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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1225414
審判番号 不服2008-31537  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-11 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 特願2005-276447号「電源プラグの製造方法及び電源プラグ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年2月16日出願公開、特開2006-49330号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成8年4月5日に出願した特願平8-84354号の一部を平成17年9月22日に新たな特許出願としたものであって、平成20年7月15日付けの最後の拒絶理由に対して同年9月22日に手続補正がなされたが、平成20年11月4日付けで平成20年9月22日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年12月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成21年1月13日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成21年1月13日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年1月13日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項2は、次のように補正された。
「絶縁材料によって形成されたプラグ本体と、
上記プラグ本体に対して、コードが接続された基端部がその内部に支持されるとともに他端部が外方へと突出露呈され、プラグ本体の内部から外方へと露呈する根元の部位に亘る表面に、絶縁部材を一体に被覆することにより間隙充填部が形成された一対の接続端子とから構成され、
上記接続端子の間隙充填部は、上記接続端子の全周に亘って電源コンセントのプラグ接続口の内径寸法と略等しくなるように形成されるとともに、上記プラグ本体の内外に亘って形成され、上記接続端子が電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子の外周部とプラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填される電源プラグ。」(下線は当審で付与。以下、同様。)

2.補正の目的
本件補正は、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である接続端子について、「少なくとも一対」とあったところを「一対」と限定し、接続端子の間隙充填部について、「接続端子の全周に亘」ると限定するものであり、かつ、補正前の請求項2に記載された発明と補正後の請求項2に記載される発明は、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項2に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか。)について以下に検討する。

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭47-96416号(実開昭49-54094号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア)「1.考案の名称
安全カバー付電源プラグ
2.実用新案登録請求の範囲
電源プラグの真鍮に絶縁物を使用する
3.考案の詳細な説明
ソケットに差込み中又は抜き取り中にあやまって金属部分に接触し感電する事がある 特に主婦の水作業をしている時プラグをソケットに差込み又は抜き取る時の方が多くその為に金属の接触しない根本の部分に絶縁物を使用して感電を防ぐ
電源プラグをソケットに差込む時プラグの先端がソケットの中の真鍮部分に接触し、電流が流れる時のソケットと電源プラグとの空間があるので大人の指でも子人もの指でも電源プラグの持ち方によっては指が金属の部分に接触し感電する可能性がある これを防ぐ為に考案した」(明細書1ページ2?末行)
イ)「4.図面の簡単な説明
A 1/1図 真鍮部分の一方は断面図にしてあるプラグに絶縁物を使用した図
B 2/1図 真鍮部分にビニールコーティングをしそれから成形された電源プラグの断面
C 2/1図 金型にって真鍮部分の根本よりある一定の長さまで一体成形されたもの
D 2/1図 現在使用されている電源プラグに絶縁パイプを差込む.
図面の中の1は絶縁物」(同2ページ1?10行)
ウ)図面には、上記イ)の説明にあるとおりのものが記載されているが、その「A」図には電源プラグの全体図が示されており、電源プラグの本体部分から絶縁物で覆われた一対の真鍮部分が突出し、反対方向にはコードが伸びていることが示されている。また、「B」図をみると、符号1で示される部分がビニールコーティングであり、ビニールコーティングが真鍮部分の電源プラグの本体部分の内部から外方へ亘る部分に設けられ、真鍮部分にコードが接続されていることが示されている。さらに、「A」図及び「B」図からみて、電源プラグの本体部分は真鍮部分の基端部とコードをその内部に支持しているといえる。そして、考案の目的及び図面の記載からみて、絶縁物(ビニールコーティング)は真鍮部分の全周に亘って形成されているといえ、また、本体部分は絶縁材料で形成されているものといえる。

これら記載事項及び認定事項を総合し、本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「絶縁材料によって形成された本体部分と、
本体部分に対して、コードが接続された基端部がその内部に支持されるとともに外方へと突出し、本体部分の内部から外方へ亘る部分に、ビニールコーティングが形成された一対の真鍮部分とから構成され、
上記真鍮部分のビニールコーティングは、上記真鍮部分の全周に亘って形成されるとともに、上記本体部分の内外に亘って形成される電源プラグ。」

