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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1225412
審判番号 不服2008-28973  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-13 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 特願2002-341873「焦点検出装置の調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月24日出願公開、特開2004-177544〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年(2002年)年11月26日の出願(特願2002-341873号)であって、平成20年9月22日付けで手続補正がなされ、同年10月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年12月12日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について

[補正の却下の決定の結論]
平成20年12月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成20年9月22日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の、

「撮影レンズからの一対の光束をそれぞれ受光する一対の受光素子が配列された面を有する基板の傾きを、該基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに調整する焦点検出装置の調整方法において、
前記一対の受光素子の配列方向に沿った方向に離間する前記基板の前記面上の2箇所に平面状の光反射部を一対設け、
前記一対の光反射部に照射した光の反射光に基づいて、前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに前記基板の傾きを調整することを特徴とする焦点検出装置の調整方法。」から

「撮影レンズからの一対の光束をそれぞれ受光する一対の受光素子が配列された面を有するイメージセンサー基板の傾きを、該イメージセンサー基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに調整するカメラの焦点検出装置の調整方法において、
前記一対の受光素子の配列方向に沿った方向に離間する前記イメージセンサー基板の前記面上の2箇所に平面状の光反射部を一対設け、
前記カメラの製造段階で、前記イメージセンサー基板の前記一対の光反射部に照射した光の反射光に基づいて、前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに前記イメージセンサー基板の傾きを調整することを特徴とするカメラの焦点検出装置の調整方法。」と補正された。

そして、この補正は、本件補正前の請求項1において、
(1)「基板」を「イメージセンサ基板」とする補正事項、
(2)「焦点検出装置」について「カメラの焦点検出装置」であると限定して特定する補正事項、
(3)基板の傾きの調整がなされる時期(段階)について「カメラの製造段階」と限定して特定する補正事項、
を含むものである。
上記(1)ないし(3)の補正事項は、いずれも、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とする補正事項であるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。

2 独立特許要件違反についての検討
そこで、次に、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、平成20年12月12日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定されるものである。(上記「第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-311870号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。(後述の「イ 引用例1に記載された発明の認定」において発明の認定に直接関係する記載に下線を付した。)

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カメラ等に設けられる焦点検出装置、特に焦点検出領域からの光束を偏向して焦点検出素子に導くようにしたものに関する。」

