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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B03C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B03C
管理番号 1225555
審判番号 不服2008-3315  
総通号数 132 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-12-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-13 
確定日 2010-10-21 
事件の表示 特願2003- 68372号「電気集塵装置の制御方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年10月 7日出願公開、特開2004-275834号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本件出願は、平成15年 3月13日の出願であって、平成20年 1月 7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年 2月13日に本件審判請求がなされるとともに、同年 3月14日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。


2 平成20年 3月14日付けでした手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定

【補正却下の決定の結論】

本件補正を却下する。

【理由】

2.1 本件補正

本件補正は、平成19年 8月20日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1の電気集塵装置の制御方法において(平成19年11月26日付けの手続補正は却下された。)、電気集塵装置の配置場所について「道路トンネルの換気システムにおけるガス排気路」と限定し、帯電部の放電極への印加電圧を変化させることについて、「上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め,求めた予測交通量に基づいて換気風量を算出し,算出した換気風量に基づいて上記電気集塵装置の出口側においてオゾン濃度が所定値以下となるように,」と限定し、さらに、印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において印加電圧を高くする方向に切り替えることを行うタイミングとして、「排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには」と限定しようとするものである。

この補正は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて新規事項を追加するものでなく、しかも、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正による補正後の特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否か)について、以下に検討する。


2.2 本願補正発明

本件補正後の本件出願の請求項1に係る発明は、上記本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 コロナ放電により排気ガス中の粒子状物質に電荷を与える帯電部と,荷電粒子状物質を電気力により集塵する集塵部とを備え,少なくとも上記帯電部の放電極に印加する電圧が制御可能な電気集塵装置が,排気ガスが電気集塵装置の入口側から入り上記帯電部および集塵部を通過して出口側から出るように道路トンネルの換気システムにおけるガス排気路に配置されており,
上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め,求めた予測交通量に基づいて換気風量を算出し,
算出した換気風量に基づいて上記電気集塵装置の出口側においてオゾン濃度が所定値以下となるように,上記帯電部の放電極への印加電圧をあらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御するに際して,上記電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度において上記印加電圧を一段階下げ,排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには上記印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替えるように制御する,
電気集塵装置の制御方法。」
(以下「本願補正発明」という。)


2.3 引用刊行物とその記載事項

(1)引用刊行物の記載内容

原査定の拒絶理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-301402号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

(ア)「【0026】電気集塵装置1は、自動車などである車両が走行する道路トンネル10の空気を浄化するために用いられ、本実施の形態では、集塵機構成体85の主要構成部が、道路トンネル10に連なって形成される集塵用風路11に設置される。側坑などとも呼ばれる集塵用風路11は、略C字状に形成され、道路トンネル10の空気を矢符20で示すように入口12から取込み、入口12から出口13に向かって流過方向22に流過し、矢符21で示すように出口13から道路トンネル10に排出する。出口13は、入口12よりも道路トンネル10における車両の走行方向14下流側に配置される。以下道路トンネル10を、本坑10といい、集塵用風路11を単に風路11という場合がある。」

(イ)「【0028】各集塵装置本体2a,2bは、同様の構成を有しており、共に風路11の入口12付近に設けられる。風路11の入口12付近は、仕切り壁15によって2つの流域に仕切られ、一方の流域に一方の集塵装置本体2aが設けられ、他方の流域に他方の集塵装置本体2bが設けられる。以下、各集塵装置本体2a,2bを総称する場合は、集塵装置本体2と記す。
【0029】集塵装置本体2は、帯電部17および集塵部18を有する2段式の集塵機によって実現され、前記各流域を流過する空気が、帯電部17および集塵部18の順に流過する。帯電部17は、帯電電極および対向電極間に電圧が印加されて、コロナ放電が発生される。帯電部17の各電極間に印加する電圧は、帯電電圧が高位となる直流電圧、対向電圧が高位となる直流電圧、交流電圧のいずれであってもよい。集塵部18は、第1および第2の集塵部電極間に直流電圧が印加されて、直流電界が形成される。
【0030】このような集塵装置本体2を、塵埃などの微粒子を含むガスである空気が流過すると、帯電部17の電極間を流過するときに、コロナ放電によって微粒子が帯電され、集塵部18の電極間を流過するときに、帯電された微粒子が電界から静電気力を受けて集塵部の電極に吸着、捕集される。このようにして、集塵装置本体2は、流過する空気から微粒子を除去することができる。各集塵装置本体2には、排水ピット89が設けられ、捕集された水分など、各集塵装置本体2に発生した水を排出することができる。」

