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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1225416 |
審判番号 | 不服2009-1150 |
総通号数 | 132 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2010-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-01-14 |
確定日 | 2010-10-14 |
事件の表示 | 特願2008-139905「段ボール箱」拒絶査定不服審判事件〔平成21年12月10日出願公開、特開2009-286425〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は,平成20年5月28日の出願であって,同年12月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに,同年1月27日付けで特許請求の範囲及び明細書を対象とする手続補正がなされたものである。 第2.原査定 原査定の拒絶理由は,以下のとおりのものと認める。 「この出願の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1;特開2005-212815号公報 2;特開2007-197081号公報 」 上記刊行物のうち,特開2007-197081号公報を,以下「引用例1」といい,特開2005-212815号公報を,以下「引用例2」という。 第3.平成21年1月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正の却下の決定の結論〕 平成21年1月27日付けの手続補正(以下「本件補正」という)を却下する。 〔理由〕 1.本件補正の概要 本件補正は,平成20年11月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書をさらに補正するもので,特許請求の範囲については,補正前に 「【請求項1】ケースを梱包する段ボール箱であって,前記ケースは,表面から突出した凸状リブを備えており,前記段ボール箱は,箱体の側面を形成する側板と,前記側板から延出し開閉可能なフラップとを備えており,前記フラップに,前記凸状リブと嵌合する切り取り部が形成されており,前記切り取り部は,緩衝材を介在させることなく,前記凸状リブに嵌合させるものであることを特徴とする段ボール箱。 【請求項2】前記切り取り部は切り欠きである請求項1に記載の段ボール箱。 【請求項3】前記切り取り部は穴である請求項1に記載の段ボール箱。 【請求項4】前記切り取り部の少なくとも1つにおいて,前記切り取り部と前記凸状リブとが当接する請求項1から3のいずれかに記載の段ボール箱。 【請求項5】前記切り取り部の少なくとも1つにおいて,前記切り取り部と前記凸状リブとの間に隙間が形成され,前記隙間を縮めるように,前記ケースが移動可能なときに,前記隙間は,前記ケースの移動範囲が前記ケースの外周部と前記段ボール箱の前記側板の内面とが当接を開始するまでの範囲内となる大きさである請求項1から3のいずれかに記載の段ボール箱。 【請求項6】前記ケースは,テープカートリッジを収納するケースである請求項1から5のいずれかに記載の段ボール箱。」 とあるのを,以下のとおりに補正するものである。 「【請求項1】ケースを梱包する段ボール箱であって,前記ケースは,表面から突出した凸状リブを備えており,前記段ボール箱は,箱体の側面を形成する側板と,前記側板から延出し開閉可能なフラップとを備えており,前記フラップに,前記凸状リブと嵌合する切り取り部が形成されており,前記切り取り部は,緩衝材を介在させることなく,前記凸状リブに嵌合させて,前記ケースの破損や変形を防止するためのものであることを特徴とする段ボール箱。 【請求項2】前記切り取り部は切り欠きである請求項1に記載の段ボール箱。 【請求項3】前記切り取り部は穴である請求項1に記載の段ボール箱。 【請求項4】前記切り取り部の少なくとも1つにおいて,前記切り取り部と前記凸状リブとが当接する請求項1から3のいずれかに記載の段ボール箱。 【請求項5】前記切り取り部の少なくとも1つにおいて,前記切り取り部と前記凸状リブとの間に隙間が形成され,前記隙間を縮めるように,前記ケースが移動可能なときに,前記隙間は,前記ケースの移動範囲が前記ケースの外周部と前記段ボール箱の前記側板の内面とが当接を開始するまでの範囲内となる大きさである請求項1から3のいずれかに記載の段ボール箱。 【請求項6】前記ケースは,テープカートリッジを収納するケースである請求項1から5のいずれかに記載の段ボール箱。」 請求項1の補正は,切り取り部について,「ケースの破損や変形を防止するためのものである」との限定を付したものであり,請求項2ないし請求項6は,記載自体に変更はないが,これらは請求項1を引用するものであるから,実質的に上記と同じ内容の補正がなされたといえる。そして,本件補正は,産業上の利用分野及び解決しようとする課題を変更するものではない。 したがって,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 2.刊行物記載事項 (1)本願の出願前に頒布された刊行物である引用例1には,図面とともに,次の事項が記載されている。 