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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1225365
審判番号 不服2007-17628  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-25 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 特願2004-321095「光ディスク再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 5月25日出願公開、特開2006-134447〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I. 手続の経緯
本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という)は、平成16年11月4日の出願であって、平成19年1月26日付けで拒絶の理由を通知したところ、指定した応答期間内になんらの応答もなく、同年5月24日付けで、前記拒絶の理由により拒絶すべき旨の査定がされ、これに対して、同年6月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付で明細書等について手続補正がされたものである。
その後、平成21年12月11日付けで、前置報告書を利用した審尋をしたが回答はなかった。


II. 平成19年6月25日付け手続補正についての却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成19年6月25日付け手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.補正の内容及び目的
平成19年6月25日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、
(1)補正前、
「【請求項1】
光ディスクに記録された情報を光学的に読み出す光ピックアップを備え、光ディスクに記録された情報を再生する光ディスク再生装置において、前記光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第1のフォーカスエラーバランス変化手段と、前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのRF信号のレベルを測定するRFレベル測定手段と、前記RF信号のレベルを測定しているときにRF信号のレベルが最大値になったか否かを判定するRFレベル判定手段と、前記RF信号のレベルが最大値になったときにフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第2のフォーカスエラーバランス変化手段と、前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのジッタを測定するジッタ測定手段と、前記RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出するバランス調整値算出手段とを有し、前記算出されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項2】
光ディスクに記録された情報を光学的に読み出す光ピックアップを備え、光ディスクに記録された情報を再生する光ディスク再生装置において、前記光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号のバランスを変化させながらRF信号のレベルとジッタを測定し、前記RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出し、前記算出されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。
【請求項3】
前記システムコントローラは、光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第1のフォーカスエラーバランス変化手段と、前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのRF信号のレベルを測定するRFレベル測定手段と、前記RF信号のレベルを測定しているときにRF信号のレベルが最大値になったか否かを判定するRFレベル判定手段と、前記RF信号のレベルが最大値になったときにフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第2のフォーカスエラーバランス変化手段と、前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのジッタを測定するジッタ測定手段と、前記RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出するバランス調整値算出手段とを有することを特徴とする請求項2に記載の光ディスク再生装置。」
とあったものを、

(2)補正後、
「【請求項1】
光ディスクに記録された情報を光学的に読み出す光ピックアップを備え、光ディスクに記録された情報を再生する光ディスク再生装置において、
前記光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号のバランスをRF信号を増幅するためのRFアンプ内のゲイン調整器によりゲインを変化させることにより所定範囲変化させる第1のフォーカスエラーバランス変化手段と、
前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのRF信号のレベルを測定するRFレベル測定手段と、
前記RF信号のレベルを測定しているときにRF信号のレベルが最大値になったか否かを判定するRFレベル判定手段と、
前記RF信号のレベルが最大値になったときにフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第2のフォーカスエラーバランス変化手段と、
前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのジッタを測定するジッタ測定手段と、
前記RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出するバランス調整値算出手段とを有し、前記算出されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。」
としようとするものである。
すると、本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の第1のフォーカスエラーバランス変化手段について、「RF信号を増幅するためのRFアンプ内のゲイン調整器によりゲインを変化させることにより」と下線部のように限定するとともに、補正前の請求項2及び3を削除するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる、請求項の削除、及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)を補正後の請求項1に係る発明について、以下、検討する。

2.補正後発明
補正後の請求項1に係る発明(以下、「補正後発明」という。)は、前記1.(2)に、補正後の【請求項1】として記載したとおりのものである。

3.引用文献及びその記載
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-91978号公報(以下、「引用文献1」という。)には、フォーカスエラー信号生成回路に関する発明について、図面と共に以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フォーカスエラー信号生成回路に関し、特にCD(コンパクトディスク)プレーヤ等の光ディスク装置のサーボ系に用いて好適なフォーカスエラー信号生成回路に関する。」

