明は図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えていないため、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技を備えておらず、また、「高配当遊技」が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであるのかが明記されていないため「前記高配当遊技を行わせ」ていない点。

(4)本件発明1の進歩性の判断
<相違点1について>(構成要件1fの想到容易性について)
遊技機において、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであることは、例えば、甲2(特に、段落0024?0027、)、甲3(特に、段落0057?0061)、甲4(特に、段落0013、0014)、甲5(特に、段落0006?0009)、甲6(特に、段落0027?0031)に記載されているように周知技術である。
したがって、引用発明には高配当遊技がどのようなものかが明記されていないが、引用発明の高配当遊技に前記周知技術を採用して相違点1に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2について>(構成要件1gの想到容易性について)
1.相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-3について
相違点2-1、相違点2-2及び相違点2-3は、関連する相違点であるため、ここでまとめて検討をする。

遊技機において、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備え、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技のうち所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上とすることは、例えば、甲2(特に、段落0024)、甲11(特に、段落0044)、甲12(特に、段落0050、0058)に記載されているように周知技術である。
したがって、引用発明において、前記周知技術を採用して相違点2-1に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことであるが、予め決定している回数を抽選により決定することまでは周知技術ではないため、前記周知技術が相違点2-2に係る発明の構成を充足しないことは明らかである。

次に、甲10には図面とともに次の記載がある。
(テ)「【0023】図3(a)?(f)に示すように、表示画面15aには左図柄列30、中図柄列31及び右図柄列32の3つの表示列が表示される。各図柄列30,31,32は「0」から「9」までの数字図柄、及び「金貨」図柄によって構成されており(他の図柄であってもよい)、これら図柄が各図柄列30,31,32毎にスクロールされて表示画面15aに表示される。」

(ト)「【0026】これら図柄列30,31,32の図柄変動は遊技球が第1種始動口18へ入賞することに基づいて開始される。そして、変動が開始された後、大当たり図柄、外れリーチ図柄及び外れ図柄のうちから1つが選択され、停止図柄として設定される。本実施の形態では左図柄列30、右図柄列32、中図柄列31の順に停止させられる。」

(ナ)「【0029】ここに、大当たり状態とは、リーチ状態を経た後に大入賞口22が開放されて入賞が格段に増える状態で多くの賞球を獲得できる状態をいう。本実施の形態では各図柄列30,31,32の停止図柄が同一種類の場合(例えば「111」、「444」等)に大当たり状態となる。停止図柄のうち「7」はいわゆるラッキーセブンに由来してホール側の有利なサービスが受けられたり、パチンコ機も「7」で当たる場合には他の図柄で当たるよりも有利な遊技条件を設定するように制御することが多い。そのため、本実施の形態においては、「7」を特別図柄と称することとする。」

(ニ)「【0048】また、ROM41内部には図6に示すような大当たり以降次回の大当たりまでの間、遊技状態を時短モードとする(以下、このような利益を時短モードの獲得という)か否かを決定するためのテーブルT1が記憶されている。本実施の形態では、このテーブルT1の内容はアドレスnn?nn+4に格納されている。一方、CPU43は、乱数取り出し回路を備えており、ROM41内部に記憶された0?99までの数字を乱数値として任意に取り出す。なお、本実施の形態では、乱数値にかかわらず、大当たり図柄が「7」で揃った場合には、無条件で次回1回分の時短モードが獲得できるように設定されている。
【0049】さて、アドレスnnは、大当たり図柄が「7」で揃う場合に呼び出され、この目がでると0?99のいずれの乱数値が選択されても次回1回分の時短モードが獲得できる。つまり、大当たり図柄が「7」で揃った場合には、100パーセントの確率で、「7」で揃ったことによって無条件に付与される次回1回分の時短モード、及び乱数値によって時短モードが獲得されることによる次回1回分の時短モードの、計2回分の時短モードを獲得できる。
【0050】また、アドレスnn+1は、大当たり図柄が「1」「3」「5」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?74の乱数値が選択された場合に次回1回分の時短モードが獲得できるようになっており、当該時短モードを獲得できる確率は75パーセントである。
【0051】さらに、アドレスnn+2は、大当たり図柄が金貨図柄、「9」、「0」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?49の乱数値が選択された場合に次回1回分の時短モードが獲得できるようになっており、当該時短モードを獲得できる確率は50パーセントである。
【0052】併せて、アドレスnn+3は、大当たり図柄が「2」「6」「8」のいずれかの図柄が揃う場合に呼び出され、これらの目がでると0?24の乱数値が選択された場合次回1回分の時短モードが獲得できるようになっており、当該時短モードを獲得できる確率は25パーセントである。
【0053】加えて、アドレスnn+4は、大当たり図柄が「4」で揃う場合に呼び出され、この目がでると0?99のいずれの乱数値が選択されても時短モードを獲得することはできない(0パーセントの確率)。次に、このように構成されたパチンコ機の作用について説明する。」