(ウ)「【0050】制御構成部4は、微粒子を含むガスの発生量に関する情報、したがって計測手段8によって計測される空気に対する光の透過率、風速、単位時間あたりの走行車両台数および一酸化炭素量から微粒子除去処理が必要な単位時間あたりのガスの流量を、必要処理流量として求め、集塵機主制御盤25によって、処理流量を演算する。このように計測手段8によって、微粒子を含むガスである空気の発生量に関する情報を計側し、計測される情報から求めた必要処理流量に基づいて、電極間を流過させるべき処理流量を演算する。」

(エ)「【0086】このように道路トンネルなどの微粒子を含むガスの発生量、したがって必要処理流量が変化する環境下において、集塵能力が向上した状態で、単位流量あたりの合計消費電力を大きく低減し、環境保全を達成したうえで、電気集塵装置の経済的な運転を実現することができる。さらに加えて、ガス流量が小さくかつ電極間の電圧が高い場合に発生するオゾンの発生を、この条件下でのガスの処理を停止することによって防止し、これによっても環境保全を達成することができる。
【0087】上述の実施の形態では、基準流量未満の処理流量では、処理を停止するように構成されたけれども、本発明の実施の他の形態では、電気集塵装置1の集塵機構成体85は、基準流量未満の処理流量の場合、集塵装置本体2の電極間に印加する電圧を小さくするように構成される。以下この構成について、対応する部分に上述の形態と同一の参照符号を付して、異なる構成だけを、具体的に説明する。
【0088】この実施の形態では、制御構成部4は、集塵装置本体2の電極間に定格電圧が印加される場合の送風機3および集塵装置本体2の合計消費電力を、処理流量で除算した単位流量あたりの合計消費電力に基づいて、集塵機主制御部25によって、電極間の印加電圧を制御する。具体的には、最適処理流量以上の処理流量では、電極間に定格電圧を印加し、かつ最適処理流量未満の処理流量では、電極間に定格電圧よりも低い電圧を印加するように、電極間の印加電圧を制御する。」

(オ)「【0097】また図2および図4に示すように、電気集塵装置は、入口および出口が本坑10に連なる風路11に設けられ、処理後の空気を換気目的で本坑10に戻すように構成されたけれども、本発明の実施の他の形態として、本坑10の空気を取り込んで浄化した後、本坑10とは異なる他所へ排出する構成であってもよい。また道路トンネルに限定されることはなく、工場などの他の場所における空気の浄化に用いるようにしてもよい。また空気以外の他のガスから微粒子を除去するために用いてもよい。」


(2)引用発明

すると、引用刊行物には、次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されているということができる。

「コロナ放電により空気中の塵埃などの微粒子を帯電させる帯電部17と,帯電された微粒子を電界からの静電気力によって電極に吸着、捕集する集塵部18とを備え,少なくとも上記帯電部17の電極間に印加する電圧が制御可能な電気集塵装置が,排気ガスが電気集塵装置の入口側から入り上記帯電部および集塵部を通過して出口側から出るように道路トンネルの換気システムにおけるガス排気路に配置されており,
上記道路トンネル内の単位時間あたりの走行車両台数に基づいて必要処理流量を算出し,
算出した必要処理流量に基づいて上記電気集塵装置の出口側においてオゾンの発生を防止するために,上記帯電部17の電極間に印加する電圧を変化させて制御するに際して,最適処理流量未満の処理流量の場合において上記電極間に印加する電圧を下げ,排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには最適処理流量以上の処理流量では,上記電極間に印加する電圧を高くする方向に切り替えるように制御する,
電気集塵装置の制御方法。」