(イ)従来の技術について
「【0003】このフォーカスサーボ系は、図4に示すように、ディスク101の信号情報を読み取るピックアップ102の出力に基づいて、フォーカスエラー信号生成回路103でフォーカスエラー信号を生成し、このフォーカスエラー信号を位相補償ドライブアンプ104で位相補償した後、ピックアップ102内のフォーカスアクチュエータにそのドライブ信号として供給する構成となっている。フォーカスエラー信号は、ディスク101の信号面が光学系の焦平面にあるときゼロ、信号面が対物レンズに近づくと負(又は、正)、信号面が対物レンズから遠ざかると正(又は、負)となるフォーカスの誤差信号である。
【0004】ここで、フォーカスエラー信号の生成について説明する。その生成法として例えば非点収差法を用いたフォーカスエラー信号生成回路103では、ピックアップ101の光検出器として、図5に示すように、受光面が4分割されたいわゆる4分割ディテクタ105を用い、受光面中心Oに関して対称な受光部105aの出力Aと受光部105cの出力C、受光部105bの出力Bと受光部105dの出力Dとをそれぞれ加算器106,107で加算し、さらに各加算出力A+C,B+Dを減算器108で減算することによってフォーカスエラー信号を生成する構成となっている。
【0005】この場合、4分割ディテクタ105の各受光部A?Dの感度にバラツキがあったり、回路自体にオフセットが存在したりすると、ディスクの信号面が光学系の焦平面にあるにも拘らず、フォーカスエラー信号にオフセット分が生じ、フォーカスエラー信号がゼロにならないことになる。この状態でフォーカスサーボを行うと、オフセット分だけ焦点ずれとなり、ディスクの信号情報を良好に読み取れないことになる。このため、フォーカスエラー信号生成回路には、オフセット分をキャンセルためにフォーカスバイアスを調整するバイアス調整回路が内蔵されている。」

(ウ)「【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態を示す回路図である。なお、本実施形態に係るフォーカスエラー信号生成回路には、図5に示す4分割ディテクタ105の受光部105a,105cの各出力A,Cの和の電圧信号Vaおよび受光部105b,105dの各出力B,Dの和の電圧信号Vbが与えられる。
【0017】図1において、電圧信号Vaは抵抗11を介してオペアンプ12の非反転入力となり、電圧信号Vbは抵抗13を介してオペアンプ12の反転入力となる。オペアンプ12は抵抗11,13、さらには反転入力端と出力端との間に並列に接続された抵抗14およびコンデンサ15と共に減算器構成のエラーアンプを構成している。オペアンプ12の非反転入力端には、抵抗16およびコンデンサ17の各一端が接続されている。抵抗16およびコンデンサ17の各他端には、バイアス電圧設定回路18で設定されたバイアス電圧Vbiasが印加される。オペアンプ12の出力電圧はフォーカスエラー信号Vfeoとして導出されるとともに、ウィンドウコンパレータ19に与えられる。
【0018】バイアス電圧設定回路18は、正側電源Vccに各一端が接続された6個の電流源21?26と、これら電流源21?26の他端に各一端が接続されかつ各他端が共通接続された6個のスイッチ27?32と、これらスイッチ27?32の各他端と負側電源Vccとの間に接続された電流源33と、スイッチ27?32の各他端に反転入力端が接続されかつ非反転入力端に電位Vcが与えられたオペアンプ34と、このオペアンプ34の反転入力端と出力端との間に接続された抵抗35とから構成され、オペアンプ34の出力電圧がバイアス電圧Vbiasとなる。
【0019】このバイアス電圧設定回路18において、電位Vcは、正側電源Vccおよび負側電源Veeの中間電位である。また、電流源21?26の各電流をI1?I6とし、電流源21の電流I1をIとした場合、電流源22?26の各電流I2?I6は、2I,4I,8I,16I,32Iの関係になるように設定される。さらに、電流源33の電流をI0とした場合、この電流I0は32Iの関係になるように設定される。」

(エ)「【0023】コントローラ20は、例えばマイクロコンピュータによって構成され、オフセット調整時には、ウィンドウコンパレータ19の比較出力FOH,FOLに基づいてバイアス電圧設定回路18のスイッチ27?32をスイッチング制御し、フォーカスバイアス調整時には、図示せぬRFアンプからRF信号を取り込んでその信号レベルに基づいてバイアス電圧設定回路18のスイッチ27?32をスイッチング制御する。RFアンプは、図5に示す4分割ディテクタ105の4つの出力信号A?Dの総和信号であるRF信号を増幅するアンプである。」