甲10の上記(テ)?(ニ)の記載によると、大当たり図柄が揃った場合に大入賞口が開放された大当たり状態となり、大当たり図柄が「0」、「1」、「2」、「3」、「5」、「6」、「8」、「9」及び「金貨」の場合は、所定の確率で時短モードを獲得できるテーブルで抽選を行い、「4」の場合は、いずれの乱数値が選択されても時短モードを獲得することができず(0パーセントの確率)、「7」の場合は、いずれの乱数値が選択されても次回1回分の時短モードが獲得でき(100パーセントの確率)るように、大当たり以降に時短モードとなるかどうか抽選する遊技機が記載されている。
しかしながら、甲10に記載された発明は、複数ある大当たり図柄が揃った場合の大当たり状態(本件発明1の「図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技」に相当)は、大当たり図柄によって異なるものではなく、大入賞口が開放することであり、大当たり図柄によって異なるのは、大当たり以降に時短モードを獲得できるか否かの抽選確率であるため、本件発明1のように、図柄の組合せが互いに異なる複数ある特別遊技のうちの所定の特別遊技に対応して特別遊技中の遊技状態を変えるものではない。また、全ての大当たり図柄に対して抽選を行っており、抽選を行わない大当たり図柄を備えていない。
したがって、甲10には少なくとも相違点2-2、相違点2-3に係る発明の構成が記載されていないことは明らかである。

そして、相違点2-2、相違点2-3に係る構成により、本件発明1は、抽選を行う所定の特別遊技では、特別遊技が発生する度に抽選を行わない他の特別遊技において行える高配当遊技の回数以上の高配当遊技を行える可能性が生じることとなり、この結果、所定の特別遊技が発生したときには、必ず、他の特別遊技で得ることができると見込まれる最低限の利益が保証されると同時に、他の特別遊技で得ることができると見込まれる最低限の利益以上の利益をも得られるかもしれないという期待感が遊技者に付与されることにより、最低限の利益を保証しながら遊技者に期待感をも付与するという格別の効果を生じる。

2.相違点2-4について
甲7の段落0065には、「CT遊技の発生を決定するための入賞判定は、一般遊技のゲーム1回毎、BB遊技の発生または終了毎、及びRB遊技の発生または終了毎に行われるようにしてもよい。」と、甲8の段落0050には、「また、CTの発生条件として、上記のように予め入賞役として「CT付BB」を定めておくのではなく、BB遊技中やBB終了後、あるいは一般遊技中に別途CTを発生させるか否かの抽選を行うようにしてもよい。」と、甲9の段落0030には、「一方、確率テーブル抽選手段70の抽選タイミングは、本実施例ではスタートスイッチ20の操作に関連して抽選を行っている。スタートスイッチ20の操作時点は、特別遊技開始前、特別遊技開始時、特別遊技中、特別遊技終了時、特別遊技終了後のいずれでも良く、要するに特別遊技終了後、次回の一般遊技迄に確率テーブル60を抽選が完了していれば良い。」と、それぞれ記載されているとおり、遊技機において、遊技に関する種々の事項を決定するための抽選を行う時期として、種々の時期が考えられることは周知であり、内部での抽選の時期をどのような時期とするかは、決定する事項に応じて適宜決定し得る設計事項に過ぎない。そして、引用発明において、抽選を内部で行う時期を特別遊技が発生したときとすることによる効果も格別のものではない。
したがって、引用発明において、抽選を内部で行う時期を特別遊技が発生したときとして相違点2-4に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

以上のとおり、相違点2-2、相違点2-3に係る発明の構成は、甲2、甲10?12には記載されていないため、構成要件1gは当業者が容易に想到できない。

<相違点3について>(構成1hの想到容易性について)
上記<相違点2について>で検討したとおり、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えることは当業者が容易に想到し得ることであるから、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技を備えることも同様であり、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであることは<相違点1について>で検討したとおり当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、引用発明において、相違点3に係る発明の構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

以上によれば、構成要件1a?1f、1h及び1iを導き出すことは当業者にとって想到容易であるが、請求人の主張する理由及び提出した証拠によっては、構成要件1gを導き出すことは当業者といえども想到容易ではないから、本件発明1が引用発明及び甲2?12記載の事項に基いて当業者が容易に発明できたということはできない。

