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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1225438
審判番号 不服2009-19600  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-14 
確定日 2010-10-14 
事件の表示 特願2006-200624「画像形成装置及び画像形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 2月 7日出願公開、特開2008- 26699〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成18年7月24日の出願であって、平成21年7月6日付で拒絶査定がなされたものであり、これに対し、同年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。
さらに、平成22年2月15日付で審尋がなされたところ、審判請求人から同年4月13日付で回答書が提出されたものである。

2.平成21年10月14日付の手続補正についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】
平成21年10月14日付の手続補正を却下する。

【理由】
2-1.補正の概要
平成21年10月14日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成20年7月29日付手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の

(1)「 【請求項1】
画像形成すべき記録媒体を搬送する搬送部と、
中間転写ベルトに各色のトナーを付着させたトナー像を形成し、前記搬送される記録媒体へ転写してカラー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成するカラー画像の調整用に呈される画像調整パターン画像に係る画像データを格納する記憶部と、
予め定められた条件に基づいて画像調整を開始するか否かを判定し、画像調整を開始すると判定した場合、前記記録媒体への画像形成と前記画像形成部の画像調整を制御するための画像形成指示情報の印刷パターン種別に画像調整パターンを指示するとともに、画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定し、前記画像形成部で記録媒体上に順次画像を形成する連続印刷時の当該画像形成に係る前記中間転写ベルト上の複数のトナー像間領域に亘って、前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別に対応する前記記憶部に格納される画像データに基づいて前記画像調整パターン画像を分割した画像調整用のトナー像を順次形成して、前記画像形成部で記録媒体上に形成するカラー画像の調整を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」



(2)「 【請求項1】
画像形成すべき記録媒体を搬送する搬送部と、
中間転写ベルトに各色のトナーを付着させたトナー像を形成し、前記搬送される記録媒体へ転写してカラー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成するカラー画像の調整用に呈される画像調整パターン画像に係る画像データを格納する記憶部と、
予め定められた条件に基づいて画像調整を開始するか否かを判定し、画像調整を開始すると判定した場合、前記記録媒体への画像形成と前記画像形成部の画像調整を制御するための画像形成指示情報の印刷パターン種別に画像調整パターンを指示し、パターンの分割がある際に、形成すべき分割されたパターンの開始番号と終了番号を前記画像形成指示情報の分割パターン番号に指示し、分割パターンの種別を前記画像形成指示情報の分割パターン種別に指示し、画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定し、前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号と前記分割パターン種別とに基づいて当該分割パターンを選択して前記画像形成部で記録媒体上に順次画像を形成する連続印刷時の当該画像形成に係る前記中間転写ベルト上の複数のトナー像間領域に亘って、前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別に対応する前記記憶部に格納される画像データに基づいて前記画像調整パターン画像を分割した画像調整用のトナー像を順次形成して、前記画像形成部で記録媒体上に形成するカラー画像の調整を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」

と補正しようとする補正事項が含まれている。(下線は補正箇所。)

本件補正は、
補正前の請求項1記載の「画像調整パターンを指示するとともに、画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定し、」の画像形成指示情報の設定のしかたについて、「画像調整パターンを指示し、『パターンの分割がある際に、形成すべき分割されたパターンの開始番号と終了番号を前記画像形成指示情報の分割パターン番号に指示し、分割パターンの種別を前記画像形成指示情報の分割パターン種別に指示し』、画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定し、」に限定補正し、更に、『前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号と前記分割パターン種別とに基づいて当該分割パターンを選択して』に限定補正するものである。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2-2.引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2001-109219号公報(原査定の引用文献1。以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(1a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真方式のカラーのプリンターや複写機などカラー画像形成装置に関し、特にその濃度制御および階調制御に関するものである。」