(オ)「【0035】次に、フォーカスバイアス調整について、図3のフローチャートにしたがって説明する。このフォーカスバイアス調整は、先述したように、オフセット調整が済んだ状態で実行される。
【0036】コントローラ20は先ず、RFアンプ(図示せず)の出力信号であるRF信号を取り込み(ステップS21)、このRF信号をA/D(デジタル/アナログ)変換する(ステップS22)。続いて、ピーク値を検出し(ステップS23)、この検出したピーク値が最大であるか否かを判断する(ステップS24)。ピーク値が最大であるか否かの判定は、例えば今回のピーク値を前回のピーク値と比較することによって行われる。
【0037】検出したピーク値が最大でなければ、バイアス電圧設定回路18のスイッチ27?32を適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧Vbiasの調整を行い(ステップS25)、しかる後ステップS21に戻ってピーク値が最大になるまで上述した処理を繰り返す。ここでのバイアス電圧Vbiasの調整は粗調整となる。この粗調整終了後、図示せぬジッタ計測回路の計測出力をモニタすることによってバイアス電圧Vbiasの微調整が行われる。【0038】すなわち、ジャストフォーカスのときにRF信号のジッタ量が最小となることから、RF信号のピーク値が最大になったら、さらにジッタ計測回路から計測したジッタを取り込み(ステップS26)、ジッタが最小であるか否かを判断する(ステップS27)。ジッタが最小でなければ、バイアス電圧設定回路18のスイッチ27?32を適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧Vbiasの微調整を行う(ステップS28)。この処理をジッタが最小になるまで繰り返す。
【0039】上述したように、オフセット調整が済み、フォーカスサーボが引き込まれることによって得られるRF信号を取り込み、このRF信号のピーク値が最大になるようにバイアス電圧Vbiasを粗調整し、さらにジッタ計測回路によって計測されたジッタを取り込み、このジッタが最小になるようにバイアス電圧Vbiasを微調整することにより、フォーカスバイアスが最適値になるように自動的に調整できる。
【0040】なお、上述したフォーカスバイアス調整の処理手順は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。また、ジッタ計測回路は、一般的に、RF信号の2値化信号であるEFM(Eight to Fourteen Modulation)信号を、PLLクロックを基準としてデジタル処理するDSP(Digital Signal Processor)回路に内蔵されており、RF信号のジッタを、例えばPLLクロックのエッジとEFM信号の変化点との時間差として計測する。
【0041】以上説明した本実施形態においては、バイアス電圧設定回路18を、フォーカスエラー信号Vfeoを生成するためのオペアンプ12の非反転入力端側に付加するとしたが、これに限定されるものではなく、オペアンプ12の反転入力端側あるいは反転、非反転の双方の入力端など、フォーカスバイアスを調整できる部位であれば良い。」

(カ)また、一実施形態を示す回路図である【図1】、フォーカスバイアス調整の場合の処理手順を示すフローチャートである【図3】を参照

以上の摘記事項及び図面を総合勘案し、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認める。

「ディスクの信号情報を読み取るピックアップを備えた光ディスク装置において、
ピックアップ102の出力に基づいて、フォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成回路103を備え、
前記フォーカスエラー信号生成回路には、4分割ディテクタの受光部の出力の電圧信号が与えられるオペアンプを有し、前記オペアンプの入力端には、バイアス電圧設定回路18で設定されたバイアス電圧Vbiasが印加され、オペアンプ12の出力電圧はフォーカスエラー信号Vfeoとして導出され、
例えばマイクロコンピュータによって構成されるコントローラ20を備え、
前記コントローラーは、フォーカスバイアス調整時には、先ず、RFアンプの出力信号であるRF信号を取り込み、このRF信号をA/D(デジタル/アナログ)変換し、ピーク値を検出し、この検出したピーク値が最大であるか否かを判断し、検出したピーク値が最大でなければ、バイアス電圧設定回路のスイッチを適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧の調整を行い、ピーク値が最大になるまで上述した処理を繰り返すバイアス電圧の粗調整を行い、この粗調整終了後、さらにジッタ計測回路から計測したジッタを取り込み、ジッタが最小であるか否かを判断し、ジッタが最小でなければ、バイアス電圧設定回路のスイッチを適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧の微調整を行い、ジッタが最小になるまで繰り返すものである、
光ディスク装置。」
(以下、「引用発明」という。)

(2)引用文献2
同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-187930号公報(以下、「引用文献2」という。)には、光ディスク再生装置におけるフォーカスバイアスの調整方法に関する発明について、図面と共に以下の記載がある。

(キ)「経験的にフォーカスバイアス信号FBの値を小さい方から次第にFB_(01)→FB_(02)→FB_(0)→FB_(03)→FB_(04)と変化させていくと、その再生信号RFの信号波形は略々第1図の曲線(26c)→曲線(26b)→曲線(26a)→曲線(26b)→曲線(26c)と変化することが分かっている。この場合、その再生信号RFのレベルを示すRFレベル信号RFLの値は略々RFLc→RFLb→RFLa→RFLb→RFLcと変化して、フォーカスバイアス信号FBがFB。となるときに最大となる。従って、このRFレベル信号RFLはフォーカスバイアス信号FBに対して第3図に示す如く、値FBoを中心として略左右対称で凸状となる。」(4頁左下欄2行?15行)