2.本件発明2について
(1)本件発明2の認定
本件発明2は、特許第3970511号の特許請求の範囲における請求項2の記載によって特定される、前記「第1 2.」の【請求項2】に示したとおりのものである。そして、請求人はこれを次のように分説している。

「2a.複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、
2b.遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、
2c.遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、
2d.乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、
2e.この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、
2f.前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなる高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機において、
2g.前記特別遊技内部入賞態様およびこれに応じた図柄の組合せが互いに異なる複数の前記特別遊技のうちの所定の特別遊技において、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に行なえる前記高配当遊技が終了したときに、さらに、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上に前記高配当遊技を行わせるか否かを抽選する継続抽選手段を備え、
2h.前記遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続抽選手段によって抽選された結果に応じて前記高配当遊技を行わせることを特徴とする
2i.遊技機。」

ここで、請求項2における「複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数」について、仮に抽選により決定する場合、「特別遊技のうちの所定の特別遊技において、・・・抽選する継続抽選手段」の技術的意義がなくなること、特許明細書には、予め定められた回数であることしか記載されていないこと、から、「他の特別遊技で行える回数」は抽選により決定するのではなく、予め定められたものであると解釈して、以下検討を進める。
また、請求項2における「複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に行なえる前記高配当遊技が終了したときに、さらに、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上」について、他の特別遊技で行える回数(発明の詳細な説明では2回)以上(発明の詳細な説明では2回又は3回)に行える「高配当遊技が終了したとき」に消化している「高配当遊技」が、他の特別遊技で行える回数であるのか、他の特別遊技で行える回数以上なのかが、必ずしも明らかではないが、特許明細書を参酌すると、その時点では他の特別遊技で行える回数であり、その時点で、さらに他の特別遊技で行える回数以上に高配当遊技を行わせるか否かを抽選しているため、そのように解釈して、以下検討を進める。

(2)請求人主張の進歩性欠如理由の要点
請求人は、本件発明2を上記のように分説した上で、構成要件2a?2e、2iは甲第1号証(以下、「甲1」と略記する。甲2?甲15についても同様。)に記載されている。甲1との相違点である構成要件2fは、甲2?甲6に記載のとおり周知技術であり、同じく甲1の相違点である構成要件2gは、甲13、14の記載、及び、甲2、甲11、甲12に記載のとおりの周知技術から、同じく甲1との相違点である構成要件2hは、甲13に記載されており、想到容易である。

(3)甲1記載の発明と本件発明2との対比
甲1には、図面と共に上記1.(3)の(ア)?(ツ)のとおりの記載がある。
そして、上記1.(3)で認定したとおり、甲1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている(A.?K.は分節のための記号である。)。