2.4 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「帯電部17」は、本願補正発明の「帯電部」に相当するから、引用発明の「コロナ放電により空気中の塵埃などの微粒子を帯電させる帯電部17」は、本願補正発明の「コロナ放電により排気ガス中の粒子状物質に電荷を与える帯電部」に対応ものであり、引用発明の「集塵部18」は、本願補正発明の「集塵部」に相当するから、引用発明の「帯電された微粒子を電界からの静電気力によって電極に吸着、捕集する集塵部18」は、本願補正発明の「荷電粒子状物質を電気力により集塵する集塵部」に対応する。
また、引用発明の「電極間に印加する電圧」、「単位時間あたりの走行車両台数」「必要処理流量」は、本願補正発明の「放電極に印加する電圧」、「実測交通量」及び「換気風量」に相当する。
そして、引用発明の「オゾンの発生を防止するために」は本願補正発明の「オゾン濃度が所定値以下となるように」に対応するものであり、引用発明の「最適処理流量未満の処理流量の場合」は上記摘記事項(エ)より明らかなとおり、本願補正発明の「電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度」に対応し、引用発明の「最適処理流量以上の処理流量」は、本願補正発明の「印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度」に対応する。
さらに、本願補正発明の「上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め,求めた予測交通量に基づいて換気風量を算出し」と、引用発明の「上記道路トンネル内の単位時間あたりの走行車両台数に基づいて必要処理流量を算出し」とを対比すると、両者は「上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて換気風量を算出し」という構成である限りにおいて共通し、本願補正発明の「排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには上記印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替える」と、引用発明の「排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには最適処理流量以上の処理流量では、上記電極間に印加する電圧を高くする方向に切り替える」とを対比すると、両者は「排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度以上の速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替える」限りにおいて共通している。
また、本願補正発明の「上記帯電部の放電極への印加電圧をあらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御する」と、引用発明の「上記帯電部17の電極間に印加する電圧を変化させて制御する」とを対比すると、両者は「上記帯電部の放電極への印加電圧を変化させて制御する」限りにおいて共通し、本願補正発明の「電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度において上記放電極への印加電圧一段階下げ」と、引用発明の「最適処理流量未満の処理流量の場合において上記電極間に印加する電圧を下げ」とを対比すると、両者は「電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度において上記放電極への印加電圧を下げ」という限りにおいて共通する。
してみると、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。


<一致点>
「コロナ放電により排気ガス中の粒子状物質に電荷を与える帯電部と,荷電粒子状物質を電気力により集塵する集塵部とを備え,少なくとも上記帯電部の放電極に印加する電圧が制御可能な電気集塵装置が,排気ガスが電気集塵装置の入口側から入り上記帯電部および集塵部を通過して出口側から出るように道路トンネルの換気システムにおけるガス排気路に配置されており,
上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて換気風量を算出し,
算出した換気風量に基づいて上記電気集塵装置の出口側においてオゾン濃度が所定値以下となるように,上記帯電部の放電極への印加電圧を変化させて制御するに際して,上記電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度において上記放電極への印加電圧を下げ,排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度以上の速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替えるように制御する,
電気集塵装置の制御方法。」


<相違点1>
本願補正発明では、「道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め,求めた予測交通量に基づいて換気風量を算出し」ているのに対して、引用発明では実測交通量に基づいて換気風量を算出しているものの、予測交通量は求めていない点。

<相違点2>
本願補正発明では、「帯電部の放電極への印加電圧をあらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御する」ものであり、「電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり上記所定値に達する排気ガス速度において上記印加電圧を一段階下げ」ているのに対して、引用発明では、「あらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御する」ものではなく、排気ガス速度が遅くなったときの印加電圧の下げ変化も「一段階」とはなっていない点。

<相違点3>
排気ガス速度が速くなる方向に推移するときの切り替えについて、本願補正発明では、「印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替える」のに対して、引用発明では、「印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度」で切り替えるものではない点。

2.5 相違点についての検討(容易想到性の判断)

上記各相違点について検討する。

<相違点1>について
道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め、求めた予測交通量に基づいて道路トンネル内の換気機を制御することは周知の技術である(例えば、特開2003-49600号公報の【0003】段落、特開2001-262996号公報の【0013】?【0014】段落及び【図1】参照。)。
したがって、引用発明の電気集塵装置の制御方法に、当該周知技術を適用し、本願補正発明でいう上記相違点1のような構成とすることは当業者であれば容易に想到し得る。