(1b)「【0002】
【従来の技術】従来の画像形成装置の一例として、電子写真方式のカラー画像形成装置を図7に示す。以下、図に沿って説明する。
【0003】本画像形成装置は、像担持体であるドラム状の電子写真感光体、すなわち感光ドラム1を有し、感光ドラム1は図示しない駆動手段により図中矢印方向に回転駆動され、その回転過程で一次帯電器(帯電ローラ)2により表面が一様に帯電される。ついで露光装置(レーザースキャナ)3により第1色目のたとえばイエローの画像パターンに従ったレーザー光が照射され、感光ドラム1の表面に第1色目の静電潜像が形成される。
【0004】感光ドラム1上に形成された潜像は、感光ドラム1の回転にともない、予め感光ドラム1に対向されているイエロートナーの入った現像器4yにより現像され、イエロートナー像として可視化される。現像器4y、4m、4c、4kは回転支持体(ロータリードラム)5に支持され、現像に先立って所定の現像器が感光ドラム1に対向する位置に回転移動される。
【0005】現像により得られたトナー像は、感光ドラム1と略同速で矢印方向に回転している中間転写ベルト(ベルト状中間転写体)6の表面に、一次転写ローラ7aに印加された一次転写バイアスにより転写される(一次転写)。感光ドラム1上に残った転写残りトナーは、ブレードによるクリーニング手段8により除去される。
【0006】上記の帯電、露光、現像、1次転写の工程を、イエローに引き続きマゼンタ、シアン、ブラックの各色で行い、中間転写ベルト6上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナー像を重ね合わせたカラー画像が得られる。
【0007】この中間転写ベルト6上に重畳した4色のトナー像は一括して、搬送手段のピックアップローラ9によって所定のタイミングで中間転写ベルト6に送られてくる転写材の表面に、二次転写ローラ7bに印加された二次転写バイアスにより転写される(二次転写)。
【0008】4色のトナー像が転写された転写材は、搬送ベルト10によって定着装置11に送られ、そこで熱および圧を加えられてトナーが転写材に溶融固着され、最終的なフルカラー画像になる。
【0009】本例の画像形成装置に限らず、フルカラー画像の出力を行う画像形成装置には、一般に出力画像の濃度を調整する機構がついている。また特に高品位のカラー画像の出力を目的とした画像形成装置では、全ての階調において所望のカラーバランスを得るために、階調補正(γ補正)を行う機構が付加されることが多い。」

(1c)「【0021】
【発明が解決しようとする課題】上記のような濃度/階調制御シーケンスが稼動する際には、画像形成を一時休止しなければならない不便があり、頻繁に濃度/階調制御シーケンスを行うわけには行かない。このため、連続印字中は濃度/階調制御シーケンスを行わないなどの措置がとられる場合があった。
【0022】しかしながら、濃度/階調制御シーケンスの実行間隔(インターバル)が長すぎる場合は、特に階調の変動が問題となり、ハーフトーン画像の色味が微妙に変化してしまうことがあった。たとえば、同じフォトグラフィック画像を100枚以上連続印字すると、最初に印字した画像と最後に印字した画像の色調が変化することがある。また階調の変動は印字比率などにも影響され、形成される画像によって階調の変動が一定の範囲内に収まっている印字枚数/時間はまちまちである。フルカラー画像では、4色の階調がそれぞれ独立に変動するため、微妙な色調の維持には階調制御シーケンスを頻繁に入れざるを得ない。
【0023】このように、従来は、無休止による連続印字と微妙な色調/階調の維持が二律背反の状況にあった。
【0024】本発明の目的は、画像形成を一時休止して行う階調制御シーケンスを極力排し、連続印字中でも階調制御を行うことのできるカラー画像形成装置を提供することである。」

(1d)「【0025】
【課題を解決するための手段】上記目的は本発明に係るカラー画像形成装置にて達成される。要約すれば、本発明は、画像形成工程中に非画像域に形成された濃度検知用画像パターンの濃度を検知する濃度検知手段と、検知された濃度に基づいて濃度制御および階調制御を行う制御手段とを有するカラー画像形成装置において、前記濃度検知手段による濃度検知を各色ごとに複数回に分割して行い、濃度制御および階調制御のデータ補正を行うことを特徴とするカラー画像形成装置である。
【0026】本発明によれば、連続して画像形成を行う場合、形成する画像の先端と後端に挟まれた非画像域に濃度検知用画像パターンを形成して、濃度検知を行う。前記濃度検知手段によって得られた濃度データによって、つぎに形成する濃度検知用画像パターンおよび/またはその画像形成期間を制御する。
【0027】また、本発明によれば、複数の像担持体と、前記像担持体上に形成した画像を転写する転写材を担持して、前記像担持体に順次搬送するベルト状搬送手段を備え、前記濃度検知用画像パターンを前記像担持体上に形成した後、前記ベルト状搬送手段に転写して、そのベルト状搬送手段上で前記濃度検知用画像パターンの濃度を検知する。あるいは、複数の像担持体と、前記像担持体上に形成した画像を転写材に転写する前に一旦転写するベルト状中間転写体とを備え、前記濃度検知用画像パターンを前記像担持体上に形成した後、前記ベルト状中間体に転写して、そのベルト中間体上で前記濃度検知用画像パターンの濃度を検知する。」

(1e)「【0029】実施例1
図1は、本発明のカラー画像形成装置の一実施例を示す断面図である。本画像形成装置における画像形成工程は、図7に示した従来の画像形成装置と一部を除いて基本的に同じなので、特に変わりのない部分は同一の符号を付してその説明を省略し、本発明の特徴的な部分についてのみ以下説明する。
【0030】本実施例でも、画像形成装置の電源投入時や省電力のための休止状態からの復帰時、もしくは感光ドラム1や現像器4(4y?4k)の交換時、トナーの補給時などは、従来例のように一通りの濃度制御、階調制御を行う。濃度制御、階調制御は基本的には従来例で示した方式を採用する。このとき得た各ハーフトーン画像の反射光量データを以下「初期データ」とする。なお、本実施例では、中間転写ベルト6上に転写されたハーフトーンパターンの反射光量を、中間転写ベルト6に対向して設置された反射光量センサー12で測定している。」