「A.複数の識別情報を表示した左中右の各リールを機械的駆動手段によって回転させる可変表示装置と、
B.オートモードに設定されていない場合には、クレジットゲームモードでは、押下されると、それぞれの賭ゲームのスタート条件が成立し、コインゲームモードでは、コイン投入後押下されると、投入コイン数に応じた賭ゲームのスタート条件が成立し、ゲームを開始し図柄変動が開始するスタートレバー12と、
C.遊技者が押圧すると、対応する左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が停止するように制御される各ストップボタン4L,4C,4Rと、
D.ゲームスタート条件が成立した場合には、乱数発生器105からそのときの乱数値Rを入力し、リール回転処理を開始し、CPU101は、ボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、ビッグボーナスフラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、入力されている乱数値Rを各判定値と比較する処理を行うCPU101と、各判定値として、ビッグボーナスゲーム当選の判定値、ボーナスゲーム当選の判定値、シングルボーナス当選の判定値、小役当選の判定値、集中突入当選の判定値、集中パンクの当選判定値およびリプレイ当選の判定値を備え、
E.CPU101は、 全リールが停止したか否かの判断をし、停止していない場合には、左中右のリール停止操作があったか否かの判断をし、遊技者がストップボタン4Lを押圧操作したことを検出すると、左リール停止フラグをセットし、遊技者がストップボタン4Cを押圧操作したことを検出すると、中リール停止フラグをセットし、遊技者がストップボタン4Rを押圧操作したことを検出すると、右リール停止フラグをセットし、
F.次に、CPU101は、左リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、左リール停止フラグをクリアして、中リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、中リール停止フラグをクリアし、右リール停止フラグがセットされているか否か判断し、セットされている場合には、リール停止処理を行って、右リール停止フラグをクリアし、全てのリールが停止すると入賞判定の処理に移行し、
G.CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合には、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、他のリールがまだ停止していない場合には、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合にはビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合には、その回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めてビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰り返し実行され、
H.CPU101は、他のリールが停止していると判断された場合には、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御を行い、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、その回のビッグボーナスゲームの開始を諦めて、小役当選フラグ、シングルボーナス(SB)当選フラグまたはリプレイ(RP)当選フラグがセットされていると判断した場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、まだ他のリールが停止していない段階では、小役当選フラグセット時にはセットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、シングルボーナス当選フラグセット時にはシングルボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、リプレイ当選フラグセット時にはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ない場合には、直ちにリールを停止させて処理を終了し、小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があると判断した場合には、その図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、他のリールが停止している段階では、有効ライン上に小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止している小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、その小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄を、停止しているリールの小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止表示する制御を行い、
I.CPU101は、乱数値Rがビッグボーナス当選判定値と一致した場合には、ビッグボーナス当選フラグをセットし、有効ラインにおいて「AAA」の組合せが成立した場合に、ビッグボーナスゲームを開始し、ビッグボーナスゲーム中において、有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合には、ボーナスゲームが発生し、ボーナスゲームは最大12回行われ、各ボーナスゲームのうち規定回JACの図柄が有効ライン上に揃うJAC入賞となるように制御し、ビッグボーナスゲームは所定回繰り返され、その間にボーナスゲームが最大3回発生するように制御するスロットマシンにおいて、
J.ビッグボーナス入賞があったときに、ルーレット部35の表示がなされ、停止位置は当選判定値に応じてあらかじめ決定されており、複数の扇形部分のうちの1つの部分が明るく表示され、かつ、明るい部分が変動していき、変動停止時の明るい部分の数字を、ボーナス回数カウンタにセットし、その数字がボーナスゲーム可能回数となり、
K.CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、セットされていると判断された場合には、ボーナス回数カウンタを「1」減算し、ボーナス回数カウンタが「0」であるか否か判断し、「0」でない場合にはJAC入賞フラグをクリアし、小役当選フラグ、シングルボーナス当選フラグおよびリプレイ当選フラグをクリアしてゲームスタート処理に戻り、「0」になっている場合には、ビッグボーナスゲームカウンタをクリアし、ビッグボーナスゲームフラグをクリアしてボーナス回数カウンタが「0」になった段階でビッグボーナスゲームが終了するスロットマシン」

引用発明の「複数の識別情報を表示した左中右の各リールを機械的駆動手段によって回転させる可変表示装置」は、
本件発明2の「複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部」に相当する。以下同様に、
「オートモードに設定されていない場合には、クレジットゲームモードでは、押下されると、それぞれの賭ゲームのスタート条件が成立し、コインゲームモードでは、コイン投入後押下されると、投入コイン数に応じた賭ゲームのスタート条件が成立し、ゲームを開始し図柄変動が開始するスタートレバー12」は、
「遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバー」に相当する。
「遊技者が押圧すると、対応する左可変表示部5L、中可変表示部5Cおよび右可変表示部5Rの図柄変動が停止するように制御される各ストップボタン4L,4C,4R」は、「遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタン」に相当する。
「ゲームスタート条件が成立した場合には、乱数発生器105からそのときの乱数値Rを入力し、リール回転処理を開始し、CPU101は、ボーナスゲームフラグがセットされているか否か判断し、ボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、ビッグボーナスフラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合には、入力されている乱数値Rを各判定値と比較する処理を行うCPU101」は、
「乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段」に相当する。
「CPU101は、乱数値Rがビッグボーナス当選判定値と一致した場合には、ビッグボーナス当選フラグをセットし」は、
「前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され」に相当する。
「有効ラインにおいて「AAA」の組合せが成立した場合に、ビッグボーナスゲームを開始し」は、
「この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ」に相当する。
「ビッグボーナスゲーム中において」は、
「この特別遊技において」に相当する。
「有効なライン上で「JAC」の図柄が揃った場合」は、
「所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると」に相当する。
「ボーナスゲーム」は、
「高配当遊技」に相当する。
「最大12回行われ」は、
「複数回の遊技の実行」に相当する。
「規定回JACの図柄が有効ライン上に揃うJAC入賞」は、
「予め定められた複数回の入賞」に相当する。
「最大3回発生する」は、
「複数回行われる」に相当する。
「CPU101」の機能の一部は、「遊技処理制御部」に相当する。
そして、「スロットマシン」は、「遊技機」に相当する。