「【0006】
【課題を解決するための手段】一実施の形態を示す図面に対応づけて説明すると、本発明は、撮影レンズLEの光軸LXから第1方向に第1距離だけ離間した第1焦点検出領域L(R)からの光束を、光軸LX側に所定の偏向角θで偏向して2分割する第1の光学系3L(3R),7と、撮影レンズLEの光軸LXから第2方向に第2距離だけ離間した第2焦点検出領域T(B)からの光束を2分割する第2の光学系3T(3B),7と、第1の光学系で2分割された光束を上記偏向角θに応じた角度でそれぞれ受光する一対の第1焦点検出素子9La,9Lb(9Ra,9Rb)と、第2の光学系で2分割された光束をそれぞれ受光する一対の第2焦点検出素子9Ta,9Tb(9Ba,9Bb)と、第1および第2焦点検出素子を同一面上に保持する保持手段9とを備えた焦点検出装置に適用される。そして、第2距離を第1距離よりも短くし、第2焦点検出領域T(B)からの光束を第1の光学系3L(3R)による偏向角よりも小さい偏向角で光軸側に偏向するか、あるいは全く偏向せずに2分割するよう第2の光学系3T(3B)を構成し、さらに保持手段9を第1方向の軸X回りに角度調整して装置本体5に固定するための角度調整機構5aを設け、これにより上記問題点を解決する。請求項2の発明は、上記第1方向を長方形の撮影画面Pにおける長辺方向とし、第2方向を上記撮影画面における短辺方向としたものである。
【0007】なお、本発明の構成を説明する上記課題を解決するための手段の項では、本発明を分かり易くするために実施の形態の図を用いたが、これにより本発明が実施の形態に限定されるものではない。
【0008】
【発明の実施の形態】図1?図6により本発明の一実施の形態を説明する。図3は本発明に係るカメラ(一眼レフカメラ)の概略構成図である。被写体からの光束は、レンズ鏡筒LB内の撮影レンズLEを透過してカメラボディCB内に導かれる。カメラボディCBに導かれた光束の一部は、半透過性のメインミラー51を透過し、サブミラー52にて下方に反射された後、焦点検出モジュール10へ入射される。CPU56は、焦点検出モジュール10の出力である焦点検出信号に基づいてレンズ駆動モータ57を駆動し、撮影レンズLEの焦点調節を行う。一方、メインミラー51で反射された光束はペンタプリズム54を介して接眼レンズ55にて観察される。
【0009】図1は焦点検出モジュール10の構造を示す分解斜視図、図2は撮影画面内の焦点検出領域を示す図である。本実施形態では、図2に示すように長方形の撮影画面P内に6の焦点検出領域を有する。そのうち中央光軸LXを中心として横方向に延在する領域CHと、光軸LXを中心として縦方向(領域CHと直交する方向)に延在する領域CVの2領域を光軸上領域と呼び、他の4領域を光軸外領域と呼ぶ。すなわち光軸外領域は、光軸LXから左方(第1方向:長辺方向)に離間し縦方向に延在する領域Lと、光軸LXから右方(第1方向:長辺方向)に離間し縦方向に延在する領域Rと、光軸LXから上方(第2方向:短辺方向)に離間し横方向に延在する領域Tと、光軸LXから下方(第2方向:短辺方向)に離間し横方向に延在する領域Bの4領域である。図から分かるように、上下の光軸外領域T,Bと光軸LXとの距離(第2の距離)は、左右の光軸外領域L,Rと光軸LXとの距離(第1の距離)よりも短くなっている。これらの焦点検出領域は、図1に示す焦点検出モジュール10の構造によって決定されるものである。
【0010】図1において、焦点検出モジュール10は周知の位相差検出方式にて焦点検出を行うもので、視野マスク1,赤外カットフィルタ2,フィールドレンズ3,迷光除去用遮光マスク4,折り返しミラー6,絞りマスク7,セパレータレンズ8およびイメージセンサチップ9がホルダ5に一体に保持されて成る。視野マスク1は、図示の如く光軸上領域CHおよびCVに対応する開口1Cと、光軸外領域T,B,L,Rにそれぞれ対応する開口1T,1B,1L,1Rとを有し、フィールドレンズ3および遮光マスク4は、それぞれ視野マスク1の開口に対応するレンズ3C,3T,3B,3L,3Rおよび開口部4C,4T,4B,4L,4Rを有する。フィールドレンズ3のレンズ3C,3T,3B,3L,3Rは、視野マスク1の開口1T,1B,1L,1Rから入射された光束を絞りマスク7に導く。その際、後述するようにその入射位置によっては光束を光軸LX側に偏向する。
【0011】図6の拡大図に示すように、絞りマスク7およびセパレータレンズ8は、それぞれ6つの焦点検出領域に対応する各一対の開口部7CHa,7CHb,7CVa,7CVb,7Ta,7Tb,7Ba,7Bb,7La,7Lb,7Ra,7Rbおよびレンズ8CHa,8CHb,8CVa,8CVb,8Ta,8Tb,8Ba,8Bb,8La,8Lb,8Ra,8Rbを有する。またイメージセンサチップ9は、同様に6つの焦点検出領域に対応するイメージセンサアレイ9CHa,9CHb,9CVa,9CVb,9Ta,9Tb,9Ba,9Bb,9La,9Lb,9Ra,9Rbを同一面上に保持する。絞りマスク7は各一対の開口によって各光束を2分割し、セパレータレンズ8に導く。
【0012】ここで、ホルダ5に設けられた左右一対の曲面5aは、イメージセンサチップ9との接着面を構成し、曲面とすることでイメージセンサチップ9のX軸(第1方向の軸)を回転中心とする傾き調整が可能となる。このような位置調整が必要な理由について以下に説明する。
【0013】 図4および図5は焦点検出モジュール10内の光束の状態を示す図である。便宜上、赤外カットフィルタ2,迷光除去用遮光マスク4および折り返しミラー6は図示を省略し、視野マスク1,フィールドレンズ3,絞りマスク7,セパレータレンズ8およびイメージセンサチップ9を一直線上に並べて図示した。また、フィールドレンズ3のレンズ3C,3T,3B,3L,3Rを通過し、絞りマスク7で2分割された各一対の光束を、それぞれrCHa,rCHb:rCVa,rCVb:rTa,rTb:rBa,rBb:rLa,rLb:rRa,rRbで表してある。
【0014】図4は光束を視野マスク1の開口部1Tから1Bに向かう方向に見たものである。絞りマスク7の開口7Laと7Lb,セパレータレンズ8のレンズ8Laと8Lbおよび光軸外領域Lに対応する一対の光束rLaとrLbは、それぞれ紙面と直交する方向に重なり合っている。同様に絞りマスク7の開口7Raと7Rb,セパレータレンズ8のレンズ8Raと8Rbおよび光軸外領域Rに対応する一対の光束rRaとrRbも紙面と直交する方向に重なり合っている。そして、光軸外領域L,Rからの光束はフィールドレンズ3のレンズ3L,3Rの光軸外側を通るため、分割された光束rLaとrLbおよび光束rRaとrRbは、それぞれ偏向角θで光軸LX側に偏向され、その偏向角θに応じた角度でイメージセンサアレイ9La,9Lb,9Ra,9Rbの受光面に斜めに入射する。
【0015】このように光軸外領域L,Rからの光束を光軸LX側に偏向させているため、領域L,Rが光軸LXから比較的離れていてもイメージセンサアレイ9La,9Lb,9Ra,9Rbを光軸LXに近づけて配置でき、イメージセンサチップ9の小型化が図れる。しかし、上述したように光束rLa,rLb,rRa,rRbがセンサアレイ9La,9Lbに斜めに入射することは避けられず、このような状況でセンサアレイ9La,9Lbが光束に対して図1のX軸を中心とする回転方向にも傾いてしまうと、「やぶにらみ現象」による焦点検出精度の悪化は無視できないほど大きくなる。そこで本実施形態では、センサチップ9、すなわちセンサアレイ9La,9LbのX軸回りの傾き調整を可能にし、「やぶにらみ現象」による焦点検出精度の悪化を最小限に抑えている。
【0016】上記傾き調整はカメラの製造段階で行われる。具体的には、センサチップ9をホルダ5の曲面5aに当て、焦点検出状態をモニタしながらチップ9をX軸回りに微少角度づつ回転させ、「やぶにらみ現象」による影響が最も小さくなる角度で接着する。
【0017】一方、図5は光束を視野マスク1の開口部1Lから1Rに向かう方向に見たものである。絞りマスク7の開口7Taと7Tb,セパレータレンズ8のレンズ8Taと8Tbおよび光軸外領域Tに対応する一対の光束rTaとrTbは、それぞれ紙面と直交する方向に重なり合っている。同様に絞りマスク7の開口7Baと7Bb,セパレータレンズ8のレンズ8Baと8Bbおよび光軸外領域Bに対応する一対の光束rBaとrBbも紙面と直交する方向に重なり合っている。この場合、光軸外領域T,Bからの光束は、フィールドレンズ3を構成するレンズ3T,3Bの光軸のほぼ中心付近を通過するため、光束rTa,rTbおよびrBaとrBbは内側に殆ど偏向されず、イメージセンサアレイ9Ta,9Tb,9Ba,9Bbの受光面にほぼ直角に入射する。
【0018】光束rTa,rTb,rBa,rBbを殆ど偏向させずに済むのは、上下方向の光軸外領域T,Bが左右方向の光軸外領域L,Rと比べて光軸LXに近い位置に設定されているため、光束を偏向させずともイメージセンサアレイ9Ta,9Tb,9Ba,9Bbを光軸LX近くに配置でき、チップ面積を増大させることがないからである。そして、上下方向は長方形の撮影画面における短辺方向であるから、上下方向の光軸外領域T,Bが左右方向(長辺方向)の光軸外領域L,Rと比べて光軸LXに近い位置に設定されていても配置上の問題はない。
【0019】このように光束rTa,rTb,rBa,rBbが殆ど偏向されずにセンサアレイ9Ta,9Tb,9Ba,9Bbの受光面にほぼ直角に入射するため、センサアレイ9Ta,9Tb,9Ba,9Bbが光束に対して図1のY軸(第2方向の軸)を中心とする回転方向に多少傾いたとしても、「やぶにらみ現象」による焦点検出精度の悪化は小さい。そのため本実施形態では、センサチップ9のY軸回りの傾きを調整する機構は設けられておらず、センサチップ9の両端をホルダ5の両曲面5aに当接させるだけで位置決めは完了する。したがって、センサチップ9をX軸,Y軸方向の双方に調整可能に構成する場合と比べて構成が簡単で済み、カメラの小型化およびコストダウンが図れる。
【0020】以上の実施形態において、光軸外領域L,Rが第1焦点検出領域を、光軸外領域T,Bが第2焦点検出領域を、フィールドレンズ3のレンズ3L,3Rおよび絞りマスク7が第1の光学系を、フィールドレンズ3のレンズ3T,3Bおよび絞りマスク7が第2の光学系を、イメージセンサアレイ9La,9Lb,9Ra,9Rbが第1焦点検出素子を、イメージセンサアレイ9Ta,9Tb,9Ba,9Bbが第2焦点検出素子を、センサチップ9が保持手段を、ホルダ5が装置本体を、曲面5aが角度調整機構をそれぞれ構成する。
【0021】なお以上では、第1方向を撮影画面の長辺方向とし、第2方向を撮影画面の短辺方向としたが、これに限定されるものではない。また角度調整機構の構成も実施形態に限定されない。」