(1f)「【0031】本発明の特徴である連続印字中の濃度検知および階調制御について説明する。
【0032】本実施例では、図2に示すように、連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた非画像域(以下「画像間」と呼ぶ)に濃度検知用画像パターンQを形成する。本実施例のような中間転写ベルトを用いたものでは、「中間転写ベルトの周長」-「転写材の長さ」が上記の「画像間」に相当する。反射光量センサー12は、中間転写ベルト6上の「画像間」に形成された濃度検知用画像パターンQがセンサー12の下を通過するタイミングを見計らって、その反射光量を測定する。
【0033】上記の「画像間」の領域は狭いため、画像パターンの全てを形成できない。したがって、ここに印字する画像パターンをいくつかに分割して「画像間」に振り分ける。
【0034】具体例を示すと、連続印字される転写材の1枚目と2枚目の間に、最初にイエロートナーを用いて、図3に示した4×4のドットマトリックスのうち2ドット、8ドットを印字する2つのハーフトーンパターンを、2枚目と3枚目の間に4ドット、10ドットを印字する2つのハーフトーンパターンを、3枚目と4枚目の間に6ドット、12ドットを印字する2つのハーフトーンパターンを形成する。
【0035】反射光量センサー12で測定した上記の各ハーフトーンの「新データ」で、最初に測定した各ハーフトーンの「初期データ」を補正し、イエローの階調補正関数x=f-1(y)を随時更新していく。「初期データ」の補正については、反射光量センサー12の測定誤差や急激な色味の変動を避けることを考慮して、「初期データ」と「新データ」に適当な重みを付けを行って算出してもよい。
【0036】上記と同様な階調補正関数の更新をマゼンタ、シアン、ブラックの各色で行い、全て完了したらイエローに戻って繰り返す。上記では12枚の印字で1サイクルとなる。1サイクルの途中で印字が終了した場合は、そのときの色から上記の階調制御を開始すれば、ほぼ各色均等に階調制御を行える。」

(1g)「【0037】階調制御をそう頻繁に行う必要がない場合は、画像パッチを形成しない(階調制御を行わない)インターバル期間を設置する。たとえば上記で「画像間」に画像パッチを形成する12枚の印字を終えた後、28枚は画像形成パッチを形成せずに40枚を1サイクルとして運用するなどしてもよい。
【0038】当然ながら、「画像間」に形成する画像パッチの数、種類、大きさ、形状は反射光量センサー12が十分な精度で反射光量を検知でき、かつ画像形成のスループット(生産性)を遅れさせることがなければ、これを限定するものではない。また形成する画像パッチの色の順番、インターバル期間の入れ方などを限定するものではない。
【0039】具体例を示せば、連続印字される1枚目の転写材と2枚目の転写材との間に、イエロートナーを用いて、図3に示した4×4のドットマトリックスのうち2ドット、6ドット、10ドットを印字する3つのハーフトーンパターンを形成し、同じ画像パッチを色をシアンに変えて2枚目と3枚目の間に、同じく色をマゼンタに変えて3枚目と4枚目の間に、同じく色を変えて4枚目と5枚目の間に形成し、4枚のインターバルを置いて9枚目以降に、図3に示した4×4のドットマトリックスのうち4ドット、8ドット、12ドットを印字する3つのハーフトーンパターンを、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの順で上記と同様形成し、4枚のインターバルを置いて1サイクルを完了する(16枚で1サイクル)でもよい。」

(1h)「【0047】以下、図6に示す制御フローにしたがって、本実施例の制御手順を具体的に説明する。
【0048】ステップ1(図においてはS1と略記する。以下同様):本実施例でも、画像形成装置の電源投入時や省電力のための休止状態からの復帰時、もしくは感光ドラムや現像器の交換時、トナーの補給時などは、一通りの濃度制御、階調制御を行う。この階調制御で得た各ハーフトーンの反射光量データを、以下「R-xi]で表す(xは測定した色で、y(イエロー)、m(マゼンタ)、c(シアン)、k(ブラック)のいずれか、iは測定したハーフトーンのドット数で、2、4、6、8、10、12のいずれかである。以下同様)。各「R-xi」に対応するカウンタ「C-xi」を設定し、表1に示すような初期値を与える。
【0049】
【表1】