また、引用発明では、「CPU101は、ビッグボーナスゲームフラグがセットされていない場合およびJAC入賞フラグがセットされていない場合には、ビッグボーナス当選フラグがセットされているか否か判断し、ビッグボーナス当選フラグがセットされている場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、他のリールがまだ停止していない場合には、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合にはビッグボーナス図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、現在の図柄番号から4図柄先以内にビッグボーナス図柄がない場合には、その回のゲームにおけるビッグボーナスゲームの開始を諦めて、実際にビッグボーナス図柄が有効ライン上に停止するまでその試みが繰り返し実行され、
CPU101は、他のリールが停止していると判断された場合には、有効ライン上にビッグボーナス図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、ビッグボーナス図柄を停止しているリールのビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止させる制御を行い、停止しているビッグボーナス図柄の有効ライン上に停止できるビッグボーナス図柄が4図柄先以内にないと判断された場合には、その回のビッグボーナスゲームの開始を諦めて、小役当選フラグ、シングルボーナス(SB)当選フラグまたはリプレイ(RP)当選フラグがセットされていると判断した場合には、他のリールが停止しているか否か判断し、まだ他のリールが停止していない段階では、小役当選フラグセット時にはセットされた小役当選フラグの種類に対応する小役図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、シングルボーナス当選フラグセット時にはシングルボーナス図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、リプレイ当選フラグセット時にはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ない場合には、直ちにリールを停止させて処理を終了し、小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があると判断した場合には、その図柄を有効ライン上に停止表示する制御を行い、他のリールが停止している段階では、有効ライン上に小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄があるか否か判断し、ある場合には、停止している小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止できる小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄が現在の図柄番号から4図柄先以内にあるか否か判断し、ある場合には、その小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄を、停止しているリールの小役図柄、シングルボーナス図柄またはリプレイ図柄の有効ライン上に停止表示する制御を行」っているのであるから、
本件発明2における「この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部」を備えているといえる。

よって、引用発明は構成要件2a?2e及び2iを備え、これらの点で本件発明2と一致する。

以上を整理すると、本件発明2と引用発明とは、
「複数の図柄が外周面に描かれた複数のリールを回転させることにより複数の図柄を可変表示する可変表示部と、遊技者の操作に応じて前記複数のリールを回転させる遊技開始レバーと、遊技者の操作に応じて前記複数のリールの回転を個々に停止させる前記複数のリールに対応して配置された複数の停止ボタンと、乱数抽選によって内部入賞態様を決定する入賞態様決定手段と、この入賞態様決定手段で決定された内部入賞態様および前記停止ボタンの操作に応じて前記可変表示部に停止表示する図柄を制御する停止制御部と、前記入賞態様決定手段で特別遊技内部入賞態様が決定され、この特別遊技内部入賞態様に応じた図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると特別遊技を発生させ、この特別遊技において、所定の図柄の組合せが前記複数のリールに停止表示されると発生して予め定められた複数回の入賞の発生または複数回の遊技の実行に基づいて終了する、高配当遊技が複数回行われると前記特別遊技を終了させる遊技処理制御部とを備えて構成される遊技機。」
で一致し、以下の各点で相違する。

<相違点4>
本件発明2では、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであるのに対して、引用発明では、その点が明記されていない点。

<相違点5>
本件発明2では、図柄の組合せが互いに異なる複数の前記特別遊技のうちの所定の特別遊技において、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に行なえる前記高配当遊技が終了したときに、さらに、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上に前記高配当遊技を行わせるか否かを抽選する継続抽選手段を備えているのに対し、引用発明では、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えておらず、それにより、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上に行なえる前記高配当遊技が終了したときに、さらに、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上に前記高配当遊技を行わせるか否かを抽選する継続抽選手段を備えていない点。

<相違点6>
本件発明2では、前記遊技処理制御部は、前記所定の特別遊技において、前記継続抽選手段によって抽選された結果に応じて前記高配当遊技を行わせているのに対して、引用発明では、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えていないため、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技を備えておらず、また、「高配当遊技」がどのようなものであるのかが明記されていないため「前記高配当遊技を行わせ」ていない点。

(4)本件発明2の進歩性の判断
<相違点4について>(構成要件2fの想到容易性について)
遊技機において、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであることは、例えば、甲2(特に、段落0024?0027、)、甲3(特に、段落0057?0061)、甲4(特に、段落0013、0014)、甲5(特に、段落0006?0009)、甲6(特に、段落0027?0031)に記載されているように周知技術である。
したがって、引用発明には高配当遊技がどのようなものかが明記されていないが、引用発明の高配当遊技に前記周知技術を採用して相違点4に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点5について>(構成要件2gの想到容易性について)
遊技機において、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備え、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技のうち所定の特別遊技において行える前記高配当遊技の回数を、複数の前記特別遊技のうちの他の特別遊技で行なえる回数以上とすることは、例えば、甲2(特に、段落0024)、甲11(特に、段落0044)、甲12(特に、段落0050、0058)に記載されているように周知技術である。
したがって、引用発明において、前記周知技術を採用して図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えることは当業者が容易になし得たことであるが、複数の前記特別遊技のうちの前記他の特別遊技で行なえる回数以上に前記高配当遊技を行わせるか否かを抽選することを含め構成要件2gにおけるその他の部分は周知技術ではないため、前記周知技術が相違点5に係る発明の構成を充足しないことは明らかである。

次に、甲13には、図面とともに次の記載がある。
(ニ)「【0001】【考案の属する技術分野】 本考案は、通常ゲーム及び特別ゲームに加え、1又は2以上の所定の賞の入賞の率が通常ゲームに比し高いこと以外は通常ゲームと同一内容である高入賞率ゲームを備える、スロットマシン等の遊技装置に関する。」

(ヌ)「【0026】3(当審注:丸囲みの数字))通常ゲームとは、別段の条件を要することなく行われ、複数の賞に入賞可能であるものを言い、
高入賞率ゲームとは、所定の高入賞率条件の下で行われ、複数の賞に入賞可能であり、そのうち1又は2以上の所定の賞の入賞の率が通常ゲームに比し高いこと以外は通常ゲームと同一内容であるものを言い、特別ゲームとは、所定の特別条件の下で通常ゲーム及び高入賞率ゲームとは異なる内容で行われ、通常ゲーム及び高入賞率ゲームに比し遊技者が得られる価値手段の量が大きいものを言う。通常ゲーム及び高入賞率ゲームにおいて入賞可能な賞として、特別ゲームを行うために入賞することを要する特別条件賞を含み、高入賞率ゲームにおける所定の賞は、特別条件賞以外の賞(例えば、所定量の価値手段[例えば十数枚又はそれ以下の遊技媒体としてのメダル]の獲得又は再遊技[次回もメダル投入なしで同じ条件で再ゲームできる]等の比較的利益の小さい賞[所謂小物]とすることができる。)である。」

(ネ)「【0044】 5(当審注:丸囲みの数字)-3 高入賞率ゲームの終了については、例えば、所定のゲーム回数又は獲得メダル枚数(獲得価値手段量)に達したことにより終了するものとすることや、特別ゲームを開始する賞の一部(例えば特別ゲームの一部がBBである場合、BBの全部若しくは一部)又は全部についての内部当りとなったことにより終了するものとすることや、終了抽選に当選(換言すれば、継続抽選に落選)することにより終了するものとすること(なお、このような終了抽選は、例えば、最初の高入賞率ゲーム又は所定ゲーム消化後のゲームから1又は2以上の所定ゲーム毎に行うものとすることができる。)、或いはこれら1又は2以上の組合わせ等が挙げられる。終了条件が異なる高入賞率ゲームを複数種設けることにより、遊技内容が一層豊富化し、遊技者の興味を強く引きつけることができる。特別ゲームを開始する賞の一部又は全部についての内部当り(特に、その内部当りがその特別ゲームを開始する賞に入賞するまで継続するものの場合)となったことにより終了するものとすれば、価値手段を少なくとも維持しつつ次の特別ゲームによる大量の価値手段獲得が約束されたものとなり、終了抽選の確率が低いか或いは前記所定のゲーム回数又は獲得メダル枚数が多ければ、より長く価値手段を維持しつつ次の特別ゲームによる大量の価値手段獲得をより大きく期待できるものとなる。
6(当審注:丸囲みの数字) なお、上記の各種抽選結果は、あたかもその時点において抽選が行われていると遊技者が思うような態様で遊技者に報知することが、遊技者の興趣をそそる上で効果的である。そのような態様の例としては、複数(好ましくは多数)のランプやLED等を順次点滅させて最後に当り位置で点灯させる態様(より具体的には、ルーレットのような表示態様)や、表示装置により表示される数字(又は文字若しくは図形)を連続的に変化させ、最後に当りの数字(又は文字若しくは図形)を表示させる態様等を挙げることができる。」