1a)「【請求項1】 磁気テープ巻回リールが内設される扁平体状のカートリッジの複数個を厚み方向に並置させてブロック状としたカートリッジ群を保持する区画室を複数個形成されたカートリッジ収納上ケースと,前記区画室と対向する位置に実質同じ形状の区画室が形成されたカートリッジ収納下ケースと,から成り,相互に係合する凸部と凹部とを備えた同一構造の前記上ケースと前記下ケースを重ね合わせて前記凸部と前記凹部とを係合することで内部に前記区画室の倍の広さの区画室が形成され,かつ前記区画室の形成された部位の前記上ケースおよび前記下ケースにおける外側形状がそれぞれ前記上ケースおよび前記下ケースから外側に突出する凸部形状となる四角枠部を備えたカートリッジ収納ケースを,内部に収納するための段ボール箱において, 前記段ボール箱が前記段ボール箱の内周にほぼ等しい形状に形成されかつ前記段ボール箱内に収納される緩衝用段ボールパッドを備えており,かつ前記緩衝用段ボールパッドには,前記段ボール箱内に水平状態に収納されたカートリッジ収納ケースの前記四角枠部に嵌合する穴が形成されていることを特徴とする段ボール箱。」 1b)「【0041】 本発明はかかる課題を解決するためになされたもので,段ボール箱が落下しても中の収納ケースが破損しないようにできる安全な段ボール箱を提供することを目的としている。」 1c)「【0044】 以下,本発明に係るカートリッジ収納ケースの好適な実施の形態について,図面を参照して詳細に説明する。 図1は段ボール箱に使用される本発明に係る緩衝用段ボールパッドを説明する図で,図の(1)は緩衝用段ボールパッドの平面図,(2)は下ケースの段ボールパッドを嵌め込む部位を説明する図で,(a)は側面図,(b)は正面図,(3)は下ケースに段ボールパッドを嵌め込んだ状態を示す図で,(a)は側面図,(b)は正面図,(4)は下ケースにカートリッジ収納した状態を示す正面図である。 【0045】 図の(1)において,300は緩衝用段ボールパッドで,緩衝用段ボールパッド300には収納ケースに突設された大きめの四角枠部53a(図5)と小さめの四角枠部53b(図5)の外周形状に等しい穴300a,300bが図で左右に1つずつ開けられている。 【0046】 図の(2)において,下ケース100dの底部には,大きめの四角枠部53aと小さめの四角枠部53bが図で左右に1つずつ形成されている。 この四角枠部53aと小さめの四角枠部53が図の(1)の緩衝用段ボールパッド300の四角枠部用穴300aと300bにそれぞれ嵌め込まれると,図の(3)のようになる。緩衝用段ボールパッド300の縦および横の寸法は下ケース100dの縦および横の最大寸法と同じとしてある。 【0047】 そして,図の(4)のように,緩衝用段ボールパッド300が嵌め込まれた状態の下ケース100dに,第1カートリッジ群C1と第2カートリッジ群C2が収納される。 【0048】 図2は下ケースを上ケースで覆う手順を示す図で,図の(5)において,上ケース100uが下ケース100uの上に被せられる。上ケース100uの底部にも大きめの四角枠部53aと小さめの四角枠部53b(図では紙面の向こう側にあるので見えない)がそれぞれ左右に1つずつ形成されている。 図の(6)で上ケース100uと下ケース100uが一体となった状態で,上ケース100uの四角枠部53aと小さめの四角枠部53bに図1の(1)の緩衝用段ボールパッド300の四角枠部用穴300aと300bがそれぞれ嵌め込まれると,図の(7)のようになる。 【0049】 図3は段ボール箱の落下時を説明する図で,図2の(7)のような収納ケースを段ボール箱に詰めた状態で,段ボール箱200を図の(8)のようにテーブル面や床面に水平に置いた場合は,収納ケース100は水平状態で置くと強度が保たれる設計にされているので問題ないが,(9)のように収納ケース100が垂直に落下した場合,その衝撃を衝撃吸収部であるフランジG3の部分の他に緩衝用段ボールパッド300でも受け止めるので,衝撃吸収部であるフランジG3の衝撃が1/2となり,また,先端部G1も衝撃の加速度で上下に大きく振れるところを緩衝用段ボールパッド300で支持されているので,大きな振れがなくなる。したがってその付け根部G2も大きな歪みを受けることがなくなる。」 上記記載事項1a?1c及び図面の記載によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という)が記載されているといえる。 「収納ケース100及び緩衝用段ボールパッド300を内部に収納する段ボール箱であって,収納ケース100は,外側に突出する四角枠部53a,53bを備えた上ケースと下ケースが重ね合わされて構成され,その内部にカートリッジ群を保持する区画室が形成されており,緩衝用段ボールパッド300は,上ケースと下ケースのそれぞれに対応して設けられ,四角枠部53a,53bに嵌合する穴300a,300bが形成された段ボール箱。」 (2)本願の出願前に頒布された刊行物である引用例2には,図面とともに,次の事項が記載されている。 2a)「【請求項1】 電気機器などの被梱包物を収納する為の梱包箱と緩衝材で構成する梱包材において,梱包箱の底面及び蓋面には内フラップを設けると共に該内フラップには貫通穴を形成し,一方,発泡スチロール等で所定形状に作った緩衝材には,被梱包物のコーナー又は側部が嵌まる凹部を設けると共に内フラップの面側には緩衝凸部を突出して形成し,緩衝凸部は梱包箱の内フラップに形成した貫通穴に隙間なく嵌まり,そして緩衝凸部の突出長さを内フラップの厚さより大きくすることで,梱包箱に収納した際の内フラップと緩衝材との間に隙間を介在したことを特徴とする梱包材。」 2b)「【0001】 本発明は電気機器などの製品を梱包する場合に使用する梱包箱及び該梱包箱に収容される緩衝材が位置ズレしないようにした梱包材,一方梱包材を用いて梱包される電気機器に関するものである。」 2c)「【0017】 そして,上側の蓋も対を成して設けられる内フラップ18,18と外フラップ19,19を有し,内フラップ18,18を先に折畳み,その後で外フラップ19,19が折畳まれて内部空間17が塞がる。