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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) E04H
管理番号 1225421
審判番号 不服2009-2494  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-02-05 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 特願2006-154671「長屋風集合住宅」拒絶査定不服審判事件〔平成19年12月13日出願公開、特開2007-321493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は,平成18年6月2日の出願であって,平成20年11月4日付けで手続補正がなされたところ,同年12月25日付けで補正の却下の決定がなされるとともに拒絶査定がなされ,これに対し,平成21年2月5日に審判請求がなされたものである。
また,当審において,平成22年5月24日付けで拒絶理由通知がなされたところ,同年7月26日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は,平成22年7月26日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の住戸を互いに近接させて配置し、各住戸の片側に、当該住戸の一部が住戸奥行き方向の一部について突出した形状の平屋建ての住戸突出部を配置し、その屋上部分をルーフバルコニーとし、かつ前記住戸突出部と隣接する住戸をエキスパンションジョイントによって接続して一体の集合体を構成し、前記住戸突出部の住戸奥行き方向前方部分に空域部を設け、中庭または駐車場としてなることを特徴とする長屋風集合住宅。」
(以下,「本願発明」という。)

3.引用刊行物とその記載
刊行物1:特開2005-120641号公報
刊行物2:特開2002-295030号公報

(1)当審における拒絶理由で引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物1には,図面とともに,以下の記載がある。
(1a)「【請求項1】
公道に接道している1区画の土地に複数個の住戸を並べて建設し,相隣る住戸の外壁,屋根材を分離可能な構造で連結することにより,1棟の建物として登記され,かつ各住戸毎に区分所有される長屋建物。
【請求項2】
前記住戸の基本性能が各住戸毎に確保される請求項1に記載の長屋建物。
【請求項3】
前記住戸の構造体を基礎に分離可能な構造でボルト接合し,相隣る住戸の連結は各住戸が構造耐力上自立できるようにエキスパンジョイントによる分離可能な構造でボルト接合する請求項2に記載の長屋建物。
・・・」(特許請求の範囲)
(1b)「(b)長屋建物の建設後の事情変化により,新たな土地に戸建て住宅を建設しようとするときには,長屋建物の一部の住戸を他の住戸から分離解体して新たな土地に移築,更に必要であれば増築できる。各住戸が外壁,屋根材を有しているから,1住戸毎の移築は容易である。長屋建物の残存住戸についても,建築規準法上要求される界壁の防火性能及び遮音性能が各住戸の外壁により確保されるため,別途長屋としての改装を必要とされない。・・・」(段落【0012】)
(1c)「図1の長屋建物10は,公道に接道している1区画の土地(敷地)に複数個の住戸A,B,Cを並べて連設したものである。」(段落【0017】)
(1d)「長屋建物10は,・・・各住戸A,B,Cの構造耐力を分離するため,各住戸A,B,Cの変位が互いに伝わらないように各住戸A,B,Cを接続する必要があり,各住戸A,B,Cの構造体11を各住戸A,B,C毎の基礎21に分離可能な構造でボルト接合する。更に,相隣る住戸A,B,Cの連結は,各住戸A,B,Cが構造耐力上自立できるようにエキスパンジョイント22による分離可能な状態でボルト接合する。」(段落【0020】)

以上の記載事項(1a)?(1d)から見て,刊行物1には,以下の発明が記載されているものと認められる。(以下,「刊行物1記載の発明」という。)

「複数個の住戸を並べて建設し,相隣る住戸がエキスパンジョイントによる分離可能な構造でボルト接合される長屋建物。」

(2)当審における拒絶理由で引用され,本願出願前に頒布された上記刊行物2には,図面とともに,以下の記載がある。
(2a)「【請求項1】公道(以下,公道とは,建築基準法上要求される幅4メートル道路のことをいう。)に接道している一筆乃至数筆の土地上に,外観上は数個の独立した戸建て建物ではあるが,各建物の1階部分の境界壁の一部をそれぞれ倉庫(トランクルーム)で連結することにより,U字型の1棟の建物として建設し,戸建て建物の外観を有する各建物について,建物の区分所有等に関する法律第2条の区分所有権と敷地利用権を分譲販売する方法
【請求項2】公道に接道している一筆乃至数筆の土地上に,外観上は数個の独立した戸建て建物ではあるが,各建物の1階部分の境界壁の一部をそれぞれ倉庫(トランクルーム)で連結することにより,I字型の1棟の建物として建設し,戸建て建物の外観を有する各建物について,建物の区分所有等に関する法律第2条の区分所有権と敷地利用権を分譲販売する方法
・・・」(特許請求の範囲)
(2b)「また、各戸建て建物の外観を有する建物は、倉庫(トランクルーム)によって連結されることになるが、倉庫(トランクルーム)以外の各戸建て建物の外観を有する建物間のスペースは、普通乗用自動車が2台程度入庫可能な駐車場として、使用されるのが好ましい。」(段落【0013】)
(2c)「更に,外観上は戸建て住宅であり,新たに建築するものであることから,次のような効果が生じる。すなわち,間取りに制限はない,各戸において4面自然採光が可能となる,各戸の何処にでも採光用・換気用窓の設置が可能という,従前のマンションや長屋の分譲では不可能であった効果が生じる。」(段落【0040】)