(ク)「このような立上りの時点の理想状態からのずれが再生信号RFの時間軸上での変動としてのジッタである。
従って、その再生信号RFのジッタ量は、2値化した信号の立上りの時点と理想状態の立上りの時点との間に存在するハイレベル「1」の信号(第2図B及びCの斜線部分に相当する。)を所定時間だけ積分してなる信号RFJで表わすことができ、この信号RFJをRFジッタ信号と称する。このRFジッタ信号RFJの値はフォーカスバイアス信号FBの値がFB_(1)のときに最小となるため、このRFジッタ信号RFJをフォーカスバイアス信号FBに対してプロットした曲線は第3図に示す如く、値FB_(1)を中心とじて略左右対称で凹状となる。
本例においては、フォーカスバイアス信号FBの値は、RFレベル信号RFLが最大となるときの値FB_(o)とRFジッタ信号RFJが最小となるときの値FB_(1)との
中間の値FB_(X)に設定する如くなす。従って、FB_(X)=(FBo+FB_(1))/2が成立する。
このように設定すれば、再生信号RFのレベルが略最大で且つ再生信号RFの時間軸上でのジッタ量が略最小となるので、再生信号RFの状態は最良になる利益がある。」(第4頁右下欄第11行?第5頁左上欄第14行)

3.対比
引用発明の「ディスクの信号情報を読み取るピックアップを備えた光ディスク装置」は、補正後発明の「光ディスクに記録された情報を光学的に読み出す光ピックアップを備え、光ディスクに記録された情報を再生する光ディスク再生装置」に相当する。
引用発明の「フォーカスエラー信号」は、ピックアップ102の出力に基づいて、生成するフォーカスエラー信号生成回路により生成されるものであるから、補正後発明の「光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号」に相当する。
引用発明において、前記フォーカスエラー信号は、4分割ディテクタの受光部の出力の電圧信号が与えられるオペアンプの出力電圧として導出されるところ、前記オペアンプの入力端には、バイアス電圧設定回路で設定されたバイアス電圧が印加されるので、前記「バイアス電圧設定回路」は、補正後発明の「フォーカスエラー信号のバランスを」「所定範囲変化させる第1のフォーカスエラーバランス変化手段」に相当する。
引用発明の「例えばマイクロコンピュータによって構成されるコントローラ」は、
「フォーカスバイアス調整時には、先ず、RFアンプの出力信号であるRF信号を取り込み、このRF信号をA/D(デジタル/アナログ)変換し、ピーク値を検出」するので、引用発明は補正後発明の「フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのRF信号のレベルを測定するRFレベル測定手段」を実質的に備えている。
同じく引用発明のコントローラは、「この検出したピーク値が最大であるか否かを判断し、検出したピーク値が最大でなければ、バイアス電圧設定回路のスイッチを適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧の調整を行い、ピーク値が最大になるまで上述した処理を繰り返すバイアス電圧の粗調整を行」うので、引用発明は補正後発明の「RF信号のレベルを測定しているときにRF信号のレベルが最大値になったか否かを判定するRFレベル判定手段」を実質的に備えている。
同じく引用発明のコントローラは、「この粗調整終了後、さらにジッタ計測回路から計測したジッタを取り込み、ジッタが最小であるか否かを判断し、ジッタが最小でなければ、バイアス電圧設定回路のスイッチを適宜スイッチング制御することによってバイアス電圧の微調整を行い、ジッタが最小になるまで繰り返す」ので、引用発明は補正後発明の、
「前記RF信号のレベルが最大値になったときにフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第2のフォーカスエラーバランス変化手段と、
前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのジッタを測定するジッタ測定手段と」を実質的に備えている。
引用発明の光ディスク装置が、調整されたバイアス電圧によりフォーカスサーボを行うことは自明であるから、補正後発明の「(調整)されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うシステムコントローラを備えた」「光ディスク再生装置。」の点で一致する。

以上のことからすると、引用発明と補正後発明とは、次の一致点で一致し、各相違点で相違する。

(一致点)
「光ディスクに記録された情報を光学的に読み出す光ピックアップを備え、光ディスクに記録された情報を再生する光ディスク再生装置において、
前記光ピックアップからのRF信号に含まれるフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第1のフォーカスエラーバランス変化手段と、
前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのRF信号のレベルを測定するRFレベル測定手段と、
前記RF信号のレベルを測定しているときにRF信号のレベルが最大値になったか否かを判定するRFレベル判定手段と、
前記RF信号のレベルが最大値になったときにフォーカスエラー信号のバランスを所定範囲変化させる第2のフォーカスエラーバランス変化手段と、
前記フォーカスエラー信号のバランスを変化させているときのジッタを測定するジッタ測定手段と、
(調整)されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク再生装置。」
である点。