ステップ2:全ての「C-xi」が”0”か否かを判定し、”0”のものがあったら「C-xi」に数値”23”を与えてステップ3に、”0”のものがなければ全ての「C-xi」の数値を1減じてステップ8に進む。
【0050】ステップ3:「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターンを「画像間」に形成する。表1に従えば、イエローの12ドット(印字比率75%)のハーフトーンパターンを形成する。「画像間」に1つの画像パターンを形成するだけの余裕がない場合は、「画像間」を広げて画像パターンを形成する。
【0051】ステップ4:ステップ3で形成した画像パターンの反射光量を測定し、測定データ「N-xi」を得る。このときN-y12の測定値は”86h”(16進数表記)であったとする。
【0052】ステップ5:ステップ4で得た「N-xi」と「R-xi」の差の絶対値が、表2に示すような許容誤差データ「Δ-xi」以内ならばステップ6に、それ以外であったらステップ7に進む。ここで、R-y12の値は”84h”であったとすると、表2のΔ-y12の値は”06h”から、許容誤差データの範囲内であるのでステップ6に進む。ここでは、印字比率75%のイエローのハーフトーン領域ではほとんど変化がなかったと判断される。
【0053】
【表2】


ステップ6:「C-xi」に表3に示すようなカウンタ数「A-xi]を加える。ここでC-y12のカウンタ数はステップ2での”23”にA-y12の”72”を加えて”95”となる。
【0054】
【表3】


ステップ7:「N-xi」と「R-xi」から適当な「重み付け」を行った後、「R-xi」を補正し、イエローの階調補正関数を更新する。ただし、更新のタイミングはイエローの一つの画像の形成が終了してから行い、画像形成中は更新しない。
【0055】ステップ8:画像の形成が終了した場合は、「R-xi」と「C-xi」を本体内のメモリに記憶して、つぎの画像形成に備える。つぎの画像形成までに、感光ドラムや現像器の交換、トナーの補給などを行ったり、省電力のための休止状態となった場合や、電源を切るなどして本体がリセットされた場合にはステップ1に、それ以外の場合はステップ2から画像形成を開始する。」

(1i)「【0056】本実施例では、表1のカウンタ「C-xi」の初期値が小さい順に画像パターンを形成させ、階調補正を行うものであるが、前述のように「画像間」に一つずつしか画像パターンを形成できないため、階調補正の1サイクルを24枚としている。」

(1j)「【0057】より正確な階調補正を行うには、より頻繁な階調補正が必要であるが、上記のように全ての「画像間」に階調補正のための画像パターンを形成することは、トナーの消費や機械内部のメンテナンス上、あまり好ましくはない。また「画像間」に一つの画像パターンを形成するだけの余裕がない場合は、スループットを犠牲にせざるを得ないため、可能な限り階調補正の回数を抑える必要がある。
【0058】本実施例のステップ5、6は上記を考慮して設けたものであり、測定した画像パターンが1サイクル前のデータに対して一定の誤差範囲内にあるときは、その階調は「安定している」と判断して、つぎのサイクルの(または数サイクル分の)階調補正を省略する。前述の例ではイエローの12ドットのハーフトーンパターンの階調補正を3サイクル分省略する。」

(1k)「【0059】また、色味の変化など実際に問題となる階調の領域はハイライト部が主である。一般に、印字比率とその誤差の相関は小さく、むしろ中間階調領域では印字比率によらずその誤差には差がない傾向がある。たとえば、イエロー、マゼンタ、シアンの3色でニュートラルグレーの色調を作ったときに、印字比率によらずにその誤差が3%ほどあるとし、マゼンタのみ他の2色より3%印字比率が高い場合を考える。ニュートラルグレーを各々の印字比率30%で作ったときと、印字比率20%で作ったときとで色調(濃度ではなく)を比較すると印字比率30%の場合は他の2色に比べてマゼンタの比率は1割増しの色調となるが、印字比率20%の場合はマゼンタの比率は1.5割増しの色調となり、より赤みがかった印象を与える。人の色彩感覚は、明度や彩度より色相の違いに敏感であることを考慮すると、色調の狂いやすいハイライト部分の階調管理を高濃度部より重視すべきである。また色相に無関係かなブラックの階調管理よりも、他の3色をより重視すべきである。
【0060】本実施例の「Δ-xi」、「A-xi」は上記を考慮して設けたものであり、色、印字比率によって、表2の「Δ-xi」は貴重の安定度の基準、表3の「A-xi」は省略するサイクル数を定めている。表2の「Δ-xi」の数値は、人の色相の感度と反射光量センサーの誤差を基に決められている。図6の制御フローでは、表2の「Δ-xi」、表3の「A-xi」より、印字比率25%のハーフトーン領域を中心に階調性の判断基準を厳しくしてハイライトの色調の安定を図るとともに、印字比率50%以上の領域の階調補正では省略サイクル数を増やして、トナーの消費やスループットの遅延を抑えている。なお、表1の「C-xi」は、上記のように高印字比率の階調制御が省略されても、印字枚数あたりほぼ均等に各色の階調補正が行われるように考慮した。」