4.対比
本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると,刊行物1記載の発明の「相隣る住戸」,「エキスパンジョイント」,及び「長屋建物」が,本願発明の「隣接する住戸」,「エキスパンションジョイント」,及び「長屋風集合住宅」にそれぞれ相当している。また,刊行物1記載の発明も,相隣る住戸がエキスパンジョイントで接合され,一体となっていることは明らかであるから,刊行物1記載の発明の「相隣る住戸がエキスパンジョイントによる分離可能な構造でボルト接合される」が,本願発明の「隣接する住戸をエキスパンションジョイントによって接続して一体の集合体を構成し」に相当する。

よって,両者は,
「複数の住戸を互いに近接させて配置し,隣接する住戸をエキスパンションジョイントによって接続して一体の集合体を構成してなる長屋風集合住宅。」
である点で一致し,以下の点で相違している。

(相違点)
本願発明は,各住戸の片側に,当該住戸の一部が住戸奥行き方向の一部について突出した形状の平屋建ての住戸突出部を配置し,その屋上部分をルーフバルコニーとし,前記住戸突出部の住戸奥行き方向前方部分に空域部を設け,中庭または駐車場としてなるのに対して,刊行物1記載の発明は,そのような住戸突出部及び空域部を設けていない点。

5.判断
各住戸の片側に、当該住戸の一部が住戸奥行き方向の一部について突出した形状の住戸突出部を配置した住戸の集合住宅は,例えば,当審における拒絶理由で例示した,特開2000-104411号公報,日本建築学会 編集,「建築設計資料集成6 建築-生活」,丸善株式会社,昭和54年10月15日,p24「住戸平面形とその集合(2)」,p26「ラ ピエールフィット」,p27「庭代台タウンハウス(大阪府泉北ニュータウン)」に開示されるように,従来周知の技術である。
また,刊行物2には,隣接する住戸間の一階部分のみを倉庫で連結し,各住戸において4面自然採光を可能とし,かつ各住戸の何処にでも採光用・換気用窓の設置を可能としたU字型,又はI型の建物が開示されており,さらに,ルーフバルコニー自体は慣用技術である。
さらに,住戸突出部の住戸奥行き方向前方部分に空域部を設け,中庭または駐車場とすることは,刊行物2(上記記載事項(2b)参照)や当審における拒絶理由で例示した,上記特開2000-104411号公報(特に,図3,図14?16参照)等に記載されているように,周知の技術である。
したがって,刊行物2記載の発明及び周知・慣用技術を刊行物1記載の発明に適用して,明るく開放的な居住空間を提供するため,住戸の一部が住戸奥行き方向の一部について突出した形状の平屋建ての住戸突出部を配置し、その屋上部分をルーフバルコニーとし、前記住戸突出部の住戸奥行き方向前方部分に空域部を設け、中庭または駐車場とすることは,当業者が容易になし得たことである。
そして,本願発明の効果は,刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の発明,並びに周知・慣用技術から予測することができる程度のことである。

一方,請求人は平成22年7月26日付け意見書において,「なお、請求項1の記載からも明らかなように、本願発明における『住戸突出部』はあくまで『住戸の一部』であり、・・・刊行物2記載の発明のように、間に『倉庫』を介在させたものとは機能面においても根本的に異なります。」と主張しているが,本願発明と刊行物2記載の発明はいずれも突出部が戸建て建物の一部である点では共通しており,該突出部を住戸として使用するか,倉庫として使用するかは単に使用形態の相違にすぎない。また,突出部を住戸として使用することは,例えば,当審における拒絶理由で例示した,特開2000-104411号公報,日本建築学会 編集,「建築設計資料集成6 建築-生活」,丸善株式会社,昭和54年10月15日,p24「住戸平面形とその集合(2)」,p26「ラ ピエールフィット」,p27「庭代台タウンハウス(大阪府泉北ニュータウン)」に開示されるように,従来周知の技術であることは,上記で検討したとおりである。
よって,請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1記載の発明,刊行物2記載の発明,及び周知・慣用技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,本件は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-10 
結審通知日 2010-08-17 
審決日 2010-08-30 
出願番号 特願2006-154671(P2006-154671)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (E04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 草野 顕子
伊波 猛
発明の名称 長屋風集合住宅  
代理人 久門 知  
代理人 久門 享  

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