上記(ニ)及び(ネ)には、高入賞率ゲームの終了後さらにこの高入賞率ゲームを継続するか否かの継続抽選を行い、この継続抽選に当選すれば高入賞率ゲームがさらに継続されるものの、継続抽選に落選すれば高入賞率ゲームが終了するスロットマシンが記載されているが、高入賞率ゲームとは上記(ヌ)に記載されているとおり「所定の高入賞率条件の下で行われ、複数の賞に入賞可能であり、そのうち1又は2以上の所定の賞の入賞の率が通常ゲームに比し高いこと以外は通常ゲームと同一内容であるもの」であり、通常ゲームとは「別段の条件を要することなく行われ、複数の賞に入賞可能であるもの」である。
してみると、甲13には、所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなる高配当遊技を行わせるか否かを抽選する継続抽選手段は記載されていないため、甲13には相違点5に係る発明の構成が記載されていないことは明らかである。

さらに、甲14には、図面とともに次の記載がある。
(ノ)「【0022】パチンコ遊技機1の遊技盤2の盤面には、図1に示すように、ガイドレール3によって囲まれた遊技領域4が形成されており、遊技領域4の略中央部位置に可変表示ゲームを行うための可変表示装置(以下、特別図柄表示装置)5が設けられている。特別図柄表示装置5は、4インチサイズのTFT型LCDによって構成され、可変表示ゲームに伴う画像,キャラクタ,変動図柄等を表示する。なお、特別図柄表示装置5に用いる表示装置としては、本例におけるLCDに限らず、CRTからなる表示装置や、蛍光表示管またはLEDを用いた表示装置に置換することが可能である。
【0023】特別図柄表示装置5の上方位置には、普通図柄表示装置6が設けられ、特別図柄表示装置5の下方位置には、特別図柄表示装置5での可変表示ゲームにおいて、大当たり発生時にソレノイド等により駆動されて開放動作を行う変動入賞装置(大入賞口)7が設けられている。
【0024】変動入賞装置7は、後述する特別図柄始動口8への入賞タイミングに基づいて可変表示ゲームが行われた結果、特別図柄表示装置5に表示される図柄が特定のパターンとなって大当たりとなった場合、約29.8秒間の開放動作が最大16回継続して行われるものであり、遊技者に対して特別遊技(ボーナスゲーム)の機会を与え、遊技者に多くの賞球獲得の機会を与えるものである。なお、変動入賞装置7に遊技球がおおむね10個入賞した場合は、開放時間が約29.8秒以内であっても変動入賞装置7の開放動作は停止する。」

(ハ)「【0050】表示・サウンド制御装置32内の入出力ポート53を介して受信した指示用データは、表示・サウンド用CPU54の制御のもとでRAM56に記憶されることにより、可変表示ゲームにおける映像表示制御及びサウンド制御に関して役物制御回路31から独立して動作する。これによって、表示映像のストーリー展開及びキャラクタのアクションにマッチした音声,効果音等のきめ細やかな対応が可能となっている。」

(ヒ)「【0104】次に、新たなBGMが始まり、「ROUND n START」(nは、1?16までの数字でこれから開始されるラウンド数)の文字をBGMと共に1秒間だけ点滅表示し、ラウンド開始表示を行う(S62)(図25(b)参照)。続いて、役物制御回路31からの制御信号に基づいて大入賞口駆動ソレノイド49を励磁して変動入賞装置7を開放駆動する(S63)。そして、表示画面は、図25(c)に示すように、「捕虜」の両サイドを「ブレイズ」と「アクセル」とが守りながらパーティを組んだ状態で基地内通路を画面左側から右側へと移動していく。」