【図1】には、焦点検出装置の構成を示す分解斜視図が記載され、【図6】には、図1の一部分を拡大して示す図が記載されており、【図1】及び【図6】から、軸Xが、センサアレイ(検出素子)9La,9Lbを保持するセンサチップ(保持手段)9の保持面に平行で、かつ、一対の検出素子であるセンサアレイの対9La,9Lbの配列方向に直交することが見て取れる。

イ 引用例1に記載された発明の認定
引用例1には、カメラの焦点検出装置の保持手段の傾き調整方法に関し、
「撮影レンズLEの第1焦点検出領域Lからの光束を2分割する第1の光学系3Lと、第1の光学系3Lで2分割された光束をそれぞれ受光する一対の第1焦点検出素子9La,9Lbと、第1焦点検出素子9La,9Lbを同一面上に保持する保持手段9とを備えたカメラの焦点検出装置に適用される保持手段9の傾き調整方法において、
保持手段9を、保持手段9の第1焦点検出素子9La,9Lbの保持面に平行で、かつ、第1焦点検出素子9La,9Lbの配列方向に直交する軸Xの回りに角度調整して装置本体5に固定するための角度調整機構5aを設け、
カメラの製造段階で、角度調整機構5aによって、「やぶにらみ現象」による焦点検出精度の悪化を最小限に抑えるように保持手段9、すなわち一対の第1焦点検出素子9La,9Lbの軸X回りの傾きを調整するカメラの焦点検出装置に適用される保持手段9の傾き調整方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

ウ 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-199794号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、露光装置および方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、露光装置として、例えばレンズ縮小投影露光装置は、露光ステージの上に載置された基板(シリコンウェハー)を1ショットずつステップ移動させて基板に割り当てられたショットにパターンを露光する。ここで、ショットとは1回の露光で照射される領域であり、例えば1枚の基板には64(=8×8)のショットが割り当てられている(図2参照)。
【0003】露光ステージに載置された基板は高温工程などのプロセス処理の影響で通常、伸縮している状態にあるので、ステップ移動させる基板のステップ量はその伸縮量に応じて設定される。このとき、伸縮量はショットに形成された位置検出マークの座標を例えば10ショット分統計処理することにより理論値との差から算出され、算出された伸縮量に基づいて全てのショットの座標が算出される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高温工程などのプロセス処理の影響により基板は単に伸縮するだけでなく、拡大して見るとうねっていたり傾いていたりする場合がある(図5参照)。従来では基板が傾いている状態であっても、そのまま位置検出マークの座標を測定していたので、伸縮量に誤差が生じていた。すなわち、図6に示すように測定される位置検出マークの座標には誤差(x/cosθ-x)が生じているので、そのままパータンを露光すると誤差分だけ合わせずれが生じてしまう。
【0005】そこで、本発明は、基板の伸縮量を算出してステップ移動させる際、合わせずれが生じることなくパターンを露光することができる露光装置および方法を提供することを目的とする。」