(1m)「【0061】当然ながら、上記表1の「C-xi」、表2の「Δ-xi」、表3の「A-xi」の内容は、ある「画像間」に形成される画像パッチが一意に定まるように設定されれば、これを限定するものではない。またマトリックスデータ「C-xi」、「Δ-xi」、「A-xi」を複数作り、出力画像の目的に合わせて任意に組み合わせて用いてもよい。たとえば、本実施例のように、ハイライト領域を中心とした色相管理が目的のフォトグラフィックやCG画像用、若干高濃度域の色相/濃度管理が目的のグラフやDTP画像用、ブラックの階調表現を住したモノクロフォトグラフィック画像用など、用途に適したマトリックスデータ「C-xi」、「Δ-xi」、「A-xi」を作り、これを選択できるようにしてもよい。」

(1n)「【0062】また、濃度検知方式の種類、数はこれを限定されない。たとえば、上記の反射光量センサーを複数用いて、一度に複数の濃度検知用画像パターンの反射光量を検知できるようにしてもよい。また、複数の濃度検知用画像パターンを非画像域に形成して、連続印字中でも階調制御を行うことができ、得られたデータによって、つぎに形成する濃度検知用画像パターンやその画像形成サイクルを制御することができれば、図6の制御フローでなくとも本発明の趣旨に反しない。当然ながら、濃度制御/階調制御の方式は、複数の濃度検知用画像パターンに基づいて決定される方式であれば、上記に記載されるものに限定されない。」

(1p)「【0063】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、画像形成工程中に非画像域に形成された特定の濃度検知用画像パターンの濃度を検知する手段と、検知された濃度に基づいて濃度制御および階調制御を行う手段を有するカラー画像形成装置において、形成する画像の先端と後端に挟まれた非画像域に濃度検知用画像パターンを形成することにより、濃度検知を各色ごとを複数回に分割して行い、濃度制御および階調制御のデータ補正を行うようにしたので、連続して画像形成を行う場合でも、画像形成を一時休止すること無しに、階調制御を行うことができるようになった。また濃度検知手段によって得られた濃度データにより、つぎに形成する濃度検知用画像パターンやその画像形成期間を制御することによって、より効率的に階調制御を行うことができるようになった。」

(1q)「【図1】


図1には、「カラー画像形成装置」の「断面図」が示されている。

(1r)「【図6】


図6には、「カラー画像形成装置」の「階調補正」制御でのフローチャートが示されている。
これら記載(特に、前記(1h)参照)によれば、引用例1には、次の発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されているものと認められる。

「 搬送手段のピックアップローラ9と、
中間転写ベルト6上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー像を転写する一次転写ローラ7a、及び、中間転写ベルト6上のカラー画像を転写材の表面に、転写する二次転写ローラ7bと、
反射光量データ「R-xi」とカウンタ「C-xi」を記憶する、本体内のメモリと、
画像パッチを形成しない(階調制御を行わない)インターバル期間を設置して、下記のステップからなる階調補正制御を実行する、制御手段と、
を備える、カラー画像形成装置。

ステップ1
電源投入時等に各ハーフトーンの反射光量を測定し、各反射光量データを、初期データとして「R-xi]で表し(xは測定した色で、y(イエロー)、m(マゼンタ)、c(シアン)、k(ブラック)のいずれか、iは測定したハーフトーンのドット数で、2、4、6、8、10、12のいずれかである。)、各「R-xi」に対応するカウンタ「C-xi」を設定し、カウンタ「C-xi」に表1に示すような0?23の初期値を与える。

ステップ2:
全ての「C-xi」が“0”か否かを判定し、“0”のものがあったら「C-xi」に数値“23”を与えてステップ3に、“0”のものがなければ全ての「C-xi」の数値を1減じてステップ8に進む。

ステップ3:
「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターンを「画像間(連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた、中間転写ベルト上の、非画像域)」に形成する。

ステップ4:
ステップ3で形成した画像パターンの反射光量を測定し、測定データ「N-xi」を得る。

ステップ5:
ステップ4で得た「N-xi」と「R-xi」の差の絶対値が、表2に示すような許容誤差データ「Δ-xi」以内ならばステップ6に、それ以外であったらステップ7に進む。

ステップ6:
「C-xi」に表3に示すようなカウンタ数「A-xi]を加える。

ステップ7:
「N-xi」と「R-xi」から適当な「重み付け」を行った後、「R-xi」を補正し、イエローの階調補正関数を更新する。

ステップ8:
画像の形成が終了した場合は、「R-xi」と「C-xi」を本体内のメモリに記憶して、つぎの画像形成に備える。
本体がリセットされた場合にはステップ1に戻る。
それ以外の場合はステップ2から画像形成を開始する。」

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された特開2005-205613号公報(原査定の引用文献2。以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