(フ)「【0106】次に、各ラウンド画面の表示を行う(S65)。このラウンド画面の表示では、奇数ラウンドでは、「ブレイズ」,「捕虜」,「アクセル」の順にパーティを編成し、偶数ラウンドでは、「アクセル」,「捕虜」,「ブレイズ」の順にパーティを編成する。すなわち、敵基地1F?8Fの基地内通路の前半部分は「ブレイズ」が先頭となり、後半部分は「アクセル」が先頭となる。但し、最終ラウンドだけは抽選で「ブレイズ」または「アクセル」が先頭となる。
【0107】そして、ラウンドの最終位置には、敵キャラクタが待ち伏せしており、ラウンド後半では、先頭キャラクタと敵キャラクタとの格闘となる。この格闘でのアクションは、リーチ時におけるアクションと異なり、変動入賞装置7内に入賞する入賞球の入賞タイミングに基づいて行われる。具体的には、入賞球に合わせて先頭キャラクタが敵キャラクタを1回殴るアクションを起こし、殴られた敵キャラクタは、一瞬左右にぐらぐらっと揺れるアクションを起こす。
【0108】そして、1ラウンド目は「ブレイズ」が先頭キャラクタとなって敵キャラクタと格闘し、後述するラウンドフラグが立っているか否かによって敵キャラクタとの勝敗を決定する。すなわち、図8におけるS14の処理で抽選された最大継続ラウンド数をN、現在のラウンド数をnとすると、ラウンド数nがN-1となったときにラウンドフラグが立ち、敵キャラクタが勝つようになっている。これは、先頭キャラクタが負けた時点で次ラウンドが最終ラウンドであることを遊技者に知らせるためである。
【0109】この各ラウンド画面の表示制御は時分割制御となっており、割り当てられた所定時間分の表示制御を行った後、変動入賞装置7内に10個の入賞があったか否かをカウントスイッチ45の入賞球検出に基づいてチェックし(S66)、また、変動入賞装置7の開放時間が29.8秒を経過したか否かをチェックする(S67)。すなわち、上記S66の判断処理で10個の入賞球を検出するまで、または、上記S67の判断処理で29.8秒経過するまでは各ラウンド画面の表示を行い、10個の入賞球を検出、または29.8秒経過後は、役物制御回路31からの制御信号に基づいて大入賞口駆動ソレノイド49を励磁して変動入賞装置7を閉鎖駆動する(S68)。
【0110】変動入賞装置7を閉鎖すると、続いて、パンクの有無、つまり、前ラウンドにおいて入賞球がVゾーンを通過したか否かをチェックし(S69)、パンクしていなければ、現在のラウンド数を示すnをインクリメントする(S70)。次いで、現在のラウンド数nが最大継続ラウンド数Nであるか否か、つまり、最終ラウンドであるか否かをチェックする(S71)。ここで、現在のラウンド数nが最大継続ラウンド数よりも前のラウンドである場合、続いて、現在のラウンド数nが最大継続ラウンド数の1つ前(N-1)であるか否かをチェックする(S72)。」

(ヘ)「【0119】なお、前述の実施形態では、役物制御回路31に、継続数決定手段(確率値格納手段及び継続数抽選手段),開放動作制御手段の機能を持たせることにより、最大継続ラウンド数を決定していたが、他にも役物制御回路31に、次動作決定手段,確率値格納手段,次動作抽選手段,計数手段,当選値設定手段,乱数生成手段の各機能を持たせることにより、以下に説明するような決定方法が実現できる。
【0120】すなわち、確率値格納手段内に、図29に示すような次ラウンドへ継続するための確率値を格納し、次動作決定手段によって変動入賞装置7の開放動作中または開放動作後毎に、次回の開放動作を行うか否かを決定することで、最大継続ラウンド数の決定を行うようにしてもよい。」

上記(ノ)?(ヘ)の記載によれば、甲14には、大当たり遊技中に行われるラウンドの継続を、変動入賞装置の開放動作後毎に、抽選により決定する弾球遊技機が記載されているが、当該抽選を行う大当たりと当該抽選を行わない大当たりとを備えていないし、ましてや、大当たりの種類に応じて他の大当たりで行えるラウンド回数を終了したときに、その回数以上のラウンドを行わせるか否かを抽選で決めることも記載されていないから、甲14には相違点5に係る発明の構成が記載されていないことは明らかである。

以上のとおり、相違点5に係る発明の構成は、甲2、甲11?甲14には記載されていないため、構成要件2gは当業者が容易に想到できない。

<相違点6について>(構成要件2hの想到容易性について)
上記<相違点5について>で検討したとおり、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技を備えることは当業者が容易に想到し得ることであるから、複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技を備えることも同様であり、高配当遊技が所定の内部入賞態様の入賞確率が高くなるものであることは<相違点4について>で検討したとおり当業者が容易に想到し得ることである。
しかしながら、<相違点5について>で検討したとおり、甲2、甲11?甲14の記載からは、図柄の組合せが互いに異なる複数の特別遊技のうちの所定の特別遊技において、継続抽選手段によって抽選することが容易に想到し得ないのであるから、その継続抽選手段によって抽選された結果に応じて高配当遊技を行わせることについても当業者が容易に想到し得ることではない。

以上のとおり、相違点6に係る発明の構成は、甲2、甲11?甲14には記載されていないため、構成要件2hは当業者が容易に想到できない。

3.本件発明3及び4について
本件発明3及び4は本件発明1又は2に、各々何らかの限定を加えた発明である。
よって、本件発明3及び4も、引用発明及び甲2?14号証に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

第4 むすび
以上のとおり、本件発明1?4の特許は、審判請求人が主張する理由及び証拠によっては、無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2010-09-03 
出願番号 特願2000-303812(P2000-303812)
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
登録日 2007-06-15 
登録番号 特許第3970511号(P3970511)
発明の名称 遊技機  
代理人 黒田 博道  
代理人 金木 章郎  
代理人 石井 豪  
代理人 薮 慎吾  

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