「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の露光装置および方法の実施の形態について説明する。本実施形態における露光装置はレンズ縮小投影露光装置に適用される。図1は実施の形態における露光装置の要部の構成を概略的に示す図である。露光装置は装置本体1、縮小投影レンズ4、露光ステージ5などから構成されている。また、装置本体1には全体を制御する制御部(図示せず)が設けられており、制御部は後述する伸縮量算出処理手順などの制御プログラムを実行して露光ステージ5をステップ移動させ、露光ステージ5に載置されたシリコンウェハーなどの基板6の上に縮小投影レンズ4を介してパターンを露光する。
【0010】図2は基板6の平面を示す図である。1枚の基板6には1回の露光で照射される領域を示すショットが8×8(=64)箇所に割り当てられている。また、この露光装置では光源7、振動子3、受光スリット2、オートフォーカスセンサ9、中継基板8などから露光ステージ5に載置された基板の傾き量を測定する傾き量測定機構が構成されており、光源7から基板6に向けて照射された光がオートフォーカスセンサ9で合焦するように露光ステージ5を上下に動かし、その移動量から後述するようにショットの傾き量θを測定する。露光ステージ5に載置されたシリコンウェハーなどの基板6は、前述したように高温工程などのプロセス処理の影響で伸縮していたり、傾いていたりするので、これらを考慮して露光ステージ5を移動させるステップ量を設定しなければならない。
【0011】図3は伸縮量算出処理手順を示すフローチャートである。まず、基板6に割り当てられた64ショットのうち任意の10ショットに形成された位置検出マーク16の座標xを測定する(ステップS1)。図5は位置検出マーク16が形成されたショットを示す図である。同図(A)はショットの平面を示し、同図(B)はその傾きを示す。
【0012】つづいて、位置検出マーク16の座標が測定されたショットの傾き量θを測定する(ステップS2)。図4はショットの傾き量θの測定手順を示すフローチャートである。ショットの中心Oから距離G離れた測定点a1、測定点a2をショットの隅に設定し(ステップS11)、設定された測定点a1の高さF1および測定点a2の高さF2を測定する(ステップS12)。光源7から設定された測定点a1、a2に向けて光を照射し、反射された光がオートフォーカスセンサ9で合焦するように露光ステージ5を上下に動かし、その移動量から測定点a1の高さF1および測定点a2の高さF2を測定する。 測定された高さF1、F2から1ショットの傾き量θを〔数1〕にしたがって算出する(ステップS13)。
【0013】
【数1】θ=tan-1((F1-F2)/2G)
【0014】つづいて、〔数2〕によりステップS1で測定された位置検出マークの座標xをステップ2で測定されたショットの傾き量θで補正する(ステップS3)。
【0015】
【数2】xa=x/θ-x
【0016】ここで、xはショットの傾き量θを補正する前の位置検出マーク16の座標であり、xaはショットの傾き量θを補正した後の位置検出マーク16の座標である。図6はショットの傾きおよびx、θの関係を示す図である。

(3)本願補正発明と引用発明の対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。

引用発明の「撮影レンズLE」、「2分割された光束」、「一対の第1焦点検出素子9La,9Lb」及び「保持手段9」が、それぞれ、本願補正発明の「撮影レンズ」、「一対の光束」、「一対の受光素子」及び「イメージセンサー基板」に相当するから、引用発明の「撮影レンズLEの第1焦点検出領域Lからの光束を2分割する第1の光学系3Lと、第1の光学系3Lで2分割された光束をそれぞれ受光する一対の第1焦点検出素子9La,9Lbと、第1焦点検出素子9La,9Lbを同一面上に保持する保持手段9とを備えたカメラの焦点検出装置」が、本願補正発明の「撮影レンズからの一対の光束をそれぞれ受光する一対の受光素子が配列された面を有するイメージセンサー基板」を備えた「カメラの焦点検出装置」に相当する。