(2a)「【0043】
図7は、感光体ドラム152に形成されるテストパターンと、このテストパターンが検出される位置とを例示する図である。
図7に例示するように、各色に対応する光走査装置140(図1)は、対応する色の色パッチ422の静電潜像と複数の位置ずれパッチ424の静電潜像とを、対応する感光体ドラム152の非印字領域に書き込む。非印字領域とは、出力画像(記録用紙に印刷される画像)が形成される領域(印字領域)以外の領域(いわゆるインターイメージ)である。この非印字領域の大きさは、各画像形成ユニット14で共通であり、中間転写ベルト160(図1)上の非印字領域に対応する。」

(2b)「【0044】
色パッチ422は、電位センサ202(図1)により感光体ドラム152上で読み取られイメージ電位の検出に用いられると共に、トナー像読取センサ204(図1)により中間転写ベルト160上で濃度を検出されてトナー供給量の制御に用いられる。そのため、各色パッチ422は、出力画像の視認性に対する影響が大きな主走査方向の略中央部(端部以外の領域)に形成され、電位センサ202及びトナー読取センサ204は、主走査方向の略中央部でこの色パッチ204を検出する。
位置ずれパッチ424は、トナー像読取センサ204により中間転写ベルト160上で読み取られ位置ずれの検出に用いられる。
なお、出力画像の濃度ムラは、記録用紙42に印刷された全面ハーフトーンのテスト画像に基づいて検出される。この全面ハーフトーンのテスト画像は、記録用紙42に形成された状態で画像読取センサ206又は画像読取ユニット12により読み取られる。」

(2c)「【0059】
ステップ240(S240)において、補正量調整部266は、階調補正を伴う露光量設定処理時であるか否かを判定し、階調補正を伴わない露光量設定処理時である場合に、S250の処理に移行し、階調補正を伴う露光量設定処理時である場合に、S270の処理に移行する。ここで、階調補正を伴う露光量設定処理とは、イメージ電位及び帯電電位を目標電位となるように帯電条件及び露光条件を制御する電位セットアップと、テストパターンにより検出された階調に基づいて画像補正部246により適用される階調変換係数を調整する階調性制御とが含まれるセットアップである。この階調性制御は、形成されたテストパターンに基づいてなされるため、露光量調整により補正しきれない濃度ムラなども併せて補正できる。」

2-3.対比
(1)引用例発明の「転写材」、「中間転写ベルト6」、「トナー像」、「カラー画像」、「反射光量データ「R-xi」」、「メモリ」、「階調補正」、「カウンタ「C-xi」」、「「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターン」、「画像間(連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた、中間転写ベルト上の、非画像域)」、「カラー画像形成装置」、は、
それぞれ、
本願補正発明の「記録媒体」、「中間転写ベルト」、「トナー像」、「カラー画像」、「前記画像形成部で形成するカラー画像の調整用に呈される画像調整パターン画像に係る画像データ」、「記憶部」、「画像調整」、「分割パターン番号」、「(分割された)(γ値を調整する)画像調整パターン」、「記録媒体上に順次画像を形成する連続印刷時の当該画像形成に係る前記中間転写ベルト上の複数のトナー像間領域」、「画像形成装置」、に相当する。
引用例発明の「搬送手段のピックアップローラ9」は、本願補正発明の「画像形成すべき記録媒体を搬送する搬送部」に相当する。
引用例発明の「中間転写ベルト6上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各トナー像を転写する一次転写ローラ7a、及び、中間転写ベルト6上のカラー画像を転写材の表面に、転写する二次転写ローラ7b」は、本願補正発明の「中間転写ベルトに各色のトナーを付着させたトナー像を形成し、前記搬送される記録媒体へ転写してカラー画像を形成する画像形成部」に相当する。
引用例発明の「反射光量データ『R-xi』とカウンタ『C-xi』を記憶する、本体内のメモリ」は、本願補正発明の「前記画像形成部で形成するカラー画像の調整用に呈される画像調整パターン画像に係る画像データを格納する記憶部」に相当する。

(2)引用例発明の「制御手段」は、「画像パッチを形成しない(階調制御を行わない)インターバル期間を設置して」「許容誤差データ以内」かどうかを評価することに用いられる「反射光量を測定」される「“0”の「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターンを「形成」して「階調補正制御を実行する」ものであることは、引用例発明の「制御手段」が「画像形成」をも実行するものであるから、
本願補正発明の「制御部」が「予め定められた条件」、すなわち「温度センサで計測される装置雰囲気の温度変化、タイマで計測される前回の調整からの経過時間又は画像形成部60での画像形成枚数などに基づいたタイミング」(本願明細書の詳細な説明【0023】参照。)「に基づいて画像調整を開始するか否かを判定し、画像調整を開始すると判定した場合」「記録媒体への画像形成と画像形成部の画像調整を制御するための画像形成指示情報の印刷パターン種別に画像調整パターンを指示」して「画像形成部で記録媒体上に形成するカラー画像の調整を制御する」するものであることに、相当する。