4.対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、機能または構造等からみて、後者の「本体部分」は前者の「プラグ本体」に相当し、後者の「真鍮部分」は前者の「接続端子」に相当する。また、後者の「真鍮部分」が「外方へと突出」することは、前者の「接続端子」が「他端部が外方へと突出露呈」することに相当する。そして、後者の「ビニールコーティング」は絶縁物でできており、真鍮部分を被覆したものであるから、前者の「絶縁部材を一体に被覆することにより」形成される「間隙充填部」と絶縁被覆部として共通する。また、その絶縁被覆部が形成される部分である、後者の「本体部分の内部から外方へ亘る部分」は、前者の「プラグ本体の内部から外方へと露呈する根元の部位に亘る表面」に相当する。

そこで、本願補正発明の用語を用いて表現すると、両者は次の点で一致する。
(一致点)
「絶縁材料によって形成されたプラグ本体と、
上記プラグ本体に対して、コードが接続された基端部がその内部に支持されるとともに他端部が外方へと突出露呈され、プラグ本体の内部から外方へと露呈する根元の部位に亘る表面に、絶縁部材を一体に被覆することにより絶縁被覆部が形成された一対の接続端子とから構成され、
上記接続端子の絶縁被覆部は、上記接続端子の全周に亘って形成されるとともに、上記プラグ本体の内外に亘って形成される電源プラグ。」

そして、両者は次の点で相違する。

(相違点)
絶縁被覆部が、本願補正発明では電源コンセントのプラグ接続口の内径寸法と略等しくなるように形成されるとともに、接続端子が電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子の外周部とプラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填される間隙充填部であるのに対し、引用発明では電源コンセントのプラグ接続口との関係が明らかでないビニールコーティングである点。

5.相違点の判断
電源プラグにおいて、接続端子の大きさ、形状は、接続端子が差し込まれる電源コンセントのプラグ接続口の大きさ、形状に基づいて、電源プラグの差し込みやすさ、抜けにくさ等を考慮して決定されるものである。また、引用発明のような接続端子のプラグ本体から露呈する部分の根本部に絶縁材料からなる被覆部を設けたものは、その被覆部も電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれるのであるから、被覆部の大きさ、形状も同じく、電源プラグの差し込みやすさ、抜けにくさ等を考慮して決定されるものである。そして、接続端子のプラグ本体から露呈する部分の根本部に絶縁材料からなる被覆部を設けたものにおいて、被覆部を電源コンセントのプラグ接続口の内径寸法と略等しくなるように形成するとともに、接続端子が電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子の外周部とプラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填されるようなものとすることは、実願昭50-100987号(実開昭52-14994号)のマイクロフィルム(3ページ4-8行、第2図参照)、実願昭53-33240号(実開昭54-135696号)のマイクロフィルム(2ページ4-10行、第1,3図参照)、特開昭55-119371号公報(2ページ左上欄15-19行、第1,3図参照)、実願昭58-156319号(実開昭60-64586号)のマイクロフィルム(実用新案登録請求の範囲、第1,2図参照)にも示されるように周知の事項である。
してみると、絶縁被覆部を電源コンセントのプラグ接続口の内径寸法と略等しくなるように形成するとともに、接続端子が電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子の外周部とプラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填される間隙充填部とすることは、設計的事項として当業者が容易に成し得たことと言わざるをえない。

そして、本願補正発明による効果も、引用発明及び周知の事項から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本件補正は、改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成20年6月30日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「絶縁材料によって形成されたプラグ本体と、
上記プラグ本体に対して、コードが接続された基端部がその内部に支持されるとともに他端部が外方へと突出露呈され、プラグ本体の内部から外方へと露呈する根元の部位に亘る表面に、絶縁部材を一体に被覆することにより間隙充填部が形成された少なくとも一対の接続端子とから構成され、
上記接続端子の間隙充填部は、電源コンセントのプラグ接続口の内径寸法と略等しくなるように形成されるとともに、上記プラグ本体の内外に亘って形成され、上記接続端子が電源コンセントのプラグ接続口に差し込まれた状態において、これら接続端子の外周部とプラグ接続口の内周壁との間に構成される間隙に充填される電源プラグ。」

第4 引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2 3.」に記載したとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、前記「第2 1.」の本願補正発明から、接続端子についての限定事項を省き、接続端子の間隙充填部について、「接続端子の全周に亘」るとの限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに、他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 5.」に記載したとおり、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-12 
結審通知日 2010-08-17 
審決日 2010-08-30 
出願番号 特願2005-276447(P2005-276447)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山下 寿信  
特許庁審判長 森川 元嗣
特許庁審判官 冨岡 和人
稲垣 浩司
発明の名称 電源プラグの製造方法及び電源プラグ  
代理人 伊賀 誠司  
代理人 小池 晃  
代理人 野口 信博  
代理人 祐成 篤哉  
代理人 藤井 稔也  

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