引用発明の「保持手段9の第1焦点検出素子9La,9Lbの保持面に平行で、かつ、第1焦点検出素子9La,9Lbの配列方向に直交する軸X」が、本願補正発明の「イメージセンサー基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸」に相当するから、引用発明の「保持手段9を、保持手段9の第1焦点検出素子9La,9Lbの保持面に平行で、かつ、第1焦点検出素子9La,9Lbの配列方向に直交する軸Xの回りに角度調整」することが、本願補正発明の「イメージセンサー基板の傾きを、該イメージセンサー基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに調整する」ことに相当する。

引用発明の「カメラの製造段階で、角度調整機構5aによって、「やぶにらみ現象」による焦点検出精度の悪化を最小限に抑えるように保持手段9、すなわち一対の第1焦点検出素子9La,9Lbの軸X回りの傾きを調整する」ことと、本願補正発明の「前記カメラの製造段階で、前記イメージセンサー基板の前記一対の光反射部に照射した光の反射光に基づいて、前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに前記イメージセンサー基板の傾きを調整する」こととは、「前記カメラの製造段階で、前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに前記イメージセンサー基板の傾きを調整する」点で一致する。

イ 一致点
よって、本願補正発明と引用発明は、
「撮影レンズからの一対の光束をそれぞれ受光する一対の受光素子が配列された面を有するイメージセンサー基板の傾きを、該イメージセンサー基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに調整するカメラの焦点検出装置の調整方法において、
前記カメラの製造段階で、前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに前記イメージセンサー基板の傾きを調整するカメラの焦点検出装置の調整方法。」の発明である点で一致し、次の点で相違する。

ウ 相違点
イメージセンサー基板の傾きを、該イメージセンサー基板の前記面と平行で且つ前記一対の受光素子の配列方向に直交する軸回りに調整するに当たり、本願補正発明は、「前記一対の受光素子の配列方向に沿った方向に離間する前記イメージセンサー基板の前記面上の2箇所に平面状の光反射部を一対設け」、「前記イメージセンサー基板の前記一対の光反射部に照射した光の反射光に基づいて」当該調整を行うのに対して、引用発明においては、そのような限定がなされていない点。

(4)当審の判断
ア 上記各相違点について検討する。
引用例2には、「基板が傾いている状態であっても、そのまま位置検出マークの座標を測定していたので、伸縮量に誤差が生じていた。」(【0004】)、及び、「ショットの中心Oから距離G離れた測定点a1、測定点a2をショットの隅に設定し(ステップS11)、設定された測定点a1の高さF1および測定点a2の高さF2を測定する(ステップS12)。光源7から設定された測定点a1、a2に向けて光を照射し、反射された光がオートフォーカスセンサ9で合焦するように露光ステージ5を上下に動かし、その移動量から測定点a1の高さF1および測定点a2の高さF2を測定する。 測定された高さF1、F2から1ショットの傾き量θを〔数1〕にしたがって算出する(ステップS13)。」(【0012】)と記載されている。
一般に、平面上の離間する2箇所に(一対の)光反射部を設けて、当該一対の光反射部に照射した光に基づいて平面部材の傾きを調整(補正)することは、上記引用例2にも記載されているように周知の技術である。
引用発明においても、平面部材である保持手段9の傾きを調整するために、上記周知技術を適用し、上記相違点に係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願補正発明の奏する作用効果
そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。

ウ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3 むすび
したがって、本願補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるということができないから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成20年12月12日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年9月22日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項及び引用発明については、上記「第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(2)引用例」に記載したとおりである。

3 対比・判断
上記「第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」に記載したように、本願発明に対して、(1)ないし(3)の補正事項によって限定して特定したものが本願補正発明である。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、本願発明をさらに限定して特定したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成20年12月12日付けの手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(3)本願補正発明と引用発明との対比」及び「(4)当審の判断」において記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-04 
結審通知日 2010-08-10 
審決日 2010-08-30 
出願番号 特願2002-341873(P2002-341873)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 森林 克郎
岡田 吉美
発明の名称 焦点検出装置の調整方法  
代理人 永井 冬紀  
代理人 渡辺 隆男  

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