(3)また、引用例発明の「制御手段」は、カウンタ「C-xi」に表1に示すような0?23の初期値を与え、全ての「C-xi」が“0”か否かを判定し、「C-xi」が“0”のものがあったら、「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターンを、形成するものであり、そして、全ての「C-xi」の数値を1減じていくものであるから、引用例発明の「制御手段」は、階調補正の1サイクル(24枚)について、表1のカウンタ「C-xi」の初期値が小さい順に画像パターンを形成させ、階調補正を行うものである。
ここで、引用例発明の「制御手段」の「ステップ2」の「全ての「C-xi」が“0”か否かを判定」するということは、本願補正発明の「制御手段」が「前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定」するということに相当し、
引用例発明の「制御手段」の「ステップ2」の「(「C-xi」に)“0”のものがあったら」と判断することは、階調補正の1サイクル(24枚)について、本願補正発明の「制御手段」が「画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンが」「あると判定」することに相当し、
引用例発明の「制御手段」の「ステップ2」において「(「C-xi」に)“0”のものがあったら」と判断したことに続く「ステップ3」において、「『C-xi』に対応する画像パターン」を「画像間(連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた、中間転写ベルト上の、非画像域)」に形成することは、本願補正発明の「制御手段」が、「当該分割パターンを選択して前記画像形成部で記録媒体上に順次画像を形成する連続印刷時の当該画像形成に係る前記中間転写ベルト上の複数のトナー像間領域に亘って、前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別に対応する前記記憶部に格納される画像データに基づいて前記画像調整パターン画像を分割した画像調整用のトナー像を順次形成」することに相当する。

(4)してみると、両者は、
「 画像形成すべき記録媒体を搬送する搬送部と、
中間転写ベルトに各色のトナーを付着させたトナー像を形成し、前記搬送される記録媒体へ転写してカラー画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部で形成するカラー画像の調整用に呈される画像調整パターン画像に係る画像データを格納する記憶部と、
予め定められた条件に基づいて画像調整を開始するか否かを判定し、画像調整を開始すると判定した場合、前記記録媒体への画像形成と前記画像形成部の画像調整を制御するための画像形成指示情報の印刷パターン種別に画像調整パターンを指示し、前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号に基づいて当該分割パターンを選択して前記画像形成部で記録媒体上に順次画像を形成する連続印刷時の当該画像形成に係る前記中間転写ベルト上の複数のトナー像間領域に亘って、前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別に対応する前記記憶部に格納される画像データに基づいて前記画像調整パターン画像を分割した画像調整用のトナー像を順次形成して、前記画像形成部で記録媒体上に形成するカラー画像の調整を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。」
で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願補正発明では、「制御部」が、「画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定」するのに対し、引用例発明では、「制御手段」が、「階調補正」制御を実行するものであり、階調補正用の「ハーフトーンの画像パターン(xi)」の形成を指示するものであり、「画像調整パターン種別」としては「γ値調整パターン画像」のみを指示するにすぎない点。

(相違点2)
本願補正発明では、「画像調整パターン」を読み出して「設定」するために、「開始番号」と「終了番号」の間の番号で指示される「分割パターン番号」とそれに対応する「分割パターンの種別」があり、本願補正発明では、「制御部」が、「分割パターン番号と分割パターン種別とに基づいて分割パターンを選択して」いるのに対し、引用例発明では、「「C-xi」に対応する色とハーフトーンの画像パターン」を読み出すために0?23の初期値が与えられる「カウンタ『C-xi』」により「画像パターン」を選択するものの、「開始番号」と「終了番号」の間の番号で指示される「分割パターン番号」とそれに対応する「分割パターン」の種別(先頭、中間、最終の種別)に基づいて選択されていない点。

2-4.判断
(1)相違点1について
本願補正発明の「画像調整パターン種別」には、本願明細書の詳細な説明【0043】によれば、「付着量パターン」「光量パターン」「γ特性パターン」「レジストパターン」「統合パターン」などが挙げられている。
これに対して、画像調整の対象に「γ値」の他に濃度、色ずれ等があることは、従来周知である。たとえば、引用例1には、「階調補正制御」だけでなく、「濃度制御」を実行することも記載されている(前記(1d)(1b)参照)。また、引用例2にも、「色パッチ422」によりトナー供給量を制御すること、「位置ずれパッチ424」により位置ずれ補正を制御すること、が記載され(前記(2b)参照)、「テストパターンにより検出された階調」により階調性制御すること、が記載されている(前記(2c)参照)。
してみると、引用例発明の「制御手段」が「階調補正制御」を実行するために、階調補正用の「ハーフトーンの画像パターン(xi)」の形成を指示することに代えて、「画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定」することに変更することは、当業者が適宜なし得た事項である。