(相違点1)
補正後発明は、「フォーカスエラー信号のバランスをRF信号を増幅するためのRFアンプ内のゲイン調整器によりゲインを変化させることにより所定範囲変化させる」としているのに対し、引用発明は、フォーカスエラー信号が導出されるオペアンプ入力にバイアス電圧を印加する点。

(相違点2)
補正後発明は、「RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出するバランス調整値算出手段とを有し、前記算出されたバランス調整値」により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うのに対し、引用発明は、算出手段の特定がなく、算出されたバランス調整値により得られたフォーカスエラー信号によりフォーカスサーボを行うことも特定されていない点。

4.判断
(1)相違点1について
光ディスク再生装置において、フォーカスエラー信号のいわゆるS字カーブ曲線が、基準電圧に対して、上下に非対称となり、バランスが崩れることを、RFアンプ内のゲインを調整することでバランスを調整することは、ごく周知のことである(例えば、特開2001-307332号公報(平成13年11月2日公開、【0003】、【0023】、【0025】等参照)、特開2002-25075号公報(平成14年1月25日公開、【0007】、【0025】、【図2】等参照))。
一方、例えば、特開2000-268375号公報(平成12年9月29日公開、【請求項4】、【請求項5】等参照)、特開2002-170258号公報(平成14年6月14日公開、【請求項1】、【0011】?【0012】【0051】、【0081】等参照)には、いずれも、フォーカスエラー信号にバイアス電圧を加えることで、フォーカスエラー信号のバランスを調整しようとするものが記載されている。
上記各周知例の記載からみて、フォーカスエラー信号についてのバランス調整手法として、フォーカスエラー信号へのバイアスの加算と、RFアンプ内のゲイン調整とは、いずれもよく知られた調整手段であることからすると、引用発明においても、バイアス信号を変化させる調整手段に代えて、RFアンプ内のゲイン調整手段を採用することでバランスを調整することは、当業者が容易に想到しうることである。

(2)相違点2について
引用文献2には、フォーカスバイアスを「フォーカスバイアス信号FBの値は、RFレベル信号RFLが最大となるときの値FB_(o)とRFジッタ信号RFJが最小となるときの値FB_(1)との中間の値FB_(X)に設定する如くなす。従って、FB_(X)=(FBo+FB_(1))/2が成立する。」のように設定することが記載されている。
引用文献1には、バイアス調整の処理が、実施例に限定されない記載もあり(【0040】参照)、図3のフローを参照すると明らかなように、マイコンで構成されるコントローラが、S24でRF信号の最大となるバイアス値と、S27で検出されるジッタが最小のバイアス値から、中間のバイアス値を算出するステップを追加することに特段、困難な事情もないことからすると、引用発明において、引用文献2に記載されるバイアス信号の設定値を取り入れて、「RF信号のレベルが最大値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値と前記ジッタが最小値であるときのフォーカスエラー信号のバランス調整値との中間のバランス調整値を算出するバランス調整値算出手段とを有し、前記算出されたバランス調整値によりフォーカスサーボを行う」ようにすることは、当業者が容易に想到しうることである。

また、上記各相違点を総合的に判断しても、補正後発明の奏する効果は、引用文献1及び2に記載された発明及び周知技術から当業者が予測しうるものにすぎない。
結局、補正後発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて、周知技術も参酌することで当業者が容易に発明をすることができたものである。

以上のとおりであるから、補正後の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.手続補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


III. 本願発明について
1.本願発明
平成19年6月25日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る各発明は、本願の願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「II.1.(1)」に補正前の【請求項1】として記載したとおりのものである。

2.引用文献及びその記載
これに対して原査定の拒絶理由で引用された引用文献及びその記載は、前記「II.3.引用文献及びその記載」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「II.2」以下で、検討した補正後発明から、第1のフォーカスエラーバランス変化手段の変化手段について、「RF信号を増幅するためのRFアンプ内のゲイン調整器によりゲインを変化させることにより」との限定を削除したものに相当する。
すると、本願発明を特定する事項を全て含み、さらに他の特定する事項を付加したものに相当する補正後発明が、前記「II.4.判断」に記載したとおり、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


IV. むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-30 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-09-01 
出願番号 特願2004-321095(P2004-321095)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 則之山澤 宏  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 酒井 伸芳
関谷 隆一
発明の名称 光ディスク再生装置  

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