<相違点2>について
引用発明は、「帯電部の放電極への印加電圧を変化させて制御する」ものの、印加電圧は連続的に変化させているものである。
これに対し、本願補正発明では、「帯電部の放電極への印加電圧をあらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御する」ものではあるが、本願の【0015】段落から明らかなとおり、本願の技術思想において「印加電圧を2段階または多段階に制御するタイプ」のみならず「印加電圧を連続的に変化させるタイプ」をも、その構成として備え得ることが明らかである。したがって、「印加電圧を2段階または多段階に制御するタイプ」とするのか「印加電圧を連続的に変化させるタイプ」とするのかについては、当業者であれば適宜決定し得る程度の事項にすぎない。
よって、引用発明の電気集塵装置の制御方法に基づいて、本願補正発明でいう上記相違点2のような構成とすることは当業者であれば容易に想到し得る。

<相違点3>について
制御において、入力情報のわずかな変化による応答のハンチングを防止するために、不感帯を設けることは慣用されている手段である。
よって、引用発明の電気集塵装置の制御方法において、排気ガス速度が速くなる方向に推移するときの切り替えについて、「印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替える」こととすることは当業者であれば容易に想到し得る。

また、本願補正発明の作用効果は、引用発明及び上記周知技術から、当業者であれば予測できる範囲のものにすぎない。

以上により、本願補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


2.6 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、補正却下の決定の結論のとおり決定する。


3 本願発明について

平成20年 3月14日付けでした手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は平成19年 8月20日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】 コロナ放電により排気ガス中の粒子状物質に電荷を与える帯電部と,荷電粒子状物質を電気力により集塵する集塵部とを備え,少なくとも上記帯電部の放電極に印加する電圧が制御可能な電気集塵装置が,排気ガスが電気集塵装置の入口側から入り上記帯電部および集塵部を通過して出口側から出るように排気路に配置されており,
上記帯電部の放電極への印加電圧をあらかじめ定められた電圧に複数段階に変化させて制御するに際して,
上記電気集塵装置を通過する排気ガスの速度が遅くなって上記電気集塵装置の出口側のオゾン濃度が高まり所定値に達する排気ガス速度において上記印加電圧を一段階下げ,上記印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において上記印加電圧を高くする方向に切り替えるように制御する,
電気集塵装置の制御方法。」
(以下「本願発明」という。)


4 引用刊行物

原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物、その記載事項及び引用発明は上記2【理由】の「2.3 引用刊行物とその記載事項」に記載したとおりである。


5 対比

上記2【理由】の「2.1 本件補正」での検討によれば、本願補正発明においては、本願の請求項1に係る発明の、電気集塵装置の配置場所について「道路トンネルの換気システムにおけるガス排気路」と限定し、帯電部の放電極への印加電圧を変化させることについて、「上記道路トンネル内の実測交通量に基づいて予測交通量を求め,求めた予測交通量に基づいて換気風量を算出し,算出した換気風量に基づいて上記電気集塵装置の出口側においてオゾン濃度が所定値以下となるように,」と限定し、さらに、印加電圧を低くする方向に切り替える排気ガス速度よりも速い排気ガス速度において印加電圧を高くする方向に切り替えること行うタイミングとして、「排気ガス速度が速くなる方向に推移するときには」とする点を限定しているのに対し、本願発明では当該限定がなされてはいないものである。

そうすると、本願発明を特定する事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2【理由】「2.4 対比」及び「2.5 相違点についての検討(容易想到性の判断)」で検討したように、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


6 むすび

以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-08-19 
結審通知日 2010-08-24 
審決日 2010-09-08 
出願番号 特願2003-68372(P2003-68372)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B03C)
P 1 8・ 121- Z (B03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 雅博田口 昌浩  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 小関 峰夫
金丸 治之
発明の名称 電気集塵装置の制御方法および装置  
代理人 牛久 健司  
代理人 井上 正  
代理人 高城 貞晶  
代理人 牛久 健司  
代理人 高城 貞晶  
代理人 井上 正  
代理人 高城 貞晶  
代理人 牛久 健司  
代理人 井上 正  

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