(2)相違点2について
引用例発明では、「カウンタ『C-xi』」は、数値1を減らす演算が行われ、「カウンタ『C-xi』」が“0”のときに読み出した「『C-xi』に対応する画像パターン」を、「画像間(連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた、中間転写ベルト上の、非画像域)」に形成するものであり、階調補正を1サイクル24枚で行っている。したがって、画像パターンの24枚一サイクルには、先頭、中間、最終の順番は存在する。
してみると、引用例発明において「カウンタ『C-xi』」が“0”のときに読み出した「『C-xi』に対応する画像パターン」が、本願補正発明のように種別(先頭、中間、最終の種別)に基づいて選択されていないとしても、実質的には先頭、中間、最終の画像パターンがある特定の順番で選択されている点では、異なるところがない。そして、選択の順番は当業者が適宜設定し得た事項であるから、引用例発明において「『C-xi』に対応する画像パターン」を先頭、中間、最終という「分割パターン」の種別に基づいて選択するように構成することに、格別の困難性はない。

(3)作用効果について
本願補正発明の効果について、本願明細書には、次のように記載されている。
「【0018】本発明によれば、装置の製造コストを増やすことなく、印刷速度を低減させずにカラー画像の連続印刷途中で画像調整を行うことができる。」

これに対して、引用例発明においても、「反射光量センサー12」の数は、1個であり(上記(1q)参照)、装置の製造コストを増やすものではない。そして、「画像形成を一時休止して行う階調制御シーケンスを極力排し、連続印字中でも階調制御を行うことのできる」ものであり(前記(1c)参照)、本願補正発明と同様に「印刷速度を低減させずにカラー画像の連続印刷途中で画像調整を行うことができる」ものであると認められる。

したがって、本願補正発明の奏する効果は、引用例発明の効果に比較して格別のものであると言うことができない。

(4)請求人の主張について
平成22年4月13日付回答書において、請求人は以下のように主張する。

「本願発明は、平成21年10月14日付けで提出いたしました審判請求書において申し述べております通り、「前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号と前記分割パターン種別とに基づいて当該分割パターンを選択」し、これに基づいて「画像調整用のトナー像」を形成している点に特徴を有しております。」

しかしながら、2-3.(3)でも検討したように、
引用例発明の「制御手段」の「ステップ2」の「全ての「C-xi」が“0”か否かを判定し、“0”のものがあったら「C-xi」に対応する画像パターン」を「画像間(連続印字中は形成する画像の先端と後端に挟まれた、中間転写ベルト上の、非画像域)」に形成することは、
請求人のいう「「前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号と前記分割パターン種別とに基づいて当該分割パターンを選択」し、これに基づいて「画像調整用のトナー像」を形成している」ことに相当する。
また、同回答書において、請求人は以下のようにも主張する。

「つまり、本願発明は、例えば、複数の画像調整パターン種別が設定された場合に、1つのパターン種別による画像調整が終了するごとに、次のパターン種別があるかを判断し、ある場合にはそのパターン種別による画像調整を実行する点に特徴を有しております。」

しかしながら、本願補正発明には「複数の画像調整パターン種別が設定された場合」について、規定されていない。
以上のことから、請求人の上記主張は採用できない。

(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載された発明は、引用例1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-5.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

3.本願発明について
3-1.本願の請求項1に係る発明
平成21年10月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成20年7月29日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?9に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、2-1.(1)に記載されたとおりである。

3-2.引用例の記載事項
引用例には、前記「2-2」に記載したとおりの事項が記載されている。
3-3.対比
本願発明は、
本願補正発明(上記「2-1(2)」参照)の
「画像調整パターンを指示するとともに、画像調整すべき部分に応じて前記画像形成指示情報の画像調整パターン種別を設定し、」の画像形成指示情報の設定のしかたについての、
『パターンの分割がある際に、形成すべき分割されたパターンの開始番号と終了番号を前記画像形成指示情報の分割パターン番号に指示し、分割パターンの種別を前記画像形成指示情報の分割パターン種別に指示し』、という限定事項を省き、且つ、
『前記画像調整が実行中である場合、画像調整のために出力の選択をしていない分割パターンがあるか否かを判定し、あると判定した場合には前記分割パターン番号と前記分割パターン種別とに基づいて当該分割パターンを選択して』という限定補正を省いたものに相当する。
本願発明と引用例発明を対比すると、両者は、上記「2-3」で示した前記相違点1においてのみ、相違するものである。

3-4.判断
前記相違点1について、検討する。
前記相違点1について
前記「2-4」で検討したとおり、引用例発明において、前記相違点1のように構成することは、当業者が適宜なし得た事項である。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
よって、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-07-27 
結審通知日 2010-08-03 
審決日 2010-08-31 
出願番号 特願2006-200624(P2006-200624)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 賢  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 一宮 誠
黒瀬 雅一
発明の名称 画像形成装置及び画像形成方法  
代理人 荒船 博司  

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