底面の内フラップ18,18,及び蓋側の内フラップ18,18には貫通穴20,20・・が設けられている為に,梱包箱14に緩衝材2a,2b,3a,3bを各コーナーに配置してテレビ受像機1を収納する場合,これら緩衝材2a,2b,3a,3bに形成している緩衝凸部9a,9b,13a,13bは内フラップ18,18・・に形成した貫通穴20,20・・に嵌合することが出来る。」 2d)「【0019】 図4は前記図3の断面図を示しており,テレビ受像機1は緩衝材2a,2b,3a,3bにて各コーナーが支持され,そして緩衝材2a,2b,3a,3bに設けた緩衝凸部9a,9b,13a,13bは梱包箱14の内フラップ18,18・・に形成した貫通穴20,20・・に嵌合している。従って,緩衝材2a,2b,3a,3bは梱包箱14内で位置ズレすることはなく,定位置にてテレビ受像機1を安定して支えることが出来る。」 3.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「収納ケース100」及び「四角枠部53a,53b」は,それぞれ本願補正発明の「ケース」及び「凸条リブ」に相当する。引用発明の段ボール箱が側板及び側板から延出するフラップを備える通常の段ボール箱であることは明らかである。 したがって,本願補正発明と引用発明は,本願補正発明の表記にしたがえば, 「ケースを梱包する段ボール箱であって,前記ケースは,表面から突出した凸状リブを備えており,前記段ボール箱は,箱体の側面を形成する側板と,前記側板から延出し開閉可能なフラップとを備えている段ボール箱。」の点で一致し,次の点で相違する。 [相違点] 本願補正発明は,フラップに,凸状リブと嵌合する切り取り部が形成されており,前記切り取り部は,緩衝材を介在させることなく,前記凸状リブに嵌合させて,ケースの破損や変形を防止するためのものであるのに対して,引用発明は,そのような構成を備えていない点。 上記相違点について検討する。引用発明の緩衝用段ボールパッド300は,収納ケース100の四角枠部53a,53bに嵌合する穴300a,300bが形成されたものであるから,収納ケース100を段ボール箱内において所定の位置に安定して支持する作用を奏する部材であるといえる。一方,引用例2には,梱包箱(本願補正発明の「段ボール箱」に相当)に収容される緩衝材が梱包箱内で位置ズレしないように,梱包箱のフラップに形成した貫通穴(本願補正発明の「切り取り部」に相当)を緩衝材に形成された凸部に嵌合させることが記載されており(記載事項2a?2d参照),段ボール箱に収容される物を段ボール箱内において所定の位置に安定して支持するために,段ボール箱のフラップに形成した貫通穴を該収容物の凸部に嵌合させることが開示されているといえる。引用発明において,収納ケース100を段ボール箱内において所定の位置に安定して支持するための手段として,穴300a,300bを備えた緩衝用段ボールパッド300を用いる代わりに ,貫通穴を形成したフラップを利用することは,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。収納ケース100を段ボール箱内において所定の位置に安定して支持すれば,収納ケース100の破損や変形を防止できることは明らかである。以上のことから,上記相違点は,引用例2を参酌することにより,当業者が容易に想到し得たことである。 したがって,本願補正発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。 4.むすび 以上のとおりであるから,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第4.本願発明 本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は,平成20年11月19日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである(「第3」の「1.本件補正の概要」参照)。 第5.刊行物記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載事項は,前記「第3」の「2.刊行物記載事項」に記載したとおりである。 第6.対比・判断 本願発明は,本願補正発明から,前記「第3」の「1.本件補正の概要」に記載した限定を外したものである。 してみると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が,前記「第3」の「3.対比・判断」に記載したとおり,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由で当業者が容易に発明をすることができたものである。 第7.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 したがって,原査定は妥当であり,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-08-17 |
結審通知日 | 2010-08-19 |
審決日 | 2010-08-31 |
出願番号 | 特願2008-139905(P2008-139905) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 裕一 |
特許庁審判長 |
千馬 隆之 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 豊島 ひろみ |
発明の名称 | 段ボール箱 |
代理人 | 特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ |